説明

塗料用組成物

【課題】塗料用組成物は、被塗物の表面粗さを修復し、被塗物上に被塗物の表面粗さよりも微小な表面粗さの塗膜を提供する。
【解決手段】塗料用樹脂(A)と有機溶剤(B)を含む塗料用組成物であって、塗料用樹脂(A)が、グラフト共重合体65〜95重量%と、分子鎖末端が、下記構造式


のポリエステルポリオール5〜35重量%を含み、グラフト共重合体が、マトリックスポリマー100重量%に対し3〜12重量%の枝ポリマーからなり、マトリックスポリマーが、メタクリル酸1〜8重量%、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル3〜16重量%、アルキル基の炭素原子数が1〜4個のメタクリル酸アルキル76〜96重量%からなる合計100重量%のメタクリル単量体からなり、枝ポリマーがポリメタクリル酸メチルマクロモノマーであり、有機溶剤(B)が、エステル系有機溶剤、ケトン系有機溶剤から選択される少なくとも1種である塗料用組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被塗物上に滑らかな塗膜を形成する塗料用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
アクリル樹脂は、その原料となるアクリル単量体の種類が豊富で付着性、接着性、硬度、透明性、耐光性、耐候性、耐薬品性等の物理的性質、化学的性質を随意にコントロールできることから、ディスプレイ、レンズなどの光学用塗、光学フィルム用途、これらに使用する粘・接着剤用途、塗料、シーリング材、紙力増強剤、歯科材料、航空機や自動車部材の接着剤等、浴槽、洗面台などの大型水回り製品用シート・モールディング・コンパウンド(SMC)材料、バルク・モールディング・コンパウンド(BMC)材料などに使用するアクリルシラップなどとして幅広く応用され、用いられている。
【0003】
自動車補修用高外観塗料に関する技術が提案されている(特許文献1参照)。提案されている技術によれば、実施例に見られる通り、仕上がり外観が良好な塗膜が形成されることが推察される。ただ、塗膜の光沢、仕上がり外観などのいわゆる質感はパワースペクトルが関係した事項である(特許文献2、特許文献3、非特許文献1参照)。特許文献1に記載の技術では、被塗物の表面粗さが修復できず、塗膜により表面粗さが微小化できないと思われる。
【0004】
表面コーティング用レベリング剤に関する技術が提案されている(特許文献4参照)。提案されている技術は塗料添加剤に関するものであり、このもの自身で皮膜を形成し、機能を発揮するものではない。さらに、レベリング性はパワースペクトルに関係した事項であり、被塗物の表面粗さが修復できず、塗膜により表面粗さが微小化できないと思われる。
【0005】
二液型ウレタン塗料のポットライフを改善する方法が提案されている(特許文献5参照)。提案されている技術では、本手法がグラフト共重合体をベース樹脂とする塗料にも適用できるものかどうか不明であり、塗膜性能や、塗膜表面粗さに関する配慮はまったくなされておらず、実用上は困難と考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平1−308463号公報
【特許文献2】特開平6−160071号公報
【特許文献3】特開平6−265315号公報
【特許文献4】特開2002−179991号公報
【特許文献5】特開2010−189480号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】自動車の塗装外観計測、松田守弘、豊田中央研究所R&Dレビュー、Vol.29 No.2(1994.6)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の塗料用組成物は、被塗物の表面粗さを修復し、被塗物上に被塗物の表面粗さよりも表面粗さが微小な塗膜を形成することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、塗料用樹脂(A)と有機溶剤(B)を含む塗料用組成物であって、塗料用樹脂(A)が、グラフト共重合体65〜95重量%と、分子鎖末端が、下記構造式
【0010】
【化1】

【0011】
のポリエステルポリオール5〜35重量%を含み(グラフト共重合体とポリエステルポリオールの総計が100重量%である)、グラフト共重合体が、マトリックスポリマーとマトリックスポリマー100重量%に対し3〜12重量%の枝ポリマーからなり、マトリックスポリマーがメタクリル酸1〜8重量%、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル3〜16重量%、アルキル基の炭素原子数が1〜4個のメタクリル酸アルキル76〜96重量%からなる合計100重量%のメタクリル単量体からなり、枝ポリマーがポリメタクリル酸メチルマクロモノマーであって、有機溶剤(B)が、エステル系有機溶剤、ケトン系有機溶剤から選択される少なくとも1種である塗料用組成物である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の塗料用組成物は、被塗物の表面粗さを修復し、被塗物上に被塗物の表面粗さよりも微小な表面粗さの塗膜を形成することができる。本発明の塗料用組成物は、被塗物の成形時の不具合、梱包、運送などに起因する傷などの外観不良を修復し、成形材料、塗装物品としての商品価値を向上する。
【0013】
本発明の塗料用組成物は、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート、ABS樹脂などの種々被塗物に対して付着性が良好である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、塗料用樹脂(A)と有機溶剤(B)を含む塗料用組成物であって、塗料用樹脂(A)が、グラフト共重合体65〜95重量%と、分子鎖末端が、下記構造式
【0015】
【化2】

