説明

塗料吹付器用重力沈降椀

本発明に係る塗料吹付器用重力沈降椀は、椀状の容器(1)、この容器(1)上にしっかりと固定できる蓋体(2)、並びに本重力沈降椀を塗料吹付器に直に固定するための連結部(3)を備える。本重力沈降椀の特徴は、連結部(3)を構成する連結片(5)を蓋体(2)上に直に形成し、この連結片(5)にネジ込みロック要素(8)を設けて本重力沈降椀を塗料吹付器に迅速に直結できるようにしたことである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提要件部分に記載の塗料吹付器用流体槽に関する。
【背景技術】
【0002】
塗料吹付器用従来型流体槽は、通常、その底面に開口が設けられた椀状の容器と、塗料が不意に漏出することを防ぐため容器の上面を覆う適当な蓋体と、を備える。容器底面開口には、塗料吹付器上面に容器を着脱できるようにする装着用部品が配置される。装着用部品は、通常は容器床を貫く連結器として構成される。連結器外面にはネジ山が切られ、他方で塗料吹付器上面開口内にもこれに番うようネジ山が切られるので、連結器を塗料吹付器上面開口内にネジ込むことができる。しかしながら、こうした構成の流体槽を製造するには装着用部品を別途製造し然る後に容器に連結する必要がある。これは若干面倒でありひいては応分の高コスト化も招く。
【0003】
また、既知の流体槽の中には、特許文献1記載の通り、椀状の容器及びこの容器上にセット可能な蓋体を備え更にその蓋体が中空円筒状の装着用部品を有するものがある。しかしながら、この既知流体槽では円筒状装着用部品付容器蓋体を塗料吹付器に直に装着することができず、流体槽の塗料吹付器への装着にはその装着用部品向けに別途誂えたアダプタが必要である。
【0004】
【特許文献1】国際公開第01/12337号パンフレット(A1)
【特許文献2】国際公開第2004/37433号パンフレット(A1)
【特許文献3】米国特許出願公開第2003/213857号明細書(A1)
【特許文献4】国際公開第02/85533号パンフレット(A1)
【特許文献5】西独国実用新案第8902223.8号明細書(U1)
【特許文献6】独国特許出願公開第3402097号明細書(A1)
【特許文献7】独国特許出願公開第10205831号明細書(A1)
【特許文献8】国際公開第98/32539号パンフレット(A1)
【特許文献9】国際公開第03/45575号パンフレット(A1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、背景技術の欄に記載した流体槽と同類の流体槽であって、より経済的に生産でき、より迅速且つ容易に塗料吹付器に装着することができ、しかも別途アダプタを誂える必要のない流体槽を、実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の特徴を有する流体槽によれば、この目的が達成される。また、従属形式請求項には、本発明の好適な実施形態や更なる効果を生む改良版を記載してある。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る流体槽における基本的利点の一つは、容易に製造可能な2個の部品からなることである。その蓋体上にネジ込み楔要素が設けられているため、本流体槽は容易且つ迅速に、しかも別誂えのアダプタなしで、塗料吹付器に装着することができ、またその塗料吹付器から迅速に取り外すことができる。本流体槽は経済的に生産でき、容易に充填でき、しかも、使い切り型流体槽、繰り返し使用型流体槽、残余塗料乃至ラッカー貯蔵用流体槽の何れとしても利用できる。
【0008】
ネジ込み楔要素は、例えばそのネジ込み面が周縁方向沿いに斜に延びる溝として形成するのが望ましい。そのようにすれば、ネジ込み楔要素側のネジ込み面を、塗料吹付器の肩部乃至突起上に設けた対応する受け面と、係合させることができる。逆に、ネジ込み楔要素を楔状乃至ネジ状の突起として構成し、塗料吹付器上にこれと対応する溝を設けて、ネジ込み楔要素たる突起を塗料吹付器上の溝と係合させてもよい。
【0009】
また、従来と同じくその注入用開口内面にネジ山が切られている塗料吹付器にネジ込むことができるよう、連結部に別のネジ山も併設するのが望ましい。そのような構成とした流体槽は、内面ネジ山による従来型連結機能を有しているが上記ネジ込み楔要素に対応する迅速連結装着部は有していない塗料吹付器用にも、使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の好適な実施形態について、上記以外の詳細部分及び効果を図面を参照しつつ説明する。
【0011】
