説明

塗料用バインダー

【課題】良好な密着性や分散性を有しつつ、長時間の光暴露による経時耐光性も有しているので、黄変等の経時劣化を起こしにくい塗膜を得ることができる塗料用バインダーを提供する。
【解決手段】紫外線吸光光度法による254nm以上の領域での最大吸光度A(測定条件:試料濃度1g/dm3、セル長1cm)が0.15以下であり、メチル化処理物のガスクロマトグラフ質量分析により測定された分子量320の成分の含有量が分子量314〜320の成分の合計量の95%以上であるロジン類(A)を含有することを特徴とする塗料用バインダー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料用バインダーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、塗料用バインダーの成分としてロジン類のようなオリゴマーが使用されてきた。これらを使用することで密着性や分散性等に優れた塗料用バインダーを得ることが出来る。
【0003】
しかしながら、ロジン類は分子構造内に炭素−炭素2重結合を有しており、光などにより容易に酸化反応を引き起こす。このため、通常のロジン類を含有する塗料用バインダーは初期色調が着色してしまう上、光による黄変や変質が促進されてしまう問題があった。
【0004】
そこで、水添されたロジン樹脂を用いることで無色透明性を有するバインダーを得る方法が提案されている(特許文献1参照)。
【0005】
しかしながら、この方法によって得られたバインダーは、初期には無色透明性を維持していても、経時で光に暴露されると容易に黄変してしまう問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−24062号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はロジン類を成分とした密着性や分散性に優れ、初期の色調はもとより、光に長時間暴露された場合でも黄変等が生じにくいなどの経時耐光性に優れた塗料用バインダーを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、特定の成分を高度に制御したロジン類を使用することで、上記課題を解決することが出来ることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明は、紫外線吸光光度法による254nm以上の領域での最大吸光度A(測定条件:試料濃度1g/dm、セル長1cm)が0.15以下であり、メチル化処理物のガスクロマトグラフ質量分析により測定された分子量320の成分の含有量が分子量314〜320の成分の合計量の95%以上であるロジン類(A)を含有することを特徴とする塗料用バインダーに関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の塗料用バインダーは、良好な密着性や分散性を有する。その上、長時間の光暴露による経時耐光性も有しているので、黄変等の経時劣化を起こしにくい塗膜を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の塗料用バインダーは、紫外線吸光光度法による254nm以上の領域での最大吸光度A(測定条件:試料濃度1g/dm、セル長1cm)が0.15以下であり、メチル化処理物のガスクロマトグラフ質量分析により測定された分子量320の成分の含有量が分子量314〜320の成分の合計量の95%以上であるロジン類(A)を含有する。
【0012】
本発明の塗料用バインダーに含まれるロジン類(A)が、紫外線吸光光度法による254nm以上の領域での最大吸光度A(測定条件:試料濃度1g/dm3、セル長1cm)が0.15以上であり、ロジン類(A)のメチル化処理物のガスクロマトグラフ質量分析により測定された分子量320の成分の含有量が分子量314〜320の成分の合計量の95%以上でない場合には、紫外線の影響を受けやすく、塗膜の劣化が十分に抑制されないため、本発明の効果を奏さない。
【0013】
