塗料用組成物および塗料用組成物用キット

【課題】低汚染性を有する硬化塗膜の形成において、環境負荷が小さい溶剤を使用し、かつ該溶剤に対するケイ素含有化合物の溶解性が良好で、低汚染性に優れた硬化塗膜を形成する。
【解決手段】SiO分が45〜50質量%であるエチルシリケート、架橋性基を有する含フッ素共重合体、硬化剤および弱溶剤を含有する塗料用組成物。前記塗料用組成物を製造するための塗料用組成物用キット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料用組成物および塗料用組成物用キットに関する。
【背景技術】
【0002】
建築物等の屋根や壁等は、大気中の塵や雨等による汚れを抑制する目的で、低汚染性を付与する塗膜が形成される。例えば、低汚染性の硬化塗膜を形成する塗料用組成物として、メチルシリケート、フェニルシリケート、テトラフェニルエチルシリケート等のケイ素含有化合物と、水酸基を有する含フッ素共重合体とを、キシレン、酢酸ブチル等の有機溶剤に溶解した塗料用組成物が知られている(特許文献1)。
【0003】
一方、近年、様々な分野で使用される各種の塗料用組成物は、補修の際の下地(旧塗膜)への影響や、地球環境への負荷の問題から、環境対応型である弱溶剤を使用した塗料用組成物への切り替えが進んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−72569号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載のケイ素含有化合物と弱溶剤を組み合わせて塗料用組成物とすると、ケイ素含有化合物が弱溶剤に充分に溶解せず、均一な塗膜の形成が困難になることがある。また、形成される塗膜の低汚染性が充分に得られないことがある。
【0006】
本発明は、弱溶剤の使用により環境負荷が小さく、かつ弱溶剤に対するケイ素含有化合物の溶解性が良好で、低汚染性に優れた均一な硬化塗膜を形成できる塗料用組成物、および該塗料用組成物を調製するための塗料用組成物用キットの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。
[1]下式(1)で表されるケイ素含有化合物(A)、架橋性基を有する含フッ素共重合体(B)、硬化剤(C)および弱溶剤(D)を含有し、
前記ケイ素含有化合物(A)中のSiO分が45〜50質量%である塗料用組成物。
【0008】
【化1】

【0009】
(ただし、nは1〜100の整数である。)
[2]前記含フッ素共重合体(B)と硬化剤(C)の合計量100質量部に対する前記ケイ素含有化合物(A)の割合が1.5〜90質量部である[1]に記載の塗料用組成物。
[3]前記弱溶剤(D)の含有量が塗料用組成物の総量(100質量%)に対して10〜90質量%である[1]または[2]に記載の塗料用組成物。
[4]前記含フッ素共重合体(B)における架橋性基が水酸基であり、前記硬化剤(C)がポリイソシアネート系硬化剤であり、かつ塗料用組成物中に含有される共重合体が有する水酸基と前記硬化剤(C)のイソシアネート基のモル比(OH/NCO)が0.3〜2.0である[1]〜[3]のいずれか一項に記載の塗料用組成物。
[5]前記硬化剤(C)が下記硬化剤(C1)である[1]〜[4]のいずれか一項に記載の塗料用組成物。
硬化剤(C1):脂肪族ジイソシアネートおよび脂環式ジイソシアネートからなる群から選ばれる1種以上のジイソシアネートと、炭素数1〜20のモノアルコールとを反応させて得られる、アロファネート基(All)とイソシアヌレート基(Iso)のモル比(All/Iso)が81/19〜90/10のポリイソシアネート系硬化剤。
[6]前記弱溶剤(D)が、ミネラルスピリットである[1]〜[5]のいずれか一項に記載の塗料用組成物。
[7][1]〜[6]のいずれか一項に記載の塗料用組成物の調製用キットであって、
前記含フッ素共重合体(B)および弱溶剤(D)の一部を含有する主剤、ならびに前記ケイ素含有化合物(A)、硬化剤(C)、および弱溶剤(D)の残部を含有する硬化用組成物を備えた塗料用組成物用キット。
【発明の効果】
【0010】
本発明の塗料用組成物は、弱溶剤の使用により環境負荷が小さく、かつ弱溶剤に対するケイ素含有化合物の溶解性が良好で、低汚染性に優れた均一な硬化塗膜を形成できる。
また、本発明の塗料用組成物用キットは、弱溶剤の使用により環境負荷が小さく、かつ弱溶剤に対するケイ素含有化合物の溶解性が良好で、低汚染性に優れた均一な硬化塗膜を形成できる塗料用組成物を調製できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書においては、重合によって直接得られる繰り返し単位と、重合で得られた繰り返し単位にさらに別の化合物を反応させることによって得られた繰り返し単位とを、総称して「単位」という。また、本明細書においては、式(1)で表される化合物を化合物(1)と記す。他の式で表される化合物も同様に記す。また、本明細書においては、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸またはメタクリル酸のいずれかを示す。
【0012】
<塗料用組成物>
本発明の塗料用組成物は、後述するケイ素含有化合物(A)、含フッ素共重合体(B)、硬化剤(C)および弱溶剤(D)を含有する。
【0013】
[ケイ素含有化合物(A)]
ケイ素含有化合物(A)は、下記化合物(1)である。