【0016】
のポリエステルポリオール5〜35重量%を含み(グラフト共重合体とポリエステルポリオールの総計が100重量%である)、グラフト共重合体が、マトリックスポリマーとマトリックスポリマー100重量%に対し3〜12重量%の枝ポリマーからなり、マトリックスポリマーがメタクリル酸1〜8重量%、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル3〜16重量%、アルキル基の炭素原子数が1〜4個のメタクリル酸アルキル76〜96重量%からなる合計100重量%のメタクリル単量体からなり、枝ポリマーがポリメタクリル酸メチルマクロモノマーであり、有機溶剤(B)が、エステル系有機溶剤、ケトン系有機溶剤から選択される少なくとも1種である塗料用組成物である。
【0017】
本発明の塗料用組成物におけるグラフト共重合体は、マトリックスポリマーとマトリックスポリマー100重量%に対し3〜12重量%の枝ポリマーからなる。
【0018】
本発明の塗料用組成物では、グラフト共重合体のマトリックスポリマーは、メタクリル酸1〜8重量%、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル3〜16重量%、アルキル基の炭素原子数が1〜4個のメタクリル酸アルキル76〜96重量%からなる合計100重量%のメタクリル単量体からなる。
【0019】
マトリックスポリマーのメタクリル酸の使用量が1重量%未満の場合には、グラフト共重合体の凝集力が不足し、被塗物への付着性が悪化する。メタクリル酸の使用量が8重量%を超える場合には、塗料用組成物から成膜される塗膜の耐水性、耐アルカリ性などの耐薬品性が悪化する。
【0020】
本発明の塗料用組成物では、メタクリル酸は、好ましくは、1〜7重量%、より好ましくは、1〜5重量%使用されるのが望ましい。本発明の塗料用組成物では、メタクリル酸の使用量が1〜7重量%であれば、グラフト共重合体の凝集力と塗料用組成物の耐水性、耐アルカリ性などの耐薬品性にバランスがとれ、良好になる傾向が見られる。
【0021】
本発明の塗料用組成物では、マトリックスポリマーのメタクリル酸2−ヒドロキシエチルの使用量が3重量%未満の場合には、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ナイロン、ABS樹脂などへの付着性が悪化する。メタクリル酸2−ヒドロキシエチルの使用量が16重量%を超える場合には、例えば、グラフト共重合体をウレタン硬化する場合にポットライフが短くなり、塗装作業性が悪化する。
【0022】
本発明の塗料用組成物では、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルは、好ましくは、5〜12重量%、より好ましくは、8〜12重量%使用されるのが望ましい。本発明の塗料用組成物では、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルの使用量が5〜12重量%であれば、PETフィルム、ナイロン、ABS樹脂などへの付着性が良好で、耐薬品性に優れた塗膜が形成される傾向が見られる。
【0023】
本発明の塗料用組成物では、マトリックスポリマーのアルキル基の炭素原子数が1〜4個のメタクリル酸アルキルは、好ましくは、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸ターシャリーブチル、メタクリル酸イソブチルである。本発明の塗料用組成物では、アルキル基の炭素原子数が1〜4個のメタクリル酸アルキルは単独で使用しても、2種類以上の混合物で使用してもよい。
【0024】
本発明の塗料用組成物では、アルキル基の炭素原子数が1〜4個のメタクリル酸アルキルとして、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチルなどのリニアな側鎖を有するものが望ましく使用される。アルキル基の炭素原子数が1〜4個のメタクリル酸アルキルは、より好ましくは、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチルである。
【0025】
本発明の塗料用組成物では、マトリックスポリマーのアルキル基の炭素原子数が1〜4個のメタクリル酸アルキルの使用量が76重量%未満の場合には、ポリメタクリル酸メチルマクロモノマーとの相溶性が悪化して、被塗物への付着性が悪化する。本発明の塗料用組成物では、アルキル基の炭素原子数が1〜4個のメタクリル酸アルキルの使用量が96重量%を超える場合には、ポリメタクリル酸メチルマクロモノマーとの適度な非相溶性が失われ、被塗物の凸凹を修復して表面粗さをより微小化する機能が失われる。
【0026】
本発明の塗料用組成物では、アルキル基の炭素原子数が1〜4個のメタクリル酸アルキルは、好ましくは、81〜94重量%、より好ましくは、83〜91重量%使用されるのが望ましい。本発明の塗料用組成物では、アルキル基の炭素原子数が1〜4個のメタクリル酸アルキルの使用量が81〜94重量%であれば、塗膜の硬度と被塗物への付着性、塗膜の表面粗さにバランスがとれ良好になる傾向が見られる。
【0027】
本発明の塗料用組成物では、グラフト共重合体のマトリックスポリマーは、メタクリル単量体であるメタクリル酸、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、アルキル基の炭素原子数が1〜4個のメタクリル酸アルキルの総計は100重量%である。
【0028】
本発明の塗料用組成物では、グラフト共重合体のマトリックスポリマーのガラス転移温度(以下、Tgとも言う)は、好ましくは、50〜180℃、より好ましくは、50〜150℃、さらに好ましくは、75℃〜125℃であるのが望ましい。本発明の塗料用組成物では、グラフト共重合体(A)のマトリックスポリマーのガラス転移温度が50〜180℃であれば、グラフト共重合体の凝集力が適切に保たれ、塗料用組成物の付着性、屈曲性、耐衝撃性にバランスがとれ向上する傾向が見られる。
【0029】
本発明の塗料用組成物では、グラフト共重合体のマトリックスポリマーを構成するメタクリル単量体は、ラジカル重合反応基として、メタクリロイル基(CH=C(CH)−C(O)O−)を有するメタクリル単量体だけで構成される。本発明の塗料用組成物では、グラフト共重合体のマトリックスポリマーがメタクリロイル基を有するメタクリル単量体だけで構成されるとき、グラフト共重合体の凝集力が高くなり、被塗物への付着性が向上し、耐溶剤性、耐熱性などが向上する。また、驚くべきことに、本発明の塗料用組成物では、グラフト共重合体のマトリックスポリマーを構成する原料が全てメタクリロイル基を有するメタクリル単量体で構成されるとき、被塗物の表面粗さを修復し、塗膜の表面粗さを被塗物の表面粗さよりも微小化する傾向が顕著になる。さらに、塗膜が、指紋痕がつきにくくなり、傷等に対する自己修復性が良好になる。ここで、本発明の塗料用組成物では、自己修復性とは、例えば、塗膜に傷が付いたような場合、傷がなかったかのように塗膜に傷が付く前の元の状態に復元する現象を指す。
【0030】
本発明の塗料用組成物では、グラフト共重合体は、マトリックスポリマー100重量%に対して、3〜12重量%のポリメタクリル酸メチルマクロモノマーからなる。
【0031】
本発明の塗料用組成物では、ポリメタクリル酸メチルマクロモノマーとは、ポリメタクリル酸メチルの主鎖末端にメタクリロイル基を有するラジカル重合性ポリマーである。本発明の塗料用組成物では、ポリメタクリル酸メチルマクロモノマーとして上市されているものとして、「マクロモノマー AA−6」、「マクロモノマー 45%AA−6」(以上、東亞合成(株)社の製品)などが例示される。本発明の塗料用組成物では、ポリメタクリル酸メチルマクロモノマーは単独で使用しても、例えば、分子量の異なる2種類以上の混合物で使用してもよい。
【0032】
本発明の塗料用組成物では、ポリメタクリル酸メチルマクロモノマーの使用量が、マトリックスポリマー100重量%に対して、3重量%未満の場合には、塗料用組成物で被塗物表面の凹凸を十分に微小化できない。本発明の塗料用組成物では、ポリメタクリル酸メチルマクロモノマーの使用量が、マトリックスポリマー100重量%に対して、12重量%を超える場合には、マトリックスポリマーとポリメタクリル酸メチルマクロモノマーの枝ポリマーとの非相溶性が必要以上に大きくなり、被塗物への付着性が悪化する。
【0033】
本発明の塗料用組成物では、ポリメタクリル酸メチルマクロモノマーは、好ましくは、マトリックスポリマー100重量%に対して、3〜10重量%、より好ましくは、3〜8重量%使用されるのが望ましい。本発明の塗料用組成物では、ポリメタクリル酸メチルマクロモノマーの使用量が3〜10重量%であれば、被塗物への付着性、塗膜の透明性、塗膜表面粗さの微小化にバランスがとれ良好な性能を発揮する傾向が見られる。
【0034】
本発明の塗料用組成物では、ポリメタクリル酸メチルマクロモノマーは、数平均分子量が、好ましくは、2000〜50000、より好ましくは、3000〜30000、さらに好ましくは、3000〜10000であることが望ましい。本発明の塗料用組成物では、ポリメタクリル酸メチルマクロモノマーの数平均分子量が2000〜50000であれば、マトリックスポリマーと、枝ポリマーであるポリメタクリル酸メチルマクロモノマーとの間に適切な相溶/非相溶の関係が構築されて、被塗物の表面粗さがより一層修復され、塗膜の表面粗さが被塗物の表面粗さより微小化される傾向が見られる。
【0035】
本発明の塗料用組成物では、グラフト共重合体と、分子鎖末端が下記構造式
【0036】
【化3】