ロジン類(A)において、紫外線吸光光度法による254nm以上の領域での吸光度は主に、炭素−炭素不飽和結合に由来し、当該値が大きくなることは分子中に不飽和結合が多くなることを意味する。炭素−炭素不飽和結合は、紫外線等により容易に酸化等を受けるため、塗料用バインダーの色調悪化や脆化の原因になるため、当該値を低く保つ必要がある。また、メチル化処理物の分子量が320の成分とは、ロジン類(A)由来の樹脂酸成分がメチル化されたもののうち、分子内の不飽和結合がすべて水素化されたものに相当し、分子量が314の成分とは、分子内に炭素−炭素不飽和結合を3つ有するものに相当する。そのため、分子量320の成分の含有量が分子量314〜320の成分の合計量の95%以上であるということは、ロジン類(A)中に含まれる炭素−炭素不飽和結合を有する成分が極めて少ないことを意味する。なお、ロジン類(A)がロジンエステルの場合、メチル化処理物とは、予め、ロジン類(A)を加水分解して樹脂酸成分とした後にメチル化処理したものを意味する。その結果、従来のロジン類と比較して塗膜の黄変や劣化を抑制することが出来る。
【0014】
本発明のロジン類(A)の製造に使用するロジン類としては、各種のロジンを特に限定なく使用することができる。例えば、ガムロジン、トール油ロジン、ウッドロジンなどの天然ロジン、天然ロジンを精製して得られる精製ロジン、天然ロジンを不均化反応させて得られる不均化ロジンおよび天然ロジンを水素添加して得られる水添ロジン(以下、これらを総称して原料ロジンという。)や原料ロジンをアルコール類でエステル化したロジンエステルを使用することができる。
【0015】
精製ロジンは蒸留法、抽出法、再結晶法等の各種公知の手段を用いて得ることが出来る。蒸留法は、例えば通常200〜300℃程度の温度、0.01〜3kPa程度の減圧下で実施できる。また、抽出法では、前記ロジン類をアルカリ水溶液とし、不溶性の不ケン化物を各種の有機溶媒により抽出した後に水層を中和すればよい。また、再結晶法では、前記ロジン類を良溶媒としての有機溶媒に溶解し、ついで溶媒を留去して濃厚な溶液となし、更に貧溶媒としての有機溶媒を添加することにより得られる。
【0016】
不均化ロジンは、各種公知の手段を用いて得ることが出来る。例えば、原料ロジンまたは精製処理したロジンを不均化触媒の存在下に加熱反応させて得られる。不均化触媒としては、パラジウム−カーボン、ロジウム−カーボン、白金−カーボンなどの担持触媒、ニッケル、白金等の金属粉末、ヨウ素、ヨウ化鉄等のヨウ化物等の各種公知のものを例示しうる。該触媒の使用量は、ロジン100重量部に対して通常0.01〜5重量%程度、好ましくは0.01〜1重量%であり、反応温度100〜300℃程度、好ましくは下限150℃、上限290℃である。
【0017】
水添ロジンは、各種公知の手段を用いて得ることが出来る。例えば、水素化触媒の存在下、通常1〜25MPa程度、好ましくは5〜20MPa程度の水素加圧下で0.5〜7時間程度、好ましくは1〜5時間程度、反応させて得られる。水素化触媒としては、パラジウムカーボン、ロジウムカーボン、ルテニウムカーボン、白金カーボンなどの担持触媒、ニッケル、白金等の金属粉末、ヨウ素、ヨウ化鉄等のヨウ化物等、各種公知のものを使用することができる。これらのなかでは、パラジウム、ロジウム、ルテニウムまたは白金系触媒が水素化効率(水素化率が良い、水素化時間が短い)の点で好ましい。該触媒の使用量は、通常ロジン100重量部に対し0.01〜10重量部程度、好ましくは0.01〜5重量部程度である。また、水素化温度は100〜300℃程度、好ましくは150〜290℃程度である。また、水素化は、必要に応じて、溶剤に溶解した状態で行ってもよい。使用する溶剤は特に限定されないが、原料や生成物が溶解しやすい溶剤であればよい。たとえば、シクロヘキサン、n−ヘキサン、メチルシクロヘキサン、n−ヘプタン、デカリン等の炭化水素類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、ピネン、ピナン、テレビン油等のテルペン類等を1種または2種以上を組み合わせて使用できる。溶剤の使用量は特に制限されないが、通常、原料樹脂に対して固形分が10重量%程度以上となるように用いる。好ましくは10〜70重量%の範囲である。
【0018】
