説明

塗料組成物、およびそれを用いた反射防止部材の製造方法

【課題】
簡易な方法で良好な反射防止性能、透明性に加えて帯電防止性能を有する反射防止部材を製造することが可能な塗料組成物、およびそれを用いた反射防止部材の製造方法を提供する
【解決手段】
少なくとも無機粒子A、無機粒子B、無機粒子C、及びバインダー原料を含む塗料組成物。
無機粒子A:フッ素化合物Aにより表面処理された無機粒子。
無機粒子B:屈折率が1.65以上の無機粒子。
無機粒子C:体積抵抗値が1×1010(Ω・cm)以下の無機粒子

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射防止部材の製造に好適な塗料組成物、及び当該塗料組成物を用いた反射防止部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
反射防止部材は一般に陰極管表示装置(CRT)、プラズマディスプレイパネル(PDP)や液晶表示装置(LCD)のような画像表示装置において、外光の反射によるコントラスト低下や像の映り込みを防止するために、光学干渉の原理を用いて反射率を低減するようにディスプレイの最表面に配置される。このような反射防止部材として、より広い波長領域の反射率を低減するために、屈折率の高い物質からなる高屈折率層と屈折率の低い物質からなる低屈折率層との多層の被膜をフィルムなどの支持基材の表面に積層する、いわゆるマルチコーティングが知られている(特許文献1)。
【0003】
この反射防止部材を少ない工程で製造する方法として、1回の塗布により形成された1層の液膜から、2層以上の層を形成する反射防止積層体の製造方法が提案されている。特許文献2には「バインダー樹脂中に低屈折率微粒子と中乃至高屈折率微粒子が分散されているコーティング組成物を用いてワンコートにて形成された塗膜を含む反射防止積層体であって、該低屈折率微粒子としてフッ素系化合物により処理されているシリカ微粒子が用いられることにより、比重の差により塗膜の上部乃至中間部において低屈折率微粒子が偏在し、且つ中間部乃至下部において中乃至高屈折率微粒子が偏在していることを特徴とする反射防止積層体。」が提案されており、また、特許文献3には「構成元素が異なる2種類以上の無機粒子を含む1液の塗料組成物を1回塗布乾燥硬化する工程のみで反射率の異なる複数の層を構成する反射防止フィルムの製造方法であって、少なくとも一種類の無機粒子にフッ素化合物による表面処理が成されていることを特徴とする反射防止フィルムの製造方法。」が提案されている。さらに、特許文献4には「基材と、その上に多層構造を有する積層体の製造方法であって、前記基材上又は基材上に形成された層の上に、下記成分(A)〜(F)を含む液状硬化性樹脂組成物を塗布して塗膜を形成し、この1の塗膜から溶媒を蒸発させることにより、2以上の層を形成することを特徴とする積層体の製造方法。」が提案されている。
【0004】
また、このような反射防止部材をPDP、LCD等の各種ディスプレイの表面に用いる場合には、複数の機能性フィルムと貼合する必要がある。前記貼合工程内では、ロール状に巻き取られたフィルムの巻き出し、保護フィルムの剥離などの工程があり、これらの工程では剥離帯電によりが発生し、製造工程での埃の付着などが起こりやすい。これらを防止するためにも、反射防止部材には帯電防止性能が求められている。
【0005】
前記反射防止部材に帯電防止性を付与する方法として、特許文献5には高屈折率層が導電性を有することを特徴とする反射防止フィルムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−5452号公報
【特許文献2】特開2007−272132号公報
【特許文献3】特開2008−070414号公報
【特許文献4】特開2005−297539号公報
【特許文献5】特開2002−31702号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは簡易な方法で良好な反射防止性能と透明性に加えて、帯電防止性能を有する反射防止部材を製造するため、1回の塗布により形成された1層の液膜から2層以上の層を形成する製造方法として特許文献2〜4の方法を用い、これに帯電防止性能を付与する方法として特許文献5、6に記載の方法を組み合わせることを試みたが、反射防止性能、透明性と帯電防止性能を両立することができなかった。
【0008】
従って本発明が解決しようとする課題は、簡易な方法で良好な反射防止性能、透明性に加えて帯電防止性能を有する反射防止部材を製造することが可能な塗料組成物、およびそれを用いた反射防止部材の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、以下の発明を完成させた。すなわち、本発明は以下の通りである。
1)無機粒子A、無機粒子B、無機粒子C、及びバインダー原料を含む塗料組成物。
【0010】
無機粒子A: フッ素化合物Aにより表面処理された無機粒子。
【0011】
無機粒子B: 25℃における屈折率が1.65以上の無機粒子。
【0012】
無機粒子C: 25℃における体積抵抗率が1×1010(Ω・cm)以下の無機粒子。
【0013】
2)前記バインダー原料が、1分子あたり3個以上の反応性部位を有し、JIS K 0070−1992に基づく水酸基価が20以上150以下であるであることを特徴とする前記1)に記載の塗料組成物。
【0014】
3)前記無機粒子Cの前記無機粒子Bに対する質量比(「無機粒子Cの質量」/「無機粒子Bの質量」)をC/Bとした際に、該C/Bが0.8以上1.5以下であることを特徴とする前記1)または2)に記載の塗料組成物。
【0015】
4)前記無機粒子Bと前記無機粒子Cの表面電荷量の差が、30μeq/g以下であることを特徴とする前記1)から3)のいずれかに記載の塗料組成物。
【発明の効果】
【0016】
本発明の塗料組成物は、簡易な方法で良好な反射防止性能、透明性に加えて帯電防止性能を有する反射防止部材を製造することが可能である。また本発明の製造方法を用いることにより、生産性を向上することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の塗料組成物により得られる反射防止部材の例である。
【図2】本発明の塗料組成物により得られる反射防止部材の別の例である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明者らは、支持基材上に塗料組成物を1回塗布することにより2層以上の層からなる反射防止部材を製造する方法において、特許文献2〜4の従来技術と特許文献5の従来技術の組合せでは反射防止性能、透明性と帯電防止性能が両立できない理由を次の2つのように考えている。
【0019】
まず、第一の理由は高屈折率層の屈折率にある。1回の塗布により形成された1層の液膜から2層以上の層を形成する反射防止積層体の製造方法では、2層の形成を乾燥過程において自発的に発生させるため、2層間の界面形状が乾燥時の溶媒成分の毛管力により凹凸状に入り組んだ形状になる。また、乾燥過程の初期に自発的に層構造が形成されて塗膜表面が被覆されることから、塗膜内に溶媒成分の濃度勾配ができるため、得られた塗膜中に粒子の傾斜構造、すなわち相対的に低屈折率のバインダー成分が2層の界面側に多く、粒子が基材側に多くなる構造が形成される。
【0020】
その結果、この構造(界面の凹凸構造と、層内の傾斜構造)は干渉ムラの抑制や塗膜の耐擦傷性、耐摩耗性に対しては有効であるが、反射防止機能の発現に対しては光学的なロスとなり、同等の反射防止性能を得るには、2回塗工により2層を形成する場合に比べて自発的な層構造の形成を行う場合には、2つの層を構成する粒子の間に大きな屈折率差をもうけることが必要になる。
【0021】
その結果、低屈折率層側の粒子の屈折率が1.30程度であるならば、十分な反射防止機能を発現させるためには高屈折率層側の粒子は屈折率1.65以上の高屈折率材料が必要になるが、これらの無機粒子は絶縁体か、あるいは導電性があっても帯電防止性能を得るには不十分である。
【0022】
一方で特許文献5、6に記載の十分な帯電防止性能が得られる無機粒子は、粒子全体が均一相の置換型固溶体粒子、または1つの粒子の一部分に置換型固溶部を形成したコア−シェル型や種類の異なる粒子が接合した接合形粒子である。このような粒子はホストとなる絶縁性の無機粒子を構成する金属、または半金属元素(例えばATOでは4価のスズ)を酸化数の異なる元素(例えばATOでは5価のアンチモン)で置換したり(これをドーピングと呼ぶ)、ホストとなる無機粒子の結晶構造中に酸素欠損(例えばSnO2−x)を導入したり(これを欠陥導入と呼ぶ)することにより価電子帯を形成して導電性を発現している。そのため屈折率は基本的にホストとなる粒子の屈折率に依存するので、最大でも1.60程度と低いため、これらの材料を高屈折率材料に用いると反射防止機能が得られない。
【0023】
第二の理由は乾燥過程での粒子の凝集にある。1回の塗布により形成された1層の液膜から2層以上の層を形成する反射防止積層体の製造方法においては、2層の形成が乾燥過程において自発的に発生するが、層構造の形成時には同時に粒子間の距離が近接し、粒子間の凝集も同時に起こりやすい。その結果、2種類の粒子の組み合わせによっては層構造の形成を著しく阻害し、層構造が形成できない場合がある。
【0024】
さらに特許文献2〜4の場合に記載のような第1層と第2層の膜厚がほぼ等しい場合に対し、1回の塗工で反射防止機能に加えてハードコート性までをも付与する場合には、第1層の厚みが第2層の厚みよりも大幅に薄くなるため、第1層に含まれる粒子の量がバインダー成分の量に比べて少なくなる。この場合、乾燥過程で枯渇効果によって凝集の発生が促進されるので、自発的な層構造の形成は、より限られた条件を必要とする。
【0025】
このような条件の下で、特許文献5、6に記載の高屈折率で帯電防止性能が得られる材料は、前述のように、ホスト粒子に対するドーピングや欠陥導入を行っているため、ホスト粒子に比べて粒子表面の電荷(これを表面電荷量と呼ぶ)が大きくなり、乾燥過程での凝集が起こりやすくなる。このような粒子のみを高屈折率粒子に用いると、乾燥過程での自発的な総構造の形成が抑制され、反射防止機能、および帯電防止機能が得られなくなる。
【0026】
そこで本発明者らは、新たに簡易な方法で良好な反射防止性能、透明性に加えて帯電防止性能を有する反射防止部材を製造するため、1回の塗布により形成した1層の液膜から2層以上の層を形成する反射防止部材を連続的に安定して製造する製造方法において、以下の塗料組成物を用いることにより解決できることを見出した。
