説明

塗料組成物、それを用いた塗膜形成方法及び塗膜

【課題】 塗膜面の法線に対して、光の入射角を変化させた時に、鮮やかな有彩色の塗膜から無彩色の塗膜へと劇的に変化する塗膜を形成することができる塗料組成物を提供する。
【解決手段】 (A)角度依存性の干渉効果を有する光輝材である金属酸化物被覆シリカフレーク、及び(B)金属酸化物被覆マイカ及び/又は金属酸化物被覆アルミナフレークを、(A)成分の(B)成分に対する含有比率((A)/(B))が、固形分質量比で1/1.3〜1/6である割合で含有する塗料組成物であって、該塗料組成物を塗装して得られる塗膜のグレイジングアングルにおける(A)成分の干渉色と(B)成分の干渉色が、マンセル表色系の色相環100に対して、(A)成分の干渉色をマンセル表示系における色相0とし、この色相に対して、左廻り+50、右廻り−50で表示した際に、(B)成分の干渉色が、+30〜+50、または−30〜−50の色相範囲にある補色関係にあり、該塗料組成物を塗装して得られる塗膜のグレイジングアングルでの変角分光測色計での彩度(C値)が20以下であって、観察角度をフェイスアングルからグレイジングアングルへと変化させたときに該塗膜の色が有彩色から無彩色に変化することを特徴とする塗料組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗膜面の法線に対して、光の入射角を変化させた時に、鮮やかな有彩色の塗膜から無彩色の塗膜へと劇的に変化する塗膜を形成することができる塗料組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、角度依存性の干渉効果を持つ光輝材を含有する塗料を使用した場合、形成される塗膜の観察角度をフェイスアングルからグレイジングアングルへと変化させることによって得られる正反射光の干渉色相の変化は有彩色から異なった色相の有彩色への変化のみであり、フェイスアングルにおいて有彩色となり、かつグレイジングアングルにおいて無彩色に変化するような効果は得られなかった。
【0003】
たとえば、見る角度により異なる発色を呈する、落ち着きのある2色性を可能にした2色性塗料組成物として、(1)ビヒクル、(2)金属酸化物被覆シリカフレーク顔料、更に必要に応じて(3)光輝性顔料及び/又は着色顔料を含有する2色性塗料組成物が知られている(特許文献1参照)。この発明の場合、「金属酸化物被覆シリカフレーク顔料」と「光輝性顔料及び/又は着色顔料」を含有させることにより、塗装後の塗膜をほぼ真上90度から見た場合と15度程度から見た場合で異なる色を得ることを課題としている。しかしながら、「金属酸化物被覆シリカフレーク顔料」と「光輝性顔料及び/又は着色顔料」が補色の関係とすることは示されておらず、15度程度から見た場合に無彩色にはなっていない。このことから、この発明は、本願発明者が目指している新規な意匠とは異なるものであった。
【0004】
また、塗膜を見る角度によって3色性の意匠を発現可能な光輝性塗料組成物として、ビヒクルおよび2種以上の干渉光輝性顔料を含有するクリヤー塗料組成物であって、上記2種以上の干渉光輝性顔料の中のある一種が(a)平均粒径5〜10μmの干渉光輝性顔料、および他の一種が(b)平均粒径10〜30μmで、かつ(a)の干渉光輝性顔料と非同系の干渉色を発現する干渉光輝性顔料であり、(c){(b)の干渉光輝性顔料の平均粒径−(a)の干渉光輝性顔料の平均粒径=10〜25μm}の関係にある光輝性塗料組成物が知られている(特許文献2参照)。この発明の場合、2種類の干渉光輝性顔料の色相差を特定の範囲にすることにより、シェード部で有色感が得られ、3色性の意匠を発現する3色性塗膜を得ることができることが記載されてる。しかしながら、3色性塗膜は、色相は変化しても有彩色から有彩色への変化であり、フェイスアングルからグレイジングアングルへと変化させたときに該塗膜の色が有彩色から無彩色に変化するという、本願発明者が目指している新規な意匠とは異なるものであった。
【0005】
また、色域の選択度が高い着色光輝性顔料と他の光輝性顔料との相乗効果により、シェード部での白ボケの少ない深み感とハイライト部での高彩度感を呈する塗膜を得ることができるものとして、(a)薄片状基材の表面全体が実質的に、珪素酸化物を主成分とするマトリックス中に着色顔料を分散させた層によって被覆されている第1光輝性顔料、(b)前記第1光輝性顔料と異なる光輝性顔料からなる第2光輝性顔料、および(c)ビヒクルを含有する光輝性塗料組成物であって、第1光輝性顔料と前記第2光輝性顔料との総含有量が、顔料質量含有量(PWC)で、1〜30%である光輝性塗料組成物が知られている(特許文献3参照)。この発明の場合、2種類の光輝性顔料を含有させることにより、シェード部(塗膜を斜めから見た状態)での白ボケのない深み感と、ハイライト部(塗膜を真上から見た状態)での高彩度感を呈する塗膜を形成することを課題としている。しかしながら、第1光輝性顔料の干渉色と第2光輝性顔料の干渉色とが補色の関係とすることは示されておらず、グレイジングアングルにおいて無彩色にはなっていない。このことから、この発明は、本願発明者が目指している新規な意匠とは異なるものであった。
【0006】
また、干渉マイカ顔料含有塗膜に起こる、シェード位置から見た場合に底色が白くなる(無色化する)現象を二酸化チタンコートシリカフレークを用いることで抑制し、透明感に優れた積層パール塗膜を得る方法として、下塗り塗膜及び中塗り塗膜が形成された基材上にマイカベース塗膜を形成する工程;マイカベース塗膜を硬化させないでその上にクリヤー塗膜を形成する工程;及び加熱することによりマイカベース塗膜及びクリヤー塗膜を硬化させる工程;を包含する積層パール塗膜の形成方法において、該マイカベース塗膜を形成するマイカベース塗料が、二酸化チタンコートシリカフレークを、顔料質量含有量(PWC)1〜18%の範囲でを含有し、且つ、該積層パール塗膜の明度がL値で0〜30であることを特徴とする積層パール塗膜の形成方法が知られている(特許文献4参照)。この発明の場合、「マイカベース塗膜」と称して、「二酸化チタン被覆シリカフレーク」が用いられ、シェード位置から見た時に、底色が白くなること(無色化)を抑制し、透明感に優れた積層パール塗膜を得ることを課題としている。すなわち、グレイジングアングルにて、無彩色にならないように、シリカフレークを用いていることが開示されている。また、この発明では、その他の光輝性顔料との併用の示唆はあるものの、二酸化チタン被覆シリカフレーク顔料と補色の関係とすることは示されておらず、グレイジングアングルにおいて無彩色にはなっていない。このことから、この発明は、本願発明者が目指している新規な意匠とは異なるものであった。
