説明

塗料組成物、含フッ素積層体及び樹脂組成物

本発明は、バインダー成分の役割を果たす6価クロムを含まず、高温で長時間焼成を行っても、リン酸クロム系プライマーに匹敵する密着性を有する塗料組成物、及び、アミド基を有する樹脂の耐熱性を向上させた組成物を提供する。アミド基を有しているか又はアミド基を有することとなるアミド基含有性高分子化合物(A)と、上記アミド基の酸化を抑制することができる抗酸化性物質(B)とからなる塗料組成物であって、上記アミド基含有性高分子化合物(A)は、アミド基と芳香環とを有しているアミド基含有ポリマー(a1)、及び/又は、上記塗料組成物を塗装する際の焼成により上記アミド基含有ポリマー(a1)に変化するアミド基含有ポリマー前駆体(a2)であり、上記抗酸化性物質(B)は、上記アミド基含有性高分子化合物(A)と上記抗酸化性物質(B)との合計の0.1〜20質量%であることを特徴とする塗料組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、塗料組成物、含フッ素積層体及び樹脂組成物に関する。
【背景技術】
フッ素樹脂は、塗料組成物に調製し、パン金型、炊飯釜等の耐蝕性、非粘着性、耐熱性等が要求されるものの基材に塗装してフッ素樹脂層を形成させることに幅広い用途がある。しかしながら、フッ素樹脂は、その非粘着性ゆえに、金属、セラミック等からなる基材との接着性に乏しいので、フッ素樹脂とも基材とも親和性を有するプライマーを予め基材に塗装することが行われてきた。
フッ素樹脂層は、一般に耐蝕用途においては厚くする必要があり、厚くするためには、フッ素樹脂からなる塗料組成物を塗布してフッ素樹脂の融点以上の温度で焼成することよりなる塗装を繰り返して重ね塗りをする必要がある。プライマーは、この長時間の高温での焼成に耐えて基材等との密着性を維持し得る耐熱密着性を有することが求められる。
耐熱密着性に優れたプライマーとして、今日まで、長時間の高温焼成に優れた耐性を有するリン酸クロム系プライマーが幅広く用いられてきた。しかしながら、環境問題への意識が高まり、6価クロムを含まずリン酸クロム系プライマーに匹敵する強い耐熱密着性を有するクロムフリープライマーの開発が長年強く要望されていた。
クロムフリープライマーとして、従来、フッ素樹脂と各種バインダー樹脂との組み合わせが検討されてきた。バインダー樹脂としては、耐熱性の点からポリフェニレンサルファイド〔PPS〕の使用が提案された。PPSは、しかしながら、フッ素樹脂との相溶性に劣り、フッ素樹脂層との密着性が不充分であるという問題があった。
フッ素樹脂層との密着性を良好にするため、クロムフリープライマーにおけるバインダー樹脂として、PPSにポリアミドイミド〔PAI〕及び/又はポリイミド〔PI〕を添加することが提案され(例えば、特開昭53−74532号公報参照。)、実施例において、PAI:PPS=1:15〜1:20の量比で用いられている。
PPS及びPAIをバインダー樹脂とするクロムフリープライマーとしては、また、PAI:PPS=3:1〜1:3の量比で用いるものが提案された(例えば、米国特許第5789083号明細書参照。)。しかしながら、このクロムフリープライマーは、平滑面に塗布し得る水性プライマーを提供するために溶融粘度が異なる2種のフッ素樹脂を特定の量比で配合することを特徴とするものであり、長時間焼成すると耐熱密着性が悪化する問題があった。
クロムフリープライマーのバインダー樹脂としては、また、PAI:PPS=1:1のものも知られているが(例えば、特開平8−322732号公報参照。)、熱水に対する耐久性に問題があった。
このように、従来、PAI及びPPSからなるバインダー樹脂は、多量のPPSに少量のPAI等を添加する方向で開発が進められてきた。
