説明

塗料スプレーしぶきを分離するためのフィルタ装置

本発明は、スプレーしぶき粒子を含有する処理ガス流から塗料スプレーしぶきを分離するためのフィルタ装置であって、フィルタ装置が、少なくとも一つのフィルタ・エレメントが配置されている、フィルタ装置の内部空間を画成するハウジングと、処理ガス流がその中を通ってフィルタ装置の内部空間内に流入する少なくとも一つの入口通路とを有するフィルタ装置に関するものである。本発明は、入口通路の狭い個所における流速が速くても、入口通路を通る処理ガス流が安定化されるフィルタ装置を提供するために、フィルタ装置が、入口通路の内部空間側の端部の上流で入口通路内に開口して入口通路をフィルタ装置の内部空間に接続する吸込み通路を有することが提案される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スプレーしぶき粒子を含有する処理ガス流から塗料スプレーしぶきを分離するためのフィルタ装置であって、フィルタ装置が、少なくとも一つのフィルタ・エレメントが配置されている、フィルタ装置の内部空間を画成するハウジングと、処理ガス流がその中を通ってフィルタ装置の内部空間内に流入する少なくとも一つの入口通路とを有するフィルタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このような装置は、例えば独国特許出願公開第102007040901号明細書から公知である。
【0003】
このような公知のフィルタ装置の場合、入口通路は、流れ方向で見て比較的短い案内薄板によって上方で境界を定められている。さらに、入口通路の下側境界面は、下方に向かって入口通路に続いて設けられた漏斗状の補助材収容容器の側壁よりも小さな傾斜を水平線に対して有している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の根底を成す課題は、入口通路の狭い個所における流速が速くても、入口通路を通る処理ガス流が安定化される、冒頭で述べた形式のフィルタ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような課題は、本発明による請求項1の上位概念の特徴、即ちフィルタ装置が吸込通路を有して、吸込通路が入口通路の、内部空間側の端部の上流で入口通路内に開口して、入口通路をフィルタ装置の内部空間に接続するという特徴を有するフィルタ装置によって解決される。
【発明の効果】
【0006】
入口通路をフィルタ装置の内部空間、特にフィルタ装置のフィルタ・エレメント収容室に接続する吸込通路を通して、空気をフィルタ装置の内部空間から入口通路内に吸い込むことができ、これにより入口通路を通る処理ガスの流入が安定化される。
【0007】
この場合、空気は、好適なことには吸込通路の長手方向に沿うように方向付けられて入口通路内に流入する。
【0008】
さらに、吸込通路を通して吸い込まれた空気によって、フィルタ装置の内部空間から、特にフィルタ装置の内部空間の境界面から補助材が連行されて、入口通路の境界面へ搬送され得る。こうして、入口通路の境界面は補助材で覆われ、これにより塗料スプレーしぶきによる汚染から保護される。
【0009】
このような補助材は、フィルタ装置の少なくとも一つのフィルタ・エレメントの表面に、及び塗料スプレーしぶきが添加された処理ガス流の流路の他の境界面にバリア層として沈積することにより、これらの面がスプレーしぶき粒子の付着によって粘着性が生じるのを阻止するために役立つ。さらに、この補助材は、フィルタ・エレメント上の濾滓が、流れを阻止しない通過可能性のままでいることに役立つ。
【0010】
フィルタ装置のフィルタ・エレメントを定期的に清浄化することによって、補助材と塗料スプレーしぶきとから成る混合物はフィルタ・エレメントから、フィルタ・エレメントの下方に配置された補助材収容容器内へ達し、この補助材収容容器からこの混合物を例えば吸い取ることによって、補助材として新たに使用するために塗装設備に供給することができる。
【0011】
さらに、補助材収容容器内に位置する、補助材と塗料スプレーしぶきとから成る混合物を、圧縮空気ランスからの圧縮空気パルスによって渦状に巻き上げ、これにより補助材収容容器からフィルタ・エレメントへ上昇させてその場所に沈積させることができる。
【0012】
流動可能な粒子状の補助材は、「プリコート」材料又はフィルタ補助材とも呼ばれる。
【0013】
吸込通路が二つの吸込通路境界壁によって画成されて、吸込通路境界壁の間にギャップが形成されていると好適である。
【0014】
このギャップの内法幅、すなわち吸込通路境界壁に対して横方向の延長は、最小5mmであると好適である。
【0015】
さらに、このギャップの内法幅は、最大で約50mmであると好適である。
【0016】
ギャップの広さ、すなわちギャップを通る空気の平均流動方向に対して垂直で且つ吸込通路境界壁に対して平行なその広がりは、このような方向における入口通路の広がりとほぼ同じであると好適である。
【0017】
入口通路と吸込通路のギャップとは、ほぼフィルタ装置の広さ全体にわたって延びていると好適である。
【0018】
吸込通路を通る空気の流れ方向に沿って、吸込通路は最小で約20mm、特に最小で約30mmの長さにわたって延びていると好適である。これにより、良好に方向付けられた状態で空気が吸込通路から入口通路内に流入する。
【0019】
本発明の好ましい構成では、二つの吸込通路境界壁は、互いの相対的な傾斜角度が10°未満であるように方向付けられている。
【0020】
二つの吸込通路境界壁は、互いにほぼ平行に延びていると特に好都合である。
【0021】
さらに入口通路内の高い流速を達成するために、吸込通路が前側吸込通路境界壁によって境界を定められ、入口通路を下方で区切る下側入口通路境界面に対する前側吸込通路境界壁の傾斜角度が10°未満であると有利である。
【0022】
前側吸込通路境界壁と下側入口通路境界面とが互いにほぼ平行に延びていると特に好都合である。
【0023】
吸込通路は上方から入口通路内に開口していると好適である。
【0024】
本発明の好適な構成において、吸込通路が、通路境界要素の一区域を形成する吸込通路境界壁によって境界を定められ、通路境界要素は、吸込通路境界壁の他に、入口通路の境界を形成するさらなる区域を有する。
【0025】
通路境界要素のこのさらなる区域は入口通路の上側境界を好適に形成する。
