説明

塗料用樹脂組成物及び硬化性塗料組成物

【課題】硬化塗膜が高光沢、高耐候性等の優れた基本性能を有し、かつ硬度が高くて可撓性が優れ、これら性能をみたした上で、しかも、ハイソリッド化することで、省資源や環境の保護に対する要求を満たすことができる塗料用樹脂組成物及び硬化性塗料組成物の提供。
【解決手段】ポリオール(A1)又はポリオール(A2)と、ポリエーテルポリオール(B)及び溶剤(C)とを含む塗料用樹脂組成物と、(ブロック)ポリイソシアネート化合物を必須とする架橋剤と、更に、金属有機化合物及び酸性物質とを含む硬化性塗料組成物であって、該塗料用樹脂組成物は、ポリオール(A1)が、水酸基を有する重合性不飽和単量体と環構造を有する重合性不飽和単量体を必須として形成されるものであり、また、該ポリオール(A2)が、水酸基を有する重合性不飽和単量体と特定の直鎖分岐構造を有する重合性不飽和単量体を必須として形成されるものである硬化性塗料組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料用樹脂組成物及び硬化性塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオールを含む塗料用樹脂組成物は、各種の基材表面を保護し美観を与えるために塗装される硬化性塗料組成物等に適用されるものである。このような硬化性塗料組成物は、建築物、プラント、タンク、橋梁等の構築物や、自動車、船舶、産業機器、各種工業製品等の用途に広く用いて機械的衝撃等から基材表面を保護し美観を保つ保護機能や美装機能等を向上させるため、硬化塗膜が高光沢であることや、表面硬度が高いとともにかた脆くないこと、すなわち硬くて可撓性があることが要求される。可撓性があれば加工性も向上することになる。また、これらの機能を持続させて寿命を延ばすことによりメンテナンスコストを低減できるため、塗膜を屋外に曝露した際の耐候性が優れていることが要求される。
【0003】
特開昭64−75571号公報には、ポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリエーテルポリオールから選ばれる少なくとも1種以上のポリマーポリオールと有機ジイソシアネートとを反応させて得られるウレタン変性樹脂を主成分とする塗料用樹脂組成物が開示されている。この塗料用樹脂組成物は、メラミン樹脂等の架橋剤を用いても用いなくても塗膜を形成することができ、硬化塗膜の硬度と可撓性とがバランスされたものである。しかしながら、樹脂骨格にウレタン結合を有することに起因して粘度が上昇するため、低粘度化して塗装作業性を改善したり、ハイソリッド化して近年の省資源や環境の保護に対する要求を満たしたりする工夫の余地もあった。
【0004】
特開平9−221627号公報には、ポリオール変性アクリル樹脂にポリイソシアネート系化合物を含有させてなるコンクリート塗装型枠合板用ウレタン塗料用樹脂組成物が開示されている。この塗料用樹脂組成物は、ポリオール変性アクリル樹脂により無溶剤型としたものであり、省資源や環境の保護の点では優れたものである。しかしながら、各種の用途に適用するためには塗膜の硬度が充分ではなく、また、より硬度を高めて硬度と可撓性とを両立させる工夫の余地があった。
【0005】
従って、これらのポリオールを含む塗料用樹脂組成物においては、塗膜の性能と品質をより高めるため、高光沢で耐候性が優れた硬化塗膜が形成できるとともに、塗膜の硬度と可撓性の両立を図ることは、塗膜の硬度と可撓性とが相反する性質であることから達成することはできず、また、これらの性能を満たした上でハイソリッド化して省資源や環境の保護に対する要求を満たすこともできなかった。
【0006】
ところで、ポリウレタン樹脂系塗料の1つに、乾燥過程で水酸基とイソシアネート基の反応によりウレタン結合を形成する反応硬化系塗料があり、この反応を促進する手法として樹脂中の内部酸価をペンダントする方法や、錫触媒のような外部触媒を添加する方法が知られている。しかしながら、これら2つの手法を用いて硬化反応性を充分に高めると、形成される塗膜の外観が悪くなったり、塗料形態が2液型の場合にはポットライフ(可使時間)が短くなったりするという問題が生じることになるため、このような樹脂系塗料において硬化過程での反応性を充分に高くして、しかも形成する塗膜の外観を良好なものとしたり、ポットライフを維持したりするための工夫の余地があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、硬化塗膜が高光沢、高耐候性等の優れた基本性能を有するとともに、硬度が高くて可撓性が優れ、これら性能をみたした上で、しかも、ハイソリッド化することで、省資源や環境の保護に対する要求を満たすことができる塗料用樹脂組成物及び硬化性塗料組成物を提供することを目的とするものである。また硬化過程での反応性が高く、かつ、形成する塗膜の外観が良好となり、しかも、塗料のポットライフを充分に維持することができる硬化性塗料組成物を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、硬化性塗料組成物等として用いることができるポリオールを含む塗料用樹脂組成物についての問題点を綿密に精査したうえで鋭意研究を行った結果、上述した塗料用樹脂組成物が、ポリオール(A1)が環構造を特定量有することにより硬化塗膜が高光沢、高硬度となるとともに、ポリエーテルポリオール(B)が可撓性を付与することに起因して硬化塗膜の硬度が高くても可撓性が優れる上に、ポリオール(A1)が環構造の中でも例えばシクロアルキル構造を有する場合には耐候性をより向上させることができることを見いだした。しかも、ポリエーテルポリオール(B)を特定量用いることで、上記の硬化塗膜物性にあわせて塗料用樹脂組成物として好ましい形態であるハイソリッド化をすることができるという劇的な効果が生じる事実に遭遇し、本発明に到達したものである。
【0009】
また塗料用樹脂組成物において、特定の直鎖分岐構造を有する重合性不飽和単量体を必須として形成されるポリオールを用いた場合、環構造を有するポリオール(A1)を用いた場合よりも樹脂組成物の低粘度化(ハイソリッド化)を図ることはできるものの塗膜硬度が劣ることになるが、ポリオールの水酸基量が多くなるように設定したポリオール(A2)を用いることにより、架橋密度が向上して低粘度化(ハイソリッド化)と塗膜硬度とを両立することができることも見いだした。光沢面では、環構造に起因してポリオール(A1)が優れることになる。
【0010】
更にこのような塗料用樹脂組成物と、架橋剤とを含む硬化性塗料組成物において、架橋剤が(ブロック)ポリイソシアネート化合物を必須とするものである場合、硬化を促進するために、(1)金属有機化合物と酸性物質を併用することにより、硬化過程での反応性が高く、かつ、形成する塗膜の外観が良好となり、しかも、塗料のポットライフを充分に維持することができること、また、(2)60℃以上で触媒活性を示す感温性触媒を用いることにより、速乾性、かつ、良好なポットライフを維持できること、硬化性塗料組成物の塗工が通常は触媒能を発揮する温度以下である室温で行われることから、塗工直後は水酸基とイソシアシネート基.との反応が進行しないため塗膜が充分にレベリングする時間があり、高外観も発現することも見いだした。
【0011】
すなわち本発明は、ポリオール(A1)、ポリエーテルポリオール(B)及び溶剤(C)を含む塗料用樹脂組成物と、(ブロック)ポリイソシアネート化合物を必須とする架橋剤と、更に、金属有機化合物及び酸性物質とを含む硬化性塗料組成物であって、上記塗料用樹脂組成物は、ポリオール(A1)と該ポリエーテルポリオール(B)との重量比が、50/50〜90/10であり、上記ポリオール(A1)及びポリエーテルポリオール(B)の重量和と溶剤(C)との重量比が、40/60〜90/10であり、上記ポリオール(A1)は、重合性不飽和単量体組成物を用いて共重合してなり、上記重合性不飽和単量体組成物は、水酸基を有する重合性不飽和単量体5.0〜80.0重量%及びその他の重合性不飽和単量体20.0〜95.0重量%からなり、かつ、上記重合性不飽和単量体組成物を100重量%としたとき、その中に環構造を有する重合性不飽和単量体を10.0〜100.0重量%を含む硬化性塗料組成物である。
【0012】
本発明はまた、ポリオール(A2)、ポリエーテルポリオール(B)及び溶剤(C)を含む塗料用樹脂組成物と、(ブロック)ポリイソシアネート化合物を必須とする架橋剤と、更に、金属有機化合物及び酸性物質とを含む硬化性塗料組成物であって、上記塗料用樹脂組成物は、ポリオール(A2)と上記ポリエーテルポリオール(B)との重量比が、50/50〜90/10であり、上記ポリオール(A2)及びポリエーテルポリオール(B)の重量和と溶剤(C)との重量比が、40/60〜90/10であり、上記ポリオール(A2)は、重合性不飽和単量体組成物を用いて共重合してなり、上記重合性不飽和単量体組成物は、水酸基を有する重合性不飽和単量体20.0〜75.0重量%及びその他の重合性不飽和単量体25.0〜80.0重量%からなり、かつ、上記重合性不飽和単量体組成物を100重量%としたとき、その中にSP値が9.5以下であり、かつ単独重合体のガラス転移点(Tg)が60℃以上の直鎖分岐構造を有する重合性不飽和単量体を25.0〜80.0重量%を含む硬化性塗料組成物でもある。
以下に、本発明を詳述する。
【0013】
本発明の塗料用樹脂組成物は、ポリオール(A1)、ポリエーテルポリオール(B)及び溶剤(C)を含む形態と、ポリオール(A2)、ポリエーテルポリオール(B)及び溶剤(C)を含む形態とがある。すなわちポリオール(A1)又はポリオール(A2)と共に、ポリエーテルポリオール(B)及び溶剤(C)を含むことになる。これら本発明の塗料用樹脂組成物における構成要素はそれぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なお、ポリオール(A1)とポリオール(A2)とは併用してもよい。
【0014】
上記塗料用樹脂組成物から形成される塗膜は、環構造を有するモノマーを用いて重合してなる特定のポリオール(A1)により高硬度、高光沢で更に環構造がシクロアルキル構造の場合は耐候性に優れたものとなる。また、直鎖分岐構造を有するモノマーを用いて重合してなる特定のポリオール(A2)によってもポリオール(A1)を用いた場合に比べると劣るものの上記と同様な作用効果を発揮することとなる。ポリエーテルポリオール(B)を上記ポリオール(A1)やポリオール(A2)に対し特定量用いることで可撓性が付与されることになる。このような特定の環構造をもつポリオール(A1)や特定の直鎖分岐構造をもつポリオール(A2)と、該ポリオール(A1)やポリオール(A2)に対して特定量使用されるポリエーテルポリオール(B)との相乗的な作用により、塗膜の硬度と可撓性とが相反する性質であるにもかかわらず、高光沢で耐候性が優れた硬化塗膜が形成できるとともに、塗膜の硬度と可撓性の両立を図ることができることになる。また、通常、塗料用樹脂組成物の場合、該樹脂組成物の粘度を下げるために溶剤等の希釈剤を用いて取り扱いやすいものとしているが、本発明の塗料用樹脂組成物では、ポリエーテルポリオール(B)がポリオール(A1)やポリオール(A2)の希釈剤としての作用を有するため、溶剤(C)とともに希釈剤として用いることにより溶剤(C)の含有量を低減しつつ取り扱いやすいものとすることができる。従って、塗料用樹脂組成物の作業性や硬化性塗料組成物としたときの塗装作業性を損なうことなく溶剤の含有量を低減できる、いわゆるハイソリッド化することができることになる。ハイソリッド化の点では、ポリオール(A2)を用いる場合の方が有利である。
【0015】
本発明の塗料用樹脂組成物において、上記ポリオール(A1)又はポリオール(A2)とポリエーテルポリオール(B)との重量比は、50/50〜90/10である。50/50よりもポリオール(A1)又はポリオール(A2)の重量比が少なくなると、塗膜の硬度が低くなり、90/10よりもポリオール(A1)又はポリオール(A2)の重量比が多くなると、塗料用樹脂組成物の粘度が高くなり、塗料として使用しにくくなる上、塗膜がかた脆いものとなる。より好ましくは、60/40〜80/20である。
【0016】
本発明の塗料用樹脂組成物において、上記ポリオール(A1)又はポリオール(A2)並びにポリエーテルポリオール(B)の重量和と溶剤(C)との重量比は、40/60〜90/10である。40/60よりも上記ポリオール(A1)又はポリオール(A2)並びにポリエーテルポリオール(B)の重量比が少ないと、塗料用樹脂組成物を用いて塗料組成物を作成する際に、希釈に用いるシンナーの添加量が制限されるので扱いにくく、塗料配合の自由度が小さくなり、また、塗料組成物をハイソリッド化することが困難となる。90/10よりも上記ポリオール(A1)又はポリオール(A2)並びにポリエーテルポリオール(B)の重量比が多いと、塗料用樹脂組成物が高粘度となるので取り扱いにくくなる。より好ましくは、50/50〜90/10である。より好ましくは、60/40〜90/10である。尚、上記ポリオール(A1)又はポリオール(A2)並びにポリエーテルポリオール(B)は、重合体を意味する。
【0017】
上記ポリオール(A1)は、重合性不飽和単量体組成物を用いて共重合してなり、上記重合性不飽和単量体組成物は、水酸基を有する重合性不飽和単量体5.0〜80.0重量%及びその他の重合性不飽和単量体20.0〜95.0重量%からなり、かつ、上記重合性不飽和単量体組成物を100重量%としたとき、その中に環構造を有する重合性不飽和単量体を10.0〜100.0重量%を含む。