PAIと酸化防止剤とを含む組成物としては、エステル結合、アミド結合及びイミド結合の少なくとも1種を有する樹脂(I)としてPAIを例示し、樹脂(I)と、樹脂(I)に対して0.1〜5.0重量%の酸化防止剤(III)とを含むものが開示されている(例えば、特開平2−4880号公報参照。)。しかしながら、この組成物は銅線等の銅被覆用に限定したものであり、プライマーとしての用途に関する記載も示唆もない。また、酸化防止剤(III)としてPPS等のポリアリレンサルファイドを用いることについても記載はない。
PAIは、混練、成形加工等を経て様々な耐熱性が要求される部位に用いられているが、PAIのアミド基の耐熱性が低く、高温下の使用において劣化しやすい場合があるという問題があった。
発明の要約
発明の目的は、上記現状に鑑み、バインダー成分の役割を果たす6価クロムを含まず、高温で長時間焼成を行っても、リン酸クロム系プライマーに匹敵する密着性を有する塗料組成物を提供することにある。本発明の目的は、また、アミド基を有する樹脂の耐熱性を向上させた組成物を提供することにある。
本発明は、アミド基を有しているか又はアミド基を有することとなるアミド基含有性高分子化合物(A)と、上記アミド基の酸化を抑制することができる抗酸化性物質(B)とからなる塗料組成物であって、上記アミド基含有性高分子化合物(A)は、アミド基と芳香環とを有しているアミド基含有ポリマー(a1)、及び/又は、上記塗料組成物を塗装する際の焼成により上記アミド基含有ポリマー(a1)に変化するアミド基含有ポリマー前駆体(a2)であり、上記抗酸化性物質(B)は、上記アミド基含有性高分子化合物(A)と上記抗酸化性物質(B)との合計の0.1〜20質量%であることを特徴とする塗料組成物である。
本発明は、アミド基を有しているか又はアミド基を有することとなるアミド基含有性高分子化合物(A)と、上記アミド基の酸化を抑制することができる抗酸化性物質(B)とからなる塗料組成物であって、プライマー組成物であり、上記アミド基含有性高分子化合物(A)は、アミド基と芳香環とを有しているアミド基含有ポリマー(a1)、及び/又は、上記塗料組成物を塗装する際の焼成により上記アミド基含有ポリマー(a1)に変化するアミド基含有ポリマー前駆体(a2)であり、上記抗酸化性物質(B)は、上記アミド基含有性高分子化合物(A)と上記抗酸化性物質(B)との合計の0.1〜20質量%であることを特徴とする塗料組成物である。
本発明は、バインダー成分の役割を果たす6価クロムを含まないクロムフリープライマーである塗料組成物であって、上記塗料組成物を被塗装物上に塗装することにより得られる測定用塗膜について、350℃に50時間おく耐熱性試験後の剥離接着強さが3kgf/cm以上、90℃以上の熱水に120時間浸漬する耐熱水処理試験後の剥離接着強さが3kgf/cm以上であることを特徴とする塗料組成物である。
本発明は、被塗装物、上記被塗装物上に上記塗料組成物を塗装することにより得られる塗膜、及び、フッ素樹脂層からなる含フッ素積層体であって、上記フッ素樹脂層は、フッ素樹脂(D)からなるものであり、上記被塗装物、上記塗膜及び上記フッ素樹脂層は、この順に積層していることを特徴とする含フッ素積層体である。
本発明は、アミド基を有しているか又はアミド基を有することとなるアミド基含有性高分子化合物(A)と、ポリアリレンサルファイドとからなる樹脂組成物であって、上記アミド基含有性高分子化合物(A)は、アミド基と芳香環とを有しているアミド基含有ポリマー(a1)、及び/又は、上記塗料組成物を塗装する際の焼成により上記アミド基含有ポリマー(a1)に変化するアミド基含有ポリマー前駆体(a2)であり、上記ポリアリレンサルファイドは、上記アミド基含有性高分子化合物(A)と上記ポリアリレンサルファイドとの合計の1〜40質量%であることを特徴とする樹脂組成物である。
発明の詳細な開示
