説明

塗布装置

【目的】 スピンナーを備えた塗布装置のカップを回転させた場合にカップ内に乱流が生じないようにする。
【構成】 スピンナー装置の中空回転軸12上端にインナーカップ20の底板21を固着し、この底板21の上面周縁に環状の壁体22を立設し、底板21にはガラス基板と略相似形の台部25を設け、この台部25の中央には開口26を形成し、また台部25の上面外周にはガラス基板Wの下面周縁に当接する突条27を形成し、この突条27上面にシール28を設けている。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】液晶ディスプレイ(LCD)の製造工程等に用いる塗布装置に関する。
【0002】
【従来の技術】ブラウン管(CRT)に代わる表示装置として、表面に画素を構成する電極や素子を形成した2枚のガラス基板の間に液晶を注入した構造の液晶ディスプレイが注目されている。そして上記の画素としては薄膜トランジスタ(TFT)や金属/絶縁体/金属接合(MIM)などの素子で駆動せしめるアクティブマトリクス方式が高画質の画面が得られるため主流になりつつある。
【0003】上記の薄膜トランジスタ等をガラス基板上に形成する技術はシリコンウェハ等に集積回路を形成する半導体製造技術をそのまま応用している。レジスト液の塗布も一連の工程のうちの一つであり、この工程ではインナーカップ内の真空チャックにセットしたガラス基板上にレジスト液を滴下し、次いでスピンナーによって真空チャックとインナーカップを一体的に回転せしめ遠心力によってガラス基板表面にレジスト液を均一に塗布するようにしている。
【0004】ところで、真空チャックにガラス基板をセットしたり真空チャックから塗布後のガラス基板を取り外すには、ガラス基板の上面に触れないようにしなければならないので、ガラス基板の下面周縁をマニピュレータ等で支持して行なうようにしている。このためには、真空チャックにガラス基板が載置された状態で、ガラス基板とインナーカップ底面との間にマニピュレータ等が入り込める隙間が必要となる。従って、従来にあっては真空チャックの寸法はガラス基板より小さくし、真空チャックからガラス基板の周縁が食み出すようにしている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】レジスト液を塗布する工程においては、ガラス基板はインナーカップと一体的に回転するが、ガラス基板とカップ底面との間に隙間が形成されているため、この部分で乱流が発生し、膜厚が不均一になったり、ガラス基板表面に塗布液が回り込んだりする。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決すべく本発明は、ガラス基板などの板状被処理物をスピンナーによって回転せしめられるカップ内にセットし、この板状被処理物の表面に塗布液を滴下し、次いでカップ上面を蓋体で閉塞してカップを回転させることで滴下した塗布液を板状被処理物の表面に均一に拡散せしめるようにした塗布装置において、前記カップ内底部に板状被処理物と略相似形の台部を設け、この台部の中央に真空チャックが臨む開口を形成し、台部の上面外周に板状被処理物の下面外周に当接する突条を形成した。
【0007】
【作用】台部の開口に臨む真空チャックを上昇せしめ、この位置で真空チャック上面に板状被処理物を載置吸着し、次いで真空チャックを下降せしめて板状被処理物の下面外周部を台部の上面外周に形成した突条に当接させ、ガラス基板とカップ底面との間の隙間をなくして、塗布工程を行なう。
【0008】
【実施例】以下に本発明の実施例を添付図面に基づいて説明する。ここで、図1は本発明に係る塗布装置を組み込んだ被膜形成ラインの平面図、図2は同塗布装置の蓋体を上げた状態の断面図、図3は図2のA−A方向矢視図、図4は同塗布装置の蓋体を閉じた状態の断面図、図5R>5は図4の要部拡大図である。
【0009】被膜形成ラインは図1の左側を上流部とし、この上流部に矩形状をなす板状被処理物としてのガラス基板Wの投入部1を設け、この投入部1の下流側に本発明に係る塗布装置2を配置し、この塗布装置2の下流側に順次、減圧乾燥装置3、ガラス基板Wの裏面洗浄装置4及びホットプレート5a・・・とクーリングプレート5bを備えた加熱部5を配置し、投入部1から加熱部5に至るまでは搬送装置6によってガラス基板Wの前後端の下面を支持した状態で搬送し、加熱部5においては垂直面内でクランク動をなす搬送装置7によりガラス基板Wの下面を支持した状態で各ホットプレート5a上を順次移し換え、最終的にクーリングプレート5bで温度を調整しつつガラス基板Wを搬送するようにしている。