【0007】
また、シェード部で高彩度感が得られ、ハイライト部とシェード部とで干渉色の色差が強調され、多色性のある意匠を発現可能な、より高級感のある光輝感を得る塗膜を形成することができる光輝性塗料組成物として、ビヒクル、干渉光輝性顔料および複合酸化物焼成顔料を含有する塗料組成物であって、前記干渉光輝性顔料の干渉色色相をマンセル表示系における色相0とし、マンセル色相環100に対し、左廻り+50、右廻り−50で表示した際に、複合酸化物焼成顔料の干渉色色相Hが、+30〜+50、または−30〜−50の色相範囲にある光輝性塗料組成物が知られている(特許文献5参照)。しかしながら、この発明の場合、干渉光輝性顔料に着色顔料を加えることにより、形成される塗膜は、シェード部で高彩度感が得られ、本願発明者が目指しているグレイジングアングルにおいて無彩色となる新規な意匠とは異なるものであった。
【0008】
また、顔料の補色関係を利用した意匠性メタリック塗料として、(A)皮膜形成バインダー100重量部に対し、(B)メタリック粉末0.1〜15重量部、(C)フタロシアニン系、ペリレン系、インダンスロン系、アゾメチン系、ベンズイミダゾロン系、キナクリドン系、アンスラキノン系、ジケトピロロピロール系及びジオキサジン系から選ばれる一次粒径0.01〜0.2μmの第1の着色顔料0.1〜10重量部、並びに(D)ジケトピロロピロール系、キナクリドン系、ピラゾロン系、ナフトールAS系、酸化鉄系及び複金属酸化物系から選ばれる一次粒径0.1〜2μmの第2の着色顔料0.5〜50重量部を含有し、顔料(C)の一次粒径は顔料(D)より相対的に小さく、かつ顔料(C)と顔料(D)が補色の関係にある塗料組成物が知られている(特許文献6参照)。しかし、この塗料組成物から形成される塗膜は、フェイスアングルにおいては有彩色でグレイジングアングルにおいては無彩色となるような効果は得られなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000−086943号公報
【特許文献2】特開2003−073620号公報
【特許文献3】特開2005−126467号公報
【特許文献4】特開2001−327915号公報
【特許文献5】特開2002−121494号公報
【特許文献6】特開平9−235492号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Raimund Schmid et.al “European Coatings Journal” (7-8) P 702-705(1997)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記のように、従来、光輝性顔料の組合せによる相乗効果によって、角度依存性があり、かつ、高い彩度を有する塗膜を形成できる塗料組成物は知られていたが、塗膜の観察角度をフェイスアングルからグレイジングアングルへと連続的に変化させることにより連続的に色相が変化し、かつフェイスアングルにおいては有彩色でグレイジングアングルにおいては無彩色となるような塗膜を形成することができる塗料組成物は得られていなかった。
本発明は、塗膜の観察角度をフェイスアングルからグレイジングアングルへと変化させることにより連続的に色相が変化し、かつフェイスアングルにおいては有彩色でグレイジングアングルにおいては無彩色となるような塗膜を形成することができる塗料組成物、及びその塗料組成物を用いる塗膜形成方法、並びにそれにより得られる塗膜を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を解決するべく、鋭意研究を重ねた結果、(A)角度依存性の干渉効果を有する光輝材である金属酸化物被覆シリカフレークと(B)金属酸化物被覆マイカ及び/又は金属酸化物被覆アルミナフレークを特定割合で含有させ、塗膜のグレイジングアングルにおける(A)成分の干渉色と(B)成分の干渉色を補色関係にすることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明は、(A)角度依存性の干渉効果を有する光輝材である金属酸化物被覆シリカフレーク、及び(B)金属酸化物被覆マイカ及び/又は金属酸化物被覆アルミナフレークを、(A)成分の(B)成分に対する含有比率((A)/(B))が、固形分質量比で1/1.3〜1/6である割合で含有する塗料組成物であって、塗膜のグレイジングアングルにおける(A)成分の干渉色と(B)成分の干渉色がマンセル表色系の色相環100に対して、(A)成分の干渉色をマンセル表示系における色相0とし、この色相に対して、左廻り+50、右廻り−50で表示した際に、(B)成分の干渉色が、+30〜+50、または−30〜−50の色相範囲にある補色関係にあり、該塗料組成物を塗装して得られる塗膜のグレイジングアングルでの変角分光測色計での彩度(C値)が20以下であって、観察角度をフェイスアングルからグレイジングアングルへと変化させたときに該塗膜の色が有彩色から無彩色に変化することを特徴とする塗料組成物(ここで、フェイスアングルとは、光源の入射角度が0度から約25度の範囲にあり、受光角が入射角の正反射近傍(正反射角±10度の範囲)である観察角度のことを指し、グレイジングアングルとは入射角度が約50度から70度の範囲にあり、受光角が入射角の正反射近傍(正反射角±10度の範囲)である観察角度のことを指す。)を提供する。
【0014】