【0026】
さらに、入口通路の境界を形成する通路境界要素のこのさらなる区域は、通路境界要素の、吸込通路境界壁を形成する区域よりも小さい角度で、水平線に対して傾斜させられてよい。これにより、吸込通路が開口した後ろの入口通路の流通可能な断面は増大し、これにより、流速はこのような入口通路領域内で低減される。このことは、フィルタ装置の内部空間から吸込通路を通って搬送された補助材が通路境界要素及び/又は下側入口通路境界面に堆積するのを容易にする。
【0027】
前側吸込通路境界壁及び/又は下側入口通路境界面は、水平線に対して最小で約50°、好適には最小で約55°、例えば約60°の角度を成して傾斜させられていると好適である。水平線に対して入口通路の境界面がこのように大きく傾斜していることにより、入口通路は狭くなり、入口通路内の処理ガスの流速は増大して、より多くの補助材が補助材収容容器からフィルタ・エレメントへ搬送される。これにより、フィルタ・エレメントにおける塗料スプレーしぶきの分離作用がより強力になる。
【0028】
吸込通路を区切る前側吸込通路境界壁、及び/又は吸込通路を区切る後側吸込通路境界壁は、例えば連続した薄板として、空気貫流開口なしで不透過性に形成されていると好適である。
【0029】
本発明によるフィルタ装置は、補助材を収容するための補助材収容容器を好適に有しており、前記補助材は、処理ガス流が少なくとも一つのフィルタ・エレメントを通過する前に処理ガス流に添加され、補助材収容容器は、鉛直線に対して及び水平線に対して傾斜させられて入口通路の下側境界を形成する側壁を有する。
【0030】
入口通路を下方で区切る補助材収容容器の側壁は、水平線に対して、最小で約50°、特に最小で約55°、例えば約60°の傾斜を好適に有する。
【0031】
塗装設備の塗布領域からフィルタ装置の領域内に達した液体が、フィルタ装置の内部空間内に、特に補助材収容容器内に達するようにするために、フィルタ装置のハウジングが前壁区域を有して、前壁区域の下縁部がフィルタ装置の外側の空間に突出するように、前壁区域が鉛直線に対して傾斜させられていると有利である。
【0032】
特にこの場合、フィルタ装置のハウジングに達した液体が、前壁区域の下縁部を経由して、その下方に配置されたトラフ内に滴下するようになっていてよい。
【0033】
鉛直線に対して傾斜させられた前壁区域を有するハウジングという特徴は、吸込通路の存在とは無関係に見ても、請求項1の上位概念の特徴を有するフィルタ装置において有利である。
【0034】
従って本明細書は、スプレーしぶき粒子を含有する処理ガス流から塗料スプレーしぶきを分離するためのフィルタ装置であって、
フィルタ装置が、少なくとも一つのフィルタ・エレメントが配置されている、フィルタ装置の内部空間を画成するハウジングと、処理ガス流がその中を通ってフィルタ装置の内部空間内に流入する少なくとも一つの入口通路とを有するフィルタ装置において、
ハウジングが前壁区域を有しており、前壁区域は、前壁区域の下縁部がフィルタ装置の外側の空間に突出するように、鉛直線に対して傾斜させられている、フィルタ装置にも関する。
【0035】
ハウジングが液切りエッジを備えており、液切りエッジで、ハウジングの前壁区域に沿って流れる液体がハウジングから滴下すると、特に好都合である。
【0036】
このような液切りエッジは特に、ハウジングの前壁からフィルタ装置の外側の空間に張り出す例えば液切り薄板のような液切り要素に配置されてよい。
【0037】
本発明のフィルタ装置は、スプレーしぶき粒子を含有する処理ガス流から塗料スプレーしぶきを分離するための分離装置であって、分離装置が少なくとも一つの本発明によるフィルタ装置と、処理ガス流が塗装設備の塗布領域からフィルタ装置の入口通路へ流れる際に通る流動室とを有する分離装置での使用に特に適している。
【0038】
このような分離装置の保守を容易にするために、分離装置が保守係員によって通行可能な歩行路を有しており、歩行路は踏み面を有すると好適である。
【0039】
このような歩行路はさらに、フィルタ装置の入口通路もしくは複数のフィルタ装置の入口通路に処理ガス流を導くために、流動室内部の処理ガス流を偏向させることに役立つこともできる。
【0040】
作業安全性を高めるために、及び保守係員が足を踏み外して隣接するフィルタ装置内に入るのを阻止するために、歩行路がさらに、踏み面に対して隆起させられた少なくとも一つの隆起縁部を有すると有利である。
【0041】
隆起縁部は一方では踏み面と他方ではフィルタ装置との間に配置されて、係員が滑り、躓き、又は他の形で足を踏み外して隣接するフィルタ装置の漏斗状入口内に滑落し、その時に重傷を負うのを防止する。
【0042】
踏み面に対して隆起させられた隆起縁部を有する歩行路という特徴は、少なくとも一つのフィルタ装置における吸込通路の存在とは無関係に見ても有利である。
【0043】
従って本明細書は、スプレーしぶき粒子を含有する処理ガス流から塗料スプレーしぶきを分離するための分離装置であって、分離装置が少なくとも一つのフィルタ装置と、流動室とを有しており、フィルタ装置は、少なくとも一つのフィルタ・エレメントが配置されているフィルタ装置の内部空間を画成するハウジングと、処理ガス流がその中を通ってフィルタ装置の内部空間内に流入する少なくとも一つの入口通路とを有しており、前記流動室を通って処理ガス流が塗装設備の塗布領域からフィルタ装置の入口通路へ流れるようになっており、
該分離装置は歩行路を有しており、歩行路は踏み面と、踏み面に対して隆起させられた少なくとも一つの隆起縁部とを有する、分離装置にも関する。
【0044】
フィルタ装置のハウジングが液切りエッジを有しており、液切りエッジは、踏み面の鉛直上方、又は踏み面と隆起縁部との間に配置された、歩行路の縁部内面の鉛直上方に配置されていると特に有利である。これにより、塗装設備の塗布領域からフィルタ装置のハウジングに達することのある液体が、液切りエッジを介して、歩行路の踏み面又は縁部内面に達することになり、歩行路の隆起縁部によって、フィルタ装置内に流出するのを阻止することができる。
【0045】
歩行路が両側にそれぞれ一つの隆起縁部を有することにより、互いに向き合うこれらの隆起縁部によって画成された歩行路の領域がトラフを形成して、このトラフが、上方から歩行路に達する液体を捕集して保持すると特に好都合である。
【0046】
歩行路の踏み面は、ほぼ平らであると好適であり、また、ほぼ水平方向に方向付けられていると好適である。