【0037】
のポリエステルポリオールの総計を100重量%としたとき、グラフト共重合体は、65〜95重量%使用される。本発明の塗料用組成物では、グラフト共重合体の使用量が65重量%未満の場合には付着性が悪化する。グラフト共重合体の使用量が95重量%を超える場合には、塗膜が脆くなり、屈曲性、耐衝撃性が悪化する。
【0038】
本発明の塗料用組成物では、グラフト共重合体の使用量が65〜95重量%であれば、PETフィルム、ナイロン樹脂、ポリエステル樹脂などの種々被塗物への付着性が良好となり、塗料組成物の貯蔵安定性が良好となり、塗料用組成物をウレタン架橋するために、例えば、イソホロンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどのポリイソシアネート化合物を混合したときのポットライフが改善されて作業性が向上する。
【0039】
本発明の塗料用組成物では、グラフト共重合体は、好ましくは、65〜92重量%、より好ましくは、70〜92重量%、さらに好ましくは、75〜88重量%使用されるのが望ましい。本発明の塗料用組成物では、グラフト共重合体の使用量が65〜92重量%であれば、塗料用組成物をウレタン架橋するために、例えば、イソホロンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどのポリイソシアネート化合物を混合したときのポットライフがよりいっそう改善されて作業性が飛躍的に向上する傾向が見られる。また、付着性が良好となり、被塗物の表面粗さを修復し、塗膜の表面粗さをより微小化する傾向が見られる。
【0040】
本発明の塗料用組成物では、グラフト共重合体の数平均分子量は、好ましくは、5000〜30000、より好ましくは、8000〜28000、さらに好ましくは、8000〜25000であるのが望ましい。本発明の塗料用組成物では、グラフト共重合体の数平均分子量が5000〜30000であれば、被塗物の表面粗さを修復し、塗膜の表面粗さがより微小化される傾向が見られる。
【0041】
本発明の塗料用組成物では、グラフト共重合体は、好ましくは、有機溶剤を媒体として溶液重合で製造されるのが望ましい。
【0042】
グラフト共重合体製造方法の一例を示す。撹拌機、窒素ガス吹き込み口、コンデンサー、モノマー滴下装置を備えた重合装置に窒素ガスを吹き込みながら、有機溶剤、例えば、トルエン、酢酸エチル、ポリメタクリル酸メチルマクロモノマーを仕込み、所定の重合温度に昇温する。あらかじめ計量し混合、均一な溶液としたメタクリル単量体/例えば、アゾビスイソブチロニトリル、ターシャリーブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートなどの重合開始剤の混合物を、重合容器内に所定時間で滴下する。滴下終了後、重合率を上げるために必要であれば所定時間に追添加の重合開始剤を添加し、所定時間熟成反応を行った後、冷却してグラフト共重合体を製造する。
【0043】
本発明の塗料用組成物では、グラフト共重合体と、分子鎖末端が下記構造式
【0044】
【化4】