また上記ポリオール(A2)は、重合性不飽和単量体組成物を用いて共重合してなり、上記重合性不飽和単量体組成物は、水酸基を有する重合性不飽和単量体20.0〜75.0重量%及びその他の重合性不飽和単量体25.0〜80.0重量%からなり、かつ、上記重合性不飽和単量体組成物を100重量%としたとき、その中にSP値が9.5以下であり、かつ単独重合体のガラス転移点(Tg)が60℃以上の直鎖分岐構造を有する重合性不飽和単量体を25.0〜80.0重量%を含む。なお、本明細書中では、「SP値が9.5以下であり、かつ単独重合体のガラス転移点(Tg)が60℃以上の直鎖分岐構造を有する重合性不飽和単量体」を単に「直鎖分岐構造を有する重合性不飽和単量体」ともいう。
【0018】
これらの重合性不飽和単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。上記水酸基を有する重合性不飽和単量体及び上記その他の重合性不飽和単量体の合計共重合割合は、100重量%であり、ポリオール(A1)又はポリオール(A2)を形成する全ての重合性不飽和単量体組成物を意味するものである。また、上記環構造を有する重合性不飽和単量体の共重合割合は、ポリオール(A1)を形成する全ての重合性不飽和単量体組成物に対する共重合割合を意味するものであり、直鎖分岐構造を有する重合性不飽和単量体の共重合割合は、ポリオール(A2)を形成する全ての重合性不飽和単量体組成物に対する共重合割合を意味するものである。なお、上記環構造を有する重合性不飽和単量体は、直鎖分岐構造を有するものであってもよく有しないものであってもよいが、上記直鎖分岐構造を有する重合性不飽和単量体は、環構造を有しないものである。すなわち本明細書においては、環構造と直鎖分岐構造とを両方有する重合性不飽和単量体は、上記環構造を有する重合性不飽和単量体に含めるものとする。
【0019】
上記水酸基を有する重合性不飽和単量体には、水酸基及び環構造を有する重合性不飽和単量体が含有されていてもよい。また、上記その他の重合性不飽和単量体には、環構造を有する重合性不飽和単量体が含有されてもいてもよく含有されていなくてもよい。これらの重合性不飽和単量体の組み合わせとしては、上記の要件を満たす限り特に限定されるものではない。水酸基及び環構造を有する重合性不飽和単量体が含有されている場合には、当該重合性不飽和単量体の共重合割合を、水酸基を有する重合性不飽和単量体及び環構造を有する重合性不飽和単量体のそれぞれの共重合割合に含めるものとする。
【0020】
上記水酸基を有する重合性不飽和単量体は、水酸基を分子内に少なくとも1つ有する重合性不飽和単量体である。
上記水酸基は、重合性不飽和単量体組成物を用いて共重合してなるポリオール(A1)やポリオール(A2)を架橋剤により架橋させることができるものである。
【0021】
上記水酸基を有する重合性不飽和単量体を共重合することにより、ポリオール(A1)やポリオール(A2)を架橋剤により架橋させることができるので、塗料用樹脂組成物から形成される塗膜における光沢、肉持感、耐溶剤性等の基本性能や耐候性等を向上させることができることとなる。
【0022】
上記水酸基を有する重合性不飽和単量体としては特に限定されず、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート(商品名:4HBA、三菱化学社製)、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、α−ヒドロキシメチルエチルアクリレート、α−ヒドロキシメチルアクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシ(メタ)アクリレート(商品名:プラクセルFシリーズ、ダイセル化学工業社製)、4−メチロールシクロヘキシルメチルアクリレート(商品名:CHDMMA、日本化成社製)等が挙げられる。
【0023】
上記水酸基を有する重合性不飽和単量体の共重合割合が上記重量割合未満であると、ポリオール(A1)を用いる場合には、架橋剤により充分に架橋させることができないので、得られる塗料用樹脂組成物から形成される塗膜の耐溶剤性が発現しないこととなり、ポリオール(A2)を用いる場合には、(A1)で述べたことに加えて塗膜硬度が劣ることとなる。上記重量割合を超えると、ポリオール(A1)又はポリオール(A2)の粘度が高くなりすぎるので、得られる塗料用樹脂組成物の作業性が悪くなる。ポリオール(A1)を用いる場合、より好ましくは、10.0〜70.0重量%であり、更に好ましくは、20.0〜50.0重量%である。また、ポリオール(A2)を用いる場合、好ましくは、25.0〜60.0重量%であり、より好ましくは、30.0〜50.0重量%である。
【0024】
上記ポリオール(A1)は、環構造を有する重合性不飽和単量体を必須として形成されることになるが、該重合性不飽和単量体を用いることにより、得られる塗料用樹脂組成物から形成される塗膜の硬度、光沢、肉持ち感等の基本性能を向上させることができることとなる。この場合には、特に光沢面で優れた作用効果を発揮することとなる。
【0025】
上記環構造を有する重合性不飽和単量体としては、環構造を分子内に少なくとも1つ有する重合性不飽和単量体であればよく、環を構成する原子の種類、数等は特に限定されない。例えば、環を構成する原子としては、炭素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等が挙げられ、該原子の数としては、3〜10等が挙げられる。これらの中でも、炭素原子が主体として構成され、必要により窒素原子等を有する5〜8員環の環構造を有する重合性不飽和単量体を用いることが好ましい。また、光沢、肉持ち感や耐候性の点から、脂環式構造であることが好ましい。更に、環構造が官能基を有していても有していなくてもよい。このような重合性不飽和単量体は、環構造を分子の主鎖や側鎖中及び末端のいずれの部分に有していてもよい。更に、環構造が、ポリオール(A1)を架橋させたときに架橋部位に存在するものであれば、塗膜の硬度を向上させることができる。上記環構造を有する重合性不飽和単量体は単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0026】
上記環構造を有する重合性不飽和単量体の具体的な化学名や商品名としては、例えば、以下の(1)〜(7)に記載するもの等が挙げられる。
(1)環構造を有する(メタ)アクリル酸エステル:シクロヘキシルメタクリレート(商品名:ライトエステルCH、共栄社化学社製)、シクロヘキシルアクリレート、tert−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロオクチル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート(商品名:ライトエステルTHF、共栄社化学社製)、テトラヒドロフルフリルアクリレート(商品名:ライトアクリレートTHF−A、共栄社化学社製)、ベンジルメタクリレート(商品名:ライトエステルBZ、共栄社化学社製)、フェノキシエチルメタクリレート(商品名:ライトエステルPO、共栄社化学社製)、フェノキシエチルアクリレート(商品名:ライトアクリレートPO−A、共栄社化学社製)、イソボルニルメタクリレート(商品名:ライトエステルIB−X、共栄社化学社製)、イソボルニルアクリレート(商品名:FA−544A、日立化成工業社製;商品名:ライトアクリレートIB−XA、共栄社化学社製):ジシクロペンタニルメタクリレート(商品名:FA−513M、日立化成工業社製)、ジシクロペンタニルアクリレート(商品名:FA−513A、日立化成工業社製)、ジシクロペンテニルアクリレート(商品名:FA−511A、日立化成工業社製)、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート(商品名:FA−512M、FA−512MT、日立化成工業社製)、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート(商品名:FA−512A、日立化成工業社製)、モルホリンアクリレート、トリブロモフェニルメタクリレート、4−メチルシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート等。
(1)の中でもシクロアルキル構造を有する(メタ)アクリル酸エステルが好ましい。
【0027】
(2)エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステル:グリシジル(メタ)アクリレート、α−メチルグリシジルアクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルアクリレート(商品名:CYCLOMER A200、ダイセル化学工業社製)、α−メチルグリシジルメタクリレート(商品名:M−GMA、ダイセル化学工業社製)、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート(商品名:CYCLOMER M100、ダイセル化学工業社製)等。
【0028】
(3)紫外線吸収能を有する(メタ)アクリル酸エステル:2− [2′−ヒドロキシ−5′−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル] −2H−ベンゾトリアゾール、2− [2′−ヒドロキシ−5′−(メタ)アクリロイルオキシプロピルフェニル] −2H−ベンゾトリアゾール、2− [2′−ヒドロキシ−5′−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルフェニル] −2H−ベンゾトリアゾール、2− [2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル] −2H−ベンゾトリアゾール、2− [2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル] −5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2− [2′−ヒドロキシ−5′−tert−ブチル−3′−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル] −2H−ベンゾトリアゾール、2− [2′−ヒドロキシ−5′−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル] −5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2− [2′−ヒドロキシ−5′−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル] −5−メトキシ−2H−ベンゾトリアゾール、2− [2′−ヒドロキシ−5′−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル] −5−シアノ−2H−ベンゾトリアゾール、2− [2′−ヒドロキシ−5′−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル] −5−tert−ブチル−2H−ベンゾトリアゾール、2− [2′−ヒドロキシ−5′−(β−メタクリロイルオキシエトキシ)−3′−tert−ブチルフェニル] −4−tert−ブチル−2H−ベンゾトリアゾール等。市販のものとしては、例えば、RUVA−93(商品名、大塚化学社製)等が挙げられる。
【0029】
また、2−ヒドロキシ−4−メタクリルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(2−ヒドロキシ−3−メタリロイルオキシ)プロポキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(2−メタクリルオキシ)エトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ビニルオキシカルボニルメトキシベンゾフェノン等も挙げられる。中でも、2−ヒドロキシ−4−メタクリルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(2−メタクリルオキシ)エトキシベンゾフェノンが好ましい。
【0030】
(4)ピペリジン骨格を有する(メタ)アクリル酸エステル:4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルアミノ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−クロトノイル−4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等。
市販されているものとしては、反応性ヒンダードアミン系光安定剤(反応性HALS)等が挙げられ、例えば、アデカスタブLA−82、アデカスタブLA−87(商品名、旭電化工業社製)、FA−711MM、FA−712HM(商品名、日立化成工業社製)等が挙げられる。
【0031】
(5)多官能重合性(メタ)アクリル酸エステル:2,2−ビス [4−(メタクリロキシエトキシ)フェニル] プロパンジアクリレート、2,2−ビス [4−(メタクリロキシジエトキシ)フェニル] プロパンジアクリレート、2,2−ビス[4−(メタクリロキシポリエトキシ)フェニル] プロパンジアクリレート、EO変性ビスフェノールAジアクリレート、PO変性ビスフェノールAジアクリレート、2,2−ビス [4−(メタクリロキシジエトキシ)フェニル] プロパンジメタクリレート等。
【0032】
