説明

塗布装置

【課題】塗布装置内の雰囲気をパーティクルで汚染することなく、インクジェット吐出部の熱膨張を抑え、温度分布を均一に保つ塗布装置を提供する。
【解決手段】基板を載置するステージと、インクジェット方式により塗布液を吐出する吐出部30と、この吐出部を冷却する冷却機構を備え、前記吐出部が、前記ステージ上の基板に対して相対的に移動しつつ前記吐出部のインクジェットヘッド50から塗布液を吐出することにより基板に塗布膜を形成する装置において、前記冷却機構は、少なくとも冷却水供給装置41と可撓性チューブ44とを有し、前記冷却水供給装置から前記塗布ユニットの前記可撓性チューブに冷却水を循環させることによりを前記吐出部冷却することによりパーティクルを発生させずに塗布装置内を冷却することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットヘッドからインクを吐出して基板にインクを塗布するインクジェット装置に関する。
【背景技術】
【0002】
カラー液晶ディスプレイ等のフラットパネルディスプレイには、色形成の中核を成す部材としてカラーフィルタが用いられているものがある。カラーフィルタは、ガラス基板上に微細なR(赤色)、G(緑色)、B(青色)の3色が多数並べられて形成されている。カラーフィルターの製造方法として、これら3色の任意の色を均一に塗布し、マスク露光により所定の画素パターンを得るフォトリソ法が長く利用されてきた。
【0003】
近年、フォトリソ法で露光後除去される塗布液の無駄を排除する為、ガラス基板上に形成された多数の微細な画素部にR、G、Bの各インクをインクジェットヘッドから吐出して、R、G、Bの画素を直接形成するインクジェット装置がカラーフィルタ製造装置として提案されている。
【0004】
一方で、カラーTVなど大形画面に液晶ディスプレイの採用が進み、塗布対象とする基板の大きさが2m角を越えるものもまれではなくなりつつある。そこでインクジェットヘッドでR、G、Bの画素を形成する塗布装置を用いる場合には、インクジェットヘッドを複数並べて量産に対応した短いタクトタイムで画素形成ができるように前記塗布装置は構成されている。
【0005】
ところが、インクジェットヘッド並びに前記インクジェットヘッドを制御するインクジェット制御基板は作動時に熱を発生させるため、複数のインクジェットヘッドを連続使用すると作動時の発熱が蓄積し、吐出部の温度が高温になるという問題がある。また、インクジェットに使用するインクは温度の影響を受け易いものが主として使用されている。そのため、この様な塗布装置のインクジェットヘッドは、冷却ファンによる強制排気機構で構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−173548号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、この様な強制排気機構は冷却ファンによる強制排気のため、塗布装置内を装置の作動により発生するパーティクルで汚染する問題が発生している。具体的には、吐出部内の各インクジェットヘッドの隙間から冷却ファンの吸引力に引かれた空気が塗布装置全体に流れ込んでいて、インクジェットヘッドから吐出された塗布液の一部が同様に冷却ファンの吸引力に引かれ、その際冷却されて固体化した状態で吐出部内部に進入し、次いで塗布装置全体へ強制排気されパーティクルとなっている。
【0008】
また、吐出部のインクジェットヘッドや制御装置の発熱のため、連続使用する場合吐出部の内部温度が高くなる。この温度上昇による吐出部の熱膨張の結果、塗布品質が低下するというものがある。さらに、上述の強制排気とインクジェット制御基板の発熱のため吐出部内部の温度分布が悪くなり、その影響により塗布液貯蔵タンク内及び配管中の塗布液の特性が不均一になるという問題もある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
これら問題を解決する為、本発明の塗布装置は、基板を載置するステージと、インクジェット方式により塗布液を吐出するインクジェットヘッドを有する吐出部と、前記吐出部を冷却する冷却機構とを備え、前記塗布ユニットが前記ステージ上の基板に対して相対的に移動しつつ前記吐出部のインクジェットヘッドから塗布液を吐出することにより基板に塗布膜を形成する塗布装置において、前記冷却機構は、少なくとも冷却液供給装置と可撓性チューブとを有し、前記冷却液供給装置から前記吐出部の前記可撓性チューブに冷却液を循環させることにより前記吐出部を冷却することを特徴としている。