【0045】
のポリエステルポリオールの総計を100重量%としたとき、分子鎖末端が、下記構造式
【0046】
【化5】

【0047】
のポリエステルポリオール5〜35重量%が使用される。
【0048】
本発明の塗料用組成物では、分子鎖末端が、下記構造式
【0049】
【化6】

【0050】
のポリエステルポリオールを使用すると、塗料用組成物の貯蔵安定性がよくなり、塗料用組成物が低粘度化、ハイソリッド化されて塗装外観が良化し、被塗物の表面粗さを修復し、塗膜の表面粗さを微小化する機能が先鋭になり、低VOC化する。
【0051】
本発明の塗料用組成物では、ポリエステルポリオールの使用量が5重量%未満の場合には、塗膜が脆くなり、屈曲性、耐衝撃性が悪化する。ポリエステルポリオールの使用量が35重量%を超える場合には、種々被塗物への付着性が悪化する。
【0052】
本発明の塗料用組成物では、ポリエステルポリオールが5〜35重量%使用されるとき、塗料用組成物の貯蔵安定性が良好となり、例えば、イソホロンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどのポリイソシアネート化合物を混合したときのポットライフが最適化され、作業性が向上する。また、塗膜の、屈曲性、耐衝撃性が向上し、塗膜硬度が向上して耐傷付き性が改善される。
【0053】
本発明の塗料用組成物では、ポリエステルポリオールは、好ましくは、8〜35重量%、より好ましくは、8〜30重量%、さらに好ましくは、12〜25重量%使用されるのが望ましい。本発明の塗料用組成物では、ポリエステルポリオールが8〜35重量%使用されるとき、例えば、イソホロンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどのポリイソシアネート化合物を混合したときのポットライフが適切に保持され、付着性が良好となり、被塗物の表面粗さを修復し、塗膜の表面粗さをより微小化する傾向が顕著に発現される傾向が見られる。
【0054】
本発明の塗料用組成物では、分子鎖末端が、下記構造式
【0055】
【化7】

