説明

塗料ミスト乾式回収方法及び塗料ミスト乾式回収装置

【課題】塗装ブースの保守性を向上させる塗料ミスト乾式回収方法及び塗料ミスト乾式回収装置を提供する。
【解決手段】粒状体や粉体を加振し流動化して所定方向へ搬送する振動コンベア6,16に粉体を供給し、塗料ミストを振動コンベア上の流動粉体に接触させて流動粉体に塗料ミストを捕捉させ、塗料ミストに粉体を付着させて粉体よりも大粒径の塗料スラッジとし、振動コンベアの一部を形成する篩18の上を塗料スラッジと塗料ミストに付着していない余剰粉体の混合物を通過させて余剰粉体を振動コンベアから除去し、振動コンベア上に残留した塗料スラッジを回収する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は塗料ミスト乾式回収方法及び塗料ミスト乾式回収装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
塗料ミストを連行する空気流をドライフィルターに流入させることを特徴とする塗料ミスト乾式回収方法が特許文献1の図3に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−168989号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の図3の塗料ミスト乾式回収方法には、ドライフィルターを頻繁に交換する必要があり、塗装ブースの保守性が悪化するという問題がある。
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、特許文献1の図3の塗料ミスト乾式回収方法に比べて塗装ブースの保守性を向上させる塗料ミスト乾式回収方法及び塗料ミスト乾式回収装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明においては、粒状体や粉体を加振し流動化して所定方向へ搬送する振動コンベアに粉体を供給し、塗料ミストを振動コンベア上の流動粉体に接触させて流動粉体に塗料ミストを捕捉させ、塗料ミストに粉体を付着させて粉体よりも大粒径の塗料スラッジとし、振動コンベアの一部を形成する篩の上を塗料スラッジと塗料ミストに付着していない余剰粉体の混合物を通過させて余剰粉体を振動コンベアから除去し、振動コンベア上に残留した塗料スラッジを回収することを特徴とする塗料ミスト乾式回収方法を提供する。
振動コンベアに粉体を供給することにより、粉体を流動化させて所定方向へ搬送することができる。塗料ミストを振動コンベア上の流動粉体に接触させて流動粉体に塗料ミストを捕捉させ、塗料ミストに粉体を付着させて粉体よりも大粒径の塗料スラッジとし、塗料スラッジと塗料ミストに付着していない余剰粉体の混合物を前記所定方向へ搬送することができる。振動コンベアの一部を形成する篩の上を塗料スラッジと余剰粉体の混合物を通過させて余剰粉体を振動コンベアから除去することができる。振動コンベア上に残留した塗料スラッジを回収することにより、塗料ミストの乾式回収方法が実現される。
塗装ブースの排気通路に配設されたドライフィルターには、流動粉体に塗料ミストを捕捉させて塗料ミストを除去した後の空気流を流入させれば良い。この結果、ドライフィルターの交換頻度が低下し、塗装ブースの保守性が向上する。
【0006】
本発明の好ましい態様においては、塗料ミストを連行する空気流をバッフル板に衝突させて塗料ミストをバッフル板に付着させ、バッフル板表面を流下してバッフル板下端から滴下する塗料ミストを、振動コンベア上の流動粉体に接触させる。
本発明の好ましい態様においては、バッフル板の、塗料ミストを連行する空気流が衝突する表面に、塗料剥離性を有する樹脂シートが取り付けられている。
本発明の好ましい態様においては、塗料ミストを連行する空気流を、振動コンベア上の流動粉体に直接接触させる。
塗料ミストを流動粉体に接触させる方法としては、バッフル板に塗料ミストを連行する空気流を衝突させ、バッフル板に付着した塗料ミストをバッフル板の下端から流動粉体上に滴下させても良く、或いは塗料ミストを連行する空気流を直接流動粉体に接触させても良い。
バッフル板表面に取り付けた塗料剥離性を有する樹脂シートに、塗料ミストを連行する空気流を衝突させると、樹脂シート上で硬化した塗料ミストを、樹脂シートを伸縮させ或いは変形させることにより、容易に剥離させて振動コンベア上に落下させることができる。
