説明

塗料組成物、反射防止フィルムの製造方法及び画像表示装置

【課題】煩雑な工程を行わずに長期保存安定性を示す塗料組成物、さらに優れた反射防止性を有する反射防止フィルムの製造方法および画像表示装置を提供する。
【解決手段】有機溶媒及び2種類以上の無機粒子を含む塗料組成物であって、該2種類以上の無機粒子における少なくとも1種類の無機粒子が、フッ素化合物Aにより表面処理された無機粒子であり、さらに該塗料組成物のpHが3以上6以下であることを特徴とする、塗料組成物、および該塗料組成物を塗布した反射防止フィルムの製造方法、該反射防止フィルムを設けたことを特徴とする画像表示装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射防止フィルムに好適な塗料組成物、及び当該塗料組成物を用いて製造した反射防止フィルム、該反射防止フィルムを含む画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
反射防止フィルムは一般に、陰極管表示装置(CRT)、プラズマディスプレイパネル(PDP)や液晶表示装置(LCD)のような画像表示装置において、外光の反射によるコントラスト低下や像の映り込みを防止するために、光学干渉の原理を用いて反射率を低減するようにディスプレイの最表面に配置される。
【0003】
反射防止フィルムとして、より広い波長領域の反射率を低減するために、屈折率の高い物質からなる層と屈折率の低い物質からなる層との多層の被膜をフィルムなど支持基材の表面に作製する、いわゆるマルチコーティングが知られている(特許文献1参照)。
【0004】
しかし、かかる多層の被膜を形成するには、フィルムなどの支持基材の表面に、屈折率が高い硬化被膜を与え得る化合物を含有する反射防止被膜形成組成物を塗布硬化させた後、更に、屈折率が低い硬化被膜を与え得る化合物を含有する反射防止被膜形成組成物を塗布後、硬化させる必要があり、2回の塗布、硬化を必要とするものであり製造工程が煩雑となっている。
【0005】
そこで、製造工程の簡略化のために1回の塗布により、屈折率の低い層と高い層を同時に形成する製造方法が提案されている(特許文献2)。
【0006】
しかしながら、塗料組成物の貯蔵時に無機粒子の凝集物や沈殿物の発生、あるいは塗料全体の粘度の上昇など塗料組成物の経時変化により、反射防止特性が劣化したり、さらに耐擦傷性が低下する問題があった。
【0007】
このように、製造工程の簡略化に加えて、塗料組成物の経時安定性と反射防止特性の両立、さらには耐擦傷性の向上が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平7−005452号公報
【特許文献2】特開2008−70414号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、長期保存後でも凝集物や沈殿物を生じることなく、優れた保存安定性を有し、さらに煩雑な工程を行わずに、その形成塗膜が優れた反射防止性、耐擦傷性を有する塗料組成物を提供することである。本発明の更なる目的は、優れた表面耐擦傷性を有する反射防止フィルムの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、以下の発明を完成させた。すなわち、本発明は以下の通りである。
1) 有機溶媒及び2種類以上の無機粒子を含む塗料組成物であって、
該2種類以上の無機粒子における少なくとも1種類の無機粒子が、フッ素化合物Aにより表面処理された無機粒子であり、
さらに該塗料組成物のpHが3以上6以下であることを特徴とする、塗料組成物。
2) 前記塗料組成物がバインダー成分を含み、該バインダー成分の酸価が30以下であることを特徴とする前記1)に記載の塗料組成物。
3) 前記塗料組成物が、フルオロアルキル基および反応性部位を有し、数平均分子量が300以上4000以下であるフッ素化合物Bを含むことを特徴とする前記1)又は2)に記載の塗料組成物。
4) 前記フッ素化合物Aにより表面処理された無機粒子が、フッ素化合物Aにより表面処理されたシリカ粒子(以後、フッ素化合物Aにより表面処理されたシリカ粒子を、フッ素処理シリカ粒子とよぶ)であることを特徴とする前記1)〜3)のいずれかに記載の塗料組成物。
5) 前記フッ素処理シリカ粒子が、シリカ粒子を下記一般式(I)で示される化合物で処理し、更に一般式(II)で示されるフッ素化合物Aで処理した粒子であることを特徴とする、前記4)に記載の塗料組成物。
A−R−SiR(OR3−n 一般式(I)
B−R−Rf 一般式(II)
(上記一般式中のA、Bは反応性二重結合基を示し、R、Rは炭素数1から3のアルキレン基及びそれらから導出されるエステル構造を示し、R、Rは水素又は炭素数が1から4のアルキル基を示し、Rfはフルオロアルキル基を示し、nは0から2の整数を示し、それぞれ側鎖を構造中に持っても良い。)
6) 前記フッ素処理シリカ粒子を除いた他の無機粒子が、金属酸化物からなる無機粒子であることを特徴とする、前記4)又は5)に記載の塗料組成物。
7) 屈折率の異なる2層を有する反射防止フィルムの製造方法であって、以下の工程を含むことを特徴とする反射防止フィルムの製造方法。
【0011】
工程1:前記1)〜6)のいずれかに記載の塗料組成物を支持基材の少なくとも片面上に1回塗布する工程
工程2:工程1にて塗布した塗料組成物を乾燥する工程
8) 前記工程2の塗料組成物の溶媒残存率が50質量%の際に、塗料組成物のpHが3以上5未満の範囲にあることを特徴とする、前記7)に記載の反射防止フィルムの製造方法。
9) 前記7)又は8)の製造方法により得られた反射防止フィルムを設けたことを特徴とする画像表示装置。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、長期保存安定性が良好であり、かつ安定した層分離構造の形成が可能な塗料組成物を得ることができる。さらに本発明の塗料組成物を支持基材の少なくとも片面に1回塗布し、乾燥するのみで、支持基材の上に屈折率の異なる2層構造を有する、良好な反射防止性能、優れた耐擦傷性を示す反射防止フィルムを成形可能である。そのため本発明の塗料組成物によれば、反射防止フィルムの製造工程が簡略化可能となるため、生産性を向上することができる。更には、ハードコート層などの機能性多層構造を有するフィルムを支持基材として用いることにより、生産性に優れた画像表示装置を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0014】
本発明は、有機溶媒及び2種類以上の無機粒子を含む塗料組成物であって、該2種類以上の無機粒子における少なくとも1種類の無機粒子が、フッ素化合物により表面処理された無機粒子であり、さらに該塗料組成物のpHが3以上6以下であることを特徴とする。本発明の塗料組成物は、支持基材の少なくとも片面に、該塗料組成物を1回塗布し、乾燥することにより、屈折率の異なる2層を有する反射防止特性、耐擦傷性が良好な反射防止フィルムを形成することができる。高屈折率層の塗布乾燥及び低屈折率層の塗布乾燥といったプロセスが必要な通常の反射防止フィルムの製造方法と比べて、本発明の塗料組成物を用いた反射防止フィルムの製造方法は、コストを大幅に低減することができる。更に長期保管後の本発明の塗料組成物を用いることによっても、該塗料組成物から得られる反射防止フィルムは、優れた反射防止特性、耐擦傷性を有する。
〔塗料組成物中に含まれる無機粒子〕
本発明の塗料組成物は、2種類以上の無機粒子を含む。そして無機粒子の種類数としては2種以上20種以下が好ましく、より好ましくは2種以上10種以下、さらに好ましくは2種以上3種以下であり、最も好ましくは2種類である。
【0015】
ここで無機粒子の種類とは、無機粒子を構成する元素の種類によって決まる(後述するフッ素処理無機粒子においては、表面処理される前の無機粒子を構成する元素の種類によって決まる。)。例えば、酸化チタン(TiO)と酸化チタンの酸素の一部をアニオンである窒素で置換した窒素ドープ酸化チタン(TiO2−x)とでは、無機粒子を構成する元素が異なるために、異なる種類の粒子である。また、同一の元素、例えばZn、Oのみからなる無機粒子(ZnO)であれば、その粒径が異なる無機粒子が複数存在しても、またZnとOとの組成比が異なっていても、これらは同一種類の無機粒子である。また酸化数の異なるZn粒子が複数存在しても、無機粒子を構成する元素が同一である限りは(この例ではZn以外の元素が全て同一である限りは)、これらは同一種類の無機粒子である。
【0016】
そして本発明の塗料組成物は、高屈折率層構成成分と低屈折層構成成分とが混合されており、これにより本発明の塗料組成物を1回のみ塗布乾燥することによって、屈折率の異なる2層を有する反射防止フィルムを得ることができる。本発明の塗料組成物における低屈折率構成成分及び高屈折率層構成成分は、異なる種類の無機粒子で各々構成されることが好ましい。以下、本態様について述べる。
【0017】
初めに低屈折率層構成成分として好適に使用される粒子に関して説明する。本発明の塗料組成物の、2種類以上の無機粒子における少なくとも1種類は、フッ素化合物Aにより表面処理された無機粒子(フッ素化合物により表面処理された無機粒子は、以後フッ素処理無機粒子とよぶ)であることが重要であり、このフッ素処理無機粒子が低屈折率層構成成分として好適である。このフッ素処理無機粒子に好適な無機粒子としては、Si,Na,K,Ca,およびMgから選択される元素を含む無機粒子が好ましく挙げられ、さらに好ましくは、シリカ粒子(SiO)、アルカリ金属フッ化物(NaF,KFなど)、およびアルカリ土類金属フッ化物(CaF、MgFなど)から選ばれる化合物を含む無機粒子であり、耐久性、屈折率などの点からシリカ粒子が特に好ましい。なお、フッ素化合物Aにより表面処理されたシリカ粒子は、以後フッ素処理シリカ粒子とよぶ。
【0018】
フッ素処理無機粒子の構成材料の無機粒子として好ましく用いられるシリカ粒子とは、ケイ素化合物又は有機珪素化合物の重合(縮合)体のいずれかからなる組成物を含み成る粒子を指し、一般例として、SiOなどのケイ素化合物から導出される粒子の総称である。
【0019】
フッ素処理無機粒子の構成材料である無機粒子の、表面処理される前の形状は特に限定されるものではないが、本発明の塗料組成物を用いて得られる反射防止フィルムに形成される層の屈折率の観点から球状が好ましい。より好ましくは、フッ素処理無機粒子の構成材料である無機粒子がシリカ粒子であり、該シリカ粒子が中空及び/又は多孔質の形状であることが好ましい(中空シリカ粒子とは、粒子の内部に空洞を有するシリカ粒子であり、多孔質シリカ粒子とは、粒子の表面及び内部に細孔を有するシリカ粒子である。)。シリカ粒子などの無機粒子の形状が多面体構造であると、該粒子を含む塗料組成物を用いて得られた反射防止フィルムは、該反射防止フィルムの支持基材上の層中で隙間無く積層する可能性があり、画像表示装置に使用する際に必要な透明性が得られないことが考えられる。また、中空及び/又は多孔質を有するシリカ粒子などの無機粒子を用いることにより、得られる反射防止フィルムの支持基材上の層の密度を下げる効果が得られる。特にフッ素処理無機粒子の構成材料である無機粒子として、内部に空洞を有するシリカ粒子、並びに/または、表面及び内部に細孔を有するシリカ粒子を用いることが、該フッ素処理シリカ粒子が本発明の塗料組成物より得られる反射防止フィルムの低屈折率層に含有されやすく、低屈折率層を好適に形成することとなるために好ましい。なお、中空及び/又は多孔質を有するシリカ粒子のことを、以下中空粒子と記載する。
【0020】
続いて、低屈折率層に好適な、フッ素処理無機粒子の構成材料である無機粒子の数平均粒子径について説明する。無機粒子の数平均粒子径(表面処理される前の数平均粒子径)が1nmよりも小さくなると、該粒子を含む塗料組成物より得られる反射防止フィルムにおける支持基材上の低屈折率層中の空隙密度が低下することによる屈折率の上昇や透明度の低下が起こることがあるため好ましくなく、無機粒子の数平均粒子径(表面処理される前の数平均粒子径)が200nmよりも大きくなると、該粒子を含む塗料組成物より得られる反射防止フィルムの低屈折率層の厚さが厚くなり良好な反射防止性能が得られなくなり好ましくないため、本発明の塗料組成物中の、フッ素化合物Aにより表面処理される無機粒子は、数平均粒子径(表面処理される前の数平均粒子径)が、好ましくは1nmから200nm、より好ましくは5nmから180nm、更に好ましくは5nmから100nmである。
【0021】
本発明における数平均粒子径とは、透過型電子顕微鏡により求めた粒子径をいう。倍率は50万倍とし、その画面に存在する10個の粒子の外径を測定し、その平均値とした。
【0022】