【0056】
のポリエステルポリオールとして、上市されているものでは、「FLEXOREZ 188」、「FLEXOREZ 148」、「FLEXOREZ XP−171−90」(以上、楠本化成(株)の商品)などが例示される。本発明の塗料用組成物では、ポリエステルポリオールは単独で使用しても、2種類以上の混合物で使用しても良い。
【0057】
本発明の塗料用組成物では、ポリエステルポリオールの水酸基当量は、好ましくは、200〜500、より好ましくは、220〜500、さらに好ましくは、230〜480であるのが望ましい。本発明の塗料用組成物では、ポリエステルポリオールの水酸基等量が200〜500であれば、塗料組成物をウレタン架橋するために、例えば、イソホロンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどのポリイソシアネート化合物を混合したときのポットライフが最適化され、塗膜の屈曲性、柔軟性、硬度が向上し、被塗物の表面粗さを修復し、塗膜の表面粗さをより微小化する傾向が顕著に見られる。
【0058】
本発明の塗料用組成物は、塗料用樹脂(A)と有機溶剤(B)を含む塗料用組成物である。
【0059】
本発明の塗料用組成物では、有機溶剤(B)は、エステル系有機溶剤、ケトン系有機溶剤から選択される少なくとも1種である。エステル系有機溶剤、ケトン系有機溶剤から選択される少なくとも1種の有機溶剤が使用されることで、塗料用組成物の貯蔵安定性が改善され、乾燥性が向上し、低粘度化、ポットライフが制御され、硬化速度が適切に制御されて塗工作業性が一層よくなり、塗膜の表面粗さが微小化される。本発明の塗料用組成物では、有機溶剤(B)は単独で使用しても、2種類以上の混合物で使用してもよい。
【0060】
本発明の塗料用組成物では、エステル系有機溶剤として、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸−n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸−n−ブチル、酢酸イソブチルなどが例示される。
【0061】
本発明の塗料用組成物では、ケトン系有機溶剤として、アセトン、メチルアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチル−n−アミルケトン、メチル−n−ヘキシルケトンなどが例示される。
【0062】
有機溶剤(B)は、より好ましくは、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンから選択される少なくとも1種類である。
【0063】
本発明の塗料用組成物では、好ましくは、有機溶剤(B)が、さらに加水分解性エステル化合物、アルコールから選択される少なくとも1種の有機溶剤を含む。加水分解性エステル化合物、アルコールから選択される少なくとも1種の有機溶剤が使用されることで、塗料用組成物の貯蔵安定性が改善され、乾燥性が向上し、低粘度化、ポットライフが制御され、硬化速度が適切に制御されて塗工作業性が一層よくなる。
【0064】
本発明の塗料用組成物では、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどのポリイソシアネート化合物が塗料用組成物の硬化剤として使用されるとき、ポットライフを適性に調節し、塗工作業性を改善するために、加水分解性エステル化合物、アルコールの使用が推奨される。本発明の塗料用組成物では、加水分解性エステル化合物とアルコールが併用されるとき、塗料用組成物の硬化反応が悪影響を受けることなく、ポットライフが適性に制御され、より一層、欠点のない美麗な塗工面が得られる。
【0065】
本発明の塗料用組成物では、加水分解性エステル化合物として、オルト酢酸トリメチル、オルト酢酸トリエチル、オルト酢酸トリブチル、オルトプロピオン酸トリメチル、オルトプロピオン酸トリエチルなどが例示される。
【0066】
本発明の塗料用組成物では、加水分解性エステル化合物の使用量は、好ましくは、
(グラフト共重合体の水酸基のモル数+ポリエステルポリオールの水酸基のモル数)×1/10≦加水分解性エステル化合物≦(グラフト共重合体の水酸基のモル数+ポリエステルポリオールの水酸基のモル数)×10、
より好ましくは、
(グラフト共重合体の水酸基のモル数+ポリエステルポリオールの水酸基のモル数)×1/5≦加水分解性エステル化合物≦(グラフト共重合体の水酸基のモル数+ポリエステルポリオールの水酸基のモル数)×5、
さらに好ましくは、
(グラフト共重合体の水酸基のモル数+ポリエステルポリオールの水酸基のモル数)×1/3≦加水分解性エステル化合物≦(グラフト共重合体の水酸基のモル数+ポリエステルポリオールの水酸基のモル数)×3
であるのが望ましい。
【0067】
本発明の塗料用組成物では、加水分解エステル化合物の使用量が、
(グラフト共重合体の水酸基のモル数+ポリエステルポリオールの水酸基のモル数)×1/10≦加水分解性エステル化合物≦(グラフト共重合体の水酸基のモル数+ポリエステルポリオールの水酸基のモル数)×10
であれば、塗料用組成物の硬化剤としてポリイソシアネート化合物を使用したときのポットライフが適性に制御され、塗工作業性が一段と改善される。
【0068】
本発明の塗料用組成物では、アルコールとして、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、第二ブタノール、第三ブタノールなどのアルコール、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテートなどの多価アルコールとその誘導体などが例示される。
【0069】
本発明の塗料用組成物では、アルコールは、好ましくは、
加水分解性エステル化合物のモル数×1/10≦アルコール≦加水分解性エステル化合物のモル数×10、
より好ましくは、
加水分解性エステル化合物のモル数×1/5≦アルコール≦加水分解性エステル化合物のモル数×5、
さらに好ましくは、
加水分解性エステル化合物のモル数×1/3≦アルコール≦加水分解性エステル化合物のモル数×3
であるのが望ましい。
【0070】
本発明の塗料用組成物では、アルコールの使用量が、
加水分解性エステル化合物のモル数×1/10≦アルコール≦加水分解性エステル化合物のモル数×10
であれば、塗料用組成物の硬化剤としてポリイソシアネート化合物を使用したときのポットライフが適性に制御され、塗工作業性が一段と改善される。
【0071】
本発明の塗料用組成物では、有機溶剤(B)は、塗料用組成物を希釈し、塗装作業性を改善して、均一で欠陥のない塗膜を形成するために有用である。また、本発明の塗料用組成物では、グラフト共重合体を溶液重合で製造する際の有機溶剤としても使用される。
【0072】
本発明の塗料用組成物は、グラフト共重合体、ポリエステルポリオール、有機溶剤以外にも、消泡剤、レベリング剤、ヌレ剤などの塗料添加剤、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシランなどのシランカップリング剤、塗膜の表面電気抵抗を制御するために、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウム ヘキサフルオロホスフェートなどのイオン液体、メタクリル酸亜鉛などのメタクリル酸、アクリル酸金属塩、その他、塗料に一般的に配合される原材料を使用してもよい。
【0073】
本発明の塗料用組成物では、ことさら、メタクリル酸亜鉛、アクリル酸亜鉛などの不飽和脂肪酸金属塩の添加が望ましく、不飽和脂肪酸金属塩が添加されると、塗膜表面の電気抵抗が制御され、静電気が起こりがたくなるため塗膜の耐汚染性が良好となり、塗膜硬度が向上して耐傷付き性が良好となる傾向が見られる。
【0074】