【0014】
【化2】

【0015】
ただし、nは、1〜100の整数である。nは、1以上の整数であるが、2以上の整数が好ましい。また、nは100以下の整数であるが、70以下の整数が好ましく、50以下の整数がより好ましい。nがこの範囲内であれば、塗料用組成物から形成される硬化塗膜の低汚染性、ケイ素含有化合物(A)の弱溶剤(D)への溶解性、および塗料用組成物の保存安定性が良好となる。
【0016】
ケイ素含有化合物(A)(100質量%)中のSiO分は、45〜50質量%であり、47〜49質量%がより好ましい。ケイ素含有化合物(A)におけるSiO分がこの範囲内にあることにより、ケイ素含有化合物(A)の弱溶剤(D)への溶解性、および塗料用組成物の保存安定性が良好となり、かつ塗料用組成物から形成される硬化塗膜の低汚染性が優れたものとなる。
なお、「SiO分」とは、ケイ素含有化合物(A)の総質量を100質量%としたときの、SiO換算としてのシリカの含有量を示す値である。
【0017】
ケイ素含有化合物(A)としては、例えば、コルコート社製の商品名「エチルシリケート48」(SiO分:48質量%)等が挙げられる。
【0018】
本発明の塗料用組成物中のケイ素含有化合物(A)の割合は、含フッ素共重合体(B)と硬化剤(C)の合計量100質量部に対して、1.5〜90質量部が好ましく、3〜30質量部がより好ましい。ケイ素含有化合物(A)の割合が前記範囲の下限値以上であれば、形成される硬化塗膜の低汚染性が向上する。ケイ素含有化合物(A)の割合が前記範囲の上限値以下であれば、弱溶剤(D)に対するケイ素含有化合物(A)の溶解性が向上し、均一な硬化塗膜を形成しやすい。
【0019】
[含フッ素共重合体(B)]
含フッ素共重合体(B)は、架橋性基を有する含フッ素共重合体である。すなわち、含フッ素共重合体(B)は、フッ素原子と架橋性基を有する共重合体である。また、含フッ素共重合体(B)には、明確な融点を有する樹脂性の重合体、ゴム弾性を示すエラストマー性の重合体、その中間の熱可塑性エラストマー性の重合体が含まれる。
前記架橋性基とは、互いに、もしくは硬化剤と反応して化学結合(架橋)を形成する官能基である。
含フッ素共重合体(B)としては、フッ素原子を有する単位(β1)と、架橋性基を有する単位(β2)を有する含フッ素共重合体(B1)が好ましい。
【0020】
(単位(β1))
単位(β1)は、フッ素原子を有する単量体(以下、「単量体(b1)」という。)を重合することで形成される。
単量体(b1)としては、フッ素樹脂の原料として通常使用されるフッ素原子を有する単量体が使用できる。具体的には、テトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、フッ化ビニリデン(VdF)、フッ化ビニル(VF)等のフルオロオレフィン類;フルオロアルキル基を有するオレフィン類、ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)等フルオロビニルエーテル類等が挙げられる。なかでも、フルオロオレフィン類が好ましく、TFE、HFP、CTFE、VdF、VFがより好ましく、TFE、CTFE、VdFがさらに好ましく、TFE、CTFEが特に好ましく、硬化塗膜の耐候性、耐薬品性、透湿性の点から、CTFEが最も好ましい。
単量体(b1)は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0021】
(単位(β2))
単位(β2)は、架橋性基を有する単量体(以下、「単量体(b2)」という。)を重合することにより形成できる。単量体(b2)は、架橋性基を有し、前記単量体(b1)と共重合可能な重合性不飽和基を有する単量体であればよい。単量体(b2)は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
単量体(b2)における架橋性基としては、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、エポキシ基、加水分解性シリル基等が挙げられる。なかでも、架橋反応性、入手容易性、共重合体への導入容易性の点から、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基が好ましく、水酸基が特に好ましい。
【0022】
水酸基を有する単量体(以下、「単量体(b21)」という。)は、水酸基と重合性不飽和基を有する単量体である。
単量体(b21)としては、例えば、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、3−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、4−ヒドロキシ−2−メチルブチルビニルエーテル、5−ヒドロキシペンチルビニルエーテル−10−ヒドロキシヘキシルビニルエーテル等の水酸基を有するビニルエーテル類;2−ヒドロキシエチルアリルエーテル、4−ヒドロキシブチルアリルエーテル、グリセロールモノアリルエーテル等の水酸基を有するアリルエーテル類;アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル等の(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステル等が挙げられる。なかでも、入手容易性、重合反応性、水酸基の架橋性が優れる点から、水酸基を有するビニルエーテル類が好ましく、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルビニルエーテルがより好ましい。