また、本発明は、(A)角度依存性の干渉効果を有する光輝材である金属酸化物被覆シリカフレーク、及び(B)金属酸化物被覆マイカ及び/又は金属酸化物被覆アルミナフレークを、(A)成分の(B)成分に対する含有比率((A)/(B))が、固形分質量比で1/1.3〜1/6である割合で含有する塗料組成物を塗装して塗膜を形成する方法において、塗膜のグレイジングアングルにおける(A)成分の干渉色と(B)成分の干渉色をマンセル表色系の色相環100に対して、(A)成分の干渉色をマンセル表示系における色相0とし、この色相に対して、左廻り+50、右廻り−50で表示した際に、(B)成分の干渉色が、+30〜+50、または−30〜−50の色相範囲にある補色関係にすることにより、該塗料組成物を塗装して得られる塗膜のグレイジングアングルでの変角分光測色計での彩度(C値)が20以下であって、観察角度をフェイスアングルからグレイジングアングルへと変化させたときに該塗膜の色が有彩色から無彩色に変化する塗膜を形成することを特徴とする塗膜形成方法(ここで、フェイスアングルとは、光源の入射角度が0度から約25度の範囲にあり、受光角が入射角の正反射近傍(正反射角±10度の範囲)である観察角度のことを指し、グレイジングアングルとは入射角度が約50度から70度の範囲にあり、受光角が入射角の正反射近傍(正反射角±10度の範囲)である観察角度のことを指す。)を提供する。
【0015】
また、本発明は、上記塗料組成物をベースコート塗料として塗装してベースコート塗膜を形成し、該ベースコート塗膜の上にクリヤー塗料を塗装してクリヤー塗膜を形成することを特徴とする塗膜形成方法を提供する。
また、本発明は、第1ベースコート塗料を塗装して第1ベースコート塗膜を形成し、該第1ベースコート塗膜の上に、上記塗料組成物を第2ベースコート塗料として塗装して第2ベースコート塗膜を形成し、さらに、該第2ベースコート塗膜の上に、クリヤー塗料を塗装してクリヤーコート塗膜を形成することを特徴とする塗膜形成方法を提供する。
また、本発明は、上記塗膜形成方法により得られる塗膜を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の塗料組成物は、塗膜の観察角度をフェイスアングルからグレイジングアングルへと連続的に変化させることにより連続的に色相が変化し、かつフェイスアングルにおいては有彩色でグレイジングアングルにおいては無彩色となるという優れた意匠性を有する塗膜を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1はフェイスアングル、グレイジングアングルを示した説明図である。
【図2】図2は本発明の実施例と比較例の「ab色度図」を示した説明図である。
【図3】図3はマンセル表色系の色相環を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
最初に、本発明に用いる用語の定義について説明する。
正反射角とは、測定塗膜の法線に対して入射光と対称な角度で正反射したときの角度をいう。
補色関係とは、マンセル表色系の色相環において相対する関係にある色相をいう。
より具体的には、色相環100に対して、(A)成分の干渉色をマンセル表示系における色相0とし、この色相に対して、左廻り+50、右廻り−50で表示した際に、(B)成分の干渉色が、+30〜+50、または−30〜−50の色相範囲にあることを補色関係という。図3にマンセル表色系の色相環を示す。
【0019】
また、本発明に用いられる(A)成分の角度依存性の干渉効果を有する光輝材である金属酸化物被覆シリカフレーク、(B)成分の金属酸化物被覆マイカ、金属酸化物被覆アルミナフレーク等の単独の色相は、「標準色票(JIS Z8721準拠、財団法人日本規格協会 1981年発行)」との比較により、最も近い色票を選び、その色相(マンセル表記)とした。
【0020】
フェイスアングルとは、入射角度が0度から約25度の範囲にあり、受光角が入射角の正反射近傍(正反射角±10度の範囲)である観察角度のことを指し、グレイジングアングルとは入射角度が約50度から70度の範囲にあり、受光角が入射角の正反射近傍(正反射±10度の範囲)である観察角度のことを指す。理解をし易いように、「図1」にて、これらを示す。なお、( a )は、塗膜面の法線である。図1において、入射光線と法線とで挟まれる角度が入射角であり、反射光(受光)線と法線とで挟まれる角度が反射角である。図1の左図では、入射角度が0度から約25度の範囲にあり、反射角が入射角の正反射近傍(正反射角±10度の範囲)であるので、この場合の観察角度がフェイスアングルになる。図1の右図では、入射角度が約50度から70度の範囲にあり、反射角が入射角の正反射近傍(正反射角±10度の範囲)であるので、この場合の観察角度がグレイジングアングルになる。
また、フェイスアングル、グレイジングアングルについては、Raimund Schmid らの「ヨーロピアン・コーティング・ジャーナル 1997年7〜8月号 702〜705頁」(非特許文献1参照)に説明がある。
【0021】
干渉色の彩度とは、変角分光測色計において、入射角の正反射近傍の受光角において測定される彩度の値をいう。
角度依存性の干渉効果を有するとは、塗膜に対し、複数の入射角に対する各々の正反射角近傍での受光角における色相が異なっていることをいう。
例えば、金属酸化物被覆マイカの場合、干渉効果はあるが、入射角度の違いによる色相の変化はなく、赤色系のマイカはどの入射角度でも各々の正反射近傍での受光面において測定される色相が赤色であり、緑色系のマイカはどの入射角度でも各々の正反射近傍での受光面において測定される色相が緑色であることから、角度依存性の干渉効果を有する光輝材には該当しない。
【0022】
有彩色から無彩色へと彩度が変化するとは、変角分光測色計による塗膜の測色において、入射角が0〜25度の場合には正反射角近傍で測定される彩度が最も高い彩度(C値で表記する場合、数値が大きいほど高い彩度を示す)でありながら、入射角が50度から70度の場合には正反射角近傍で測定される彩度が低い彩度(C値が20以下)になり、測定入射角が10度から70度の範囲内での正反射角近傍で測定される彩度の最も高い彩度と最も低い彩度との差が15以上になることをいう。C値が20を超える場合には、無彩色ではなく、有彩色であり、本発明は、グレイジングアングルでの塗膜のC値が20以下の無彩色であることを特徴としている。
【0023】