【0010】塗布装置2はベース10、インナーカップ20、アウターカップ30及び蓋部40から構成されている。
【0011】ベース10には軸受け11が取り付けられ、この軸受け11を貫通してスピンナー装置の中空回転軸12を支承し、この回転軸12上端にインナーカップ20の底板21を固着し、この底板21の上面周縁に環状の壁体22を立設し、この壁体22と底板21とでカップ形状をなすようにしている。
【0012】そして、ガラス基板Wは矩形状であり、この矩形状ガラス基板Wの外周端とインナーカップ内周面との距離が均一でないと乱流を生じやすいので、環状の壁体22の内側の一部に直線状の壁体23を設け、矩形状ガラス基板Wの外周端と壁体との距離がどの部分でも一定となるようにしている。尚、壁体23の上面にはシール24を設けている。
【0013】また、底板21にはガラス基板と略相似形の台部25を設け、この台部25の中央には開口26を形成し、また台部25の上面外周にはガラス基板Wの下面周縁に当接する突条27を形成し、この突条27上面にシール28を設けている。
【0014】一方、前記中空回転軸12内には真空チャック13を挿通し、この真空チャック13の吸着部14を前記台部25の中央開口26に臨ませている。この真空チャック13は昇降可能とされ、上昇した位置でガラス基板Wの受け取り及び受渡しを行ない、図に示す下降した位置において前記突条27上面と面一か或いは若干突条27上面より低くなる。
【0015】アウターカップ30はベース10に固着された本体31と、この本体31に取り付けられた壁体32からなり、本体31に環状のドレイン回収通路33を形成し、この回収通路33にドレインパイプ29を臨ませている。また壁体32と前記インナーカップ20の壁体22との間には隙間を形成するとともに、壁体32の上面にはシール34を設けている。
【0016】またインナーカップ20及びアウターカップ30の上方には図1に示すようにアーム50、51を配置している。これらアーム50、51は直線動、回転動、上下動或いはこれらを合成した動きが可能で互いに干渉しないようになっている。そして、アーム50にはレジスト液等の塗布液を滴下するノズルを取り付け、前記蓋部40を支持するアーム51の先端には下方に伸びる軸52を取り付け、この軸52にはノズル孔を穿設し、このノズル孔からチッ素ガスや洗浄液が噴出するようにしている。
【0017】また、前記軸52にはベアリング及び磁気シールを介してボス部53を回転自在に嵌合し、このボス部53にインナーカップ20の上面開口を閉塞するための円板状をなすアルミニウム製の蓋体41を取り付けている。また、この蓋体41の上方のアーム51の先端下面にはアウターカップ30の上面開口を閉塞するための蓋体42を固着している。
【0018】蓋体41の下面にはインナーカップ20内の乱流を防止する整流板43を取り付けている。この整流板43はガラス基板Wより若干大きな寸法で且つ相似形をしている。また蓋体42は中央に形成した孔を介してアーム51の先端下面に取り付けた筒体56の外周に嵌合し、また蓋体42に固着したテフロン製の軸受け44に筒体56に植設したガイドポスト57を係合せしめることで蓋体42を上下摺動自在に保持している。
【0019】ところで、蓋体41を閉じてインナーカップ20、ガラス基板W及び整流板43を回転せしめ、ガラス基板W上に滴下した塗布液を遠心力で拡散する場合には、ガラス基板Wと整流板43とが完全に同一位相で重なるか、或いは回転速度を見込んで所定角ずらせてガラス基板W上に整流板43を臨ませる必要がある。
【0020】このため、蓋体41の外周には前記壁体22上面に設けたピン22aに係合する切欠41aを形成し、また蓋体41からは上方に向けてピン45を突出し、このピン45が係合する受け部材46を蓋体42に取り付けている。即ち、蓋体42は前記したガイドポスト57により回転が阻止されガラス基板Wに対する相対位置が確定しているので、蓋体41を上昇させた図2の状態では受け部材46に蓋体41のピン45が係合することで蓋体41及び整流板43のガラス基板Wに対する相対位置も定まる。
【0021】この後、アーム51を下降させると、蓋体42の外周端がアウターカップ30上端に載置される。そしてこの状態でピン22aの直上に切欠41aが位置している。したがって、この状態で蓋体41を下降せしめれば図4に示すように蓋体41の切欠41aがピン22aに係合し、ガラス基板Wと整流板43との位相合わせがなされる。