単量体(b21)は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0023】
カルボキシル基を有する単量体(以下、「単量体(b22)」という。)は、カルボキシル基と重合性不飽和基を有する単量体であり、容易にカルボキシル基を有する単量体に変換される不飽和ジカルボン酸の酸無水物も含む。
単量体(b22)としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、ビニル酢酸、クロトン酸、桂皮酸、ウンデシレン酸、3−アリルオキシプロピオン酸、3−(2−アリロキシエトキシカルボニル)プロピオン酸、フタル酸ビニル等の不飽和モノカルボン酸類;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸類;イタコン酸モノエステル、マレイン酸モノエステル、フマル酸モノエステル等の不飽和ジカルボン酸モノエステル類;マレイン酸無水物等の不飽和ジカルボン酸の無水物等が挙げられる。これらの他にもピロメリット酸ビニル等の多価カルボン酸のビニルエーテルまたはアリルエーテル等が挙げられる。なかでも、入手容易性、重合反応性、架橋性が優れる点から、クロトン酸、ウンデシレン酸、マレイン酸、イタコン酸が好ましい。
単量体(b22)は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0024】
エポキシ基を有する単量体(以下、「単量体(b23)」という。)は、エポキシ基と重合性不飽和基を有する単量体である。単量体(b23)におけるエポキシ基は、グリシジル基となっていることが好ましい。
単量体(b23)としては、グリシジルビニルエーテル、グリシジルアリルエーテル、(メタ)アクリル酸グリシジルエステルが好ましい。
単量体(b23)は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0025】
単位(β2)としては、単量体(b2)を重合することで形成された単位が好ましい。ただし、単位(β2)は、単量体(b2)を重合することで形成された単位には限定されない。例えば、単位(β2)の架橋性基としてカルボキシル基を導入する場合、前記単量体(b21)を共重合させ、得られた共重合体に導入された水酸基に、酸無水物を反応させる方法によりカルボキシル基を導入できる。
前記酸無水物としては、無水コハク酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物、4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸等が挙げられる。
【0026】
含フッ素共重合体(B1)は、必要に応じて、前記単位(β1)および単位(β2)に加え、単量体(b1)および単量体(b2)以外の他の単量体(以下、「単量体(b3)」という。)に基づく単位(β3)を有してもよい。
単量体(b3)としては、オレフィン類、アルキル基と重合性不飽和基とがエーテル結合で連結されたアルキルビニルエーテル類、またはアルキル基と重合性不飽和基とがエステル結合で連結されたカルボン酸ビニルエステル類が好ましい。
【0027】
オレフィン類としては、イソブチレン等が挙げられる。
アルキルビニルエーテル類としては、エチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル等が挙げられる。
カルボン酸ビニルエステル類としては、バーサチック酸ビニル等が挙げられる。
【0028】
含フッ素共重合体(B1)の全単位(100モル%)に対する単位(β1)の割合は、35〜65モル%が好ましく、40〜60モル%がより好ましい。単位(β1)の割合が前記範囲内であれば、形成される硬化塗膜の耐候性と、弱溶剤(D)への溶解性を両立しやすい。
含フッ素共重合体(B1)の全単位(100モル%)に対する単位(β2)の割合は、6〜50モル%が好ましく、7〜40モル%がより好ましい。単位(β2)の割合が前記範囲の下限値以上であれば、形成される硬化塗膜の架橋度が高くなり硬度等が向上する。単位(β2)の割合が前記範囲の上限値以下であれば、本発明の塗料用組成物にゲル化が起こりにくい。
含フッ素共重合体(B1)の全単位(100モル%)に対する単位(β3)の割合は、45モル%以下が好ましく、35モル%以下がより好ましい。
【0029】
含フッ素共重合体(B)の製造は、公知の重合方法を採用でき、具体的には、溶液重合、乳化重合、懸濁重合等の重合方法を採用できる。
【0030】
含フッ素共重合体(B)の数平均分子量(Mn)は、5,000〜20,000が好ましい。含フッ素共重合体(B)のMnが5,000以上であれば、形成される硬化塗膜の耐候性が向上する。また、含フッ素共重合体(B)のMnが20,000以下であれば、塗料用組成物の粘度が適度となり取扱い性が向上する。含フッ素共重合体(B)のMnは、ポリスチレンを標準物質として、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定される値である。
【0031】
