説明

塗料及び塗装木材

【課題】漆を用いた塗料であって、低湿度条件及び/又は水の共存下においても良好な乾燥性を示す塗料、及び該塗料で塗装した塗装木材を提供すること。
【解決手段】第1発明の塗料は、漆と、有機溶剤に可溶で且つ水に安定な金属キレート化合物とを含む。第2発明の塗料は、漆を含む第1剤と、有機溶剤に可溶で且つ水に安定な金属キレート化合物を含む第2剤とを有し、第1剤と第2剤とを混合して用いられる。第3発明の塗料は、漆と金属キレート化合物とを混合してなり、漆の樹脂分100重量部に対して水20重量部を配合した状態においても、温度20℃相対湿度50%の条件で24時間以内に乾燥する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料及び塗装木材に関し、より詳しくは、漆を用いた乾燥性の良好な塗料及び該塗料で塗装された塗装木材に関する。
【背景技術】
【0002】
木造住宅等の木製建造物における、柱、梁、床材、羽目板、手摺り、カウンター、ドア等や、家具等の多くは、木部の保護や美観の向上を目的に塗装されることが多い。今日、使用されている塗料の殆どは、優れた性能や取り扱いの簡便さのために、石油系の合成樹脂を主成分とした合成塗料である。このような合成樹脂の代表的なものとしては、ラッカー樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、アクリルシリコーン樹脂等があるが、これらは資源の枯渇問題や地球温暖化ガスの放出問題等の環境問題を抱えている。
【0003】
近年、環境保護意識や身近な物質に対する安全意識の高まりから、自然素材を積極的に活用しようとする機運が高まっている。自然素材を活用した例としては、トウモロコシ澱粉を主原料にしたポリ乳酸塗料の開発等が挙げられる。
【0004】
日本の伝統的な自然塗料の一つとして漆が挙げられる。漆塗膜はふっくらとした質感や深みのある艶を呈し、また、耐水性、耐熱性、耐摩耗性に優れており、古くから主に工芸品の塗装に用いられてきた。即ち、漆塗装品の殆どは、漆器などに代表される伝統工芸品に限られており、建築用途、例えば、柱、梁、床材、羽目板、手摺り、カウンター、ドア等に漆を塗装することは一部の地方の慣習を除いてあまり見られない。
【0005】
現在、日本の最も伝統的な産業の一つである漆工業は、漆の使用量の減少により壊滅的な打撃を受けており、このままでは漆工業が成り立たなくなっていまう恐れが強い。日本の伝統産業である漆工業を絶やさないためにも、伝統工芸品以外の分野、例えば建築分野等への工業的利用を図る必要がある。
【0006】
漆の建築用途への利用を妨げる一因として、漆の乾燥性の低さによる生産性の低さが挙げられる。漆は、酵素の働きで重合・硬化(以下、乾燥と同義)し、その乾燥には湿気を必要とする特殊な乾燥メカニズムの天然樹脂である。
通常の漆は、20〜30℃の温度条件下で、湿度70%以上の条件でないと乾燥しない。そのため、従来は、伝統的な漆室(ムロ)と呼ばれる、湿度を特に高めた小さな空間で、何日も時間をかけて乾燥することが行われてきた。しかし、漆を建築用途などの工業用途での利用を拡大させるには、このような特別な温湿度環境でなくとも漆が乾燥することが求められる。建築用途での漆の利用を考えるときには、比較的低い湿度条件下においても、乾燥性が確保されることが求められる。
【0007】
また、漆は紫外線により劣化し易いという性質を有しており、この性質を改善するためには、耐紫外線性を向上させる何らかの耐紫外線性向上剤を漆中に導入することが必要となる。この際、耐紫外線性向上剤をトルエンやキシレンのようなシックハウス症候群の原因となる有害な有機溶剤を介して漆に導入することは好ましくない。
そのため、耐紫外線向上剤は、水系(水溶解物や水分散物)のものが好ましい。
また、漆は非常に高価であり、また、粘度の高い樹脂でもあるので、水で希釈して用いることも想定しなければならない。
従って、漆の乾燥性を確保する技術は、水が共存する漆の組成においても、その効力(乾燥性)が実用的なレベルにおいて発揮されることが求められる。
【0008】
