説明

塗料中の光活性TiO2

本発明は、(A)少なくとも1つの結合剤を、成分(A)として、及び(B)0.1〜1μmの直径を有する少なくとも1つの第一物質からなるコアと、0.1〜10nmの平均層厚を有する少なくとも1つの第二物質からなり、前記コアを少なくとも部分的に包囲する少なくとも1つのシェルとを含む少なくとも1つの光触媒活性粒子を、成分(B)として、含む塗料に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの結合剤及び少なくとも1つの光触媒活性粒子を含む塗料、この塗料の製造方法及びこの塗料の使用に関する。
【0002】
光触媒活性粒子を含有する塗料は、技術水準から既に知られている。
【0003】
特開平(JP-A)11-181339号公報には、光触媒活性二酸化チタン粒子を含む、金属、ポリマー、コンクリート用の親水性塗料が開示されている。特開平(JP-A)11-181339号公報に記載の二酸化チタン粒子は、1〜100nmの粒径を有し、SnO2からなる粒子を含有し、かつシリカ及び/又はシリコーンでコーティングされている。シリカ及び/又はシリコーンからなるこのコーティングの層厚は、開示されていない。前記塗料は、この材料でコーティングされている面の汚染を回避する。さらに、こうして処理された表面は、雨がこの表面にかかったときに自浄性を有する。故に、特開平(JP-A)11-181339号公報に記載の塗料は、建築物、窓枠及び他の物品の表面のコーティングに適している。
【0004】
特開(JP)2006-181490号公報には、材料をコーティングするためのコーティング方法が開示されている。そのためには、二酸化チタン、二酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化セリウム、酸化アンチモン、スズドープ酸化インジウム、アンチモンドープ酸化スズからなる光触媒は、非水系溶剤と共に保護すべき表面へ施与される。好ましい一実施態様において、二酸化チタンからなる光触媒は、前記光触媒を処理すべき面に固定するために、セラミック、例えばアパタイト、シリカ、活性炭、活性アルミナ又は多孔質ガラスでコーティングされている。この刊行物による方法は、少なくとも2層の施与の必要性により煩雑である。
【0005】
特開(JP)2006-233343号公報には、予備調節された粒径及びコーティングを有する光触媒粒子を含有する、テキスタイルのコーティング用の液状光触媒組成物が開示されている。これらの光触媒粒子のサイズは0.5〜10μmである。好ましい一実施態様において、前記光触媒粒子のコアは二酸化チタンからなり、かつシェルはシリカからなる。前記光触媒活性粒子のシェルの厚さもしくは多孔度は開示されていない。
【0006】
特開平(JP-A)第11-228873号広報には、光触媒特性を有し、かつ多孔質シリカでコーティングされた二酸化チタン粒子を含む塗料組成物が開示されている。さらに、前記組成物は、顔料として二酸化チタンを、及び結合剤として有機樹脂を、含有する。特開平(JP-A)第11-228873号広報には、光触媒活性粒子がどのような粒径を有するか、又はシリカ層がどのような層厚を有するかは開示されていない。
【0007】
国際公開(WO-A1)第2005/100459号には、結合剤と、100μm又はそれ未満のサイズ及び/又は表面粗さを有する少なくとも1つの粒子を有する充填剤と、並びに触媒作用剤とを有する塗料が開示されており、その際に結合剤は少なくとも部分的に光触媒作用により分解され、かつミクロ構造化された自浄性表面が生じる。光触媒作用剤として、国際公開(WO)第2005/100459号によれば、チタン、亜鉛、鉄、マンガン、モリブデン及び/又はタングステンの酸化物が使用され、これらはC、N、Sから及び/又は遷移金属酸化物及び/又は遷移金属ハロゲン化物から選択される少なくとも1つの添加剤を含有する。国際公開(WO-A1)第2005/100459号には、前記光触媒活性粒子がどのような粒度を有するかは開示されていない。
【0008】
技術水準に記載された塗料は、光触媒活性粒子を含有するが、これらの粒子は、使用する際に塗料上に存在している不純物が光触媒作用により分解され、このことは望ましいが、それだけではなく、塗料中に存在している結合剤も、同様に光触媒作用により分解されるという欠点を有する。このことは望ましくなく、かつ技術水準に記載された有機マトリックスの光触媒作用による分解は、生成された表面の光活性を低下させる。技術水準による塗料の光活性並びに耐久性もしくは抵抗性は、これにより不十分であるに過ぎない。
【0009】
本発明の課題は、塗料上に存在している汚染物がこの塗料により分解され、かつ除去されるか、又は超親水性表面が生成され、かつ同時にこの塗料が光に対して及び風化の影響に対して高い抵抗性を有することにより特徴付けられる塗料を提供することである。
【0010】
これらの課題は、
(A)少なくとも1つの結合剤を、成分(A)として、及び
(B)0.1nm〜1μmの直径を有する少なくとも1つの第一物質からなるコアと、0.1〜10nmの平均層厚を有する少なくとも1つの第二物質からなり、前記コアを少なくとも部分的に包囲する少なくとも1つのシェルとを含む少なくとも1つの光触媒活性粒子を、成分(B)として、
含む塗料によって解決される。
【0011】
本発明の範囲内で、塗料は、多様な材料へ施与され、かつ相応する固体コーティングを形成するのに適している物質の混合物を意味する。通常の塗料は、前記の成分に加えて、別の成分、例えば溶剤、界面活性剤、染料、充填剤、顔料分散剤、消泡剤及びポリマーを含有することができる。塗料でコーティングされることができる材料は、屋外用途又は屋内用途向けのものであってよく、金属、無機材料又は有機材料からなっていてよい。
