説明

塗料用組成物

【課題】UV−A領域まで遮蔽効果を示し、経時における耐光性変化がない塗料用組成物を提供する。
【解決手段】一般式(1)で表される化合物及びバインダー成分を含有することを特徴とする塗料用組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料組成物に関するものである。より詳しくは、長期の耐光性を有する塗料組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、塗料分野においては、塗料への要求性能が高度になってきている。塗装皮膜の耐光性を向上させるため、塗料に対してヒンダードアミン型光安定剤(HALS)や紫外線吸収剤(UVA)などの耐光性向上剤を添加することが一般的に行われている(特許文献1)。しかしながら、市販されている多くのHALSやUVAは分子量が比較的小さく、塗膜からのブリードアウトが起こるため、長期にわたり高い耐光性能を維持できない。
【0003】
また、従来から紫外線吸収剤を種々の樹脂などと共用して紫外線吸収性を付与することが行われている。紫外線吸収剤として無機系紫外線吸収剤と有機系紫外線吸収剤がある。無機系紫外線吸収剤(例えば、特許文献2〜4等を参照。)では、耐候性や耐熱性などの耐久性に優れている反面、吸収波長が化合物のバンドギャップによって決定されるため選択の自由度が少なく、400nm付近の長波紫外線(UV−A)領域まで吸収できるものはなく、長波紫外線を吸収するものは可視域まで吸収を有するために着色を伴ってしまう。
無機系紫外線吸収剤に対して、有機紫外線吸収剤は、吸収剤の構造設計の自由度が高いために、吸収剤の構造を工夫することによって様々な吸収波長のものを得ることができる。
【0004】
これまでにも様々な有機系紫外線吸収剤を用いた系が検討されており、特許文献5にはトリアゾール系の紫外線吸収剤が開示されている。特許文献6には特定の位置にアルコキシ基及びヒドロキシ基を有するトリスアリール−s−トリアジンが記載されている。しかし、極大吸収波長が長波紫外線領域にあるものは耐光性が悪く、紫外線遮蔽効果が時間とともに減少していってしまう。
【0005】
更に、太陽電池や、車両等に適用される材料は、屋外で長時間太陽光の下に曝されるため、長期経時での紫外線の暴露により、その材料の経時における色相の変化は避けられなかった。このため、UV−A領域まで遮蔽効果を示し、かつこれまで以上の耐光性に優れた塗膜を提供できる塗料組成物が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公平3−46506号公報
【特許文献2】特開平5−339033号公報
【特許文献3】特開平5−345639号公報
【特許文献4】特開平6−56466号公報
【特許文献5】特表2002−524452号公報
【特許文献6】特許第3965631号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記事情を鑑みてなされたものであり、高度化する耐光性能を十分に満足させる、長期に優れた耐光性を有する被膜を形成できる塗料用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題について詳細に検討した結果、UV−A領域まで遮蔽効果を示すとともに、経時における変化がなく優れた耐光性を有する塗膜を提供できる塗料用組成物を見出した。本発明はこの知見に基づき完成するに至ったものである。
【0009】
本発明の課題は、以下の手段によって達成された。
(1)
下記一般式(1)で表される化合物及びバインダー成分を含有することを特徴とする塗料用組成物。
【0010】
【化1】

【0011】
[R1a、R1b、R1c、R1d及びR1eは、互いに独立して、水素原子又はヒドロキシ基(OH)を除く1価の置換基を表し、置換基のうち少なくとも1つは、ハメット則のσp値が正である置換基を表す。また置換基同士で結合して環を形成しても良い。R1g、R1h、R1i、R1j、R1k、R1m、R1n及びR1pは、互いに独立して、水素原子又は1価の置換基を表す。また置換基同士で結合して環を形成しても良い。]
(2)
前記1価の置換基が、ハロゲン原子、置換又は無置換の炭素数1〜20のアルキル基、シアノ基、カルボキシル基、置換又は無置換のアルコキシカルボニル基、置換又は無置換のカルバモイル基、置換又は無置換のアルキルカルボニル基、ニトロ基、置換又は無置換のアミノ基、ヒドロキシ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、置換又は無置換のアリールオキシ基、置換又は無置換のスルファモイル基、チオシアネート基、又は置換又は無置換のアルキルスルホニル基であり、置換基を有する場合の置換基がハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基、シアノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルカルボニル基、ニトロ基、アミノ基、ヒドロキシ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、アリールオキシ基、スルファモイル基、チオシアネート基、又はアルキルスルホニル基であることを特徴とする、(1)に記載の塗料用組成物。
(3)
前記R1cが、ハメット則のσp値が正である置換基であることを特徴とする、(1)又は(2)に記載の塗料用組成物。
(4)
前記R1a、R1c及びR1eが水素原子を表し、R1b及びR1dが互いに独立して水素原子又はハメット則のσp値が正である置換基を表し、少なくとも1つは、ハメット則のσp値が正である置換基であることを特徴とする、(1)又は(2)に記載の塗料用組成物。
(5)
前記ハメット則のσp値が、0.1〜1.2の範囲であることを特徴とする、(1)〜(4)のいずれか1つに記載の塗料用組成物。
(6)
前記ハメット則のσp値が正である置換基が、COOR、CONR、シアノ基、トリフルオロメチル基、ハロゲン原子、ニトロ基及びSOMより選択される基であることを特徴とする、(1)〜(5)のいずれか1つに記載の塗料用組成物。
[R、Rは、水素原子又は1価の置換基を表す。Mは、水素原子又はアルカリ金属を表す。]。
(7)
前記ハメット則のσp値が正である置換基がCOORであることを特徴とする、(1)〜(4)、又は(6)のいずれか1つに記載の塗料用組成物。
[Rは、水素原子又は1価の置換基を表す。]。
(8)
前記R1cが、シアノ基であることを特徴とする、(1)〜(3)、(5)及び(6)のいずれか1つに記載の塗料用組成物。
(9)
前記R1h又はR1nが、水素原子であることを特徴とする、(1)〜(3)、(5)〜(8)のいずれか1つに記載の塗料用組成物。
(10)
前記R1g、R1h、R1i、R1j、R1k、R1m、R1n及びR1pが、水素原子であることを特徴とする、(1)〜(9)のいずれか1つに記載の塗料用組成物。
(11)
一般式(1)で表される化合物のpKaが−5.0〜−7.0の範囲であることを特徴とする、(1)〜(10)のいずれか1つに記載の塗料用組成物。
(12)
一般式(1)で表される化合物を、塗料用組成物の全質量に基づき、0.1〜30質量%含有することを特徴とする、(1)〜(11)のいずれか1つに記載の塗料用組成物。
(13)
バインダー成分が、塩化ゴム樹脂系、フェノール樹脂系、アルキド樹脂系、アミノアルキド樹脂系、尿素樹脂系、ビニル樹脂系、アクリル樹脂系、ポリエステル樹脂系、エポキシ樹脂系、ポリウレタン樹脂系、シリコーン樹脂系、ケイ素樹脂系、フッ素樹脂系、シラザン樹脂系、メラミン樹脂系の少なくとも一つを含む成分であることを特徴とする(1)〜(12)のいずれか1つに記載の塗料用組成物。
(14)
更に、硬化剤を含有することを特徴とする(1)〜(13)のいずれか1項に記載の塗料用組成物。
(15)
バインダー成分が、水酸基価が30〜600mgKOH/gでありかつ酸価が0〜100mgKOH/gである水酸基含有樹脂であることを特徴とする(1)〜(14)のいずれか1項に記載の塗料用組成物。
(16)
(1)〜(15)のいずれか1つに記載の塗料用組成物を基材に適用することにより得られる被膜。
(17)
被膜の厚さが0.1〜10000μmである(16)に記載の被膜。
(18)
(16)又は(17)に記載の被膜を有する部材。
(19)
塗料用組成物が、車両用である(1)〜(15)のいずれか1つに記載の塗料用組成物。
【発明の効果】
【0012】
本発明の塗料用組成物は、前記一般式(1)で表される化合物を含有することで、長波紫外線領域においても優れた耐光性(紫外光堅牢性)を有し、該塗料用組成物を塗設された部材の光安定性を高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の塗料用組成物は、バインダー成分、必要に応じて添加剤を含有する一般的な塗料について、一般式(1)で表される化合物を添加することで調製される。
以下、本発明の塗料用組成物が含有する成分について説明する。
<一般式(1)で表される化合物>
【0014】
【化2】