漆の乾燥性を向上させる従来の方法として、漆と反応する特定の有機官能基を有するシランカップリング剤を添加する方法が知られている(特許文献1〜3参照)。
【0009】
【特許文献1】特開2003−306640号公報
【特許文献2】特開2003−55558号公報
【特許文献3】特開2004−331987号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述したシランカップリング剤を添加する技術は、湿度の低い条件下での乾燥性に優れているだけではなく、有害な有機溶剤を用いていないことから安全性が高く、また粘度が低いことや漆との相溶性が良いことから混合時の作業性も高い。また、混合後も容器の蓋を閉じて密閉しておけば、長期保存安定性も優れており、えられた漆塗膜の物性も、従来の漆塗膜の物性と同等、もしくはそれ以上となる等の多くの利点を有する優れた技術であった。
【0011】
しかし、シランカップリング剤は、比較的高価であり、建築用途等への漆の活用を促進する上で、コスト面で不利な可能性がある。
【0012】
ところで、漆を建築用途に用いるには、漆の欠点である耐紫外線性の低さの改善が強く求められる。漆の耐紫外線性を改善するためには、紫外線吸収剤や光安定剤を添加する方法が考えられるが、これらはいずれもそれ自体に安全性や環境への影響が懸念されているためこれらを漆に添加することは好ましくない。
【0013】
人体や環境への影響を及ぼし難い方法で耐紫外線性を向上させる方法としては、超微粒子(平均一次粒子径が約100nm以下)の金属酸化物(金属は亜鉛、チタン、セリウム、鉄等)を漆に高度に分散させる方法が挙げられる。この方法においては、超微粒子を粘度の高い漆中に高度に分散させるのは技術的に困難であるので、溶媒に一度分散したものを漆に添加し、混合する方法が合理的である。分散させる溶媒は、人体や環境への影響の点から、有機溶剤ではなく水であることが好ましい。換言すれば、漆の耐紫外線性の向上には、超微粒子金属酸化物の水分散体を用いることが好ましい。
しかし、超微粒子金属酸化物の水分散体の配合等により水を含む漆に、特許文献1〜3等で用いられているシランカップリング剤を添加すると、シランカップリング剤が漆と反応するのと同時に水とも反応し加水分解するために、水が存在する組成においては、乾燥性の向上効果が得られにくいことが本発明者の検討の結果、明らかになった。つまり、漆に水が含まれていると、低湿度条件下での乾燥性の確保や向上効果が得がたいことが確認された。
【0014】
従って、本発明の目的は、漆を用いた塗料であって、低湿度条件及び/又は水の共存下においても良好な乾燥性を示す塗料、及び該塗料で塗装した塗装木材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討したところ、金属キレート化合物、特に水系及び溶剤系の両方の系において分解しにくい安定な金属キレート化合物を漆に添加することで、漆と共に水が存在し且つ低湿度の条件下においても良好な乾燥性が得られることを見出した。
本発明は、このような知見に基づき、さらに検討を重ねて完成されたものである。
【0016】
本発明は、漆と、有機溶剤に可溶で且つ水に安定な金属キレート化合物とを含むことを特徴とする塗料を提供することにより、前記目的を達成したものである(以下、第1発明というときはこの発明をいう)。
【0017】
また、本発明は、漆を含む第1剤と、有機溶剤に可溶で且つ水に安定な金属キレート化合物を含む第2剤とを有し、第1剤と第2剤とを混合して用いる塗料を提供することにより、前記目的を達成したものである(以下、第2発明というときはこの発明をいう)。
【0018】
また、本発明は、漆と金属キレート化合物とを混合してなり、漆の樹脂分100重量部に対して水20重量部を配合した状態においても、温度20℃相対湿度50%の条件で24時間以内に乾燥することを特徴とする塗料を提供することにより、前記目的を達成したものである(以下、第3発明というときはこの発明をいう)
【0019】
更に、本発明は、第1〜第3発明の塗料で木材を塗装して得られる塗装木材を提供するものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明(第1〜第3発明)の塗料は、漆を用いた塗料であって、低湿度条件及び/又は水の共存下においても良好な乾燥性を示す。