ここで外径とは、粒子の最大の径(つまり粒子の長径であり、粒子中の最も長い径を示す)を表し、内部に空洞を有する粒子の場合も同様に、粒子の最大の径を表す。
【0023】
フッ素処理無機粒子は、好適に空気側(最表面層)へ移動して、好適に低屈折率層を形成することができるため、塗料組成物に用いられる2種類以上の無機粒子の少なくとも1種類の無機粒子には、フッ素化合物Aによる表面処理がされていることが重要である。なお、2種類以上の無機粒子の全ての無機粒子がフッ素処理無機粒子であるよりも、フッ素処理無機粒子と、該表面処理をされていない無機粒子の両方を含む塗料組成物を用いる方が、屈折率差の大きい2層を得ることができるために反射防止性の点で好ましい。つまり、本発明の塗料組成物においては、フッ素処理無機粒子とフッ素処理無機粒子以外の無機粒子の両方を各々少なくとも1種類含むことが好ましい。
【0024】
また、フッ素化合物Aによる表面処理を施した無機粒子としては、中空シリカ粒子などのシリカ粒子であることが、つまりフッ素処理無機粒子としては、フッ素処理中空シリカ粒子であることが特に好ましい。
【0025】
中空シリカなどの無機粒子に対するフッ素化合物Aによる表面処理工程は、一段階で行われても良いし、多段階で行われても良い。また、複数の段階でフッ素を含む化合物を用いても良いし、一つの段階のみでフッ素を含む化合物を用いても良い。
【0026】
また中空シリカなどの無機粒子の表面処理工程にて好ましく用いられるフッ素化合物Aは、単一化合物でも良いし複数の異なる化合物を用いても良い。
【0027】
フッ素化合物Aによる表面処理とは、中空シリカ粒子などの無機粒子を化学的に修飾し、中空シリカ粒子などの無機粒子に含フッ素化合物を導入する工程をさす。
【0028】
中空シリカ粒子などの無機粒子に直接フッ素化合物を導入する方法としては、1分子中にフッ素セグメントとシリルエーテル基(シリルエーテル基が加水分解されたシラノール基を含む)との両方を持つフルオロアルコキシシラン化合物を少なくとも1種類以上と開始剤とを共に撹拌することにより成される方法がある。しかし中空シリカ粒子などの無機粒子に直接フッ素化合物を導入する場合、反応性の制御が困難になったり、塗料化後塗布時に塗布斑等が発生しやすくなったりする場合がある。
【0029】
また中空シリカ粒子などの無機粒子を化学的に修飾して、中空シリカ粒子などの無機粒子に含フッ素化合物を導入する更なる方法としては、中空シリカ粒子などの無機粒子を架橋成分にて処理し、官能基を有したフッ素化合物とつなぎ合わせる方法がある。
【0030】
架橋成分としては、分子内にフッ素は無いが、1分子中にフッ素化合物Aと反応可能な部位と、中空シリカ粒子などの無機粒子と反応可能な部位を少なくとも一カ所ずつ持っている化合物を指し、中空シリカ粒子などの無機粒子と反応可能な部位としては反応性の観点からシリルエーテル及びシリルエーテルの加水分解物であることが好ましい。これら化合物は一般的にシランカップリング剤と呼ばれ、例としては、グリシドキシアルコキシシラン類、アミノアルコキシシラン類、アクリロイルシラン類、メタクリロイルシラン類、ビニルシラン類、メルカプトシラン類、などを用いることができる。
【0031】
官能基を有したフッ素化合物Aとしては、フルオロアルキルアルコール、フルオロアルキルエポキシド、フルオロアルキルハライド、フルオロアルキルアクリレート、フルオロアルキルメタクリレート、フルオロアルキルカルボキシレート(酸無水物及びエステル類を含む)、などを用いることができる。
【0032】
本発明の塗料組成物に好適なフッ素処理無機粒子のより好ましい形態は、シリカ粒子(特に中空シリカ粒子)を下記一般式(I)で示される化合物で処理し、更に下記一般式(II)で示されるフッ素化合物Aで処理した粒子であることが好ましい。
A−R−SiR(OR3−n 一般式(I)
B−R−Rf 一般式(II)
(上記一般式中のA、Bは反応性二重結合基を示し、R、Rは炭素数1から3のアルキレン基及びそれらから導出されるエステル構造を示し、R、Rは水素又は炭素数が1から4のアルキル基を示し、Rfはフルオロアルキル基を示し、nは0又は1又は2のいずれかを示し、それぞれ側鎖を構造中に持っても良い。)
本発明における反応性二重結合基とは、光または熱などのエネルギーをうけて発生したラジカルなどにより化学反応する官能基であり、具体例としては、ビニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基などが挙げられる。
【0033】
一般式(I)の具体例としては、アクリロキシエチルトリメトキシシラン、アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、アクリロキシブチルトリメトキシシラン、アクリロキシペンチルトリメトキシシラン、アクリロキシヘキシルトリメトキシシラン、アクリロキシヘプチルトリメトキシシラン、メタクリロキシエチルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロキシブチルトリメトキシシラン、メタクリロキシヘキシルトリメトキシシラン、メタクリロキシヘプチルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン及びこれら化合物中のメトキシ基が他のアルコキシル基及び水酸基に置換された化合物を含むものなどが挙げられる。
【0034】
フッ素化合物Aである一般式(II )の具体例としては、2,2,2−トリフルオロエチルアクリレート、2,2,3,3,3−ペンタフロオロプロピルアクリレート、2−パーフルオロブチルエチルアクリレート、3−パーフルオロブチル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−パーフルオロヘキシルエチルアクリレート、3−パーフルオロヘキシル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−パーフルオロオクチルエチルアクリレート、3−パーフルオロオクチル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−パーフルオロデシルエチルアクリレート、2−パーフルオロ−3−メチルブチルエチルアクリレート、3−パーフルオロ−3−メトキシブチル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−パーフルオロ−5−メチルヘキシルエチルアクリレート、3−パーフルオロ−5−メチルヘキシル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−パーフルオロ−7−メチルオクチル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、テトラフルオロプロピルアクリレート、オクタフルオロペンチルアクリレート、ドデカフルオロヘプチルアクリレート、ヘキサデカフルオロノニルアクリレート、ヘキサフルオロブチルアクリレート、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピルメタクリレート、2−パーフルオロブチルエチルメタクリレート、3−パーフルオロブチル−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−パーフルオロオクチルエチルメタクリレート、3−パーフルオロオクチル−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−パーフルオロデシルエチルメタクリレート、2−パーフルオロ−3−メチルブチルエチルメタクリレート、3−パーフルオロ−3−メチルブチル−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−パーフルオロ−5−メチルヘキシルエチルメタクリレート、3−パーフルオロ−5−メチルヘキシル−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−パーフルオロ−7−メチルオクチルエチルメタクリレート、3−パーフルオロ−7−メチルオクチルエチルメタクリレート、テトラフルオロプロピルメタクリレート、オクタフルオロペンチルメタクリレート、オクタフルオロペンチルメタクリレート、ドデカフルオロヘプチルメタクリレート、ヘキサデカフルオロノニルメタクリレート、1−トリフルオロメチルトリフルオロエチルメタクリレート、ヘキサフルオロブチルメタクリレートなどが挙げられる。
【0035】
分子中にフッ素セグメントを有さない一般式(I)で示される化合物を用いることにより、簡便な反応条件で、中空シリカなどのシリカ粒子表面を修飾することが可能となるばかりではなく、シリカ粒子表面に反応性を制御しやすい官能基を導入することが可能となり、その結果、反応性二重結合を有するフッ素セグメントをシリカ粒子表面で反応させることが可能になる。
【0036】
なお、低屈折率層とは支持基材上に積層される屈折率の異なる2層中のうちの1層であり、隣接する1層(反射防止フィルム構成層であり空気層を除く)よりも相対的な屈折率が低い層である。なお上述のように本発明の製造方法により得られる反射防止フィルムは、支持基材、高屈折率層、低屈折率層がこの順に形成されることが好ましい。屈折率を低下させる方法としてフッ素系高分子を用いる方法(特開2002−36457号公報)や密度を低下させる方法(特開平8−83581号公報)が知られている。そのため本発明の塗料組成物にはフッ素処理無機粒子を含むことが重要である。塗料組成物中にフッ素化合物Aにより表面処理された無機粒子を含むことで、これらの粒子が低屈折率層を好適に形成可能であるためである。ここで、前述したシリカ粒子及び一般式(I)、一般式(II)に示される化合物は、本発明で用いられる塗料組成物中では、未反応のままでシリカ粒子と一般式(I)化合物と一般式(II)化合物が存在しても良いし、シリカ粒子を一般式(I)化合物と一般式(II)化合物により表面処理して縮合体および/または重合体として存在していても良い。
【0037】
続いて前記フッ素処理無機粒子を除いた他の無機粒子に関して説明する。フッ素処理無機粒子を除いた他の無機粒子は、高屈折率層構成成分として好適に用いられる。
【0038】
前記フッ素処理無機粒子を除いた他の無機粒子は、特に限定されないが、金属酸化物であることが好ましく、Zr,Ti,Al,In,Zn,Sb,Sn,およびCeよりなる群から選ばれる少なくとも一つの金属の酸化物粒子であることがさらに好ましい。また高屈折率層構成成分として好適に用いられる無機粒子としては、シリカ粒子よりも屈折率が高い無機粒子が好ましく、具体的には酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化チタン(TiO)、酸化アルミニウム(Al)、酸化インジウム(In)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO)、酸化アンチモン(Sb)、およびインジウムスズ酸化物(In)から選ばれる少なくとも一つの金属酸化物であり、特に好ましくはSbやSnなどから導出されるインジウム含有酸化スズ(ITO)やアンチモン含有酸化スズ(ATO)である。
【0039】
本発明の塗料組成物は、これらフッ素処理無機粒子を除いた他の無機粒子(金属酸化物からなる粒子など)を少なくとも1種類含むことが好ましい。より好ましくはフッ素処理無機粒子を除いた他の無機粒子を1種類以上5種類以下含む態様であり、特に好ましくは1種類含む態様である。
【0040】
塗料組成物中の高屈折率層構成成分として好適な無機粒子の数平均粒子径、特に低屈折率層構成成分として好適なシリカ粒子よりも屈折率が高い金属酸化物からなる無機粒子の平均粒子径としては、好ましくは、1nmから150nm、より好ましくは5nmから100nmである。無機粒子の数平均粒子径が1nmよりも小さくなると層中の空隙密度が低下することによる透明度の低下が起こるため好ましくなく、無機粒子の数平均粒子径が150nmよりも大きくなると高屈折率層の厚さが大きくなり良好な反射防止性能が得られにくくなり好ましくない。
【0041】
塗料組成物中の高屈折率層構成成分として好適な無機粒子の屈折率、特にシリカ粒子よりも屈折率が高い金属酸化物からなる無機粒子の屈折率としては、好ましくは1.58〜2.80、より好ましくは1.60〜2.50である。無機粒子の屈折率が1.58よりも小さくなると、高屈折率層の屈折率が低下することがあり、無機粒子の屈折率が2.80よりも大きくなると、高屈折率層の屈折率差が上昇し、良好な反射防止性能が得られなくなることがある。
【0042】