ロジンエステルに使用するアルコール類としては、n−オクチルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、デシルアルコール、ラウリルアルコール等の1価アルコール;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール等の2価アルコール;グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等の3価アルコール;ペンタエリスリトール、ジグリセリン等の4価アルコール:ジペンタエリスリトール等の6価アルコールなどが挙げられ、これらのうちいずれか一種を単独でまたは二種以上を混合して用いることができる。また、カルボン酸と反応してエステルとなる、グリシジルエーテル類や、グリシドールなどを用いてもよい。
【0019】
エステル化反応は、公知のエステル化方法で行うことができる。具体的には、150〜300℃程度で、生成する水を系外に除去しながら行われる。また、エステル化反応中に空気が混入すると生成するエステル化物が着色するおそれがあるため、反応は窒素やヘリウム、アルゴン等の不活性ガス下で行なうことが好ましい。なお、反応に際しては、必ずしもエステル化触媒を必要としないが、反応時間の短縮のために酢酸、パラトルエンスルホン酸等の酸触媒、水酸化カルシウム等のアルカリ金属の水酸化物、酸化カルシウム、酸化マグネシウム等の金属酸化物等を使用することもできる。
【0020】
ロジン類(A)の調製方法は、特に、限定されないが、通常は、前記原料ロジンまたはロジンエステルを紫外線吸光光度法による254nm以上の領域での最大吸光度A(測定条件:試料濃度1g/dm、セル長1cm)が0.15以下であり、メチル化処理物(ロジンエステルの場合は、加水分解物のメチル化処理物)のガスクロマトグラフ質量分析により測定された分子量320の成分の含有量が分子量314〜320の成分の合計量の95%以上となるように水素化等の操作を行うことにより得ることができる。また、ロジン類(A)をロジンエステルとして得る場合は、ロジンエステルを出発物質として、水素化等の操作をして目的物を得ることもできるし、原料ロジンを出発物質としてロジン類(A)を調製し、ついで、エステル化をして目的物を得ることもできる。
【0021】
さらに、ロジン類(A)は、原料ロジンの樹脂酸成分であるアビエチン酸、デヒドロアビエチン酸、ジヒドロアビエチン酸、テトラヒドロアビエチン酸などを単独または混合して調製しても良い。なお、テトラヒドロアビエチン酸は、例えば、ジャーナル オブ オーガニック ケミストリー(Journal of Organic Chemistry )31, 4128(1966) 、ジャーナル オブ オーガニック ケミストリー 34, 1550(1969)に記載の方法で得られる。
【0022】
ロジン類(A)の色調は、特に、限定されないが、色調を1ガードナー以下とすることが塗料の外観や経時安定性の点から好ましい。同様の理由から、色調を200ハーゼン以下とすることがより好ましい。
【0023】
本発明の塗料用バインダーは、ロジン類(A)単独を適当な有機溶媒に溶解して調製することもできるが、その他の成分と併用し組成物としても良い。
【0024】
併用可能なその他の成分としては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂等のポリマー類、石油樹脂、テルペン樹脂、クマロン樹脂、芳香族系樹脂等のオリゴマー類など必要に応じて選択出来る。相溶性や塗膜物性が良好であることから、アクリル樹脂やポリエステル樹脂が好ましい。
【0025】
アクリル樹脂としては、アクリルモノマーを重合させて得られるポリマーであれば特に限定されず公知のものを使用することが出来る。アクリルモノマーとしては特に限定されず公知のものを用いることが出来る。具体的には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、n−オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸イソボルニル等の(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。また、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル等の各種化学反応に関与する官能基を含有する(メタ)アクリル酸エステルも使用できる
【0026】