なお、本発明において用いた変角分光測色計は、株式会社村上色彩技術研究所製「変角高速分光光度計GSP−2型(変角分光測色システムGCMS−4)」である。
また、色相の連続的な変化とは、塗膜面の法線に対して、入射角と反射角とが「10度と0度」、「15度と5度」、「20度と10度」、「25度と15度」、「30度と20度」、「35度と25度」、「40度と30度」、「45度と35度」、「50度と40度」、「55度と45度」、「60度と50度」、「65度と55度」、「70度と60度」の条件で測色した「ab色度図」の(a,b)13個の値をab座標軸にプロットしたとき、座標上の13個の測色値が、弧を描くように連続的に変化することをいう。
【0024】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の塗料組成物に用いられる(A)成分である角度依存性の干渉効果を有する光輝材とは、その光輝材と塗膜形成樹脂からなる塗料組成物から形成される塗膜の、複数の入射角に対する各々の正反射角近傍での受光角における色相が異なっている材料をいう。具体的には、金属酸化物被覆シリカフレークが該当する。
【0025】
金属酸化物被覆シリカフレークは、例えば、特開2000−086943号公報(特許文献1)に開示されているものが挙げられ、その具体例としては、例えば、酸化鉄(一酸化鉄、又は三酸化二鉄)又は二酸化チタンで被覆された二酸化珪素フレークなどが挙げられる。
酸化鉄被覆シリカフレーク、及び、二酸化チタン被覆シリカフレークの市販品としては、例えば、メルク社製の製品名「カラーストリーム」シリーズなどが挙げられる。
金属酸化物被覆シリカフレークは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組合わせて用いてもよい。
【0026】
本発明において、(B)成分である金属酸化物被覆マイカ及び金属酸化物被覆アルミナフレークは、例えば、光輝性塗料用の光輝材として使用されるものが挙げられる。
金属酸化物被覆マイカとしては、薄片状マイカ粒子の表面に金属酸化物被覆を形成したものが挙げられ、天然の白雲母や合成雲母の表面に二酸化チタン、酸化鉄やその他にクロム、コバルト、錫、ジルコニウム等の金属酸化物の薄膜をコーティングした干渉マイカ顔料などが挙げられる。
金属酸化物被覆アルミナフレ−クとしては、薄片状の酸化アルミニウム(Al)、を二酸化チタン、酸化鉄等の屈折率の大きい金属酸化物により被覆したものが挙げられ、市販品としては、例えば、メルク社製の製品名「シラリック」などが挙げられる。
(B)成分は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組合わせて用いてもよい。
【0027】
本発明は、観察角度をフェイスアングルからグレイジングアングルへと連続的に変化させたときに連続的に色相が変化し、フェイスアングルにおいては有彩色でグレイジングアングルにおいては無彩色となることを特徴とするものであるが、その必須要件として、(A)成分のグレイジングアングルにおける干渉色と(B)成分のグレイジングアングルにおける干渉色とが補色関係となっていることである。
【0028】
特に好ましくは、(A)成分と(B)成分をある程度の割合で含有する塗料組成物を塗装して得られる塗膜の入射角度が50度から70度のときの変角高速分光光度計で測定される彩度のC値が、20以下になることが好ましく、より好ましくは15以下になることである。加えて、フェイスアングルでの有彩色からグレイジングアングルでの無彩色へと変化させるためには、入射角が0度から25度の場合には正反射角近傍が最も高い彩度であり、かつ、測定入射角が10度から70度の範囲内で変角高速分光光度計で測定される彩度のC値の最も高い数値と最も低い数値との差が15以上になることが好ましい。より好ましくは、測定入射角が10度から70度の範囲内で変角高速分光光度計で測定される彩度のC値の最も高い数値と最も低い数値との差が30以上になることである。
【0029】
前記したように、正反射角とは、測定塗膜の法線に対して入射光と対称な角度で正反射したときの角度をいい、補色関係とは、マンセル表色系の色相環において相対する関係にある色相のことである。より具体的には、色相環100に対して、(A)成分の干渉色をマンセル表示系における色相0とし、この色相に対して、左廻り+50、右廻り−50で表示した際に、(B)成分の干渉色が、+30〜+50、または−30〜−50の色相範囲にあることを補色関係という。
(A)成分の干渉色の色相に対して、(B)成分の干渉色が、+30〜+50、または−30〜−50の色相範囲にない場合、有彩色から無彩色への彩度の変化はみられない。
【0030】
本発明の塗料組成物における(A)成分の(B)成分に対する含有比率((A)/(B))は、固形分質量比で1/1.3〜1/6であり、好ましくは1/1.4〜1/5であり、より好ましくは1/1.5〜1/4.5である。
(A)成分の含有比率が(B)成分に対して、1/1.3よりも多い場合や、(B)成分の1/6より少ない場合は、観察角度をフェイスアングルからグレイジングアングルへと連続的に変化させることにより連続的に色相が変化し、かつフェイスアングルにおいては有彩色でグレイジングアングルにおいては無彩色となるという効果が見られなくなる。
【0031】
また、(A)成分と(B)成分との総含有量は、塗料全固形分中0.5〜40質量%が好ましく、1.0〜30質量%がより好ましく、特に好ましくは2.0〜25質量%である。
(A)成分と(B)成分との総含有量が塗料全固形分中0.5質量%未満の場合、観察角度をフェイスアングルからグレイジングアングルへと連続的に変化させることにより連続的に色相が変化し、かつフェイスアングルにおいては有彩色でグレイジングアングルにおいては無彩色となる効果が低下する。40質量%を超えると塗膜の外観性が低下する。
【0032】
本発明の塗料組成物において使用する塗膜形成樹脂としては、通常、塗料用の塗膜形成樹脂として使用されている樹脂を制限なく使用できる。その具体例としては、例えばアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ポリオレフィン樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、フッ素樹脂、シリコン樹脂等の1種単独又は2種以上の組み合わせが挙げられる。