含フッ素共重合体(B)中のフッ素含有量は、耐候性が向上する点から、10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、25質量%以上がさらに好ましい。一方、含フッ素共重合体(B)の弱溶剤(D)への溶解性の点から、含フッ素共重合体(B)のフッ素含有量は、35質量%以下が好ましい。含フッ素共重合体(B)のフッ素含有量とは、含フッ素共重合体(B)の質量に対する、含フッ素共重合体(B)が有するフッ素原子の合計の質量割合である。
【0032】
本発明の塗料用組成物(100質量%)中の含フッ素共重合体(B)の含有量は、5〜55質量%が好ましく、10〜45質量%がより好ましい。含フッ素共重合体(B)が前記範囲の下限値以上であれば、耐候性が向上する。含フッ素共重合体(B)が前記範囲の上限値以下であれば、塗装作業性が向上する。
【0033】
また、本発明の塗料用組成物は、含フッ素共重合体(B)以外の他の共重合体を含有していてもよい。他の共重合体としては、アルキッド樹脂、アミノアルキッド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、エポキシポリエステル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、フェノール樹脂、シリコーン変性ポリエステル樹脂、アクリルシリコーン樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。これらの中でも、アクリル樹脂が好ましい。
また、他の共重合体は、前記架橋性基を有していることが好ましく、水酸基を有していることがより好ましく、耐候性の観点から、水酸基を有するアクリル樹脂が特に好ましい。
【0034】
[硬化剤(C)]
硬化剤(C)は、含フッ素共重合体(B)、および必要に応じて使用する架橋性基を有する他の共重合体と架橋反応する。硬化剤(C)は、塗料用組成物中に含有される共重合体が有する架橋性基の種類に応じて適宜選定する。本発明の塗料用組成物においては、含フッ素共重合体(B)、前記他の共重合体が有する架橋性基が水酸基で、硬化剤(C)がポリイソシアネート系硬化剤であることが好ましい。
【0035】
ポリイソシアネート系硬化剤としては、弱溶剤(D)への溶解性が優れる点から、下記硬化剤(C1)が好ましい。ただし、ポリイソシアネート系硬化剤は下記硬化剤(C1)には限定されず、一般的なポリイソシアネート系硬化剤を使用してもよい。
硬化剤(C1):脂肪族ジイソシアネートおよび脂環式ジイソシアネートからなる群から選ばれる1種以上のジイソシアネートと、炭素数1〜20のモノアルコールとを反応させて得られる、アロファネート基(All)とイソシアヌレート基(Iso)のモル比(All/Iso)が81/19〜90/10のポリイソシアネート系硬化剤。
脂肪族ジイソシアネートとは、分子中に脂肪族基を有するジイソシアネート化合物である。一方、脂環式ジイソシアネートとは、分子中に環状脂肪族基を有するジイソシアネート化合物である。
【0036】
脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、1,4−ジイソシアナトブタン、1,5−ジイソシアナトペンタン、1,6−ジイソシアナトヘキサン(HDI)、1,6−ジイソシアナト−2,2,4−トリメチルヘキサン、2,6−ジイソシアナトヘキサン酸メチル(リジンジイソシアネート)等が挙げられる。なかでも、工業的に入手し易い点から、HDIが好ましい。
脂環式ジイソシアネートとしては、例えば、5−イソシアナト−1−イソシアナトメチル−1,3,3−トリメチルシクロヘキサン(別名:イソホロンジイソシアネート)、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(別名:水添キシリレンジイソシアネート)、ビス(4−イソシアナトシクロヘキシル)メタン(別名:水添ジフェニルメタンジイソシアネート)、1,4−ジイソシアナトシクロヘキサン等が挙げられる。なかでも、工業的に入手し易い点から、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネートが好ましい。
ジイソシアネートとしては、硬化剤(C1)が低粘度となる点から、脂環式ジイソシアネートよりも脂肪族ジイソシアネートの方が好ましく、形成される硬化塗膜の耐候性、柔軟性の点から、HDIが特に好ましい。
【0037】
前記モノアルコールの炭素数の下限は、弱溶剤(D)への溶解性の点から、1であり、2が好ましく、3がより好ましく、4がさらに好ましく、6が特に好ましい。前記モノアルコールの炭素数の上限は、形成される硬化塗膜の硬度の点から、20であり、16が好ましく、12がより好ましく、9がさらに好ましい。
【0038】
モノアルコールは、飽和炭化水素基と水酸基だけからなることが好ましい。また、モノアルコールは、分岐を有していることが好ましい。
モノアルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、イソアミルアルコール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、1−ヘプタノール、1−オクタノール、2−オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、1,3,5−トリメチルシクロヘキサノール、3,3,5−トリメチル−1−ヘキサノール、トリデカノール、ペンタデカノール、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、トリメチルシクロヘキサノール等が挙げられる。