本発明の塗装木材は、安価且つ容易に製造することができ、建築用途等、伝統工芸品以外の用途に好ましく利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明をその好ましい実施形態に基づいて詳細に説明する。
第1発明の塗料は、漆と、特定の金属キレート化合物とを含む。
第2発明の塗料は、漆を含む第1剤と、特定の金属キレート化合物を含む第2剤とを有し、第1剤と第2剤とを混合して用いる。
第3発明の塗料は、漆と金属キレート化合物とを含み、漆の樹脂分100重量部に対して水20重量部を配合した状態においても、温度20℃相対湿度50%の条件で24時間以内に乾燥する。
【0022】
本発明で用いる漆としては、漆科植物から得られる生漆、生漆をクロメ(加熱脱水)処理して得られる精製漆など、漆による塗装に従来用いられているものを特に制限なく用いることができる。生漆は、日本産、中国産、台湾産、インドネシア産、ミャンマー産、ベトナム産などの何れを使用しても良い。
【0023】
本発明で用いる金属キレート化合物は、水に対して安定なものが好ましい。金属キレート化合物は、水に対して不安定で分解し易いものが多いが、水に対して安定な金属キレート化合物を用いることによって、添加剤を、水に溶解又は分散させた状態で漆に添加したり、塗料を水で希釈して用いたりする場合においても、漆と反応が良好に進んで、良好な乾燥性が得られる。
金属キレート化合物の水に対する安定性の程度は、例えば、水に5重量%、あるいは10重量%、あるいは20重量%、あるいは50重量%溶解して、1時間後の残存量を測定したときに、初期量に対する残存量が10%以上であることが好ましく、20%以上であることがより好ましく、更には30%以上,40%以上,50%以上,60%以上,70%以上,80%以上,90%以上,95%以上、99%以上であることがこの順に更に好ましい。
【0024】
また、本発明で用いる金属キレート化合物は、有機溶剤に可溶なものが好ましい。
漆の主成分であるウルシオールは油性であることから、有機溶剤に対して親和性のある金属キレート化合物を用いると、漆の主成分との親和性が高く、漆との反応性が向上し、低湿度条件での漆の乾燥性を向上させることができる。
金属キレート化合物が有機溶剤に対して可溶か否かは、例えば、イソプロピルアルコールを溶剤として該溶剤に1重量%以上可溶であるか否かで判別することができる。
金属キレート化合物は、イソプロピルアルコールに10重量%以上可溶であることが好ましく、30重量%以上可溶であることがより好ましく、50重量%以上可溶であることが更に好ましく、更に60%以上,70%以上,80%以上可溶であることがこの順に好ましい。
【0025】
有機溶剤に可溶で且つ水に対して安定な金属キレート化合物としては、金属がチタン又はジルコニウムであるキレート化合物が挙げられる。より好ましい金属キレート化合物としては、トリアルカノールアミネートを有するチタンキレート、特にチタンジイソプロポキシビストリエタノールアミネートを用いることが好ましい。アルカノールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等が挙げられる。
チタンジイソプロポキシビストリエタノールアミネートとしては、市販品を用いることもでき、例えば、マツモトファインケミカル株式会社製の商品名「オルガチックスTC−400」等を用いることができる。金属キレート化合物は、アルコール溶液中で液相合成して、そのようなアルコール溶液として販売されているものを用いることもできる。
【0026】
漆への金属キレート化合物の添加量は、漆の樹脂分100重量部に対して、金属キレート化合物の有効成分0.5〜100重量部が好ましく、より好ましくは5〜50重量部であり、更に好ましくは10〜30重量部である。
【0027】
漆及び金属キレート化合物は、両者を混合状態として密閉可能な容器に充填したものを販売等することもできる。