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明の塗料組成物は、アミド基を有しているか又はアミド基を有することとなるアミド基含有性高分子化合物(A)と、上記アミド基の酸化を抑制することができる抗酸化性物質(B)とからなるものである。
本発明の塗料組成物は、被塗装物に塗装することにより塗膜を得るものである。本明細書において、「塗装」とは、被塗装物等の塗装対象物に塗布し、必要に応じて乾燥し、次いで焼成することよりなる一連の工程を意味する。上記焼成は、本発明の塗料組成物中の主要な高分子成分の融点以上の温度で加熱することである。上記加熱の温度は、本発明の塗料組成物が後述のフッ素樹脂(C)を含むか否か、また、上記アミド基含有性高分子化合物(A)、上記抗酸化性物質(B)、及び、後述のフッ素樹脂(C)の各融点等によって異なる。
上記アミド基含有性高分子化合物(A)は、アミド基と芳香環とを有しているアミド基含有ポリマー(a1)、及び/又は、上記塗料組成物を塗装する際の焼成により上記アミド基含有ポリマー(a1)に変化するアミド基含有ポリマー前駆体(a2)である。
上記アミド基含有ポリマー(a1)は、通常、アミド基(−NH−C(=O)−)を主鎖又は側鎖に有し、芳香環を主鎖に有するポリマーである。
上記アミド基含有ポリマー(a1)は、ポリアミドイミド〔PAI〕、ポリアミド、及び/又は、ポリアミド酸(ポリアミック酸)であることが好ましい。
上記PAIは、アミド基と芳香環とイミド基とを有する重縮合体である。上記PAIとしては特に限定されず、例えば、従来公知のPAIの他にも、ポリイミド〔PI〕を酸化することによりアミド基を導入したもの等を用いることができる。
上記ポリアミドは、主鎖中にアミド結合(−NH−C(=O)−)を有する重縮合体である。上記ポリアミドとしては特に限定されず、例えば、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12等の脂肪族ポリアミド;ポリパラフェニレンテレフタラミド、ポリメタフェニレンイソフタラミド等の芳香族ポリアミド等が挙げられる。
上記ポリアミド酸は、アミド基と、カルボキシル基又はカルボキシル基の誘導体とを有する重縮合体である。上記ポリアミド酸としては特に限定されず、分子量が数千〜数万であるポリアミド酸等が挙げられる。
上記アミド基含有ポリマー前駆体(a2)は、本発明の塗料組成物を塗装する際の焼成により上記アミド基含有ポリマー(a1)に変化するものである。
上記「塗料組成物を塗装する際の焼成」は、本発明の塗料組成物を後述のプライマー組成物として用い、次いで上塗り塗料を塗装する場合、▲1▼このプライマー組成物を塗布した後、上記上塗り塗料を塗装する前に通常行う「焼成」、▲2▼上記▲1▼の焼成の後、上記上塗り塗料を塗装する際の「焼成」、又は、▲3▼上記▲1▼の焼成を行わずに上記上塗り塗料を塗装する際の「焼成」に該当し、本発明の塗料組成物を後述のワンコート法に用いる場合、▲4▼上記塗料組成物を塗布した後の「焼成」に該当するが、▲1▼〜▲4▼の何れの焼成をも含み得る概念である。
上記アミド基含有ポリマー前駆体(a2)は、上述のように、上記塗料組成物を塗装する際の焼成により上記アミド基含有ポリマー(a1)に変化するものであり、この焼成において上記アミド基含有ポリマー(a1)が有する芳香環が通常変化しないので、芳香環を有しているものであるが、本発明の塗料組成物を塗布し焼成を開始する前においては、アミド基は有していないものである。
本明細書において、上記塗料組成物を塗布し焼成を開始する前においてアミド基を有しており、更に芳香環をも有している高分子化合物は、上述のアミド基含有性ポリマー(a1)に該当する。