【0010】
この構成により、前記吐出部のインクジェットヘッドが吐出中に発熱しても冷却装置により発熱した熱が吐出部に滞留せず、塗布装置外に排熱されることを可能にしている。また冷却装置は液冷循環式であるので、吐出部の熱を吐出部外部に排熱する際にパーティクルの発生を抑えることができる。
【0011】
また、本発明の塗布装置は、前記冷却機構は吐出部外に前記冷却液供給装置が配置され、前記冷却液供給装置から前記吐出部内に可撓性チューブを配しており、前記冷却液供給装置と前記吐出部の間にコントロールバルブを設けるとともに、前記吐出部内の複数位置に温度測定器を設置し、前記温度測定器の測定値から前記コントロールバルブの開度を制御することにより前記冷却液供給装置から送液される冷却液量を調節し、吐出部内の温度を制御することを特徴としている。
【0012】
この構成により、インクジェットヘッドが比較的狭い空間に配置されている吐出部においても冷却液を循環させ排熱を行うことができる配管を実現することができる。また、吐出部の複数の位置に温度測定器を設置することにより、より正確な温度制御を可能にしている。
【0013】
さらに、本発明の塗布装置に含まれる冷却機構は、2本以上の可撓性チューブから構成され、この可撓性チューブを前記吐出部の長手方向の両端から配管することにより前記吐出部内の温度分布を均一にすることを特徴とする請求項1ないし2に記載の塗布装置。
【0014】
この構成により、塗布巾2mを超える大形基板を対象とする塗布装置においても、温度変化を最小限度に制御することを可能にしている。
【発明の効果】
【0015】
本発明の塗布装置はよれば、塗布液によるパーティクルによる汚染の拡散や吐出部内の制御基板等からの発熱による吐出部への影響を実用上問題の無いレベルに抑制することが可能となり、塗布品質の安定した塗布基板を製作することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の塗布装置の全体図である。
【図2】本発明の塗布装置における吐出部の冷却構成の詳細図である。
【図3】本発明の塗布装置における吐出部内の熱源であるインクジェットヘッドの冷却を示す図である。
【図4】本発明の塗布装置における吐出部内の温度制御フロー図である。
【図5】本発明の塗布装置の基板の搬入、塗布、搬出のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の塗布装置に係わる実施の形態を図面を用いて説明する。
【0018】
塗布装置1は、基板上10に塗布液を吐出するものであり、基板10を載置ためのステージ21と、このステージ21に対し特定方向に移動可能に構成される吐出部30とを備えており、さらにこの吐出部30を冷却する冷却機構40を備えている。
【0019】
前記ステージ21は、ロボット等の搬入手段(不図示)により搬入された基板10をその表面に載置して保持するものである。このステージには、その表面に開口する複数の吸引孔(不図示)が形成されており、これらの吸引孔と真空ポンプ(不図示)とが連通して接続されている。そして、ステージ21の表面に基板10が載置された状態で真空ポンプ(不図示)を作動させると、吸引孔に吸引力が発生し基板10がステージ21の表面に吸引されて基板10を吸着保持出来る様になっている。またステージ21には基板10を昇降動作させる基板昇降機構(不図示)が設けられており、このピン孔(不図示)には昇降動作可能なリフトピン(不図示)が埋設されている。そして、ステージ21の表面に基板10を載置した状態でリフトピンを上昇させることにより、リフトピンの先端部分が基板10に当接し、複数のリフトピンの先端部分で基板10を所定の高さに位置に保持出来るようになっている。これにより、基板10との接触部分を極力抑えて保持することができ、基板を損傷させることなくスムーズに交換出来るようになっている。
【0020】