【0015】
[R1a、R1b、R1c、R1d及びR1eは、互いに独立して、水素原子又はヒドロキシ基を除く1価の置換基を表し、置換基のうち少なくとも1つは、ハメット則のσp値が正である置換基を表す。また置換基同士で結合して環を形成しても良い。R1g、R1h、R1i、R1j、R1k、R1m、R1n及びR1pは、互いに独立して、水素原子又は1価の置換基を表す。また置換基同士で結合して環を形成しても良い。]
【0016】
1a、R1b、R1c、R1d、R1eは、互いに独立して、水素原子又はヒドロキシ基を除く1価の置換基を表し、置換基のうち少なくとも1つは、ハメット則のσp値が正である置換基を表す。
1a、R1b、R1c、R1d、R1eが表す置換基のうち1〜3個がハメット則のσp値が正である置換基を表すことが好ましく、1〜2個がハメット則のσp値が正である置換基を表すことがより好ましい。
【0017】
前記一般式(1)における1価の置換基(以下Aとする)としては、例えば、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、炭素数1〜20のアルキル基(例えばメチル、エチル)、炭素数6〜20のアリール基(例えばフェニル、ナフチル)、シアノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基(例えばメトキシカルボニル)、アリールオキシカルボニル基(例えばフェノキシカルボニル)、置換又は無置換のカルバモイル基(例えばカルバモイル、N−フェニルカルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル)、アルキルカルボニル基(例えばアセチル)、アリールカルボニル基(例えばベンゾイル)、ニトロ基、置換又は無置換のアミノ基(例えばアミノ、ジメチルアミノ、アニリノ、置換スルホアミノ基)、アシルアミノ基(例えばアセトアミド、エトキシカルボニルアミノ)、スルホンアミド基(例えばメタンスルホンアミド)、イミド基(例えばスクシンイミド、フタルイミド)、イミノ基(例えばベンジリデンアミノ)、ヒドロキシ基、炭素数1〜20のアルコキシ基(例えばメトキシ)、アリールオキシ基(例えばフェノキシ)、アシルオキシ基(例えばアセトキシ)、アルキルスルホニルオキシ基(例えばメタンスルホニルオキシ)、アリールスルホニルオキシ基(例えばベンゼンスルホニルオキシ)、スルホ基、置換又は無置換のスルファモイル基(例えばスルファモイル、N−フェニルスルファモイル)、アルキルチオ基(例えばメチルチオ)、アリールチオ基(例えばフェニルチオ)、チオシアネート基、アルキルスルホニル基(例えばメタンスルホニル)、アリールスルホニル基(例えばベンゼンスルホニル)、炭素数6〜20のヘテロ環基(例えばピリジル、モルホリノ)などを挙げることができる。
また、置換基は更に置換されていても良く、置換基が複数ある場合は、同じでも異なっても良い。その際、置換基の例としては、上述の1価の置換基Aを挙げることができる。
また置換基同士で結合して環を形成しても良い。
【0018】
置換基同士で結合して形成される環としては、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、トリアジン環、ピリダジン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、オキサゾール環、オキサジアゾール環、チアゾール環、チアジアゾール環、フラン環、チオフェン環、セレノフェン環、シロール環、ゲルモール環、ホスホール環等が挙げられる。
【0019】
前記一般式(1)における1価の置換基としては、ハロゲン原子、置換又は無置換の炭素数1〜20のアルキル基、シアノ基、カルボキシル基、置換又は無置換のアルコキシカルボニル基、置換又は無置換のカルバモイル基、置換又は無置換のアルキルカルボニル基、ニトロ基、置換又は無置換のアミノ基、ヒドロキシ基、置換又は無置換の炭素数1〜20のアルコキシ基、置換又は無置換のアリールオキシ基、置換又は無置換のスルファモイル基、チオシアネート基、又は置換又は無置換のアルキルスルホニル基が好ましく、OR(Rは、水素原子又は1価の置換基を表す。)、アルキル基、アミド基がより好ましく、OR、アルキル基が更に好ましい。
は、水素原子又は1価の置換基を表し、1価の置換基としては前記置換基Aを挙げることができる。中でも炭素数1〜20の直鎖又は分岐鎖アルキル基を表すことが好ましい。炭素数1〜6の直鎖又は分岐鎖アルキル基が更に好ましく、炭素数1〜6の直鎖又は分岐鎖アルキル基としては、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、i−ペンチル、t−ペンチル、n−ヘキシル、i−ヘキシル、t−ヘキシル、n−オクチル、t−オクチル、i−オクチルを挙げることができ、メチル又はエチルが好ましく、メチルが特に好ましい。 これらが置換基を有する場合の置換基としては、ハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基、シアノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルカルボニル基、ニトロ基、アミノ基、ヒドロキシ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、アリールオキシ基、スルファモイル基、チオシアネート基、又はアルキルスルホニル基を挙げることができる。
【0020】
本発明における好ましい第一の態様として、R1a、R1c、R1eのうち少なくとも1つが、ハメット則のσp値が正である置換基を表す態様を挙げることができる。
1cがハメット則のσp値が正である置換基を表すことがより好ましい。
1cがハメット則のσp値が正である置換基であり、R1a、R1b、R1d、R1eは水素原子を表すことが更に好ましい。
1cがハメット則のσp値が正である置換基を表す場合、電子求引性基によりLUMOが安定化されるため、励起寿命が短くなり、耐光性が向上するため好ましい。これにより一般式(1)で表される化合物は、特に耐光性に優れ、該化合物を含む塗料用組成物は耐光性向上に優れたものとなる効果を有する。
また、好ましい第ニの態様として、R1a、R1c及びR1eが、水素原子を表し、R1b及びR1dが、互いに独立して、水素原子又はハメット則のσp値が正である置換基を表し、少なくとも1つは、ハメット則のσp値が正である置換基である態様を挙げることができる。
これにより、一般式(1)で表される化合物は、特に溶剤溶解性が優れ、該化合物を含む塗料用組成物を適用した塗膜からの析出防止に優れたものとする効果を有する。
溶剤溶解性とは、酢酸エチル、メチルエチルケトン、トルエンなどの有機溶剤への溶解性を意味し、塗料用組成物を適用した塗膜からの析出防止の点で、使用する溶剤に対し、10質量%以上溶解することが好ましく、30質量%以上溶解することがより好ましい。
【0021】
<好ましい第一の態様>
第一の態様においては、前記一般式(1)におけるハメット則のσp値が正である置換基として、好ましくは、σ値が0.1〜1.2の電子求引性基である。σ値が0.1以上の電子求引性基の具体例としては、COOR(Rは、水素原子又は1価の置換基を表し、水素原子、アルキル基が挙げられ、好ましくは水素原子である。)、CONR(Rは、水素原子又は1価の置換基を表す。)、シアノ基(CN)、ハロゲン原子、ニトロ基(NO)、SOM(Mは、水素原子又はアルカリ金属を表す。)、アシル基、ホルミル基、アシルオキシ基、アシルチオ基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ジアルキルホスホノ基、ジアリールホスホノ基、ジアルキルホスフィニル基、ジアリールホスフィニル基、ホスホリル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アシルチオ基、スルファモイル基、チオシアネート基、チオカルボニル基、イミノ基、N原子で置換したイミノ基、カルボキシ基(又はその塩)、少なくとも2つ以上のハロゲン原子で置換されたアルキル基(例えばトリフルオロメチル基)、少なくとも2つ以上のハロゲン原子で置換されたアルコキシ基、少なくとも2つ以上のハロゲン原子で置換されたアリールオキシ基、アシルアミノ基、少なくとも2つ以上のハロゲン原子で置換されたアルキルアミノ基、少なくとも2つ以上のハロゲン原子で置換されたアルキルチオ基、σ値が0.2以上の他の電子求引性基で置換されたアリール基、ヘテロ環基、ハロゲン原子、アゾ基、セレノシアネート基などが挙げられる。ハメットのσp値については、Hansch,C.;Leo,A.;Taft,R.W.Chem.Rev.1991,91,165−195に詳しく記載されている。
【0022】
前記一般式(1)におけるハメット則のσp値が正である置換基として、より好ましくは、COOR、CONR、シアノ基、トリフルオロメチル基(CF)、ハロゲン原子、ニトロ基、SOMである[R、Rは、互いに独立して、水素原子又は1価の置換基を表す。Mは、水素原子又はアルカリ金属を表す]。この中でもCOOR又はシアノ基がより好ましく、COOR、であることが更に好ましい。優れた耐光性と溶解性を有するためである。
【0023】
、Rとしては水素原子又は1価の置換基を表し、1価の置換基としては前記置換基Aを挙げることができる。中でも炭素数1〜20の直鎖又は分岐鎖アルキル基が好ましく、炭素数1〜6の直鎖又は分岐鎖アルキル基がより好ましい。炭素数1〜6の直鎖又は分岐鎖アルキル基としては、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、i−ペンチル、t−ペンチル、n−ヘキシル、i−ヘキシル、t−ヘキシル、n−オクチル、t−オクチル、i−オクチルを挙げることができ、メチル又はエチルが好ましく、メチルが特に好ましい。
【0024】
前記一般式(1)で表される化合物において、R1cがCOOR、CONR、シアノ基、トリフルオロメチル基、ハロゲン原子、ニトロ基、SOMのいずれかであることが好ましく、COOR又はシアノ基よりが好ましく、シアノ基が更に好ましい。
【0025】
また、本発明において、R1g、R1h、R1i、R1j、R1k、R1m、R1n及びR1pが1価の置換基を表す場合は、R1g、R1h、R1i、R1j、R1k、R1m、R1n及びR1pのうち少なくとも1つが、前記ハメット則のσp値が正である置換基を表すことがより好ましく、R1g、R1h、R1i及びR1jのうち少なくとも1つが、前記ハメット則のσp値が正(好ましくは0.1〜1.2)である置換基を表すことがより好ましく、R1hが前記ハメット則のσp値が正である置換基を表すことが更に好ましい。R1c及びR1hが前記ハメット則のσp値が正(好ましくは0.1〜1.2)である置換基を表すことが特に好ましい。優れた耐光性を有するためである。
本発明において、R1h又はR1nがそれぞれ独立に水素原子、COOR、CONR、シアノ基、トリフルオロメチル基、ハロゲン原子、ニトロ基、SOMのいずれかであることが好ましく、R1h又はR1nが水素原子であることがより好ましく、R1h及びR1nが水素原子であることが更に好ましく、R1g、R1h、R1i、R1j、R1k、R1m、R1n及びR1pが水素原子を表すことが特に好ましい。優れた耐光性を示すためである。
【0026】
前記一般式(1)で表される化合物において、R1cがハメット則のσp値が正(好ましくは0.1〜1.2)である置換基であって、R1g、R1h、R1i、R1j、R1k、R1m、R1n及びR1pは水素原子を表すことが好ましく、R1cがCOOR、CONR、シアノ基、トリフルオロメチル基、ハロゲン原子、ニトロ基、SOMのいずれかであって、R1g、R1h、R1i、R1j、R1k、R1m、R1n及びR1pは水素原子であることがより好ましい。優れた耐光性を示すためである。
【0027】
前記一般式(1)で表される化合物はpKaが−5.0〜−7.0の範囲であることが好ましい。更に−5.2〜−6.5の範囲であることがより好ましく、−5.4〜−6.0の範囲であることが特に好ましい。
【0028】
<好ましい第ニの態様>
好ましい第ニの態様として、R1a、R1c及びR1eが、水素原子を表し、R1b及びR1dが、互いに独立して、水素原子又はハメット則のσp値が正である置換基を表し、少なくとも1つは、ハメット則のσp値が正である置換基である態様を挙げることができる。
1a、R1c及びR1eが、水素原子を表し、R1b及びR1dが、互いに独立して、水素原子又はハメット則のσp値が正である置換基を表し、少なくとも1つは、ハメット則のσp値が正である置換基である第ニの態様においては、前記一般式(1)におけるハメット則のσp値が正である置換基として、より好ましくは、COOR、CONR、シアノ基、トリフルオロメチル基、ハロゲン原子、ニトロ基、又はSOMである[R、Rは、互いに独立して、水素原子又は1価の置換基を表す。Mは、水素原子又はアルカリ金属を表す]。R、Rの1価の置換基としては、前述のように前記置換基Aを挙げることができる。
前記一般式(1)におけるハメット則のσp値が正である置換基として、より好ましくは、COOR又はシアノ基であり、COORであることが更に好ましい。ハメット則のσp値が正である置換基がシアノ基である場合、優れた耐光性を示すためである。また、ハメット則のσp値が正である置換基がCOORである場合、優れた溶解性を示すためである。
は水素原子又はアルキル基を表すことが好ましく、炭素数1〜20の直鎖又は分岐鎖アルキル基がより好ましく、炭素数1〜15の直鎖又は分岐鎖アルキル基が更に好ましい。
【0029】
は、溶媒に対する溶解性の観点からは、炭素数5〜15の分岐鎖アルキル基がより好ましい。
分岐鎖アルキル基は2級炭素原子又は3級炭素原子を有し、2級炭素原子又は3級炭素原子を1〜5個含むことが好ましく、1〜3個含むことが好ましく、1又は2個含むことが好ましく、2級炭素原子及び3級炭素原子を1又は2個含むことがより好ましい。また、不斉炭素を1〜3個含むことが好ましい。
は、溶媒に対する溶解性の観点からは、2級炭素原子及び3級炭素原子を1又は2個含み、不斉炭素を1又は2個含む炭素数5〜15の分岐鎖アルキル基であることが特に好ましい。
これは、化合物構造の対称性がくずれ、溶解性が向上するためである。
【0030】
一方、紫外線吸収能の観点からは、炭素数1〜6の直鎖又は分岐鎖アルキル基がより好ましい。
炭素数1〜6の直鎖又は分岐鎖アルキル基としては、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、i−ペンチル、t−ペンチル、n−ヘキシル、i−ヘキシル、t−ヘキシル、n−オクチル、t−オクチル、i−オクチルを挙げることができ、メチル又はエチルが好ましく、メチルが特に好ましい。
【0031】
また、本発明において、R1g、R1h、R1i、R1j、R1k、R1m、R1n及びR1pが1価の置換基を表す場合は、R1g、R1h、R1i、R1j、R1k、R1m、R1n及びR1pのうち少なくとも1つが、前記ハメット則のσp値が正である置換基を表すことがより好ましく、R1g、R1h、R1i及びR1jのうち少なくとも1つが、前記ハメット則のσp値が正(好ましくは0.1〜1.2)である置換基を表すことがより好ましく、R1hが前記ハメット則のσp値が正である置換基を表すことが更に好ましい。R1b又はR1d、及びR1hが前記ハメット則のσp値が正(好ましくは0.1〜1.2)である置換基を表すことが特に好ましい。優れた耐光性を有するためである。
本発明において、R1h又はR1nがそれぞれ独立に水素原子、COOR、CONR、シアノ基、トリフルオロメチル基、ハロゲン原子、ニトロ基、SOMのいずれかであることが好ましく、R1h又はR1nが水素原子であることがより好ましく、R1h及びR1nが水素原子であることが更に好ましく、R1g、R1h、R1i、R1j、R1k、R1m、R1n及びR1pが水素原子を表すことが特に好ましい。優れた耐光性を示すためである。
【0032】
前記一般式(1)で表される化合物において、R1b又はR1d、がハメット則のσp値が正(好ましくは0.1〜1.2)である置換基であって、R1g、R1h、R1i、R1j、R1k、R1m、R1n及びR1pは水素原子を表すことが好ましく、R1b又はR1d、がCOOR、CONR、シアノ基、トリフルオロメチル基、ハロゲン原子、ニトロ基、SOMのいずれかであって、R1g、R1h、R1i、R1j、R1k、R1m、R1n及びR1pは水素原子であることがより好ましい。優れた耐光性を示すためである。
【0033】
前記一般式(1)で表される化合物はpKaが−5.0〜−7.0の範囲であることが好ましい。更に−5.2〜−6.5の範囲であることがより好ましく、−5.4〜−6.0の範囲であることが特に好ましい。
【0034】
前記一般式(1)で表される化合物の具体例を以下に示すが、本発明はこれに限定されない。
なお、下記の具体例中Meはメチル基を表し、Phはフェニル基を表し、−C13はn−ヘキシルを表す。
【0035】
【化3】