本発明の好ましい態様においては、篩を介して振動コンベアから除去した粉体を振動コンベアに再供給する。
篩を介して振動コンベアから除去した粉体を振動コンベアに再供給することにより、粉体の消費量を低減できる。
本発明の好ましい態様においては、振動コンベアから回収した塗料スラッジに有機物分解微生物を作用させて塗料成分を生分解する。
回収した塗料スラッジの塗料成分を生分解させることにより、産業廃棄物の発生を抑制できる。
本発明の好ましい態様においては、生分解性の粉体を使用する。
生分解性の粉体を使用すれば、回収した塗料スラッジの塗料成分を生分解させる際に、塗料成分と共に粉体も生分解されるので生分解後排出物の量が低減する。また塗料スラッジを埋め立て処理する場合でも、塗料スラッジ全量が時間経過と共に生分解されるので、環境保全に好適である。
本発明の好ましい態様においては、粉体として、油かすを使用する。
油かすは、適度な湿りけがあって振動コンベア上で流動化しても煙霧状に拡散しないので、塗料ミストを捕捉するための粉体として好適である。
【0007】
本発明においては、粒状体や粉体を加振し流動化して所定方向へ搬送する振動コンベアと、振動コンベアに粉体を供給する粉体供給装置と、塗料ミストを振動コンベア上の流動粉体へ向けて案内し塗料ミストを流動粉体に接触させる塗料ミスト案内装置と、振動コンベアの一部を形成し、塗料ミストに粉体が付着した塗料ミストよりも大粒径の塗料スラッジと塗料ミストに付着していない余剰粉体の混合物から余剰粉体を除去する篩と、篩を介して振動コンベアから除去された余剰粉体を収容する粉体収容装置と、余剰粉体除去後に振動コンベアから回収された塗料スラッジを収容する塗料スラッジ収容装置とを備えることを特徴とする塗料ミスト乾式回収装置を提供する。
本発明に係る塗料ミスト乾式回収装置を塗装ブースに適用すれば、塗装ブースの保守性が向上する。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、特許文献1の塗料ミスト乾式回収方法に比べて塗装ブースの保守性を向上させる塗料ミスト乾式回収方法及び塗料ミスト乾式回収装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1実施例に係る塗料ミスト乾式回収方法を実施するための塗料ミスト乾式回収装置の全体図である。
【図2】本発明の第2実施例に係る塗料ミスト乾式回収方法を実施するための塗料ミスト乾式回収装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の第1実施例に係る塗料ミスト乾式回収方法及び塗料ミスト乾式回収装置を説明する。
図1に示すように、図示しない塗装ブースの水平に延在する排気通路1内に、複数のバッフル板2が、排気通路1の延在方向に複数層に亙って、且つ隣接する層のバッフル板が千鳥配置になるように配設されて、バッフル板群2aを形成している。バッフル板2の、排気通路1内の空気流に関して上流側の面に、シリコンシートやポリテトラフルオロエチレン(PTFE)シート等の塗料剥離性を有する樹脂シート3が取り付けられている。樹脂シート3はバッフル板2の下端よりも下方まで延在している。排気通路1の底壁には、各バッフル板2毎に当該バッフル板2の下端に対峙してスリット状の開口1aが形成されており、樹脂シート3の下部は開口1aを通って排気通路底壁の下方まで延在している。
排気通路1内の空気流に関してバッフル板群2aの下流側に、ドライフィルター4が配設されている。排気通路1内の空気流に関してドライフィルター4の下流側に、排気ファン5が配設されている。
排気通路1の下方に、且つバッフル板群2aの下方に、第1振動コンベア6が配設されている。第1振動コンベア6の上流端に偏心荷重発生用モータ7が取り付けられている。第1振動コンベア6の上流部の上方に、粉体吐出口8、9、10が配設されている。粉体吐出口8は、粉体搬送管11を介して図示しない粉体供給装置に接続し、粉体吐出口9は、粉体搬送管12と粉体輸送装置13とを介して後述する粉体回収タンク19に接続し、粉体吐出口10は粉体搬送管14と粉体輸送装置15とを介して後述する塗料スラッジ生分解装置22に接続している。