次に、吐出部30は、基板上10に塗布液を吐出するものである。この吐出部30は門型に構成され、ステージ21の上部に空間を確保することにより吐出部30が基板10上を走査することを可能にしている。吐出部30を構成する門型の桁部には、塗布液を塗出する複数のインクジェットヘッド50と、これら複数のインクジェットヘッド50を制御する複数の制御基板(不図示)とインクジェットヘッド50から吐出するインクを一次的に貯蔵するタンク(不図示)が設置されている。さらに、吐出部30を構成する門型の2箇所の門柱部それぞれはリニアモーターと機械的に結合され、リニアモーターで吐出部30を駆動制御することにより、吐出部30が基板上10を走査しながら吐出部30に設けられているインクジェットヘッド50から塗布液が吐出されるようになっている。ここで、本実施例ではステージ21は固定であり吐出部30がステージ21上に吸着固定された基板10上を走査する構成となっているが、吐出部30が固定され、ステージ21がリニアモーターを含む直線駆動機構で走査する構成としても構わない。
【0021】
冷却機構40は、冷却水供給装置41と冷却水供給装置41から吐出部30間に冷却水を循環させる冷却配管42と温度制御による冷却水量を制御するコントロールバルブ43a、43b及び2本以上のフレキシブルチューブ44から構成される。冷却配管42は、吐出部30の長手方向の両端から接続されており、冷却配管42は長手方向の片側から逆側への一方向の配管だけでなく、両端から交互配管によりR側からL側への配管42aとL側からR側への配管42bとなっている。つまり両端から冷却水を循環させることにより温度バランスを良くすることが出来る。冷却水供給装置41は塗布装置1が設置される工場から冷却水を供給され、冷却機構40に冷却水を供給するものである。冷却水供給装置41はポンプ等の重量物を含んでいる為、吐出部30に組み込むことは吐出部30の走行性能に余分な負荷を与えることになり、走査中の振動や走査ムラを引き起こす要因となる。そのため、冷却水供給装置41は吐出部30と切り離して設置されるが、冷却配管42が最短になる様な塗布装置1の周辺に設置することが好ましい。
【0022】
吐出部30内部においては、吐出部30に接続された冷却配管42a、42bが複数のフレキシブルチューブ44へと接続され、このフレキシブルチューブ44は熱源となる制御基板及びインクジェットヘッド50付近を通過させる様に配置されている。フレキシブルチューブ44は後述する可撓性材料で構成されているので、自在に経路を変更することができる。図3はインクジェットヘッド50付近でのフレキシブルチューブ44の配管を示すものである。インクジェットヘッド50は取り付け面51で固定されており、取り付け面51にインクジェットヘッド50で発熱した熱が伝熱される。従ってフレキシブルチューブ44は取り付け面51に接触するか又はその近傍を通過させる様に配置されている。
【0023】
ここで、フレキシブルチューブ44は、例えば合成ゴムもしくはシリコン製熱交換チューブを使用することが好ましい。吐出部30内を通過させるためチューブ径は30mm以下とすることが必要であり、吐出部30内のレイアウトによってはこれよりも細いことが望ましい。ただし、チューブ内を通過する冷却液の熱容量および送液時の圧力損失を考慮して、使用する液により下限が決定される。また、フレキシブルチューブ44の肉厚は、熱交換効率を考慮して2mm以下にすることが必要である。フレキシブルチューブ44の吐出部30内への固定方法は特に指定しないが、固定金具などを配置するスペースが無い場合はタイマウントや塗布ユニット30内の他の配管などに、結束バンド等にて固定しても構わない。また、冷却効率を上げるためには、敷設本数を増やし、並列配置することが望ましい。
【0024】
冷却配管42a、42bおよびフレキシブルチューブ44は内部に液体を有するので、この液が制御基板に漏れると制御基板の破損を引き起こす。よって、フレキシブルチューブ44は吐出部30内で一切の接続等を行わなず、流入側から流出側まで連続したチューブが使用されている。
【0025】
温度測定器45aは吐出部30の中央付近が最も放熱効率が悪く温度が高くなるので、前記吐出部30内部の中央の内側に少なくとも1個取り付けることが好ましい。吐出部30の設計やレイアウトに応じて前記中央部を含む複数個の温度測定器を取り付けることも可能である。温度測定器45aは本実施令の場合熱電対が使用されているが、非接触方式を含めその他の温度測定器を使用することも可能である。温度制御は図4に示すフローチャートに従って行われる。温度測定器45aで測定された温度情報は温度調節制御器45bの種類に応じてデジタル化またはアナログ信号のまま温度調節制御器45bの送信され、温度調節制御器45bに予め設定された基準値と比較され、その比較結果に基づきコントロールバルブ43a、43bの開度を調節する信号を発信する。本実施例ではコントロールバルブ43a,43bの開度調節は、温度調節制御器45bからのアナログ出力によりPID制御にて実施している。PID制御によりなめらかに開度の調節が出来る。