上記アミド基含有ポリマー前駆体(a2)としては、本発明の塗料組成物を塗布し焼成することにより上記アミド基含有ポリマー(a1)に変化するものであれば特に限定されず、例えば、PI等であってもよい。上記PIは、本発明の塗料組成物を塗布し長時間高温で焼成する際に酸化させて主鎖にアミド基を導入することができる。上記PIにアミド基を導入して得られたアミド基含有ポリマー(a1)は、PAI又はポリアミド酸であり、PAIであるためには、PIの主鎖におけるイミド基の全てをアミド基に変換したものでなければよく、ポリアミド酸は、PIの主鎖におけるイミド基の全てをアミド基と、カルボキシル基とに変換したものである。
上記PIにアミド基を導入する方法としては特に限定されず、例えば、PIのイミド基(イミド環)を酸化によって開環する方法、PIのイミド基(イミド環)にアルカリを作用させ加水分解する方法等が挙げられる。本明細書において、アミド基を導入することとなる分子構造上の部位、例えば、上述の酸化によりアミド基に変化するイミド基等を、アミド基導入部位ということがある。
上記アミド基含有性高分子化合物(A)は、アミド基を有しているか又はアミド基を有することとなるものである。
上記「アミド基を有することとなる」とは、本発明の塗料組成物を調製するためにアミド基含有性高分子化合物(A)を配合する時点で上記アミド基含有性高分子化合物(A)が必ずしもアミド基を有していなくともよいが、上述の塗料組成物を塗装する際の焼成により化学変化を起こしてこの焼成が終了する前にアミド基が導入されることを意味する。
本明細書において、上記「アミド基を有しているか又はアミド基を有することとなる」は、本発明の塗料組成物を調製するためにアミド基含有性高分子化合物(A)を配合する時点において、アミド基を有しアミド基導入部位を有しないもの、アミド基を有さずアミド基導入部位を有するもの、アミド基を有しかつアミド基導入部位を有するもの、の何れをも含み得る概念である。即ち、本発明の塗料組成物は、上述のアミド基含有ポリマー(a1)とアミド基含有ポリマー前駆体(a2)との両方を含むものであってもよいし、何れか一方のみを含むものであってもよい。
上記抗酸化性物質(B)は、上記アミド基の酸化を抑制することができるものである。上記抗酸化性物質(B)は、酸化還元電位が、アミド基の酸化還元電位より低いものであって、イミド基の酸化還元電位と同程度であるか又はイミド基の酸化還元電位に比べて高いものが好ましく、イミド基の酸化還元電位に比べて高いものがより好ましい。
上記抗酸化性物質(B)は、上記アミド基の酸化に優先して自己酸化されることによって上記アミド基の酸化を遅らせることができるものと考えられる。上記抗酸化性物質(B)としては、上記アミド基の酸化を充分に抑制し得る点から、酸化状態が低い物質が好ましいと考えられる。上記抗酸化性物質(B)としては、上記アミド基の酸化を抑制することができるとともに、耐熱性物質であることがより好ましい。上記抗酸化性物質(B)が耐熱性物質であると、本発明の塗料組成物を塗装する際の焼成を長時間行っても、上記抗酸化性物質(B)が分解や劣化を起こしにくいので、上記アミド基の酸化を抑制し続け、上記アミド基含有性高分子化合物(A)による被塗装物との密着性を維持することができる。
上記抗酸化性物質(B)は、上記アミド基の酸化に優先して自己酸化する自己酸化能のほかに、上記酸化されたアミド基を還元する還元能を有していてもよい。
上記抗酸化性物質(B)は、上述のアミド基の酸化を抑制する性質に加えて、被塗装物の酸化を抑制する性質を有するものであってもよい。
上記抗酸化性物質(B)としては、例えば、ポリアリレンサルファイド〔PAS〕;窒素含有化合物;錫、亜鉛、燐等の金属;硫黄等が挙げられる。
上記PASとしては特に限定されず、例えば、ポリフェニレンスルフィドケトン、ポリフェニレンスルフィドスルフォン、ポリビフェニレンスルフィド、ポリフェニレンサルファイド〔PPS〕等が挙げられ、なかでもPPSが好適に用いられる。半導体製造工程等アミンの使用や金属イオンの溶出を嫌う場合、PASが好ましく用いられる。