(6)その他:シクロヘキサンカルボン酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル;N−ビニルピロリドン、N−ビニルオキサゾリドン、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、N−ビニルピリジン、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルピロール、N−ビニルサクシンイミド等の窒素原子を有する重合性不飽和単量体;ベンジルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル等のビニルエーテル;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香族ビニル系単量体;マクロマーであるAS−6、AN−6等の化合物(いずれも商品名、東亞合成化学工業社製)、無水マレイン酸、m−イソプロペニル−α,αジメチルベンジルイソシアネート(商品名:m−TMI、武田薬品工業社製)等。
上記環構造を有する重合性不飽和単量体としては、(1)、(3)、(4)から選択される少なくとも1の環構造を有する重合性不飽和単量体を用いる事が好ましい。
【0033】
上記環構造を有する重合性不飽和単量体の共重合割合が10.0重量%未満であると、本発明の塗料用樹脂組成物から形成される塗膜の硬度及び光沢が充分に向上しない。より好ましくは、20.0〜100重量%であり、更に好ましくは、30.0〜100重量%である。
【0034】
本発明においては、ポリオール(A1)を形成する重合性不飽和単量体組成物が、シクロアルキル構造を有する重合性不飽和単量体を含むことが好ましい。上記シクロアルキル構造を有する重合性不飽和単量体とは、シクロアルキル構造を分子内に少なくとも1つ有する重合性不飽和単量体である。このような重合性不飽和単量体は、シクロアルキル構造を分子の主鎖や側鎖中及び末端のいずれの部分に有していてもよい。このような重合性不飽和単量体により共重合体中に導入されたシクロアルキル構造は、樹脂の劣化を抑制して塗膜の耐候性を向上させることができる。また、塗膜の硬度、光沢、肉持感、耐溶剤性等の性能を向上させることができるとともに、耐候性を著しく向上させることができるものである。更に、上記シクロアルキル構造を有する重合性不飽和単量体と、紫外線安定基を有する重合性不飽和単量体の併用が好ましく、例えば、さらに上記反応性ヒンダードアミン系光安定剤(HALS)等0.1〜10.0重量%とを併用することにより、耐候性が一層向上する。好ましくは、0.2〜5.0重量%、より好ましくは、0.3〜3.0重量%である。
本明細書中において、耐候性とは、塗膜を屋外に曝露したときの耐久性を意味する。上記耐候性は、例えば、光沢保持性、耐変色性、耐水性、耐クラック性、耐ブリスター性等により評価することができる。
【0035】
上記シクロアルキル構造を有する重合性不飽和単量体としては特に限定されず、例えば、下記一般式(1)で表される重合性不飽和単量体であることが好ましい。
【0036】
【化1】

【0037】
式中、R1は、水素原子又は炭素数1若しくは2の炭化水素基を表す。Zは、置換基を有してもよい炭素数3〜36のシクロアルキル構造を有するエステル基である。上記置換基を有してもよいシクロアルキル構造における置換基としては特に限定されず、例えば、炭素数1〜18の炭化水素基等が挙げられる。
上記炭素数1又は2の炭化水素基としては特に限定されず、例えば、メチル基、エチル基等が挙げられる。
【0038】
上記置換基を有してもよいシクロアルキル構造におけるシクロアルキル構造としては特に限定されず、例えば、シクロブチル構造、シクロペンチル構造、シクロヘキシル構造、シクロヘプチル構造、シクロオクチル構造、シクロノニル構造、シクロデシル構造、シクロウンデシル構造、シクロドデシル構造、シクロトリデシル構造、シクロテトラデシル構造、シクロペンタデシル構造、シクロヘキサデシル構造、シクロヘプタデシル構造、シクロオクタデシル構造等が挙げられる。
【0039】
上記一般式(1)で表される重合性不飽和単量体としては特に限定されず、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、tert−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロオクチル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート、イソボルニルメタクリレート(商品名:ライトエステルIB−X、共栄社化学社製)、イソボルニルアクリレート(商品名:FA−544A、日立化成工業社製;商品名:ライトアクリレートIB−XA、共栄社化学社製)、ジシクロペンタニルメタクリレート(商品名:FA−513M、日立化成工業社製)、ジシクロペンタニルアクリレート(商品名:FA−513A、日立化成工業社製)、4−メチロールシクロヘキシルメチルアクリレート(商品名:CHDMMA、日本化成社製)、4−メチルシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。上記シクロアルキル構造を有する重合性不飽和単量体は単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0040】
上記シクロアルキル構造を有する重合性不飽和単量体の共重合割合としては特に限定されず、例えば、10.0〜100.0重量%であることが好ましい。10.0重量%未満であると、塗膜の硬度、光沢、肉持感等の基本性能が向上しないおそれがある。また、ポリオール(A1)が極めて高度な耐候性を有する塗膜を形成させる作用を有しなくなるおそれがある。より好ましくは、20.0〜100.0重量%である。
【0041】
上記ポリオール(A1)の場合、重合性不飽和単量体は、上記水酸基、環構造及びシクロアルキル構造からなる群より選択される2種以上の構造を有するものであってもよい。このような重合性不飽和単量体を含む場合には、当該重合性不飽和単量体の共重合割合を、上記水酸基を有する重合性不飽和単量体、環構造を有する重合性不飽和単量体、及び、シクロアルキル構造を有する重合性不飽和単量体のそれぞれの共重合割合に含めるものとする。
【0042】
上記ポリオール(A1)を形成する上記以外の重合性不飽和単量体としては特に限定されず、例えば、以下の(1)〜(10)に記載するもの等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0043】
(1)(メタ)アクリル酸エステル:メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n−ラウリル(メタ)アクリレート、n−ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、2−アセトアセトキシエチルアクリレート、2−アセトアセトキシエチルメタクリレート(商品名:AAEM、イースト社製)等。
【0044】
(2)酸性官能基を有する重合性不飽和単量体:(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、カルボキシル基末端カプロラクトン変性アクリレート、カルボキシル基末端カプロラクトン変性メタクリレート(商品名:プラクセルFMAシリーズ、ダイセル化学工業社製)等のカルボキシル基を有する重合性不飽和単量体;スルホエチル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルアシッドホスフェート等の酸性リン酸エステル系重合性不飽和単量体等。
【0045】
(3)ビニルエステル:酢酸ビニル、酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、オクチル酸ビニル、モノクロロ酢酸ビニル、アジピン酸ジビニル、メタクリル酸ビニル、クロトン酸ビニル、ソルビン酸ビニル、桂皮酸ビニル等。
【0046】
(4)珪素原子を有する重合性不飽和単量体:ビニルトリクロルシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、トリメチルシロキシエチルメタクリレート等。
【0047】
(5)ハロゲン原子を有する重合性不飽和単量体:トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、ヘプタドデカフルオロデシル(メタ)アクリレート、β−(パーフロロオクチル)エチル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロプロピルメタクリレート、トリブロモフェノール3EO付加メタクリレート、パーフロロオクチルエチル(メタ)アクリレート等。
【0048】
(6)窒素原子を有する重合性不飽和単量体:(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、tert−ブチルアクリルアミド、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−エトキシメチルアクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N′−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N′−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−メチル−N−ビニルホルムアミド、メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルアミノエチルメタクリレート硫酸塩、モルホリンEO付加メタクリレート、N−ビニルメチルカルベメート、N,N−メチルビニルアセトアミド、イミド(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート4級化物、ジアセトンアクリルアミド等。
【0049】
(7)多官能重合性不飽和単量体:エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール#200ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール#400ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール#600ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール#1000ジアクリレート、1,3―ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール#400ジ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリスアクリロイルオキシエチルフォスフェート、グリセリンジメタクリレート、2−ヒドロキシ−1,3−ジメタクリロキシプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等。尚、ポリエチレングリコール#200ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール#400ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール#600ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール#1000ジアクリレートとは、重合度が200のポリエチレングリコール、重合度が400のポリエチレングリコール、重合度が600のポリエチレングリコール、重合度が1000のポリエチレングリコール、又は、重合度が400のポリプロピレングリコールと(メタ)アクリル酸とのエステルである。
【0050】
(8)ビニルエーテル:ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソプロピルエーテル、ビニル−n−プロピルエーテル、ビニルイソブチルエーテル、ビニル−n−ブチルエーテル、ビニル−n−アミルエーテル、ビニルイソアミルエーテル、ビニル−2−エチルヘキシルエーテル、ビニル−n−オクタデシルエーテル、シアノメチルビニルエーテル、2,2−ジメチルアミノエチルビニルエーテル、2−クロルエチルビニルエーテル、β−ジフルオロメチルビニルエーテル、ジビニルエーテル、ジビニルアセタール等。
【0051】
(9)イソシアネート(NCO)基を有する重合性不飽和単量体:2−メタクロイルオキシエチルイソシアネート(商品名:カレンズMOI、昭和電工社製)、メタクロイルイソシアネート(商品名:MAI、日本ペイント社製)等。
(10)塩化ビニル、塩化ビニリデン、マクロマーであるAA−6等の化合物(商品名、東亞合成化学工業社製)等。
【0052】
上記ポリオール(A1)において、上記(1)〜(10)に示したような重合性不飽和単量体の共重合割合としては、ポリオール(A1)を形成する重合性不飽和単量体組成物100重量%中0.0〜90.0重量%であれば特に限定されるものではなく、必要に応じて用いられることになる。
【0053】
上記ポリオール(A2)は、直鎖分岐構造を有する重合性不飽和単量体を必須として形成されることになるが、該重合性不飽和単量体を用いることにより、得られる塗料用樹脂組成物から形成される塗膜の硬度、光沢、肉持ち感等の基本性能を向上させることができることとなる。この場合には、特にハイソリッド化の面で優れた作用効果を発揮させることができることとなる。
【0054】
上記直鎖分岐構造を有する重合性不飽和単量体としては、直鎖分岐構造を分子内に少なくとも1つ有し、SP値が9.5以下であり、かつ単独重合体のガラス転移点(Tg)が60℃以上である重合性不飽和単量体であればよく、直鎖分岐構造を構成する原子の種類、数等は特に限定されない。例えば、直鎖分岐構造を構成する原子としては、炭素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等が挙げられ、該原子の数としては、3〜10等が挙げられる。これらの中でも、炭素原子が主体として構成される重合性不飽和単量体を用いることが好ましい。また、直鎖分岐構造が官能基を有していても有していなくてもよい。このような重合性不飽和単量体は、直鎖分岐構造を分子の主鎖や側鎖中及び末端のいずれの部分に有していてもよい。更に、直鎖分岐構造が、ポリオール(A2)を架橋させたときに架橋部位に存在するものであれば、塗膜の硬度を向上させることができる。上記直鎖分岐構造を有する重合性不飽和単量体は単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0055】