【0047】
歩行路の隆起縁部が、入口通路を通って少なくとも一つのフィルタ装置内へ流れる処理ガスの流れのための剥離エッジを形成していると好適である。入口通路の上端部に剥離エッジを形成することにより、下側入口通路境界面がその全長にわたって補助材で覆われる。この面はこれにより塗料スプレーしぶきによる汚染から保護され、この面に他の保護材料を被覆することは必要でない。
【0048】
さらに、剥離エッジにおける流入空気によって、フィルタ装置の補助材収容容器からの補助材が流動室内に達してその場所から塗装設備の塗布領域内に達するのが阻止される。
【0049】
処理ガスが高い流速で入口通路を通って安定的に流れるのを可能にするために、歩行路の隆起縁部と、隣接するフィルタ装置の補助材収容容器との間に配置された歩行路の縁部外面が、フィルタ装置の入口通路を上方で区切るハウジングの前壁区域に対して傾斜する角度が10°未満であるとさらに好都合である。
【0050】
歩行路の縁部外面と、入口通路を上方で区切るハウジングの前壁区域とが、互いにほぼ平行に方向付けられていると、特に好都合である。
【0051】
歩行路の縁部外面及び/又は入口通路を上方で区切るハウジングの前壁区域は、水平線に対して最小で約50°、特に最小で約55°、例えば約60°の角度で傾斜させられていると好適である。
【0052】
さらに、補助材収容容器内に方向付けられた入口通路を通る安定な処理ガス流を生じさせるために、歩行路の隆起縁部とフィルタ装置の補助材収容容器との間に配置された歩行路の縁部外面が、入口通路を下方で区切る補助材収容容器の側壁に対して傾斜する角度が10°未満であると有利である。
【0053】
歩行路の縁部外面と、入口通路を下方で区切る補助材収容容器の側壁とが、互いにほぼ平行に方向付けられていると、特に好都合である。
【0054】
歩行路の縁部外面及び/又は入口通路を下方で区切る補助材収容容器の側壁は、水平線に対して最小で約50°、特に最小で約55°の角度を成して、例えば約60°の角度を成して傾斜させられていると好適である。
【0055】
本発明はさらに、スプレーしぶき粒子を含有する処理ガス流から塗料スプレーしぶきを分離する方法であって:
処理ガス流を、入口通路を通してフィルタ装置の内部空間内に導入する段階と、
フィルタ装置の内部空間内に配置された少なくとも一つのフィルタ・エレメントによって、処理ガス流から塗料スプレーしぶきを分離する段階と、を有する塗料スプレーしぶきを分離する方法に関する。
【0056】
本発明の根底を成す別の課題は、入口通路をとおる処理ガスの安定した流入が高流速においても得られるような方法を提供することである。
【0057】
このような課題は、本発明による請求項15の上位概念の特徴、即ち入口通路が吸込通路を介してフィルタ装置の内部空間と接続され、吸込通路は入口通路の内部空間側の端部の上流で入口通路内に開口するという特徴を有する方法によって解決される。
【0058】
この場合、入口通路内の処理ガス流の最大流速は、好適には最小で約7m/s、特に最小で約10m/sである。
【0059】
スプレーしぶき粒子を含有する処理ガス流から塗料スプレーしぶきを分離するための本発明による方法の別の好適な構成は、本発明によるフィルタ装置と関連して、もしくはスプレーしぶき粒子を含有する処理ガス流から塗料スプレーしぶきを分離するための本発明による分離装置と関連して前述した通りである。
【0060】
本発明によるフィルタ装置、及びスプレーしぶき粒子を含有する処理ガス流から塗料スプレーしぶきを分離するための本発明による分離装置は、スプレーしぶき粒子を含有する処理ガス流から塗料スプレーしぶきを分離するための本発明による方法での使用に特に適している。
【0061】
本発明によるフィルタ装置、本発明による分離装置、及び本発明による方法は、塗料スプレーしぶき、すなわち、スプレーしぶき粒子の形態で塗装設備の塗布領域を貫通する空気流によって取り込まれ連行される、被塗装ワークピースに付着しない塗料を、このような空気流から再び分離し、そして清浄化された空気流を再び塗布領域に供給するか、或いは設備の周囲内に放出することを可能にする。
【0062】
塗料スプレーしぶきはここでは、特に流体塗料スプレーしぶきであってよい。
【0063】
「流体塗料」という概念は、本明細書では「粉末塗料」という概念とは異なり、液状からペースト状(例えばPVC塗料の場合)までの、流動可能な稠度を有する塗料を意味する。「流体塗料」という概念は特に「液体塗料」及び「湿潤塗料」の概念を含む。
【0064】
一実施例を以下に説明して図示することによって、本発明のさらなる特徴及び利点が明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】塗装ブース、及びその下方に配置された、スプレーしぶき粒子を含有する処理ガス流から流体塗料スプレーしぶきを分離するための分離装置であって、分離装置が、塗装ブースの下方に配置された流動室と、流動室の両側にそれぞれ三つのフィルタ・モジュールとを有するものを概略的に示す斜視図である。
【図2】図1の設備を概略的に示す鉛直方向断面図であり、処理ガス及びフィルタ・モジュールから発生する排気のそれぞれの流動方向が矢印によって示されている。
【図3】個別のフィルタ・モジュールを概略的に示す斜視図である。
【図4】図3のフィルタ・モジュールを概略的に示す鉛直方向断面図である。
【図5】図3及び4のフィルタ・モジュールのハウジングの前壁を概略的に示す鉛直方向断面図である。
【図6】フィルタ・モジュール、及び流動室の隣接領域を概略的に示す鉛直方向断面図であり、処理ガス流のそれぞれの局所的な流動方向が矢印によって示されている。
【図7】フィルタ・モジュールの入口通路の領域内における処理ガス流のそれぞれの局所的な流動方向を示す、図6の領域Iの拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0066】
同じ又は機能的に同等なエレメントは全ての図面において同一の符号で示す。
【0067】
図1から図7に示された、全体を符号100で示された、車両ボディ102のスプレー塗装設備が搬送装置104を有する。この搬送装置104によって、車両ボディ102を搬送方向106に沿って、全体を符号110で示された塗装ブースの塗布領域108内をとおして移動させることができる。
【0068】