上記抗酸化性物質(B)としては、窒素含有化合物も好ましく用いられる。
本明細書において、上記「窒素含有化合物」は、分子中に窒素原子を有する化合物であって、上記アミド基の酸化及び被塗装物の酸化をともに抑制し得るものである。
上記窒素含有化合物としては、アミン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、窒素硫黄含有化合物等が挙げられる。
上記アミン系化合物は、アミノ基を有する化合物であって、上記アミノ基が金属塩等の塩を形成していてもよいものである。上記アミン系化合物としては特に限定されないが、250℃以上での高温安定性が望まれる点で、芳香族アミン類であることが好ましい。芳香族アミン類としては、フェニル基及び/又はナフチル基を有するものが好ましく、フェニル基及び/又はナフチル基を有する芳香族アミン類としては特に限定されず、例えば、ジナフチルアミン、フェニル−α−ナフチルアミン、フェニル−β−ナフチルアミン、ジフェニル−p−フェニレンジアミン、フェニルシクロヘキシル−p−フェニレンジアミン等が挙げられる。
上記ベンゾトリアゾール系化合物は、ベンゾトリアゾールを基本骨格とする化学構造を有する化合物であって、金属塩等の塩を形成していてもよいものである。上記ベンゾトリアゾール系化合物としては特に限定されず、例えば、ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−テトラオクチルフェニル)ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
上記窒素硫黄含有化合物は、窒素原子と硫黄原子とを有する化合物であって、金属塩等の塩を形成していてもよいものである。上記窒素硫黄含有化合物としては特に限定されず、例えば、ベンゾチアゾール系化合物、スルフェンアミド系化合物、チオ尿素類等が挙げられる。上記ベンゾチアゾール系化合物としてはベンゾチアゾールを基本骨格とする化合物であれば特に限定されず、例えば、2−メルカプトベンゾチアゾール、ジ−2−ベンゾチアゾールジズルフィド、2−(N,N′−ジエチルチオカルバモイルチオ)ベンゾチアゾール、ジ−2−ベンゾチアゾリルジスルフィド等が挙げられる。
上記スルフェンアミド系化合物としては、スルフェンアミド基を有する化合物であれば特に限定されず、例えば、N,N′−シクロヘキシル−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−オキシジエチレン−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N′−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N′−ジイソプロピルベンゾチアゾール−2−スルフェン等が挙げられる。本明細書において、上記スルフェンアミド系化合物は、スルフェンアミド基を有するとともに、ベンゾチアゾールを基本骨格とする構造部分を有する化合物をも含む概念である。
上記チオ尿素類としては窒素原子に結合する水素原子の少なくとも1個が炭素数1〜6の飽和又は不飽和の炭化水素基に置換されていてもよいチオ尿素が好ましく、このようなチオ尿素類としては特に限定されず、例えば、N,N′−ジエチルチオ尿素、N,N′−ジブチルチオ尿素、チオ尿素、N,N′−ジフェニルチオ尿素等が挙げられる。
上記抗酸化性物質(B)としては、被塗装物が酸化膜を形成しやすい酸化膜速形成性金属からなるものである場合、上記窒素含有化合物を用いることが好ましく、上記窒素含有化合物をPASと併用することが被塗装物との接着性を向上させる点で好ましい。上記酸化膜速形成性金属は、少なくとも本発明の塗料組成物の塗装における焼成により、ステンレスと同程度に酸化膜を形成しやすいものであればよく、被塗装物として本発明の塗料組成物を塗布する時点で既に酸化膜を形成しているものであってもよい。上記酸化膜速形成性金属としては、ステンレス等が挙げられる。