また、必要に応じて(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能な単量体であれば、特に限定なく公知のものを併用しても良い。具体的には、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸のカルボキシル基含有ビニル単量体、カルボキシル基含有ビニル単量体のエステル)、スチレン、α−メチルスチレンなどのスチレン類、酢酸ビニル、アクリルアミド(誘導体)、アクリロニトリルなどが挙げられる。
【0027】
ポリエステル樹脂としては、たとえば、ジカルボン酸およびジオールをエステル化反応またはエステル交換反応後、重合反応して得られるものである。ポリエステル樹脂を構成するのに用いられるジカルボン酸としては、特に制限はないが、得られるポリエステル樹脂の機械的特性が優れ、安価であることからテレフタル酸が特に好ましい。テレフタル酸以外のジカルボン酸としては、例えばイソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸;アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、デカンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸等が挙げられる。以上に挙げたジカルボン酸は1種のみを用いても2種以上を併用しても良い。
【0028】
また、ポリエステル樹脂を構成するのに用いられるジオールとしては、特に制限はないが、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ヘキサメチレングリコール、ドデカメチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール等の脂肪族グリコール;シクロヘキサンジメタノール等の脂環族グリコール;1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール等の脂肪族ジオール;ビスフェノール類、ハイドロキノン、2,2−ビス(4−β−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン等の芳香族ジオール等が挙げられる。以上に挙げたジオールは、1種のみを用いても2種以上を併用しても良い。
【0029】
なお、本発明の塗料用バインダーは、そのまま単独で使用しても塗膜を形成させることも可能であるが、必要により、例えば、耐久性を一層向上させるために、更に上塗りコーティングを施しても良い。
【実施例】
【0030】
以下に本発明を実施例により更に具体的に説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。また実施例中、「%」および「部」は特に断りのない限り「重量%」、「重量部」を意味する。
【0031】
製造例1(ロジン類1の製造)
中国水添ロジン600g(広西梧州日成林産化工有限公司製)を1リットルフラスコに仕込み、0.5kPaの減圧下で195〜250℃の留分480gを得た。次いで、1リットルオートクレーブに得られた留分を200g、5%パラジウムアルミナ粉末(エヌ・イー ケムキャット社製)3g、及びシクロヘキサン200gを仕込み、系内の酸素を除去した後、系内を6MPaに加圧後、200℃まで昇温した。温度到達後、系内を再加圧し、9MPaを保ち、4時間水素添加反応を行い、溶剤をろ別後、減圧下にてシクロヘキサンを除去し、ロジン類1を189g得た。紫外線吸光光度法による254nm以上の領域での最大吸光度A(測定条件:試料濃度1g/dm、セル長1cm)は0.05、メチル化処理物のガスクロマトグラフ質量分析により測定された分子量320の成分の含有量が分子量314〜320の成分の合計量の99%であった。色調は1ガードナー未満であった。
なお、紫外線吸光光度法による254nm以上の領域での最大吸光度、メチル化処理物のガスクロマトグラフ質量分析により測定された分子量320の成分の含有量、色調、後述の方法により測定した。以下、これらの値は同様の方法で測定した値である。
【0032】
製造例2(ロジン類2の製造)