塗布領域108は塗装ブース110の内側の空間である。塗装ブースは、塗装ブース110の長手方向に一致する搬送方向106に対して垂直に延びる水平な横方向112において、搬送装置104の両側で、それぞれ一つのブース壁114によって境界を付けられている。
【0069】
搬送装置104の両側の、塗装ブース110内にはスプレー塗装装置116が例えば塗装ロボットの形態で配置されている。
【0070】
(一部だけ示されている)空気循環によって、塗布領域108をほぼ鉛直に上方から下方に向かって貫流する空気流が発生する。このことは図2において矢印118によって示されている通りである。
【0071】
このような空気流は塗布領域108内で、スプレーしぶき粒子の形態の塗料スプレーしぶきを取り込む。「粒子」という概念はここでは、固形粒子も液状粒子、特に液滴も含む。
【0072】
流体塗料を使用する場合には、流体スプレーしぶきは塗料液滴から成る。スプレーしぶき粒子のほとんどは、約1μmから約100μmの範囲の最大寸法を有する。
【0073】
塗布領域108から出たスプレーしぶき粒子を含有する排気流を、以下では処理ガス流120と呼ぶ。処理ガス流の流動方向は図2,6及び7では、符号120が付けられた矢印によって示されている。
【0074】
処理ガス流は塗装ブース110を去って下方に向かい、そして処理ガス流から流体塗料スプレーしぶきを分離するための、全体を符号126で示された分離装置内に達する。分離装置は塗布領域108の下方に配置されている。
【0075】
分離装置126は、例えばほぼ直方体の流動室128を有する。この流動室128は、搬送方向106では塗装ブース110の全長を超えて延びていて、横方向112では、鉛直の側壁130によって画成されている。これらの側壁130は塗装ブース110のブース側壁114とほぼ整列しているので、流動室128は、塗装ブース110とほぼ同じ水平方向断面積を有しており、そして塗装ブース110の基底面の鉛直の投影の内部に完全に配置されている。
【0076】
図1から判るように、流動室128の両側にはそれぞれ複数の、例えば三つの、前述の説明ではフィルタ装置とも呼ばれたフィルタ・モジュール132が配置されている。これらのフィルタ・モジュール132は、流体塗料スプレーしぶきを分離するための分離装置126の長手方向134に延びる二つのモジュール列136を形成している。この場合、分離装置126の長手方向134は搬送方向106と一致している。
【0077】
図1及び図2から判るように、両モジュール列136の間には、作業員によって通行可能な歩行路146が設けられている。
【0078】
歩行路146は、ほぼ水平方向の踏み面150を有する中央の踏み領域148と、踏み領域148の両側に配置された、長手方向134に延びる二つの縁部領域152とを有する。
【0079】
各縁部領域152は、踏み面150に向けられた縁部内面154を有する。この縁部内面154は、水平線に対して例えば約20°から約60°の角度を成して傾斜させられており、また踏み面150の外縁部156から上方に向かって縁部上稜158まで上昇しているので、歩行路146の隆起縁部159が形成されている。
【0080】
さらに、各縁部領域152は縁部外面160を有する。縁部外面160は踏み面150とは反対側に位置しており、縁部上稜158から下方に向かって降下している。縁部外面160は好ましくは水平線に対して、縁部内面154よりも大きい角度、例えば約40°から約80°の角度を成して傾斜させられている。
【0081】
歩行路146の踏み面150が、踏み面150の両側の縁部上稜158に対して沈み込まれていることによって、歩行路146は、より多量の液体を受容することができるトラフ162を形成する。このような液体は、設備100の運転中に塗布領域108から、処理ガス流120から流体塗料スプレーしぶきを分離するための分離装置126内に達し得る。このことは特に、例えば溶剤を含むバケットが転倒したときに塗装ブース110内の液体がこぼれることによって生じ得る。
【0082】
さらに、踏み面150に対して隆起させられた隆起縁部159を有するトラフ162によって、作業安全性が高められる。それというのも、保守係員が滑り、躓き、又は他の形で足を踏み外して歩行路146から、境を接するフィルタ・モジュール132の一つに滑落し、重傷を負うのを防止することが阻止されるからである。
【0083】
フィルタ・モジュール132のそれぞれは、予め組み立てられたユニットとして形成されている。このユニットは、塗装設備100の組み付け場所から離れた場所で製造され、そしてユニットとして塗装設備の組み付け場所に搬送される。組み付け場所で、予め組み立てられたユニットは、所定の作業位置に配置され、一つ以上の隣接する、予め組み立てられたユニットと、さらに塗布領域108の支持構造とも結合される。
【0084】
一つのフィルタ・モジュール132の構造を、図3及び図4を参照しながら以下に説明する。
【0085】
モジュールは、二つの鉛直の後側支持部材166と、二つの鉛直の前側支持部材168とから成る支持構造164を有する。前側支持部材168は、水平方向横桁170を介して、後側支持部材166のそれぞれ一方に結合されている。
【0086】
さらに、前側支持部材168の上端部は、水平方向横桁172によって互いに結合されている。
【0087】
また、後側支持部材166の上端部は、水平方向横桁174によって互いに結合されている。
【0088】
下側の水平方向横桁170は、長手方向134に対して平行に延びる横桁176によってやはり互いに結合されている。
【0089】
フィルタ・モジュール132はさらにハウジング178を有する。このハウジング178は、ハウジング178の内部に配置された、フィルタ・モジュール132の内部空間180を、ハウジング178の外側に位置する流動室128の領域182から分離する。
【0090】
フィルタ・モジュール132の内部空間180又はフィルタ・エレメント収容室内には、複数のフィルタ・エレメント184が配置されている。これらのフィルタ・エレメント184は、支持構造164に保持された一つの共通の基体186から水平方向に張り出している。
【0091】
フィルタ・エレメント184は例えば、その外面がポリテトラフルオロエチレン(PTFE)から成る膜を備えた焼結ポリエチレンから成る板から形成することができる。
【0092】