【0027】
本発明の塗料組成物は、特定の無機粒子およびバインダー原料に着目することにより、帯電防止機能を有しながら反射防止機能を発現させることを可能にした。
【0028】
具体的には本発明の塗料組成物は、無機粒子A、無機粒子B、無機粒子C、及びバインダー原料を含んでおり、前記無機粒子Aはフッ素化合物Aにより表面処理された無機粒子、無機粒子Bは屈折率が1.65以上の無機粒子、無機粒子Cは、体積抵抗率が1×1010(Ω・cm)以下の無機粒子である様態である。
【0029】
無機粒子A,B,Cは上記の特性を満たすものであれば、後述する「粒子の種類」が同一でも異なっていても良いが、無機粒子Aと無機粒子B,Cは異なる種類であることの方が好ましく、無機粒子A,B、Cの全てが異なった種類であることがより好ましい。
【0030】
ここで無機粒子Aの表面処理に用いるフッ素化合物Aとは、後述の一般式(2)で表される化合物である。無機粒子Aがフッ素化合物Aによって表面処理されていない場合には、自発的な総構造の形成が十分に行われない場合がある。
【0031】
無機粒子Bの屈折率は前述の様に1.65以上が必要であるが、1.68以上が好ましく、1.70以上がより好ましい。ここで述べる屈折率は一般的な屈折率の表し方である波長589.3nm(ナトリウムのD線)での値を指す。
【0032】
ここで、無機粒子Bの屈折率が1.65未満では、前述の理由から反射防止性能が不十分になる。無機粒子Bの屈折率は高い分には問題ないが、現実的には3.0程度が上限である。
【0033】
無機粒子Cの屈折率が高い分には問題ないが、後述する導電性を有する材料では現実的に入手可能な原材料では、1.65程度が上限である。
【0034】
ここで述べる無機粒子の屈折率は、各無機粒子の単結晶について測定した屈折率ではなく、実際に塗料組成物に使用している粒子状態での屈折率を指し、粒子の種類として同一であっても結晶性、形状の影響を含んだものである。そのため、本明細書で示唆する粒子と種類や主とする結晶多形が同一の材料の文献値とは異なる場合があり、また同じ種類の粒子であっても、表面処理や粒子径、結晶化度によって異なる。粒子の屈折率測定方法については後述する。
【0035】
無機粒子Cの25℃における体積抵抗率は前述の様に1×1010(Ω・cm)以下であることが必要であるが、1×10(Ω・cm)以下が好ましく、1×10(Ω・cm)以下がより好ましい。
【0036】
無機粒子Cの25℃における体積抵抗率が1×1010(Ω・cm)よりも高い場合には、帯電防止性能が不十分になる。また、無機粒子Cの体積抵抗率が低い分には問題ないが、酸化物粒子であるならば現実的には1×10(Ω・cm)程度が限界である。
【0037】
無機粒子Bの体積抵抗率は低い分には問題がないが、前述した屈折率を有する材料では現実的に入手可能な原材料では、1×1010(Ω・cm)程度が限界である。
【0038】
この無機粒子B、無機粒子Cの体積抵抗率とは、塗料組成物に使用している無機粒子単独の体積抵抗率を測定したもので、その詳細な測定方法は後述する。
【0039】
本発明の塗料組成物においては、バインダー原料の構造、物性に好ましい範囲がある。具体的にはバインダー原料1分子あたり3個以上の反応性部位を有し、JIS K 0070−1992に基づく水酸基価が25以上150以下であるであることが好ましく、20以上130以下であるであることがより好ましく、30以上130以下であるであることが特に好ましい。
【0040】
ここで述べるバインダー原料とは、塗料組成物中に含まれる化合物であり、塗料組成物を用いて得られた反射防止部材の反射防止層中のバインダー成分の原料である。つまり、本発明の塗料組成物中に含まれるバインダー原料が、熱や電離放射線などにより硬化して、反射防止層に含まれるものを、バインダー成分という。なお、一部のバインダー原料については、反射防止層中でも塗料組成物中と同様の状態で存在する場合もあり(未反応のまま、反射防止層中に存在する場合もあり)、その場合でも反射防止層中のものはバインダー成分という。
【0041】
ここで反応性部位とは、後述の無機粒子Aの項のフッ素化合物Aに関する記載と同一である。また反応性部位の数は、バインダー成分の示性式から判断する。
【0042】
バインダー原料1分子あたりの反応性部位が2よりも少ないと耐摩耗性、耐擦傷性が低下する。反応性部位の数が多い分には問題ないが、一般的には20程度が上限となっている。
【0043】
また水酸基価とはバインダー原料1分子あたりの水酸基の量を定量化したもので、具体的には試料1gをアセチル化したとき、水酸基と結合した酢酸を中和したのに必要とする水酸化カリウムのmg数によって表し、数値が大きいほど分子中の水酸基が多くなることを示す。
【0044】
水酸基価が20未満になると、塗料組成物中で無機粒子B、無機粒子Cの分散安定性が低下し、乾燥過程で、無機粒子B、無機粒子Cが凝集し、自発的な層構造の形成を反射防止機能、透過率が低下する。また、水酸基価が150よりも大きくなると、塗料組成物中で無機粒子Aの分散安定性が低下し、乾燥過程で、無機粒子Aが凝集しやすくなり、反射防止機能、透過率が低下する。
【0045】
さらに、本発明の塗料組成物においては前記無機粒子Bと無機粒子Cの質量比にも好ましい範囲がある。具体的には、前記無機粒子Cの前記無機粒子Bに対する質量比(「無機粒子Cの質量」/「無機粒子Bの質量」)をC/Bとした際に、該C/Bが0.8以上1.5以下であることが好ましい。ここで述べる無機粒子の質量の評価方法については後述する。
【0046】
無機粒子Cの前記無機粒子Bに対する質量比(C/B)が0.8未満では、帯電防止機能が低下しであり、1.5より大きくなると反射防止機能が低下する。
【0047】
また、無機粒子Bと無機粒子Cの表面状態には好ましい範囲があり、具体的には無機粒子Bと無機粒子Cの表面電荷量の差が30μeq/g以下であることが好ましく、25μeq/g以下であることがより好ましく、20μeq/g以下が特に好ましい。
【0048】
ここで、粒子の表面電荷量とは単位粒子グラムあたりの表面電荷量(μeq/g)を指し、コロイド流動電位法、電気泳動法などの方法でとして測定可能である。
【0049】
表面電荷量の差は、無機粒子Bの表面電荷と無機粒子Cの表面電荷の差の絶対値を指すものであり、無機粒子B、無機粒子Cのいずれの表面電荷が大きくてもよい。無機粒子Bと無機粒子Cの表面電荷量の差が20μeq/gよりも大きいと、乾燥過程において無機粒子Bと無機粒子Cが凝集しやすくなり、反射防止機能と透明性が低下する。表面電荷量の差が小さい分には問題なく0であってもよい。表面電荷量の調整は、例えば有機ケイ素化合物の種類、表面処理量の変更などによって調整することが可能である。
【0050】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
[塗料組成物]
本発明の塗料組成物は、少なくとも無機粒子A、無機粒子B、無機粒子C、およびバインダー原料を含んでいることが重要である。これにより、本発明の塗料組成物を支持基材に1回のみ塗工することによって、反射防止性能と帯電防止性能を有する反射防止部材を得ることができる。
【0051】
ここで「無機粒子」とは無機粒子の表面等の処理を施したものも含む。この表面処理とは無機粒子表面に化合物を化学結合(共有結合、水素結合、イオン結合、ファンデルワールス結合、疎水結合等を含む)や吸着(物理吸着、化学吸着を含む)によって導入することを指す。
【0052】
本発明の塗料組成物は2種類以上の粒子を含むことが好ましい。2種類以上の粒子の内、少なくとも1種類は、他方の粒子に対して相対的に屈折率が低いことが好ましく、屈折率の低い粒子が無機粒子Aであることが好ましい。
【0053】
ここで粒子の種類とは粒子を構成する元素の種類によって決まり、何らかの表面処理を行う場合には、表面処理される前の粒子を構成する元素の種類によって決まる。例えば、酸化チタン(TiO)と酸化チタンの酸素の一部をアニオンである窒素で置換した窒素ドープ酸化チタン(TiO2−x)とでは、粒子を構成する元素が異なるために、異なる種類の粒子である。また、同一の元素、例えばZn、Oのみからなる粒子(ZnO)であれば、その粒径が異なる粒子が複数存在しても、またZnとOとの組成比が異なっていても、これらは同一種類の粒子である。また酸化数の異なるZn粒子が複数存在しても、粒子を構成する元素が同一である限りは(この例ではZn以外の元素が全て同一である限りは)、これらは同一種類の粒子である。
【0054】
本発明の塗料組成物は、前記無機粒子A、無機粒子B、無機粒子C、及びバインダー原料以外の成分を含んでいてもよく、このような成分としては、硬化剤、界面活性剤、分散剤、反応性部位を有する疎水性化合物Bなどを含んでもよい。
[無機粒子A]
無機粒子Aとはフッ素化合物Aにより処理された無機粒子であることが好ましい。この無機粒子Aが第1層の構成成分として好適である。塗料組成物中に無機粒子Aを有することで、本発明の塗料組成物を支持基材上に塗布した場合、無機粒子Aは空気側へ移動して最表面に屈折率の低い層(以下、最表面の層を第1層という。また相対的に屈折率の低い層を低屈折率層という)を形成することができる。
【0055】
無機粒子Aの構成材料となる無機粒子としては、Si,Na,K,CaおよびMgからなる群より選択される少なくとも1つの元素を含む無機粒子が好ましい。さらに好ましくは、シリカ粒子(SiO)、アルカリ金属フッ化物(NaF,KFなど)およびアルカリ土類金属フッ化物(CaF、MgFなど)からなる群より選ばれる少なくとも1つの化合物を含む無機粒子である。耐久性、屈折率などの点からシリカ粒子が特に好ましい。
【0056】
シリカ粒子とはケイ素化合物または有機珪素化合物の重合(縮合)体のいずれの組成物から成る粒子を指し、一般例として、SiOなどのケイ素化合物から導出される粒子の総称である。
【0057】
無機粒子Aの構成材料である無機粒子として、中空シリカ粒子や多孔質シリカ粒子を用いると、中空シリカ粒子や多孔質シリカ粒子が反射防止層の低屈折率層に含まれやすく、反射防止層の一部である低屈折率層の密度を下げ、屈折率を下げる効果が得られるので好ましい。
【0058】
無機粒子Aのフッ素化合物Aにより処理される前の数平均粒子径は1nm以上200nm以下であることが好ましい。数平均粒子径は20nm以上200nm以下がさらに好ましく、40nm以上150nm以下が特に好ましい。無機粒子の数平均粒子径が1nmよりも小さくなると、第1層中の空隙密度が低下し、屈折率が上昇したり透明度が低下したりすることがある。無機粒子の数平均粒子径が200nmよりも大きくなると、低屈折率層の厚さが厚くなり、反射防止性能が低下することがある。