本発明の塗料用組成物では、不飽和脂肪酸の金属塩、例えば、アクリル酸亜鉛、メタクリル酸亜鉛は、塗膜表面抵抗が10Ω/23℃〜1013Ω/23℃になるように使用されるのが望ましい。
【0075】
以下、実施例で本発明を詳細に説明する
【実施例】
【0076】
実施例で本発明の詳細を説明するのに先立ち、試験方法、評価方法を説明する。また、特に断りがない限り使用量は部数(g)を表し、組成は重量%を表す。
【0077】
1.加熱残分(%)
加熱残分は、JIS K 5407:1997にしたがって140℃で60分間加熱し測定した。
【0078】
2.酸価(mgKOH)
JIS K 5407:1997にしたがって測定した。
【0079】
3.水酸基価(mgKOH)
グラフト共重合体(A)からポリメタクリル酸メチルマクロモノマーを除いたメタクリル酸2−ヒドロキシエチル使用量(重量%)/130×561で算出した。
【0080】
4.分子量
重量平均分子量(以下、Mwとも言う)、数平均分子量(以下、Mnとも言う)、分子量分布(以下、dとも言う)=Mw/Mnは、東ソー(株)の「HLC−8220 GPC」システムで測定した。
【0081】
5.ガラス転移温度(Tg)(℃)
アクリル樹脂のガラス転移温度(Tg)(℃)は、アクリル樹脂組成中からポリメタクリル酸マクロモノマーを除いた組成で、すなわち、メタクリル酸/メタクリル酸2−ヒドロキシエチル/アルキル基の炭素原子数が1〜4個のメタクリル酸アルキルからなる合計で100重量%の組成で、Tg=1/{(メタクリル酸使用量(重量分率)/ポリメタクリル酸のTg)+(メタクリル酸2−ヒドロキシエチル使用量(重量分率)/ポリメタクリル酸2−ヒドロキシエチルのTg)+(メタクリル酸アルキルの使用量(重量分率)/ポリメタクリル酸アルキルのTg)}−273で算出した。
【0082】
6.試験用塗料の製造
塗料用組成物にポリイソシアネート化合物であるイソホロンジイソシアネートを、イソホロンジイソシアネートのイソシアネート基(NCO)モル数とグラフト共重合体(A)とポリエステルポリオールの水酸基(OH)のモル数の合計の比(以下、NCOインデックスとも言う)が100/100となるようにイソホロンジイソシアネートを配合し、溶剤で塗料の加熱残分が20%になるよう調節して試験用塗料とした。
【0083】
7.ポットライフの評価
塗料を、100mLガラス瓶に85gとり、23℃で8時間静置した。塗料粘度が試験初期粘度から2倍以内のものをポットライフが良好(合格)とし、粘度が2倍以上のものはポットライフが短い(不合格)とした。なお、塗料の粘度は、23℃で、「VISCOMETER TVB−10」(TOKI SANGYO(株)社の測定機)を使用し測定した。
【0084】
8.塗膜の表面粗さ(Ra)
ポリエステルフィルム「ルミラーT−60」(フィルム厚188μm、東レ(株)社の製品、表面粗さRa=5〜7nm)上に、塗料をバーコーダーで乾燥膜厚が1〜5μmになるよう塗布し、120℃で2分間乾燥した後、40℃で1週間養生した。
【0085】
被塗物、塗膜の表面粗さは、JIS B 0601:2001に準拠して測定し、算術平均粗さRaを、被塗物および塗膜の表面粗さとした。
【0086】
表面粗さRaは、原子間力顕微鏡を使用して、以下の条件で測定した。
システム:NanoScopeIII/MMAFM(デジタルインスツルメンツ社製)
スキャナ:AS−130(J−Scanner)
プローブ:NCH−W型、単結晶シリコン(ナノワールド社製)
走査モード:タッピングモード
走査範囲:1μm×1μm
走査速度:0.5Hz
測定環境:温度23℃、相対湿度65%、大気中
表面粗さRaは、上記測定条件で測定を3回行い、平均値を採用した。塗膜の表面粗さRaが被塗物の表面粗さRaよりも小さく、および、絶対値が小さいほど良好である。
【0087】
9.塗膜の耐汚染性
塗料を、バーコーダーでアルミ箔「アルミハク リョウツヤ(H)」W No.セ2994−1、記号 A1N30H−H18(東洋アルミニウム(株)社製)上に、乾燥膜厚が30〜50μmになるよう塗布し、120℃で2分間乾燥した。
【0088】
塗膜の表面電気抵抗を、温度20℃、湿度35%で、「高抵抗率計 ハイレスタ−UP」(三菱化学アナリテック(株)社製)を使用し、JIS K 6911に準拠して測定した。
【0089】
測定条件は、
ハイレスタ−UP本体 型番:MCP−HT450
URSプローブ 型番:MCP−HTP14
UR−100プローブ 型番:MCP−HTP16
レジテーブルUFL 型番:MCP−ST03
スイッチボックスUタイプ 型番:MCP−SWB02
とした。
【0090】
塗膜の表面電気抵抗が1013Ω以下であれば、塗膜に静電気が起こらず、塗膜の耐汚染性が良好(合格)とした。
【0091】
10.付着性(碁盤目密着性)
ポリエステルフィルム「ルミラーT−60」(フィルム厚188μm、東レ(株)社の製品)上に、塗料をバーコーダーで乾燥膜厚が1〜5μmになるよう塗布し、120℃で2分間乾燥した後、40℃で1週間養生した。
【0092】
塗膜の付着性を、JIS K 5400:1997にしたがって試験、評価した。100/100で付着性が良好であり、合格(○)とした。それ以外は、不合格(×)とした。
【0093】
11.屈曲性
ポリエステルフィルム「ルミラーT−60」(フィルム厚188μm、東レ(株)社の製品)上に、塗料をバーコーダーで乾燥膜厚が1〜5μmになるよう塗布し、120℃で2分間乾燥した後、40℃で1週間養生した。
【0094】
塗膜の屈曲性を、JIS K5400:1997にしたがい試験、評価した。φ3mmの心棒を用い、180度折り曲げ、折り曲げた部分の塗膜外観を目視で確認した。塗膜に割れ、はがれがなければ合格(○)とし、それ以外は不合格(×)とした。
【0095】
〔実施例、比較例で使用するグラフト共重合体の製造〕
実施例で使用したグラフト共重合体A−1の製造
撹拌機、コンデンサー、窒素ガス吹き込み口、加熱冷却装置、温度計のついた500mLフラスコに、トルエン98.2g、メチルイソブチルケトン46.4g、ポリメタクリル酸メチルマクロモノマー3gを仕込んだ。窒素ガスを吹き込みながら85℃に昇温した。
【0096】
あらかじめ計量、混合しておいたメタクリル酸メチル71.0g、メタクリル酸n−ブチル20.0g、メタクリル酸1.0g、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル8.0g、2,2´−アゾビスイソブチロニトリル1.5gのアクリル単量体/重合開始剤混合物をフラスコ内に3時間で等速滴下した。
【0097】
滴下終了後、1時間重合を行った後、トルエン5.0g、2,2´−アゾビスイソブチロニトリル0.05gを添加した。さらに30分後、トルエン5.0g、2,2´−アゾビスイソブチロニトリル0.05gを添加した。
【0098】
添加終了後、1時間重合を行った後、室温まで冷却して、実施例で使用するグラフト共重合体A−1を製造した。
【0099】
グラフト共重合体A−1は、加熱残分40.2%、酸価6.5mgKOH、水酸基価34.5mgKOH、重量平均分子量23900、数平均分子量14500、分子量分布1.65、ガラス転移温度80℃であった。
【0100】
表1に、組成、製造方法、特性値などの詳細を示した。表1において、1はアクリル樹脂製造に使用した有機溶剤と使用量を示し、2は使用したマクロモノマーであるポリメタクリル酸メチルマクロモノマー(「マクロモノマーAA−6」(東亞合成(株)社製)と使用量を示し、3は使用したメタクリル単量体の種類と使用量を示し、4は使用した重合開始剤と使用量を示し、5は使用した連鎖移動剤の種類と使用量を示し、6、7は重合率を高めるために追添加した重合開始剤と、希釈用の有機溶剤を示し、8は加熱残分、酸価などの特性値を示した。
【0101】
【表1】