【0036】
【化4】

【0037】
【化5】

【0038】
【化6】

【0039】
【化7】

【0040】
【化8】

【0041】
【化9】

【0042】
【化10】

【0043】
【化11】

【0044】
【化12】

【0045】
前記一般式(1)で表される化合物は、構造とその置かれた環境によって互変異性体を取り得る。本発明においては代表的な形の一つで記述しているが、本発明の記述と異なる互変異性体も本発明の化合物に含まれる。
【0046】
前記一般式(1)で表される化合物は、同位元素(例えば、H、H、13C、15N、17O、18Oなど)を含有していてもよい。
【0047】
前記一般式(1)で表される化合物は、任意の方法で合成することができる。
例えば、公知の特許文献や非特許文献、例えば、特開平7−188190号公報、特開平11−315072、特開2001−220385号公報、「染料と薬品」第40巻12号(1995)の325〜339ページなどを参考にして合成できる。具体的には、例示化合物(16)はサリチルアミドと3,5−ビス(トリフルオロメチル)ベンゾイル クロリドと2−ヒドロキシベンズアミジン塩酸塩とを反応させることにより合成できる。また、サリチルアミドとサリチル酸と3,5−ビス(トリフルオロメチル)ベンズアミジン塩酸塩とを反応させることによっても合成できる。
【0048】
本発明における前記化合物は、有機材料を光・酸素又は熱による損傷に対して安定化させるのに特に適している。中でも前記一般式(1)で表される化合物は、光安定剤、とりわけ紫外線吸収剤として好適に用いることができる。
【0049】
前記一般式(1)で表される化合物は特定の位置にハメット則のσp値が正である置換基を有するため、電子求引性基によりLUMOが安定化されるため、励起寿命が短くなり、優れた耐光性を有するという特徴を有する。紫外線吸収剤として用いた際にも、既知のトリアジン系化合物を用いた場合は、長時間使用した場合は分解して黄変するなど悪影響を及ぼす。
それに対して、前記一般式(1)で表される化合物は優れた耐光性を有するため長時間使用した場合でも分解せず黄変することがないという効果が得られる。
【0050】
前記一般式(1)で表される化合物の極大吸収波長は、特に限定されないが、好ましくは250〜400nmであり、より好ましくは280〜380nmである。半値幅は好ましくは20〜100nmであり、より好ましくは40〜80nmである。
【0051】
本発明において規定される極大吸収波長及び半値幅は、当業者が容易に測定することができる。測定方法に関しては、例えば日本化学会編「第4版実験化学講座7分光II」(丸善,1992年)180〜186ページなどに記載されている。具体的には、適当な溶媒に試料を溶解し、石英製又はガラス製のセルを用いて、試料用と対照用の2つのセルを使用して分光光度計によって測定される。用いる溶媒は、試料の溶解性と合わせて、測定波長領域に吸収を持たないこと、溶質分子との相互作用が小さいこと、揮発性があまり著しくないこと等が要求される。上記条件を満たす溶媒であれば、任意のものを選択する。
【0052】
有機溶媒としては、例えばアミド系溶媒(例えばN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、1−メチルー2−ピロリドン)、スルホン系溶媒(例えばスルホラン)スルホキシド系溶媒(例えばジメチルスルホキシド)、ウレイド系溶媒(例えばテトラメチルウレア)、エーテル系溶媒(例えばジオキサン、テトラヒドロフラン、シクロペンチルメチルエーテル)、ケトン系溶媒(例えばアセトン、シクロヘキサノン)、炭化水素系溶媒(例えばトルエン、キシレン、n−デカン)、ハロゲン系溶媒(例えばテトラクロロエタン,クロロベンゼン、クロロナフタレン)、アルコール系溶媒(例えばメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、シクロヘキサノール、フェノール)、ピリジン系溶媒(例えばピリジン、γ―ピコリン、2,6−ルチジン)、エステル系溶媒(例えば酢酸エチル、酢酸ブチル)、カルボン酸系溶媒(例えば酢酸、プロピオン酸)、ニトリル系溶媒(例えばアセトニトリル)、スルホン酸系溶媒(例えばメタンスルホン酸)、アミン系溶媒(例えばトリエチルアミン、トリブチルアミン)等を用いることができる。
無機溶媒としては、例えば硫酸、リン酸等を用いることができる。
【0053】
前記一般式(1)の化合物の溶解性の点から、アミド系溶媒、スルホン系溶媒、スルホキシド系溶媒、ウレイド系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒、ハロゲン系溶媒、炭化水素系溶媒、エステル系溶媒が好ましい。
【0054】
測定のための前記一般式(1)の化合物の濃度は、分光吸収の極大波長が確認できる濃度であれば特に制限されず、好ましくは1×10−7〜1×1013mol/Lの範囲である。
測定のための温度は特に制限されず、好ましくは0℃〜80℃である。
【0055】
分光吸収測定装置としては、特に制限されず、通常の分光吸収測定装置(例えば、日立ハイテクノロジーズ(株)製U−4100スペクトロフォトメーター)を用いることができる。
【0056】
本発明においては、酢酸エチル(EtOAc)を溶媒に用いて測定を行うこととする。
【0057】
本発明における化合物の極大吸収波長及び半値幅は、酢酸エチルを溶媒として、濃度約5×10−5mol・dm−3の溶液を調製し、光路長10mmの石英セルを使用して測定した値を使用する。
【0058】
スペクトルの半値幅に関しては、例えば日本化学会編「第4版実験化学講座3 基本操作III」(丸善、1991年)154ページなどに記載がある。なお、上記成書では波数目盛りで横軸を取った例で半値幅の説明がなされているが、本発明における半値幅は波長目盛りで軸を取った場合の値を用いることとし、半値幅の単位はnmである。具体的には、極大吸収波長における吸光度の1/2の吸収帯の幅を表し、吸収スペクトルの形を表す値として用いられる。半値幅が小さいスペクトルはシャープなスペクトルであり、半値幅が大きいスペクトルはブロードなスペクトルである。ブロードなスペクトルを与える紫外線吸収化合物は、極大吸収波長から長波側の幅広い領域にも吸収を有するので、黄色味着色がなく長波紫外線領域を効果的に遮蔽するためには、半値幅が小さいスペクトルを有する紫外線吸収化合物の方が好ましい。
【0059】
時田澄男著「化学セミナー9 カラーケミストリー」(丸善、1982年)154〜155ページに記載されているように、光の吸収の強さすなわち振動子強度はモル吸光係数の積分に比例し、吸収スペクトルの対称性がよいときは、振動子強度は極大吸収波長における吸光度と半値幅の積に比例する(但しこの場合の半値幅は波長目盛りで軸を取った値である)。このことは遷移モーメントの値が同じとした場合、半値幅が小さいスペクトルを有する化合物は極大吸収波長における吸光度が大きくなることを意味している。このような紫外線吸収化合物は少量使用するだけで極大吸収波長周辺の領域を効果的に遮蔽できるメリットがあるが、波長が極大吸収波長から少し離れると急激に吸光度が減少するために、幅広い領域を遮蔽することができない。
【0060】
前記一般式(1)で表される化合物は、極大吸収波長におけるモル吸光係数が20000以上であることが好ましく、30000以上であることがより好ましく、50000以上であることが特に好ましい。20000以上であれば、前記一般式(1)で表される化合物の質量当たりの吸収効率が十分得られるため、紫外線領域を完全に吸収するための前記一般式(1)で表される化合物の使用量を低減できる。これは皮膚刺激性や生体内への蓄積を防ぐ観点、及びブリードアウトが生じにくい点から好ましい。なお、モル吸光係数については、例えば日本化学会編「新版実験化学講座9 分析化学[II]」(丸善、1977年)244ページなどに記載されている定義を用いたものであり、上述した極大吸収波長及び半値幅を求める際に合わせて求めることができる。
【0061】
本発明の塗料用組成物は、前記一般式(1)で表される化合物を、所望の性能を付与するために必要な、任意の量で含有させることができる。これらは用いる化合物やバインダー成分などによって異なるが、適宜含有量を決定することができる。
一般式(1)で表される化合物を、塗料用組成物の全質量に基づき、0.1〜30質量%、好ましくは0.1〜20質量%、更に好ましくは0.5〜20質量%、更に好ましくは1〜10質量%含有する。
また、一般式(1)で表される化合物は、バインダー成分の総量に対し、一般的には、0.1〜50質量%、好ましくは0.1〜30質量%、更に好ましくは0.5〜30質量%、更に好ましくは1〜20質量%である。
【0062】
本発明の塗料用組成物は、異なる構造を有する二種類以上の前記一般式(1)で表される化合物を含有していてもよい。また、前記一般式(1)で表される化合物とそれ以外の構造を有する一種類以上の紫外線吸収剤とを併用してもよい。基本骨格構造の異なる二種類(好ましくは三種類)の紫外線吸収剤を併用すると、広い波長領域の紫外線を吸収することができる。また、二種類以上の紫外線吸収剤を併用すると、紫外線吸収剤の分散状態が安定化する作用もある。
【0063】
<他の紫外線吸収剤>
前記一般式(1)以外の構造を有する紫外線吸収剤としては、いずれのものでも使用でき、トリアジン系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、メロシアニン系、シアニン系、ジベンゾイルメタン系、桂皮酸系、シアノアクリレート系、安息香酸エステル系などの化合物が挙げられる。例えば、ファインケミカル、2004年5月号、28〜38ページ、東レリサーチセンター調査研究部門発行「高分子用機能性添加剤の新展開」(東レリサーチセンター、1999年)96〜140ページ、大勝靖一監修「高分子添加剤の開発と環境対策」(シーエムシー出版、2003年)54〜64ページなどに記載されている紫外線吸収剤が挙げられる。
【0064】