また、漆を含む第1剤を収容した第1の容器と金属キレート化合物を含む第2剤を収容した第2の容器とをセットにして販売したり、漆を含む第1剤を収容した第1の収容部と金属キレート化合物を含む第2剤を収容した第2の収容部を有する複合容器を販売する等、漆と金属キレート化合物とを混合しない状態で販売し、使用に際して混合して用いるようにすることも、本発明の塗料を長期間使用ないし保存可能とする観点から好ましい。
【0028】
漆を含む第1剤は、生漆のみ、あるいは黒目漆(精製漆)のみを含むものであっても良いし、これに、各種の添加剤が混合されたものであっても良い。金属キレート化合物を含む第2剤は、アルコール等の溶剤に金属キレート化合物が溶解しているものであっても良い。また、これに、各種の添加剤が混合されたものであっても良い。
第1剤又は第2剤に混合する添加剤としては、各種公知のものを用いることができ、例えば、超微粒子(平均一次粒子径が約100nm以下)の金属酸化物(金属は亜鉛、チタン、セリウム、鉄等)からなる耐紫外線性向上剤等が挙げられる。超微粒子からなる添加剤は、水に溶解又は分散させた状態で、漆に混合することが好ましい。
【0029】
本発明の塗料は、例えば、漆の樹脂分100重量部に対して、5〜100重量部の水を含む条件下においても使用することができ、10〜50重量部の水を含む条件下においても使用することができ、あるいは20重量部の水を含む条件下においても使用することができる。
例えば、本発明の塗料の一実施例は、漆の樹脂分100重量部に対して、水5〜100重量部及び金属キレート化合物0.5〜100重量部を含む塗料である。
また、本発明の塗料の他の実施例は、漆を含む第1剤と金属キレート化合物を含む第2剤とを有し、漆の樹脂分100重量部に対して、水5〜100重量部及び金属キレート化合物0.5〜100重量部を含む状態とされて使用される。水は、第1剤及び第2剤の何れに含まれていても良く、第1剤及び第2剤の両方に含まれていても良い。更に、第1剤及び第2剤とは別に上述した超微粒子等の添加剤を含む第3剤を有し、その第3剤に水が含まれていても良い。
【0030】
本発明の塗装木材は、本発明の塗料で、木材を塗装して得られるものである。
木材は、無垢材の他、各種の木質材であっても良い。木質材としては、合板、単板積層材(LVL)、パーティクルボード、MDF等が挙げられる。塗装方法は、木材の塗装において公知の各種の方法を特に制限なく用いることができ、木材の塗装において公知の塗工方法等を特に制限なく用いることができ、例えば、刷毛塗り、ロールコーター、スプレーコーター等が挙げられる。また、木材の一部、例えば板材の片面のみ、あるいはその片面の一部のみ等に塗装しても良い。
塗装後の木材の乾燥は、高湿度条件で行っても良いが、低湿度条件でも行うことができる。乾燥時の湿度条件は、相対湿度55%以下、あるいは相対湿度50%以下、更には相対湿度45%以下とすることもできる。温度条件は、例えば0〜50℃、あるいは10〜40℃とすることができる。
塗装木材は、各種の用途に使用することができ、例えば、建築材料に好ましく用いることができる。建築材料として使用する場合の例としては、柱、梁、壁材、床材、羽目板、手摺り、カウンター、ドア等が挙げられる。
【0031】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、各発明は、上記の実施形態に制限されず適宜に変更可能である。
【実施例】
【0032】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例によって何ら限定されるものではない。
【0033】
(実施例1)
市販の漆〔(有)田島漆店から入手、商品名「素黒目漆」〕の樹脂分100重量部に、水系の添加剤を添加することを想定して、水20重量部を添加し、充分混合して、水を含んだ漆樹脂組成物(以下、水含有漆樹脂組成物という)を得た。
得られた水含有漆樹脂組成物に、該組成物中の樹脂分100重量部に対して10重量部又は20重量部のチタンジイソプロポキシビストリエタノールアミネート(商品名「オルガチックスTC−400」,濃度80重量%,溶媒イソプロピルアルコール,マツモトファインケミカル株式会社製)を添加し、それぞれ充分に混合して、実施例1(2種類)の塗料を得た。