【0033】
本発明の塗料組成物は、前記1種単独又は2種以上の塗膜形成樹脂を含有する非架橋のラッカータイプ塗料組成物とすることもでき、又は、前記1種単独又は2種以上の塗膜形成樹脂と、例えば、アミノ樹脂、(ブロック)ポリイソシアネ−ト化合物、エポキシ化合物等の1種単独又は2種以上の組み合わせからなる架橋形成樹脂と組み合わせて架橋硬化型塗料組成物とすることもできる。
【0034】
本発明の塗料組成物には、必要に応じてその他の着色顔料および各種添加剤などを配合することができる。着色顔料としては従来から塗料用に常用されているものが用いられ、例えば有機系としてはアゾレ−キ系顔料、フタロシアニン顔料、インジゴ系顔料、ペリノン系顔料、ペリレン系顔料、キノフタロン系顔料、ジオキサジン系顔料、キナクリドン系顔料等を挙げる事ができ、無機系としては黄色酸化鉄、ベンガラ、二酸化チタン、カーボンブラック等が挙げられる。なお、本発明の塗料組成物には、アルミニウムフレーク顔料を配合しないことが好ましい。
また、添加剤としてはベンゾトリアゾール、蓚酸アニリド系等の紫外線吸収剤、ベンゾフェノ−ル系等の酸化防止剤、シリコ−ン系等のレベリング剤、ワックス、有機ベントナイト等の粘性制御剤、硬化触媒等が挙げられる。
【0035】
本発明の塗料組成物は、有機溶剤に溶解して使用することができる。有機溶剤としては、芳香族炭化水素系溶剤、エステル系溶剤、ケトン系溶剤、アルコ−ル系溶剤、エ−テル系溶剤等が使用できる。
本発明の塗料組成物の塗装は、通常の塗装方法、例えば、エアースプレー、静電エアースプレー、エアレススプレーなどのスプレー塗装方法、ロールコーター、フローコーター、ディッピング形式による塗装機等の通常使用される塗装機を用いる塗装方法、又は刷毛、バーコーター、アプリケーターなどを用いる塗装方法が挙げられる。これらのうちスプレー塗装方法が好ましい。
【0036】
本発明の塗料組成物が塗装される基材としては、鉄、アルミニウム、マグネシウムもしくはこれらの合金を含む金属類、ガラス、コンクリ−ト等の無機材料の成形品、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリアミド、ポリアクリル、ポリエステル、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリカーボネート、ポリウレタン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体等の樹脂の成形品および各種FRPなどのプラスチック材料の成形品、木材、紙などが挙げられる。なお、これらの基材に予め電着塗料や中塗り塗料を塗装することは任意である。
【0037】
本発明の塗料組成物は、自動車用途や工業用途におけるベースコートとして用いることが適している。それ故、基材に、本発明の塗料組成物をベースコートとして塗装し、次にクリヤー塗料を塗装する2コート1ベーク又は2コート2ベーク塗装方法による塗膜形成方法や、本発明の塗料組成物の下塗りとして、第1ベースコート塗料を塗装し、次に本発明の塗料組成物を第2ベースコートとして塗装し、次にクリヤー塗料を塗装する3コート1ベーク、3コート2ベーク、3コート3ベーク塗装方法による塗膜形成方法が用いられる。
特に、第1ベースコートに、白色又は淡彩色のベースコートを用いたり、濃彩色のベースコートを用いたりすることで、3層からなる塗膜の明度を調整することができ、意匠性のバリエーションを広げることができる。
【0038】
本発明の塗料組成物を用いた塗膜形成方法におけるクリヤーコートには公知のものを使用することができる。
また、本発明の塗料組成物を用いた塗膜形成方法における第1ベースコートには、通常、着色ベースコート又はカラーベースコートとして公知のものが用いられ、例えば、特開2007−216220号公報に開示されているものなどが挙げられる。
【0039】
本発明の塗料組成物を用いた塗膜形成方法において、第1ベースコートを用いる場合、その乾燥塗膜厚は2〜40μmが好ましく、より好ましくは5〜30μmである。また、本発明の塗料組成物の乾燥塗膜厚は1〜30μmが好ましく、より好ましくは3〜25μmであり、特に好ましくは、5〜20μmである。さらに、クリヤー塗料の乾燥塗膜厚は、10〜70μmが好ましく、より好ましくは20〜50μmである。
本発明の塗料組成物の乾燥塗膜厚が1μm未満では、下地が隠蔽できないおそれがあり、30μmを超えた場合、塗装時にワキ・タレ等の不具合が起こることがあり好ましくない。
【0040】
本発明の塗膜形成方法においては、クリヤーコート塗料を、ベースコート塗膜上に塗装し、クリヤーコート塗膜層を形成し、そのクリヤーコート塗膜層を焼付け硬化させるが、クリヤーコート塗膜層の焼付け温度は、通常120〜180℃の範囲で適宜選定すればよく、焼付け時間は、通常10〜60分間の範囲で適宜選定すればよい。
第1ベースコート、本発明の第2ベースコート、クリヤーコートからなる3コートの場合も、各ベースコートを焼付けることなく、ウェットオンウェットにて塗り重ね、クリヤー塗料を塗装後に、1度に焼付ける3コート1ベーク方式が、省エネルギーの点からも好ましい。
【実施例】
【0041】
以下に、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例によってなんら制限されるものではない。
【0042】
<製造例1>
ベースコート塗料組成物B−1の調製