【0012】
本発明による塗料の2つの必須で存在する成分及び任意に存在する成分は、以下により詳細に説明される。
【0013】
成分(A):
成分(A)として、本発明による塗料は、少なくとも1つの結合剤を含有する。好ましい一実施態様において、成分(A)として使用される結合剤は、非高分子架橋系、アクリラート、カプロラクタム、ビニルカプロラクタム、N−ビニルホルムアミド、アクリルエステル、スチレン/アクリルエステル及び酢酸ビニル類、ポリウレタン、エポキシ樹脂、アルキド樹脂及びそれらの混合物をベースとする水及び/又は有機溶剤ベースのプラスチック分散液からなる群から選択されている。成分(A)として適している非高分子架橋系は、尿素及び置換尿素、メラミン、ジメチロール尿素又はN,N′−ビス(ヒドロキシメチル)尿素の多官能性メチロール誘導体、1分子あたり6個までのメチロール基からなるメラミンのメチロール誘導体、好ましくはメチロール基が部分的に又は完全にメトキシメチル基へ変換されているもの、1,3−ビス(ヒドロキシメチル)テトラヒドロ−2−(1H)−ピリミジノン、トリアゾン類、例えばヒドロキシエチルトリアゾン、5−ヒドロキシ−1,3−ビス(ヒドロキシメチル)−ヘキサヒドロ−s−トリアジン−2−オン、ウロン類、例えばテトラヒドロ−3,5−ビス(ヒドロキシメチル)−4H−1,3,5−オキサジアジン−4−オン、カルバマート、好ましくはメチルカルバマート及びメトキシエチルカルバマートのメチロール誘導体、ジヒドロキシエチレン尿素、ジメチロールジヒドロキシエチレン尿素(DMDHEU)、ジメチルジヒドロキシエチレン尿素、4,5−ジヒドロキシ−1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ポリカルボキシ酸、例えばクエン酸及びブタンテトラカルボキシ酸のメチロール誘導体である。本発明の意味で成分(A)として適しているポリアクリラートは、例えば、少なくとも1つの(メタ)アクリル酸−C1〜C10−アルキルエステル、例えばアクリル酸メチルエステル、アクリル酸エチルエステル、アクリル酸−n−ブチルエステル、メタクリル酸−n−ブチルエステル、アクリル酸−2−エチルヘキシルエステルと、少なくとも1つの別のコモノマー、例えば別の(メタ)アクリル酸−C1〜C10−アルキルエステル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、グリシジル(メタ)アクリラート又はビニル芳香族化合物、例えばスチレンとの共重合により得ることができる。本発明の意味で成分(A)として適している好ましくはアニオン性のポリウレタンは、例えば、1つ又はそれ以上の芳香族のジイソシアナート又は好ましくは脂肪族又は脂環式のジイソシアナートと、1つ又はそれ以上のポリエステルジオール及び好ましくは1つ又はそれ以上のヒドロキシカルボン酸、例えばヒドロキシ酢酸、又は好ましくはジヒドロキシカルボン酸、例えば1,1−ジメチロールプロピオン酸、1,1−ジメチロール酪酸又は1,1−ジメチロールエタン酸との反応により得ることができる。成分(A)として特に適しているエチレン−(メタ)アクリル酸コポリマーは、例えば、エチレン、(メタ)アクリル酸及び場合により少なくとも1つの別のコモノマー、例えば(メタ)アクリル酸−C1〜C10−アルキルエステル、無水マレイン酸、イソブテン又は酢酸ビニルの共重合により、好ましくは190〜350℃の範囲内の温度及び1500〜3500bar、好ましくは2000〜2500barの範囲内の圧力での共重合により、得ることができる。成分(A)として特に適しているエチレン−(メタ)アクリル酸コポリマーは、例えば、90質量%までのエチレンが重合導入されて含有することができ、かつ120℃で測定される60mm2/s〜10,000mm2/s、好ましくは100mm2/s〜5,000mm2/sの範囲内の溶融粘度を有することができる。成分(A)として特に適しているエチレン−(メタ)アクリル酸コポリマーは、例えば、90質量%までのエチレンが重合導入されて含有することができ、かつ、EN ISO 1133により160℃及び325gの負荷で測定される1〜50g/10min、好ましくは5〜20g/10min、特に好ましくは7〜15g/10minの範囲内のメルトマスフローレイト(MFR)を有することができる。成分(A)として特に適している、少なくとも1つのビニル芳香族化合物と少なくとも1つの共役ジエン及び場合により別のコモノマー、例えばスチレン−ブタジエン結合剤とのコポリマーは、少なくとも1つのエチレン系不飽和のカルボン酸又はジカルボン酸又は適した誘導体、例えば相応する無水物を重合導入されて含有する。特に適したビニル芳香族化合物は、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン及び特にスチレンである。特に適した共役ジエンは、イソプレン、クロロプレン及び特に1,3−ブタジエンである。特に適したエチレン系不飽和のカルボン酸又はジカルボン酸又はそれらの適した誘導体として、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、無水マレイン酸もしくはイタコン酸無水物を例示的に挙げることができる。さらに、カリウム水ガラス、特にケイ酸塩塗料用のものが、及び屋外塗料に、屋内塗料に、工業用途、工業用装置及び特殊コーティング用の塗料に通常のかつ当業者に知られた別の結合剤が、使用されることができる。
【0014】