第1振動コンベア6の下流側に、第2振動コンベア16が配設されている。第2振動コンベア16の上流端に偏心荷重発生用モータ17が取り付けられている。第2振動コンベア16の中流域に、第2振動コンベア16の一部を形成する篩18が配設されている。篩18の下方に粉体収容タンク19が配設されている。第2振動コンベア16の下流端の下方に塗料スラッジ収容タンク20が配設されている。粉体収容タンク19は、前述のごとく、粉体輸送装置13と粉体搬送管12とを介して粉体吐出口9に接続している。塗料スラッジ収容タンク20は、塗料スラッジ搬送コンベア21を介して塗料スラッジ生分解装置22に接続している。塗料スラッジ生分解装置22は、前述のごとく、粉体輸送装置15と粉体搬送管14とを介して粉体吐出口10に接続している。
【0011】
上述のように構成された、塗料ミスト乾式回収装置の作動を説明する。
偏心荷重発生用モータ7、17が作動し、第1振動コンベア6と第2振動コンベア16とが作動する。第1振動コンベア6と第2振動コンベア16とは、振動することにより、載置された粒状体や粉体を所定方向へ搬送する機能を有している。
図示しない粉体供給装置から粉体搬送管11を介して粉体吐出口8に粉体が供給され、粉体吐出口8から吐出した粉体が、第1振動コンベア6の上流部に供給される。本実施例では油かすが粉体として使用される。第1振動コンベア6の振動により、粉体が流動化され、第1振動コンベア6の下流端へ向けて搬送される。
図1で白抜矢印で示すように、塗料ミストを連行した空気流が、図示しない塗装ブースから排気通路1内に流入し、バッフル板群2aを通過する。排気通路1の延在方向に複数層に亙って、且つ隣接する層のバッフル板2が千鳥配置になるように構成されたバッフル板群2aを空気流が通過する際に、バッフル板2の、前記空気流に関して上流側の面に取り付けられた樹脂シート3に、前記空気流が衝突し、前記空気流に連行された塗料ミストが樹脂シート3表面に付着する。各層のバッフル板2に衝突を繰り返しながらバッフル板群2aを通過することにより、塗料ミストを連行した空気流から塗料ミストが除去される。バッフル板群2aを通過して塗料ミストが除去された空気流は、図1で二重白抜矢印で示すように、排気はファン5を介して、外部環境中に排出される。
【0012】
樹脂シート3表面に付着した塗料ミストは、樹脂シート3表面に沿って流下し、樹脂シート3の下端から滴下する。樹脂シート3の下端から滴下した塗料ミストは、第1振動コンベア6上に落下し、第1振動コンベア6上の流動粉体に接触して流動粉体に捕捉される。流動粉体に捕捉された塗料ミストは、表面に粉体が付着して粉体よりも大粒径の粒状の塗料スラッジとなる。
粒状の塗料スラッジと、塗料ミストに付着していない余剰粉体の混合物が、流動化しつつ、第1振動コンベア6の下流端へ向けて搬送され、前記下流端から第2振動コンベア16の上流部へ落下する。流動化した前記混合物は、第2振動コンベア16の一部を形成する篩18上を通過する。前記混合物が篩18上を通過する際に、余剰粉体が篩18の細孔を通って落下し、粉体収容タンク19に収容される。第1振動コンベア6と第2振動コンベア16の上流部とを粉体と共に流動化されて搬送された塗料スラッジは、粉体の付着や塗料スラッジ同士の合体により大粒径化されており、且つ表面が粉体で覆われて粘着性が抑制されているので、篩18上を通過でき且つ篩18に付着せず、篩18の作動を阻害しない。第2振動コンベア16に残留した粒状の塗料スラッジが、第2振動コンベア16の下流端から落下し、塗料スラッジ収容タンク20に収容される。この結果、塗料ミストが塗料スラッジとして回収される。
粉体収容タンク19内の粉体は、粉体輸送装置13と粉体搬送管12とを介して粉体吐出口9へ搬送され、粉体吐出口9から吐出して、第1振動コンベア6の上流部に供給され、循環使用される。
塗料スラッジ収容タンク20内の塗料スラッジは、塗料スラッジ搬送コンベア21を介して塗料スラッジ生分解装置22へ搬送され、塗料スラッジ生分解装置22内で、有機物分解微生物の作用下で、塗料成分が生分解される。また塗料成分に付着した粉体である油かすも生分解される。粉体状の生分解生成物が、粉体輸送装置15と粉体搬送管14とを介して粉体吐出口10へ搬送され、粉体吐出口10から吐出して、第1振動コンベア6の上流部に供給される。
【0013】
上記説明から分かるように、本実施例に係る塗料ミスト乾式回収方法においては、塗装ブースの排気通路1に配設されたドライフィルター4には、流動粉体に塗料ミストを捕捉させて塗料ミストを除去した後の空気流が流入するのでドライフィルター4の交換頻度が低下し、塗装ブースの保守性が向上する。