【0026】
一方、冷却水供給装置41は一定温度の冷却液を定量的に供給する。冷却液は水またはその他の液が使用できるが、引火性は発火性のある液は好ましくない。また、配管やチューブを損傷する可能性のある腐食性液体も好ましくない。
【0027】
次に、基板の搬入、塗布、搬出方法について図5のフローチャートを用いて記載する。
【0028】
まず、ステージ21のリフトピン(不図示)を上昇させ(ステップS1)、次にステップS2によりロボットなどの搬入装置によって基板10をステージ21に載置する。基板10がステージ21のリフトピン上に積載された後、搬入装置を待避する(ステップS3)。次にリフトピン(不図示)を下降させ(ステップS4)、ステージ21の吸着孔に真空ポンプにより吸引力を発生し、基板10を吸着する(ステップS5)。次に、吐出部30を所定方向に基板10上を走査しながら、インクジェットヘッド50よりインクを吐出させる(ステップS6)。吐出部30は予め設定された回数の往復運動を行いながら(ステップS7)、基板にインクを吐出してカラーフィルタを形成する。吐出動作終了後、吐出部30を基板10の上昇動作と干渉しない位置まで待避する(ステップS8)。ステージ21の吸着孔に圧縮空気などのガスを供給し、基板10とステージ21の真空吸着を解除する(ステップS9)。次いでリフトピンを上昇させ(ステップS10)、ロボット(不図示)などの搬出装置でリフトピン上の基板10を受け取り、下流装置に基板を払い出す(ステップS11)。そして、生産予定枚数の基板に塗布膜が形成されたか否かが確認され(ステップS12)、予定枚数に達した場合、一連の動作が完了する。
【0029】
本実施例においては、吐出部30の吐出手段としてインクジェット方式のヘッドを使用したが、本発明はインクジェット方式以外の複数の独立吐出手段により基板上に塗布液を吐出する装置に適用できる。例えば、基板上の微細スロットに連続的に塗布液を吐出する塗布装置などに適用が可能である。
【符号の説明】
【0030】
1 塗布装置
10 基板
21 ステージ
30 吐出部
40 冷却機構
41 冷却水供給装置
42 冷却配管(42a、42b)
43 コントロールバルブ(43a、43b)
44 フレキシブルチューブ
45 温度測定器
45a 温度調節制御器
50 インクジェットヘッド
51 インクジェットヘッド取り付け面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を載置するステージと、インクジェット方式により塗布液を吐出するインクジェットヘッドを有する吐出部と、前記吐出部を冷却する冷却機構とを備え、前記塗布ユニットが前記ステージ上の基板に対して相対的に移動しつつ前記吐出部のインクジェットヘッドから塗布液を吐出することにより基板に塗布膜を形成する塗布装置において、
前記冷却機構は、少なくとも冷却液供給装置と可撓性チューブとを有し、前記冷却液供給装置から前記吐出部の前記可撓性チューブに冷却液を循環させることにより前記吐出部を冷却することを特徴とする塗布装置。
【請求項2】
前記冷却機構は吐出部外に前記冷却液供給装置が配置され、前記冷却液供給装置から前記吐出部内に可撓性チューブを配しており、前記冷却液供給装置と前記吐出部の間にコントロールバルブを設けるとともに、前記吐出部内の複数位置に温度測定器を設置し、前記温度測定器の測定値から前記コントロールバルブの開度を制御することにより前記冷却液供給装置から送液される冷却液量を調節し、吐出部内の温度を制御することを特徴する請求項1に記載の塗布装置。
【請求項3】
前記可撓性チューブは2本以上から構成され、この可撓性チューブを前記吐出部の長手方向の両端から配管することにより前記吐出部内の温度分布を均一にすることを特徴とする請求項1ないし2に記載の塗布装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−196645(P2012−196645A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−63741(P2011−63741)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(000219314)東レエンジニアリング株式会社 (505)
【Fターム(参考)】