【0039】
モノアルコールは、弱溶剤(D)への溶解性の点では、イソブタノール、1−ブタノール、イソアミルアルコール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、1−へプタノール、1−オクタノール、2−オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、トリデカノール、ペンタデカノール、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール、1,3,5−トリメチルシクロヘキサノール、3,3,5−トリメチル−1−ヘキサノールが好ましく、イソブタノール、2−ヘキサノール、2−オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、3,3,5−トリメチル−1−ヘキサノールがより好ましい。
また、モノアルコールは、粘度がより低くなる点では、1−プロパノール、イソブタノール、1−ブタノール、イソアミルアルコール、1−ペンタノール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、1−ヘプタノール、1−オクタノール、2−オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、3,3,5−トリメチル−1−ヘキサノールが好ましい。
モノアルコールは、前記したものには限定されず、分子内にエーテル基や、エステル基、カルボニル基を有するモノアルコールでもよい。
モノアルコールは、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0040】
硬化剤(C1)におけるアロファネート基(All)とイソシアヌレート基(Iso)のモル比(All/Iso)は、81/19〜90/10である。モル比(All/Iso)が前記範囲内であれば、硬化性と弱溶剤(D)への溶解性が優れる。前記モル比(All/Iso)の下限は、83/17が好ましい。前記モル比(All/Iso)の上限は、88/12が好ましく、86/14がより好ましい。
前記モル比(All/Iso)は、H−NMRにより求められる(国際公開第2008/047761号参照)。
【0041】
硬化剤(C1)(100質量%)中のイソシアネート基の含有量(以下、「NCO含有量」という。)は、弱溶剤(D)に対する溶解性と、架橋性の点から、10〜22質量%が好ましく、13〜21質量%がより好ましく、16〜20質量%がさらに好ましい。
【0042】
硬化剤(C1)の粘度の下限は、架橋性の点から、50mPa・sが好ましく、75mPa・sがより好ましく、100mPa・sがさらに好ましく、120mPa.sが特に好ましい。硬化剤(C1)の粘度の上限は、揮発性有機化合物(VOC)を低減する点から、500mPa・sが好ましく、450mPa・sがより好ましく、400mPa・sがさらに好ましく、350mPa・sが特に好ましく、300mPa・sが最も好ましい。
【0043】
硬化剤(C1)におけるイソシアネート基の平均数は、硬化性と、弱溶剤(D)への溶解性の点から、2.10〜2.50が好ましく、2.15〜2.40がより好ましく、2.20〜2.35がさらに好ましい。
前記イソシアネート基の平均数は、下式で求められる。
(イソシアネート基の平均数)=(数平均分子量)×(NCO含有量)/4200
硬化剤(C1)の数平均分子量は、GPCにより測定できる。
【0044】
硬化剤(C)としてポリイソシアネート系硬化剤を使用する場合、イソシアネート基が保護されたブロック化ポリイソシアネート系硬化剤であってもよく、イソシアネート基が保護されていない非ブロック化ポリイソシアネート系硬化剤であってもよい。硬化剤(C)として、非ブロック化ポリイソシアネート系硬化剤を使用する場合、該硬化剤の配合は、塗料用組成物を塗布する直前に行う。一方、硬化剤(C)として、ブロック化ポリイソシアネート系硬化剤を使用する場合、硬化剤の配合時期は特に限定されない。
【0045】
含フッ素共重合体(B)および前記他の共重合体が有する架橋性基が水酸基で、硬化剤(C)がポリイソシアネート系硬化剤である場合、塗料用組成物中に含有される共重合体が有する水酸基、すなわち含フッ素共重合体(B)および前記他の共重合体が有する水酸基の合計と、硬化剤(C)のイソシアネート基のモル比(OH/NCO)は、0.3〜2.0が好ましく、0.7〜1.3がより好ましい。前記モル比(OH/NCO)が前記下限値以上であれば、耐溶剤性が向上する。前記モル比(OH/NCO)が前記上限値以下であれば、耐候性が向上し、また硬化不良(タック残存)が生じることを抑制しやすい。
ポリイソシアネート系硬化剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0046】
塗料用組成物中に含有される共重合体が有する架橋性基が水酸基以外の場合の硬化剤(C)は、該架橋性基の種類に応じて適宜選定すればよい。
塗料用組成物中に含有される共重合体が有する架橋性基がカルボキシル基の場合、硬化剤(C)としては、公知のアミノ系硬化剤、エポキシ系硬化剤等が挙げられる。
塗料用組成物中に含有される共重合体が有する架橋性基がアミノ基の場合、硬化剤(C)としては、公知のカルボニル基を有する硬化剤、エポキシ系硬化剤、酸無水物系硬化剤等が挙げられる。