上記窒素含有化合物としては、ベンゾチアゾール系化合物が好適に用いられ、ベンゾチアゾール系化合物のなかでも特に、亜鉛との塩である亜鉛系酸化防止剤が好適に用いられる。
上記抗酸化性物質(B)としては、被塗装物が酸化膜遅形成性金属からなるものである場合、上記窒素含有化合物を用いてもよいが、用いなくとも本発明の塗料組成物の塗装における焼成により被塗装物との接着性に著しい低下は見られない点で、上記窒素含有化合物を用いなくてもよく、被塗装物の酸化を抑制する性質を必ずしも有しないが上述のアミド基の酸化を抑制する性質を有するものを用いることで充分であり、例えば、PASのみを用いてもよい。本明細書において、上記酸化膜遅形成性金属は、ステンレスよりも酸化膜を形成する速度が遅い金属である。上記酸化膜遅形成性金属は、酸化膜形成性の程度が相違する点で、上述の酸化膜速形成性金属とは異なる。上記酸化膜遅形成性金属としては、例えば、アルミニウム、鉄等が挙げられる。
上記抗酸化性物質(B)は、上記アミド基含有性高分子化合物(A)と上記抗酸化性物質(B)との合計の0.1〜20質量%である。20質量%を超えると、熱水処理後の密着力が低下しやすく、0.1質量%未満であると、熱処理後の密着力が低下しやすい。上記抗酸化性物質(B)としては、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。組み合わせて用いる場合、抗酸化性物質(B)の質量は、組み合わせた全ての抗酸化性物質(B)の合計質量である。
上記抗酸化性物質(B)としては、PAS及び/又は窒素含有化合物が好ましく用いられる。
上記抗酸化性物質(B)としてPASを単独で用いる場合、PASは、上記アミド基含有性高分子化合物(A)とPASとの合計の1〜20質量%であることが好ましい。1質量%未満であると、熱処理後の密着力が低下しやすい。20質量%を超えると、熱水処理後の密着力が低下しやすい。好ましい下限は、3質量%、好ましい上限は、18質量%であり、より好ましい下限は5質量%、より好ましい上限は、15質量%である。
上記抗酸化性物質(B)として窒素含有化合物を単独で用いる場合、上記窒素含有化合物は、上記アミド基含有性高分子化合物(A)と上記窒素含有化合物との合計の0.1〜5質量%であることが好ましい。0.1質量%未満であると、熱処理後の密着力が低下しやすい。5質量%を超えると、初期密着力及び熱水処理後の密着力が低下しやすい。より好ましい上限は、3質量%であり、更に好ましい上限は、1質量%である。
上記抗酸化性物質(B)としてPASとその他の抗酸化性物質とを組み合わせて用いる場合、上記PASと上記その他の抗酸化性物質とは、質量比で、PAS:その他の抗酸化性物質=50:50〜99:1となるように組み合わせることが好ましい。上記その他の抗酸化性物質としては、上述の抗酸化性物質(B)のうちPAS以外のものが挙げられ、なかでも窒素含有化合物が好ましく用いられる。上記その他の抗酸化性物質としては、窒素含有化合物、錫、亜鉛、燐等の金属;硫黄等が挙げられる。
本発明の塗料組成物は、上記アミド基含有性高分子化合物(A)と、上記抗酸化性物質(B)と、更に、フッ素樹脂(C)とからなるものであることが好ましい。
本発明の塗料組成物は、フッ素樹脂(C)を加えたものである場合、塗装することにより、フッ素樹脂(C)を主成分とする第1層(表層)、並びに、上記アミド基含有性高分子化合物(A)及び上記抗酸化性物質(B)を主成分とする第2層の2層構造に分かれた塗膜を形成することができる。上記フッ素樹脂(C)を含む本発明の塗料組成物は、上記第1層上にフッ素樹脂(D)からなるフッ素樹脂層を積層する場合、上記第1層中のフッ素樹脂(C)と上記フッ素樹脂(D)との相溶性により、上記フッ素樹脂層との接着性に優れた塗膜を形成することができる。