前記一般式(1)以外の構造を有する紫外線吸収剤として好ましくは、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、サリチル酸系化合物、ベンゾオキサジノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ベンゾオキサゾール系化合物、メロシアニン系化合物、トリアジン系化合物である。より好ましくはベンゾオキサジノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、トリアジン系化合物である。特に好ましくはベンゾオキサジノン系化合物である。上記一般式(1)以外の構造を有する紫外線吸収剤は、特開2008−273950号公報の段落番号〔0117〕〜〔0121〕に詳述されており、該公報に記載の材料は、本発明においても適用することができる。
【0065】
前述したように、本発明の塗料用組成物は、一般式(1)で表される化合物とベンゾオキサジノン系化合物を組み合わせて含有することが好ましい。一般式(1)で表される化合物は長波長領域においても優れた耐光性を有するため、より長波長領域まで遮蔽可能なベンゾオキサジノンの劣化を防ぐという効果を奏し、ベンゾオキサジノン系化合物と共に用いることで、より長波長領域まで長時間において遮蔽効果が持続できるため好ましい。
併用する場合、一般式(1)以外の構造を有する紫外線吸収剤の添加量と、一般式(1)で表される化合物の添加量との質量比は、10/1〜1/10であることが好ましく5/1〜1/5、より好ましくは1/1〜1/5である。
【0066】
<バインダー成分>
本発明の塗料用組成物が一般的に含有するバインダー成分としては、熱可塑性、熱硬化性、光硬化性などいずれであってもよく、例えば、塩化ゴム樹脂系、フェノール樹脂系、アルキド樹脂系、アミノアルキド樹脂系、尿素樹脂系、ビニル樹脂系、アクリル樹脂系、ポリエステル樹脂系、エポキシ樹脂系、ポリウレタン樹脂系、シリコーン樹脂系、ケイ素樹脂系、フッ素樹脂系、シラザン樹脂系、メラミン樹脂系の少なくとも一つを含む成分などが挙げられる。
【0067】
また、バインダー成分は、複合化された樹脂や有機−無機のハイブリッド型の樹脂であることも好ましい。
複合化された樹脂としては、例えば、アクリルウレタン樹脂やシリコンアクリル樹脂のような、アクリル樹脂と他の樹脂が複合化された樹脂が好ましく挙げられる。
【0068】
前記アクリルウレタン樹脂としては、メタクリル酸エステル(例えばメタクリル酸メチル)とヒドロキシエチルメタクリレート共重合体とポリイソシアネートとを反応させて得られるアクリルウレタン樹脂が挙げられる。該ポリイソシアネートとしてはトリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート、トリジンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0069】
前記シリコンアクリル樹脂としてはアクリル樹脂とシリコーン樹脂とをブロック共重合などにより複合化したもの、アクリル樹脂あるいはシリコーン樹脂いずれかの成分で上記他方の成分を架橋させたものや、シリコーンを部分的にアクリル修飾したものや、上記2成分を他の架橋剤で架橋させたものなどが挙げられる。
【0070】
このようなシリコンアクリル樹脂は、例えば次のようにして製造できる。すなわちアクリル樹脂の重合において、(メタ)アクリル酸アリルなどをラジカル共重合させ、これによって炭素−炭素二重結合を導入したアクリル共重合体を得て、更にこのアクリル共重合体の炭素−炭素二重結合に、白金などの金属錯体触媒を用いて、シラン成分としてHSi(OR103-n20n(nは0又は1を表し、R10及びR20はそれぞれ独立にアルキル基を表す。)などのヒドロシラン化合物を反応させてヒドロシリル化させ、これにより例えば分子量が1000〜100000の目的とするシリル基含有アクリル樹脂を得ることができる。また、シリコンアクリル樹脂としては市販品を用いることもでき、例えば商品名「KP−543」(信越シリコーン社製)などが挙げられる。
【0071】
前記有機−無機のハイブリッド型の樹脂としては、例えば、アクリル樹脂にシリカ微粒子をハイブリッドした組成物が好ましく挙げられる。アクリル樹脂にシリカ微粒子をハイブリッドした組成物としては市販品を用いることもでき、例えばコンポラセンAC(荒川化学工業製)などが挙げられる。
【0072】
本発明の塗料用組成物中バインダー成分の含有量は、塗布方法、塗布厚みなどに応じて適宜調整することができるが、3〜70質量%とすることができ、好ましくは5〜60質量%、より好ましくは5〜50質量%である。また、ハイソリッド塗料や粉体塗料として使用する場合は70〜99.9質量%のバインダー成分を含有することも好ましい。
また、塗料用組成物中にバインダー成分として、例えば上記樹脂を形成するモノマーやオリゴマーを含有させてもよく、その場合は光重合開始剤等の重合開始剤を含有することが好ましい。
該モノマーやオリゴマーとしては、(メタ)アクリル系、マレイミド系、エポキシ系、オキセタン系、ビニルエーテル系、プロペニルエーテル系、メラミン系、シロキサン系、不飽和ポリエステル系の化合物や、ポリエンとチオールを混合した系が挙げられ、(メタ)アクリル系、エポキシ系、オキセタン系、メラミン系の化合物が好ましい。
本発明の塗料用組成物中モノマーやオリゴマーの含有量は、0.1〜99質量%とすることができ、好ましくは0.1〜70質量%である。
また、重合開始剤としては種々の化合物を用いることが可能であるが、例えば、過酸化物系、アゾ系、アルキルフェノン系、アシルフォスフィン系、チタノセン系、オキシムエステル系、オキシフェニル酢酸エステル系、ヨードニウム塩系の化合物が挙げられ、アルキルフェノン系化合物が好ましい。本発明の塗料用組成物中の重合開始剤の含有量は0.01〜30質量%とすることができ、好ましくは0.1〜10質量%である。
バインダー成分(透明樹脂成分)としては、他にも例えば、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチルスチレン共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル等が挙げられる。
【0073】
本発明の塗料組成物には、適宜硬化剤を添加することが好ましい。硬化剤を用いることで、塗料組成物から得られる塗膜の耐光性を更に向上させ得る。硬化剤はバインダー成分を硬化させる機能を有することが好ましい。また、硬化剤により一般式(1)で表される化合物も樹脂に固定される場合もあると考えられる。
バインダー成分として、例えば、アクリル樹脂系を用いた場合は、硬化剤として、メラミン樹脂、ポリイソシアネート、アルコキシシラン化合物などを好ましく用いることができる。
バインダー成分として、例えば、ポリウレタン樹脂系を用いた場合は、硬化剤として、アミン系化合物を用いることができる。
バインダー成分として、例えば、エポキシ樹脂系を用いた場合は、硬化剤として、ポリアミン化合物、ポリアミド化合物、ポリオール化合物を用いることができる。
バインダー成分として、例えば、ポリエステル樹脂系を用いた場合は、硬化剤として、ポリイソシアネート化合物を用いることができる。
そのほか、好適なバインダー成分と硬化剤の組み合わせについては、『架橋剤ハンドブック(山下 晋三ほか 編、大成社、1981年、初版)』に記載されている組み合わせのものを用いることができる。
硬化剤としては市販品を用いることもでき、例えば、ポリイソシアネート系硬化剤であるスミジュールN−75(住化バイエルウレタン社製)、バイヒジュール3100(住化バイエルウレタン社製)エポキシ系硬化剤であるデナコールEX−614B(ナガセケムテックス社製)などが挙げられる。
【0074】
また、本発明の塗料組成物において、前記一般式(1)で表される化合物と、バインダー成分として水酸基価が30〜600mgKOH/gでありかつ酸価が0〜100mgKOH/gである水酸基含有樹脂と、更に硬化剤とを含有する組成物は特に好ましい。該組成物は塗料として用いた場合に、耐候性、耐ワレ性に優れた被膜を形成し得る。該硬化剤としては、ポリイソシアネート系化合物、メラミン樹脂系化合物、エポキシ系化合物、及びシラノール系化合物から選ばれる化合物を用いることが好ましい。
硬化剤の含有量は硬化剤の種類、官能基含有量、バインダーの種類に応じて適宜決定すれば良いが、例えば、バインダー樹脂100質量部に対して、約0.1〜200質量部の範囲が好適である。
また、硬化剤の含有量は、バインダー成分と硬化剤成分の反応する官能基の当量比で適宜決定することが好ましい。硬化剤の含有量が多すぎると未反応の硬化剤が残存し塗膜が軟化するなどの悪影響が出ることがある。硬化剤の含有量が少なすぎると硬化が不十分となり耐水性が悪化するなどの悪影響が出ることがある。
例えば、バインダー成分として前記水酸基含有樹脂を用い、前記硬化剤としてポリイソシアネート系化合物を用いた場合は、前記水酸基含有樹脂の水酸基とポリイソシアネート系化合物のイソシアネート基の当量比(NCO/OH)が0.7〜2の範囲内にあることが好ましい。
【0075】
<その他の添加剤>
本発明の塗料用組成物は、塗料に一般的に使用されている任意の添加剤を含有してもよく、添加剤としては、例えば、顔料、硬化剤、希釈剤、アクリル樹脂、シリコーン樹脂などのレベリング剤、シリコーン系、アクリル系等のはじき防止剤、皮はり防止剤、揺変剤、消泡剤、色分かれ防止剤、平滑剤、湿潤剤、分散剤、増粘剤、沈降防止剤、重合防止剤、構造粘性付与剤、静電塗装性改良剤、タレ防止剤、硬化促進剤、酸化防止剤、光安定剤、防汚剤、難燃剤、塗布助剤などを挙げることができる。光安定剤、酸化防止剤の好ましい例としては特開2004−117997で表される化合物が挙げられる。具体的には、特開2004−117997のp29中段、段落番号[0071]〜[0111]に記載の化合物であることが好ましい。段落番号[0072]に記載の一般式(TS−I)、一般式(TS−II)、一般式(TS−IV)一般式(TS−V)で表される化合物であることが特に好ましい。なお、バインダー成分が硬化型である場合、硬化触媒を添加することができる。
【0076】