成分(A)は一般的に5〜99.9質量%の量で存在する。本発明による塗料が、屋外用途に使用される場合には、成分(A)は5〜99.9質量%、特に好ましくは5〜98.5質量%の量で好ましくは存在する。本発明による塗料が、屋内用途に使用される場合には、成分(A)は、5〜99.5質量%、特に好ましくは5〜98質量%の量で好ましくは存在する。
【0015】
成分(B):
成分(B)として、本発明による塗料は、0.1nm〜1μmの直径を有する少なくとも1つの第一物質からなるコアと、0.1〜10nmの厚さを有する少なくとも1つの第二物質からなり、前記コアを少なくとも部分的に包囲する少なくとも1つのシェルとを含む少なくとも1つの光触媒活性粒子を含む。
【0016】
成分(B)は、本発明による塗料中に一般的に0.1〜10質量%の量で存在する。本発明による塗料が、屋外用途に使用される場合には、成分(B)は、0.1〜8質量%、特に好ましくは0.5〜5質量%の量で好ましくは存在する。本発明による塗料が、屋内用途に使用される場合には、成分(B)は、0.5〜10質量%、特に好ましくは2〜8質量%の量で好ましくは存在する。
【0017】
好ましい一実施態様において、光触媒活性粒子のコアは、少なくとも1つの金属酸化物又は半金属酸化物を含有し、かつこのナノ粒子の少なくとも1つのシェルは、少なくとも1つの別の金属酸化物又は半金属酸化物を含有する。
【0018】
成分(B)として存在している少なくとも1つの光触媒活性粒子のコア中に存在する酸化物の、適した金属又は半金属は、一般的に、元素の周期表のI〜XV族の元素(IUPACによる)、ランタノイド、アクチノイド及びそれらの混合物からなる群から、特に好ましくはV、Ti、Zr、Ce、Mo、Bi、Zn、Mn、Si、Ba、Au、Ag、Pd、Pt、Ru、Rh、La及びそれらの混合物からなる群から選択されている。
【0019】
成分(B)のコア中に存在する特に好ましい金属酸化物又は半金属酸化物は、本質的にアナターゼ変態で存在する、すなわち好ましくは50%超、特に好ましくは60〜65%がアナターゼ変態で存在するTiO2である。
【0020】
成分(B)中に存在している少なくとも1つのシェル中に、好ましい一実施態様において、元素の周期表のI〜XV族の元素(IUPACによる)、ランタノイド、アクチノイド及びそれらの混合物、特に好ましくはV、Ti、Zr、Ce、Mo、Bi、Zn、Mn、Si、Ba、Au、Ag、Pd、Pt、Ru、Rh、La及びそれらの混合物からなる群から選択されるものを含有する金属酸化物又は半金属酸化物が存在する。成分(B)の少なくとも1つのシェル中に存在する、極めて特に好ましい金属酸化物又は半金属酸化物は、SiO2、ZnO、CeO2、TiO2、SnO又はそれらの混合物である。
【0021】
本発明による塗料の好ましい一実施態様において、成分(B)は、TiO2のコア及びSiO2のシェルを有する。
【0022】
成分(B)として本発明による塗料中に存在している光触媒活性粒子は、好ましくは狭い粒度分布を有する。本発明の範囲内で、狭い粒度分布は、粒度の好ましくは≧70%、特に好ましくは≧80%、極めて特に好ましくは≧90%が、平均粒度から多くとも20nm、好ましくは多くとも15nm、特に好ましくは多くとも10nm逸脱する範囲内であることを意味する。
【0023】
コア−シェルナノ粒子は、これらが非多孔質コアと、多孔質コーティングとを有することにより特徴付けられる。前記コーティングの意図的に調節可能な多孔度及び厚さにより、コアの触媒活性を、本発明による塗料への相応する要求に意図的に調節することが可能である。SiO2層の多孔度は、XPS(化学分析用のX線光電子分光法−ESCA電子分光法)により測定される。本発明による塗料に付着する不純物が触媒作用により分解されるように、コア−シェル粒子の活性を調節することが可能であるが、しかしながら本発明による塗料中に存在している結合剤は、本質的に触媒作用により分解されない。
【0024】
流動性有害物質、例えば塗料上に付着する不純物に対する光活性は、標準光触媒(Degussa P25)の光活性の60%超、特に好ましくは70%超、極めて特に好ましくは80%超である。固定されたマトリックス、すなわち成分(A)として本発明による塗料中に存在している少なくとも1つの結合剤に対する光活性は、標準光触媒(Degussa P25)の光活性の好ましくは50%未満、特に好ましくは40%未満、及び極めて特に好ましくは30%未満である。
【0025】
好ましい一実施態様において、本発明による塗料中で成分(B)は、不純物に対して活性であり、かつマトリックス材料に対して活性ではない。
【0026】
成分(B)として使用される光触媒活性粒子のコアは、0.1nm〜1μmの直径を有し、かつ前記粒子のシェルは、0.1〜10nmの平均層厚を有する。前記コアは、その場合に少なくとも0.1nmの直径を有する。好ましい一実施態様において、前記コアの直径は、1〜200nm、特に好ましくは5〜50nmである。さらに好ましい一実施態様において、前記シェルの平均層厚は、0.1〜5nm、特に好ましくは1〜3nmである。
【0027】
本発明により成分(B)として使用される光触媒活性粒子のシェルの多孔度は、シェル中の金属、例えばSiの割合[原子パーセント]対コア中の金属、例えばTiの割合[原子パーセント]の比により表現されることができ、かつXPS(化学的分析用のX線光電子分光法−ESCA電子分光法)によりそれぞれ測定して、好ましくは2〜80、特に好ましくは5〜60、殊に好ましくは8〜40である。
【0028】