【0034】
(比較例1)
実施例1において調製した水含有漆樹脂組成物をコントロールとして用いた。
(比較例2)
実施例1において調製した水含有漆樹脂組成物に、該組成物中の樹脂分100重量部に対して10重量部又は20重量部のシランカップリング剤(商品名「KBM−603」,信越化学工業株式会社製)を添加し、それぞれ充分に混合して、比較例2(2種類)の塗料を得た。
【0035】
(比較例3)
実施例1において調製した水含有漆樹脂組成物に、該組成物中の樹脂分100重量部に対して10重量部又は20重量部のチタンジイソプロポキシビスアセチルアセトネート(商品名「オルガチックスTC−100」,マツモトファインケミカル株式会社製)を添加し、それぞれ充分に混合して、比較例3(2種類)の塗料を得た。
チタンジイソプロポキシビスアセチルアセトネートは、溶剤系の化合物であり、溶剤に安定、水にやや不安定である。
【0036】
(比較例4)
実施例1において調製した水含有漆樹脂組成物に、該組成物中の樹脂分100重量部に対して10重量部又は20重量部のチタンラクテート(商品名「オルガチックスTC−315」,マツモトファインケミカル株式会社製)を添加し、それぞれ充分に混合して、比較例4(2種類)の塗料を得た。
チタンラクテートは、水系の化合物であり、水に安定、溶剤に不溶である。
【0037】
〔乾燥性の評価〕
実施例及び比較例で得られた塗料等を、ガラス板上に、バーコーターを用いて0.02インチの厚みに塗布し、恒温恒湿槽内に放置して乾燥させた。乾燥条件は、常温常湿より厳しい条件(低湿度条件)として、20℃―50%条件、及び20℃−40%条件とした。乾燥性の評価は、経時的に漆塗膜表面を指で触り、指に漆が付かず且つ漆塗膜がべとつかない時点をもって乾燥したと判断した。
20℃―50%条件で乾燥させた場合の結果を表1に示し、20℃―40%条件で乾燥させた場合の結果を表2に示した。表1,2中、「6〜24時間で乾燥」は、6時間後の時点では乾燥していなかったが24時間後の時点では乾燥していたことを示す。
【0038】
【表1】

【0039】
【表2】

【0040】
表1及び表2に示す結果から、実施例1の塗料(漆樹脂組成物)は、比較例1〜4に比して、水を含む組成で、低湿度条件下においても優れた乾燥性を示すことが判る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
漆と、有機溶剤に可溶で且つ水に安定な金属キレート化合物とを含むことを特徴とする塗料。
【請求項2】
漆を含む第1剤と、有機溶剤に可溶で且つ水に安定な金属キレート化合物を含む第2剤とを有し、第1剤と第2剤とを混合して用いることを特徴とする塗料。
【請求項3】
漆と金属キレート化合物とを混合してなり、漆の樹脂分100重量部に対して水20重量部を配合した状態においても、温度20℃相対湿度50%の条件で24時間以内に乾燥することを特徴とする塗料。
【請求項4】
漆の樹脂分100重量部に対して、水5〜100重量部及び前記金属キレート化合物0.5〜100重量部を含むものであるか又は含む状態とされて使用されることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の塗料。
【請求項5】
前記金属キレート化合物が、チタン又はジルコニウムのキレート化合物であることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の塗料。
【請求項6】
前記金属キレート化合物が、トリアルカノールアミネートを有するチタンキレートであることを特徴とする請求項1〜5の何れか記載の塗料。
【請求項7】
請求項1〜6の何れかに記載の塗料で木材を塗装して得られる塗装木材。

【公開番号】特開2009−235330(P2009−235330A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−86546(P2008−86546)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(000183428)住友林業株式会社 (540)
【Fターム(参考)】