ビーカーに、(A)角度依存性の干渉効果を有する光輝材として二酸化チタン被覆シリカフレーク(メルク社製、商品名「カラーストリーム(Colorstream) T20−02WNT」、グレイジングアングルにおける色相:レッド系統色)2.3質量部及び、(B)金属酸化物被覆マイカ(メルク社製、商品名「イリオジン235WNT」、グレイジングアングルにおける色相:ブルーグリーン系統色、カラーストリーム T20−02WNTとグレイジングアングルにおける補色関係にある)4.8質量部を、混合有機溶剤(トルエン/キシレン/酢酸ブチル/ブタノールの質量比=30/40/20/10)10質量部に混合してウェットさせ、次に、別の容器に、アクリル樹脂ワニス(BASFコーティングスジャパン(株)製、商品名「LB−7800」、加熱残分50質量%、水酸基価46mgKOH/g、酸価7mgKOH/g、数平均分子量20,000)120質量部とブチル化メラミン樹脂ワニス(三井化学社(株)製、商品名「ユーバン20SE」、加熱残分60質量%)50質量部と上記混合溶剤30質量部とを混合撹拌させ、その混合ワニス溶液中に、ウェットさせた(A)と(B)の混合物を撹拌しながら徐々に加え、均一になるように十分に撹拌し、ベース塗料組成物B−1を得た。
【0043】
<製造例6>
ベースコート塗料組成物B−6の調製
分散容器に、アクリル樹脂ワニス「LB−7800」30質量部とカーボンブラック(デグサ社製、商品名「ピグメントブラックFW200」)3.1質量部とキシレン 25質量部とを、サンドミルにて、粒度が10μm以下になるまで分散して、カーボンブラック塗料組成物を調製した。
【0044】
ビーカーに、(A)角度依存性の干渉効果を有する光輝材として二酸化チタン被覆シリカフレーク(メルク社製、商品名「カラーストリーム(Colorstream) T20−02WNT」、グレイジングアングルにおける色相:レッド系統色)3.3質量部及び、(B)金属酸化物被覆マイカ(メルク社製、商品名「イリオジン235WNT」、グレイジングアングルにおける色相:ブルーグリーン系統色、カラーストリーム T20−02WNTとフェイスアングルにおける補色関係にある)7質量部を、混合有機溶剤(トルエン/キシレン/酢酸ブチル/ブタノールの質量比=30/40/20/10)10質量部に混合してウェットさせ、次に、別の容器に、アクリル樹脂ワニス「LB−7800」120質量部とブチル化メラミン樹脂ワニス「ユーバン20SE」 50質量部と上記混合溶剤30質量部とを混合撹拌させ、その混合ワニス溶液中に、ウェットさせた(A)と(B)の混合物を撹拌しながら徐々に加え、十分撹拌した。次に、上記のカーボンブラック塗料組成物全量を加え、均一になるように十分に撹拌を行い、ベース塗料組成物B−6を得た
【0045】
<製造例13>
ベースコート塗料組成物B−13の調製
分散容器に、アクリル樹脂ワニスアクリル樹脂ワニス「LB−7800」30質量部、着色顔料(DIC(株)製、「ファストゲングリーン2YK」、グリーン系有機顔料) 2.2質量部とキシレン 25質量部とを、サンドミルにて、粒度が10μm以下になるまで分散して、着色顔料塗料組成物を調製した。
【0046】
ビーカーに、(A)角度依存性の干渉効果を有する光輝材として二酸化チタン被覆シリカフレーク(メルク社製、商品名「カラーストリーム(Colorstream)T20−02WNT」、グレイジングアングルにおける色相:レッド系統色)7.5質量部を、混合有機溶剤(トルエン/キシレン/酢酸ブチル/ブタノールの質量比=30/40/20/10)10質量部でウェットさせ、次に、別の容器に、アクリル樹脂ワニス「LB−7800」 120質量部とブチル化メラミン樹脂ワニス「ユーバン20SE」 50質量部と上記混合溶剤 30質量部とを混合撹拌させ、その混合ワニス溶液中に、ウェットさせた(A)を撹拌しながら徐々に加え、十分撹拌した。
次に、上記の着色顔料塗料組成物全量を加え、均一になるように十分に撹拌を行い、ベース塗料組成物B−13を得た。
【0047】
<製造例2〜5、7〜12及び14>
ベースコート塗料組成物B−2〜5、7〜12及14の調製
製造例1と同様にして、表1及び表2に示した原料を用いて、ベースコート塗料組成物B−2〜B−5、B−7〜12及びB−14を得た。
【0048】
【表1】

【0049】
【表2】

【0050】
なお、表1及び表2中の原料の(A)〜(C)成分について、下記に詳しく説明する。
(A1)カラーストリーム(Colorstream) T20−02WNT:メルク社製、二酸化チタン被覆シリカフレーク、グレイジングアングルにおける色相 7.5RP(レッド系統色)。
(A2)カラーストリームT20−01WNT:メルク社製、二酸化チタン被覆シリカフレーク、グレイジングアングルにおける色相 10GY(グリーン系統色)。
(A3)カラーストリームT20−03WNT:メルク社製、二酸化チタン被覆シリカフレーク、グレイジングアングルにおける色相 10R(オレンジ系統色)。
【0051】
(B1)イリオジン 235WNT:メルク社製、金属酸化物被覆マイカ、グレイジングアングルにおける色相 7.5G(ブルーグリーン系統色)、カラーストリーム T20−02WNT、T20−03WNTと補色関係にある(色相環100に対して、カラーストリーム T20−02WNTの干渉色をマンセル表示系における色相0とし、この色相に対して、左廻り+50、右廻り−50で表示した際に、イリオジン 235WNTの干渉色が、右廻り−50である。)
【0052】
(B2)イリオジン 215WNT:メルク社製、金属酸化物被覆マイカ、グレイジングアングルにおける色相が 2.5R(レッド系統色)、カラーストリーム T20−01WNTとグレイジングアングルにおける補色関係にある(色相環100に対して、カラーストリーム T20−01WNTの干渉色をマンセル表示系における色相0とし、この色相に対して、左廻り+50、右廻り−50で表示した際に、イリオジン ウルトラ215WNTの干渉色が、左廻り+37.5である。ただし、カラーストリーム T20−02WNTと補色関係ではない(色相環100に対して、カラーストリーム T20−02WNTの干渉色をマンセル表示系における色相0とし、この色相に対して、左廻り+50、右廻り−50で表示した際にイリオジン 215WNTの干渉色が、右廻り−5.0である)。
【0053】
(B3)ルミナ ターコイズ T303D:BASF社製、金属酸化物被覆アルミナフレーク、グレイジングアングルにおける色相が 7.5BG(ブルー系統色)、カラーストリーム T20−03WNTとグレイジングアングルにおける補色関係にある(色相環100に対して、カラーストリーム T20−03WNTの干渉色をマンセル表示系における色相0とし、この色相に対して、左廻り+50、右廻り−50で表示した際に、ルミナ ターコイズ T303Dの干渉色が、右廻り−47.5である。)