【0059】
前述の通り無機粒子Aとは、フッ素化合物Aにより処理された無機粒子を意味する。ここでフッ素化合物Aとは、後述の一般式(2)で表される化合物である。
【0060】
一般式(2)におけるフルオロアルキル基とは、アルキル基が持つ水素の一部、あるいはすべてがフッ素に置き換わった置換基であり、主にフッ素原子と炭素原子から構成される置換基である。
【0061】
また、反応性部位とは、熱または光などの外部エネルギーにより他の成分と反応する部位をさす。このような反応性部位として、反応性の観点からアルコキシシリル基及びアルコキシシリル基が加水分解されたシラノール基や、カルボキシル基、水酸基、エポキシ基、ビニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基などが挙げられる、反応性、ハンドリング性の観点から、アルコキシシリル基、シリルエーテル基あるいはシラノール基や、エポキシ基、アクリロイル(メタクリロイル)基が好ましい。
【0062】
無機粒子Aを得るための、無機粒子に対するフッ素化合物Aによる処理は、一段階で行われてもよく、多段階で行われてもよい。また、複数の段階でフッ素化合物Aを用いても良いし、一つの段階のみでフッ素化合物Aを用いても良い。
【0063】
また無機粒子に対する処理にて好ましく用いられるフッ素化合物Aは、単一化合物でもよく、複数の異なる化合物を用いてもよい。フッ素化合物Aによる処理とは、無機粒子を化学的に修飾し、無機粒子にフッ素化合物Aを導入する工程をさす。
【0064】
無機粒子に直接フッ素化合物Aを導入する方法としては、1分子中にフッ素セグメントとシリルエーテル基(シリルエーテル基が加水分解されたシラノール基を含む)との両方を持つフルオロアルコキシシラン化合物を1種類以上と、開始剤とを共に撹拌する方法がある。しかし無機粒子に直接フッ素化合物Aを導入する場合、反応性の制御が困難になったり、塗料化後塗工時に塗工斑等が発生しやすくなったりする場合がある。
【0065】
また無機粒子Aを得るための別の方法としては、無機粒子を架橋成分にて処理し、フッ素化合物Aとつなぎ合わせる(フッ素化合物Aにより処理する)方法がある。この場合のフッ素化合物Aとしては、フルオロアルキルアルコール、フルオロアルキルエポキシド、フルオロアルキルハライド、フルオロアルキルアクリレート、フルオロアルキルメタクリレート、フルオロアルキルカルボキシレート(酸無水物およびエステル類を含む)、などを用いることができる。
【0066】
架橋成分とは分子内にフッ素は無いが、フッ素化合物Aと反応可能な部位と、無機粒子と反応可能な部位を少なくとも一カ所ずつ持っている化合物を指す。無機粒子と反応可能な部位としては反応性の観点からシリルエーテルおよびシリルエーテルの加水分解物であることが好ましい。これら化合物は一般的にシランカップリング剤と呼ばれ、例としては、グリシドキシアルコキシシラン類、アミノアルコキシシラン類、アクリロイルシラン類、メタクリロイルシラン類、ビニルシラン類、メルカプトシラン類、などを用いることができる。
【0067】
無機粒子Aのより好ましい形態は、無機粒子を下記一般式(1)で示される化合物で処理し、さらに下記一般式(2)で示されるフッ素化合物Aで処理した粒子である。
B−R−SiR(OR3−n ・・・一般式(1)
D−R−Rf2 ・・・一般式(2)
(上記一般式中のB、Dは、反応性部位を示す。R、Rは、炭素数1から6のアルキレン基およびそれらから導出されるエステル構造を示す。R、Rは、水素または炭素数が1から4のアルキル基を示す。Rf2は、フルオロアルキル基を示す。nは、0から2の整数を示し、それぞれ側鎖を構造中に持ってもよい。)。
【0068】
フッ素化合物Aの反応性部位としては、反応性二重結合基がより好ましい。この反応性二重結合基とは光または熱などのエネルギーをうけて発生したラジカルなどにより化学反応する官能基であり、具体例としては、ビニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基などが挙げられる。
【0069】
一般式(1)の具体例としては、アクリロキシエチルトリメトキシシラン、アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、アクリロキシブチルトリメトキシシラン、アクリロキシペンチルトリメトキシシラン、アクリロキシヘキシルトリメトキシシラン、アクリロキシヘプチルトリメトキシシラン、メタクリロキシエチルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロキシブチルトリメトキシシラン、メタクリロキシヘキシルトリメトキシシラン、メタクリロキシヘプチルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシランおよびこれら化合物中のメトキシ基が他のアルコキシル基および水酸基に置換された化合物を含むものなどが挙げられる。
【0070】
一般式(2)の具体例としては、2,2,2−トリフルオロエチルアクリレート、2,2,3,3,3−ペンタフロオロプロピルアクリレート、2−パーフルオロブチルエチルアクリレート、3−パーフルオロブチル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−パーフルオロヘキシルエチルアクリレート、3−パーフルオロヘキシル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−パーフルオロオクチルエチルアクリレート、3−パーフルオロオクチル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−パーフルオロデシルエチルアクリレート、2−パーフルオロ−3−メチルブチルエチルアクリレート、3−パーフルオロ−3−メトキシブチル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−パーフルオロ−5−メチルヘキシルエチルアクリレート、3−パーフルオロ−5−メチルヘキシル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−パーフルオロ−7−メチルオクチル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、テトラフルオロプロピルアクリレート、オクタフルオロペンチルアクリレート、ドデカフルオロヘプチルアクリレート、ヘキサデカフルオロノニルアクリレート、ヘキサフルオロブチルアクリレート、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピルメタクリレート、2−パーフルオロブチルエチルメタクリレート、3−パーフルオロブチル−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−パーフルオロオクチルエチルメタクリレート、3−パーフルオロオクチル−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−パーフルオロデシルエチルメタクリレート、2−パーフルオロ−3−メチルブチルエチルメタクリレート、3−パーフルオロ−3−メチルブチル−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−パーフルオロ−5−メチルヘキシルエチルメタクリレート、3−パーフルオロ−5−メチルヘキシル−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−パーフルオロ−7−メチルオクチルエチルメタクリレート、3−パーフルオロ−7−メチルオクチルエチルメタクリレート、テトラフルオロプロピルメタクリレート、オクタフルオロペンチルメタクリレート、オクタフルオロペンチルメタクリレート、ドデカフルオロヘプチルメタクリレート、ヘキサデカフルオロノニルメタクリレート、1−トリフルオロメチルトリフルオロエチルメタクリレート、ヘキサフルオロブチルメタクリレートなどが挙げられる。
【0071】
無機粒子に対して、分子中にフルオロアルキル基Rf2を有さない一般式(1)で表される化合物を用いて処理することにより、簡便な反応条件で、無機粒子を修飾することができるばかりではなく、無機粒子に反応性を制御しやすい官能基を導入することができる。その結果、反応性部位およびフルオロアルキル基Rf2を有する一般式(2)のフッ素化合物Aを、一般式(1)で示される化合物を介して、無機粒子に反応させることができる。
[無機粒子B、無機粒子C]
無機粒子BとCについて説明する。無機粒子Bと無機粒子Cは本発明の塗料組成物を支持基材上に塗布することで、最表面側から2番目の位置に形成される屈折率の高い層(以下、最表面側から2番目の位置の層を第2層という。また相対的に屈折率の高い層を高屈折率層という)の構成成分として好適に用いられる。
【0072】
無機粒子B、Cは前述の特性(無機粒子の体積抵抗率、粒子の屈折率)を満たせば特に限定されないが、金属や半金属の酸化物、窒化物、ホウ素化物を主たる成分としていることが好ましく、さらにこの成分とは異なる金属、半金属、または典型元素の酸化物、窒化物、ホウ素化物と単一粒子内、またはコアシェル粒子、接合粒子などで固溶体を形成することにより添加(ドーピング)されていても良く、さらに結晶構造に酸素欠損などの構造欠陥が導入されていても良い。
【0073】
前述のように無機粒子Cは体積抵抗率が1×1010以下であることが必要であるが、その導電機構についてはイオン導電性、電子導電性のいずれであってもよい。
【0074】
無機粒子BとCは、Zr,Ti,Al,Zn,Sb,SnおよびCeよりなる群から選ばれる少なくとも一つの金属や半金属を主成分とする酸化物粒子であることがさらに好ましい。
【0075】
具体的には酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化チタン(TiO2、Ti)、酸化アルミニウム(Al)、酸化インジウム(In)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO)、酸化セリウム(CeO)、酸化アンチモン(Sb、Sb)からなる群より選ばれる少なくとも一つの金属酸化物や半金属酸化物、またはこれに酸化アンチモン(Sb、Sb)、酸化インジウム(In)、酸化リン(P)、酸化ガリウム(Ga)、酸化コバルト(CoO、Co4、Co)からなる群より選ばれる少なくとも一つの金属酸化物、半金属酸化物、典型元素酸化物との固溶体でもよい。