バッフル板2に、より具体的にはバッフル板2に取り付けた樹脂シート3に、塗料ミストを連行する空気流を衝突させ、樹脂シート3に付着した塗料ミストを樹脂シート3の下端から流動粉体上に滴下させることにより、流動粉体に塗料ミストを接触させ、流動粉体に塗料ミストを捕捉させることができる。
樹脂シート3上で硬化した塗料ミストは、樹脂シート3を伸縮させ或いは変形させることにより、容易に剥離させて、振動コンベア6上の流動粉体上に落下させることができる。
篩18を介して第2振動コンベア16から除去した粉体を第1振動コンベア6に再供給することにより、粉体の消費量を低減できる。
回収した塗料スラッジの塗料成分を生分解させることにより、産業廃棄物の発生を抑制できる。
油かすは、適度な湿りけがあって振動コンベア上で流動化しても煙霧状に拡散しないので、塗料ミストを捕捉するための粉体として好適である。また生分解性物質である油かすは、塗料スラッジ生分解装置22内で塗料成分と共に生分解されるので、塗料スラッジ生分解装置22の排出物の量が低減する。
回収した塗料スラッジを生分解処理するのに代えて、図1にトラックの図形として示すように、そのまま産業廃棄物処理しても良い。従来一般的であった湿式回収法で回収された塗料スラッジは水分や種々の化学物質を含んでおり重量も大きかったが、本実施例の乾式回収法で回収された塗料スラッジは略全量が塗料そのものであり、従来に比べて減量化されている。従って産業廃棄物処理費用が低減する。
生分解生成物を粉体として第1振動コンベア6に循環供給するのに代えて、図1に花の図形として示すように、家庭菜園や花壇用肥料等として利用しても良い。
塗料スラッジ生分解装置22を塗料スラッジ収容装置20と一体化しても良い。
油かすに代えて、他の粉体を使用しても良い。粉体としては適度に湿りけがあり、加振して流動化しても煙霧状に拡散しないものが望ましい。
粉体として油かす、適度に湿りけを加えたおが屑等の生分解性の粉体を使用するのは好適である。生分解性の粉体を使用すれば、回収した塗料スラッジの塗料成分を生分解させる際に、塗料成分と共に粉体も生分解されるので生分解装置の排出物の量が低減する。また塗料スラッジを埋め立て処理する場合でも、塗料スラッジ全量が時間経過と共に生分解されるので、環境保全に好適である。
塗料スラッジ搬送コンベア21を廃止し、回収された塗料スラッジの搬送を人手で行っても良い。
【0014】
本発明の第2実施例に係る塗料ミスト乾式回収方法及び塗料ミスト乾式回収装置を説明する。
図2に示すように、塗装ブース31はグレーチング床32によって上方の塗装空間31aと下方の排気空間31bとに区画されている。塗装空間31a内に下降空気流を発生させる図示しない給気ファンが、塗装空間31aの天井裏に配設されている。排気空間31bの底壁31cは、中央部へ向けて下方傾斜し、中央に排気口31dが形成されている。底壁31c上に、排気口31dへ向けて傾斜した一対の第1振動コンベア33が配設されている。
塗装ブース31の底壁31cの下方に、排気通路34が配設されている。排気通路34は、塗装ブース31の一方の側壁側へ延び、当該側壁の外側を当該側壁に沿って上方へ延びている。排気通路34内に、且つ塗装ブース31の前記一方の側壁に近接した排気通路34の部位内に、複数のバッフル板35が、排気通路34の延在方向に複数層に亙って、且つ隣接する層のバッフル板35が千鳥配置になるように、配設されて、バッフル板群35aを形成している。排気通路34内の空気流に関してバッフル板群35aの下流側に、ドライフィルター36が配設されている。排気通路34内の空気流に関してドライフィルター36の下流側に、排気ファン37が配設されている。
排気通路34内に、第2振動コンベア38が配設されている。第2振動コンベア38は、バッフル板群35aの下方位置から、塗装ブース31の前記一方の側壁に対峙する他方の側壁の下方位置まで延在している。第2振動コンベア38のバッフル板群35aから離隔する側の端部の近傍に、第2振動コンベア38の一部を形成する篩39が、配設されている。篩39の下方に、粉体収容タンク40が配設され、第2振動コンベア38のバッフル板群35aから離隔する側の端部の下方に、塗料スラッジ収容タンク41が配設されている。
【0015】
上述のように構成された、塗料ミスト乾式回収装置の作動を説明する。
第1振動コンベア33と第2振動コンベア37とが作動する。第1振動コンベア33は、振動することにより、載置された粒状体や粉体を排気口31dに近接する側の下流端部へ向けて搬送する機能を有している。