塗料組成物中の高屈折率層構成成分として用いられる無機粒子については前述した通りだが、フッ素化合物による表面処理がされた無機粒子がシリカ粒子の場合は、該シリカ粒子よりも屈折率が高い無機粒子であることが特に好ましく、このような該シリカ粒子よりも屈折率が高い無機粒子としては、数平均粒子径が1nmから150nmであり、かつ屈折率が1.60から2.80の金属酸化物が好ましく用いられる。そのような金属酸化物の具体例としては、インジウム含有酸化スズ(ITO)及び/またはアンチモン含有酸化スズ(ATO)が挙げられる。
【0043】
本発明の塗料組成物において、フッ素化合物Aによる表面処理がされた無機粒子がシリカ粒子であり、他の無機粒子が該シリカ粒子よりも屈折率が高い無機粒子である場合、支持基材の少なくとも片面上に該塗料組成物を塗布乾燥することで、フッ素処理シリカ粒子を含有した低屈折率層と、該シリカ粒子よりも屈折率が高い無機粒子を含有する高屈折率層を、支持基材、高屈折率層、低屈折率層の順に好適に形成できるため好ましい態様である。
〔塗料組成物のpH〕
本発明の塗料組成物は、有機溶媒及び2種類以上の無機粒子(2種類以上の無機粒子における少なくとも1種類の無機粒子が、フッ素処理無機粒子)を含み、さらに該塗料のpHは3以上6以下であることが重要である。好ましくは前記した低屈折率層構成成分として好適なフッ素処理無機粒子と、前記した高屈折率層構成成分である他の無機粒子を含み、さらに該塗料のpHは3以上6以下であることが重要である。そして塗料のpHは、さらに好ましくは3.5以上5.5以下であり、より好ましくは4以上5以下である。
【0044】
該塗料のpHが6よりも大きくなると、前記一般式(II)の化合物の加水分解生成物であるシラノール同士が自己縮合を起こし、その結果無機粒子(フッ素処理無機粒子、及びフッ素処理無機粒子以外の無機粒子の両方を含む)の凝集が起こり易くなり、そのような粒子を含む塗料組成物を用いて反射防止フィルムを製造した場合、反射防止性、耐擦傷性が得られなくなるため望ましくない。
【0045】
該塗料のpHが3よりも小さくなると、加水分解の速度が増加するとともに、前記一般式(II)の化合物の加水分解生成物であるシラノール同士が自己縮合を起こし、その結果無機粒子(フッ素処理無機粒子、及びフッ素処理無機粒子以外の無機粒子)の凝集が起こり易くなり、そのような粒子を含む塗料組成物を用いて反射防止フィルムを製造した場合、反射防止性が得られなくなるため望ましくない。
【0046】
また本発明の塗料組成物を使用した屈折率の異なる2層を有する反射防止フィルムの製造方法は、以下の工程を含むことを特徴とする反射防止フィルムの製造方法である。
工程1:本発明の塗料組成物を支持基材の少なくとも片面上に1回塗布する工程
工程2:工程1にて塗布した塗料組成物を乾燥する工程
そしてこの工程2においては、乾燥により塗料組成物の溶媒残存率が50質量%となった際に、塗料組成物のpHが3.0以上5.0未満の範囲にあることが好ましい。ここでいう溶媒残存率とは、塗料を徐々に乾燥させていくことにより溶媒が揮発し、固形分濃度が上昇していく過程において、乾燥前の塗料組成物中の溶媒量を100質量%としたときに、乾燥前の塗料組成物中の溶媒量に対する乾燥後の塗料組成物中の溶媒量の割合を溶媒残存率とする。
【0047】
後述する方法により溶媒残存率が50質量%の塗料組成物を作成し、この時の塗料組成物のpHが3以上5未満であると、そのような性質を有する塗料組成物を塗布、乾燥させて反射防止フィルムを製造した場合に、前述の工程2の乾燥過程においても塗料のpHを安定領域に保つことができ、粒子同士の凝集を抑制することができるため、より安定に層分離構造の形成が可能である。
【0048】
該塗料組成物のpHを3以上6以下に調整するためには、フッ素処理無機粒子以外の無機粒子を含む塗料(高屈折率層構成成分)と、フッ素処理無機粒子を含む塗料(低屈折率層構成成分)とを混合する際にpH調整を行う方法が挙げられる。また、該塗料組成物のpHが規定範囲に入るように、フッ素処理無機粒子以外の無機粒子を含む塗料(高屈折率層構成成分)のpHと、フッ素処理無機粒子を含む塗料(低屈折率層構成成分)のpHをあらかじめ調整しておいてから、これらの塗料組成物を混合してもよい。
【0049】
pH調整の方法としては、どのような酸、塩基でも使用可能であり、1種のみを用いてもまた2種以上を混合して用いてもよいが、後述するような有機酸、または塩基性無機塩及びアンモニア(以下、塩基性無機塩及びアンモニアを総称して、アルカリ成分とよぶ)を用いることが好ましい。
【0050】
また塗料組成物のpHを3以上6以下に調整するためには、塗料組成物中のバインダー成分の酸価を調整する方法によっても可能である。バインダー成分の酸価としては、30以下であることが好ましく、より好ましくは酸価が10以下である。ここで酸価とは、油脂1gに含まれる遊離脂肪酸を中和するのに必要な水酸化カリウムのmg数とする。酸価が高いものは存在する遊離脂肪酸量が多いということである。
【0051】
塗料組成物中のバインダー成分の酸価が30以下であると、該塗料組成物のpHを3以上6以下と制御しやすくなり、保存安定性が良好となる。バインダー成分の酸価が30を越えると、バインダー成分の酸性度が高くなるため、該バインダー成分を含む塗料組成物のpHが3よりも小さくなりやすく、加水分解の速度が増加するとともに、前記一般式(II)のフッ素化合物Bの加水分解生成物であるシラノール同士が自己縮合を起こし、その結果無機粒子(フッ素処理無機粒子、及びフッ素処理無機粒子以外の無機粒子)の凝集が起こり易くなり、そのような粒子を含む塗料組成物を用いて反射防止フィルムを製造した場合、反射防止性が得られなくなるため望ましくない。
【0052】
また、塗料組成物を構成する個々の成分のpHが2以上、6未満であると、溶媒残存率が50質量%の場合においても塗料のpHを安定領域に保つことができ、粒子同士の凝集を抑制できるため、より安定に反射防止フィルムを製造することができる。塗料組成物のpHは含まれる溶媒のpHの影響も受けるため、溶媒残存率の減少に伴い塗料組成物のpHも変化する。溶媒残存率が50質量%の場合では溶媒のpHの影響が小さくなり、塗料組成物中の個々の成分のpHの影響が大きくなる。塗料組成物中の高屈折率層構成成分、低屈折率層構成成分、バインダーなどのpHが2未満であると、個々の成分の酸性度が高いため、溶媒残存率50質量%の場合では塗料組成物のpHが3未満となりやすくなり、粒子の凝集が起こりやすくなる。また、塗料組成物中の高屈折率層構成成分、低屈折率層構成成分、バインダーなどのpHが6以上であると、個々の成分の塩基性が高いため、溶媒残存率50質量%の場合では塗料組成物のpHが6以上となり、粒子の凝集が起こりやすくなる。そのような粒子を含む塗料組成物を用いて反射防止フィルムを製造した場合、反射防止性や透明性が若干劣ることになる。
【0053】
有機酸としては、カルボン酸あるいはカルボン酸誘導体類が挙げられる。これらの代表的なものを例示すると、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸などの飽和モノカルボン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸などの飽和ジカルボン酸類、アクリル酸、メタクリル酸、プロピオリ酸、イタコン酸などの不飽和カルボン酸類、安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の炭素環カルボン酸類、無水酢酸、無水コハク酸、無水イタコン酸、無水マレイン酸、安息香酸無水物、過ギ酸、過酢酸、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸などのカルボン酸誘導体類が挙げられる。
【0054】
アルカリ成分の好ましい具体例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、リン酸三ナトリウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、アンモニア、炭酸アンモニウム、塩化アンモニウム、水酸化マグネシウム、水酸化銅(II)、水酸化アルミニウム、水酸化鉄(III)、窒化アルミニウムが挙げられ、特に好ましくは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、アンモニア、炭酸アンモニウム、塩化アンモニウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムが挙げられる。ただし、局所的な凝集を避けるために極力使用量を抑制、または希薄な濃度で使用することが好ましい。
【0055】
本発明の塗料組成物としては、前述の2種類以上の無機粒子に加えて、さらに有機溶媒を含むことを特徴とする。
【0056】
有機溶媒は、特に限定されるものではないが、通常、常圧での沸点が200℃以下の溶剤が好ましい。具体的には、水、アルコール類、ケトン類、エーテル類、エステル類、炭化水素類、アミド類等が用いられる。これらは、1種、または2種以上を組み合わせて用いることができる。具体的には、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メタノール、イソプロピルアルコール等が挙げられ、特に無機粒子の安定性の点からイソプロピルアルコール、プロピレングリコールなどが特に好ましい。
【0057】
アルコール類としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、イソブタノール、n−ブタノール、tert−ブタノール、エトキシエタノール、ブトキシエタノール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ベンジルアルコール、フェニチルアルコール等を挙げることができる。ケトン類としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等を挙げることができる。エーテル類としては、例えば、ジブチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどを挙げることができる。エステル類としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル等を挙げることができる。芳香族類としては、例えば、トルエン、キシレン等を挙げることができる。アミド類としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等を挙げることができる。
〔フッ素化合物B〕
本発明の塗料組成物は、前述の2種類以上の無機粒子に加えて、フルオロアルキル基及び反応性部位を有し、数平均分子量が300以上4000以下であるフッ素化合物Bを含むことが好ましい。塗料組成物が、フッ素化合物Bを含有することにより、該塗料組成物を用いて得られる反射防止部材の反射防止層には、フッ素化合物Bに由来する成分を含有することができる。塗料組成物が前述のフッ素化合物Bを含有する場合、塗料組成物中の高屈折率層構成成分の割合を増加した際において、塗料組成物がフッ素化合物Bを含むことによるレベリング作用によって、厚膜でも安定した層分離構造の形成が可能となる利点を有する。また、塗料組成物がフッ素化合物Bを含むことにより、塗料組成物のpHが若干高pH側にシフトすることもある。
【0058】
なお、本発明で使用するフッ素化合物Bの有するフルオロアルキル基とは、アルキル基が持つ全ての水素がフッ素に置き換わった置換基であり、フッ素原子と炭素原子のみから構成される置換基である。フッ素化合物B中のフルオロアルキル基の数は必ずしも一つである必要はなく、フッ素化合物Bは複数のフルオロアルキル基を有してもよい。
【0059】
またフッ素化合物Bが有するフルオロアルキル基は、炭素数4〜7の直鎖状または分岐状のフルオロアルキル基Rf1であることが好ましい。フルオロアルキル基Rf1は、塗料組成物の乾燥時のフッ素処理無機粒子同士の粒子間相互作用の抑制の点から、炭素数5以上7以下であることが好ましく、さらに好ましくは炭素数6以上7以下である。またフルオロアルキル基Rf1は、分岐状に比べて直鎖状であることが、立体障害が小さくなるために、フッ素処理無機粒子に吸着し易くなる点で好ましい。フルオロアルキル基を、炭素数4〜7の直鎖状または分岐状のフルオロアルキル基Rf1とすることにより、粒子の分離性が良化し、屈折率の異なる2層の自発的な層形成が容易になり、反射防止性が良化するため好ましい。
【0060】