【0076】
特に好ましくは無機粒子Bには屈折率の関係から酸化ジルコニウム(ZrO)や酸化チタン(TiO)が好ましく、無機粒子Cには5酸化2アンチモンと酸化スズの固溶体であるアンチモン添加酸化スズ(ATO)、5酸化2アンチモン、5酸化2リンと酸化スズの固溶体であるリン添加酸化スズ(PTO)などが好ましい。
【0077】
無機粒子BとCの数平均粒子径は1nm以上150nm以下が好ましい。数平均粒子径は2nm以上100nm以下がさらに好ましく、2nm以上25nm以下が特に好ましく、2nm以上20nm以下が最も好ましい。無機粒子Bの数平均粒子径が1nmよりも小さくなると、他の無機粒子を主として含むこととなる層中の空隙密度が低下することにより透明度が低下することがある。他の無機粒子の数平均粒子径が150nmよりも大きくなると、高屈折率層の厚さが大きくなりすぎて良好な反射防止性能が得られにくくなる。
【0078】
前述したように無機粒子Bと無機粒子Cの表面電荷の差には前述のように好ましい範囲が存在する。この表面電荷の差を調整する方法には粒子の表面処理があり、これは無機粒子Aに対して施されるフッ素化合物Aによる処理と同様に化学的に修飾し、無機粒子B、または無機粒子Cに化合物を導入する工程を指し、一段階で行われても良いし、多段階で行われても良い。なお、この処理に用いる化合物は、化合物Bが好ましい。
【0079】
この化合物Bは、前記一般式(I)で示される化合物である。
【0080】
化合物Bは、粒子表面に化学結合や吸着可能な部位(一般式(I)における、Si−(OR4−n1部分)と、アルキル基部分(Rn1)を有する化合物である。
【0081】
この場合、粒子表面に化学結合や吸着可能な部位しては、アルコキシシリル基及びアルコキシシリル基が加水分解されたシラノール基が挙げられる。これら化合物は一般的にシリル化剤と呼ばれる。化合物Bによる無機粒子Bまたは無機粒子Cの処理の一つの方法には、上記化合物Bと無機粒子B、もしくは無機粒子Bの粒子分散物と触媒、水、溶媒等とを共に撹拌、加熱、脱アルコール等し、粒子表面のシラノール基と縮合させることによりなされる方法がある。ここでいう粒子分散物については、前述の通りである。
【0082】
化合物Bの具体例としては、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン及びこれら化合物中のメトキシ基が他のアルコキシル基及び水酸基に置換された化合物を含むものなどが挙げられる。
[バインダー原料]
本発明の塗料組成物はバインダー原料を含むことが重要である。バインダー原料の定義については前述の通りである。
【0083】
本発明の塗料組成物中のバインダー原料は構造を特に限定するものではないが、前述のようにバインダー原料に1分子あたり3個以上の反応性部位を有し、JIS K 0070−1992に基づく水酸基価が5以上20以下であるであることが好ましい。
【0084】
さらにUVにより硬化する場合は、酸素阻害を防ぐことができることから酸素濃度ができるだけ低い方が好ましく、嫌気性雰囲気下で硬化する方がより好ましい。酸素濃度を下げることにより最表面の硬化状態が向上し、耐薬品耐性が良化する場合がある。
【0085】
このような塗料組成物中のバインダー原料は、具体的には多官能アクリレートモノマー、オリゴマー、アルコキシシラン、アルコキシシラン加水分解物、アルコキシシランオリゴマー等が好ましく、多官能アクリレートモノマー、オリゴマーがより好ましい。
【0086】
多官能アクリレートモノマーの例としては、1分子中に、3個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する多官能アクリレートおよびその変性ポリマー、具体的な例としては、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートなどを用いることができる。
【0087】
これらの単量体は、1種または2種以上を混合して使用することができる。また、市販されている多官能アクリル系組成物としては三菱レイヨン株式会社;(商品名“ダイヤビーム”シリーズなど)、長瀬産業株式会社;(商品名“デナコール”シリーズなど)、新中村化学株式会社;(商品名“NKエステル”シリーズなど)、DIC株式会社;(商品名“UNIDIC”など)、東亞合成化学工業株式会社;(“アロニックス”シリーズなど)、日本油脂株式会社;(“ブレンマー”シリーズなど)、日本化薬株式会社;(商品名“KAYARAD”シリーズなど)、共栄社化学株式会社;(商品名“ライトエステル”シリーズなど)などを挙げることができ、これらの製品を利用することができる。
[溶媒]
本発明の塗料組成物は溶媒を含むことが好ましい。この本発明における「溶媒」とは、塗工後の乾燥工程にてほぼ全量を蒸発させることが可能な常温、常圧での液体である物質を指す。本発明の塗料組成物は、2種類以上の溶媒を含む。溶媒の種類数としては2種類以上20種類以下が好ましく、より好ましくは2種類以上10種類以下、さらに好ましくは2種類以上6種類以下である。
【0088】
ここで、溶媒の種類とは、溶媒を構成する分子構造によって決まる。すなわち、同一の元素組成で、かつ官能基の種類と数が同一であっても結合関係が異なるもの(構造異性体)、前記構造異性体ではないが、3次元空間内ではどのような配座をとらせてもぴったりとは重ならないもの(立体異性体)は、種類の異なる溶媒として取り扱う。例えば、2−プロパノールと、1−プロパノールは異なる溶媒として取り扱う。
[その他の添加剤]
本発明の塗料組成物としては、更に光重合開始剤や硬化剤や触媒を含むことが好ましい。
【0089】
光重合開始剤及び触媒は、無機粒子A間、無機粒子間、バインダー原料間、無機粒子Aとバインダー原料間の反応を促進するために用いられる。該開始剤としては、塗料組成物をアニオン、カチオン、ラジカル反応等による重合および/または縮合および/または架橋反応を開始あるいは促進できるものが好ましい。
【0090】
該開始剤、該硬化剤、及び触媒は、種々のものを使用できる。また、複数の開始剤を同時に用いても良いし、単独で用いても良い。さらに、酸性触媒や、熱重合開始剤や光重合開始剤を併用しても良い。酸性触媒の例としては、塩酸水溶液、蟻酸、酢酸などが挙げられる。熱重合開始剤の例としては、過酸化物、アゾ化合物が挙げられる。また、光重合開始剤の例としては、アルキルフェノン系化合物、含硫黄系化合物、アシルホスフィンオキシド系化合物、アミン系化合物などが挙げられるがこれらに限定されるものではないが、硬化性の点から、アルキルフェノン系化合物が好ましく、具体例としては、2.2−ジメトキシ−1.2−ジフェニルエタン−1−オン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−フェニル)−1−ブタン、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−(4−フェニル)−1−ブタン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−1−ブタン、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルフォリニル)フェニル]−1−ブタン、1−シクロヒキシル−フェニルケトン、2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−[4−(2−エトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、などが挙げられる。
【0091】
なお、該開始剤及び該硬化剤の含有割合は、塗料組成物中のバインダー原料の合計100質量部に対して0.001質量部から30質量部が好ましく、より好ましくは0.05質量部から20質量部であり更に好ましくは0.1質量部から10質量部である。
【0092】
本発明の塗料組成物には更に、界面活性剤、増粘剤、レベリング剤などの添加剤を必要に応じて適宜含有させても良い。
【0093】
また、本発明の塗料組成物を用いたより好ましい製造方法として、支持基材上にハードコート層を設けずに透明基材上に高屈折率ハードコート層を直接形成する場合には、本願塗料組成物に上記添加物のほかに、フルオロアルキル基及び反応性部位を有するフッ素化合物Bを含むことが好ましい。
【0094】
フッ素化合物Bが有するフルオロアルキル基は、炭素数4〜7の直鎖状または分岐状のフルオロアルキル基Rf3であることが好ましい。フルオロアルキル基Rf3は、塗料組成物の乾燥時のフッ素処理粒子同士の粒子間相互作用の抑制の点から炭素数4以上10以下が好ましく、さらに好ましくは炭素数6以上である。また分岐状に比べ直鎖状か立体障害が小さく、成分Aに吸着し易い点から直鎖状が好ましい。フルオロアルキル基を、炭素数4〜8の直鎖状または分岐状のフルオロアルキル基Rf3とすることにより、粒子の分離性が良化し、屈折率の異なる2層の自発的な層形成が容易になり、反射防止性が良化するため好ましい。このフッ素化合物Bは、前述の一般式(II)の化合物、またはその重合体でもよい。つまりフッ素化合物Bとは、フッ素化合物Aと同一の化合物であっても構わない。フッ素化合物Aは、フッ素処理無機粒子の得るための原料に相当する化合物であり、一方でフッ素化合物Bは、塗料組成物中に含有されるフッ素化合物を意味する。
[塗料組成物中の各成分の含有量]
本発明の塗料組成物は、無機粒子A、無機粒子B、無機粒子Cとバインダー原料を含むが、塗料組成物中のそれぞれの質量関係について説明する。
【0095】
塗料組成物は、無機粒子(無機粒子A,B、Cを含む無機粒子の全成分の合計)/溶媒(溶媒の全成分の合計)=0.05〜0.2(質量比)であることが好ましい。上記範囲にすることにより、無機粒子の分散安定性と、自発的な層構造の形成を両立することができる。
【0096】
更に好ましい様態としては、本発明の塗料組成物は無機粒子Aと無機粒子A以外(無機粒子B,Cを含む)を含み、無機粒子A/非無機粒子A=1/30〜1/1(質量比)であることが好ましい。
【0097】
ここで塗料組成物中の各成分の質量部は、各成分が固体として取り扱える扱える場合には塗料組成物に添加した質量から、各成分が分散物の状態である時には分散物中の固形分濃度を後述する方法で求め、それに塗料組成物に添加した分散物の質量を乗ずることにより求められる。
【0098】