本発明による塗料中で成分(B)として好ましくは使用される光触媒活性粒子は、当業者に知られた全ての方法によって製造されることができる。例示的に、本発明により使用される光触媒活性粒子の適した製造方法として、湿式化学的ゾル−ゲル法及び火炎合成法を挙げることができる。これらの方法は当業者に知られている。
【0029】
成分(C):
本発明による塗料は、成分(C)として場合により顔料を含有する。
【0030】
本発明による塗料中で、当業者に知られ、かつこの用途に適した全ての顔料が使用されることができる。好ましい一実施態様において、本発明による塗料は、成分(C)として、二酸化チタン、硫酸バリウム、酸化亜鉛、有色顔料、例えば酸化鉄、カーボンブラック、亜鉛黄、亜鉛緑、群青、発光顔料又は蛍光顔料、又はアゾ顔料、イソインドリノン顔料及びイソインドリン顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、ペリノン顔料、ペリレン顔料、アントラキノン顔料、ジケトピロロピロール顔料、チオインジゴ顔料、ジオキサジン顔料、トリフェニルメタン顔料、キノフタロン顔料及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの顔料を含有する。
【0031】
適した顔料は、例えば、ルチル変態のTiO2として得ることができる。
【0032】
成分(C)は、5〜30質量%、好ましくは10〜20質量%の量で好ましくは存在する。
【0033】
本発明による塗料は、不揮発性成分を一般的に30〜75質量%及び好ましくは40〜65質量%含有する。これは、水ではない全ての塗料成分、しかし少なくとも結合剤(成分(A))の全量、場合により顔料、場合により充填剤(成分(E))及びポリマー助剤であると理解されるべきである。
【0034】
成分(D):
本発明による塗料は、成分(D)として場合により溶剤を含有することができる。
【0035】
成分(D)として、本発明による塗料中で、当業者に当該用途に知られ、かつ適した全ての溶剤及び溶剤混合物が使用されることができる。
【0036】
好ましい一実施態様において、成分(D)として存在している溶剤は、本質的には水である。本質的には、この場合に、前記溶剤の好ましくは少なくとも75質量%、特に好ましくは少なくとも90質量%が水であることを意味する。
【0037】
塗膜形成を、特に低度で加工の際に改善するために、この塗料配合物に揮発性の有機溶剤及び塗膜形成助剤が添加されることができる。有機溶剤及び塗膜形成助剤の例は、揮発性炭化水素、例えばベンジン留分、ホワイト油、液体パラフィン、グリコール、例えばブチレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール及びプロピレングリコール、グリコールエーテル、例えばグリコールブチルエーテル、ジエチレングリコール−モノブチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールプロピルエーテル、ジプロピレングリコール−n−ブチルエーテル、トリプロピレングリコール−n−ブチルエーテル、2,3−フェノキシプロパノール、グリコールエステル及びグリコールエーテルエステル、例えばブチルグリコールアセタート、ジエチレングリコール−モノ−n−ブチルエーテルアセタート、2,2,4−トリメチルペンタン−1,3−ジオールモノイソブチラート及び匹敵しうるもの、並びに有機可塑剤(250℃を上回る沸点を有する有機液体)、例えばジブチルフタラート、ジオクチルフタラート、トリブトキシオクチルホスファート、2,2,4−トリメチルペンタン−1,3−ジオールジイソブチラート及びポリプロピレングリコールアルキルフェニルエーテル及び− 製造に制約されて − また重合されていないモノマー、いわゆる残留モノマーである。使用目的に応じて、塗膜形成助剤の種類及び量は選択されることができる。
【0038】
成分(D)は、存在している場合には、0.1〜75質量%の量で存在する。
【0039】
成分(E)として、本発明による塗料中に、場合により少なくとも1つの充填剤が存在する。少なくとも1つのこの充填剤は一般的に本発明による塗料中で、良好な加工性を保証するために、好ましくは液体の形でコーティングすべき材料へ施与されるべき塗料の粘度を高めるという課題を有する。
【0040】
好ましい一実施態様において、少なくとも1つの充填剤は、無機物、例えばアルカリ金属及びアルカリ土類金属、並びに元素の周期表の遷移金属及びその他の主族の金属及び半金属の無機塩、例えばMg、Ca及び/又はSiからなる群から選択されている。アニオンとして、これらの塩は、好ましくは酸化物アニオン、炭酸塩アニオン、炭酸水素塩アニオン、硫酸塩アニオン、ハロゲン化物アニオン及び含窒素アニオン、好ましくは塩化物アニオン及び/又は酸化物アニオンを有する。適した充填剤は、アルミノケイ酸塩、例えば長石、ケイ酸塩、例えばカオリン、タルク、雲母、ウォラストナイト、マグネサイト、アルカリ土類金属炭酸塩、例えば炭酸カルシウム、例えば方解石又は白亜の形の炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイト、アルカリ土類金属硫酸塩、例えば硫酸カルシウム、二酸化ケイ素等を含む。前記充填剤は、個々の成分として使用されることができる。実地において、充填剤混合物、例えば炭酸カルシウム/カオリン、炭酸カルシウム/タルクが特に有用であることが判明している。成分(E)として本発明による塗料中で使用されることができる適した充填剤は、当業者に知られている。
【0041】
成分(E)は、本発明による塗料中に、存在している場合には、全塗料を基準としてそれぞれ、10〜40質量%、好ましくは15〜30質量%の量で存在する。