塗料用組成物中に含有される共重合体が有する架橋性基がエポキシ基の場合、硬化剤(C)としては、公知のカルボキシル基を有する硬化剤、酸無水物系硬化剤、アミノ系硬化剤等が挙げられる。
硬化剤(C)は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0047】
[弱溶剤(D)]
弱溶剤(D)は、労働安全衛生法による有機溶剤の分類において、第三種有機溶剤に分類されている有機溶剤である。弱溶剤(D)を使用することにより、補修の際の下地(旧塗膜)への影響、および地球環境への負荷を低減できる。
弱溶剤(D)としては、ガソリン、コールタールナフサ、ソルベントナフサ、石油エーテル、石油ナフサ、石油ベンジン、テレピン油、ミネラルスピリット、ミネラルシンナー、ペトロリウムスピリット、ホワイトスピリット、ミネラルターペン等が挙げられる。
【0048】
弱溶剤(D)は、アニリン点が30〜70℃の弱溶剤が好ましく、アニリン点が40〜60℃の弱溶剤がより好ましい。弱溶剤(D)のアニリン点が前記範囲の下限値以上であれば、補修の際に旧塗膜を侵食することを抑制しやすい。弱溶剤(D)のアニリン点が前記範囲の上限値以下であれば、ケイ素含有化合物(A)および含フッ素共重合体(B)の溶解性が向上する。なお、弱溶剤(D)のアニリン点は、JIS K 2256に記載のアニリン点試験方法に準じて測定される。
【0049】
弱溶剤(D)としては、引火点が室温以上である点から、ミネラルスピリットが好ましい。
ミネラルスピリットとして市販されている弱溶剤としては、例えば、HAWS(シェルジャパン社製、アニリン点17℃)、エッソナフサNo.6(エクソンモービル化学社製、アニリン点43℃)、LAWS(シェルジャパン社製、アニリン点44℃)、ペガゾール3040(エクソンモービル化学社製、アニリン点55℃)、Aソルベント(新日本石油化学社製、アニリン点45℃)、クレンゾル(新日本石油化学社製、アニリン点64℃)、ミネラルスピリットA(新日本石油化学社製、アニリン点43℃)、ハイアロム2S(新日本石油化学社製、アニリン点44℃)、ハイアロム2S(新日本石油化学社製、アニリン点44℃)、リニアレン10、リニアレン12(出光石油化学社製、αオレフィン系炭化水素、アニリン点は順に44℃、54℃)、エクソールD30(エクソンモービル社製、ナフテン系溶剤、アニリン点63℃)、リカソルブ900、910B、1000(新日本理化株式会社製、水添C9溶剤、アニリン点は順に53℃、40℃、55℃)等が挙げられる。
弱溶剤(D)は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0050】
本発明の塗料用組成物中の弱溶剤(D)の含有量は、ケイ素含有化合物(A)および含フッ素共重合体(B)の溶解性、塗装方法に応じた最適な粘度等を考慮して適宜決定できる。弱溶剤(D)の含有量は、塗料用組成物の総量(100質量%)に対して、10〜90質量%が好ましく、20〜70質量%がより好ましい。
【0051】
[他の成分]
本発明の塗料用組成物は、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、硬化触媒、顔料、光安定剤、紫外線吸収剤、つや消し剤、界面活性剤、レベリング剤、消泡剤、分散剤等の他の成分を含んでもよい。
【0052】
硬化触媒としては、例えば、硬化剤(C)としてポリイソシアネート系硬化剤を使用する場合、ジブチル錫ジラウレート等が挙げられる。
【0053】
顔料としては、カーボンブラック、酸化チタン等の無機顔料、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、キナクリドンレッド、インダンスレンオレンジ、イソインドリノン系イエロー等の有機顔料等が挙げられる。また、遮熱顔料も使用できる。酸化チタンは、表面被覆した酸化チタンが好ましく、該酸化チタンは、石原産業社製、商品名「PFC−105」;堺化学社製、商品名「D−918」等として入手できる。
【0054】
光安定剤としては、ヒンダードアミン系光安定剤等が挙げられる。ヒンダードアミン系光安定剤としては、例えば、アデカアーガス化学社製の商品名「MARX LA62」、「MARX LA67」;チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製の商品名「チヌビン292」、「チヌビン144」、「チヌビン−123」、「チヌビン440」等が挙げられる。
【0055】
紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物、シアノアクリレート系化合物等が挙げられる。具体的には、「Viosorb130」、「Viosorb582」、「Viosorb583」(以上、共同製薬社製、商品名)、「チヌビン320」、「チヌビン384−2」、「チヌビン982」、「チヌビン1130」、「チヌビン400」(以上、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名)等が挙げられる。
【0056】
つや消し剤としては、超微粉合成シリカ等が挙げられる。つや消し剤を使用した場合、優雅な半光沢、つや消し仕上げの硬化塗膜を形成できる。
【0057】