塗料組成物は、無機粒子A/非無機粒子A=1/30〜1/1(質量比)とすることで、本塗料組成物を基材上に塗工して得られる反射防止部材の低屈折率層の厚みと高屈折率層の厚みの比を一定にすることができる。このため1回の塗工で、低屈折率層と高屈折率層の厚みを同時に、反射防止機能を有する厚みとすることが容易であるため好ましい。また高屈折率層の厚みを厚くし、ハードコート機能を付与しようとする場合にも、反射防止機能を損なうことなく、
1回の塗工で必要な厚みとすることができるため、反射防止機能とハードコート機能の両立の点から無機粒子A/非無機粒子Aを上記範囲とすることが可能となるため好ましい。
【0099】
塗料組成物は、より好ましくは無機粒子A/非無機粒子A=1/29〜1/5(質量比)、さらに好ましくは1/26〜1/10(質量比)、特に好ましくは1/23〜1/15(質量比)である。
【0100】
また好ましくは、本発明の塗料組成物100質量%において、無機粒子の合計が0.2質量%以上40質量%以下、溶媒の合計が40質量%以上98質量%以下、バインダー原料が1質量%以上30質量%以下、開始剤、硬化剤、触媒、およびフッ素化合物Bなどのその他の成分が0.1質量%以上20質量%以下の態様である。より好ましくは、無機粒子の合計が1質量%以上35質量%以下、溶媒の合計が50質量%以上97質量%以下、バインダー原料を2質量%以上25質量%以下、その他の成分を1質量%以上15質量%以下含む態様である。
[反射防止部材]
本発明の塗料組成物を用いて得られる反射防止部材とは、各種支持基材の少なくとも片面に反射防止機能を有する層が形成された部材を指し、支持基材がプラスチックフィルムの場合には一般に反射防止フィルムと呼ばれる。その必要性や要求される性能などは特開昭59−50401号公報に記載されている様に、好ましくは0.03以上、より好ましくは0.05以上の屈折率差を有する2層以上の反射防止層を支持基材上に積層させることで構成された様態である。また支持基材上の層、つまり反射防止層内の各層の屈折率差は5.0以下であることが好ましい。この屈折率差とは隣接する層間の屈折率を相対的に比較した値であり、相対的に屈折率が低い層を低屈折率層と呼び、相対的に屈折率が高い層を高屈折率層と呼ぶ。
【0101】
図1に本発明の塗料組成物により得られる反射防止部材の1例を示す。反射防止部材1は、支持基材2の片面上のハードコート層5の上に、屈折率の異なる2層からなる反射防止層が形成されている。反射防止層は最表面側に低屈折率層4、次いで高屈折率層3から構成される、支持基材上に3つの層が形成されている。この構成の場合には、支持基材上に通常は3回の塗工を必要とするが、本発明の塗料組成物を用いることにより、2回(ハードコート層と反射防止層)の塗工で形成することが可能になる。
【0102】
図2により好ましい例として、ハードコート層の代わりに、高屈折率層に耐傷性を付与させ、高屈折率ハードコート層6を設けた例を示す。高屈折率ハードコート層は、支持基材2と低屈折率層3との接着を強化する機能も有する。この構成の場合には、支持基材上に通常は2回の塗工を必要とするが、高屈折率ハードコート層の強度は、1kg荷重の鉛筆硬度で、H以上であることが好ましく、2H以上であることがさらに好ましく、3H以上であることが最も好ましい。本発明の塗料組成物を用いることにより、1回の塗工で形成することが可能である。
【0103】
なお、このような本発明の反射防止部材中の反射防止層には、屈折率の異なる2層以上の層である高屈折率層と低屈折率層との間には粒子の配列による明確な界面があることが好ましい。
【0104】
本発明における明確な界面とは、1つの層と他の層とが区別可能な状態をいう。区別可能な界面とは、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて断面を観察することにより判断することができる界面を表し、後述する方法に従い判断することができる。
【0105】
反射防止部材として良好な性能を示すには、分光測定に置いて最低反射率が好ましくは0%以上1.0%以下、より好ましくは0%以上0.8%以下、さらに好ましくは0%以上0.6%以下であり、特に好ましくは0%以上0.5%以下であることが望ましい。
【0106】
また、反射防止部材として良好な性質を示すには更に、透明性が高いことが望ましい。透明性が低いと画像表示装置として用いた場合、画像彩度の低下などによる画質低下が生じるために好ましくない。本発明の製造方法により得られる反射防止部材の透明性の評価にはヘイズ値を用いることができる。ヘイズはJIS K 7136(2000)に規定された透明性材料の濁りの指標である。ヘイズは小さいほど透明性が高いことを示す。反射防止部材のヘイズ値としては好ましくは2.0%以下であり、より好ましくは1.8%未満、更に好ましくは1.5%未満であり、値が小さいほど透明性の点で良好であるものの、0%とすることは困難であり、現実的な下限値は0.01%程度と思われる。ヘイズ値が2.0%を超えると、画像劣化が生じる可能性が高くなるため好ましくない。
【0107】
反射防止部材として良好な性質を示すには、高屈折率層、低屈折率の厚みが特定の厚みであることが望ましく、低屈折率層の厚みが好ましくは50nm以上200nm以下、さらに好ましくは70nm以上150nm以下であり、特に好ましくは90nm以上130nm以下であることが望ましい。低屈折率層の厚みが50nm未満であると光の干渉効果が得られず反射防止効果が得られず画像の映り込みが大きくなるために好ましくない。また200nmを超える場合も光の干渉効果が得られなくなるため画像の映り込みが大きくなるために好ましくない。
【0108】
高屈折率層の厚みについては好ましくは50nm以上200nm以下、さらに好ましくは70nm以上150nm以下であり、特に好ましくは90nm以上130nm以下であることが望ましい。
【0109】
また、支持基材上にハードコート層を設けずに高屈折率層を形成する場合は、好ましくは500nm以上2000nm以下、さらに好ましくは600nm以上2000nm以下、特に好ましくは600nm以上1500nm以下であることが望ましい。反射防止層側の最表層から2層目の層(第2層)の厚みを500nm以上2000nm以下とすることで、耐擦傷性、耐摩耗性と、反射防止部材のカールや反射率、透過率の改善、塗膜表面のクラック発生を抑制することができるために望ましい。
【0110】
本発明の反射防止部材には、さらに、易接着層、防湿層、帯電防止層、シールド層、下塗り層や保護層などを設けてもよい。シールド層は、電磁波や赤外線を遮蔽するために設けられる。
[支持基材]
反射防止部材をCRT画像表示面やレンズ表面に直接設ける場合を除き、反射防止部材は支持基材を有することが重要である。支持基材に特に限定はないが、ガラス板よりもプラスチックフィルムの方が好ましい。プラスチックフィルムの材料の例には、セルロースエステル(例、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、プロピオニルセルロース、ブチリルセルロース、アセチルプロピオニルセルロース、ニトロセルロース)、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエステル(例、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート、ポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン−1,2−ジフェノキシエタン−4,4’−ジカルボキシレート、ポリブチレンテレフタレート)、ポリスチレン(例、シンジオタクチックポリスチレン)、ポリオレフィン(例、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメチルペンテン)、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリメチルメタクリレート及びポリエーテルケトンなどが含まれるが、これらの中でも得にトリアセチルセルロース、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレートおよびポリエチレンナフタレートが好ましい。
【0111】
本発明の塗料組成物を基材上に塗工して得られた反射防止部材、および本発明の反射防止部材の製造方法により得られた反射防止部材の好ましい態様では、上述のような耐擦傷性が十分でないプラスチックを支持基材に使用しても、高屈折率層の厚みを制御することで反射防止性に加えて耐擦傷性も付与できるため、公知技術のように、支持基材上にハードコート層を設ける必要は必ずしもない。また上述のように、支持基材は接着層、シールド層、滑り層などの各種機能層を有するフィルムとすることもできる。
【0112】
支持基材の塗料組成物を塗工する側の面の表面粗さは40nm以下であるのが好ましい。表面粗さは35nm以下がさらに好ましく、30nm以下が特に好ましい。ここで反射防止層以外の機能層を有するガラス板やプラスチックフィルムを支持基材とし、機能層の上に塗料組成物を塗工する場合、塗料組成物を塗工する側の面の表面粗さとは、機能層の表面の表面粗さではなく、機能層が積層されている側のガラス板またはプラスチックフィルムの表面粗さである。また、各種の処理が施されたガラス板やプラスチックフィルムを支持基材とし、処理が施された面に塗料組成物を塗工する場合、塗料組成物を塗工する側の面の表面粗さとは、処理が施されている側のガラス板またはプラスチックフィルムの表面粗さである。
【0113】
支持基材の表面には、各種の表面処理を施すことも可能である。表面処理の例には、薬品処理、機械的処理、コロナ放電処理、火焔処理、紫外線照射処理、高周波処理、グロー放電処理、活性プラズマ処理、レーザー処理、混酸処理およびオゾン酸化処理が含まれる。これらの中でもグロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ放電処理および火焔処理が好ましく、グロー放電処理と紫外線処理がさらに好ましい。
[無機粒子A,B,Cの製造方法]
無機粒子A,B,Cの製造方法は、各種顔料、無機化合物取り扱いメーカーから粉体状態、または溶媒(分散媒とも呼ばれる)に分散された粒子分散物(粒子分散液、コロイド溶液、またはゾルとも呼ばれる)の形で入手したいずれの無機粒子に対して、必要に応じて表面処理を行うことで得ることができるが、粒子分散物の形で入手した無機粒子に対して処理を行う方が、粗大粒子の除去や塗料組成物の分散安定性の面で好ましい。
【0114】
無機粒子A、および無機粒子B,Cに表面処理を行う場合は、前記無機粒子または前記粒子分散物に対してフッ素化合物Aを含む各種化合物、溶媒、反応触媒、重合開始剤、反応停止剤、重合禁止剤、凝集防止剤、分散剤等を添加し、混合、攪拌しながら、加熱または冷却状態で反応させることにより得られ、加えてエバポレーターや逆浸透膜による脱アルコール処理、モレキュレーシーブによる脱水処理、イオン交換樹脂、イオン交換膜によるイオン交換処理などをおこなってもよい。