本発明の塗料用組成物は、前記一般式(1)で表される紫外線吸収剤のみで実用的には十分な紫外線遮蔽効果が得られるものの、更に厳密を要求する場合には隠蔽力の強い白色顔料、例えば酸化チタンなどを併用してもよい。また、外観、色調が問題となる時、あるいは好みによって微量(一般的に0.05質量%以下)の着色剤を併用することができる。また、透明あるいは白色であることが重要である用途に対しては蛍光増白剤を併用してもよい。蛍光増白剤としては市販のものや特開2002−53824号公報記載の一般式[1]や具体的化合物例1〜35などが挙げられる。
これらの添加剤の総量は、バインダー成分の総量に対し、一般的には0.1〜30質量%、好ましくは0.1〜20質量%である。
本発明の塗料用組成物中の、一般式(1)で表される化合物、バインダー成分、添加剤などを含めた全固形分濃度は、一般的に5〜80質量%、好ましくは10〜70質量%である。ハイソリッド塗料の場合、70〜99.9質量%であることも好ましく、粉体塗料の場合は全量が固形分であることも好ましい。
【0077】
本発明の塗料用組成物は、一般的な塗料の調製方法により行うことができ、例えば、任意の溶剤に、一般式(1)で表される化合物、バインダー、必要に応じて添加剤を溶解又は分散して調製することができる。また、粉体塗料である場合は、固体の状態で、各成分を混合することで調製することができる。
溶剤は、塗料の用途に応じて、有機或いは無機の溶媒又は水を単独或いはそれらの混合物として用いることが出来る。
有機溶媒としては、例えばアミド系溶媒(例えばN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、1−メチルー2−ピロリドン)、スルホン系溶媒(例えばスルホラン)スルホキシド系溶媒(例えばジメチルスルホキシド)、ウレイド系溶媒(例えばテトラメチルウレア)、エーテル系溶媒(例えばジオキサン、テトラヒドロフラン、シクロペンチルメチルエーテル)、ケトン系溶媒(例えばアセトン、シクロヘキサノン)、炭化水素系溶媒(例えばトルエン、キシレン、n−デカン)、ハロゲン系溶媒(例えばテトラクロロエタン,クロロベンゼン、クロロナフタレン)、アルコール系溶媒(例えばメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、エチレングリコール、シクロヘキサノール、フェノール)、ピリジン系溶媒(例えばピリジン、γ―ピコリン、2,6−ルチジン)、エステル系溶媒(例えば酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸アミル)、カルボン酸系溶媒(例えば酢酸、プロピオン酸)、ニトリル系溶媒(例えばアセトニトリル)、スルホン酸系溶媒(例えばメタンスルホン酸)、アミン系溶媒(例えばトリエチルアミン、トリブチルアミン)等を用いることができる。
無機溶媒としては、例えば硫酸、リン酸等を用いることができる。好ましくは、水、アルコール系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒、脂肪族炭化水素系溶媒、ケトン系溶媒、エステル系溶媒、エーテル系溶媒、ハロゲン系溶媒が挙げられる。
沸点は、一般的には、20〜250℃、好ましくは40〜235℃である。
なお、一般式(1)で表される化合物の溶解性の観点から、芳香族炭化水素系溶剤、ケトン系溶媒、エステル系溶媒などの溶剤が好ましい。
調製された塗料用組成物の粘度は、用途により任意に調整できるが、一般的には、10〜150秒(フォードカップNo.4,20℃)である。
調製された塗料用組成物は、ポットライフの点で、一般的に低温で保存することが好ましい。
【0078】
本発明の塗料用組成物は、用途に応じて、鉄鋼、非鉄金属、軽金属、木、ガラス、コンクリート、樹脂、ゴム、皮革、紙、皮膚などの任意の基材に塗設し、被膜を形成し、所望の部材とすることができる。なお、380nm以上の波長に感応する基材上に塗設することで、本発明の塗料用組成物の性能を有効に活用することができる。
被膜は、用途に応じて、任意の厚みで塗設することができるが、最終的な被膜の厚みとして、好ましくは0.1〜10000μm、より好ましくは0.1〜2000μmであり、更に好ましくは1〜1000μm、更に好ましくは5〜1000μmであり、更に好ましくは5〜200μmである。これら塗料を塗布する方法は任意であるが、スプレー法、ディッピング法、ローラーコート法、フローコーター法、流し塗り法、電着コート法、粉末流動塗装法、はけによる塗布などがある。
塗布後の乾燥は、塗料成分によって異なるが、自然乾燥、加熱乾燥(概ね室温〜180℃で10〜90分程度)を行うことができる。
なお、バインダー成分が、熱硬化型である場合は、加熱(一般的には100℃以上10分)することにより、紫外線や電子線硬化などの光硬化型である場合は、所望の光や電子線を照射することで、塗膜を硬化させる。
被膜の表面硬度は、用途に応じて異なるが、JIS K5400に規定の鉛筆硬度で2B〜6Hであることが好ましく、B〜4Hであることが更に好ましい。本発明の塗料用組成物による被膜は、どのような形態で塗設されてもよく、いわゆる下塗り、中塗りなどとして被膜を形成してもよい。好ましくは上塗り塗装として被塗装体を紫外線の悪影響から守るために塗設される。
【0079】
本発明の塗料用組成物の形態としては、粉体塗料、水溶性塗料、エマルジョン塗料、非水ディスパージョン塗料、ゾル系塗料、多液系塗料、調合ペイントなどが挙げられる。
【0080】
更には、例えば、特開平7−26177号公報、特開平9−169950号公報、特開平9−221631号公報、特開2002−80788号公報に記載の紫外線遮蔽塗料、特開平10−88039号公報に記載の紫外線・近赤外線遮断塗料、特開2001−55541号公報に記載の電磁波遮蔽用塗料、特開平8−81643号公報に記載のクリアー塗料、特開2000−186234号公報に記載のメタリック塗料組成物、特開平7−166112号公報に記載のカチオン電着塗料、特開2002−294165号公報に記載の抗菌性及び無鉛性カチオン電着塗料、特開2000−273362号公報、特開2001−279189号公報、特開2002−271227号公報に記載の粉体塗料、特開2001−9357号公報に記載の水性中塗り塗料、水性メタリック塗料、水性クリヤー塗料、特開2001−316630号公報に記載の自動車、建築物、土木系品に用いられる上塗り用塗料、特開2002−356655号公報に記載の硬化性塗料、特開2004−937号公報に記載の自動車バンパー等プラスチック材等に使用される塗膜形成組成物、特開2004−2700号公報に記載の金属板用塗料、特開2004−169182号公報に記載の硬化傾斜塗膜、特開2004−107700号公報に記載の電線用塗装材、特開平6−49368号公報に記載の自動車補修塗料、特開2002−38084号公報、特開2005−307161号公報に記載のアニオン電着塗料、特開平5−78606号公報、特開平5−185031号公報、特開平10−140089号公報、特表2000−509082号公報、特表2004−520284号公報、WO2006/097201号パンフレットに記載の自動車用塗料、特開平6−1945号公報に記載の塗装鋼板用塗料、特開平6−313148号公報に記載のステンレス用塗料、特開平7−3189号公報に記載のランプ用防虫塗料、特開平7−82454号公報に記載の紫外線硬化型塗料、特開平7−118576号公報に記載の抗菌性塗料、特開2004−217727号公報に記載の眼精疲労防止用塗料、特開2005−314495号公報に記載の防曇塗料、特開平10−298493号公報に記載の超耐候性塗料、特開平9−241534号公報に記載の傾斜塗料、特開2002−235028号公報に記載の光触媒塗料、特開2000−345109号公報に記載の可剥塗料、特開平6−346022号公報に記載のコンクリート剥離用塗料、特開2002−167545号公報に記載の防食塗料、特開平8−324576号公報に記載の保護塗料、特開平9−12924号公報に記載の撥水性保護塗料、特開平9−157581号公報に記載の板ガラス飛散防止用塗料、特開平9−59539号公報に記載のアルカリ可溶型保護塗料、特開2001−181558号公報に記載の水性一時保護塗料組成物、特開平10−183057号公報に記載の床用塗料、特開2001−115080号公報に記載のエマルション塗料、特開2001−262056号公報に記載の2液型水性塗料、特開平9−263729号公報に記載の1液性塗料、特開2001−288410号公報に記載のUV硬化性塗料、特開2002−69331号公報に記載の電子線硬化型塗料組成物、特開2002−80781号公報に記載の熱硬化性塗料組成物、特表2003−525325号公報に記載の焼付ラッカー用水性塗料、特開2004−162021号公報に記載の粉体塗料及びスラリー塗料、特開2006−233010号公報に記載の補修用塗料、特表平11−514689号公報に記載の粉体塗料水分散物、特開2001−59068号公報、特開2006−160847号公報に記載のプラスチック用塗料、特開2002−69331号公報に記載の電子線硬化型塗料など公知の各種塗料に、一般式(I)で表される化合物を添加することにより、本発明の塗料用組成物とすることができる。
本発明の塗料用組成物は、特に車両用の分野に適した塗料として用いることができる。
【0081】
上述のように、本発明においては、塗料用組成物に、安定剤として、一般式(I)で表される化合物を添加することで、該組成物で形成された被膜により、光、酸素及び/又は熱による損傷に対して、有機材料を安定化する方法を提供するものでもある。
【実施例】
【0082】
本発明を実施例によって更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されない。
1.合成例1(例示化合物(1)の調製)
サリチルアミド160.0gにアセトニトリル600mLとDBU(ジアザビシクロウンデセン(1,8−diazabicyclo[5.4.0]undec−7−ene))356.2gを添加し溶解させた。この溶液に4−(クロロホルミル)安息香酸メチル231.7gを添加し、室温で24時間攪拌した。この反応液に水1800mLと35%塩酸170mLを添加し、得られた固体を濾過、水洗浄して合成中間体Aを343.0g得た(収率98%)。
【0083】
【化13】