PTFEから成る被覆体は、フィルタ・エレメント184のフィルタ等級を高め(すなわちその透過率を低減する)ために役立ち、そしてさらに、処理ガス流から分離された流体塗料スプレーしぶきがフィルタ・エレメント184の表面に永久的に付着するのを阻止するために役立つ。
【0093】
フィルタ・エレメント184の被覆体はさらに、導電性成分、例えばグラファイトを含有することにより、フィルタ・エレメント184からの静電電荷の放電と、フィルタ・エレメント184の静電防止特性とを保証する。
【0094】
フィルタ・エレメント184の基礎材料も、そのPTFE被覆体も多孔性を有するので、処理ガスはそれらの孔を通ってそれぞれのフィルタ・エレメント184の内部空間内に達することができる。
【0095】
フィルタ表面の目詰まりを阻止するために、フィルタ表面はさらに、処理ガス流中に放出された補助材から成るバリア層を備えている。好適には粒子状のこのような補助材は通常、「プリコート」材料とも呼ばれる。
【0096】
バリア層は、分離装置126の運転中、処理ガス流120中に放出された補助材がフィルタ表面に堆積することによって形成され、そしてフィルタ表面が、付着した流体塗料スプレーしぶきによって目詰まりを起こすのを阻止する。
【0097】
処理ガス流120からの補助材は、フィルタ・モジュール132のハウジング178の内側にも沈積し、この場所でもやはり流体塗料スプレーしぶきの付着を阻止する。
【0098】
補助材としては基本的には、流体塗料スプレーしぶきの液体分を取り込み、そしてスプレーしぶき粒子に堆積し、その結果これらの粒子から粘着性を取り去ることのできるものであればどんな手段を使用してもよい。
【0099】
特に、補助材としては、例えば石灰、岩粉、ケイ酸アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、粉末塗料、又はこれに類するものが考えられる。
【0100】
この代わりに、又はこれに加えて、スプレーしぶきを取り込み及び/又はスプレーしぶきと結合するための補助材として、中空構造を有して、外側寸法と比較して内部の表面積が大きい粒子、例えばゼオライト、又はその他の中空体、例えばポリマー、ガラス、又はケイ酸アルミニウム及び/又は天然又は合成繊維から成る球体を使用することもできる。
【0101】
この代わりに、又はこれに加えて、スプレーしぶきを取り込み及び/又はスプレーしぶきと結合するための補助材として、スプレーしぶきと化学的に反応する粒子、例えばアミン基、エポキシ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、又はイソシアネート基から成る化学反応性粒子、オクチルシランで後処理された酸化アルミニウムから成る化学反応性粒子、又は固形又は液状のモノポリマー又はオリゴポリマー、シラン、シラノール又はシロキサンを使用することもできる。
【0102】
補助材として、生産工程から生じた廃棄物、例えば粉体塗装から生じた廃棄物、又は木材加工から生じた木材屑、又は金属加工から生じた金属屑を使用することもできる。
【0103】
補助材は、平均直径が例えば約10μmから約100μmの範囲の多数の補助材粒子から成っていると好適である。
【0104】
図3から図5から判るように、ハウジング178は、ほぼ水平な天井壁188と、この天井壁188の前側エッジ190から下方に向かって延びる前壁192とを有する。
【0105】
ハウジング178の前壁192は、上側前壁区域194を有しており、この上側前壁区域194は、天井壁188の前側エッジ190から、前壁192の前側エッジ196まで延びている。
【0106】
上側前壁区域194は、水平線と、90°超から約110°の、例えば約100°の鈍角αを成しているので、上側前壁区域194の前側エッジ196は、フィルタ・エレメント184及びその基体186から離れる方向で外方に向かって、フィルタ・モジュール132の外側空間197内の流動室128の領域182内に突出しており、従って、ハウジング178のこのような構造によって、フィルタ・エレメント184を収容するために利用できる、フィルタ・モジュール132の内部空間180が拡大される。
【0107】
前側エッジ196の領域からは、液切り要素198が、フィルタ・モジュール132の外側空間197内にさらに大きく突出している。
【0108】
液切り要素198は例えば液切り薄板として形成されてよい。
【0109】
液切り要素198は、上側前壁区域194の外面と鈍角βを成しており、液切りエッジ200で終わっている。
【0110】
液切りエッジ200は踏み面150の鉛直上方に配置されているか、又は図4に示されているように、歩行路146の縁部領域152の縁部内面154の鉛直上方に配置されて、液滴エッジ200から滴下する液体が歩行路146のトラフ162内に捕集されるようになっていると好適である。
【0111】
液切りエッジ200を備えた液切り要素198によって、斜めに設けられた上側前壁区域194に沿って流れる液体が、ハウジング178の外側輪郭に沿って流れる代わりに、ハウジング178から滴下してトラフ162内に流れ込み、そしてこの液体が空気流によって、フィルタ・モジュール132の内部空間180の中に連行されることが保証される。
【0112】
さらに、ハウジング178の前壁192は下側前壁区域202を有する。下側前壁区域202は前側エッジ196から下方に向かって下側前壁縁部204まで延びている。
【0113】
下側前壁区域202は、水平線に対して、例えば約40°から約80°まで、特に約60°の鋭角γを成して傾斜させられていて、しかも、下側前壁縁部204が前側エッジ196よりも、フィルタ・エレメント184及びその基体186の近くに位置するように傾斜させられている。
【0114】
下側前壁区域202の長さlは、例えば約20cmから約40cm、好適には約30cmである。
【0115】
下側前壁区域202の下端部は、吸込通路208の前側吸込通路境界壁206を形成しており、吸込通路208は他方において後側吸込通路境界壁210によって境界を定められている。後側吸込通路境界壁210は、前側吸込通路境界壁206から例えば約5mmから約50mmの間隔を置いて配置されて、前側吸込通路境界壁206に対してほぼ平行に方向付けられている。
【0116】