また、本発明で使用されるフッ素化合物Bの有する反応性部位とは、熱または光などの外部エネルギーにより塗料組成物中のバインダーなど他の成分と反応可能な部位を意味する。このような反応性部位として、反応性の観点からアルコキシシリル基及びアルコキシシリル基が加水分解されたシラノール基や、カルボキシル基、水酸基、エポキシ基、ビニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基などが挙げられる。本発明で使用されるフッ素化合物Bの有する反応性部位とは、フッ素化合物Bが一般式(B)の構造を有する場合においてはAであり、フッ素化合物Bが一般式(A)の構造を有する場合においてはアクリル基(HC=C(R)−)である。フッ素化合物Bの有する反応性部位の数は、一つである必要はなく、複数の反応性部位を有してもよい。特に反応性、ハンドリング性の観点から、アルコキシシリル基あるいはシラノール基や、アクリロイル(メタクリロイル)基が好ましい。
C=C(R)−COO−R−Rf1 ・・・一般式(A)
A−R−Rf1 ・・・一般式(B)
(式中、Rは水素原子またはメチル基、Rf1は炭素数4〜7の直鎖状または分岐状のフルオロアルキル基、Rは炭素数1〜10のアルキル基、Rは炭素数1〜10のアルキル基、Aは反応性部位である。)
一般式(A)のモノマーの具体例としては、2,2,2−トリフルオロエチルアクリレート、2,2,3,3,3−ペンタフロオロプロピルアクリレート、2−パーフルオロブチルエチルアクリレート、3−パーフルオロブチル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−パーフルオロヘキシルエチルアクリレート、3−パーフルオロヘキシル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−パーフルオロオクチルエチルアクリレート、3−パーフルオロオクチル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−パーフルオロデシルエチルアクリレート、2−パーフルオロ−3−メチルブチルエチルアクリレート、3−パーフルオロ−3−メトキシブチル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−パーフルオロ−5−メチルヘキシルエチルアクリレート、3−パーフルオロ−5−メチルヘキシル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−パーフルオロ−7−メチルオクチル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、テトラフルオロプロピルアクリレート、オクタフルオロペンチルアクリレート、ドデカフルオロヘプチルアクリレート、ヘキサデカフルオロノニルアクリレート、ヘキサフルオロブチルアクリレート、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピルメタクリレート、2−パーフルオロブチルエチルメタクリレート、3−パーフルオロブチル−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−パーフルオロオクチルエチルメタクリレート、3−パーフルオロオクチル−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−パーフルオロデシルエチルメタクリレート、2−パーフルオロ−3−メチルブチルエチルメタクリレート、3−パーフルオロ−3−メチルブチル−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−パーフルオロ−5−メチルヘキシルエチルメタクリレート、3−パーフルオロ−5−メチルヘキシル−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−パーフルオロ−7−メチルオクチルエチルメタクリレート、3−パーフルオロ−7−メチルオクチルエチルメタクリレート、テトラフルオロプロピルメタクリレート、オクタフルオロペンチルメタクリレート、オクタフルオロペンチルメタクリレート、ドデカフルオロヘプチルメタクリレート、ヘキサデカフルオロノニルメタクリレート、1−トリフルオロメチルトリフルオロエチルメタクリレート、ヘキサフルオロブチルメタクリレートなどが挙げられる。
【0061】
また一般式(A)のモノマーに由来するオリゴマーとしては、上記(A)の具体例のモノマーをラジカル重合などの高分子反応により得られる平均重合度2〜10程度の化合物をさす。
【0062】
一般式(B)のモノマーとしては、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン(TSL8233、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)、トリデカフルオロオクチルトリメトキシシラン(TSL8257、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)などをはじめとしたフルオロアルキル基を有するフルオロアルキルシランが例示される。
【0063】
また一般式(B)のモノマーに由来するオリゴマーは、上述のフルオロアルキルシランに所定量の水を加え酸触媒の存在下にて副生するアルコールを留去しながら反応させることにより得られる化合物である。この反応により、フルオロアルキルシランの一部が加水分解し、更にこれらが縮合反応を起こしオリゴマーが得られる。加水分解率は使用する水の量によって調節することができる。加水分解に用いる水の量は、通常、シランカップリング剤に対して1.5モル倍以上である。さらに得られるオリゴマーの平均重合度は2〜10の化合物であることが好ましい。
【0064】
本発明で使用されるフッ素化合物Bは、数平均分子量が300以上4000以下である。本発明の塗料組成物が、数平均分子量が300以上4000以下であるフッ素化合物Bを含む場合は、フッ素化合物Bの親和力により、フッ素化合物Bがフッ素処理無機粒子表面に吸着し、フッ素処理無機粒子同士の粒子間相互作用、または凝集体の形成を抑制し、その結果塗料組成物の乾燥時の流動性の低下を防止し、屈折率の異なる2層の自発的な層形成が容易となり、良好な反射防止性を発現することが可能となるため、数平均分子量が300以上4000以下のフッ素化合物Bを含むことが好ましい。
【0065】
本発明における数平均分子量は、テトラヒドロフランを溶媒にし、分子量既知の単分散ポリスチレンを標準物質として用い、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)法により測定して求めたものである。また、数平均分子量とは、分子量Mの分子数をNとした際に、M=ΣM/ΣNで定義されるものである。
使用した測定機は以下の通りである。
数平均分子量:液体クロマトグラフ LC−10(島津社製)
カラム:K−804L+K−805L(Shodex社製)
温度:35℃
〔塗料組成物のその他の成分〕
本発明で用いる塗料組成物は、更に、バインダー成分を含むことが出来る。つまり、本発明の塗料組成物により得られる反射防止フィルムの低屈折率層および高屈折率層には、前記した物質以外に別途バインダー成分を含んでいてもよい。前記塗料組成物中に含まれるバインダー成分としては、前述の通り酸価が30以下であることが好ましく、より好ましくは酸価が10以下である。また、バインダー成分としては製造性の観点より、熱及び/または活性エネルギー線などにより、硬化可能なバインダー(樹脂)であることが好ましく、バインダー(樹脂)は一種類であっても良いし、二種類以上を混合して用いても良い。なお、バインダー成分とは前述の通り硬化可能な樹脂などが使用され、硬化した樹脂は反射防止フィルム中のバインダー(樹脂)となる。また、本発明における前記フッ素処理無機粒子や、前記フッ素処理無機粒子以外の無機粒子を膜中に保持する観点より、分子中にアルコキシシランやアルコキシシランの加水分解物や反応性二重結合を有しているバインダー成分であることが好ましい。またUV線により硬化する場合は、酸素阻害を防ぐことができることから酸素濃度ができるだけ低い方が好ましく、窒素雰囲気下(窒素パージ)で硬化する方がより好ましい。酸素濃度が高い場合には、最表面の硬化が阻害され、硬化が不十分となり、耐擦傷性、耐アルカリ性が不十分となる場合がある。
【0066】
前述の酸価が30以下のバインダー成分の代表的なものを以下に例示する。1分子中に、3(より好ましくは4または5)個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する多官能アクリレートおよびその変性ポリマー、具体的な例としては、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサンメチレンジイソシアネートウレタンポリマーなどを、酸価が30以下のバインダー成分として用いることができる。これらの単量体は、1種または2種以上を混合して使用することができる。また、市販されている酸価が30以下のバインダー成分としては、多官能アクリル系組成物としては三菱レーヨン株式会社;(商品名”ダイヤビーム”シリーズなど)、長瀬産業株式会社;(商品名”デナコール”シリーズなど)、新中村株式会社;(商品名”NKエステル”シリーズなど)、大日本インキ化学工業株式会社;(商品名”UNIDIC”など)、東亜合成化学工業株式会社;(”アロニックス”シリーズなど)、日本油脂株式会社;(”ブレンマー”シリーズなど)、日本化薬株式会社;(商品名”KAYARAD”シリーズなど)、共栄社化学株式会社;(商品名”ライトエステル”シリーズなど)、ダイセルサイテック株式会社製:(商品名”EBECRYL”シリーズなど)、などを挙げることができ、これらの製品を利用することができる。
【0067】
本発明の塗料組成物としては、更に開始剤や硬化剤や触媒を含むことが好ましい。開始剤及び触媒は、フッ素処理無機粒子であるフッ素処理シリカ粒子とバインダー(樹脂)との反応を促進したり、バインダー(樹脂)間の反応を促進するために用いられる。該開始剤としては、塗料組成物をアニオン、カチオン、ラジカル反応等による重合および/または縮合および/または架橋反応を開始あるいは促進できるものが好ましい。
【0068】
該開始剤及び該硬化剤及び触媒は、種々のものを使用できる。また、複数の開始剤を同時に用いても良いし、単独で用いても良い。さらに、酸性触媒や、熱重合開始剤や光重合開始剤を併用しても良い。酸性触媒の例としては、塩酸水溶液、蟻酸、酢酸などが挙げられる。熱重合開始剤の例としては、過酸化物、アゾ化合物が挙げられる。また、光重合開始剤の例としては、アルキルフェノン系化合物、含硫黄系化合物、アシルホスフィンオキシド系化合物、アミン系化合物などが挙げられるがこれらに限定されるものではないが、硬化性の点から、アルキルフェノン系化合物が好ましく、具体例としては、2.2−ジメトキシ−1.2−ジフェニルエタン−1−オン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−フェニル)−1−ブタン、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]-1-(4−フェニル)−1−ブタン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−1−ブタン、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]-1-[4−(4−モルフォリニル)フェニル]−1−ブタン、1−シクロヒキシル−フェニルケトン、2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−[4−(2−エトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、などが挙げられる。
【0069】
なお、該開始剤及び該硬化剤の添加割合は塗料組成物中のバインダー成分量100質量部に対して0.001質量部から30質量部が好ましく、より好ましくは0.05質量部から20質量部であり更に好ましくは0.1質量部から10質量部である。
【0070】
その他として、本発明の塗料組成物には更に、界面活性剤、増粘剤、レベリング剤などの添加剤を必要に応じて適宜添加しても良い。
[塗料組成物中の各成分の含有量]
本発明の塗料組成物は、少なくとも一種類がフッ素処理無機粒子である2種類以上の無機粒子及び有機溶媒を含み、さらにpHが3以上6以下であれば、これら無機粒子などの含有量は特に限定されない。しかし好ましくは、本発明の塗料組成物100質量%において、(フッ素処理無機粒子を含む)全ての無機粒子(ここでいう全ての無機粒子には、フッ素化合物による表面処理によって、フッ素処理無機粒子中の無機粒子と結合したフッ素化合物など有機化合物も含めたフッ素処理無機粒子全体の質量も含める。)の合計が0.2質量%〜50質量%、有機溶媒を40〜98質量%、バインダー、開始剤、硬化剤、及び触媒などのその他の成分を0,1質量%〜10質量%含む態様であり、より好ましくは、(フッ素処理無機粒子を含む)全ての無機粒子の合計が1質量%〜40質量%、有機溶媒を50〜97質量%、その他の成分を1〜9質量%含む態様である。