1リットルオートクレーブに中国水添ロジン(広西梧州日成林産化工有限公司製)200g、5%パラジウムアルミナ粉末(エヌ・イー ケムキャット社製)3g、及びシクロヘキサン200gを仕込み、系内の酸素を除去した後、系内を6MPaに加圧後、200℃まで昇温した。温度到達後、系内を再加圧し、9MPaを保ち、4時間水素添加反応を行い、溶剤ろ別後、減圧下にてシクロヘキサンを除去し、水添物189gを得た。
次いで、攪拌装置、冷却管および窒素導入管を備えた反応装置に得られた水添物180gを仕込み、200℃まで溶融した後、グリセリン21gを仕込み、280℃で10時間反応させ、ロジンエステル175gを得た。
得られたロジンエステルを1リットルオートクレーブに170g、5%パラジウムカーボン(含水率50%)を1g、シクロヘキサンを170g仕込み、系内の酸素を除去した後、系内を6MPaに加圧後、200℃まで昇温した。温度到達後、系内を再加圧し、9MPaを保ち、4時間水素添加反応を行い、溶剤ろ別後、減圧下にてシクロヘキサンを除去し、ロジン類2を164g得た。紫外線吸光光度法による254nm以上の領域での最大吸光度A(測定条件:試料濃度1g/dm、セル長1cm)は0.04、加水分解物のメチル化処理物のガスクロマトグラフ質量分析により測定された分子量320の成分の含有量が分子量314〜320の成分の合計量の97%であった。色調は1ガードナー未満であった。
【0033】
製造例3(ロジン類3の製造)
攪拌装置、冷却管および窒素導入管を備えた500ミリリットルフラスコに中国水添ロジン(広西梧州日成林産化工有限公司製)180gを仕込み、200℃まで溶融した後、グリセリン21gを仕込み、280℃で10時間反応させ、ロジン類3を175g得た。紫外線吸光光度法による254nm以上の領域での最大吸光度A(測定条件:試料濃度1g/dm3、セル長1cm)は0.47、メチル化処理物のガスクロマトグラフ質量分析により測定された分子量320の成分の含有量が分子量314〜320の成分の合計量の21%であった。色調は7ガードナーであった。
【0034】
製造例4(アクリル樹脂1の製造)
攪拌装置、冷却管、2基の滴下ロートおよび窒素導入管を備えた1リットルフラスコに、トルエン100部を仕込んだ後、窒素気流下に系内温度が約80℃となるまで昇温した。次いで、あらかじめメタクリル酸メチル50部、アクリル酸ブチル35部、メタクリル酸2−ヒドロキエチル15部を混合して仕込んだ滴下ロートと、アゾビスイソブチロニトリル2部およびトルエン20部を仕込んだ滴下ロートから約2時間を要して系内に滴下し、更に2時間同温度に保って重合反応を完結させた。トルエンを追加して固形分を約40%に調整し、アクリル樹脂1を得た。
【0035】
製造例5(ポリエステル樹脂1の製造)
攪拌機、温度計および窒素ガス導入管、還流脱水装置を備えたフラスコに、テレフタル酸ジメチル179.4部、エチレングリコール39.0部、ブチルエチルプロパンジオール238.7部、ネオペンチルグリコール65.5部、トリメチロールプロパン10.2部、酢酸亜鉛0.1部を仕込んだ。加熱溶融して留出するメタノールを系外に除きながら160℃から210℃まで徐々に昇温し、210℃で1時間保温した。一旦170℃まで冷却し、イソフタル酸65.8部、セバシン酸66.7部、ヘキサヒドロ無水フタル酸84.7部を加え、留出する水を系外に除きながら250℃まで徐々に昇温し、さらに3時間保持した。次に、装置を真空減圧装置に替え、さらに三酸化アンチモン0.075部を加え30分保温後、1.3hPaで2時間減圧重縮合反応を行い、ポリエステル樹脂1を得た。
【0036】
(吸光度)
ロジンエステル25.0mgを、25mlメスフラスコに精秤し、シクロヘキサンで溶解した後、25mlの秤線まで定容する。UV分光光度計(HITACHI u−3210 spectrophotometer)にて、セル長1cmの石英セルを用いることにより吸光度を測定する。254nm以上の領域での最大吸光度を読み取った。
【0037】
(メチル化処理物のガスクロマトグラフ質量分析により測定された分子量320の成分の含有量の定量)
ロジン類がロジンエステルの場合は加水分解(n−ヘキサノール中に水酸化カリウムを加えて、2時間還流反応させた後に、塩酸で中性とし、得られた樹脂酸を分析に供する。)した後に、以下のガスクロマトグラフ質量分析装置で定量を実施した。