後側吸込通路境界壁210は、通路境界要素212の上側区域を形成し、そして屈曲線214で通路境界要素212の下側区域と境を接する。通路境界要素212の下側区域は、水平線に対して角度δを成して傾斜させられている。角度δは、後側吸込通路境界壁210及び前側吸込通路境界壁206が水平線に対して傾斜させられているその角度γよりも小さい。
【0117】
後側吸込通路境界壁210の、上縁部218から屈曲線214までの延長は好適には約2cmから約4cm、特に約3cmである。このような延長は、吸込通路208の長手方向又は貫通流方向の長さに相当する。
【0118】
通路境界要素212の屈曲線214から下縁部220までの、通路境界要素212の下側区域216の延長は好適には約10cmから約30cm、特に約20cmである。
【0119】
下側前壁区域202及び通路境界要素212は、貫流開口なしの連続した薄板として好適に形成されている。
【0120】
吸込通路208は、分離装置126の長手方向134においてフィルタ・モジュール132のほぼ全長にわたって延びている。
【0121】
吸込通路208は、フィルタ・モジュール132のハウジング178の内部空間180と、下側前壁区域202及び通路境界要素212によって上方で境界を定められた、フィルタ・モジュール132の入口通路222との間に流体連通部を形成する。
【0122】
この場合、吸込通路208は、入口通路222の、内部空間側の端部の上流で入口通路222内に開口している。
【0123】
補助材が塗装設備100の塗布領域108内に達するおそれなしに、補助材を処理ガス流に添加可能にするために、各フィルタ・モジュール132は、支持構造164に保持された補助材収容容器224を備えている。補助材収容容器224は例えば、逆角錐台形の漏斗状形状を有する(図3及び図4参照)。
【0124】
補助材収容容器224の4つの台形側壁226は鉛直線に対して、好適には約40°から約80°、特に約60°の角度を成して傾斜させられている。
【0125】
補助材収容容器224の高さは例えば約1.1 mである。
【0126】
側壁226の上縁部は、補助材収容容器224のアクセス開口228を取り囲んでいる。このアクセス開口228を通って、スプレーしぶきを含有する処理ガス流120が補助材収容容器224内に入りそしてこの容器から再び逃げることができる。
【0127】
フィルタ・モジュール132内に入った処理ガス流を意図的に補助材収容容器224の内部空間230内に入るように導き、そして流動室128からフィルタ・エレメント184へ向かって処理ガス流が直接に入るのを阻止するために、各フィルタ・モジュール132は入口通路222を備えている。入口通路222は、フィルタ・モジュール132のハウジング178の下側前壁区域202と、歩行路146の縁部外面160との間に形成された入口232から、通路境界要素212の下縁部220と、歩行路146の縁部外面160の下縁部234との間に形成された出口236まで延びている。
【0128】
出口236は入口通路222の内部空間側の端部237を形成している。
【0129】
出口236の上流側で、吸込通路208は上方から入口通路222内へ開口している。
【0130】
入口通路222は、上方では、ハウジング178の下側前壁区域202と通路境界要素212とによって境界を定められており、そして下方では、縁部外面160と、下方に向かってこの縁部外面160に続いて設けられた補助材収容容器224の側壁226とによって境界を定められている。
【0131】
入口通路222は、フィルタ・モジュール132のほぼ全長にわたって長手方向134に延びている。
【0132】
歩行路146の縁部外面160は、下側入口通路境界面239を形成している。
【0133】
歩行路146の縁部外面160と、このような縁部外面160に下方に向かって続いて設けられた、補助材収容容器224の側壁226と、ハウジング178の下側前壁区域202とは、水平線に対して、好適には約50°から約70°、特に約55°から約65°の範囲、例えば約60°のほぼ同じ傾斜を有する。これにより、入口通路222は、狭められた流入区域を有し、このことは、流動室128からフィルタ・モジュール内132への流速を増大させる。
【0134】
これにより、このような流速は、入口通路222の最も狭い個所で8m/sを上回り、好適には少なくとも10m/sである。
【0135】
処理ガス流のフィルタ・モジュール132内への流入速度がこのように高いことによって、補助材収容容器224を通ってフィルタ・モジュール132の内部空間180内へ入る流れは安定化される。
【0136】
さらに、流速の増大により、補助材収容容器224からより多くの補助材が渦状に巻き上げられ、処理ガス流によって取り込まれ、ひいてはフィルタ・エレメント184に搬送される。
【0137】
特に下側前壁区域202の内側に位置する、ハウジング178の内部空間180からの補助材が、ハウジング178の内部空間180から吸込通路208を通って入口通路222内へ吸い込まれる。入口通路222内へ吸い込まれた補助材は、入口通路222の境界を定める通路境界要素212の外面に、及び/又は下側入口通路境界面239に達する。これにより、それらの表面は、塗料スプレーしぶきによる汚染から効果的に保護される。
【0138】
通路境界要素212の下側区域216が水平線に対して、後側吸込通路境界壁210及びハウジング178の下側前壁区域202よりも小さい角度で傾斜させられていることにより、入口通路222の貫流断面積が拡大されて、入口通路222を通る処理ガス流の速度が低下される。
【0139】
入口通路222のこのような構造形によって、塗料塊(Lackfladen)の形成を阻止することができる。そうではなく、塗料スプレーしぶきは専ら微細な塗料液滴の形態で補助材収容容器224内に吸い込まれる。
【0140】
通路境界要素212はさらに偏向エレメントとして作用する。偏向エレメントは、フィルタ・エレメント184から清浄化によって除去された、補助材と補助材に結合されたスプレーしぶき粒子とを含有する材料が入口通路222内に直接に達することを阻止する。
【0141】
フィルタ・エレメント184から通路境界要素212の上側に落下した材料はむしろ、通路境界要素212の傾斜した姿勢によって補助材収容容器224内に導かれる。
【0142】
フィルタ・モジュール132の運転中、通路境界要素212の下面にも上面にも補助材から成る被覆体が提供されるので、通路境界要素212のこのような面は容易に清浄化することができ、またスプレーしぶきが通路境界要素212に直接に付着することはない。