界面活性剤としては、ノニオン型、カチオン型、アニオン型のいずれでもよく、レオレックスASE(第一工業社製、商品名)、フッ素系界面活性剤の「サーフロン」(旭硝子社製、商品名)、アクリル系界面活性剤の「モダフロー」(モンサント社製、商品名)、「レオファット」シリーズ(花王社製、商品名)等が挙げられる。
【0058】
レベリング剤を配合すれば、形成する硬化塗膜の厚さの均一性が向上する。レベリング剤としては、BYK−300(BYK−Chemie社製、商品名)、フローレンNo.3(共栄社化学社製、商品名)、ディスパロンLF1985(楠本化成社製、商品名)等が挙げられる。
【0059】
以上説明した本発明の塗料用組成物は、弱溶剤(D)を使用しているため環境負荷が小さく、またケイ酸含有化合物(A)の弱溶剤(D)への溶解性が良好なことから均一な硬化塗膜を形成でき、形成される硬化塗膜の低汚染性が優れている。
【0060】
<塗料用組成物用キット>
本発明の塗料用組成物用キットは、前述した本発明の塗料用組成物を調製するための二液硬化型のキットである。本発明の塗料用組成物用キットは、含フッ素共重合体(B)と弱溶剤(D)の一部を含有する主剤と、ケイ素含有化合物(A)、硬化剤(C)および弱溶剤(D)の残部を含有する硬化用組成物とを備えている。含フッ素共重合体(B)以外の前記他の共重合体を使用する場合、該他の共重合体は、前記主剤に含有させる。
本発明の塗料用組成物用キットにより、本発明の塗料用組成物を調製する場合、硬化剤(C)としては、保護基で保護されていない非ブロック化ポリイソシアネート系硬化剤が好ましい。
【0061】
本発明の塗料用組成物用キットにおける主剤および硬化用組成物の組成は、それらを混合したときに、前述した本発明の塗料用組成物となる組成であればよい。
本発明の塗料用組成物用キットにおける主剤中の弱溶剤(D)は、含フッ素共重合体(B)および前記他の共重合体の合計100質量部に対して、10〜90質量部が好ましい。
本発明の塗料用組成物用キットにおける硬化用組成物中の弱溶剤(D)は、ケイ素含有化合物(A)の100質量部に対して、10〜90質量部が好ましい。
【0062】
塗装される物品の材質は、特に限定されず、コンクリート、自然石、ガラス等の無機物;鉄、ステンレス、アルミニウム、銅、真鍮、チタン等の金属;プラスチック、ゴム、接着材、木材等の有機物が挙げられる。また、物品の材質としては、有機無機複合材であるFRP、樹脂強化コンクリート、繊維強化コンクリート等も挙げられる。
【0063】
本発明の塗料用組成物および塗料用組成物用キットは、自動車、電車、航空機等の輸送用機器;橋梁部材、鉄塔等の土木部材;防水材シート、タンク、パイプ等の産業機材;ビル外装、ドア、窓門部材、モニュメント、ポール等の建築部材;道路の中央分離帯、ガードレール、防音壁、ポリカーボネート、アクリル等の透光板等の道路部材;通信機材;電気および電子部品;太陽電池バックシート、太陽電池表面保護塗料等の塗装に使用できる。
【0064】
以上説明した本発明の塗装物品は、環境負荷の小さい本発明の塗料用組成物から形成した硬化塗膜を有し、優れた低汚染性を有している。
【実施例】
【0065】
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の記載によっては限定されない。
<溶解性の評価>
[例1]
硬化剤(C)であるA2400−100(旭化成ケミカルズ社製、ポリイソシアネート系硬化剤)の20.9gに、弱溶剤(D)であるミネラルスピリットA(新日本石油化学社製)の18.3gを加えて混合し、さらにケイ素含有化合物(A)であるエチルシリケート48(コルコート社製、SiO分48質量%)の10.8gを加えて混合して硬化用組成物1とした。
【0066】
[例2]
エチルシリケート48の代わりに、エチルシリケート40(コルコート社製、SiO分40質量%)を使用した以外は、例1と同様にして硬化用組成物2を得た。
【0067】
[例3]
エチルシリケート48の代わりに、メチルシリケート51(コルコート社製、SiO分51質量%)を使用した以外は、例1と同様にして硬化用組成物3を得た。
【0068】
[例4]
エチルシリケート48の代わりに、メチルシリケート53A(コルコート社製、SiO分53質量%)を使用した以外は、例1と同様にして硬化用組成物4を得た。
【0069】
[例5]
エチルシリケート48の代わりに、MKCシリケートMS56S(メチルシリケート、三菱化学社製、SiO分56質量%)を使用した以外は、例1と同様にして硬化用組成物5を得た。
【0070】
[例6]
エチルシリケート48の代わりに、n−ブチルシリケート(コルコート社製、SiO分19質量%)を使用した以外は、例1と同様にして硬化用組成物6を得た。
【0071】
[例7]
エチルシリケート48の代わりに、n−プロピルシリケート(コルコート社製、SiO分23質量%)を使用した以外は、例1と同様にして硬化用組成物7を得た。
【0072】
[例8]
エチルシリケート48の代わりに、MCS−18(Si(OCHCHOCH、コルコート社製、SiO分18質量%)を使用した以外は、例1と同様にして硬化用組成物8を得た。
【0073】
[評価方法]
例1〜8の硬化用組成物1〜8について、5℃または23℃における初期の溶解性と、23℃において6ヶ月貯蔵した後の溶解性を、目視により確認し、以下の基準で評価した。
「○」:無色透明で白濁がなかった。
「△」:白濁があった。
「×」:白濁が顕著であった。
溶解性の評価結果を表1に示す。
【0074】
【表1】

【0075】