【0054】
(B4)シラリック(Xirallic)T60−24WNT:メルク社製、金属酸化物被覆アルミナフレーク、グレイジングアングルにおける色相が 7.5G(グリーン系統色)、カラーストリーム T20−02WNTとグレイジングアングルにおける補色関係にある(色相環100に対して、カラーストリーム T20−02WNTの干渉色をマンセル表示系における色相0とし、この色相に対して、左廻り+50、右廻り−50で表示した際に、シラリック(Xirallic)T60−24WNTの干渉色が、右廻り−50である。)
【0055】
(B5)イリオジン 223WNT:メルク社製、金属酸化物被覆マイカ、グレイジングアングルにおける色相が 7.5P(パープル系統色)、カラーストリーム T20−01WNTとグレイジングアングルにおける補色関係にある(色相環100に対して、カラーストリーム T20−01WNTの干渉色をマンセル表示系における色相0とし、この色相に対して、左廻り+50、右廻り−50で表示した際に、イリオジン 223WNTの干渉色が、右廻り−47.5である。)
【0056】
(B6)CFS マリンファインブルー6303V:BASF社製、金属酸化物被覆マイカ、グレイジングアングルにおける色相が 7.5PB(ブルー系統色)、カラーストリーム T20−01WNTとグレイジングアングルにおける補色関係にある(色相環100に対して、カラーストリーム T20−01WNTの干渉色をマンセル表示系における色相0とし、この色相に対して、左廻り+50、右廻り−50で表示した際に、エクストラマーリン CFSファインブルー6303Vの干渉色が、右廻り−37.5である。)
(C1)ピグメントブラックFW200:デグサ社製、カーボンブラック顔料
(C2)ファストゲングリーン 2YK:DIC(株)製、グリーン系有機顔料
【0057】
<実施例1〜7、比較例1〜7>
2C1B塗装システムにおける評価用試験片の作成
リン酸亜鉛処理軟鋼板にカチオン電着塗料(BASFコーティングスジャパン(株)製、商品名「アクアNo.4200」)を乾燥膜厚20μmとなるよう電着塗装して175℃で25分間焼き付け、さらに中塗り塗料(BASFコーティングスジャパン(株)製、商品名「アクアGXシーラー」)を乾燥膜厚30μmとなるようエアースプレー塗装し、140℃で30分間焼き付けた。次に、ベースコート塗料として、上記のベースコート塗料組成物B−1をスプレー塗装粘度12〜13秒(20℃、フォードカップ#4)になるように、上記混合有機溶剤にて希釈して、乾燥膜厚15μmとなるようエアースプレー塗装し、室温にて10分間セッティングした後、アクリル・メラミン樹脂系クリヤー塗料(BASFコーティングスジャパン株式会社製、商品名「ベルコートNo.6200クリヤー」)を芳香族石油ナフサ(エッソ(株)製、商品名「ソルベッソ100」)で塗装粘度(フォードカップ#4、20℃で25秒)に希釈したものをウェット・オン・ウェット方式で乾燥膜厚30μmとなるようエアースプレー塗装し、140℃で30分間焼き付けて試験片を作成した。
実施例2〜7、比較例1〜7の場合も同様にして試験片を作成した。
【0058】
<試験板の評価方法>
得られた試験板上の塗膜の彩度(C値)を株式会社村上色彩技術研究所製「変角高速分光光度計GSP−2型(変角分光測色システムGCMS−4)」を用いて光源からの入射角度及び受光角度をそれぞれ変化させて測定し、結果を表3〜表4にまとめた。
(1)彩度上昇値
入射角10度におけるC値から入射角70度におけるC値を引いた値。グレイジングアングルからフェイスアングルに変化させることによりどれだけ彩度が上昇するかを示し、値が正方向に大きいほどグレイジングアングルからフェイスアングルへの彩度の上昇幅が大きいことを示し、また値が負となる場合はグレイジングアングルからフェイスアングルに変化させることにより彩度が下がることを示す。
【0059】
(2)彩度変化幅
彩度変化幅は、測定入射角が10度から70度の範囲内で変角高速分光光度計で測定される彩度の数値の最も高い彩度と最も低い彩度との差であり、この彩度変化幅が15以上を「○」、15未満を「×」として評価した。
(3)有彩色から無彩色への効果の目視評価
観察角度をフェイスアングルからグレイジングアングルへと変化させることにより連続的に色相が変化し、かつフェイスアングルにおいては有彩色でグレイジングアングルにおいては無彩色となる効果が目立って大きいものからあまり効果が確認できないものまでを段階的に◎、○、△、×で目視評価した。
【0060】
◎:塗膜をフェイスアングルから観察したときの色が有彩色であり、観察角度をグレイジングアングルへと変化させたときのフェイスアングルからの彩度ダウンが目立って大きい。
○:塗膜をフェイスアングルから観察したときの色が有彩色であり、観察角度をグレイジングアングルへと変化させたときのフェイスアングルからの彩度ダウンを目視ではっきりと確認できる。
△:塗膜をフェイスアングルから観察したときの色が有彩色であり、観察角度をグレイジングアングルへと変化させたときのフェイスアングルからの彩度ダウンを目視で確認することが可能である。
×:塗膜をフェイスアングルから観察したときの色が有彩色であるか、または無彩色であっても観察角度をグレイジングアングルへと変化させたときのフェイスアングルからの彩度ダウンを目視で確認することが出来ない。
【0061】
(4)グレイジングアングルの無彩色評価
入射角50度から70度におけるC値が20以下の場合を「○」、20を超える場合を「×」として評価した。
(5)仕上がり外観:完成塗膜の鮮映性の有無を目視評価した。
○:鮮映性あり
△:鮮映性劣る
×:ツヤビケがある
【0062】
【表3】

【0063】
【表4】

【0064】
本発明の実施例5と比較例7との「ab色度図」と「彩度」の測色結果を対比して説明するために、それらの結果を図2及び表5に示す。図2において、▲が実施例5で、■が比較例7である。
【0065】
【表5】

【0066】
比較例1は、(A)成分と(B)成分との比率が請求項の範囲外(B成分が下限値より少ない)である場合で、入射角30度〜50度では有彩色から無彩色になるが、入射角50度を超えるグレイジングアングルでは有彩色に戻ってしまった。