【0143】
歩行路146の縁部上稜158は、処理ガス流のための剥離エッジを形成する。これにより、補助材収容容器224から上方に向かって剥離エッジを超えて流動室128内に戻る処理ガスはほとんどなくなる。
【0144】
さらにこれにより、フィルタ・モジュール132のための流入斜面を形成する縁部外面160はその全長にわたって補助材で被覆される。これにより、この表面は、塗料スプレーしぶきによる汚染から保護され、そして他の保護材料をこの表面上に被着することは必要ない。
【0145】
同時に、剥離エッジにおける流入空気によって、補助材収容容器224からの補助材が流動室128内に達し、そしてその場所から塗装ブース110の塗布領域108内に達するのが阻止される。
【0146】
入口通路222の狭い個所(概ね吸込通路208が入口通路222内に開口する個所)における処理ガス流の流速が速いことにより、補助材が、閉じた箱を形成するフィルタ・モジュール132の内部から流動室128内へ達し、そしてその場所から塗布領域108内へ達することが効果的に阻止される。従っていかなる任意の時点においても、補助材収容容器224内の補助材を渦状に巻き上げ、そしてフィルタ・エレメント184を清浄化することができ、しかもこの場合、フィルタ・モジュール132への処理ガスの供給を中断せずに済み、又は塗布領域108内のスプレー塗装装置116の運転すら中断せずに済む。
【0147】
さらに、処理ガス流が補助材収容容器224内に向けられて入口通路222から流出することにより、補助材収容容器224の内部空間230内で処理ガス流が偏向されることが保証される。これにより、補助材収容容器224内に位置する貯えから渦状に巻き上げることによって発生する十分な量の補助材が、処理ガス流によって連行される。さらに、(図示しない)渦状巻き上げ装置によって補助材収容容器224の内部空間230内で渦状に巻き上げられた補助材は、処理ガス流120によって補助材収容容器224からフィルタ・エレメント184へ運ばれる。
【0148】
流動室128から入口通路222を通ってフィルタ・モジュール132の内部空間180内へ入る処理ガス流が、図6及び図7において、流動シミュレーションの結果として示されている。ここから明らかなように、フィルタ・モジュール132の内部空間には所定の流動経路(Stroemungswalze)が形成されており、この流動経路を通って、処理ガスはまず補助材収容容器224内に案内され、次いでそこから、付加的な補助材を添加された状態で、フィルタ・エレメント184に案内される。
【0149】
処理ガス流120によって連行された補助材と、処理ガス流120によって連行された流体塗料スプレーしぶきとはフィルタ・エレメント184のフィルタ表面に堆積され、そして濾過済の処理ガスが排ガス流として、多孔質フィルタの表面を通ってフィルタ・エレメント184の内部空間内に達する。これらの内部空間は、フィルタ・エレメント184がそこから張り出している基体186内部の中空室に接続されている。
【0150】
この中空室から、清浄化済の排気流はそれぞれ一つ以上の排気管238内に達する。排気管はそれぞれのフィルタ・モジュール132のフィルタ・エレメント184の基体186から、流動室128の外側に配置されて流動室128の長手方向134に対して平行に延びる排気通路240に通じている(図1及び図4参照)。
【0151】
流動室128の両側に配置された排気通路240から、流体塗料スプレーしぶきから清浄化された排気は(図示していない)排気ブロワに達し、その場所から清浄化済排気は(図示していない)冷却レジスタ及び(図示していない)供給導管を介して、塗布領域108の上方に配置された(図示していない)空気室、いわゆるプレナムに供給される。
【0152】
この空気室から、清浄化済排気はフィルタ天井を介して塗布領域108に戻り、これにより、塗装ブース110を通る空気循環が閉じられる。
【0153】
フィルタ・エレメント184による処理ガス流120からの流体塗料スプレーしぶきの分離は乾式に、すなわち清浄化液による洗浄なしに行われるので、空気循環において案内される空気は流体塗料スプレーしぶきの分離時に湿潤されることはなく、従って空気循環において案内される空気から湿分を除去するための装置はいかなるものも必要でない。
【0154】
さらに、流体塗料スプレーしぶきを洗浄・清浄化液から分離するための装置も必要でない。
【0155】
フィルタ・エレメント184は、流体塗料スプレーしぶき及び補助材の付着量が規定の規模に達したら、所定の時間間隔で圧縮空気パルスによって清浄化される。
【0156】
必要な圧縮空気パルスは、各フィルタ・モジュール132のフィルタ・エレメント184の基体186に配置されたパルス発生ユニットによって生成される。発生した圧縮空気パルスは、フィルタ・エレメント184の内部空間から多孔質フィルタ表面を通ってフィルタ・モジュール132の内部空間180内に達する。フィルタ表面に形成された、補助材と、補助材に堆積された流体塗料スプレーしぶきとから成るバリア層がフィルタ表面から剥ぎ取られるので、フィルタ表面はその清浄化された元の状態に戻される。
【0157】
清浄化により取り除かれた、補助材と流体塗料スプレーしぶきとから成る混合物は下方に向かって補助材収容容器224内に落下し、この場所から混合物は処理ガス流中に達し、このような処理ガス流によって再びフィルタ・エレメント184に運ばれる。
【0158】
補助材収容容器224内の混合物の塗料スプレーしぶき分が上限閾値に達すると、補助材と流体塗料スプレーしぶきとから成る混合物は補助材収容容器224から吸い取られ、そして新鮮な補助材と交換される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スプレーしぶき粒子を含有する処理ガス流(120)から塗料スプレーしぶきを分離するためのフィルタ装置であって、
少なくとも一つのフィルタ・エレメント(184)が配置されている、該フィルタ装置(132)の内部空間(180)を画成するハウジング(178)と、
少なくとも一つの入口通路(222)であって、該少なくとも一つの入口通路(222)を通って前記処理ガス流(120)が該フィルタ装置(132)の前記内部空間(180)内に流入する少なくとも一つの入口通路(222)と、を有するフィルタ装置において、