上記直鎖分岐構造を有する重合性不飽和単量体におけるSP値の好ましい形態としては、9.3以下である。より好ましくは、9.1以下である。また、単独重合体のガラス転移点(Tg)の好ましい形態としては、100℃以上である。本発明におけるSP値は、Journal of Coationgs Technology, Vol.55, No.696, January(1983)(英)p.99−109で与えられる式を用いて求めた値である。
【0056】
上記直鎖分岐構造を有する重合性不飽和単量体の具体的な化学名としては、例えば、tert−ブチルメタクリレート、iso−ブチルメタクリレート、sec−ブチルメタクリレート等が挙げられる。これらの中でも、tert−ブチルメタクリレートが好ましい。
【0057】
上記直鎖分岐構造を有する重合性不飽和単量体の共重合割合が25.0重量%未満であると、本発明の塗料用樹脂組成物のハイソリッド化を達成することができなくなる。80.0重量%を超えると、塗膜硬度を付与するために必要な水酸基を有する重合性不飽和単量体の共重合割合が少なくなるため、塗膜硬度が低下することになる。好ましくは、30.0〜60.0重量%である。
【0058】
上記ポリオール(A2)の場合、重合性不飽和単量体は、上記水酸基及び直鎖分岐構造を有するものであってもよい。このような重合性不飽和単量体を含む場合には、当該重合性不飽和単量体の共重合割合を、上記水酸基を有する重合性不飽和単量体、及び、直鎖分岐構造を有する重合性不飽和単量体のそれぞれの共重合割合に含めるものとする。
【0059】
上記ポリオール(A2)を形成する上記以外の重合性不飽和単量体としては特に限定されず、例えば、ポリオール(A1)において上述した(1)〜(10)に記載するもの等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。なお、上記(1)〜(10)には、直鎖分岐構造を有する重合性不飽和単量体も含まれているため、ポリオール(A2)を形成する上記以外の重合性不飽和単量体としてはこれらを除いたものとなる。
【0060】
上記ポリオール(A2)において、上記(1)〜(10)に示したような重合性不飽和単量体(直鎖分岐構造を有する重合性不飽和単量体を除く)の共重合割合としては、ポリオール(A2)を形成する重合性不飽和単量体組成物100重量%中0〜55重量%であれば特に限定されるものではなく、必要に応じて用いられることになる。
【0061】
本発明においては、上記ポリオール(A1)やポリオール(A2)が、(メタ)アクリル系重合体であることが好ましい。これにより、ポリオールの耐候性が向上することとなる。より好ましくは、(メタ)アクリル系重合性不飽和単量体が80重量%以上である。尚、(メタ)アクリル系重合体とは、(メタ)アクリル系重合性不飽和単量体を50重量%以上含む重合性不飽和単量体組成物より形成される重合体であることを意味する。(メタ)アクリル系重合性不飽和単量体とは、(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸エステルのことを意味する。
【0062】
上記ポリオール(A1)やポリオール(A2)はまた、水酸基価が30〜300mg・KOH/gであることが好ましい。30mg・KOH/g未満であると、ポリオールを架橋させたときに架橋密度が充分とならないので、塗料用樹脂組成物が、硬度と可撓性とのバランスがとれた塗膜を形成することができなくなるおそれがある。300mg・KOH/gを超えると、ポリオールの粘度が高くなるので、塗料用樹脂組成物の作業性が悪くなるおそれがある。より好ましくは、60〜200mg・KOH/gである。
【0063】
上記ポリオール(A1)やポリオール(A2)は更に、数平均分子量が1000〜15000であることが好ましい。1000未満であると、硬化させた際に硬化が充分に進まないおそれがある。15000を超えると、ポリオールの粘度が高くなるので、得られる塗料用樹脂組成物の粘度が高くなり、作業性が悪くなるおそれがある。より好ましくは、1300〜10000であり、更に好ましくは、1500〜7000である。
【0064】
上記ポリオール(A1)やポリオール(A2)の合成において、上述した重合性不飽和単量体組成物の共重合方法としては特に限定されず、例えば、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合、配位重合等の連鎖重合反応を利用する方法;付加縮合、ポリ縮合、脱離重縮合、ポリ付加反応等の逐次反応を利用する方法;開環重合等の開環反応を利用する方法等を適用することができる。
【0065】
上記共重合の形態としては特に限定されず、例えば、通常の塊状重合、溶液重合等により、重合条件を適宜設定して行えばよい。また、重合開始剤、連鎖移動剤、重合禁止剤、光重合触媒、還元剤等の添加剤、溶媒の有無や使用量等も適宜設定して行えばよい。これらはそれぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0066】
上記重合開始剤としては特に限定されず、例えば、2,2′−アゾビス−(2−メチルブチロニトリル)(商品名:ABN−E、日本ヒドラジン工業社製)、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル(商品名:AIBN、日本ヒドラジン工業社製)、2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(商品名:ABN−V、日本ヒドラジン工業社製)等のアゾ系開始剤;ベンゾイルパーオキサイド(商品名:ナイパーBW、日本油脂社製)、1,1―ビス(tert−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(商品名:パーヘキサ3M、日本油脂社製)、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(商品名:パーブチルO、日本油脂社製)等のパーオキサイド系開始剤等が挙げられる。これらの重合開始剤の使用量としては特に限定されず、例えば、重合性不飽和単量体組成物の総重量に対して、0.05〜25重量%が好ましい。より好ましくは、1.0〜20重量%である。より好ましくは、3.0〜15重量%である。
【0067】
上記連鎖移動剤としては特に限定されず、例えば、n−ブチルメルカプタン、n−ヘキシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン、セチルメルカプタン、ステアリルメルカプタン等のアルキルメルカプタン類;チオグルコール酸、チオグリセロール、エチレンチオグリコール、チオグリコール酸2−エチルヘキシル、2−メルカプトエタノール、メルカプトグリセリン、メルカプトコハク酸、メルカプトプロピオン酸等のその他のメルカプタン類;四塩化炭素、クロロホルム、トリクロロブロモエタン、ブロモホルム等のハロゲン化合物;ジスルフィド、Dimethylxanthogen disulfide、第2級アルコール、イソプロピルアルコール、ジオキサン、テトラヒドロフラン、イソプロピルベンゾール、α−メチルスチレンダイマー、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。これらの連鎖移動剤の使用量としては特に限定されず、例えば、重合性不飽和単量体組成物の総重量に対して、0.1〜10重量%であるのが好ましい。
【0068】
上記光重合触媒としては特に限定されず、例えば、アセトフェノン系化合物、ベンゾインエーテル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、チオキサントン系化合物等が挙げられる。これらの光重合触媒の使用量としては特に限定されず、例えば、重合性不飽和単量体組成物の総重量に対して、0.1〜30重量%であるのが好ましい。より好ましくは、1〜5重量%である。
【0069】
上記共重合の際に用いられる反応溶剤としては特に限定されず、以下の(1)〜(6)に記載する有機溶剤等が挙げられる。
(1)炭化水素系溶剤:トルエン、キシレン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、スワゾール1000(商品名、丸善石油化学社製)、スワゾール1500(商品名、丸善石油化学社製)、ミネラルスピリット(商品名、ペガソールAN−45、モービル石油社製)、HAWS、LAWS(商品名、シェル社製)等。
【0070】
(2)エステル系溶剤:酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸n−アミル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート(セロソルブアセテート)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(商品名:アーコソブルPMA、クラレ社製)、酢酸tert−ブチル等。
(3)ケトン系溶剤:アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルn−アミルケトン等。
【0071】
(4)アルコール系溶剤:メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル(商品名:PGM、クラレ社製)、プロピレングリコールモノエチルエーテル(商品名:PE、クラレ社製)、プロピレングリコール−tert−ブチルエーテル(商品名:PTB、クラレ社製)、3−メチル−3−メトキシブタノール(商品名:ソルフィット、クラレ社製)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(商品名:D−PGM、クラレ社製)等。
【0072】
(5)エーテル系溶剤:エチレングリコールモノメチルエーテル(メチルセロソルブ)、エチレングリコールモノエチルエーテル(エチルセロソルブ)、エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(エチルカルビトール)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルカルビトール)等。
(6)その他の溶剤:テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジオキサン、クロロホルム等。
【0073】
本発明におけるポリエーテルポリオール(B)としては特に限定されず、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリンのプロピレンオキサイド付加物、グリセリンのエチレンオキサイド付加物、トリメチロールプロパンのエチレンオキサイド付加物、トリメチロールプロパンのプロピレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、水素化ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物、水素化ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物等のポリエーテルポリオール;エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、イソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン等のアルカノールアミン類;エチレンジアミン、アニリン、トリレンジアミン、N−アミノエチルピペラジン、イソフォロンジアミン、フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、キシレンジアミン等のアミン類にエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等を付加して得られるアミンポリエーテル等が挙げられる。
【0074】
上記ポリエーテルポリオール(B)に用いることができる市販品としては、例えば、アデカポリエーテルのPシリーズ、BPXシリーズ、BEXシリーズ、Gシリーズ、Tシリーズ、EDPシリーズ、SPシリーズ、SCシリーズ、MGシリーズ(いずれも商品名、旭電化工業社製)等が挙げられる。これらの中でも、Pシリーズ、Gシリーズ、Tシリーズ、EDPシリーズが好ましい。
【0075】
上記ポリエーテルポリオール(B)の中でも、分子内に平均2〜4個の水酸基を有し、かつ、平均水酸基価が30〜600mg・KOH/gであるものが好ましい。分子内の水酸基が平均5個を超えると、ポリエーテルポリオール(B)の粘度が高くなり、高粘度液体、ペースト状、固形状となるので、塗料用樹脂組成物の粘度を下げる作用が低減し、得られる塗料用樹脂組成物をハイソリッド化することが困難となるおそれがある。また、平均水酸基価が30mg・KOH/g未満であると、ポリエーテルポリオール(B)の分子量が5000を超え、架橋間距離が長くなりすぎるため、ポリエーテルポリオール(B)部分の架橋密度が低すぎ、得られる塗膜の硬度が低くなるおそれがある。平均水酸基価が600mg・KOH/gを超えると、ポリエーテルポリオール(B)の粘度が高くなり、高粘度液体、ペースト状、固形状となる。そのため、塗料用樹脂組成物を低粘度化することが困難となるので、作業性が悪くなるおそれがある。より好ましくは100〜450mg・KOH/gである。