【0115】
表面処理時の固形分濃度は、可能な範囲で低い濃度であることが好ましく、1質量%以上60質量%以下、より好ましくは5質量%以上50質量%以下であり、これよりも固形分濃度が低すぎると反応を十分に進めることができず、これよりも高すぎると、無機粒子の凝集による異物の発生、さらにはゲル化、凝集、沈降を起こす場合がある。また、反応終了後は、安定性を付与するため溶媒による希釈や、反応停止剤、重合禁止剤、凝集防止剤を添加してもよい。
【0116】
処理は複数の反応系を組み合わせて行ってもよく、例えば、シラノール縮合による処理とラジカル重合による処理を組み合わせてもよい。この際には、同時、逐次いずれの方法でもよいが、逐次的に行う方がより好ましい。
[塗料組成物の製造方法]
塗料組成物は、無機粒子A,B、C、バインダー原料、他添加物(溶媒、開始剤、硬化剤、触媒等)、疎水性化合物Bを混合して得られる。その製造方法は、前記成分の処方量を質量、または体積で計量し、これらを攪拌により混合することにより得られる。この時、加えて減圧や逆浸透膜による脱溶媒処理、モレキュレーシーブによる脱水処理、イオン交換樹脂によるイオン交換処理などをおこなってもよい。
【0117】
無機粒子A、B,Cは粒子分散物、粉体いずれの形で添加してもよいが、粒子分散物の形で取り扱うことが凝集、異物発生を防止する面で好ましい。粉体を原料としてとり扱う場合には、メディア型分散機などの各種分散機により溶媒(分散媒)に分散する工程を経た方が好ましい。粒子分散物として添加する場合の処方量は、粒子分散物の固形分濃度と粒子分散物の質量の積から求めた粒子の質量を用いることできる。
【0118】
この固形分濃度の測定は、粒子分散物を、アルミ皿(この質量をWとする)に約2gを秤量後(この質量をWとする)、120℃の熱風オーブン内で1時間乾燥、デシケーター中で室温まで冷却後、秤量(この質量をWとする)し、下記の式に従って固形分濃度を求めることができる。
固形分濃度 =(W−W)/(W−W)×100
得られた塗料組成物は、塗工する前に適当なろ過処理を行ってもよい。この適当なろ過処理とは、溶媒、粒子の表面の極性状態に合わせたフィルター材料、フィルター目開きを選択し、粒子分散物の分散状態を破壊しないせん断速度、フィルター構造に合わせた圧力条件にてろ過することがより好ましい。
[反射防止部材の製造方法]
本発明の反射防止部材の製造方法としては、支持基材の少なくとも片面に、本発明の塗料組成物を1回のみ塗工することにより形成される1層の液膜が、前記2層からなる反射防止層を形成する方法であることが望ましい。この製造方法は、塗工工程で2つの層を形成できるため経済性の面で好ましい。
【0119】
ここで、支持基材の少なくとも片面に塗料組成物を1回のみ塗工することにより形成される1層の液膜とは、支持基材に対して1回の塗工工程にて1種類の塗料組成物からなる1層の液膜を形成することを指し、1回の塗工工程にて複数層からなる液膜を同時に1回塗工する多層同時塗工や、1回の塗工時に1層の液膜を複数回の塗工、乾燥工程を有する連続逐次塗工、1回の塗工時に1層の液膜を複数回の塗工し、次いで乾燥する、ウェットオンウェット塗工などを行わないことを指す。
【0120】
まず、本発明の塗料組成物を、ディップコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法やダイコート法(米国特許2681294号明細書参照)などにより支持基材上に塗工する。
【0121】
これらの塗工方式のうち、グラビアコート法または、ダイコート法が塗工方法として好ましい。
【0122】
次いで、支持基材上に塗工された液膜を乾燥する。得られる反射防止部材中から完全に溶媒を除去する事に加え、自発的に層構造を形成させるために液膜中での粒子の運動を促進するという観点からも、乾燥工程では液膜の加熱を伴うことが好ましい。
【0123】
乾燥方法については、伝熱乾燥(高熱物体への密着)、対流伝熱(熱風)、輻射伝熱(赤外線)、その他(マイクロ波、誘導加熱)などが挙げられる。この中でも、本発明の製造方法では、精密に幅方向で乾燥速度を均一にする必要から、対流伝熱、または輻射伝熱を使用した方式が好ましい。
【0124】
さらに、乾燥工程後に形成された支持基材上の2層に対して、熱またはエネルギー線を照射する事によるさらなる硬化操作(硬化工程)を行ってもよく、エネルギー線により硬化する場合には汎用性の点から電子線(EB線)及び/又は紫外線(UV線)であることが好ましい。また紫外線により硬化する場合は、酸素阻害を防ぐことができることから酸素濃度ができるだけ低い方が好ましく、窒素雰囲気下(窒素パージ)で硬化する方がより好ましい。
【0125】
硬化を熱により行う場合、乾燥工程と硬化工程とを同時におこなってもよい。また本発明の反射防止部材は、PDPなどの各種画像表示装置の視認側表面に設けることで、反射防止性に優れた画像表示装置を提供することができる。なおこの際は、反射防止部材における支持基材側を画像表示装置側として、反射防止部材などを設けることが重要である。
【実施例】
【0126】
次に、実施例に基づいて本発明を説明するが、本発明は必ずしもこれらに限定されるものではない。
[無機粒子Aの調製]
[無機粒子A分散物(a)]
中空シリカ粒子イソプロピルアルコール分散物(日揮触媒化成株式会社製中空シリカ:固形分濃度20質量%、数平均粒子径 60nm)15gに、KBM−503(信越化学工業株式会社製 γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン)1.37gと10質量%蟻酸水溶液0.17g、水0.306gとを混合し、70℃にて1時間撹拌した。次いでフッ素化合物AとしてHC=CHCOO(CH(CFF 1.38g、及び2,2−アゾビスイソブチロニトリル0.057gを加えた後、60分間90℃にて加熱撹拌した。次いで、後述の方法で固形分濃度を確認後、希釈溶媒としてメチルイソブチルケトンを加え希釈し、固形分3.5質量%の無機粒子A分散物(a)とした。
【0127】
[無機粒子A分散物(b)の調製]
無機粒子A分散物(a)に対し、中空シリカ粒子イソプロピルアルコール分散物をコロイダルシリカイソプロピルアルコール分散物(日産化学工業製:固形分濃度30質量%、数平均粒子径 40nm)に置き換えた以外は同様にして、無機粒子A分散物(b)を得た。
【0128】
[無機粒子A分散物(c)の調製]
無機粒子A分散物(a)に対し、フッ素化合物AをHC=CHCOO(CH(CFFに置き換えた以外は同様にして、無機粒子A分散物(c)を得た。
【0129】
[無機粒子A分散物(d)の調製]
無機粒子A分散物(a)に対し、フッ素化合物Aを用いる代わりに、1−6ヘキサンジオールジアクリレートに置き換えた以外は同様にして、無機粒子A分散物(d)を得た。
[無機粒子Bの調製]
[無機粒子B分散物(a)]
酸化チタンメタノール分散物(日揮触媒化成株式会社製:“ELECOM” 数平均粒子径8nm 固形分濃度30質量%)100gに対して、KBM−5103(信越化学工業株式会社製 γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン)1.5gを滴下、均一に攪拌した。 次いで、これに20%酢酸水溶液5gを滴下し、滴下終了後35℃で30分、60℃で3時間反応させた。
さらに、置換溶媒としてメチルイソブチルケトン200gを加え、ロータリーエバポレーターにて、脱メタノール処理を行い、後述の方法で固形分濃度を確認後、最終的にメチルイソブチルケトンで固形分濃度30質量%に調製、精密ろ過をして無機粒子B分散物(a)を得た。
【0130】
[無機粒子B分散物(b)]
無機粒子B分散物(a)に対し、酸化チタンメタノール分散物を酸化ジルコニウムメタノール分散物(日産化学工業株式会社製:“ナノユースOZ−30M” 数平均粒子径15nm 固形分濃度30質量%)に置き換えた以外は同様にして、無機粒子B分散物(b)を得た。
【0131】
[無機粒子B分散物(c)]
無機粒子B分散物(a)に対し、酸化チタンメタノール分散物を酸化亜鉛イソプロピルアルコール分散物(ハクスイテック株式会社製: 数平均粒子径20nm 固形分濃度30質量%)に置き換えた以外は同様にして、無機粒子B分散物(c)を得た。
【0132】
[無機粒子B分散物(d)]
酸化チタンメタノール分散物(日揮触媒化成株式会社製:“ELECOM” 数平均粒子径8nm 固形分濃度30質量%)100gに対して、LS−2430(信越化学工業株式会社製 テトラエトキシラン)3gを滴下、均一に攪拌した。 次いで、これに20%酢酸水溶液5gを滴下し、滴下終了後35℃で30分、60℃で3時間反応させた。
さらに、置換溶媒としてメチルイソブチルケトン200gを加え、ロータリーエバポレーターにて、脱メタノール処理を行い、後述の方法で固形分濃度を確認後、最終的にメチルイソブチルケトンで固形分濃度30質量%に調製、精密ろ過をして無機粒子B分散物(d)を得た。
【0133】
[無機粒子B分散物(e)]
無機粒子B分散物(a)に対し、酸化チタンメタノール分散物を酸化アルミニウムメタノール
分散物(日産化学工業株式会社製: 数平均粒子径15nm 固形分濃度30質量%)に置き換えた以外は同様にして、無機粒子B分散物(e)を得た。
【0134】
[無機粒子Cの調製]
[無機粒子C分散物(a)]
5酸化2アンチモン−酸化亜鉛複酸化物メタノール分散物(日産化学株式会社製:“セルナックスCX−Z610M−F2” 固形分濃度60質量% 数平均粒子径 20nm)50gに、KBM−5103(信越化学工業株式会社製 γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン)3gを滴下、均一に攪拌した。 次いで、これに20%酢酸水溶液2.5gを滴下し、滴下終了後35℃で30分、60℃で3時間反応させた。
さらに、置換溶媒としてメチルイソブチルケトン200gを加え、ロータリーエバポレーターにて、脱メタノール処理を行い、後述の方法で固形分濃度を確認後、最終的にメチルイソブチルケトンで固形分濃度30質量%に調製、精密ろ過をして無機粒子C分散物(a)を得た。
【0135】
[無機粒子C分散物(b)]