【0084】
合成中間体A200.0gにアセトニトリル1200mLと硫酸98.1gを添加し、90℃で4時間攪拌した。この反応液にトリエチルアミン600mLを添加し、室温まで冷却した。得られた固体を濾過、水洗浄して合成中間体Bを182.3g得た(収率97%)。
【0085】
【化14】

【0086】
【化15】

【0087】
(X−2の合成)
3つ口フラスコに、アセトキシム39.5g(1.1モル当量)、DMF(N,N−ジメチルホルムアミド)600mL、カリウム−t−ブトキシド60.6g(1.1モル当量)を入れて室温で30分攪拌した。その後、内温を0℃とし、そこへ化合物(X−1)60g(1.0モル当量)をゆっくり滴下した。滴下後、内温を25℃まで昇温し、その温度で1時間攪拌した。
反応混合物を塩化アンモニウム水溶液と酢酸エチルで抽出・分液操作を行い、得られた有機相に飽和食塩水を加えて洗浄し分液した。こうして得られた有機相を、ロータリーエバポレータで濃縮して得られた残留物を化合物(X−2)の粗生成物として得た。
【0088】
(X−3の合成)
3つ口フラスコに、上記で得られた化合物(X−2)の粗生成物を全量を入れ、エタノール700mLと1Mの塩酸水500mLを加えて、反応混合物を内温80℃まで昇温しその温度で3時間攪拌した。
反応混合物を内温25℃まで冷却し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液と酢酸エチルで抽出・分液操作を行い、得られた有機相に飽和食塩水を加えて洗浄し分液した。こうして得られた有機相を、ロータリーエバポレータで濃縮して得られた残留物を化合物(X−3)の粗生成物として得た。
【0089】
(X−4の合成)
3つ口フラスコに、フラスコ内を窒素ガスで満たした後に10%Pd−C(和光純薬工業社製)を6.5g添加し、エタノールを2,000mL、上記で得られた化合物(X−3)の組成生物を全量加えて加熱・還流した。そこへギ酸55mL(3モル当量)をゆっくり滴下し、この温度で5時間攪拌した。その後反応混合物を内温25℃まで冷却し、セライトろ過を行い炉別した母液に1,5−ナフタレンジスルホン酸を105g加えて、内温を70℃まで昇温し、30分攪拌した。その後、徐々に室温まで冷却して結晶を濾別し化合物(X−4)を100g得た。収率は化合物(X−1)を出発物質として72%であった。得られた結晶は、淡茶色であった。H NMR(重DMSO):δ6.95−6.98(1H)、δ7.02−7.04(1H)、δ7.40−7.51(3H)、δ7.90−7.95(1H)、δ8.75(1H)、δ8.85−8.88(2H)、δ9.03(2H)、δ10.89(1H)
【0090】
化合物(X−4)5.5gにメタノール50mLと28%ナトリウムメトキシドメタノール溶液3.8gを添加した。この溶液に合成中間体B5.0gを添加し、60℃で3時間攪拌した。この反応液を室温まで冷却した後、塩酸を0.2mL添加した。得られた固体を濾過、水とメタノールで洗浄して例示化合物(1)を6.8g得た(収率95%)。MS:m/z 400(M+)H NMR(CDCl):δ7.04−7.12(4H),δ7.53−7.57(2H),δ8.24−8.27(2H),δ8.51−8.53(4H),δ12.91(2H) λmax=353nm(EtOAc)
【0091】
合成例2(例示化合物(m−1)の調製)
サリチルアミド160.0gにアセトニトリル600mLとDBU356.2gを添加し溶解させた。この溶液に3−(クロロホルミル)安息香酸メチル231.7gを添加し、室温で24時間攪拌した。この反応液に水1800mLと35%塩酸170mLを添加し、得られた固体を濾過、水洗浄して合成中間体Kを329.0g得た(収率94%)。
【0092】
【化16】

【0093】
合成中間体K200.0gにアセトニトリル1200mLと硫酸98.1gを添加し、90℃で4時間攪拌した。この反応液にトリエチルアミン600mLを添加し、室温まで冷却した。得られた固体を濾過、水洗浄して合成中間体Lを178.5g得た(収率95%)。
【0094】
【化17】

【0095】
化合物(X−4)5.5gにメタノール50mLと28%ナトリウムメトキシドメタノール溶液3.8gを添加した。この溶液に合成中間体L5.0gを添加し、60℃で3時間攪拌した。この反応液を室温まで冷却した後、塩酸を0.2mL添加した。得られた固体を濾過、水とメタノールで洗浄して例示化合物(m−1)を6.9g得た(収率96%)。MS:m/z 400(M+)
【0096】
合成例3(例示化合物(m−2)の調製)
サリチルアミド160.0gにアセトニトリル600mLとDBU355.2gを添加し溶解させた。この溶液に3−シアノベンゾイル クロリド193.2gを添加し、室温で24時間攪拌した。この反応液に水1200mLと塩酸150mLを添加し、得られた固体を濾過、水洗浄して合成中間体Mを296.0g得た(収率95%)。
【0097】
【化18】

【0098】
合成中間体M200.0gにアセトニトリル1200mLと硫酸110.5gを添加し、90℃で4時間攪拌した。この反応液にトリエチルアミン600mLを添加し、室温まで冷却した。得られた固体を濾過、水洗浄して合成中間体Nを177.3g得た(収率95%)。
【0099】
【化19】