【0076】
上記ポリエーテルポリオール(B)はまた、数平均分子量が5000以下であることが好ましい。5000を超えると、粘度が高くなるおそれがある。より好ましくは、2000以下である。
【0077】
上記ポリエーテルポリオール(B)の粘度としては特に限定されず、例えば、塗料用樹脂組成物をハイソリッド型の塗料用として用いるためには、2000mPa・s以下であることが好ましい。2000mPa・sを超えると、塗料用樹脂組成物の粘度が高くなって作業性が悪くなり、ハイソリッド型の塗料として用いることが困難となるおそれがある。
【0078】
本発明においては、ポリオール(A1)又はポリオール(A2)とポリエーテルポリオール(B)とからなるポリオール(以下、単にポリオールという)は、水酸基価が50〜300mg・KOH/gであることが好ましい。50mg・KOH/g未満であると、架橋させたときに架橋密度が低すぎ、得られる塗膜の硬度が低くなるおそれがあり、300mg・KOH/gを超えると、塗料用樹脂組成物が高粘度液体、ペースト状となるおそれがあるので、低粘度化することが困難となり、作業性が悪くなるおそれがある。より好ましくは、90〜300mg・KOH/gである。
【0079】
本発明における上記溶剤(C)としては、ポリオール(A1)又はポリオール(A2)並びにポリエーテルポリオール(B)を溶解させることができるものであれば特に限定されず、例えば、ポリオール(A1)やポリオール(A2)を重合する際に用いられる、上述した反応溶剤と同じもの等が挙げられる。尚、後述する硬化性塗料組成物において、常温硬化のイソシアネート架橋を行う場合には、アルコール系溶媒とイソシアネートとが反応するので、アルコール系溶媒を用いないことが好ましい。
【0080】
本発明の塗料用樹脂組成物は、本発明の奏する効果が損なわれることがない限り、ポリオール以外の樹脂を含んでもよい。
上記樹脂としては特に限定されず、例えば、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリウレタン、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアミド、ポリブタジエン、ポリビニルアルコール系樹脂、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)樹脂、アセテート樹脂、アクリル樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、塩素化ポリプロピレン、アルキッド樹脂、シリコン樹脂、酢酸ビニル樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂、ポリエステル変性アクリル樹脂等の変性樹脂、セルロース誘導体、塩化ビニルオルガノゾル、オルガノシリケートの縮合物等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0081】
本発明の塗料用樹脂組成物を調整する方法としては特に限定されず、例えば、ポリオール(A1)やポリオール(A2)を重合後、ポリエーテルポリオール(B)及び溶剤(C)と混合して塗料用樹脂組成物を調製する方法;ポリオール(A1)やポリオール(A2)をポリエーテルポリオール(B)及び/又は溶剤(C)の一部又は全部の存在下で重合後、残りのポリエーテルポリオール(B)及び/又は溶剤(C)を加えて塗料用樹脂組成物を調製する方法等が挙げられる。
【0082】
本発明の塗料用樹脂組成物は、作業性や塗料組成物としたときの塗装作業性を損なうことなくハイソリッド化することができるものである。このような塗料用樹脂組成物とするためには、ポリオール(A1)又はポリオール(A2)、ポリエーテルポリオール(B)並びに溶剤(C)の種類と含有量とを適宜設定することにより達成することができる。これにより、本発明の塗料用樹脂組成物は、いわゆるハイソリッド塗料用樹脂組成物として好適に用いることができるものとなる。
【0083】
上記ハイソリッド塗料用樹脂組成物とは、低溶剤量で取り扱い性に優れたものであり、また、塗装粘度に希釈する際の溶剤の量を少なくすることができ、省資源や環境の保護に対する要求を満たすものである。本明細書中においては、縦軸を対数目盛りとする片対数座標、すなわちlog関数座標において、塗料用樹脂組成物の固形分(重量%)を横軸とし、その25℃での粘度(mPa・s)を縦軸とし、点A(固形分40重量%、粘度50mPa・s)と点B(固形分60重量%、粘度400mPa・s)と点C(固形分90重量%、粘度10000mPa・s)とを結ぶ折れ線ABCより下の範囲にある塗料用樹脂組成物をハイソリッド塗料用樹脂組成物と定義する。本発明のハイソリッド塗料用樹脂組成物においては、上述した、樹脂固形分とその塗料用樹脂組成物の示す25℃での粘度の関係が、上述のグラフで記載した範囲内である事が、作業性の点で、好ましい実施形態である。この場合、固形分50〜90重量%のときの粘度が折れ線ABCより下の範囲にあることが好ましい。より好ましくは、固形分60〜90重量%のときの粘度が折れ線ABCより下の範囲にあることである。また、折れ線ABCより粘度が高粘度側にあっても、酢酸エチルで50重量%に希釈したとき、150mPa・sより低粘度となるときもハイソリッド塗料用樹脂組成物とする。このように、塗料用樹脂組成物の固形分を40〜90重量%としたときに、粘度が上記の範囲を満たすと、塗料用樹脂組成物から構成される塗料組成物を溶剤等により塗装粘度に希釈するときに溶剤の量を少なくすることができ、省資源や環境の保護に対する要求を満たすものとなる。
【0084】
本発明の塗料用樹脂組成物は、硬化性塗料組成物を構成することができるものである。また、インキ用バインダーとしても用いることができるものである。
上記硬化性塗料組成物は、本発明の塗料用樹脂組成物に、必要に応じて顔料や添加剤、上述した溶剤等を添加し、硬化させるための架橋剤を添加することにより調製することができる。これにより、本発明の塗料用樹脂組成物と、架橋剤とを含む硬化性塗料組成物を得ることができる。このような硬化性塗料組成物もまた、本発明の一つである。
【0085】
上記硬化性塗料組成物に顔料、添加剤や溶剤等を含有させる場合、これらの使用量や、溶解及び分散方法としては特に限定されず、例えば、通常、ポリエーテルポリオールやアクリルポリオールに用いられる使用量や、溶解及び分散方法とすればよい。
【0086】
上記顔料としては特に限定されず、例えば、以下の(1)〜(10)に記載するもの等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
(1)体質顔料:重質炭酸カルシウム、軽微性炭酸カルシウム、寒水石、カオリン、クレー、陶土、チャイナグレー、珪藻土、含水微粉珪酸、タルク、硫酸バリウム、沈降性硫酸バリウム、炭酸バリウム、シリカ粉、ウオラストナイト等。
【0087】
(2)金属粉顔料:アルミ粉、銅粉、ステンレススチール粉、ニッケル粉等。
(3)無機顔料:ルチル型酸化チタン、アナターゼ型酸化チタン、三酸化アンチモン亜鉛華、リトポン、鉛白、亜鉛華(酸化亜鉛)等の白色顔料;カーボンブラック、ランプブラック、黒鉛、鉄黒、銅・クロム系ブラック、銅・鉄・マンガン系ブラック、コバルト・鉄・クロム系ブラック等の黒色顔料;モリブレートオレンジ、ベンガラ等の赤・橙色顔料;黄鉛、黄色酸化鉄、黄土、チタンイエロー、チタン・アンチモン・クロムイエロー等の黄色顔料;クロムグリーン、酸化クロムグリーン、コバルト・チタン・ニッケル・亜鉛系グリーン、コバルト・アルミ・クロム系グリーン、コバルトグリーン等の緑色顔料;群青、紺青、コバルトブルー、コバルト・アルミ・クロムブルー等の青色顔料;コバルトバイオレット、マンガンバイオレット等の紫色顔料等。
【0088】
(4)有機顔料(赤・橙色顔料):パーマネントレッド4R、ジニトロアニリンオレンジ、ブリリアントカーミンFB、パーマネントレッドF5RK、ピラゾロンオレンジ、ピラゾロンレッド、ベンツイミダゾロンオレンジ等の不溶性アゾ顔料;パーマネントレッド2B、レーキレッド、ボルドー10B、ボンマルーンメジウム、ボンマルーンライト等の溶性アゾ顔料;アントラキノンレッド等のアントラキノン系顔料;チオインジゴボールド等のチオインジゴ系顔料;ペリレンレッド、ペリレンスカーレット、ペリレンマノルーン等のペリレン系顔料;キナクリドンレッド、キナクリドンマゼンタ、ジクロロキナクリロンマゼンタ、キナクリドンマルーン、キナクリロンスカーレット等のキナクリドン系顔料;ジケトピロロピロールレッド等のジケトピロロピロール系顔料等。
【0089】
(5)有機顔料(黄色顔料):ファーストイエローG、ファーストイエロー10G、ファーストイエロー5GX、ファーストイエローFGL、ベンツイミダゾロンイエローH3G、ベンツイミダゾロンイエローH4G等のモノアゾ系顔料;パーマネントイエローHR、縮合アゾ系顔料、イソインドリノンイエロー、イソインドリンイエロー系等のジスアゾ系顔料;アントラピリミジンイエロー、フラバントロンイエロー等のスレン(アントラキノン)系顔料;アゾメチン系銅錯体イエロー、ニトロソ系ニッケル錯体イエロー、ニッケルアゾイエロー等の金属錯体系顔料;キノフタロンイエロー等のキノフタロン系イエロー顔料等。
【0090】
(6)有機顔料(緑色顔料):塩素化フタロシアニングリーン、臭塩素化フタロシアニングリーン等。
(7)有機顔料(青色顔料):銅フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー、C.I.Pigment Blue 15:1、C.I.Pigment Blue 15:2、C.I.Pigment Blue 15:3、C.I.Pigment Blue 15:4、無金属フタロシアニンブルー、インダンスレンブルー等。
(8)有機顔料(紫色顔料):ジオキサジンバイオレット、キナクリドンバイオレット等。
【0091】
(9)防錆顔料:亜鉛末、亜酸化鉛、鉛丹、ジンククロメート、鉛酸カルシウム、ストロンチウムクロメート、シアナミド鉛、塩基性クロム酸鉛、塩基性硫酸鉛、リン酸塩系防錆顔料、モリブデン酸塩系防錆顔料、リンモリブデン酸塩系防錆顔料、MIO等。
(10)その他:蛍光顔料、ガラスビーズ、リサージ、真珠光沢顔料、白雲母、珪酸アルミニウム等。
上記顔料は、染付顔料としてもよい。
【0092】
上記添加剤としては特に限定されず、例えば、以下の(1)〜(16)に記載するもの等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
(1)レベリング剤:ポリビニルブチラール、ポリアルキルアクリレート、ジメチルシロキサン等。
(2)紫外線吸収剤:ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、サリシレート系、シアノアクリレート系、蓚酸アニリド系、トリアジン系等。
(3)紫外線安定剤:ヒンダードアミン系、ベンゾエート系等。
(4)抗酸化剤:「酸化防止剤ハンドブック」(猿渡健市、大成社、1976年発行)、「プラスチックス」誌、第43巻、11号(52〜54貢、1992年発行)等に記載されているフェノール系、チオエーテル系、ホスファイト系の化合物等。
(5)重合禁止剤:ハイドロキノン、メトキノン、ベンゾキノン、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール等。
【0093】
(6)充填剤:タルク、シリカ等。
(7)カップリング剤:シラン系、チタン系等。
(8)防錆剤:亜鉛、リン酸アルミニウム、アミノカルボン酸等。
(9)脱水剤:オルト蟻酸メチル、オルト蟻酸エチル等の加水分解エステル化合物等。
(10)抗菌剤:銀系、ゼオライト系、第4級アンモニウム塩系等。
(11)金属不活性化剤:ヒドラジン系等。
【0094】
(12)溶剤系用増粘剤:有機ベントナイト系、超微粉シリカ系、表面処理炭カル系、アマイドワックス系、水添ヒマシ油ワックス系、ベンジリデンソルビトール系、各種金属石鹸類、酸化ポリエチレン系、重合植物油系、硫酸エステル系アニオン活性剤、ポリエーテル・エステル型界面活性剤、ポリカルボン酸のアミン塩等。
(13)溶剤系分散剤・湿潤剤:高分子量不飽和ポリカルボン酸、ポリエーテル・ポリエステルカルボン酸塩、高分子ポリエステル酸ポリアミン塩、高分子量ポリカルボン酸の塩、リン酸エステル、高分子量ポリエステル酸のアマイドアミン塩、長鎖ポリアマイドリン酸塩、脂肪族ポリアマイド、長鎖ポリアミノアマイドと高分子ポリエステル酸の塩、リン酸エステル塩、高分子ポリエーテル系等。
【0095】
(14)消泡剤:シリコーン系消泡剤、オキシアルキレン系消泡剤、プロルニック型消泡剤、鉱物系消泡剤等。
(15)界面活性剤:「新界面活性剤」(堀口博、三協出版、1986年発行)に記載されているアニオン系、ノニオン系、両性イオン系等の化合物等。
(16)その他:補強剤、可塑剤、潤滑剤、防曇剤、防食剤、顔料分散剤、流動調整剤、過酸化物分解剤、鋳型脱色剤、蛍光性増白剤、有機防炎剤、無機防炎剤、滴下防止剤、溶融流改質剤、静電防止剤、防藻剤、防カビ剤、難燃剤、スリップ剤、金属キレート剤、アンチブロッキング剤、耐熱安定剤、加工安定剤、着色剤等。
【0096】
上記架橋剤を含むことにより、ポリオール(A1)又はポリオール(A2)どうし、ポリエーテルポリオール(B)どうしや、ポリオール(A1)又はポリオール(A2)とポリエーテルポリオール(B)とを架橋剤により架橋することができ、硬度を有し、しかも、可撓性をも有する塗膜を形成することができる。
【0097】
本発明の硬化性塗料組成物は、それが用いられる用途や架橋剤の種類によって様々な硬化条件で硬化させることができるものであり、常温硬化型、加熱硬化型等として用いることができる。また、架橋剤の使用量や、添加及び分散方法等は特に限定されず、例えば、通常のポリオールを含む硬化性塗料用組成物に用いられる使用量や、添加及び分散方法とすればよい。