アンチモン添加酸化スズエタノール分散物(日揮触媒化学株式会社製:“ELECOM” 固形分濃度20質量% 8nm)150gに、KBM−5103(信越化学工業株式会社製 γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン)4.5gを滴下、均一に攪拌した。 次いで、これに20%酢酸水溶液7.5gを滴下し、滴下終了後35℃で30分、60℃で3時間反応させた。さらに、置換溶媒としてメチルイソブチルケトン200gを加え、ロータリーエバポレーターにて、脱メタノール処理を行い、後述の方法で固形分濃度を確認後、最終的にメチルイソブチルケトンで固形分濃度30質量%に調製、精密ろ過をして無機粒子C分散物(b)を得た。
【0136】
[無機粒子C分散物(c)]
無機粒子C分散物(a)に対して、5酸化2アンチモン−酸化亜鉛複酸化物メタノール分散物の代わりに酸素欠損型酸化スズエタノール分散物(CIKナノテック株式会社製: 固形分濃度30質量% 10nm)100gに置き換えた以外は同様にして、無機粒子C分散物(c)を得た。
【0137】
[無機粒子C分散物(d)]
5酸化2アンチモン−酸化亜鉛複酸化物メタノール分散物(日産化学株式会社製:“セルナックスCX−Z610M−F2” 固形分濃度60質量% 数平均粒子径 20nm)50gに、KBM−5103(信越化学工業株式会社製 γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン)0.9gを滴下、均一に攪拌した。 次いで、これに20%酢酸水溶液2.5gを滴下し、滴下終了後35℃で30分、60℃で3時間反応させた。
【0138】
さらに、置換溶媒としてメチルイソブチルケトン200gを加え、ロータリーエバポレーターにて、脱メタノール処理を行い、後述の方法で固形分濃度を確認後、最終的にメチルイソブチルケトンで固形分濃度30質量%に調製、精密ろ過をして無機粒子C分散物(d)を得た。
【0139】
[無機粒子C分散物(e)]
5酸化2アンチモン−酸化亜鉛複酸化物メタノール分散物(日産化学株式会社製:“セルナックスCX−Z610M−F2” 固形分濃度60質量% 数平均粒子径 20nm)50gに、KBM−5103(信越化学工業株式会社製 γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン)30gを滴下、均一に攪拌した。 次いで、これに20%酢酸水溶液5g、イオン交換水2gを滴下し、滴下終了後35℃で30分、60℃で3時間反応させた。
【0140】
さらに、置換溶媒としてメチルイソブチルケトン200gを加え、ロータリーエバポレーターにて、脱メタノール処理を行い、後述の方法で固形分濃度を確認後、最終的にメチルイソブチルケトンで固形分濃度30質量%に調製、精密ろ過をして無機粒子C分散物(e)を得た。
【0141】
[無機粒子C分散物(f)]
無機粒子B分散物(e)と同様の方法により作成した。
【0142】
[塗料組成物]
[塗料組成物1〜23の調製〕
[塗料組成物1]
下記材料を混合し、塗料組成物1を得た。
無機粒子A分散物(a) 43 質量部
無機粒子B分散物(a) 14 質量部
無機粒子C分散物(a) 14 質量部
バインダー原料(a)ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
(NKエステル A−9570 新中村化学株式会社製:固形分100質量%)
5.8 質量部
溶媒(メチルイソブチルケトン) 4.2 質量部
溶媒(ジイソブチルケトン) 10.0質量部
光重合開始剤(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン)
0.3 質量部
疎水性化合物B(R1820(ダイキン株式会社製:固形分100質量%)
8.7 質量部
[塗料組成物2〜3、6,15〜16、21〜23]
塗料組成物1に対して、表1に示すように無機粒子A分散物(a)、無機粒子B分散物(a)、無機粒子C分散物(a)を置き換えた以外は同様にして塗料組成物2〜3、6,13、15〜17、20〜23を得た。
【0143】
[塗料組成物4]
下記材料を混合し、塗料組成物4を得た。
無機粒子A分散物(a) 43 質量部
無機粒子B分散物(b) 14.3質量部
無機粒子C分散物(a) 13.6質量部
バインダー原料(a)ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
(NKエステル A−9570 新中村化学株式会社製:固形分100質量%)
5.8 質量部
溶媒(メチルイソブチルケトン) 4.2 質量部
溶媒(ジイソブチルケトン) 10.0質量部
光重合開始剤(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン)
0.3 質量部
疎水性化合物B(R1820(ダイキン株式会社製:固形分100質量%)
量部
[塗料組成物5]
下記材料を混合し、塗料組成物5を得た。
無機粒子A分散物(a) 43 質量部
無機粒子B分散物(c) 15.3質量部
無機粒子C分散物(a) 12.6質量部
バインダー原料(a)ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
(NKエステル A−9570 新中村化学株式会社製:固形分100質量%)
5.8 質量部
溶媒(メチルイソブチルケトン) 4.2 質量部
溶媒(ジイソブチルケトン) 10.0質量部
光重合開始剤(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン)
0.3 質量部
疎水性化合物B(R1820(ダイキン株式会社製:固形分100質量%)
質量部
[塗料組成物7]
下記材料を混合し、塗料組成物7を得た。
無機粒子A分散物(a) 43 質量部
無機粒子B分散物(a) 11.3質量部
無機粒子C分散物(c) 16.7質量部
バインダー原料(a)ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
(NKエステル A−9570 新中村化学株式会社製:固形分100質量%)
5.8 質量部
溶媒(メチルイソブチルケトン) 4.2 質量部
溶媒(ジイソブチルケトン) 10.0質量部
光重合開始剤(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン)
0.3 質量部
疎水性化合物B(R1820(ダイキン株式会社製:固形分100質量%)
質量部
[塗料組成物8]
下記材料を混合し、塗料組成物8を得た。
無機粒子A分散物(a) 43 質量部
無機粒子B分散物(a) 11 質量部
無機粒子C分散物(c) 17 質量部
バインダー原料(a)ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
(NKエステル A−9570 新中村化学株式会社製:固形分100質量%)
5.8 質量部
溶媒(メチルイソブチルケトン) 4.2 質量部
溶媒(ジイソブチルケトン) 10.0質量部
光重合開始剤(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン)
0.3 質量部
疎水性化合物B(R1820(ダイキン株式会社製:固形分100質量%)
質量部
[塗料組成物9]
塗料組成物1に対してバインダー原料(a)を、(b)ビスフェノールAEO変性ジアクリレート(MIWON Commercial Co.Ltd製 Miramer M240:固形分100質量%)に置き換えた以外は同様にして、塗料組成物9を得た。
【0144】
[塗料組成物10]
塗料組成物1に対してバインダー原料(a)を、(c)ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート(MIWON Commercial Co.Ltd製 MiramerM410:固形分100質量%)に置き換えた以外は同様にして、塗料組成物10を得た。
【0145】
[塗料組成物11]
塗料組成物1に対してバインダー原料(a)を、(d)ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬株式会社製 DPHA 固形分100質量%)に置き換えた以外は同様にして、塗料組成物11を得た。
【0146】
[塗料組成物12]
塗料組成物1に対してバインダー原料(a)を、(e)ペンタエリスリトールトリアクリレート(日本化薬株式会社製 PET30 固形分100質量%)に置き換えた以外は同様にして、塗料組成物12を得た。
【0147】
[塗料組成物13]
塗料組成物1に対してバインダー原料(a)を、(f)ペンタエリスリトールトリアクリレート(ダイセルサイテック株式会社 PETRA 固形分100質量%)に置き換えた以外は同様にして、塗料組成物13を得た。
【0148】
[塗料組成物14]
下記材料を混合し、塗料組成物14を得た。
無機粒子A分散物(a) 43 質量部
無機粒子B分散物(a) 15.6質量部
無機粒子C分散物(a) 12.3質量部
バインダー原料(a)ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
(NKエステル A−9570 新中村化学株式会社製:固形分100質量%)
5.8 質量部
溶媒(メチルイソブチルケトン) 4.2 質量部
溶媒(ジイソブチルケトン) 10.0質量部
光重合開始剤(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン)
0.3 質量部
疎水性化合物B(R1820(ダイキン株式会社製:固形分100質量%)
質量部
[塗料組成物17]
下記材料を混合し、塗料組成物17を得た。
無機粒子B分散物(a) 14.0質量部
無機粒子C分散物(a) 14.0質量部
バインダー原料(a)ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
(NKエステル A−9570 新中村化学株式会社製:固形分100質量%)
5.8 質量部
溶媒(メチルイソブチルケトン) 47.2質量部
溶媒(ジイソブチルケトン) 10.0質量部
光重合開始剤(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン)
0.3 質量部
疎水性化合物B(R1820(ダイキン株式会社製:固形分100質量%)
質量部
[塗料組成物18]
下記材料を混合し、塗料組成物18を得た。
無機粒子A分散物(a) 43 質量部
無機粒子C分散物(a) 14.0質量部
バインダー原料(a)ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
(NKエステル A−9570 新中村化学株式会社製:固形分100質量%)
5.8 質量部