【0042】
本発明による塗料の顔料体積濃度PVKは20〜65である。例えば、PVKは、屋外用途の分散塗料の形の塗料中で好ましくは20〜60、特に30〜60、及び殊に35〜59である。
【0043】
隠ぺい力の増大のため及び白色顔料の節約のために、超臨界配合物(高充填塗料;PVK>PVK臨界)を有する分散塗料中で、しばしば微粒状充填剤、例えば微粒状炭酸カルシウム又は異なる粒度を有する多様な炭酸カルシウムの混合物が使用される。隠ぺい力、色調及び色の深さの調節のために、好ましくは有色顔料及び充填剤のブレンドが使用される。
【0044】
成分(F)として、本発明による塗料中に、場合により少なくとも1つの顔料分散剤が存在する。
【0045】
成分(F)は、一般的に、ラジカル重合されるエチレン系不飽和モノマーから構成されているホモポリマー又はコポリマーである。適したモノマーの例は、α,β−不飽和のモノカルボン酸及びジカルボン酸、例えばアクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、及びそれらと炭素原子1〜12個を有する脂肪族又は芳香族の一価又は多価のアルコール、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、例えばイソプロパノール、n−プロパノール、ブタノール、例えばn−ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール及びシクロヘキサノールとのモノエステル又はジエステルである。適した別のモノマーは、エチレン系不飽和芳香族モノマー、例えばスチレン、α−メチルスチレンである。適した別のモノマーはまた、一価カチオンの前記の酸の塩、例えばアンモニウムアクリラートである。
【0046】
特に好ましくは、成分(F)として、本発明による塗料中で、アクリル酸エステル、例えばブチルアクリラート及び/又はスチレンをベースとするホモポリマー及びコポリマーが使用される。成分(F)として本発明による塗料中で使用されることができる適した顔料分散剤は、当業者に知られている。
【0047】
成分(F)は、本発明による塗料中に、存在している場合には、全塗料を基準としてそれぞれ、0.1〜5質量%、好ましくは0.2〜3質量%の量で存在する。
【0048】
本発明による塗料中に、場合により成分(G)として少なくとも1つの増粘剤が存在する。
【0049】
成分(G)は、本発明による塗料中に、前記塗料の粘度を調節するため、こうして例えば加工性を改善するために、場合により存在している。
【0050】
本発明により成分(G)として使用可能な物質の例は、例えば、メチルセルロース又はセルロースをベースとする水溶液である。これらの水溶液は、一般的に0.1〜10質量%の濃度を有する。増粘剤として使用される水溶液の粘度は、一般的に室温で5000〜30000mPas、例えば15000〜25000mPasである。増粘剤は、バルクで、すなわち溶剤なしでも、本発明による塗料中へ導入されることができる。
【0051】
成分(G)が水溶液として本発明による塗料中へ導入される場合には、この溶液の量は、存在している場合には、全塗料を基準としてそれぞれ、2〜20質量%、好ましくは8〜15質量%である。成分(F)がバルクで導入される場合には、これは、全塗料を基準としてそれぞれ、0.1〜2質量%、好ましくは0.2〜1.5質量%の量で行われる。
【0052】
成分(H)として、本発明による塗料中へ、硬水軟化剤、分散助剤、pH値を調節するための薬剤、乳化剤、防腐剤、界面活性剤、起泡剤、消泡剤、ポリマー及びそれらの混合物からなる群から選択される1つ又はそれ以上の物質が導入されることができる。
【0053】
前記の課題を本発明による塗料中で満たす成分は、当業者に知られており、かつ商業的に入手可能である。
【0054】
同時に分散助剤として機能する硬水軟化剤の例は、ホスホン酸塩及びリン酸塩、例えばポリリン酸ナトリウムである。
【0055】
pH値を調節するための薬剤の例は、有機の、水性の又は固体の酸及び塩基、好ましくは中程度の強さの塩基、例えば水溶液中のNH3である。
【0056】
乳化剤として、アニオン表面活性物質、カチオン表面活性物質又は好ましくは非イオン表面活性物質が使用されることができる。適したカチオン乳化剤の例は、例えば、C6〜C18−アルキル基、C6〜C18−アラルキル基又はヘテロ環式基を有する第一級、第二級、第三級又は第四級のアンモニウム塩、アルカノールアンモニウム塩、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩、オキサゾリニウム塩、モルホリニウム塩、チアゾリニウム塩並びにアミンオキシドの塩、キノリニウム塩、イソキノリニウム塩、トロピリウム塩、スルホニウム塩及びホスホニウム塩である。例示的に、ドデシルアンモニウムアセタート又は相応する塩酸塩、多様な2−(N,N,N−トリメチルアンモニウム)エチルパラフィン酸エステルのクロリド又はアセタート、N−セチルピリジニウムクロリド、N−ラウリルピリジニウムスルファート並びにN−セチル−N,N,N−トリメチルアンモニウムブロミド、N−ドデシル−N,N,N−トリメチルアンモニウムブロミド、N,N−ジステアリル−N,N−ジメチルアンモニウムクロリド並びにジェミニ界面活性剤N,N′−(ラウリルジメチル)エチレンジアミンジブロミドを挙げることができる。適したアニオン乳化剤の例は、アルキル硫酸塩(アルキル基:C8〜C12)、エトキシル化アルカノール(エトキシル化度:4〜30、アルキル基:C12〜C18)及びエトキシル化アルキルフェノール類(エトキシル化度:3〜50、アルキル基:C4〜C12)の硫酸半エステル、アルキルスルホン酸(アルキル基:C12〜C18)、アルキルアリールスルホン酸(アルキル基:C9〜C18)及びスルホスクシナート、例えばスルホコハク酸−モノエステル又はジエステルのアルカリ金属塩及びアンモニウム塩である。