【0071】
さらに好ましい態様としては、2種類以上の無機粒子が金属酸化物粒子とフッ素処理シリカ粒子であり、これらの合計が本発明の塗料組成物100質量%において2〜30質量%、有機溶剤が60〜95質量%、その他の成分が2〜8質量%の態様である。
【0072】
また、本発明の塗料組成物に含まれる全ての無機粒子の合計100質量%においては、フッ素処理無機粒子が5〜95質量%、その他の無機粒子が5〜95質量%であることが好ましく、フッ素処理無機粒子が10〜90質量%、その他の無機粒子が10〜90質量%であることがより好ましい。
【0073】
さらに好ましくは、全ての無機粒子の合計100質量%において、フッ素処理シリカ粒子が15〜85質量%、金属酸化物粒子が15〜85質量%の態様である。また、特に好ましいフッ素処理シリカ粒子と金属酸化物粒子の割合としては、形成される低屈折率層と高屈折率層の膜厚の観点から、全ての無機粒子の合計100質量%において、フッ素処理シリカ粒子が50〜85質量%、金属酸化物粒子が15〜50質量%の態様である。
【0074】
塗料組成物100質量%において、全ての無機粒子の合計が0.2質量%未満であると、該塗料組成物を用いて得られる反射防止フィルムの低屈折率層の厚み、高屈折率層の厚み、屈折率が、反射防止フィルムとしては不十分となるため、良好な反射防止性能が得られないことがあり、また塗料組成物100質量%において、全ての無機粒子の合計が50質量%を超えると、該塗料組成物の製膜性や、支持基材と高屈折率層との密着性が低下したり、高屈折率層と低屈折率層との区別可能な界面が失われるなどの不具合が生じることがある。
【0075】
フッ素処理無機粒子は、支持基材に塗布して乾燥した際に、好適に空気側(最表面層)へ移動して、好適に低屈折率層を形成することができるため、本発明の塗料組成物に用いられる2種類以上の無機粒子の少なくとも1種類の無機粒子(特にシリカ粒子)には、フッ素化合物による表面処理がされていることが重要である。
【0076】
なお、2種類以上の無機粒子の全ての無機粒子がフッ素化合物による表面処理を施された場合よりも、フッ素化合物による表面処理を施された無機粒子(特にシリカ粒子)と該表面処理をされていない無機粒子(特に金属酸化物)の両方を含む塗料組成物を用いる方が、屈折率差の大きい2層を得ることができるために反射防止性の点で好ましい。
【0077】
[反射防止フィルム]
反射防止フィルムは反射防止膜と同意であり、その必要性や要求される性能などは特開昭59−50401号公報に記載されている様に、好ましくは0.03以上、より好ましくは0.05以上の屈折率差を有する2層を支持基材上に積層させることで構成された様態である。また支持基材上の2層の屈折率差は5.0以下であることが好ましい。また反射防止フィルムにおいては、支持基材から計測し最も離れた層が低屈折率層であることが更に好ましい。つまり支持基材、高屈折率層、低屈折率層がこの順に積層された様態が好ましい。なお、支持基材については後述するが、支持基材としてハードコート層とフィルムの積層体を適用すれば、支持基材の一部であるフィルムと高屈折率層の間には、ハードコート層を設けることが可能であり、同様に支持基材として他の機能を有する層とフィルムの積層体を用いる事で、支持基材の一部であるフィルムと高屈折率層の間に他の層を設けることも可能である。屈折率差とは隣接する層間の屈折率を相対的に比較した値であり、相対的に屈折率が低い層を低屈折率層と呼び、相対的に屈折率が高い層を高屈折率層と呼ぶ。
【0078】
上述した本発明の塗料組成物によれば、特定の2種類以上の無機粒子、さらに有機溶媒を含む特定の1液の塗料組成物を用い、特定のpHとすることにより、長期保存安定性を有し、更には該塗料組成物を支持基材の少なくとも片面に、1回塗布する工程、および塗布した塗料組成物を乾燥する工程によって、屈折率の異なる2層を有する反射防止フィルムを製造することができる。
【0079】
本発明において上記1種類の塗料組成物から2層を構成する原理としては、塗料組成物中の2種類以上の無機粒子の表面自由エネルギー差をドライビングフォースとして、相分離構造を形成するものと考えられる。フッ素化合物により表面処理された無機粒子は表面自由エネルギーが低いため、空気側(つまり最表面層)へ移動しやすいと考えられ、また比重が小さいほど上層側(空気側、つまり最表面層)へ移動しやすいと考えられる。
【0080】
本発明における屈折率の異なる2層とは、反射分光膜厚計によって、300〜800nmの範囲での反射率を測定し、該装置付属のソフトウェア[FE−Analysis]を用いて得られる屈折率が異なる2つの層をさす。
【0081】
具体的には、反射分光膜厚計(FE−3000、大塚電子株式会社製)を用いて300〜800nmの範囲で反射率を測定し、大塚電子株式会社製[膜厚測定装置 総合カタログP6(非線形最小二乗法)]に記載の方法に従い、屈折率の波長分散の近似式としてCauchyの分散式(式1)を用い最小二乗法(カーブフィッティング法)により、光学定数(C、C、C)を計算することで屈折率を測定することができる。なお、屈折率は、550nmにおける値を用いた。
【0082】
【数1】

ここで、λは波長、C、C、Cは光学定数を表す。
【0083】
各層の屈折率が測定可能な測定装置として、反射分光膜厚計(FE−3000 大塚電子株式会社製)、高精度屈折率測定装置(Film Teck Scientific Computing International社製)などが挙げられるが、この限りではない。
【0084】
なお、このような本発明の塗料組成物によって得られる反射防止フィルムには、屈折率の異なる2層である高屈折率層と低屈折率層との間には明確な界面があることが好ましい。
【0085】
本発明における明確な界面とは、1つの層と他の層とが区別可能な状態をいう。区別可能な界面とは、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて断面を観察することにより判断することができる界面を表し、以下の方法に従い判断することができる。
【0086】
TEMにより20万倍の倍率で撮影した画像を、スキャナーを用いてプレゼンテーションソフトウェア(Microsoft Power Point2003)に貼り付ける。次いで貼り付けた写真のイメージコントロール処理(コントラストを90%とする)を行い、コントラストを強調する。この際に、1つの層と他の層との界面に明確な境界を引くことができる場合を、明確な界面があるとみなす。
【0087】
反射防止フィルムとして良好な性能を示すには、分光測定に置いて最低反射率が好ましくは0%以上1.0%以下、より好ましくは0%以上0.7%以下、さらに好ましくは0%以上0.6%以下であり、特に好ましくは0%以上0.5%以下であることが望ましい。
また、反射防止フィルムとして良好な性能を示すには、分光測定においてデルタ反射率が、好ましくは0%以上2.5%以下、より好ましくは0%以上2.0%以下であり、更に好ましくは0%以上1.8%以下であることが望ましい。デルタ反射率とは、光線反射スペクトルを測定した際に400nmから800nmの波長領域における最高反射率から最低反射率を引いた値を示す。フィルムの反射防止性能を比較する場合、デルタ反射率は一つの指標となり、デルタ反射率の値が小さいほど良好であると言える。デルタ反射率が大きくなると反射光線中の特定領域波長の反射が相対的に大きくなり、結果として反射光線に色目が付くため好ましくない。
【0088】
また、反射防止フィルムとして良好な性質を示すには更に、透明性が高いことが望ましい。透明性が低いと画像表示装置として用いた場合、画像彩度の低下などによる画質低下が生じるために好ましくない。本発明の製造方法により得られる反射防止フィルムの透明性の評価にはヘイズ値を用いることができる。ヘイズはJIS K 7136(2000)に規定された透明性材料の濁りの指標である。ヘイズは小さいほど透明性が高いことを示す。反射防止フィルムのヘイズ値としては好ましくは3.0%以下であり、より好ましくは2.0%未満、更に好ましくは1.0%未満であり、値が小さいほど透明性の点で良好であるものの、0%とすることは困難であり、現実的な下限値は0.01%程度と思われる。ヘイズ値が3.0%以上であると、画像劣化が生じる可能性が高くなるため好ましくない。
【0089】
反射防止フィルムとして良好な性質を示すには、高屈折率層、低屈折率の厚みが特定の厚みであることが望ましく、各層の厚みが好ましくは50nm以上200nm以下、さらに好ましくは70nm以上150nm以下であり、特に好ましくは90nm以上130nm以下であることが望ましい。厚みが50nm未満であると光の干渉効果が得られず反射防止効果が得られず画像の映り込みが大きくなるために好ましくない。また200nmを超える場合も光の干渉効果が得られなくなるため画像の映り込みが大きくなるために好ましくない。
【0090】
[その他の層]
本発明の塗料組成物により得られる反射防止フィルムには、さらに、ハードコート層、防湿層、帯電防止層、下塗り層や保護層などを設けてもよい。
【0091】
ハードコート層は、支持基材の一部であるフィルムに耐傷性を付与するために設ける。ハードコート層は、支持基材とその上の層との接着を強化する機能も有する。ハードコート層は、アクリル系ポリマー、ウレタン系ポリマー、エポキシ系ポリマー、シリコン系ポリマーやシリカ系化合物を用いて形成することができる。顔料をハードコート層に添加してよい。アクリル系ポリマーは、多官能アクリレートモノマー(例、ポリオールアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート)の重合反応により合成することが好ましい。ウレタン系ポリマーの例には、メラミンポリウレタンが含まれる。シリコン系ポリマーとしては、シラン化合物(例、テトラアルコキシシラン、アルキルトリアルコキシシラン)と反応性基(例、エポキシ、メタクリル)を有するシランカップリング剤との共加水分解物が好ましく用いられる。更には2種類以上のポリマーを組み合わせて用いてもよい。シリカ系化合物としては、コロイダルシリカが好ましく用いられる。ハードコート層の強度は、1kg荷重の鉛筆硬度で、H以上であることが好ましく、2H以上であることがさらに好ましく、3H以上であることが最も好ましい。支持基材には、ハードコート層に加えて、接着層、シールド層、滑り層を設けてもよい。シールド層は、電磁波や赤外線を遮蔽するために設けられる。
【0092】
また、本発明の塗料組成物により得られる反射防止フィルムは、塗料組成物中にフッ素化合物Bを含むことにより高屈折率層の厚みを厚くすることが可能である。高屈折率層の厚みを厚くした場合、支持基材にハードコート層が積層されていなくても、耐擦傷性が付与された反射防止フィルムとすることができる。
[支持基材]
反射防止膜をCRT画像表示面やレンズ表面に直接設ける場合を除き、反射防止膜は支持基材を有することが重要である。支持基材としては、ガラス板よりもプラスチックフィルムの方が好ましい。プラスチックフィルムの材料の例には、セルロースエステル(例、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、プロピオニルセルロース、ブチリルセルロース、アセチルプロピオニルセルロース、ニトロセルロース)、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエステル(例、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン−1,2−ジフェノキシエタン−4,4’−ジカルボキシレート、ポリブチレンテレフタレート)、ポリスチレン(例、シンジオタクチックポリスチレン)、ポリオレフィン(例、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメチルペンテン)、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリメチルメタクリレート及びポリエーテルケトンなどが含まれるが、これらの中でも得にトリアセチルセルロース、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレートおよびポリエチレンナフタレートが好ましい。
【0093】
また上述のように、支持基材はハードコート層、接着層、シールド層、滑り層などの各種機能層を有するフィルムとすることもできる。