【0100】
化合物(X−4)6.2gにメタノール50mLと28%ナトリウムメトキシドメタノール溶液4.3gを添加した。この溶液に合成中間体N5.0gを添加し、60℃で3時間攪拌した。この反応液を室温まで冷却した後、塩酸を0.2mL添加した。得られた固体を濾過、水とメタノールで洗浄して例示化合物(m−2)を6.9g得た(収率93%)。MS:m/z 367(M+)
【0101】
合成例4(例示化合物(m−20)の調製)
例示化合物(m−2)25gに2−エチルヘキサノール200gと硫酸13gを添加し、還流条件下で16時間攪拌した。室温まで冷却後、得られた固体をメタノールと水で洗浄して例示化合物(m−20)を31g得た(収率92%)。MS:m/z 498(M+)λmax=354nm(EtOAc)
【0102】
合成例5(例示化合物(21)の調製)
例示化合物(1)10gに2−エチルヘキサノール31.6g、NaOMe0.13gとキシレン100mLを添加し、減圧下90℃で6時間攪拌した。この反応液に水と酢酸エチルを添加して攪拌し、分液した有機相を濃縮した。得られた残渣をヘキサン/イソプロピルアルコール(体積比で1:10)で晶析することで例示化合物(21)を11.7g得た(収率95%)。MS:m/z 498(M+)
【0103】
合成例6(例示化合物(24)の調製)
例示化合物(1)10gにファインオキソコール180N(日産化学化学工業製)9.8g、NaOMe0.13gとキシレン100mLを添加し、減圧下90℃で6時間攪拌した。この反応液に水と酢酸エチルを添加して攪拌し、分液した有機相を濃縮した。得られた残渣をヘキサン/イソプロピルアルコール(体積比で1:10)で晶析することで例示化合物(24)を14.5g得た(収率92%)。MS:m/z 638(M+)
【0104】
<pKaの測定法>
例示化合物(1)を吸光度が1となるようにアセトニトリルに溶解させ、この溶液に70%過塩素酸(酢酸溶媒)を滴下し、pHを変化させていった。その際の溶液吸収スペクトルを測定し、λmaxにおける吸光度から各pHにおけるトリアジンフリー体とプロトン付加体の比率を計算した。その値が等しくなる点よりpKaの値を求めた。ここで、トリアジンフリー体とは、例示化合物(1)そのものを表し、プロトン付加体とは、例示化合物(1)のトリアジン環の窒素原子にプロトンが付加したものを表す。同様にして例示化合物(21)、(24)、(m−1)、(m−2)、(m−21)、(m−25)及び(m−20)についてpKaの値を求めた。吸収スペクトルは、島津製作所製分光光度計UV−3600(商品名)を用いて測定した。pHは、東亜電波工業製pHメーター計HM60G(商品名)を用いて測定した。なお、吸光度はそれぞれの化合物の極大吸収波長で測定した値である。結果を表1に示す。
【0105】
【表1】

【0106】
2.実施例
以下、本発明を実施例に基づき更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、本発明における耐光性試験は、JIS A 6909,JIS K 5600などをもとに実施することもできる。
【0107】
本発明の塗料組成物を下記のとおり作成し耐光性評価を実施した。
【0108】
(実施例1〜4)
本発明の化合物(1)、(120)、(m−1)、(m−20)、及び(m−21)をポリアクリル酸エステル樹脂(ダイヤナールBR−80:商品名、三菱レイヨン社製)(Tg50℃〜90℃)のジクロロメタン溶液に樹脂の固形分に対して1質量%で混合し塗料組成物を作成した。作成した組成物をドクターブレードでガラスの上に塗布し、300nm以上における極大吸収波長における吸光度が1になるように塗膜を作成した。
(比較例1〜3)
上記実施例1〜4の本発明の化合物を本発明の化合物でない表2に記載の化合物に変更した以外は同様にして塗膜を作成した。作成した塗膜の膜厚は下表のとおりである。膜厚は、ミツトヨ社製 マイクロメータMDC−25MJを用いて測定した。
【0109】
【表2】

【0110】
(実施例5〜8)
本発明の化合物(1)、(21)、(24)、(m−25)をポリエステル樹脂(バイロン200:商品名、東洋紡社製)のジクロロメタン溶液ジクロロメタン溶液に樹脂の固形分に対して1質量%で混合し塗料組成物を作成した。
作成した組成物をドクターブレードでガラスの上に塗布し、300nm以上における極大吸収波長における吸光度が1になるように塗膜を作成した。
(比較例4〜6)
上記実施例5〜8の本発明の化合物を本発明の化合物でない表2に記載の化合物に変更した以外は同様にして塗膜を作成した。作成した塗膜の膜厚は下表のとおりである。
【0111】
【表3】

【0112】
(実施例9〜11)
本発明の化合物(21)、(m−20)、(m−21)を低温硬化性のペルヒドロポリシラザン溶液(アクアミカNP−110、商品名、AZエレクトロマテリアルズ社製)に樹脂の固形分に対して1質量%で混合し塗料組成物を作成した。作成した組成物をドクターブレードでガラスの上に塗布し,100℃で10分乾燥させた後、150℃に保ったオーブン中で30分間硬化させることにより、300nm以上における極大吸収波長における吸光度が1になるように塗膜を作成した。
(比較例7〜9)
上記実施例9〜11の本発明の化合物を本発明の化合物でない表2に記載の化合物に変更した以外は同様にして塗膜を作成した。作成した塗膜の膜厚は下表のとおりである。
【0113】
【表4】

【0114】
(実施例12〜14)
本発明の化合物(2)、(m−20)、(m−25)を硬化性メチルシリコーンレジンの溶液(TSR127B、商品名、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製)に樹脂の固形分に対して1質量%で混合し塗料組成物を作成した。作成した組成物をドクターブレードでガラスの上に塗布し、150℃で10分乾燥させた後、250℃に保ったオーブン中で30分間硬化させることにより300nm以上における極大吸収波長における吸光度が1になるように塗膜を作成した。作成した塗膜の膜厚は下表のとおりである。
【0115】
【表5】

【0116】
(比較例10〜11)
上記実施例12〜14の本発明の化合物を本発明の化合物でない表2に記載の化合物に変更した以外は同様にして塗膜を作成した。作成した塗膜の膜厚は下表のとおりである。
【0117】
【表6】

【0118】
(耐光性試験)
作成した塗膜をアイスーパーUVテスターW151(岩崎電気(株)製)内で暴露した(暴露条件 90mW/cm,63℃,50%相対湿度)。
なお、実施例5〜8及び比較例4〜6の場合のみ、更に、SCHOTT色ガラスフィルターWG-320を塗膜の上に付与した状態で暴露試験を行った。
100時間後の試料の保持されたUV吸収剤の割合(分光吸収測定によりλmaxで測定)を調べた。
【0119】
【表7】

【0120】
紫外線吸収剤:
ベンゾトリアゾール系
商品名Tinuvin 326(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)として市販されている。
商品名Tinuvin 109(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)として市販されている。
商品名Tinuvin 928(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)として市販されている。
トリアジン系
商品名Tinuvin 405(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)として市販されている。
商品名Tinuvin 1577(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)として市販されている。
商品名Tinuvin 400(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)として市販されている。
ベンゾフェノン系
商品名Uvinul 3049(BASF社製)として市販されている。
商品名SEESORB 100(シプロ化成社製)として市販されている。
商品名SEESORB 101(シプロ化成社製)として市販されている。
【0121】
【化20】

【0122】
(実施例15〜20、比較例12〜15)
本発明の化合物を熱硬化性アクリル/メラミンクリアコート(Viacryl(登録商標)SC 303/Viacryl(登録商標)SC 370/Maprenal(登録商標)MF 650を基剤とする)に、本発明の化合物を含めない配合物の固形分(固形分:50.4質量%)に対して3質量%〜10質量%の濃度で混合しクリアコート組成物を得た。クリアコートをガラスプレートに噴霧すると、硬化(130℃/30秒)後、乾燥フィルム厚20μmのクリアコートが得られた。
【0123】
試験片の暴露の前に、UV/VIS分光計(Perkin Elmer、Lamda 40)を使用して、UV吸収スペクトルを測定した。基準:本発明の化合物を含まないアクリル/メラミンクリアコート。その後、試験片をアイスーパーUVテスターW151(岩崎電気(株)製)内で暴露した(暴露条件 90mW/cm,63℃,50%相対湿度)。暴露の際の保持されたUV吸収剤の割合(λmaxで測定)を、規則的な暴露間隔後にUV吸収スペクトルを測定し、暴露前に測定した値を基準として化合物の残存量が90質量%になるまでの時間を比較した。試験結果を表3にまとめた。
【0124】
【表8】

【0125】
*1: TINUVIN−1577は溶解性不足のため試験中に析出し試験できなかった。
【0126】
クリアコート配合物:
a)Viacryl SC 303 27.51g
(キシレン/ブタノール中65質量%溶液、26:9 wt./wt.)
b)Viacryl SC 370 23.34g
(Solvesso 100中75質量%)
c)Maprenal MF 650 27.29g
(イソブタノール中55質量%)
d)酢酸ブチル/ブタノール(37:8wt./wt.) 4.33g
e)イソブタノール 4.87g
f)Solvesso 150 2.72g
g)Crystal oil 30 8.74g
h)Baysilone MA(Solvesso 150中1質量%)
1.20g
合計 100.00g
【0127】
原材料:
Viacryl SC 303:アクリル樹脂(Solutia)
Viacryl SC 370:アクリル樹脂(Solutia)
Solvesso 100:芳香族炭化水素、沸点163−180℃(Exxon Corp.)
Maprenal MF 650:メラミン樹脂(Solutia)
Solvesso 150:芳香族炭化水素、沸点180−203℃(Exxon Corp.)
Crystal oil 30:脂肪族炭化水素、沸点145−200℃(Shell
Corp.)
Baysilone MA:レベリング剤(Bayer AG)
【0128】
紫外線吸収剤:
TINUVIN−1577:ヒドロキシフェニルトリアジン(HPT)系紫外線吸収剤、豊通ケミプラス株式会社
TINUVIN−400:ヒドロキシフェニルトリアジン(HPT)系紫外線吸収剤、豊通ケミプラス株式会社
TINUVIN−928:ベンゾトリアゾール(BTZ)系紫外線吸収剤、豊通ケミプラス株式会社
【0129】
(実施例21)
実施例15、16、17、20、比較例12、14、15で作成した塗料用組成物をポリエステル系塗料がプレコートされた自動車用アルミニウムパネルの上に塗布した。
試験片をアイスーパーUVテスターW151(岩崎電気(株)製)内で暴露した(暴露条件 90mW/cm,63℃,50%相対湿度)。その後、塗料層とプレコート層の間の接着性を、テープ試験により測定した。試験方法はJIS A 6909,JIS K 5600に準じて行なった。試験結果を表4にまとめた。
【0130】
【表9】