【0057】
界面活性剤は、塗料とコーティングすべき面との相溶性を高めるため及び/又は貯蔵安定性を改善するために、本発明による塗料中で使用されることができる。
【0058】
場合により存在している消泡剤は、加工及び/又は輸送の際の本発明による塗料の泡立ちを回避するために添加される。
【0059】
成分(H)は、本発明による塗料中に、存在している場合には、本発明による全ての塗料を基準としてそれぞれ、全部で、1〜30質量%、好ましくは2〜25質量%の量で好ましくは存在する。
【0060】
本発明による塗料中に存在している成分A、B及び場合によりC、D、E、F、G及び/又はHの量は、合計で100質量%である。
【0061】
本発明は、本発明による塗料の製造方法にも関し、その際に成分(A)及び(B)及び場合により(C)、(D)、(E)、(F)、(G)及び/又は(H)が混合される。
【0062】
前記混合は、好ましい一実施態様において、5〜40℃、特に好ましくは15〜35℃の温度で行われる。
【0063】
本発明によれば、光触媒活性粒子(成分(B))は、加工する前に、すなわちコーティングすべき表面を塗料でコーティングする前に、前記塗料と混合され、かつ前記塗料をコーティングすべき材料へ施与した後にはじめて、例えば噴霧により、前記塗料へ施与される。
【0064】
さらに好ましい一実施態様において、光触媒活性粒子以外の本発明による塗料中に存在している全ての成分が混合され、かつ少なくとも1つの光触媒活性粒子が、最後の成分として前記の他の成分の混合物へ導入される。
【0065】
本発明は、工業用装置における屋内用途及び屋外用途の金属材料、有機材料及び無機材料をコーティングするための、本発明による塗料の使用にも関する。
【0066】
本発明は、建築化学における屋内用途及び屋外用途の金属材料、有機材料及び無機材料をコーティングするための、本発明による塗料の使用にも関する。
【0067】
本発明は、汚染物分解作用、消臭作用、空気浄化作用、水浄化作用、抗菌作用、超親水性作用及び/又は抗風解作用を有する用途における、本発明による塗料の使用に関する。
【0068】
特に、本発明は、建築材料、包装材料、水浄化装置及び空気浄化装置、壁紙、プラスチック、屋内照明及び屋外照明、装置、ガラス製品、家庭電化製品、農業用材料/装置、工具、農産物、テーブルウエア、例えば食器及びカトラリー、浴室製品、トイレ用品、家具、フィルター、機械カバー、車両カバー、屋根、屋根カバー、屋根樋、窓枠及びドア枠、自動車部材、自動車両、鉄道車両、航空機、宇宙船、容器、自転車、オートバイ、表示パネル、交通標示、壁紙、防音壁、温室、アイソレーター、反射プレート、太陽電池、太陽熱温水器、彫像、フェンス、テラス、換気機、エアコン、ベンチ、シャッター、表示パネル、鏡、レンズ、例えば眼鏡ガラス、光学レンズ、カメラレンズ、内視鏡レンズ、半導体を製造するためのレンズ、プリズム、ヘルメット、マスク、サイン、テキスタイル(織物及び不織布)、革製品、紙製品、スポーツ装置、健康器具、医療用品、容器、管、ケーブル、サニタリー製品等々からなる群から選択される材料をコーティングするための本発明による塗料の使用に関する。
【0069】
本発明の特殊な一対象は、テキスタイルをコーティングするための本発明による塗料の使用である。本発明の意味でのテキスタイルは、本発明の範囲内で紡織繊維、紡織半製品及び工業製品及びこれから製造された既製品であると理解されるべきであり、これらは服飾工業用のテキスタイルに加えて、例えばカーペット及び他の住居用テキスタイル並びに工業目的に利用される繊維状形成体も含む。これらには、成形されていない形成体、例えばステープル、線状形成体、例えば細紐、糸、ヤーン、亜麻布、コード、ケーブル、撚糸並びに三次元構造体(Koerpergebilde)、例えばフェルト、織物、メリヤス、不織布(ノンウーブン)及び詰綿も含まれる。テキスタイルは、天然由来、例えば木綿、シルク、カシミヤウール、羊毛、革、フェルト又は亜麻、又は合成由来、例えばポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン、変性ポリエステル、ポリエステル混合織物、ポリアミド混合織物、ポリアクリロニトリル、ポリオレフィン、トリアセタート、アセタート、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル又はポリエステルマイクロファイバーであることができる。本発明の意味でのテキスタイルは、有機物質であってよく、又はしかし無機物質、例えば特にガラス繊維、炭素繊維、金属繊維及びガラス繊維織物であってよい。本発明の意味でのテキスタイルは、屋内領域又は屋外領域において使用されることができる。屋内領域におけるテキスタイルの例は、カーテン、家具、カーペット、クッション家具、テーブルクロス、鎧戸、クッション、バスケット、ポシェット、バッグ、トリミング(Posamenten)、玩具、クロス、トランク、ウォールカーペット、シートカバー、マットレス、ブランケット、便座カバー、軟質床マット、ベッドシート、壁紙、ラグ、被服及びフィルターである。屋外領域におけるテキスタイルの例は、オーニング、雨よけ、日よけ、熱気球、防水布、ソフトトップ(Stoffverdecke)、ガーデン家具、テント、バナー、旗クロス、人工芝、ケーブル、ネット、スポーツウエア、フラッグ(Flaggen)、旗(Fahnen)、帆、作業着、ウェットスーツ、ルーフカバー、シールド(Schilde)、ボンネット、サーカステント、機械カバー、車両カバー、釣り堀カバー、スイミングプールカバー及び航海用途、医療用途、工業用途、航空工学用途及びレジャー用途の工業用テキスタイルである。