ロジン類0.1gをn−ヘキサノール2.0gに溶解し、この溶液0.1gとオンカラムメチル化剤(フェニルトリメチルアンモニウムヒドロキサイド(PTHA)0.2モルメタノール溶液、ジーエルサイエンス(株))0.4gを均一混合し、1μlをガスクロマトグラフ質量分析(GC/MS)に注入し、測定を行った。分子量314〜320の成分の合計ピーク面積に対する分子量320の成分のピーク面積比を測定し、これを分子量320の成分の含有量とした。
使用装置
GC/MS:ガスクロマトグラフAgilent6890、質量分析計 Agilent5973、カラム Advance−DS
【0038】
(色調)
JIS K 0071−2によりガードナー単位で測定した。
【0039】
【表1】

【0040】
実施例1
アクリル樹脂1を70g、ロジン類1の50%トルエン溶液を7g、タケネートD120N(三井化学(株)製)を5g、スタノクト(化学名:オクチル酸第1錫、(株)エーピーアイコーポレーション製)を0.02gを混合した。これをSUS304板およびポリエチレン板に塗工し、105℃の乾燥機で30分間乾燥した。後述の密着性試験、耐光性試験を実施した。結果を表2に示す。
【0041】
(密着性試験)
SUS304板への密着性は各塗膜に1mmマスを碁盤目状に100マス作成し、粘着テープを貼りつけ、これを60°の角度で引き剥がした時の塗膜の残存量により、以下の基準に基づき塗膜の密着性を評価した。
1:塗膜の80%以上が残った
2:塗膜の20%以上80%未満が残った
3:塗膜の20%未満しか残らなかった
ポリエチレン板への密着性は各塗膜に長さ約1cmの十字型の切り込みを入れ、粘着テープを貼りつけ、これを60°の角度で引きはがした時の塗膜の残存量により、以下の基準に基づき塗膜の密着性を評価した。
1:塗膜の75%以上が残った
2:塗膜の25%以上75%未満が残った
3:塗膜の25%未満しか残らなかった。
【0042】
(耐光性試験)
各塗膜に高圧水銀ランプにて積算光量500mJ/cmを照射した前後の色調変化を以下の基準により目視判定した。
1:照射前後で塗膜の色調が変わらない
2:照射後に塗膜の色調悪化が認められる
【0043】
実施例2、比較例1〜3
ロジン類を表2のように変更した他は実施例1と同様に評価を行った。
【0044】
実施例3
ポリエステル樹脂1を70g、ロジン類1の50%トルエン溶液を7g、サイメル303(日本サイテック・インダストリー社製)を18g、Nacure5076(化学名:ドデシルベンゼンスルホン酸、King Industries製) 0.3gを混合した。これをSUS304板およびポリエチレン板に塗工し、105℃の乾燥機で30分間乾燥し、密着性試験、耐光性試験を実施した。結果を表2に示す。
【0045】
実施例4、比較例4〜6
ロジン類を表2のように変更した他は実施例3と同様に評価を行った。
【0046】
実施例5
ロジン類1の50%トルエン溶液をポリエチレン板に塗工し、105℃の乾燥機で5分乾燥し、耐光性試験を実施した。結果を表2に示す。
【0047】
実施例6、比較例7〜8
ロジン類を表2のように変更した他は実施例5と同様に評価を行った。

【0048】
【表2】






【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線吸光光度法による254nm以上の領域での最大吸光度A(測定条件:試料濃度1g/dm、セル長1cm)が0.15以下であり、メチル化処理物のガスクロマトグラフ質量分析により測定された分子量320の成分の含有量が分子量314〜320の成分の合計量の95%以上であるロジン類(A)を含有することを特徴とする塗料用バインダー。
【請求項2】
ロジン類(A)の色調が1ガードナー以下であることを特徴とする請求項1に記載の塗料用バインダー。
【請求項3】
請求項1または2に記載のロジン類(A)とアクリル樹脂を含有する塗料用バインダー。
【請求項4】
請求項1または2に記載のロジン類(A)とポリエステル樹脂を含有する塗料用バインダー。





【公開番号】特開2013−53185(P2013−53185A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−190640(P2011−190640)
【出願日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(000168414)荒川化学工業株式会社 (301)
【Fターム(参考)】