溶媒(メチルイソブチルケトン) 18.2質量部
溶媒(ジイソブチルケトン) 10.0質量部
光重合開始剤(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン)
0.3 質量部
疎水性化合物B(R1820(ダイキン株式会社製:固形分100質量%)
質量部
[塗料組成物19]
下記材料を混合し、塗料組成物18を得た。
無機粒子A分散物(a) 43 質量部
無機粒子B分散物(a) 14.0質量部
バインダー原料(a)ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
(NKエステル A−9570 新中村化学株式会社製:固形分100質量%)
5.8 質量部
溶媒(メチルイソブチルケトン) 18.2質量部
溶媒(ジイソブチルケトン) 10.0質量部
光重合開始剤(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン)
0.3 質量部
疎水性化合物B(R1820(ダイキン株式会社製:固形分100質量%)
質量部
[塗料組成物20]
下記材料を混合し、塗料組成物20を得た。
無機粒子A分散物(a) 43 質量部
無機粒子B分散物(a) 14 質量部
無機粒子C分散物(a) 14 質量部
溶媒(メチルイソブチルケトン) 10.0質量部
溶媒(ジイソブチルケトン) 10.0質量部
光重合開始剤(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン)
0.3 質量部
疎水性化合物B(R1820(ダイキン株式会社製:固形分100質量%)
質量部
[反射防止部材の作製]
支持基材としてPET樹脂フィルム上に易接着性塗料が塗工されている“ルミラー”U46(東レ(株)製)を用いた。
【0149】
前記塗料組成物1〜23を搬送速度10m/minの条件でグラビアコーターを有する連続塗工装置を用いて塗工した。
【0150】
第1乾燥
送風温湿度 : 温度:45℃、 相対湿度:10%
風速 : 塗工面側:5m/s、反塗工面側:5m/s
風向 : 塗工面側:基材に対して平行、反塗工面側:基材に対して垂直
滞留時間 : 1分間
第2乾燥
送風温湿度 : 温度:100℃、相対湿度:1%
風速 : 塗工面側:5m/s、反塗工面側:5m/s
風向 : 塗工面側:基材に対して垂直、反塗工面側:基材に対して垂直
滞留時間 : 1分間
硬化工程
照射出力 600W/cm積算光量120mJ/cm
酸素濃度 0.1体積%
なお、風速、温湿度は熱線式風速計(日本カノマックス株式会社 アネモマスター風速・風量計 MODEL6034)による測定値を使用した。以上の方法により、実施例1〜16、比較例1〜7の反射防止部材を作成した。
[塗料組成物の評価方法]
[無機粒子A,B、Cの屈折率]
前述の無機粒子A分散液(a)〜(d)、無機粒子B分散液(a)〜(e)、および無機粒子C分散液(a)〜(f)をエバポレーターに採り、分散媒を蒸発させる。これを120℃で乾燥、粉砕して、無機粒子A,B、Cの粉末を作成する。屈折率が既知である標準屈折液を2,3滴ガラス板上に滴下し、これに上記粉末を混合する。上記の操作を種々の標準屈折液で行い、混合液を低圧ナトリウムランプ(ナトリウムのD線)の透過光のもとで観察し、上記混合液(ペースト状)が透明になったときの標準屈折液を無機粒子の屈折率として測定した。
【0151】
[無機粒子B,Cの体積抵抗率]
無機粒子B,Cの体積抵抗率は、前述の無機粒子A,B、Cの屈折率測定法と同様の方法で無機粒子A,B、Cの粉末を作成し、これを三菱化学株式会社製粉体抵抗率測定システム( MCP−PD51型)を用い、無機粒子2.5gに20kNの荷重を与えた条件下で測定した。
【0152】
[バインダー原料の水酸基価]
バインダー原料をJIS K0070(1992)の水酸基価測定法に基づいて、中和滴定法により水酸基価の測定を行った。
【0153】
[無機粒子B,Cの表面電荷量]
無機粒子B,Cの表面電荷量は、表面電位滴定装置(BTG株式会社製Mutek PCD−04)を用い、無機粒子B分散液(a)〜(e)、無機粒子C分散液(a)〜(f)をイソプロピルアルコールで希釈して、無機粒子B、あるいは無機粒子Cとしての濃度が1重量%である分散体を調製し、測定容器に注ぎ、粒子電荷とは反対電荷を有するポリマーを用いて滴定することにより測定した。このときポリマー標準液として、0.001Nのポリ塩化アリルジメチルアンモニウムを用いた。
【0154】
[反射防止部材の評価]
作製した反射防止部材について、次に示す性能評価を実施し、得られた結果を表2に示す。特に断りのない場合を除き、測定は各実施例・比較例において1つのサンプルについて場所を変えて3回測定を行い、その平均値を用いた。
【0155】
[耐擦傷性]
反射防止部材に250g/cm荷重となるスチールウール(#0000)を垂直にあて、1cmの長さを10往復した際に目視される傷の概算本数を記載し、下記のクラス分けを行い3点以上を合格とした。
5点: 0本
4点: 1本以上 5本未満
3点: 5本以上 10本未満
2点: 10本以上 20本未満
1点: 20本以上。
【0156】
[耐摩耗性]
本光製作所製消しゴム摩耗試験機の先端(先端部面積 1cm)に、白ネル〔興和(株)製〕を取り付け、500gの荷重をかけて反射防止部材上を5cm、5000回往復、及び1000g荷重をかけて反射防止部材上を5cm、200回往復摩擦し、下記のクラス分けを行い、3点以上を合格とした。
5点: 傷なし
4点: 1〜10本の傷
3点: 11〜20本の傷
2点: 21本以上の傷
1点: 試験部分の反射防止層が全面剥離。
【0157】
[透明性]
透明性はヘイズ値を測定することにより判定した。測定はJIS K 7136(2000)に基づき、日本電色工業(株)製 ヘイズメーターを用いて、反射防止部材サンプルの支持基材とは反対側(反射防止層側)から光を透過するように装置に置いて測定を行い、ヘイズ値が2.0%以下を合格とした。また、この評価で合格しているものを「白化」が起こっていないものとした。
【0158】
[反射防止性能]
反射防止性能の評価は島津製作所製分光光度計UV−3100を用いて400nmから800nmの波長範囲にて行い、最低反射率(ボトム反射率)を測定し、1.0%以下を合格とした。反射率は波長550nm付近で極小値(最低反射率)となったときの値を示した。
【0159】
[帯電防止性能]
帯電防止性能は、反射防止部材の低屈折率層側の表面抵抗率を、JIS K 6911(1995)に準拠して測定し、表面抵抗率が1×1011になるものを合格とした。
【0160】
表1、2に塗料組成物の組成を、表3に実施例、比較例の構成と得られた反射防止部材の評価結果をまとめた。評価項目において1項目でも合格とならないものについて、課題未達成と判断した。
【0161】
表3に示すように本発明の実施例は、耐擦傷性、耐摩耗性と透明性、反射防止性能いずれにおいても合格しており、本発明が解決しようとする課題を達成している。
【0162】
無機粒子Cの無機粒子Bに対する質量比が、本発明の好ましい範囲を上回っている、実施例8の反射防止部材は、反射防止性能がやや劣っていたが、許容できる範囲であった。
【0163】
バインダー原料の官能基数と、水酸基価が、本発明の好ましい範囲より小さい実施例9の反射防止部材は、耐擦傷性、耐磨耗性、透明性、反射防止性能がやや劣っていたが、許容できる範囲であった。
【0164】
水酸基価が、本発明の好ましい範囲より小さい実施例10の反射防止部材は、透明性、反射防止性能がやや劣っていたが、許容できる範囲であった。
【0165】
水酸基価が、本発明の好ましい範囲より大きい実施例13の反射防止部材は、耐擦傷性、耐磨耗性、透明性、反射防止性能がやや劣っていたが、許容できる範囲であった
無機粒子Cの無機粒子Bに対する質量比が、本発明の好ましい範囲を下回っている、実施例14の反射防止部材は、帯電防止性能がやや劣っていたが、許容できる範囲であった。
表面電荷量の差が、本発明の好ましい範囲より大きい実施例15の反射防止部材は、透明性、反射防止性能がやや劣っていたが、許容できる範囲であった。
【0166】
【表1】

【0167】
【表2】

【0168】
【表3】

【符号の説明】
【0169】
1 反射防止部材
2 支持基材
3 反射防止層
4 低屈折率層
5 高屈折率層
6 高屈折率ハードコート層
【産業上の利用可能性】
【0170】
本発明の塗料組成物、それを用いた反射防止部材の製造方法、及び反射防止部材は、例えば、プラスチック光学部品、タッチパネル、フィルム型液晶素子、プラスチック容器、建築内装材としての床材、壁材、人工大理石等の傷付き(擦傷)防止や汚染防止のための保護コーティング材;フィルム型液晶素子、タッチパネル、プラスチック光学部品等の反射防止膜;各種基材の接着剤、シーリング材;印刷インクのバインダー材等として好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機粒子A、無機粒子B、無機粒子C、及びバインダー原料を含む塗料組成物。
無機粒子A:フッ素化合物Aにより表面処理された無機粒子。
無機粒子B:屈折率が1.65以上の無機粒子。
無機粒子C:体積抵抗率が1×1010(Ω・cm)以下の無機粒子。
【請求項2】
前記バインダー原料が、1分子あたり3個以上の反応性部位を有し、JIS K0070(1992)に基づく水酸基価が20以上150以下であるであることを特徴とする請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項3】
前記無機粒子Cの前記無機粒子Bに対する質量比(「無機粒子Cの質量」/「無機粒子Bの質量」)をC/Bとした際に、該C/Bが0.8以上1.5以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の塗料組成物。
【請求項4】
前記無機粒子Bと前記無機粒子Cの表面電荷量の差が、30μeq/g以下であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の塗料組成物。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−185413(P2012−185413A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−49816(P2011−49816)
【出願日】平成23年3月8日(2011.3.8)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】