SiO分が53質量%、56質量%のメチルシリケートを使用した例4、5の硬化用組成物において、メチルシリケートの弱溶剤(D)に対する溶解性が不良であったのに対し、SiO分が45〜50質量%のケイ素含有化合物(A)を使用した例1の硬化用組成物では、弱溶剤(D)に対するケイ素含有化合物(A)の溶解性が良好であった。
【0076】
<硬化塗膜の低汚染性の評価>
以下、例9は実施例で、例10〜15は比較例である。
[例9]
含フッ素共重合体(B)であるLS−800S(旭硝子社製)の45gを、弱溶剤(D)であるミネラルスピリットAの25gに溶解して調製した主剤の70gに、例1で得られた硬化用組成物1の10gを混合して塗料用組成物を調製した。
基材(縦20cm×横9cm×厚さ0.1cm、材質アルミ板)の表面に、ボンエポコートライト グレー色(AGCコーテック社製、エポキシ塗料)を下塗り(塗布量0.27kg/m)し、さらに、ボンフロンライト中塗 白色(AGCコーテック社製、フッ素樹脂塗料)を中塗り(塗布量0.13kg/m)した後、スプレーガンにより前記塗料用組成物を膜厚が30μmとなるように塗布し、23℃、相対湿度60%以下の条件で14日間養生し、硬化塗膜を形成して試験体を得た。
【0077】
[例10〜14]
硬化用組成物1の代わりに、表2に示す硬化用組成物を使用した以外は、例9と同様にして試験体を得た。
【0078】
[例15]
硬化剤(C)であるA2400−100の20.9gに、弱溶剤(D)であるミネラルスピリットAの29.1gを加えて混合し、硬化用組成物9とした。その後、硬化用組成物1の代わりに硬化用組成物9を使用した以外は、例9と同様にして試験体を得た。
【0079】
[折曲曝露(雨筋暴露)試験]
各例で得られた、硬化塗膜を有する縦20cmの試験体を、下端から10cmまでの領域が垂直面、下端から10cm以降の領域が傾斜面とを有するように、途中で60°屈曲させた。なお、硬化塗膜が傾斜面の上側となるようにした。このように屈曲させた試験体を屋外に曝露し、傾斜面と垂直面の雨筋の発生度合を目視により確認し、以下の基準で低汚染性を評価した。
「◎」:斜面の汚れ、雨筋汚れがなかった。
「○」:斜面の汚れ、雨筋汚れがほぼ見られなかった。
「△」:斜面の汚れ、雨筋汚れあった。
「×」:斜面の汚れ、雨筋汚れが顕著に見られた。
例9〜15の試験体の低汚染性の評価を表2に示す。
【0080】
【表2】

【0081】
SiO分が45〜50質量%のケイ素含有化合物(A)を使用した例9の試験体は、3ヶ月曝露後も雨筋の発生が少なく、ケイ素含有化合物を使用していない例15の試験体に比べて低汚染性が優れていた。また、例9の試験体は、SiO分が40質量%のエチルシリケートを使用した例10、メチルシリケート、n−ブチルシリケート、n−プロピルシリケート、Si(OCHCHOCHをそれぞれ使用した例11〜14の試験体と比べても、低汚染性が優れていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下式(1)で表されるケイ素含有化合物(A)、架橋性基を有する含フッ素共重合体(B)、硬化剤(C)および弱溶剤(D)を含有し、
前記ケイ素含有化合物(A)中のSiO分が45〜50質量%である塗料用組成物。
【化1】

(ただし、nは1〜100の整数である。)
【請求項2】
前記含フッ素共重合体(B)と硬化剤(C)の合計量100質量部に対する前記ケイ素含有化合物(A)の割合が1.5〜90質量部である請求項1に記載の塗料用組成物。
【請求項3】
前記弱溶剤(D)の含有量が塗料用組成物の総量(100質量%)に対して10〜90質量%である請求項1または2に記載の塗料用組成物。
【請求項4】
前記含フッ素共重合体(B)における架橋性基が水酸基であり、前記硬化剤(C)がポリイソシアネート系硬化剤であり、かつ塗料用組成物中に含有される共重合体が有する水酸基と前記硬化剤(C)のイソシアネート基のモル比(OH/NCO)が0.3〜2.0である請求項1〜3のいずれか一項に記載の塗料用組成物。
【請求項5】
前記硬化剤(C)が下記硬化剤(C1)である請求項1〜4のいずれか一項に記載の塗料用組成物。
硬化剤(C1):脂肪族ジイソシアネートおよび脂環式ジイソシアネートからなる群から選ばれる1種以上のジイソシアネートと、炭素数1〜20のモノアルコールとを反応させて得られる、アロファネート基(All)とイソシアヌレート基(Iso)のモル比(All/Iso)が81/19〜90/10のポリイソシアネート系硬化剤。
【請求項6】
前記弱溶剤(D)が、ミネラルスピリットである請求項1〜5のいずれか一項に記載の塗料用組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の塗料用組成物の調製用キットであって、
前記含フッ素共重合体(B)および弱溶剤(D)の一部を含有する主剤、ならびに前記ケイ素含有化合物(A)、硬化剤(C)、および弱溶剤(D)の残部を含有する硬化用組成物を備えた塗料用組成物用キット。

【公開番号】特開2012−82270(P2012−82270A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−227894(P2010−227894)
【出願日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【出願人】(000116954)AGCコーテック株式会社 (24)
【Fターム(参考)】