図示しない粉体供給装置から図示しない粉体搬送管と図示しない粉体吐出口とを介して、第1振動コンベア33の上流部に粉体が供給される。本実施例でも、油かすが粉体として使用される。第1振動コンベア33の振動により、粉体が流動化され、第1振動コンベア33の下流端へ向けて搬送される。
図2で白抜矢印で示すように、塗装空間31a内で発生した塗料ミストを連行した下降空気流が、グレーチング床32を通って排気空間31b内に流入する。下降空気流は、第1振動コンベア33上で流動化した粉体に直接接触し、流動粉体に捕捉される。流動粉体に捕捉された塗料ミストは、表面に粉体が付着して粉体よりも大粒径の粒状の塗料スラッジとなる。
粒状の塗料スラッジと、塗料ミストに付着していない余剰粉体の混合物が、流動化しつつ、第1振動コンベア33の下流端へ向けて搬送され、前記下流端から落下し、排気口31dを通って排気通路34内に落下する。排気空間31bに流入した塗料ミストを連行した下降空気流は、第1振動コンベア33の下流端から排気口31dを通って排気通路34内に落下する粉体とも直接接触し、粉体に捕捉されて粒状の塗料スラッジになる。塗料スラッジと粉体の混合物の一部は、第2振動コンベア38上に落下する。前記混合物の残余部は排気通路34内の空気流に乗って下流側へ流れ、バッフル板群35aを通過する。バッフル板群35aを前記混合物が通過する際に、前記混合物はバッフル板35に衝突し、第2振動コンベア38上に落下する。
粒状の塗料スラッジと、塗料ミストに付着していない余剰粉体の混合物が除去された空気流は、ドライフィルター36を通過し、排気ファン37を介して外部環境中に排出される。
第2振動コンベア38上に落下した前記混合物は流動化され、第2振動コンベア38の下流端へ向けて搬送される。前記混合物は、第2振動コンベア38の一部を形成する篩39上を通過する。前記混合物が篩39上を通過する際に、余剰粉体が篩39の細孔を通って落下し、粉体収容タンク40に収容される。第1振動コンベア33と第2振動コンベア38の上流部と中流部とを粉体と共に流動化されて搬送された塗料スラッジは、粉体の付着や塗料スラッジ同士の合体により大粒径化されており、且つ表面が粉体で覆われて粘着性が抑制されているので、篩39上を通過でき且つ篩39に付着せず、篩39の作動を阻害しない。第2振動コンベア38に残留した粒状の塗料スラッジが、第2振動コンベア38の下流端から落下し、塗料スラッジ収容タンク41に収容される。この結果、塗料ミストが塗料スラッジとして回収される。
【0016】
上記説明から分かるように、本実施例に係る塗料ミスト乾式回収方法においては、塗装ブースの排気通路34に配設されたドライフィルター36には、流動粉体に塗料ミストを捕捉させて塗料ミストを除去した後の空気流が流入するのでドライフィルター36の交換頻度が低下し、塗装ブースの保守性が向上する。
第1実施例と同様に、バッフル板35に塗料剥離性を有する樹脂シートを取り付けても良く、粉体収容タンク40内の粉体を第1振動コンベア33に再度供給しても良く、塗料スラッジ収容タンク41内の塗料スラッジを、塗料スラッジ生分解装置へ搬送して、塗料成分及び油かすを生分解しても良く、粉体状の生分解生成物を第1振動コンベア33に循環供給しても良い。
【0017】
上記実施例において、振動コンベアの構造は特定のものに限定されない。市販の振動コンベアを使用しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明は、塗料ミストの乾式回収に広く利用可能である。
【符号の説明】
【0019】
1、34 排気通路
2、35 バッフル板
2a、35a バッフル板群
3 樹脂シート
4、36 ドライフィルター
5、37 排気ファン
6、33 第1振動コンベア
7、17 偏心荷重発生用モータ
8、9、10 粉体吐出口
11、12、14 粉体搬送管
16、38 第2振動コンベア
18、39 篩
19、40 粉体収容タンク
20、41 塗料スラッジ収容タンク
21 塗料スラッジ搬送コンベア
22 塗料スラッジ生分解装置
31 塗装ブース
31a 塗装空間
31b 排気空間
31c 底壁