【0102】
実施例で使用したグラフト共重合体A−2〜A−5の製造
表1に示した組成、製造方法で、グラフト共重合体A−1と同様にして実施例で使用したグラフト共重合体A−2〜A−5を製造した。
【0103】
実施例で使用したグラフト共重合体A−6〜A−10の製造 表2に示した組成、製造方法で、グラフト共重合体A−1と同様にして実施例で使用したグラフト共重合体A−6〜A−10を製造した。
【0104】
【表2】

【0105】
比較例で使用したグラフト共重合体A−11〜A−16の製造
表3に示した組成、製造方法で、グラフト共重合体A−1と同様にして比較例で使用したグラフト共重合体A−11〜A−16を製造した。
【0106】
【表3】

【0107】
〔実施例および比較例の塗料用組成物の製造と試験結果〕
実施例1
グラフト共重合体A−8の100gとポリエステルポリオール(1)19gを混合し、メチルエチルケトン141.9g、酢酸エチル35.5gで希釈し、実施例1塗料用組成物を製造した。
【0108】
実施例1の塗料用組成物にイソホロンジイソシアネートをNCOインデックスが1.0になるよう配合し、試験用塗料を製造した。
【0109】
塗料組成および試験結果を表4に示した。表4に示したとおり、実施例1の塗料用組成物を使用した塗料は、塗膜表面粗さRa(=0.230nm)が被塗物の表面粗さ(5〜7nm)よりもはるかに微小であり、良好な付着性を示した。表4において、ポリエステルポリオール(1)は「FLEXOREZ 188」(楠本化成(株)の商品、水酸基当量は244)を表し、ポリエステルポリオール(2)は「FLEXOREZ XP−171−90」(楠本化成(株)の商品、水酸基当量は460)を表す。表4において、1は使用したグラフト共重合体の種類と使用量を表し、2は使用したポリエステルポリオールの種類と使用量を表し、3は使用した有機溶剤の種類と使用量を表し、4は塗膜の表面粗さRa、付着性を示した。
【0110】
【表4】

【0111】
実施例2〜5
表4に示した組成で、実施例1の塗料用組成物と同様にして、実施例2〜5の塗料用組成物を製造した。
【0112】
表4から、実施例2〜5の塗料用組成物はいずれも塗膜表面粗さRaが微小であり、付着性も良好である。
【0113】
実施例6〜10
溶剤組成を表5のように変え、実施例1の塗料用組成物と同様にして、実施例6〜10の塗料用組成物を製造した。
【0114】
表5から、加水分解性エステル化合物であるオルト酢酸トリエチルとエチルアルコール、オルトプロピオン酸トリエチルとエチルアルコールを併用した塗料は、ポットライフが良好であり、塗膜の表面粗さ、付着性も良好で優れていた。
【0115】
【表5】