【0094】
支持基材の光透過率は、80%以上100%以下であることが好ましく、86%以上100%以下であることがさらに好ましい。ここで光透過率とは、光を照射した際に試料を透過する光の割合のことであり、JIS K 7361−1(1997)に従い測定することができる透明材料の透明性の指標である。反射防止フィルムの光透過率としては値が大きいほど良好であり、値が小さいとヘイズ値が上昇、画像劣化が生じる可能性が高くなるため好ましくない。ヘイズはJIS K 7136(2000)に規定された透明材料の濁りの指標である。ヘイズは小さいほど透明性が高いことを示す。
【0095】
支持基材のヘイズは、0.01%以上2.0%以下であることが好ましく、0.05%以上1.0%以下であることがさらに好ましい。
【0096】
支持基材の屈折率は、1.4〜1.7であることが好ましい。なお、ここでいう屈折率とは、光が空気中からある物質中に進む時、その界面で進行方向の角度を変える割合のことであり、JIS K 7142(1996)に規定されている方法により測定することができる。
【0097】
支持基材には、赤外線吸収剤あるいは紫外線吸収剤を添加してもよい。赤外線吸収剤の添加量は、支持基材の全成分100質量%において0.01〜20質量%であることが好ましく、0.05〜10質量%であることがさらに好ましい。滑り剤として、不活性無機化合物の粒子を透明支持体に添加してもよい。無機化合物の例には、SiO、TiO、BaSO、CaCO、タルクおよびカオリンが含まれる。更に、支持基材に、表面処理を実施してもよい。
【0098】
支持基材の表面には、各種の表面処理を施すことも可能である。表面処理の例には、薬品処理、機械的処理、コロナ放電処理、火焔処理、紫外線照射処理、高周波処理、グロー放電処理、活性プラズマ処理、レーザー処理、混酸処理およびオゾン酸化処理が含まれる。これらの中でもグロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ放電処理および火焔処理が好ましく、グロー放電処理と紫外線処理がさらに好ましい。
【0099】
〔本発明の塗料組成物を用いた反射防止フィルムの製造方法〕
本発明の塗料組成物を用いた反射防止フィルムの製造方法では、前述の本発明の塗料組成物を、支持基材の少なくとも片面上に、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法などの塗布方法によって少なくとも1回塗布する工程(塗布工程)、続いて塗布した塗料組成物を加熱などにより乾燥を行う工程(乾燥工程)により、反射防止フィルムを得ることができる。
【0100】
本発明の製造方法によれば、前記本発明の塗料組成物を、1回塗布する工程と乾燥する工程により、支持基材上に屈折率の異なる二層を同時に形成することができる
得られる反射防止フィルム中から完全に溶媒を除去する事に加え、欠陥なく二層に分離させるという観点からも、乾燥工程では加熱することが好ましい。乾燥工程は、(A)材料余熱期間、(B)恒率乾燥期間、(C)減率乾燥期間に分けられるが、材料予熱期間(材料全体が乾燥する温度まで昇温する期間)から、恒率乾燥期間(塗液が動かなくなるまでの期間)にかけて、溶媒の蒸発に伴い屈折率の異なる二層を形成するが、二層を形成する無機粒子の移動に十分な時間を確保するため、風速が低く、できるだけ低温で乾燥することが好ましい。
【0101】
この乾燥初期である(A)材料余熱期間や(B)恒率乾燥期間における風速としては、1m/s以上10m/s以下であることが好ましく、より好ましくは1m/s以上5m/s以下である。乾燥後期における減率乾燥期間においては、残存溶媒を減らせる点から、風速は10m/s以上70m/s以下であるのが好ましく、また温度は100℃以上200℃以下であるのが好ましい。加熱温度としては、用いる溶媒の沸点及びポリマーのガラス転移温度などから決定できるが特に限定される値ではない。乾燥工程における、加熱方式としては、カウンターフロー方式、熱風噴射、赤外線、マイクロ波、誘導加熱などが挙げられる。この中でも、乾燥初期である(A)材料余熱期間や(B)恒率乾燥期間においては、風速、温度の点からカウンターフロー方式が好ましいが、特に限定されるものではない。また乾燥後期である(C)減率乾燥期間においては、汎用性の点からトンネル式であるのが好ましい。
【0102】
さらに、乾燥工程後に形成された支持基材上の2層に対して、熱またはエネルギー線を照射する事によるさらなる硬化操作(硬化工程)を行ってもよい。硬化工程において、熱で硬化する場合には、室温から200℃であることが好ましく、溶媒の蒸発および、シラノールなどを含む樹脂の硬化助剤の観点から、より好ましくは100℃以上200℃以下、さらに好ましくは130℃以上200℃以下である。100℃以上とすることにより、残存する溶媒量が減少し、非常に短時間でシラノールなどを含む樹脂の硬化が進むために好ましい。
【0103】
また、エネルギー線により硬化する場合には汎用性の点から電子線(EB線)及び/又は紫外線(UV線)であることが好ましい。また紫外線により硬化する場合は、酸素阻害を防ぐことができることから酸素濃度ができるだけ低い方が好ましく、窒素雰囲気下(窒素パージ)で硬化する方がより好ましい。酸素濃度が高い場合には、最表面の硬化が阻害され、硬化が不十分となり、耐擦傷性、耐アルカリ性が不十分となる場合がある。また、紫外線を照射する際に用いる紫外線ランプの種類としては、例えば、放電ランプ方式、フラッシュ方式、レーザー方式、無電極ランプ方式等が挙げられる。放電ランプ方式である高圧水銀灯を用いて紫外線硬化させる場合、紫外線の照度が100〜3000mW/cm、好ましくは200〜2000mW/cm、さらに好ましくは300〜1500mW/cmとなる条件で紫外線照射を行うことが好ましく、紫外線の積算光量が100〜3000mJ/cm、好ましく200〜2000mJ/cm、さらに好ましくは300〜1500mJ/cmとなる条件で紫外線照射を行うことがより好ましい。ここで、紫外線照度とは、単位面積当たりに受ける照射強度で、ランプ出力、発光スペクトル効率、発光バルブの直径、反射鏡の設計及び被照射物との光源距離によって変化する。しかし、搬送スピードによって照度は変化しない。また、紫外線積算光量とは単位面積当たりに受ける照射エネルギーで、その表面に到達するフォトンの総量である。積算光量は、光源下を通過する照射速度に反比例し、照射回数とランプ灯数に比例する。
【0104】
硬化を熱により行う場合、乾燥工程と硬化工程とを同時におこなってもよい。
【0105】
また本発明の製法により得られた反射防止フィルムは、PDPなどの各種画像表示装置の視認側表面に設けることで、反射防止性に優れた画像表示装置を提供することができる。なおこの際は、反射防止フィルムにおける支持基材側を画像表示装置側として、反射防止フィルムなどを設けることが重要である。
【実施例】
【0106】
次に、実施例に基づいて本発明を説明するが、本発明は必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0107】
[製造例]
[高屈折率層構成成分(a)の調整]
pH6の高屈折率層構成成分として、アンチモン含有酸化スズであるコルコートECH−111(コルコート株式会社)を固形分濃度3.5質量%となるように酢酸エチル:イソプロパノール混合液(質量比=1:1)にて希釈し用いた。
【0108】
〔高屈折率層構成成分(b)の調整〕
pH4の高屈折率層構成成分として、アンチモン含有酸化スズであるオプスターTU4005(JSR社製)を固形分濃度6質量%となるようにメチルエチルケトン:イソプロパノール混合液(質量比=1:1)にて希釈して用いた。
【0109】
[高屈折率層構成成分(c)の調整]
pH1の高屈折率層構成成分として、酸化ジルコニウムであるTYZ67−H01(東洋インキ株式会社製)を固形分濃度3.2質量%となるようにメチルイソブチルケトンを加え希釈した。
【0110】
〔高屈折率層構成成分(d)の調整〕
pH2の高屈折率成分としてアンチモン含有酸化スズであるTYS61−01E(東洋インキ株式会社製)を固形分濃度3.4質量%となるようにイソプロピルアルコールにて希釈して用いた。
【0111】
〔高屈折率層構成成分(e)の調整〕
pH4の高屈折率層構成成分として、二酸化チタンであるELCOM(日揮触媒化成株式会社製)とバインダー成分としてEBCRYL8210(ダイセルサイテック株式会社製)を8:2の割合で混合し、固形分濃度3.5質量%となるようにイソプロピルアルコール:エチレングリコールモノメチルエーテル=8:1にて希釈した。
【0112】
〔高屈折率層構成成分(f)の調整〕
pH4の高屈折率層構成成分として、二酸化チタンであるELCOM(日揮触媒化成株式会社製)とバインダー成分としてEBCRYL8210(ダイセルサイテック株式会社製)を8:2の割合で混合し、固形分濃度30質量%となるようにイソプロピルアルコール:エチレングリコールモノメチルエーテル=1:1にて希釈した。
【0113】
〔高屈折率層構成成分(g)の調整〕
バインダー成分としてHPA(大阪有機化学株式会社製)を用いた点を除いては、高屈折率層構成成分(f)と同様の割合で混合、希釈した。
【0114】
〔高屈折率層構成成分(h)の調整〕
バインダー成分としてACA230AA(ダイセルサイテック株式会社製)を用いた点を除いては、高屈折率層構成成分(f)と同様の割合で混合、希釈した。
【0115】
〔高屈折率層構成成分(i)の調整〕
pH2の高屈折率成分としてアンチモン含有酸化スズであるTYS61−01E(東洋インキ株式会社製)とバインダー成分としてEBCRYL8210(ダイセルサイテック株式会社製)を8:2の割合で混合し、固形分濃度30質量%となるようにイソプロピルアルコール:エチレングリコールモノメチルエーテル=1:1にて希釈した。
【0116】
〔高屈折率層構成成分(j)の調整〕
バインダー成分としてKAYARAD R−167(日本化薬株式会社製)を用いた点を除いては、高屈折率層構成成分(f)と同様の割合で混合、希釈した。
【0117】
〔高屈折率層構成成分(k)の調整〕
バインダー成分としてEBECRYL12(ダイセルサイテック式会社製)を用いた点を除いては、高屈折率層構成成分(f)と同様の割合で混合、希釈した。
【0118】
〔高屈折率層構成成分(l)の調整〕
バインダー成分としてはEBECRYL11(ダイセルサイテック式会社製)を用いた点を除いては、高屈折率層構成成分(f)と同様の割合で混合、希釈した。
【0119】
〔高屈折率層構成成分(m)の調整〕
バインダー成分としてKC−250(共栄社化学株式会社製)を用いた点を除いては、高屈折率層構成成分(f)と同様の割合で混合、希釈した。
【0120】
[低屈折率層構成成分の調整]
[低屈折率層構成成分(a)の調整]
中空シリカであるスルーリアTR−113(触媒化成工業株式会社製:固形分濃度20質量%)20gに、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン4.4gと5質量%蟻酸水溶液1.8gを混合し、70℃にて1時間撹拌した。ついで、2−ペルフルオロオクチルエチルアクリレート4.6g及び2,2−アゾビスイソブチロニトリル0.2gを加えた後、30分間70℃にて加熱撹拌した。その後、イソプロピルアルコールを333g加え希釈し、固形分3.8質量%、pH4の低屈折率層構成成分(a)とした。
【0121】
[低屈折率層構成成分(b)の調整]
中空シリカであるスルーリアTR−113(触媒化成工業株式会社製:固形分20質量%)20gに、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン4.4gと5質量%蟻酸水溶液1.8gを混合し、70℃にて1時間撹拌した。その後、イソプロピルアルコールを221g加え希釈し、固形分3.6質量%、pH3の低屈折率層構成成分(b)とした。
【0122】
[低屈折率層構成成分(c)の調整]
中空シリカであるスルーリアTR−113(触媒化成工業株式会社製:固形分20質量%)20gに、イソプロピルアルコールを113g加え希釈し、固形分3.1質量%、pH3の低屈折率層構成成分(c)とした。
〔低屈折率層構成成分(d)の調整〕
中空シリカであるスルーリアTR−113(触媒化成工業株式会社製:固形分20質量%)20gに、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン2.75gと10質量%蟻酸水溶液0.34gを混合し、70℃にて1時間撹拌した。ついで、2−ペルフルオロ−7−メチルオクチルエチルアクリレート2.76g及び2,2−アゾビスイソブチロニトリル0.115gを加えた後、1時間90℃にて加熱撹拌した。得られた液を、イソプロピルアルコールで希釈し、固形分濃度3.6質量%、pH5の低屈折率成分(d)とした。