比較例2は、(A)成分と(B)成分との比率が請求項の範囲外(B成分が上限値より多い)である場合で、全ての角度で有彩色であった。
比較例3は、(A)成分と(B)成分とがグレイジングアングルにおいて補色の関係にはない場合で、フェイスアングルでは無彩色で、グレイジングアングルでは有彩色になる、本発明とは逆の色の変化を示した。
【0067】
比較例4は、(A)成分を含有せず、(B)成分が、グレイジングアングルで7.5Gと2.5Rというマンセル表色系において補色の関係にある2種類のマイカを用いた場合で、全ての角度で無彩色であった。
比較例5は、(A)成分を含有せず、(B)成分が、グレイジングアングルで2.5Rと7.5Gいうマンセル表色系において補色の関係にあるマイカと金属酸化物被覆アルミナフレークを用いた場合で、全ての角度で無彩色であった。
比較例6は、グレイジングアングルでレッド発色の(A)成分とグリーン系有機顔料を用いた場合で、入射角45度〜55度では有彩色から無彩色になるが、入射角55度を超えるグレイジングアングルでは有彩色に戻ってしまった。
【0068】
比較例7は、背景技術における特許文献2の実施例13(ハイライト部でレッド発色の二酸化チタン被覆シリカフレーク顔料)のトレースである。比較例7で用いた(A2)の顔料「カラーストリームT20−01WNT」は、ハイライト部(フェイスアングル)ではレッドの発色であり、グレイジングアングルではグリーン系統色であった。比較例7においては、(A2)と(B6)との間に、グレイジングアングルでの補色の関係が認められたが、C値は全ての角度で30以上であり、全ての角度で有彩色であった。
【0069】
図2において、彩度は、測定値から原点(0点)までの距離と考えることができ、数値が小さいほど無彩色で、数値が大きいほど鮮やかな有彩色である。図2に示された例の場合、実施例5、比較例7共に、入射角度0度の場合の数値を基準に考えると、入射角度を大きくするにつれて、左回りに「ab色度図」上を動いている。実施例5の場合、入射角度が大きくなるにつれて、有彩色から無彩色に変化し、比較例7の場合、入射角度とは無関係に、常に有彩色であることが示される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)角度依存性の干渉効果を有する光輝材である金属酸化物被覆シリカフレーク、及び(B)金属酸化物被覆マイカ及び/又は金属酸化物被覆アルミナフレークを、(A)成分の(B)成分に対する含有比率((A)/(B))が、固形分質量比で1/1.3〜1/6である割合で含有する塗料組成物であって、該塗料組成物を塗装して得られる塗膜のグレイジングアングルにおける(A)成分の干渉色と(B)成分の干渉色が、マンセル表色系の色相環100に対して、(A)成分の干渉色をマンセル表示系における色相0とし、この色相に対して、左廻り+50、右廻り−50で表示した際に、(B)成分の干渉色が、+30〜+50、または−30〜−50の色相範囲にある補色関係にあり、該塗料組成物を塗装して得られる塗膜のグレイジングアングルでの変角分光測色計での彩度(C値)が20以下であって、観察角度をフェイスアングルからグレイジングアングルへと変化させたときに該塗膜の色が有彩色から無彩色に変化することを特徴とする塗料組成物(ここで、フェイスアングルとは、光源の入射角度が0度から約25度の範囲にあり、受光角が入射角の正反射近傍である観察角度のことを指し、グレイジングアングルとは入射角度が約50度から70度の範囲にあり、受光角が入射角の正反射近傍である観察角度のことを指す)。
【請求項2】
(A)角度依存性の干渉効果を有する光輝材である金属酸化物被覆シリカフレーク、及び(B)金属酸化物被覆マイカ及び/又は金属酸化物被覆アルミナフレークを、(A)成分の(B)成分に対する含有比率((A)/(B))が、固形分質量比で1/1.3〜1/6である割合で含有する塗料組成物を塗装して塗膜を形成する方法において、該塗料組成物を塗装して得られる塗膜のグレイジングアングルにおける(A)成分の干渉色と(B)成分の干渉色をマンセル表色系の色相環100に対して、(A)成分の干渉色をマンセル表示系における色相0とし、この色相に対して、左廻り+50、右廻り−50で表示した際に、(B)成分の干渉色が、+30〜+50、または−30〜−50の色相範囲にある補色関係にすることにより、該塗料組成物を塗装して得られる塗膜のグレイジングアングルでの変角分光測色計での彩度(C値)が20以下であって、観察角度をフェイスアングルからグレイジングアングルへと変化させたときに該塗膜の色が有彩色から無彩色に変化する塗膜を形成することを特徴とする塗膜形成方法(ここで、フェイスアングルとは、光源の入射角度が0度から約25度の範囲にあり、受光角が入射角の正反射近傍である観察角度のことを指し、グレイジングアングルとは入射角度が約50度から70度の範囲にあり、受光角が入射角の正反射近傍である観察角度のことを指す。)
【請求項3】
請求項1に記載の塗料組成物をベースコート塗料として塗装してベースコート塗膜を形成し、該ベースコート塗膜の上にクリヤー塗料を塗装してクリヤー塗膜を形成することを特徴とする塗膜形成方法。
【請求項4】
第1ベースコート塗料を塗装して第1ベースコート塗膜を形成し、該第1ベースコート塗膜の上に、請求項1に記載の塗料組成物を第2ベースコート塗料として塗装して第2ベースコート塗膜を形成し、さらに、該第2ベースコート塗膜の上に、クリヤー塗料を塗装してクリヤーコート塗膜を形成することを特徴とする塗膜形成方法。
【請求項5】
請求項2〜4のいずれかに記載の塗膜形成方法により得られる塗膜。





【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−46676(P2012−46676A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−191478(P2010−191478)
【出願日】平成22年8月27日(2010.8.27)
【出願人】(599076424)BASFコーティングスジャパン株式会社 (59)
【Fターム(参考)】