【0098】
上記架橋剤としては、アクリルポリオールやポリエーテルポリオールに用いることができるものであれば特に限定されず、例えば、(ブロック)ポリイソシアネート化合物、アミノプラスト樹脂等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、(ブロック)ポリイソシアネート化合物を必須とするものであることが好ましい。
【0099】
上記(ブロック)ポリイソシアネート化合物とは、ポリイソシアネート化合物及び/又はブロックポリイソシアネート化合物を意味する。
上記ポリイソシアネート化合物としては、イソシアネート基を分子内に少なくとも2つ有する化合物であれば特に限定されず、例えば、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4′−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、リジンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,3−(イソシアナートメチル)シクロヘキサン、1,5−ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、メチル2,6−ジイソシアネートヘキサノエート、2−イソシアネートエチル−2,6−ジイソシアネートカプロエート等のポリイソシアネート;これらのポリイソシアネートのアダクト体、ビュレット体、イソシアヌレート体等のポリイソシアネートの誘導体(変性物)等が挙げられる。
【0100】
上記ブロックポリイソシアネート化合物とは、硬化性塗料組成物を加熱乾燥するときに架橋させ、かつ、常温での貯蔵安定性を向上させるために、通常、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基をブロック化剤でブロックしたものである。
上記ブロック化剤としては特に限定されず、例えば、ε−カプロラクタム、フェノール、クレゾール、オキシム、アルコール等の化合物等が挙げられる。
上記(ブロック)ポリイソシアネート化合物の市販品としては、例えば、スミジュールN3200、スミジュールN3300、スミジュールBL3175、デスモジュールN3400、デスモジュールN3600、デスモジュールVPLS2102(商品名、住友バイエルウレタン社製)、デュラネートE−402−90T(商品名、旭化成工業社製)、LTI(商品名、協和発酵工業社製)等が挙げられる。また、塗膜の黄変を防止するために、芳香環に直接結合したイソシアネート基を有しない無黄変性ポリイソシアネート化合物が好ましく、ハイソリッド化するときには、2−イソシアネートエチル2,6−ジイソシアネートカプロエート(商品名:LTI、協和発酵工業社製)が特に好ましい。
【0101】
上記(ブロック)ポリイソシアネート化合物の使用量としては特に限定されないが、例えば、上記ポリオールの水酸基1モルに対して、(ブロック)ポリイソシアネート化合物におけるイソシアネート基が0.6〜1.4モルとなるようにすることが好ましい。0.6モル未満であると、硬化性塗料組成物中に未反応の水酸基が多く残存するので、得られる硬化性塗料組成物を用いて形成される硬化塗膜の耐候性が低下することがある。1.4モルを超えると、未反応のイソシアネート基が塗膜中に多く残存し、これが塗膜硬化時に空気中の水分と反応して、塗膜が発泡や白化を起こすことがある。より好ましくは、0.8〜1.2モルである。
【0102】
上記アミノプラスト樹脂は、メラミンやグアナミン等のアミノ基を有する化合物とホルムアルデヒドとの付加縮合物であり、アミノ樹脂とも呼ばれているものである。
上記アミノプラスト樹脂としては特に限定されず、例えば、ジメチロールメラミン、トリメチロールメラミン、テトラメチロールメラミン、ペンタメチロールメラミン、ヘキサメチロールメラミン、完全アルキル型メチル化メラミン、完全アルキル型ブチル化メラミン、完全アルキル型イソブチル化メラミン、完全アルキル型混合エーテル化メラミン、メチロール基型メチル化メラミン、イミノ基型メチル化メラミン、メチロール基型混合エ―テル化メラミン、イミノ基型混合エーテル化メラミン等のメラミン樹脂;ブチル化ベンゾグアナミン、メチル/エチル混合アルキル化ベンゾグアナミン、メチル/ブチル混合アルキル化ベンゾグアナミン、ブチル化グリコールウリル等のグアナミン樹脂等が挙げられる。
【0103】
上記アミノプラスト樹脂の市販品としては、例えば、サイメル1128、サイメル303、マイコート506、サイメル232、サイメル235、サイメル771、サイメル325、サイメル272、サイメル254、サイメル1170(いずれも商品名、三井サイテック社製)等が挙げられる。
【0104】
上記アミノプラスト樹脂の使用量としては特に限定されず、例えば、上記ポリオールとアミノプラスト樹脂との固形分重量比が9/1〜6/4となるように配合することが好ましい。上記ポリオールが6/4より少なくなると、得られる塗膜が硬くなりすぎ、硬度と可撓性とのバランスが良好でなくなるおそれがある。上記ポリオールが9/1より多くなると、架橋が充分に進まないので、得られる塗膜が、耐水性や耐溶剤性に劣るものとなるおそれがある。
【0105】
上記架橋剤としては、上述したものを用いることができるが、本発明の塗料用樹脂組成物と1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する(ブロック)ポリイソシアネート化合物とを含む硬化性塗料組成物をビヒクルとした塗料は、上塗りクリヤー塗料として用いることができる。上塗り用クリヤー塗料は、通常、顔料を含まないものであるが、塗膜の透明感を損なわない程度に上記顔料を含めてもよい。このような上塗りクリヤー塗料を自動車外板に用いた場合、自動車外板に要求される耐擦り傷性及び近年問題となっている酸性雨に対する耐酸性が従来のアミノプラスト樹脂を用いるアクリル系上塗り用クリヤー塗料に比べて明らかに優れることになる。
【0106】
上記硬化性塗料組成物は、必要に応じて、ポリオールの水酸基と、架橋剤との架橋反応を促進させるための硬化触媒を含んでもよい。このような硬化触媒としては特に限定されず、例えば、上記(ブロック)ポリイソシアネート化合物を用いる場合には、後述するように特定温度以上で触媒能を発揮する感温性触媒、常温であっても加熱条件であっても触媒能を発揮するジブチル錫ジラウレート等の金属有機化合物、第3級アミン等の触媒を使用することが好ましく、上記アミノプラスト樹脂を使用する場合には、酸性又は塩基性の硬化触媒を使用することが好ましい。これらは単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらの中でも、(ブロック)ポリイソシアネート化合物を用いる場合には、感温性触媒又はジブチル錫ジラウレート等の金属有機化合物を用いることが好ましく、該金属有機化合物を用いるときには酸性物質を併用することが好ましい。すなわち本発明の硬化性塗料組成物の好ましい形態としては、上記架橋剤が、(ブロック)ポリイソシアネート化合物を必須とするものであり、更に、上記硬化性塗料組成物が、(1)金属有機化合物及び酸性物質を含む形態、又は、(2)感温性触媒を含む形態である。なお、金属有機化合物及び酸性物質と感温性触媒とを同時に用いてもよい。
【0107】
上記架橋剤が、(ブロック)ポリイソシアネート化合物を必須とするものである場合には、本発明の硬化性塗料組成物が乾燥過程で水酸基とイソシアネート基の反応によりウレタン結合を形成する反応硬化系塗料であるポリウレタン樹脂系塗料となるが、(1)の形態では、金属触媒と酸性物質を併用することにより、硬化過程での反応性が高く、かつ、形成する塗膜の外観が良好であり、しかも2液タイプの塗料の場合のポットライフを充分に維持することが可能となる。特にポリオールの分子量が小さくなると乾燥性を発現するためには添加触媒量を多くする必要があるため、塗料のポットライフが短くなってしまうが、この手法を用いるとポットライフを充分に維持することが可能となる。
【0108】
上記(1)の形態において、上記金属有機化合物とは、金属−炭素間結合を少なくとも1つ有する有機金属化合物や、金属−へテロ原子間結合を少なくとも1つ有する金属有機化合物であれば特に限定されず、例えば、有機金属化合物の他、有機金属化合物の脂肪酸塩、有機金属化合物のチオグリコール酸エステル塩、金属石鹸等が挙げられ、1種又は2種以上を用いることができる。なお、ここにいう金属石鹸とは、脂肪酸のアルカリ金属塩(狭義の石鹸)以外の金属塩を意味する。このような金属有機化合物としては、例えば、周期律表において3A〜7A、8、1B族に属する遷移金属元素及び2B〜6B族に属する金属元素を有する金属有機化合物であれば特に限定されるものではないが、錫、亜鉛、鉛及びビスマスからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属を有する金属有機化合物であることが好ましい。これらの中でも、硬化触媒能、耐候性、塗膜着色、コストの面から、錫の金属有機化合物を用いることが特に好ましい。
【0109】

上記錫の金属有機化合物としては、例えば、ジブチル錫ジクロライド等の有機錫化合物;ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジ(2−エチルへキサノエート)、ジブチル錫ジアセテート、ジへキシル錫ジアセテート、ジオクチル錫ジラウレート、スタナスオクトエート、テトラ−n−ブチル−1,3−ジアセトキシ−ジスタノキサン(商品名:TK−1、武田薬品工業社製)等の有機錫化合物の脂肪酸塩;ジメチル錫ビス(イソオクチルチオグリコール酸エステル)塩、ジメチル錫ビス(イソオクチルチオグリコール酸エステル)塩、ジオクチル錫ビス(イソオクチルチオグリコール酸エステル)塩等の有機錫化合物のチオグリコール酸エステル塩;オクチル酸錫、デカン酸錫等の金属石鹸等が挙げられる。
【0110】
上記亜鉛の金属有機化合物としては、例えば、2−エチルへキシル酸亜鉛、ナフテン酸亜鉛等が挙げられる。鉛の金属有機化合物としては、例えば、ステアリン酸鉛、2−エチルへキシル酸鉛、ナフテン酸鉛等が挙げられ、ビスマスの金属有機化合物としては、例えば、2−エチルヘキシル酸ビスマス、ナフテン酸ビスマス等が挙げられる。
【0111】
上記硬化性塗料組成物中の金属有機化合物の重量割合としては、例えば、硬化性塗料組成物100重量%に対して、1ppm〜5重量%とすることが好ましい。1ppm未満であると、所望の反応硬化性が得られないため、塗膜の耐候性、耐薬品性、耐水性等が低下するおそれがあり、5重量%を超えると、反応硬化性が著しく速くなり、良好な塗膜外観が得られないおそれや、塗料のポットライフを維持できなくなるおそれがある。より好ましくは、10ppm〜1重量%であり、更に好ましくは、50ppm〜0.5重量%である。
【0112】
上記酸性物質とは、単独使用の場合は反応における触媒活性を発揮するが、上記金属有機化合物との併用時には、金属有機化合物の触媒活性を抑制する働きのあるものである。また、25℃水溶液中でのpKaが0.66であるトリクロロ酢酸以上の酸性を示す化合物を意味し、カルボン酸を用いることが好適である。カルボン酸の中でも、常温(25℃)で液体であり、常圧の沸点が350℃以下のものが好ましく、使用条件によっては、硬化反応条件下で揮発性のあるカルボン酸を選択することが特に好ましい場合もある。上記酸性物質は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0113】
上記カルボン酸としては、例えば、アルキルカルボン酸、アラルキルカルボン酸、アリールカルボン酸、アルカリールカルボン酸、シクロアルキルカルボン酸、アルケニルカルボン酸、シクロアルケニルカルボン酸等の炭化水素系カルボン酸、置換炭化水素系カルボン酸等や、これらの置換体等が挙げられる。より好ましくは、アルキルカルボン酸、アリールカルボン酸、アルケニルカルボン酸、シクロアルキルカルボン酸であり、更に好ましくは、アルキルカルボン酸である。
【0114】
上記アルキルカルボン酸としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、ヘキサン酸、2−エチルへキサン酸、オクタン酸、デカン酸、ラウリン酸、ステアリン酸、クロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸等が挙げられる。好ましくは、全炭素数が2〜20のアルキルカルボン酸である。全炭素数が2未満であったり、20を超えたりすると、本発明の効果が充分に発揮できないおそれがある。また、塗料形態が2液型であり、しかも、硬化反応温度が100℃以下である場合には、常温において液体であり、硬化反応条件下で揮発性のある全炭素数が2〜6のカルボン酸を選択することが、作業性上、塗膜物性上好ましく、更に皮膚腐食性や毒性等の安全面、コスト面において、酢酸やプロピオン酸を選択することが特に好ましい。
【0115】
上記硬化性塗料組成物中の酸性物質の重量割合としては、例えば、硬化性塗料組成物100重量%に対して、10ppm〜10重量%とすることが好ましい。より好ましくは、50ppm〜5重量%であり、更に好ましくは、100ppm〜3重量%である。また、酸性物質と金属有機化合物とのモル比(酸性物質のモル数/金属有機化合物とのモル数)としては、1/3〜200/1とすることが好ましい。より好ましくは、1/2〜150/1であり、更に好ましくは、1/1〜100/1である。
【0116】