【0123】
〔低屈折率層構成成分(e)の調整〕
中空シリカであるスルーリアTR−113(触媒化成工業株式会社製:固形分20質量%)20gに、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン2.75gと10質量%蟻酸水溶液0.34gを混合し、70℃にて1時間撹拌した。ついで、2−ペルフルオロヘキシルエチルアクリレート2.76g及び2,2−アゾビスイソブチロニトリル0.115gを加えた後、1時間90℃にて加熱撹拌した。得られた液を、イソプロピルアルコールで希釈し、固形分濃度3.6質量%、pH3の低屈折率層構成成分(e)とした。
〔低屈折率層構成成分(f)の調整〕
中空シリカであるスルーリア(日揮触媒化成株式会社製:固形分20質量%、数平均粒子径60nm)15gに、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン1.375gと10質量%蟻酸水溶液0.17g、水0.306gを混合し、70℃にて1時間撹拌した。ついで、2−ペルフルオロオクチルエチルアクリレート1.38g及び2,2−アゾビスイソブチロニトリル0.0575gを加えた後、1時間90℃にて加熱撹拌した。得られた液を、イソプロピルアルコールで希釈し、固形分濃度3.5質量%、pH4.5の低屈折率層構成成分(f)とした。
〔塗料組成物1〜28〕
以下の方法により塗料組成物1〜28を調整した。また、塗布時に用いる塗料組成物は、25℃、相対湿度45%で1ヶ月保存後の塗料組成物を用いた。なお、表においては塗料組成物を塗剤と記した。
【0124】
[塗料組成物1]
低屈折率層構成成分(a)と高屈折率層構成成分(a)をそれぞれ質量比にて4:6となるように混合した溶液100質量部に、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンを3質量部添加し、pH5の塗料組成物とした。
【0125】
[塗料組成物2]
低屈折率層構成成分(a)と高屈折率層構成成分(b)をそれぞれ質量比にて4:6となるように混合した溶液100質量部に、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンを3質量部添加し、pH4の塗料組成物とした。
【0126】
[塗料組成物3]
低屈折率層構成成分(d)と高屈折率層構成成分(a)をそれぞれ質量比にて4:6となるように混合した溶液100質量部に、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンを3質量部添加し、pH6の塗料組成物とした。
【0127】
[塗料組成物4]
低屈折率層構成成分(d)と高屈折率層構成成分(b)をそれぞれ質量比にて4:6となるように混合した溶液100質量部に、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンを3質量部添加し、pH5の塗料組成物とした。
【0128】
[塗料組成物5]
低屈折率層構成成分(e)と高屈折率層構成成分(b)をそれぞれ質量比にて4:6となるように混合した溶液100質量部に、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンを3質量部添加しpH3の塗料組成物とした。
【0129】
[塗料組成物6]
低屈折率層構成成分(a)と高屈折率層構成成分(c)をそれぞれ質量比にて4:6となるように混合し、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンを3質量部添加しpH1の塗料組成物とした。
【0130】
[塗料組成物7]
低屈折率層構成成分(a)と高屈折率層構成成分(d)をそれぞれ質量比にて4:6となるように混合した溶液100質量部に、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンを3質量部添加し、pH2の塗料組成物とした。
[塗料組成物8]
低屈折率層構成成分(b)と高屈折率層構成成分(a)をそれぞれ質量比にて4:6となるように混合した溶液100質量部に、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンを3質量部添加し、pH3の塗料組成物とした。
【0131】
[塗料組成物9]
低屈折率層構成成分(c)と高屈折率層構成成分(b)をそれぞれ質量比にて4:6となるように混合した溶液100質量部に2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンを3質量部添加し、pH4の塗料組成物とした。
【0132】
[塗料組成物10]
低屈折率層構成成分(d)と高屈折率層構成成分(c)をそれぞれ質量比にて4:6となるように混合した溶液100質量部に、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンを3質量部添加し、pH2の塗料組成物とした。
【0133】
[塗料組成物11]
低屈折率層構成成分(e)と高屈折率層構成成分(d)をそれぞれ質量比にて4:6となるように混合した溶液100質量部に、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンを3質量部添加し、pH7の塗料組成物とした。
【0134】
〔塗料組成物12〕
低屈折率層構成成分(a)と高屈折率層構成成分(d)をそれぞれ質量比にて4:6となるように混合した溶液100質量部に、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンを3質量部添加し、さらに1mol/Lの水酸化カリウム水溶液を加えpH4の塗料組成物とした。
【0135】
〔塗料組成物13〕
低屈折率層構成成分(d)と高屈折率層構成成分(c)をそれぞれ質量比にて4:6となるように混合した溶液100質量部に、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンを3質量部添加し、さらに1mol/Lの水酸化カリウム水溶液を加えpH4の塗料組成物とした。
【0136】
〔塗料組成物14〕
低屈折率層構成成分(e)と高屈折率層構成成分(d)をそれぞれ質量比にて4:6となるように混合した溶液100質量部に、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンを3質量部添加し、さらに1mol/Lの水酸化カリウム水溶液を加えpH4の塗料組成物とした。
【0137】
〔塗料組成物15〕
低屈折率層構成成分(e)と高屈折率層構成成分(e)をそれぞれ質量比にて4:6となるように混合した溶液100質量部に、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンを3質量部添加し、pH4の塗料組成物とした。
【0138】
〔塗料組成物16〕
低屈折率層構成成分(f)と高屈折率層構成成分(e)をそれぞれ質量比にて4:6となるように混合した溶液100質量部に、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンを3質量部添加し、pH4の塗料組成物とした。
【0139】
〔塗料組成物17〕
低屈折率層構成成分(e)と高屈折率層構成成分(f)をそれぞれ質量比にて5:5となるように混合した溶液100質量部に、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンを3質量部、フッ素化合物B(HC=CH−COO−CH−(CFF 分子量:518 )10質量部添加し、pH5の塗料組成物とした。
〔塗料組成物18〕
低屈折率層構成成分(f)と高屈折率層構成成分(f)をそれぞれ質量比にて5:5となるように混合した溶液100質量部に、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンを3質量部、フッ素化合物B(HC=CH−COO−CH−(CFF 分子量:518 )10質量部添加し、pH5の塗料組成物とした。
〔塗料組成物19〕
低屈折率層構成成分(f)と高屈折率層構成成分(g)をそれぞれ質量比にて5:5となるように混合した溶液100質量部に、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンを3質量部、フッ素化合物B(HC=CH−COO−CH−(CFF 分子量:518 )10質量部添加し、pH5の塗料組成物とした。
〔塗料組成物20〕
低屈折率層構成成分(e)と高屈折率層構成成分(i)をそれぞれ質量比にて5:5となるように混合した溶液100質量部に、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンを3質量部、
フッ素化合物B(HC=CH−COO−CH−(CFF 分子量:518 )10質量部添加し、pH2の塗料組成物とした。
〔塗料組成物21〕
低屈折率層構成成分(e)と高屈折率層構成成分(f)をそれぞれ質量比にて5:5となるように混合した溶液100質量部に、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンを3質量部添加し、pH5の塗料組成物とした。
〔塗料組成物22〕
低屈折率層構成成分(e)と高屈折率層構成成分(f)をそれぞれ質量比にて5:5となるように混合した溶液100質量部に、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンを3質量部、
フッ素化合物(HC=CH−COO−CH−CF 分子量:154 )10質量部添加し、pH5の塗料組成物とした。
〔塗料組成物23〕
低屈折率層構成成分(e)と高屈折率層構成成分(f)をそれぞれ質量比にて5:5となるように混合した溶液100質量部に、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンを3質量部、
フッ素化合物(−(CFCFCFO)− 分子量:4500 )10質量部添加し、pH5の塗料組成物とした。
〔塗料組成物24〕
低屈折率層構成成分(f)と高屈折率層構成成分(j)をそれぞれ質量比にて5:5となるように混合した溶液100質量部に、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンを3質量部、
フッ素化合物B(HC=CH−COO−CH−(CFF 分子量:518 )10質量部添加し、pH5の塗料組成物とした。
〔塗料組成物25〕
低屈折率層構成成分(f)と高屈折率層構成成分(l)をそれぞれ質量比にて5:5となるように混合した溶液100質量部に、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンを3質量部、
フッ素化合物B(HC=CH−COO−CH−(CFF 分子量:518 )10質量部添加し、pH4の塗料組成物とした。
〔塗料組成物26〕
低屈折率層構成成分(f)と高屈折率層構成成分(k)をそれぞれ質量比にて5:5となるように混合した溶液100質量部に、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンを3質量部、
フッ素化合物B(HC=CH−COO−CH−(CFF 分子量:518 )10質量部添加し、pH5の塗料組成物とした。
〔塗料組成物27〕
低屈折率層構成成分(f)と高屈折率層構成成分(h)をそれぞれ質量比にて5:5となるように混合した溶液100質量部に、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンを3質量部、
フッ素化合物B(HC=CH−COO−CH−(CFF 分子量:518 )10質量部添加し、pH4の塗料組成物とした。
〔塗料組成物28〕
低屈折率層構成成分(e)と高屈折率層構成成分(n)をそれぞれ質量比にて5:5となるように混合した溶液100質量部に、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンを3質量部、
フッ素化合物B(HC=CH−COO−CH−(CFF 分子量:518 )10質量部添加し、pH2の塗料組成物とした。
【0140】
[反射防止フィルムの作製]
支持基材としてPET樹脂フィルム上に易接着性塗料が塗工されている“ルミラー”U46(東レ(株)製)、またはPET樹脂フィルム上にハードコート塗料が塗布硬化されているルミクリアSR−HC(東レフィルム加工株式会社製)をもちいた。この支持基材の易接着性塗料が塗工されている面上、またはハードコート塗料が塗布硬化されている面上に、実施例・比較例として表に記載の塗料組成物をバーコーター(#10)を用いて塗布後、100℃にて1分間乾燥し、160W/cmの高圧水銀灯ランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度600W/cm、積算光量800mJ/cmの紫外線を、酸素濃度0.1体積%の下で照射し、反射防止フィルムを作製した。