【実施例】
【0070】
例1:本発明による壁塗料Iの製造
第1表
【表1】

【0071】
【表2】

【0072】
第1表は、壁塗料Iの組成を示す。
【0073】
使用された本発明による光触媒は、シェルとしての多孔質SiO2により取り囲まれた、コア中のアナターゼ変態のTiO2であった。コアの直径は5〜20nmであり、シェルの厚さは1〜2nmであった。全粒子を基準としたSiの量は1.1質量%であった。シェルの多孔度は11.9であった。
【0074】
この光触媒を、壁塗料中へ、室温及び50〜60%の相対空気湿度で導入した。本発明によるこの壁塗料Iを、ナイフ(90μm)を用いてガラス基体に施与した。光触媒の濃度は、1〜50g/kg、当該の例において43g/kgであった。この層を20〜60℃で0.5〜10時間乾燥させた。
【0075】
またそれぞれ相応する壁塗料を、本発明による層光触媒の代わりに標準光触媒(Degussa P25)を添加して製造した。
【0076】
さらに、光触媒を添加しない壁塗料も製造した。
【0077】
例2:脱色試験
製造された壁塗料Iの、壁塗料の染料と比較した光活性を、UV-Vis-測定を用いる光触媒作用による脱色の測定により測定した。UV照射下での壁塗料の光触媒作用による脱色の調査についての試験の全経過時間は、6ヶ月であった。例1に記載された方法によって製造された壁塗料を、ナイフ(90μm)を用いてガラス基体に施与し、かつ6ヶ月間に亘って室温で紫外線を照射した。UV強度は1.5mW/cm2であった。
【0078】
UV照射下での壁塗料の脱色についての空試験を、本発明による層光触媒の代わりに標準光触媒(Degussa P25)を添加して実施した。
【0079】
さらにUV照射下での壁塗料の脱色についての空試験を光触媒を、添加せずに実施した。
【0080】
結果は第2表に示されている。
【0081】
第2表
【表3】

【0082】
例3:本発明による壁塗料IIの製造
第3表
【表4】

【0083】
【表5】

【0084】
第3表は、壁塗料IIの成分を示す。
【0085】
例4:壁塗料IIを用いる汚染試験
壁塗料IIの光活性を測定した。この壁塗料を、ブレード(125μm)を用いてLenetaフィルムに塗布した。24h後に、別の層を同じスリット高さでその上にナイフ塗布した。このフィルムを、恒温恒湿室中で7日間乾燥させた。この壁塗料を、25hに亘ってSuntest装置(Atlas社、型式CPS+、黒色パネル標準75℃、光強度765W/m2、フィルターなし)中で照射しながら活性化させた。汚染物、例えばコーヒー、からし、リップスティック及び壁チョークを塗り、30分間作用させた。汚染物をクロスでふき取り、引き続き水ですすぎ流した。試料を、室温で24h乾燥させ、Suntest装置中で250時間照射した。
【0086】
UV照射下での汚染の分解についての空試験を、本発明による層光触媒の代わりに標準光触媒(Degussa P25)を添加して実施した。
【0087】
さらにUV照射下での汚染の分解についての空試験を、光触媒を添加せずに実施した。結果は第4表に示されている。
【0088】
第4表
【表6】

【0089】
例5:チョーキング試験
壁塗料IIのチョーキングを、Kempf法により測定した。ゼラチン層を膨潤させるために、薄いフォトペーパーを光沢のある表面で水の入ったシャーレ中に4分間置き、ついで毛羽立っていないろ紙を用いて乾燥させた。このフォトペーパーを、ゼラチン層で試験すべき塗料上に置いた。型押し装置を紙の上に載せ、かつ覆われた試料塗膜を、40mm直径を有する面積に250Nの力をかけた(3回押し付けた)。型押し装置を、ついで取り除き、かつフォトペーパーを塗膜からはがし、かつ乾燥させた。これらの試料に、Suntest装置(Atlas社、型式CPS+、ブラックパネル標準75℃、光強度 765W/m2、フィルターなし)中で214時間の全期間に亘って照射した。チョーキング度を視覚的に評価した。
【0090】
チョーキング度を、次のチョーキングスケールに従い評価した:
0=フォトペーパー上に顔料粒子6%
1=フォトペーパー上に顔料粒子17%
2=フォトペーパー上に顔料粒子23%
3=フォトペーパー上に顔料粒子30%
4=フォトペーパー上に顔料粒子54%
5=フォトペーパー上に顔料粒子74%。
【0091】
UV照射下でのポリマーの分解についての空試験を、本発明による層光触媒の代わりに標準光触媒(Degussa P25)を添加して実施した。
【0092】
さらに、UV照射下での有機物質の分解についての空試験を、光触媒を添加せずに実施した。結果は第5表に示されている。
【0093】
第5表
【表7】

【0094】
例6:テキスタイルI用の本発明によるコーティングの製造
第6表 テキスタイルコーティングIの製造
【表8】

【0095】
【表9】

【0096】
使用された本発明による光触媒は、シェルとしての多孔質SiO2により取り囲まれた、コア中のアナターゼ変態のTiO2であった。コアの直径は20〜30nmであり、シェルの厚さは1〜2nmであった。全粒子を基準としたSiの量は0.9質量%であった。
【0097】
この光触媒を、前記塗料中へ導入し(Ultraturrax 1500rpmで20分間撹拌)、かつナイフを用いて、テキスタイル(コットンツイル)に施与した。このコーティングの厚さは0.3mmであった。この層を100℃で2分乾燥させ、かつ150℃で2分固定した。