上記(2)の形態において、感温性触媒とは、水酸基とイソシアネート基との反応の触媒の中で、60℃以上で触媒活性を示す触媒を意味し、このような感温性触媒は通常の触媒とは異なり、触媒能を発揮する温度以下では水酸基とイソシアネート基の反応を促進しない。従って、塗料形態が2液の場合、このような感温性触媒を用いることにより、速乾性であり、かつ、良好なポットライフを維持することが可能となる。また、塗工は通常、室温で行われるので塗工直後は水酸基とイソシアネート基との反応が進行しないため塗膜が充分にレベリングする時間があり、高外観も発現することが可能となる。より好ましくは、70℃以上で触媒活性を示す触媒を感温性触媒として用いることである。
【0117】
上記感温性触媒の具体的な化学名や商品名としては、例えば、80℃で水酸基とイソシアネート基との反応の触媒活性を示す、モノ−n−ブチル錫脂肪酸塩(商品名:SCAT−24、三共有機合成社製)が挙げられる。また、この触媒を用いるときは硬化性塗料組成物中に酸が含まれるとポットライフが短くなる傾向があるため、酸を含まないことが好ましい。
【0118】
上記硬化性塗料組成物中の感温性触媒の重量割合としては、例えば、硬化性樹脂組成物100重量%に対して、10ppm〜5重量%とすることが好ましい。10ppm未満であると、所望の硬化性が得られず、塗膜の耐候性、耐薬品性、耐水性等が低下するおそれがある。5重量%を超えると、反応硬化性が著しく速くなり、良好な塗膜外観が得られないおそれがあり、また、塗料のポットライフも維持できなくなるおそれがある。より好ましくは、30ppm〜2重量%であり、更に好ましくは、50ppm〜1重量%である。
【0119】
本発明の硬化性塗料組成物において用いることができる硬化触媒の具体例としては、上述したもの以外にも、リン酸、モノメチルホスフェート、モノエチルホスフェート、ジブチルホスフェート等のリン酸又はリン酸エステル;p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸メチル等の有機スルホン酸類;ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、カリウム−tert−ブトキシド、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の塩基性触媒;アンモニア、トリエチルアミン、トリプロピルアミン等のアミン系触媒等も挙げることができる。
【0120】
上記硬化性塗料組成物は、基材に塗装して硬化させることにより塗膜を形成することができるものである。
上記基材としては特に限定されず、例えば、ガラス、スレート、コンクリート、モルタル、セラミック、石材等の無機質基材;アルミニウム、鉄、亜鉛、錫、銅、チタン、ステンレス、ブリキ、トタン等からなる金属板、表面に亜鉛、銅、クロム等をメッキした金属、表面をクロム酸、リン酸等で処理した金属等の金属基材;ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)、FRP(織維強化プラスチック)、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリオレフィン、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ナイロン樹脂、等のプラスチック基材;合成皮革;ヒノキ、スギ、マツ、合板等の木材;繊維、紙等の有機素材等が挙げられる。また、これらの基材は、硬化性塗料組成物が塗装される前に、通常用いられるプライマーや、下塗り、中塗り、メタリックベース等の上塗り等塗装用塗料が塗装されていてもよい。
【0121】
上記硬化性塗料組成物から塗膜を形成する際の塗装方法、及び、硬化方法としては、硬化性塗料組成物が用いられる用途により適宜設定すればよく、特に限定されず、塗装方法としては、例えば、浸漬塗り、刷毛塗り、ロール刷毛塗り、スプレーコート、ロールコート、スピンコート、ディップコート、スピンコート、バーコート、フローコート、静電塗装、ダイコート、フイルムラミネート、ゲルコート等による塗装法等により行うことができる。また、硬化方法としては、常温硬化、加熱硬化等により行うことができる。
上記硬化性塗料組成物から形成される塗膜の膜厚としては、硬化性塗料組成物が用いられる用途により適宜設定すればよく、特に限定されない。
【0122】
上記硬化性塗料組成物はまた、硬度、光沢、肉持ち感、耐溶剤性等の基本性能に優れ、極めて高度な耐候性を有し、可撓性をも有する塗膜を形成し得るものである。そのため、本発明の硬化性塗料組成物の用途としては特に限定されず、例えば、フィルム、シートを含むプラスチック成型品、太陽電池、ポリマー電池、家電製品、鋼製品、大型構造物、自動車、船舶、建築、建材、木工、ガードフェンス、表示物、機械、器具、産業機器、ガラス製品、各種工業製品等の下塗り、中塗り、上塗り塗装用塗料等として好適に用いることができるものであり、様々な基材に対して、上記のような基本性能を付与し、機械的衝撃から表面を保護し美観を与え、保護機能、美装機能等を持続させて寿命を延ばし、メンテナンスコストを低減させることができる。また、ハイソリッド硬化性塗料組成物とすることができ、省資源や環境の保護に対する要求を満たすものとなる。
【0123】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。なお、「部」は、「重量部」を示す。
実施例1
攪拌機、温度計、冷却器、及び、窒素ガス導入管のついた4つ口フラスコに、溶剤(C)として、酢酸n−ブチル60部、及び、ポリエーテルポリオール(B)として、表1に示すポリプロピレングリコール(PPG)(商品名:G−700、旭電化工業社製)40部を仕込み、130℃まで昇温した中に、表1に示す組成の重合性不飽和単量体組成物、及び、重合開始剤であるtert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(PBO)(商品名:パーブチルO、日本油脂社製)からなる混合液を6時間かけて滴下し、2時間保持して、重合性不飽和単量体組成物を共重合してなるポリオール(A1)、ポリエーテルポリオール(B)及び溶剤(C)を含む不揮発分が70.1%である塗料用樹脂組成物を得た。なお、重合開始剤であるPBOは、重合性不飽和単量体組成物の総量に対して8重量%となるように添加した。
得られた塗料用樹脂組成物におけるポリオール(A1)とポリエーテルポリオール(B)との重量比(Ac/PPG)は、表1に示す通りである。また、ポリオール(A1)のTg、数平均分子量及び水酸基価、並びに、ポリオール(A1)、ポリエーテルポリオール(B)及び溶剤(C)からなる塗料用樹脂組成物の不揮発分、水酸基価、ガードナーチューブにより測定した粘度(25℃)を表1に示した。
【0124】
実施例2、5、6、8〜17、19〜20、22〜25、及び、比較例1〜3は、表1〜4に示す。実施例1と同様の方法で、溶剤(C)、ポリエーテルポリオール(B)をフラスコに仕込み、表1〜4に示す組成の重合性不飽和単量体組成物及び重合開始剤であるPBO(商品名:パーブチルO、日本油脂社製)からなる混合液を6時間かけて滴下し、2時間保持して、ポリオール(A1)又はポリオール(A2)、ポリエーテルポリオール(B)及び溶剤(C)を含む塗料用樹脂組成物を得た。なお、重合開始剤であるPBOは、重合性不飽和単量体組成物の総量に対して8重量%となるように添加した。それぞれの塗料用樹脂組成物の不揮発分、水酸基価、ガードナーチューブにより測定した粘度を表1〜4に示した。
【0125】
実施例3
実施例1で得られた塗料用樹脂組成物を、酢酸n−ブチルで固形分重量が40重量%となるように希釈したものを塗料用樹脂組成物とした。この塗料用樹脂組成物の不揮発分、水酸基価、ガードナーチューブにより測定した粘度を表1に示した。
【0126】
実施例4
実施例1において、ポリオール(A1)を重合後、溶媒である酢酸n−ブチルを除去したこと以外は、実施例1と同様にして塗料用樹脂組成物を得た。この塗料用樹脂組成物の不揮発分、水酸基価、ガードナーチューブにより測定した粘度を表1に示した。
【0127】
実施例7
攪拌機、温度計、冷却器、及び、窒素ガス導入管のついた4つ口フラスコに、溶剤(C)として、酢酸n−ブチル60部、及び、ポリエーテルポリオール(B)として、表1に示すポリプロピレングリコール(PPG)40部を仕込み、130℃まで昇温した中に、表1に示す組成の重合性不飽和単量体組成物、及び、PBO(商品名:パーブチルO、日本油脂社製)からなる混合液を3時間かけて滴下し、2時間保持して、重合性不飽和単量体組成物を共重合してなるポリオール(A1)、ポリエーテルポリオール(B)及び溶剤(C)を含む塗料用樹脂組成物を得た。なお、重合開始剤であるPBOは、重合性不飽和単量体組成物の総量に対して8重量%となるように添加した。
【0128】
実施例18
攪拌機、温度計、冷却器、及び、窒素ガス導入管のついた4つ口フラスコに、溶剤(C)として、酢酸n−ブチル60部を仕込み、130℃まで昇温した中に、表1に示す組成の重合性不飽和単量体組成物、及び、PBO(商品名:パーブチルO、日本油脂社製)からなる混合液を6時間かけて滴下し、2時間保持した。なお、重合開始剤であるPBOは、重合性不飽和単量体組成物の総量に対して8重量%となるように添加した。次いで、ポリエーテルポリオール(B)として、表2に示すポリプロピレングリコール(PPG)(商品名:EDP−1100、旭電化工業社製)を40部添加し、重合性不飽和単量体組成物を共重合してなるポリオール(A1)、ポリエーテルポリオール(B)及び溶剤(C)を含む塗料用樹脂組成物を得た。
【0129】
実施例21
攪拌機、温度計、冷却器、及び、窒素ガス導入管のついた4つ口フラスコに、溶剤(C)として、酢酸n−ブチル60部を仕込み、130℃まで昇温した中に、表3に示す組成の重合性不飽和単量体組成物、及び、2,2−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)からなる混合液を還流温度で4時間かけて滴下し、2時間保持した。なお、重合開始剤である2,2−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)は、重合性不飽和単量体組成物の総量に対して10重量%となるように添加した。次いで、ポリエーテルポリオール(B)として、表3に示すポリプロピレングリコール(PPG)(商品名:G−3000、旭電化工業社製)を添加し、重合性不飽和単量体組成物を共重合してなるポリオール(A2)、ポリエーテルポリオール(B)及び溶剤(C)を含む塗料用樹脂組成物を得た。得られた塗料用樹脂組成物におけるポリオール(A2)とポリエーテルポリオール(B)との重量比(Ac/PPG)は、表3に示す通りである。
【0130】
実施例26〜27
実施例26〜27は、表3に示す。実施例1と同様の方法で、溶剤(C)、ポリエーテルポリオール(B)をフラスコに仕込み、表3に示す組成の重合性不飽和単量体組成物及び重合開始剤である2,2′−アゾビス−(2−メチルブチロニトリル)(商品名:ABN−E、日本ヒドラジン工業社製)からなる混合液を4時間かけて溶剤還流下滴下し、2時間保持して、ポリオール(A1)又はポリオール(A2)、ポリエーテルポリオール(B)及び溶剤(C)を含む塗料用樹脂組成物を得た。なお、重合開始剤であるABN−Eは、重合性不飽和単量体組成物の総量に対して10重量%となるように添加した。それぞれの塗料用樹脂組成物の不揮発分、水酸基価、ガードナーチューブにより測定した粘度を表3に示した。
【0131】
塗膜形成方法
得られた塗料用樹脂組成物に、下記(1)〜(3)のいずれかの架橋剤を用いた調製方法により硬化性塗料組成物を作製した。また、2液ウレタン樹脂エナメルを0.8mm厚のリン酸亜鉛処理鋼板上に塗工して得られたホワイト板上に、作製した硬化性塗料組成物を用いて、塗膜形成を行い、試験片を作製した。用いた架橋剤及びその配合比を表1〜4に示した。
【0132】
(1)架橋剤としてN3300(スミジュールN3300)を用いた調製方法
得られた塗料用樹脂組成物に、架橋剤としてポリイソシアネート化合物であるスミジュールN3300(商品名、住友バイエルウレタン社製)を、塗料用樹脂組成物中のヒドロキシル基と、架橋剤におけるイソシアネート基との当量比が1/1となるように添加し、充分混合した。得られた硬化性塗料組成物に、トルエン/キシレン/酢酸n−ブチル=1/1/1(重量比)のシンナーを添加して希釈し、この混合物の粘度を岩田カップで10秒となる粘度に調整し、エアースプレー塗装が可能な粘度のクリアー塗料を得た。
【0133】
続いて、先述したホワイト板上に、得られたクリアー塗料をエアースプレー塗布し、該試料の乾燥膜厚が約30μmとなるように塗装した。室温で5分放置した後、強制乾燥を行い、その後各種試験を行った。なお、表1〜6の強制乾燥の時間とは、耐溶剤性が発現するまでの時間であり、乾燥時間が短いほど速乾であることを示す。
【0134】
(2)架橋剤としてBL3175(スミジュールBL3175)を用いた調製方法
得られた塗料用樹脂組成物に、架橋剤としてブロックポリイソシアネート化合物であるスミジュールBL3175(商品名、住友バイエルウレタン社製)を、塗料用樹脂組成物中のヒドロキシル基と、架橋剤におけるイソシアネート基との当量比が1/1となるように添加し、更に、TK−1(商品名、武田薬品工業社製)を固形分に対して250ppm、DBTDLを固形分に対して1000ppmとなるように加え、充分混合した。得られた硬化性塗料組成物に、トルエン/キシレン/酢酸n−ブチル=1/1/1(重量比)のシンナーを添加して希釈し、この混合物の粘度を岩田カップで10秒となる粘度に調整し、エアースプレー塗装が可能な粘度のクリアー塗料を得た。
【0135】
続いて、先述したホワイト板上に、得られたクリアー塗料をエアースプレー塗布し、該試料の乾燥膜厚が約30μmとなるように塗装した。室温で5分放置した後、強制乾燥を行い、その後各種試験を行った。なおこの場合(実施例16)の強制乾燥の時間も、耐溶剤性が発現する時間である。
【0136】
(3)架橋剤としてサイメル235を用いた調製方法