【0022】以上において、ガラス基板W表面にレジスト液を均一に塗布するには、インナーカップ20及びアウターカップ30の上面を開放して真空チャック13上に固着されているガラス基板Wの表面にアーム50に取り付けられているノズルからレジスト液を滴下し、次いでアーム50を後退せしめて図2に示すようにインナーカップ20及びアウターカップ30上にアーム51を回動させて蓋体41、42を臨ませる。
【0023】そして図4に示すように、アーム51を下降することで蓋体41によりインナーカップ20の上面を閉塞し、蓋体42によりアウターカップ30の上面開口を閉塞したならば、スピンナーによって真空チャック13とインナーカップ20を一体的に回転せしめ、遠心力によりレジスト液をガラス基板Wの表面に均一に拡散塗布する。
【0024】そして、以上の処理においてインナーカップ20内は減圧状態になっているので、このまま蓋をあけてガラス基板Wを取り出すと、インナーカップ内の空気が乱れてレジスト液がスポット的にガラス基板W表面に付着するおそれがある。そこでレジスト液が均一に塗布されたガラス基板Wを取り出すには、先ず蓋体41と整流板43の間の空間に窒素ガス等を導入し減圧状態を解除して行う。このときノズル孔からのガスは整流板43があるため、ガラス基板W表面のレジスト液に直接吹き付けられることがない。
【0025】このようにして、所定枚数のガラス基板Wにレジスト液を均一に塗布した後には余分な塗布液の一部がインナーカップ20内周面等に付着している。これを放置しておくと乾燥固化して雰囲気中に飛散し、ガラス基板W表面に付着するため、洗浄を行う。
【0026】洗浄はガラス基板Wを除いた状態でインナーカップ20とアウターカップ30を蓋体41,42で閉じて行う。即ち、洗浄液供給源につながるノズル孔を介して蓋体41と整流板43の間の空間に洗浄液を供給する。すると図5に示すように、洗浄液は遠心力によって整流板43の表面を流れ、その一部はインナーカップ20の内周面に到達し、この内周面に付着した塗布液を洗い流し、ドレインパイプ29を介して回収通路33内に排出される。
【0027】尚、図示例にあっては突条27を設けることでガラス基板Wの下面と台部25上面とが全面接触しないようにしたが、シール28の形状或いは径によってはシール28が突条を兼ねることができる。
【0028】
【発明の効果】以上に説明したように本発明によれば、塗布装置のインナーカップの内底部に板状被処理物と略相似形の台部を設け、この台部の上面外周に板状被処理物の下面外周に当接する突条を形成したので、板状被処理物とカップ底面との間に形成されていた隙間がなくなり、この部分で乱流が発生せず、乱流に起因する膜厚の不均一を防止することができる。また突条を設けているのは周縁部のみであるので、板状被処理物の下面全面がカップ底面に接触することがなく、板状被処理物の傷付き等のおそれもない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る塗布装置を組み込んだ被膜形成ラインの平面図
【図2】同塗布装置の蓋体を上げた状態の断面図
【図3】図2のA−A方向矢視図
【図4】同塗布装置の蓋体を閉じた状態の断面図
【図5】図4の要部拡大図
【符号の説明】
2…塗布装置、13…真空チャック、20…インナーカップ、27…突条、30…アウターカップ、41,42…蓋体、43…整流板、W…板状被処理物。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 板状被処理物をスピンナーによって回転せしめられるカップ内にセットし、この板状被処理物の表面に塗布液を滴下し、次いでカップ上面を蓋体で閉塞してカップを回転させることで滴下した塗布液を板状被処理物の表面に均一に拡散せしめるようにした塗布装置において、前記カップ内底部には板状被処理物と略相似形の台部が設けられ、この台部の中央には真空チャックが臨む開口が形成され、台部の上面外周には板状被処理物の下面外周に当接する突条が形成されていることを特徴とする塗布装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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