図1に示す塗料吹付器用流体槽は、椀状の容器1及びこの容器上にセットできる蓋体2を備えており、蓋体2上にはこの流体槽を塗料吹付器上に着脱可能とするための装着部3が形成されている。容器1及び蓋体2は、形成されている装着部3と併せ、何れもプラスチックにより注型部品等として生産するのが望ましい。椀状容器1への充填時には、まず容器1を図示の如き姿勢とし、蓋体2を取り外し、そして充填を行う。充填を終えたら、蓋体2を元の位置に戻し、塗料吹付器を上下逆さまにし、塗料吹付器の装着用開口内に蓋体2の装着部3を挿入する。塗料を吹き付ける際には、この状態から塗料吹付器を裏返し、流体槽を塗料吹付器の頂面上に持ってくればよい。流体槽内に通風するには、例えば流体槽の床4の上に設けた通風弁(図示せず)を開弁させてもよいし、或いは閉止状態で設けておいた通風チャネルをピン又はこれに類するものの助力により開通させてもよい。但し、再閉止可能型の通風弁又は通風用開口を使用した方が、使用後も引き続いてその流体槽内に使い残しの塗料を貯蔵しておけるという点で、有利である。
【0012】
図2及び図3に拡大図示されている装着部3は、円錐状の蓋体2の上に注型その他の手法で形成された管状の連結部5を備えている。この連結部5は、その先端にある中空円筒状の案内部6と、従来型の内面ネジ山にネジ込めるよう案内部6上に設けられた外面ネジ山7と、流体槽を塗料吹付器に迅速に連結乃至装着できるよう外面ネジ山7に連なって設けられたネジ込み楔要素8と、を有している。図示した実施形態におけるネジ込み楔要素8はネジ込み面10を有する溝9として構成されており、そのネジ込み面10は周縁方向に沿って斜に延びており、また塗料吹付器の肩部乃至突起上にある対応する受け面と係合させ得るように構成されている。即ち、ネジ込み固定溝9のネジ込み面10と、塗料吹付器上にこれと対応するように設けられている受け面は、連結部5を約1/4〜1/2回転させてその先端面11を塗料吹付器内の対応する封止面上へと下げるだけで、流体槽を塗料吹付器に堅固に固定することができるように、形成されている。また、別途設けられている外面ネジ山7を利用すれば、従来型の内面ネジ山付装着部は有しているがネジ込み楔要素8と噛み合う装着部を有していない塗料吹付器向けにも、この流体槽を使用することができる。また、連結部5上、外面ネジ山7とネジ込み楔要素8の間には前端接触面12が設けられている。この前端接触面12は、外面ネジ山7を使用した流体槽装着の際に、連結部5のネジ込み長を制限する。
【0013】
特に図2から看取できるように、連結部5の約半周に亘って肩部13が延設されており、ネジ込み固定溝9はこの肩部13内に形成されている。連結部5の残りの半周は、塗料吹付器側の肩部を溝9内に導き入れることができるよう、開放されている。溝9の端部のうち前部寄りの端は開放しているが、後部寄りの端は隆起14の接触面15によって閉止されているので、迅速連結ロックの回しすぎを防ぐことができる。
【0014】
図3に示すように、連結部5は肩部16を有している。この肩部16の中には既知のフィルタ(図示せず)を挿入することができる。また、肩部16は環状接触面17を有しており、肩部16の内径は中空円筒状案内部6の外径より幾分大きいので、肩部16を利用して蓋体2を積み重ねることもできる。何個かの蓋体2を山積みした場合、山の下側の蓋体2はその中空円筒状案内部6によって案内され、すぐ上側の蓋体2の肩部16内に嵌り込むこととなる。
【0015】
図4に示すように、容器1と蓋体2とを堅固に連結すべく、外面ネジ山18及び内面ネジ山19からなる迅速連結ロック用四分割ネジ山が設けられている。そのうち外面ネジ山18は容器1の外面の上部を縁取るように形成されており、内面ネジ山19は外面ネジ山18に相対するように蓋体2上に形成されている。迅速連結ロック用のこれらのネジ山はその勾配が20mmという急峻なネジ山として構成されているので、容器1上に堅固にネジ込むには蓋体2を約1/4周程回すだけでよい。そのため、これらのネジ山は均等に四分割されており、例えば図6に示すように容器1の外周上には4個の外面ネジ山18が均等配置されている。その配置は、あるネジ山18の開始部分20がその次のネジ山18の終端部分21の直上に位置する、という配置であり、当該一方のネジ山18の開始部分20と当該他方のネジ山18の終端部分21との間の距離xは5mmである。更に、図7にその構成が明示されているように、図示例におけるネジ山はその側面傾斜角が30°の台形ネジ山として構成されているが、迅速連結ロック用のネジ山の形状は、ラウンド、三角その他の適当な形状とすることもできる。外面ネジ山の最大直径dは100〜110mmの間、好ましくは104.6mmとし、最小直径Dは90〜105mmの間、好ましくは101.7mmとする。ネジ山の外面に面した部分の幅bは1.1〜1.3mmの間、好ましくは1.27mmとする。
【0016】