31d 排気口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒状体や粉体を加振し流動化して所定方向へ搬送する振動コンベアに粉体を供給し、塗料ミストを振動コンベア上の流動粉体に接触させて流動粉体に塗料ミストを捕捉させ、塗料ミストに粉体を付着させて粉体よりも大粒径の塗料スラッジとし、振動コンベアの一部を形成する篩の上を塗料スラッジと塗料ミストに付着していない余剰粉体の混合物を通過させて余剰粉体を振動コンベアから除去し、振動コンベア上に残留した塗料スラッジを回収することを特徴とする塗料ミスト乾式回収方法。
【請求項2】
塗料ミストを連行する空気流をバッフル板に衝突させて塗料ミストをバッフル板に付着させ、バッフル板表面を流下してバッフル板下端から滴下する塗料ミストを、振動コンベア上の流動粉体に接触させることを特徴とする請求項1に記載の塗料ミスト乾式回収方法。
【請求項3】
バッフル板の、塗料ミストを連行する空気流が衝突する表面に、塗料剥離性を有する樹脂シートが取り付けられていることを特徴とする請求項2に記載の塗料ミスト乾式回収方法。
【請求項4】
塗料ミストを連行する空気流を、振動コンベア上の流動粉体に直接接触させることを特徴とする請求項1に記載の塗料ミスト乾式回収方法。
【請求項5】
篩を介して振動コンベアから除去した粉体を振動コンベアに再供給することを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の塗料ミスト乾式回収方法。
【請求項6】
振動コンベアから回収した塗料スラッジに有機物分解微生物を作用させて塗料成分を生分解することを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の塗料ミスト乾式回収方法。
【請求項7】
生分解性の粉体を使用することを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載の塗料ミスト乾式回収方法。
【請求項8】
粉体として、油かすを使用することを特徴とする請求項7に記載の塗料ミスト乾式回収方法。
【請求項9】
粒状体や粉体を加振し流動化して所定方向へ搬送する振動コンベアと、振動コンベアに粉体を供給する粉体供給装置と、塗料ミストを振動コンベア上の流動粉体へ向けて案内し塗料ミストを流動粉体に接触させる塗料ミスト案内装置と、振動コンベアの一部を形成し、塗料ミストに粉体が付着した粉体よりも大粒径の塗料スラッジと塗料ミストに付着していない余剰粉体の混合物から余剰粉体を除去する篩と、篩を介して振動コンベアから除去された余剰粉体を収容する粉体収容装置と、余剰粉体除去後に振動コンベアから回収された塗料スラッジを収容する塗料スラッジ収容装置とを備えることを特徴とする塗料ミスト乾式回収装置。
【請求項10】
塗料ミスト案内装置は、振動コンベアの上方に配設され、塗料ミストを連行する空気流が衝突するバッフル板であることを特徴とする請求項9に記載の塗料ミスト乾式回収装置。
【請求項11】
バッフル板の空気流衝突面に塗料剥離性を備える樹脂シートが取り付けられていることを特徴とする請求項10に記載の塗料ミスト乾式回収装置。
【請求項12】
塗料ミスト案内装置は、振動コンベア上の流動粉体に直接接触する塗料ミスト連行空気流を生成する空気流生成装置であることを特徴とする請求項9に記載の塗料ミスト乾式回収装置。
【請求項13】
粉体収容装置内の粉体を振動コンベアに再供給する粉体再供給装置を備えることを特徴とする請求項9乃至12の何れか1項に記載の塗料ミスト乾式回収装置。
【請求項14】
塗料スラッジに有機物分解微生物を作用させて塗料成分を生分解する、塗料スラッジ収容装置と一体又は別体の塗料スラッジ生分解装置を備えることを特徴とする請求項9乃至13の何れか1項に記載の塗料ミスト乾式回収装置。
【請求項15】
生分解性の粉体を使用することを特徴とする請求項9乃至14の何れか1項に記載の塗料ミスト乾式回収装置。
【請求項16】
粉体として、油かすを使用することを特徴とする請求項15に記載の塗料ミスト乾式回収装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−94706(P2013−94706A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−238062(P2011−238062)
【出願日】平成23年10月29日(2011.10.29)
【出願人】(391022658)パーカーエンジニアリング株式会社 (21)
【Fターム(参考)】