該フィルタ装置(132)が吸込通路(208)を有しており、前記吸込通路(208)は、前記入口通路(222)の、前記内部空間側の端部(237)の上流で前記入口通路(222)内に開口して、前記入口通路(222)を該フィルタ装置(132)の前記内部空間(180)に接続することを特徴とする、フィルタ装置。
【請求項2】
前記吸込通路(208)が二つの吸込通路境界壁(206,210)によって画成されて、前記境界壁の間にギャップが形成されていることを特徴とする、請求項1に記載のフィルタ装置。
【請求項3】
前記二つの吸込通路境界壁(206,210)は、互いの相対的な傾斜角度が10°未満であるように方向付けられていることを特徴とする、請求項2に記載のフィルタ装置。
【請求項4】
前記吸込通路(208)が前側吸込通路境界壁(206)によって境界を定められ、前記前側吸込通路境界壁(206)は、前記前側吸込通路境界壁(206)の下側入口通路境界面(239)に対する傾斜角度が10°未満であることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか一項に記載のフィルタ装置。
【請求項5】
前記吸込通路(208)が、通路境界要素(212)の一区域を形成する吸込通路境界壁(210)によって境界を定められ、前記通路境界要素(212)は、前記入口通路(222)の境界を形成するさらなる区域(216)を有することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか一項に記載のフィルタ装置。
【請求項6】
前記通路境界要素(212)の前記さらなる区域(216)は、前記通路境界要素(212)の、前記吸込通路境界壁(210)を形成する区域よりも小さい角度で、水平線に対して傾斜させられていることを特徴とする、請求項5に記載のフィルタ装置。
【請求項7】
該フィルタ装置は、補助材を収容するための補助材収容容器(224)を有しており、前記補助材は、前記処理ガス流が前記少なくとも一つのフィルタ・エレメント(184)を通過する前に前記処理ガス流(120)に添加されるようになっており、前記補助材収容容器(224)は、鉛直線に対して及び水平線に対して傾斜させられて前記入口通路(222)の下側境界を形成する側壁(226)を有することを特徴とする、請求項1から6までのいずれか一項に記載のフィルタ装置。
【請求項8】
前記ハウジング(178)が前壁区域(194)を有しており、前記前壁区域(194)は、前記前壁区域(194)の下縁部が該フィルタ装置(132)の外側の空間に突出するように、鉛直線に対して傾斜させられていることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか一項に記載のフィルタ装置。
【請求項9】
前記ハウジング(178)が液切りエッジ(200)を備えており、前記液切りエッジで、前記ハウジング(178)の前壁区域(194)に沿って流れる液体が前記ハウジング(178)から滴下することを特徴とする、請求項1から8までのいずれか一項に記載のフィルタ装置。
【請求項10】
スプレーしぶき粒子を含有する処理ガス流(120)から塗料スプレーしぶきを分離するための分離装置であって、請求項1から9までのいずれか一項に記載の少なくとも一つのフィルタ装置(132)と、前記処理ガス流(120)が塗装設備(100)の塗布領域(108)から該フィルタ装置(132)の入口通路(222)へ流れる際に通る流動室(128)とを有する、分離装置。
【請求項11】
該装置(126)は歩行路(146)を有しており、前記歩行路(146)は踏み面(150)と、前記踏み面(150)に対して隆起させられた少なくとも一つの隆起縁部(159)とを有することを特徴とする、請求項10に記載の分離装置。
【請求項12】
前記フィルタ装置(132)のハウジング(178)が液切りエッジ(200)を有しており、前記液切りエッジ(200)は、踏み面(150)の鉛直上方、又は前記踏み面(150)と前記隆起縁部(159)との間に配置された、歩行路(146)の縁部内面(154)の鉛直上方に配置されていることを特徴とする、請求項11に記載の分離装置。
【請求項13】
前記歩行路(146)の前記隆起縁部(159)が、前記入口通路(222)を通る処理ガスの流れのための剥離エッジを形成していることを特徴とする、請求項11又は12に記載の分離装置。
【請求項14】
前記隆起縁部(159)と前記フィルタ装置(132)の補助材収容容器(224)との間に配置された、前記歩行路(146)の縁部外面(160)が、前記入口通路(222)を上方で区切る前記ハウジング(178)の前壁区域(202)に対して傾斜する角度が10°未満であることを特徴とする、請求項11から13までのいずれか一項に記載の分離装置。
【請求項15】
スプレーしぶき粒子を含有する処理ガス流(120)から塗料スプレーしぶきを分離する方法であって:
前記処理ガス流(120)を、入口通路(222)を通してフィルタ装置(132)の内部空間(180)内に導入する段階と、
前記フィルタ装置(132)の前記内部空間(180)内に配置された少なくとも一つのフィルタ・エレメント(184)によって、前記処理ガス流(120)から塗料スプレーしぶきを分離する段階と、を含む方法において、
前記入口通路(222)が、吸込通路(208)を介して前記フィルタ装置(132)の前記内部空間(180)と接続され、前記吸込通路(208)は、前記入口通路(222)の、前記内部空間側の端部(237)の上流で前記入口通路(222)内に開口していることを特徴とする、塗料スプレーしぶきを分離する方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公表番号】特表2013−514879(P2013−514879A)
【公表日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−545215(P2012−545215)
【出願日】平成22年12月13日(2010.12.13)
【国際出願番号】PCT/EP2010/069483
【国際公開番号】WO2011/076600
【国際公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(504389784)デュール システムズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (54)
【Fターム(参考)】