【0098】
標準光触媒(Degussa P25)を添加して空試験を実施した。
【0099】
さらに、光触媒を用いずにルチル変態の二酸化チタン顔料を添加して空試験を実施した。
【0100】
例7:テキスタイルII用の本発明によるコーティングの製造
第7表 テキスタイルコーティングIIの製造
【表10】

【0101】
【表11】

【0102】
使用された本発明による光触媒は、シェルとしての多孔質SiO2により取り囲まれた、コア中のアナターゼ変態のTiO2であった。コアの直径は20〜30nmであり、シェルの厚さは1〜2nmである。全粒子を基準としたSiの量は0.8質量%であった。
【0103】
この光触媒を、前記塗料中へ導入し(Ultraturrax 1500rpmで20分間撹拌)、かつナイフを用いて、テキスタイル(コットンツイル)に施与した。このコーティングの厚さは1.0mmであった。この層を110℃で3分及び150℃で5分乾燥させた。
【0104】
標準光触媒(Degussa P25)を添加して空試験を実施した。
【0105】
さらに、光触媒を用いずにルチル変態の二酸化チタン顔料を添加して空試験を実施した。
【0106】
例9:コーティングされたテキスタイル表面の光活性
本発明によるテキスタイルコーティングI及びIIの光活性は、メチレンブルー溶液の脱色について測定した。10、25及び100μmol/Lの濃度を有するメチレンブルー溶液10μLを、テキスタイルのコーティングされた表面へ施与した。こうしてコーティングされたテキスタイルにそれぞれ、紫外線(光強度1.5mW/cm2)を照射した。染料メチレンブルーの脱色を、経時的に視覚的に観察した。
【0107】
UV照射下でのメチレンブルーの脱色についての空試験を、標準光触媒(Degussa P25)を添加して実施した。
【0108】
さらに、UV照射下でのメチレンブルーの脱色についての空試験を、光触媒を添加せずに、ルチル変態の二酸化チタン顔料を添加して実施した。
【0109】
【表12】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗料であって、
(A)少なくとも1つの結合剤を、成分(A)として、及び
(B)0.1〜1μmの直径を有する少なくとも1つの第一物質からなるコアと、0.1〜10nmの平均層厚を有する少なくとも1つの第二物質からなり、前記コアを少なくとも部分的に包囲する少なくとも1つのシェルとを含む少なくとも1つの光触媒活性粒子を、成分(B)として、
含むことを特徴とする塗料。
【請求項2】
成分(A)が、非高分子架橋系、アクリラート、カプロラクタム、ビニルカプロラクタム、N−ビニルホルムアミド、アクリルエステル、スチレン/アクリルエステル及び酢酸ビニル、ポリウレタン、エポキシ樹脂、アルキド樹脂及びそれらの混合物をベースとする水及び/又は有機溶剤ベースのプラスチック分散液からなる群から選択されている、請求項1記載の塗料。
【請求項3】
成分(B)が、TiO2のコア及びSiO2のシェルを有する、請求項1又は2記載の塗料。
【請求項4】
TiO2が本質的にアナターゼ変態で存在する、請求項3記載の塗料。
【請求項5】
成分(C)として、二酸化チタン、硫酸バリウム、酸化亜鉛、有色顔料、カーボンブラック、亜鉛黄、亜鉛緑、群青、発光顔料又は蛍光顔料、アゾ顔料、イソインドリノン顔料及びイソインドリン顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、ペリノン顔料、ペリレン顔料、アントラキノン顔料、ジケトピロロピロール顔料、チオインジゴ顔料、ジオキサジン顔料、トリフェニルメタン顔料、キノフタロン顔料及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの顔料を含有する、請求項1から4までのいずれか1項記載の塗料。
【請求項6】
成分(B)が、不純物に対して活性であり、かつマトリックス材料に対して活性ではない、請求項1から5までのいずれか1項記載の塗料。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか1項記載の塗料の製造方法であって、成分(A)及び(B)を混合することを特徴とする、塗料の製造方法。
【請求項8】
建築化学における屋内用途及び屋外用途用の金属材料、有機材料及び無機材料をコーティングするための、請求項1から6までのいずれか1項記載の塗料の使用。
【請求項9】
テキスタイルをコーティングするための、請求項1から6までのいずれか1項記載の塗料の使用。
【請求項10】
工業用装置のための屋内用途及び屋外用途用の金属材料、有機材料及び無機材料をコーティングするための、請求項1から6までのいずれか1項記載の塗料の使用。
【請求項11】
汚染物分解作用、消臭作用、空気浄化作用、水浄化作用、抗菌作用、超親水性作用及び/又は抗風解作用を有する用途における、請求項1から6までのいずれか1項記載の塗料の使用。

【公表番号】特表2010−537033(P2010−537033A)
【公表日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−522359(P2010−522359)
【出願日】平成20年8月27日(2008.8.27)
【国際出願番号】PCT/EP2008/061220
【国際公開番号】WO2009/027432
【国際公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】