【0116】
実施例11〜15
表6に示した組成で、実施例1の塗料用組成物と同様にして、実施例11〜15の塗料用組成物を製造した。表6において、メタクリル酸亜鉛は「Zn−60MA」(浅田化学工業(株)社製)を表す。
【0117】
表6から、実施例11〜15の塗料用組成物はいずれも塗膜表面粗さRaが微小であり、付着性も良好である。また、メタクリル酸亜鉛添加量にしたがって塗膜の表面電気抵抗が低下しており、塗膜が帯電しがたく、耐汚染性が良好である。
【0118】
【表6】

【0119】
実施例16〜20
表7に示した組成で、実施例1の塗料用組成物と同様にして、実施例16〜20の塗料用組成物を製造した。表7に見られるとおり、実施例16〜20の塗料用組成物は、いずれも微小な表面粗さと、良好な付着性を示した。
【0120】
【表7】

【0121】
実施例21〜25
表8に示した組成で、実施例1の塗料用組成物と同様にして、実施例21〜25の塗料用組成物を製造した。表8に見られるとおり、実施例21〜25の塗料用組成物は、いずれも微小な表面粗さと、良好な付着性を示した。
【0122】
【表8】

【0123】
比較例1〜6
表9に示した組成で、実施例1の塗料用組成物と同様にして、比較例1〜6の塗料用組成物を製造した。表9に見られるとおり、比較例1〜3の塗料用組成物では、グラフト共重合体A−8を使用したにもかかわらず、グラフト共重合体とポリエステルポリオールとの配合量組成が不適当であるため、塗膜の割れ、付着性不良が起こった。
【0124】
比較例4、5の塗料用組成物では、グラフト共重合体A−8を使用したにもかかわらず、ポリエステルポリオールの水酸基当量が不適切であるため塗膜表面粗さRaが大きくなり、付着性および屈曲性が悪化した。比較例6の塗料用組成物では、グラフト共重合体A−8を使用したにもかかわらず、ポリエステルポリオールの分子鎖末端構造が不適切である(−CHCH−OH)ため塗膜表面粗さRaが大きくなり、付着性が悪化した。
【0125】
表9において、ポリエステルポリオール(3)は「デスモフェン 800」(住友バイエルウレタン(株)社の製品、水酸基当量は198)を表し、ポリエステルポリオール(4)は「デスモフェン 1652」(住友バイエルウレタン(株)社の製品、水酸基当量は1063)を表し、ポリエステルポリオール(5)は「FSK−700」(川崎化成工業(株)社の製品、水酸基当量は374)を表す。
【0126】
【表9】

【0127】
比較例7〜11
表10に示した組成で、実施例1の塗料用組成物と同様にして、比較例7〜11の塗料用組成物を製造した。
【0128】
表10に見られるとおり、いずれの塗料用組成物も、塗膜表面粗さRa、付着性が不満足な結果となった。
【0129】
【表10】

【0130】
比較例12〜14
表11の組成で、実施例1の塗料組成物と同様にして、比較例12〜14の塗料組成物を製造した。表11に見られるとおり、いずれの塗料組成物も、エステル系有機溶剤、ケトン系有機溶剤が使用されていないため、塗料のポットライフが不満足な結果となった。
【0131】
【表11】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗料用樹脂(A)と有機溶剤(B)を含む塗料用組成物であって、塗料用樹脂(A)が、グラフト共重合体65〜95重量%と、分子鎖末端が、下記構造式
【化1】

のポリエステルポリオール5〜35重量%を含み(グラフト共重合体とポリエステルポリオールの総計が100重量%である)、グラフト共重合体が、マトリックスポリマーとマトリックスポリマー100重量%に対し3〜12重量%の枝ポリマーからなり、マトリックスポリマーが、メタクリル酸1〜8重量%、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル3〜16重量%、アルキル基の炭素原子数が1〜4個のメタクリル酸アルキル76〜96重量%からなる合計100重量%のメタクリル単量体からなり、枝ポリマーがポリメタクリル酸メチルマクロモノマーであり、有機溶剤(B)が、エステル系有機溶剤、ケトン系有機溶剤から選択される少なくとも1種である塗料用組成物。
【請求項2】
ポリエステルポリオールの水酸基当量が200〜500である請求項1に記載の塗料用組成物。
【請求項3】
アルキル基の炭素原子数が1〜4個のメタクリル酸アルキルが、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチルから選択される少なくとも1種である請求項1または2に記載の塗料用組成物。
【請求項4】
有機溶剤(B)が、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンから選択される少なくとも1種類である請求項1〜3のいずれかに記載の塗料用組成物。
【請求項5】
有機溶剤(B)が、さらに加水分解性エステル化合物、アルコールから選択される少なくとも1種の有機溶剤を含む請求項1〜4のいずれかに記載の塗料用組成物。

【公開番号】特開2013−95912(P2013−95912A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−243109(P2011−243109)
【出願日】平成23年11月7日(2011.11.7)
【出願人】(000187046)東レ・ファインケミカル株式会社 (153)
【Fターム(参考)】