得られた塗料用樹脂組成物に、架橋剤としてアミノプラスト樹脂であるサイメル235(商品名、三井サイテック社製)を、ポリオールとアミノプラスト樹脂とが固形分の重量比で80/20となるように添加し、更に、p−トルエンスルホン酸を固形分に対して1000ppmとなるように加え、充分混合した。得られた硬化性塗料組成物に、トルエン/キシレン/酢酸n−ブチル=1/1/1(重量比)のシンナーを添加して希釈し、この混合物の粘度を岩田カップで10秒となる粘度に調整し、エアースプレー塗装が可能な粘度のクリアー塗料を得た。
【0137】
続いて、先述したホワイト板上に、得られたクリアー塗料をエアースプレー塗布し、該試料の乾燥膜厚が約30μmとなるように塗装した。室温で5分放置した後、強制乾燥を行い、その後各種試験を行った。なおこの場合(実施例17)の強制乾燥の時間も、耐溶剤性が発現する時間である。
【0138】
以下の(1)〜(6)に示す方法により、得られた試験片の塗膜を評価した。評価結果を表1〜4に記載した。
試験片の評価方法
(1)外観
目視にて、強制乾燥の後の塗膜の状態(光沢、平滑性等の鮮映性)を評価した。評価基準は以下の通りとした。
◎:優、○:良、△:可、×:不可
(2)光沢値
JIS K 5400に準拠して、VZ−2000(商品名、日本電色社製)を用いて、光源の入射角を60°として光沢値を測定した。
(3)鉛筆硬度
JIS K 5400 8.4.1(試験機法)に準拠して、鉛筆引っかき試験を行い、塗膜に傷が付いたときの鉛筆硬度を硬度とした。
【0139】
(4)耐屈曲性
JIS K 5400 8.1に規定する屈曲試験(心棒の直径:2mm)を行い、塗膜に割れ、剥がれが生じるかを評価した。
◎:優秀、○:良好、△:普通、×:不良
(5)耐衝撃性
JIS K 5400 8.3.2(デュポン式)に準拠して試験を行い、各落下距離での塗膜の状態を評価した。
○:変化なし、×:割れ、剥がれ有り
【0140】
(6)耐溶剤性
強制乾燥後、室温で10分間放置して試験板を冷却した。その後、トルエンをしみ込ませた脱脂綿で、塗膜を50回ラビングした後の塗膜の表面状態を目視にて評価した。評価基準は以下の通りとした。
○:変化なし、×:艶ひけ、××:塗膜が溶解して消失
【0141】
また、実施例1、実施例12及び実施例20で得られた塗膜を用いて、以下に示す方法で耐候性試験を行った。
耐候性試験(QUV試験)
JIS K 5400−1979に基づいて実施し、測定装置として、東洋精機製作所社製;ユウブコン(UVCON)UC−1型を使用した。測定条件として、照射70℃×4時間及び湿潤50℃×4時間を1セットとするサイクルを繰り返して行い、初期及び500時間後において、黄変度(Δb)を測定した。
Δb(黄変度):JIS K 5400に準拠して、日本電色社製SE−2000を使用して測定を行った。
その結果、実施例1で得られた塗膜は、Δbが3であり、実施例12で得られた塗膜は、Δbが10であり、実施例20で得られた塗膜は、Δbが1であった。ポリオール(A1)がシクロアルキル構造を有する重合性不飽和単量体を含むものである実施例1の硬化性塗料組成物は、シクロアルキル構造を有する重合性不飽和単量体を含まない実施例12の硬化性塗料組成物に比べて、極めて高度な耐候性を有する塗膜を形成した。また、実施例20の硬化性塗料組成物は、ポリオール(A1)にシクロアルキル構造を有する重合性不飽和単量体と紫外線安定基を有する重合性不飽和単量体とを併用することにより、耐候性が著しく向上した。
【0142】
【表1】

【0143】
【表2】

【0144】
【表3】

【0145】
【表4】

【0146】
表1〜4中の記号は、以下の通りである。
重合性不飽和単量体
MMA:メチルメタクリレート、HEMA:2−ヒドロキシエチルメタクリレート、HPMA:2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、HEA:2−ヒドロキシエチルアクリレート、PX−1:2−ヒドロキシプロピルアクリレート、4MeOHCHMA:4−メチロールシクロヘキシルメチルアクリレート、St:スチレン、CHMA:シクロヘキシルメタクリレート、IB−X:イソボルニルメタクリレート、MMA:メチルメタクリレート、t−BMA:tert−ブチルメタクリレート、i−BMA:イソブチルメタクリレート、BMA:n−ブチルメタクリレート、BA:n−ブチルアクリレート、LMA:n−ラウリルメタクリレート、2EHA:2−エチルヘキシルアクリレート、LA−82:アデカスタブLA−82(商品名、旭電化工業社製)、4MCHMMA:4−メチルシクロヘキシルメチルメタクリレート、CHMMA:シクロヘキシルメチルメタクリレート、CHA:シクロヘキシルアクリレート。
【0147】
ポリオール(A1)(又は(A2))
Tg:ポリオール(A1)又はポリオール(A2)のガラス転移点、Ac−Mn:ポリオール(A1)又はポリオール(A2)の数平均分子量、OHV:ポリオール(A1)又はポリオール(A2)の水酸基価。
(ポリエーテルポリオール(B))
PPG:ポリエーテルポリオール、G−700:(商品名、旭電化工業社製)、G−3000:(商品名、旭電化工業社製)、P−400:(商品名、旭電化工業社製)、EDP−1100:(商品名、旭電化工業社製)。
【0148】
ポリオール
Ac/PPG:ポリオール(A1)又はポリオール(A2)/ポリエーテルポリオール(B)の重量比、トータルOHV:ポリオールの水酸基価、NV(%):塗料用樹脂組成物の不揮発分、Vis(ガードナー):ガードナーチューブにより測定した塗料用樹脂組成物の粘度。
【0149】
溶剤量
ポリオール(A1)又はポリオール(A2)100部に対して加えた溶剤量(部)を示した。
架橋剤
N3300:商品名スミジュールN3300、住友バイエルウレタン社製、BL3175:商品名スミジュールBL3175、住友バイエルウレタン社製、サイメル325:商品名、三井サイテック社製。
【0150】
評価結果
硬度:鉛筆硬度。
φ2mm:JIS K 5400 8.1に規定する屈曲試験(心棒の直径:2mm)を行った結果。
強制乾燥の温度・時間(物性発現時間):強制乾燥を行った温度と耐溶剤性が発現するまでの時間。
【0151】
表1、表2及び表3から明らかなように、実施例1〜27においては、硬化性塗料組成物が、硬度、光沢等の基本性能に優れ、しかも、可撓性が良好な塗膜を形成することがわかった。更に、ポリオール(A1)がシクロアルキル構造を有することより、高耐候性を有する塗膜が得られることがわかった。また、ポリオール(A2)を用いることによっても、ポリオール(A1)を用いる場合と同様の効果が得られるが、ハイソリッド化の点では、ポリオール(A2)を用いる方が有利であった。
【0152】
表4から明らかなようにまた、ポリエーテルポリオール(B)を含まない比較例1の硬化性塗料組成物を用いて形成された硬化塗膜は、硬度は高かったが、可撓性が悪かった。ポリオール(A1)に比べてポリエーテルポリオール(B)の配合量が多い比較例2の硬化性塗料組成物を用いて形成された硬化塗膜は、硬度が低かった。ポリオール(A1)(A2)どちらでもないポリオールを使用している比較例3の硬化性塗料組成物よりなる塗膜は硬度が低かった。
【0153】
実施例28〜29
表5に示すように、実施例1又は実施例5で得られた塗料用樹脂組成物に、硬化剤としてスミジュールN3300を用い、該塗料用樹脂組成物中の水酸基に対するイソシアネート基の当量比が1:1となる量だけ採取して配合し、更に、感温性触媒としてモノ−n−ブチル錫脂肪酸塩(商品名:SCAT−24、三共有機合成社製)を表5に示す量添加して硬化性塗料組成物を得た。なお、添加量は、塗料用樹脂組成物100重量%に対する添加量をppmで示した。得られた硬化性塗料組成物に、トルエン/キシレン/酢酸n−ブチル=1/1/1(重量比)のシンナーを添加して希釈し、この混合物の粘度を岩田カップで10秒となる粘度に調整し、エアースプレー塗装が可能な粘度のクリアー塗料を得た。
【0154】
続いて、先述したホワイト板上に、得られたクリアー塗料をエアースプレー塗布し、該試料の乾燥膜厚が約30μmとなるように塗装した。室温で5分放置した後、強制乾燥を行い、その後各種試験を行った。このようにして形成された塗膜は、外観に優れるものであり、耐溶剤性が発現するのに必要な強制乾燥時間も短くなった。
【0155】
【表5】

【0156】
実施例30〜33
実施例1、実施例5又は実施例18で得られた塗料用樹脂組成物に、硬化剤としてスミジュールN3300を用い、該塗料用樹脂組成物中の水酸基に対するイソシアネート基の当量比が1:1となる量だけ採取して配合し、更に金属有機化合物及び酸性物質として表6に示す化合物をそれぞれ添加して硬化性塗料組成物を得た。なお、金属有機化合物及び酸性物質の添加量はいずれも、塗料用樹脂組成物の固形分に対する添加量をppmで示した。得られた硬化性塗料組成物に、トルエン/キシレン/酢酸n−ブチル=1/1/1(重量比)のシンナーを添加して希釈し、この混合物の粘度を岩田カップで10秒となる粘度に調整し、エアースプレー塗装が可能な粘度のクリアー塗料を得た。
【0157】
続いて、先述したホワイト板上に、得られたクリアー塗料をエアースプレー塗布し、該試料の乾燥膜厚が約30μmとなるように塗装した。室温で5分放置した後、強制乾燥を行い、その後各種試験を行った。このようにして形成された塗膜は、外観に優れるものであり、耐溶剤性が発現するのに必要な強制乾燥時間も短くなった。
【0158】
【表6】

【0159】
表6中の記号は、以下の通りである。
DBTDL:ジブチル錫ジラウレート、DBTDCl:ジブチル錫ジクロライド、BiOct:2−エチルヘキシル酸ビスマス、ZnOct:2−エチルヘキシル酸亜鉛。
【発明の効果】
【0160】
本発明の塗料用樹脂組成物及び硬化性塗料組成物は、上述の構成よりなるもので、硬化塗膜が高光沢、高耐候性等の優れた基本性能を有するとともに、硬度が高くて可撓性が優れ、しかも、ハイソリッド化することができるものである。また本発明の硬化性塗料組成物は、硬化過程での反応性が高く、かつ、形成する塗膜の外観が良好となり、しかも、塗料のポットライフを充分に維持することができるものである。従って、本発明の塗料用樹脂組成物及び硬化性塗料組成物は、建築物、自動車、船舶、産業機器、各種工業製品等に用いて、硬度、光沢、肉持ち感、耐溶剤性等の基本性能を付与し、機械的衝撃から表面を保護し美観を与え、保護機能、美装機能等を持続させて寿命を延ばし、メンテナンスコストを低減させることができるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール(A1)、ポリエーテルポリオール(B)及び溶剤(C)を含む塗料用樹脂組成物と、(ブロック)ポリイソシアネート化合物を必須とする架橋剤と、更に、金属有機化合物及び酸性物質とを含む硬化性塗料組成物であって、
該塗料用樹脂組成物は、ポリオール(A1)と該ポリエーテルポリオール(B)との重量比が、50/50〜90/10であり、
該ポリオール(A1)及びポリエーテルポリオール(B)の重量和と溶剤(C)との重量比が、40/60〜90/10であり、
該ポリオール(A1)は、重合性不飽和単量体組成物を用いて共重合してなり、
該重合性不飽和単量体組成物は、水酸基を有する重合性不飽和単量体5.0〜80.0重量%及びその他の重合性不飽和単量体20.0〜95.0重量%からなり、
かつ、該重合性不飽和単量体組成物を100重量%としたとき、その中に環構造を有する重合性不飽和単量体を10.0〜100.0重量%を含む
ことを特徴とする硬化性塗料組成物。
【請求項2】
ポリオール(A2)、ポリエーテルポリオール(B)及び溶剤(C)を含む塗料用樹脂組成物と、(ブロック)ポリイソシアネート化合物を必須とする架橋剤と、更に、金属有機化合物及び酸性物質とを含む硬化性塗料組成物であって、
該塗料用樹脂組成物は、ポリオール(A2)と該ポリエーテルポリオール(B)との重量比が、50/50〜90/10であり、
該ポリオール(A2)及びポリエーテルポリオール(B)の重量和と溶剤(C)との重量比が、40/60〜90/10であり、
該ポリオール(A2)は、重合性不飽和単量体組成物を用いて共重合してなり、
該重合性不飽和単量体組成物は、水酸基を有する重合性不飽和単量体20.0〜75.0重量%及びその他の重合性不飽和単量体25.0〜80.0重量%からなり、
かつ、該重合性不飽和単量体組成物を100重量%としたとき、その中にSP値が9.5以下であり、かつ単独重合体のガラス転移点(Tg)が60℃以上の直鎖分岐構造を有する重合性不飽和単量体を25.0〜80.0重量%を含む
ことを特徴とする硬化性塗料組成物。
【請求項3】
前記ポリオール(A1)は、数平均分子量が1000〜15000である
ことを特徴とする請求項1記載の硬化性塗料組成物。
【請求項4】
前記ポリオール(A2)は、数平均分子量が1000〜15000である
ことを特徴とする請求項2記載の硬化性塗料組成物。
【請求項5】
前記ポリエーテルポリオール(B)が、分子内に平均2〜4個の水酸基を有し、かつ、平均水酸基価が30〜600mg・KOH/gであるポリエーテルポリオールを含む
ことを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の硬化性塗料組成物。

【公開番号】特開2007−186707(P2007−186707A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−38389(P2007−38389)
【出願日】平成19年2月19日(2007.2.19)
【分割の表示】特願2001−185590(P2001−185590)の分割
【原出願日】平成13年6月19日(2001.6.19)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】