【0141】
[反射防止フィルムの評価]
作製した反射防止フィルムについて次に示す性能評価を実施し、得られた結果を表1に示した。特に断りのない場合を除き、測定は各実施例・比較例において、1つのサンプルについて場所を変えて3回測定を行い、その平均値を用いた。
[反射防止性能]
反射防止性能の評価は島津製作所製分光光度計UV−3100を用いて400nmから800nmの波長範囲にて行い、最低反射率(ボトム反射率)とデルタ反射率を測定した。
[耐擦傷性]
反射防止フィルムに250g/cm荷重となるスチールウール(#0000)を垂直にあて、1cmの長さを10往復した際に目視される傷の概算本数を記載した。
【0142】
傷の本数 0本以上〜5本未満 ◎
5本以上〜15本未満 ○
15本以上 ×
傷の本数が15本未満を合格とした。
[透明性]
透明性はヘイズ値を測定することにより判定した。測定はJIS K 7136(2000)に基づき、日本電色工業(株)製 ヘイズメーターを用いて、反射防止フィルムサンプルの支持基材とは反対側から光を透過するよう、装置に置いて測定を行い、1.5%未満は評価○、1.5%以上2.0%未満は△、2.0%以上を評価×とした。
〔耐アルカリ性〕
1質量%のNaOH溶液を反射防止フィルムサンプルの支持基材と反対側の面(低屈折率層側)に滴下させ、15分経過後にガーゼを用いて拭取り作業を行った。拭取り後の表面状態を観察することにより、表面が侵されているかどうか目視で判定した。
【0143】
液滴の跡がなければ評価○、跡が確認できれば評価×とした。なお、一つのサンプルについて場所を変えた3ヶ所について評価したうち、最も多い評価結果を採用する。
[2層の界面の有無]
透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて断面を観察することにより、支持基材上の2層の界面の有無を判断した。界面の有無の判断は以下の方法に従い判断した。TEMにより20万倍の倍率で撮影した画像を、スキャナーを用いてプレゼンテーションソフトウェア(Microsoft Power Point2003)に貼付した。次いで貼付した写真のイメージコントロール処理(コントラストを90%とする)を行い、コントラストを強調した。この際に、1つの層と他の層との界面に明確な境界を引くことができる場合を、明確な界面があるとみなした(明確な境界を引くことができる場合を界面有りとして「○」で示し、部分的に境界線が乱れている場合を「△」、明確な境界を引くことができない場合を界面無しとして「×」で示した。)。
〔2層の層厚み〕
透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて断面を観察することにより、支持基材上の2層の各層の厚みを測定した。各層の厚みは、以下の方法に従い測定した。TEMにより20万倍の倍率で撮影した画像から各層の厚みを読み取った。合計で10点の層厚みを測定して平均値とした。
[2層個々の屈折率]
本発明における2層個々の屈折率は、反射分光膜厚計(大塚電子製、商品名[FE−3000])により、300〜800nmの範囲での反射率を測定し、該装置付属のソフトウェア[FE−Analysis]を用い、大塚電子株式会社製[膜厚測定装置 総合カタログP6(非線形最小二乗法)]に記載の方法に従い、550nmにおける屈折率を求めた。
【0144】
屈折率の波長分散の近似式としてCauchyの分散式(式1)を用い最小二乗法(カーブフィッティング法)により、光学定数(C、C、C)を計算し、550nmにおける屈折率を測定した。
[粒子の数平均粒子径]
粒子の数平均粒子径は、透過型電子顕微鏡により求めた。倍率を50万倍とし、その画面内に存在する10個の粒子の外径を測定し、その平均値とした。画面内に10個の粒子が存在しない場合は、同じ条件で別の箇所を観察し、その画面内に存在する粒子の外径を測定して、合計で10個の粒子の外径を測定して平均値とした。
【0145】
ここで外径とは、粒子の最大の径(つまり粒子の長径であり、粒子中の最も長い径を示す)を表し、内部に空洞を有する粒子の場合も同様に、粒子の最大の径を表す。
〔塗料組成物のpH〕
塗料組成物のpHは、pHメーター(堀場製作所製、商品名〔D−51〕)を用いて、1つのサンプルについて3回測定を行い、その平均値を用いた。
【0146】
〔酸価の測定方法〕
JIS−K5601−2−1;1999の方法を用いて、フェノールフタレインを指示薬とした水酸化カリウムの中和滴定法により酸価を求めた。
【0147】
〔溶媒残存率の算出〕
塗料の乾燥方法と溶媒残存率の算出を以下の方法で行った。
清浄なアルミ皿の風袋(W1)を精密天秤(読み取り限界0.1mg)を用いて秤量する。次にアルミ皿に塗料組成物を採取し、固形分濃度が既知の塗料組成物をのせたアルミ皿の質量(W2)を精密天秤を用いて秤量する。試料を乗せたアルミ皿を、溶媒の沸点別に定めた温度の恒温器の中に約2時間放置する。
(沸点が高い溶媒の場合(沸点:120℃以上)は100℃、沸点が低い溶媒の場合(沸点:60℃以下)は30℃、沸点が前記範囲外の場合は80℃とする。
【0148】
なおここでいう沸点とは、工業的に使用される有機溶媒は、一般的にCAS番号が付与され、沸点等の物性値を含む安全性データがインターネットで公表されており、その値を用いた。公表されているデータに沸点の記載がない場合や、混合溶媒の場合は、桜井、池田考案の沸点測定装置「化学大事典3」共立出版(1960年、p831)を用いて測定した値を用いた。)
加熱後、恒温器からこのアルミ皿を取り出しデシケーター中で放冷する。放冷後、精密天秤を用いて試料をのせたアルミ皿の質量(W3)を秤量する。下式より、この試料の乾燥後の固形分濃度を求める。
【0149】
(W2−W1)×固形分濃度(%)/(W3−W1)×100=乾燥後の固形分濃度(%)
W1:アルミ皿質量(g)
W2:アルミ皿質量+乾燥前の塗料組成物の質量(g)
W3:アルミ皿質量+乾燥後の塗料組成物の質量(g)
塗料組成物全体を100%とすると、
100%−固形分濃度(%)=溶媒濃度(%) である。
【0150】
乾燥前の固形分濃度から、乾燥前の塗料組成物中の溶媒濃度(S1)を求め、乾燥後の固形分濃度から、乾燥後の塗料組成物中の溶媒濃度(S2)を求める。
S1:乾燥前の塗料組成物中の溶媒濃度(%)
S2:乾燥後の塗料組成物中の溶媒濃度(%)
乾燥前の塗料組成物の溶媒量を100質量%とし、下式より塗料の溶媒残存率を求める。
[(W3−W1)×S2]/[(W2−W1)×S1]×100=溶媒残存率(質量%)
〔溶媒残存率50質量%の塗料組成物の作成方法〕
塗料組成物を乾燥させ、30分毎に上記方法で溶媒残存率を測定する。時間の経過と共に溶媒残存率が減少していき、測定値が60質量%以下からは5分毎に測定、50質量%近傍ではさらに短時間の乾燥時間を調整し、溶媒残存率50質量%となる塗料組成物を作成する。
【0151】
〔溶媒残存率50質量%のpH〕
上記の方法により溶媒残存率50質量%時の塗料組成物を作成し、pHメーター(堀場製作所製、商品名〔D−51〕)を用いて、1つのサンプルについて3回測定を行い、その平均値を用いた。
〔塗料組成物の保存安定性〕
塗料組成物の保存安定性は、得られた塗料組成物を50ccスクリュー管(アズワン製、商品名〔ラボランパック〕)に30g加え、密閉後25℃、相対湿度60%の環境下にて30日保管後、ゆっくりとスクリュー管を逆さにした後、塗料組成物の状態を目視により観察して、沈殿物の有無で判定した。
沈殿物なしで液の透明性良好 ◎
沈殿物なしで若干液の濁りあり ○
沈殿物なしで液の濁りあり △
沈殿物あり ×
【0152】
【表1】

【0153】
【表2】

【0154】
【表3】

【0155】
【表4】

表1において、「フッ素処理無機粒子」と記載された欄の数平均粒子径は、フッ素処理無機粒子を表面処理する前の無機粒子の数平均粒子径である。
【0156】
表1から明らかなように、塗料組成物のpHが3以上6以下の場合(実施例1〜20)では、塗料組成物の保存安定性に優れ、反射防止性、耐擦傷性、耐アルカリ性、透明性に優れたバランスのよいフィルムであった。
【0157】
さらに溶媒残存率が50質量%となった場合において、塗料組成物のpHが3未満の場合(実施例7)、塗料組成物のpHが5以上の場合(実施例1、3)では、保存安定性が若干劣るものであった。
【0158】
また、塗料組成物中の高屈折率層構成成分割合が多い場合の塗料組成物において、該塗料組成物が数平均分子量300以上4000以下であるフッ素化合物Bを含有しない場合(実施例18〜20)では、耐擦傷性、反射防止性、透明性、が若干劣るものであった。
【0159】
一方、塗料組成物のpHが3未満の場合(比較例1、2、5、7,8)では、耐アルカリ性、耐擦傷性が良好なものの、塗料組成物の保存安定性、反射防止性、透明性に欠けるものであった。
【0160】
また塗料組成物のpHが6を超える場合(比較例6)では、耐擦傷性、耐アルカリ性が良好なものの、塗料組成物の保存安定性、反射防止性、透明性に欠けるものであった。
【0161】
塗料組成物がフッ素処理無機粒子を含有しない場合(比較例3、4)では、塗料組成物のpHが3以上6以下の場合であっても、耐アルカリ性が良好なものの、耐擦傷性、反射防止性、透明性に欠けるものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機溶媒及び2種類以上の無機粒子を含む塗料組成物であって、
該2種類以上の無機粒子における少なくとも1種類の無機粒子が、フッ素化合物Aにより表面処理された無機粒子であり、
さらに該塗料組成物のpHが3以上6以下であることを特徴とする、塗料組成物。
【請求項2】
前記塗料組成物がバインダー成分を含み、該バインダー成分の酸価が30以下であることを特徴とする請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項3】
前記塗料組成物が、フルオロアルキル基および反応性部位を有し、数平均分子量が300以上4000以下であるフッ素化合物Bを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の塗料組成物。
【請求項4】
前記フッ素化合物Aにより表面処理された無機粒子が、フッ素化合物Aにより表面処理されたシリカ粒子(以後、フッ素化合物Aにより表面処理されたシリカ粒子を、フッ素処理シリカ粒子とよぶ)であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の塗料組成物。
【請求項5】
前記フッ素処理シリカ粒子が、シリカ粒子を下記一般式(I)で示される化合物で処理し、更に一般式(II)で示されるフッ素化合物Aで処理した粒子であることを特徴とする、請求項4に記載の塗料組成物。
A−R−SiR(OR3−n 一般式(I)
B−R−Rf 一般式(II)
(上記一般式中のA、Bは反応性二重結合基を示し、R、Rは炭素数1から3のアルキレン基及びそれらから導出されるエステル構造を示し、R、Rは水素又は炭素数が1から4のアルキル基を示し、Rfはフルオロアルキル基を示し、nは0から2の整数を示し、それぞれ側鎖を構造中に持っても良い。)
【請求項6】
前記フッ素処理シリカ粒子を除いた他の無機粒子が、金属酸化物からなる無機粒子であることを特徴とする、請求項4又は5に記載の塗料組成物。
【請求項7】
屈折率の異なる2層を有する反射防止フィルムの製造方法であって、以下の工程を含むことを特徴とする反射防止フィルムの製造方法。
工程1:請求項1〜6のいずれかに記載の塗料組成物を支持基材の少なくとも片面上に1回塗布する工程
工程2:工程1にて塗布した塗料組成物を乾燥する工程
【請求項8】
前記工程2の塗料組成物の溶媒残存率が50質量%の際に、塗料組成物のpHが3以上5未満の範囲にあることを特徴とする、請求項7に記載の反射防止フィルムの製造方法。
【請求項9】
請求項7又は8の製造方法により得られた反射防止フィルムを設けたことを特徴とする画像表示装置。

【公開番号】特開2010−196043(P2010−196043A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−15012(P2010−15012)
【出願日】平成22年1月27日(2010.1.27)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】