蓋体2の内側面には、更に、図5に示すように楔状封止隆起22がぐるりと形成されている。これによって、楔状封止隆起22の外側の面と蓋体2の内側の面との間に楔状環状溝23が形成される。この楔状環状溝23は容器上縁24を受け止めるための溝であり、図5に示すように楔の如く上方に向かって細っている。従って、蓋体2をネジ込む際、容器上縁24はこの環状溝23によって外向きに即ち蓋体2の内壁方向へと押されることとなるので、堅固な閉止連結が実現される。なお、封止隆起22の高さは、蓋体取外時に蓋体内に塗料が残っていた場合にその塗料を食い止め、内面ネジ山方向に塗料が進入することを阻止できるよう、十分な高さとしておく。
【0017】
以上、本発明の実施形態について図示説明したが、本発明の実施形態はこれに限られるものではない。例えば、折りたためる内挿物を容器内に入れ、この内挿物内に塗料を入れるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る流体槽の断面を示す図である。
【図2】図1中のA−A線断面を示す図である。
【図3】図1中のX部分を詳細に示す図である。
【図4】椀状容器上に蓋体をネジ付けするための迅速連結ネジ山と共に、椀状の容器及び蓋体を示す図である。
【図5】図4中のY部分を詳細に示す図である。
【図6】図4中のW部分を詳細に示す図である。
【図7】図4中のA−A線断面を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
椀状の容器(1)、この容器(1)上にセット可能な蓋体(2)、並びに本流体槽を塗料吹付器上に直に締結するための装着部(3)を備える塗料吹付器用の流体槽であって、上記装着部(3)が、蓋体(2)上に直に形成された連結部(5)からなり、当該連結部(5)が、本流体槽を塗料吹付器に迅速に連結及び装着するためのネジ込み楔要素(8)を有することを特徴とする流体槽。
【請求項2】
請求項1記載の流体槽であって、ネジ込み楔要素(8)が、周縁方向に沿って斜に延びるネジ込み面(10)を有する溝(9)により形成されたことを特徴とする流体槽。
【請求項3】
請求項1又は2記載の流体槽であって、連結部(5)が更なるネジ山(7)を有することを特徴とする流体槽。
【請求項4】
請求項1乃至3のうち何れか一項記載の流体槽であって、連結部(5)が横向き接触面(15)を有し、流体槽装着にネジ込み楔要素(8)を用いたときに、ネジ込み長がこの横向き接触面(15)によって制限されることを特徴とする流体槽。
【請求項5】
請求項3又は4記載の流体槽であって、連結部(5)が端部接触面(12)を有し、流体槽装着にネジ山(7)を用いたときに、ネジ込み長がこの端部接触面(12)によって制限されることを特徴とする流体槽。
【請求項6】
請求項1乃至5のうち何れか一項記載の流体槽であって、連結部(5)の内部に接触面(17)付の肩部(16)が設けられたことを特徴とする流体槽。
【請求項7】
請求項1乃至6のうち何れか一項記載の流体槽であって、迅速連結ロック用ネジ山(18,19)により容器(1)と蓋体(2)とを堅固に連結可能なことを特徴とする流体槽。
【請求項8】
請求項7記載の流体槽であって、迅速連結ロック用ネジ山(18,19)が、四分割された急峻なネジ山であって且つ容器(1)の外縁上にある外面ネジ山(18)及びこれに対応して蓋体(2)の内側にある内面ネジ山(19)を含むことを特徴とする流体槽。
【請求項9】
請求項7又は8記載の流体槽であって、迅速連結ロック用ネジ山(18,19)の勾配が20mmであることを特徴とする流体槽。
【請求項10】
請求項1乃至9のうち何れか一項記載の流体槽であって、蓋体(2)の内側面上に楔状の封止隆起(22)が形成されており、これにより、封止隆起(22)の外側面と蓋体(2)の内側面との間に、容器上縁(24)を受け止める楔状環状溝(23)が形成されたことを特徴とする流体槽。
【請求項11】
請求項10記載の流体槽であって、封止隆起(22)の高さが十分大きく、蓋体(2)を取り外したときに塗料を蓋体(2)内に食い止められることを特徴とする流体槽。
【請求項12】
請求項1乃至11のうち何れか一項記載の流体槽であって、内挿物を容器(1)内に入れられることを特徴とする流体槽。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2007−518555(P2007−518555A)
【公表日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−550013(P2006−550013)
【出願日】平成17年1月18日(2005.1.18)
【国際出願番号】PCT/EP2005/000437
【国際公開番号】WO2005/070558
【国際公開日】平成17年8月4日(2005.8.4)
【出願人】(303033406)サタ ファルプシュプリッツテクニック ゲーエムベーハー アンド カンパニー カーゲー (8)
【Fターム(参考)】