【0131】
実施例の塗料用組成物は、長期に耐光性に優れた被膜を提供できることがわかる。
【0132】
(実施例22〜24)
本発明における一般式(1)で表される化合物(21)、(24)、又は(m−21)をシリコンアクリル樹脂の溶液(商品名「KP−543」、信越シリコーン社製)に樹脂の固形分に対して1質量%で混合し塗料組成物を作成した。作成した組成物をドクターブレードでガラスの上に塗布し、150℃で2分間乾燥させることにより、300nm以上における極大吸収波長における吸光度が1になるように塗膜を作成した。
【0133】
(比較例16〜17)
上記実施例22〜24の本発明における一般式(1)で表される化合物を下記表5に記載の化合物に変更した以外は同様にして塗膜を作成した。
【0134】
(実施例25〜26)
本発明における一般式(1)で表される化合物(m−25)をポリエステル樹脂(商品名「バイロン200」、東洋紡社製)のジクロロメタン溶液ジクロロメタン溶液に樹脂の固形分に対して1質量%で混合し、更に、硬化剤として、スミジュールN−75(住化バイエルウレタン社製)をポリエステル樹脂に対して1質量%で添加し、塗料組成物を調製した。
作成した塗料組成物をドクターブレードでガラスの上に塗布し、100℃で5分間乾燥させ、300nm以上における極大吸収波長における吸光度が1になるように塗膜を作成した(実施例25)。
同様に、実施例25の硬化剤を、デナコールEX−614B(ナガセケムテックス社製)、添加量をポリエステル樹脂に対して2質量%に変更した以外は同様にして塗膜を作成した(実施例26)。
【0135】
作成した塗膜の膜厚は下表のとおりである。
【0136】
【表10】

【0137】
上記実施例22〜26、比較例16〜17の塗膜について、前記実施例1〜14と同様に耐光性試験を行った。結果は下記表5に示した。
【表11】

【0138】
(実施例27)
[水酸基含有樹脂の作成]
攪拌機、加熱装置、冷却装置及び減圧装置を備えた5リットル反応器に、メチルエチルケトン763.2gを導入し、60℃に加熱した。そこへメチルメタクリレート453.6g、エチルアクリレート320g、n−ブチルアクリレート240g、ヒドロキシエチルメタクリレート444.8g、ラウリルメタクリレート80g及びアクリル酸61.6gからなる重合性単量体混合物並びに同時に2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)20g、ソルベントナフサ224g及びエチレングリコールモノブチルエーテル64gからなる混合溶液を4時間かけてこの温度で仕込んだ。
【0139】
更に2時間この温度で攪拌した後、メチルエチルケトン596.8g及び例示化合物(m−21)を30g添加した。得られた混合物を40℃に冷却し、ジメチルエタノールアミン68.6gを添加し均一に混合し、脱イオン水2033.6g中に分散させた。
【0140】
次いで、得られた分散液を40℃に保ちながら減圧し、分散液に含まれるメチルエチルケトンなどの有機溶剤1392gを留去して固形分40質量%のアクリル樹脂(A)を得た。
【0141】
得られたアクリル樹脂(A)は、水酸基価が120mgKOH/gであり、酸価が30mgKOH/gであり、そして質量平均分子量が30,000であった。
【0142】
アクリル樹脂(A)60質量部及びバイヒジュール3100(硬化剤,住化バイエルウレタン社製、商品名)40質量部からなる混合物に、エチレングリコールモノブチルエーテル/ソルベントナフサ混合溶剤(質量比で1/1)20質量%と水80質量%とからなる混合液を加えて水性で透明な塗料組成物(B)を得た(固形分52質量%,一般式(1)の化合物含有量0.43質量%)。水性で透明な塗料組成物(B)を硬化膜厚で40μmになるように、ガラス基板に塗装し、140℃で30分間加熱して硬化させ試験板Cを得た。
【0143】
(耐候性試験)
試験板CをQパネル社製促進耐候性試験機を用いてQUV促進曝露により試験した。試験条件は、紫外線照射16時間及び水凝結8時間/50℃を1サイクルとし、連続して125サイクル(3,000時間)を行った後の透明な塗膜面を目視で観察したところ、光沢の低下が認められず、良好な状態であった。
【0144】
(実施例28〜29)
本発明における一般式(1)で表される化合物(21)、又は(m−20)をアクリル樹脂にシリカ微粒子をハイブリッドした樹脂の溶液(コンポラセンAC(荒川化学工業製))に樹脂の固形分に対して1質量%で混合し塗料組成物を作成した。作成した組成物をドクターブレードでガラスの上に塗布し、150℃で2分間乾燥させることにより、300nm以上における極大吸収波長における吸光度が1になるように塗膜を作成した。
【0145】
(比較例18)
上記実施例28、29の本発明における一般式(1)で表される化合物を下記表6に記載の化合物に変更した以外は同様にして塗膜を作成した。
【0146】
作成した塗膜の膜厚は下表のとおりである。
【0147】
【表12】

【0148】
上記実施例28〜29、比較例18の塗膜について、前記実施例1〜14と同様に耐光性試験を行った。結果は下記表6に示した。
【0149】
【表13】

【0150】
比較例18で使用したUVINUL-3050は以下の構造式で表され、商品名Uvinul 3050(BASF社製)として市販されている。
【0151】
【化21】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される化合物及びバインダー成分を含有することを特徴とする塗料用組成物。
【化1】

[R1a、R1b、R1c、R1d及びR1eは、互いに独立して、水素原子又はヒドロキシ基を除く1価の置換基を表し、置換基のうち少なくとも1つは、ハメット則のσp値が正である置換基を表す。また置換基同士で結合して環を形成しても良い。R1g、R1h、R1i、R1j、R1k、R1m、R1n及びR1pは、互いに独立して、水素原子又は1価の置換基を表す。また置換基同士で結合して環を形成しても良い。]
【請求項2】
前記1価の置換基が、ハロゲン原子、置換又は無置換の炭素数1〜20のアルキル基、シアノ基、カルボキシル基、置換又は無置換のアルコキシカルボニル基、置換又は無置換のカルバモイル基、置換又は無置換のアルキルカルボニル基、ニトロ基、置換又は無置換のアミノ基、ヒドロキシ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、置換又は無置換のアリールオキシ基、置換又は無置換のスルファモイル基、チオシアネート基、又は置換又は無置換のアルキルスルホニル基であり、置換基を有する場合の置換基がハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基、シアノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルカルボニル基、ニトロ基、アミノ基、ヒドロキシ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、アリールオキシ基、スルファモイル基、チオシアネート基、又はアルキルスルホニル基であることを特徴とする、請求項1に記載の塗料用組成物。
【請求項3】
前記R1cが、ハメット則のσp値が正である置換基であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の塗料用組成物。
【請求項4】
前記R1a、R1c及びR1eが水素原子を表し、R1b及びR1dが互いに独立して水素原子又はハメット則のσp値が正である置換基を表し、少なくとも1つは、ハメット則のσp値が正である置換基であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の塗料用組成物。
【請求項5】
前記ハメット則のσp値が、0.1〜1.2の範囲であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の塗料用組成物。
【請求項6】
前記ハメット則のσp値が正である置換基が、COOR、CONR、シアノ基、トリフルオロメチル基、ハロゲン原子、ニトロ基、及びSOMより選択される基であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の塗料用組成物。
[R、Rは、水素原子又は1価の置換基を表す。Mは、水素原子又はアルカリ金属を表す。]。
【請求項7】
前記ハメット則のσp値が正である置換基がCOORであることを特徴とする、請求項1〜4又は6のいずれか1項に記載の塗料用組成物。
[Rは、水素原子又は1価の置換基を表す。]。
【請求項8】
前記R1cが、シアノ基であることを特徴とする、請求項1〜3、5〜7のいずれか1項に記載の塗料用組成物。
【請求項9】
前記R1h又はR1nが、水素原子であることを特徴とする、請求項1〜3、5〜8のいずれか1項に記載の塗料用組成物。
【請求項10】
前記R1g、R1h、R1i、R1j、R1k、R1m、R1n及びR1pが、水素原子であることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載の塗料用組成物。
【請求項11】
一般式(1)で表される化合物のpKaが−5.0〜−7.0の範囲であることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項に記載の塗料用組成物。
【請求項12】
一般式(1)で表される化合物を、塗料用組成物の全質量に基づき、0.1〜30質量%含有することを特徴とする、請求項1〜11のいずれか1項に記載の塗料用組成物。
【請求項13】
バインダー成分が、塩化ゴム樹脂系、フェノール樹脂系、アルキド樹脂系、アミノアルキド樹脂系、尿素樹脂系、ビニル樹脂系、アクリル樹脂系、ポリエステル樹脂系、エポキシ樹脂系、ポリウレタン樹脂系、シリコーン樹脂系、ケイ素樹脂系、フッ素樹脂系、シラザン樹脂系、メラミン樹脂系の少なくとも一つを含む成分であることを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の塗料用組成物。
【請求項14】
更に、硬化剤を含有することを特徴とする請求項1〜13のいずれか1項に記載の塗料用組成物。
【請求項15】
バインダー成分が、水酸基価が30〜600mgKOH/gでありかつ酸価が0〜100mgKOH/gである水酸基含有樹脂であることを特徴とする請求項1〜14のいずれか1項に記載の塗料用組成物。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか1項に記載の塗料用組成物を基材に適用することにより得られる被膜。
【請求項17】
被膜の厚さが0.1〜10000μmである請求項16に記載の被膜。
【請求項18】
請求項16又は17に記載の被膜を有する部材。
【請求項19】
塗料用組成物が、車両用である請求項1〜15のいずれか1項に記載の塗料用組成物。

【公開番号】特開2011−225811(P2011−225811A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−259579(P2010−259579)
【出願日】平成22年11月19日(2010.11.19)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】