上記2層構造に分かれた塗膜は、本明細書において、便宜上「2層構造に分かれた」というが、実際には、被塗装物近傍ほどアミド基含有性高分子化合物(A)及び抗酸化性物質(B)の濃度が高く、被塗装物から離れるにつれ抗酸化性物質(B)にかわってフッ素樹脂(C)の濃度が高くなり、塗膜の最表面にはフッ素樹脂(C)が高濃度で存在していると考えられる。従って、上記塗膜は、各成分の配合量によっては、フッ素樹脂(C)からなる層と、アミド基含有性高分子化合物(A)及び抗酸化性物質(B)からなる層との間にアミド基含有性高分子化合物(A)及びフッ素樹脂(C)からなるいわば中間層ともいうべき層が存在する場合がある。
本発明の塗料組成物において、フッ素樹脂(C)は、塗装時の焼成の温度が300℃以上のものであることが好ましい。
上記塗装時の焼成の温度は、一般的に、フッ素樹脂(C)の融点以上の温度である。上記塗装時の焼成は、上記アミド基含有ポリマー前駆体(a2)について上述した「塗装組成物を塗装する際の焼成」と同じものが該当し得る。
本発明の塗料組成物は、300℃以上の温度における数10時間という長時間の焼成を行った後でも被塗装物との密着力低下が起きにくいものである。このような優れた耐熱密着性は、従来、クロム系プライマーを用いることによってのみ達成することができたものであるが、本発明の塗料組成物は、クロムやクロム化合物を用いなくても優れた耐熱密着性を奏することができる。
上記フッ素樹脂(C)は、フッ素を有する単量体を重合して得られる重合体からなるものである。
上記フッ素樹脂(C)としては、クロロトリフルオロエチレン〔CTFE〕、トリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン〔TFE〕、ヘキサフルオロプロピレン〔HFP〕、ビニリデンフルオライド〔VdF〕、及び、パーフルオロ(アルキルビニル)エーテル〔PAVE〕からなるフッ素含有単量体群のなかから選ばれる1種又は2種以上のフッ素含有単量体を重合することにより得られた含フッ素重合体からなるものであることが好ましく、この含フッ素重合体は、上記1種又は2種以上のフッ素含有単量体と、エチレン、プロピレン等のフッ素非含有単量体群から選ばれる1種若しくは2種以上のフッ素非含有単量体とを共重合することにより得られたものであってもよい。
上記フッ素樹脂(C)としては、耐蝕性の点でテトラフルオロエチレン系共重合体からなるものであることがより好ましい。
本明細書において、上記「テトラフルオロエチレン系共重合体」は、TFEと、上述のフッ素含有単量体群におけるTFE以外のフッ素含有単量体及び/又はフッ素非含有単量体とを重合し得られた重合体である。上記TFE以外のフッ素含有単量体、並びに、上記フッ素非含有単量体としてはそれぞれ1種又は2種以上用いてもよい。
上記フッ素樹脂(C)としては、融点が上述の塗装時における焼成の温度未満であり、かつ、上述の焼成の温度において耐熱性を有するものが更に好ましい。
上記フッ素樹脂(C)としては、耐食性と耐熱性とを兼ね備えている点でパーフルオロ系樹脂が好ましく採用される。
上記パーフルオロ系樹脂は、通常、300℃以上の焼成温度が要求される樹脂であり、パーフルオロオレフィンと、パーフルオロビニルエーテル及び/又は微量共単量体とを重合して得られるパーフルオロ系重合体からなるものである。上記パーフルオロオレフィンとしては特に限定されず、例えば、TFE、HFP等が挙げられる。上記パーフルオロビニルエーテルとしては特に限定されず、例えば、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)等が挙げられる。
上記微量共単量体としては、上記パーフルオロオレフィンでもなくパーフルオロビニルエーテルでもないフッ素含有単量体、並びに/又は、フッ素非含有単量体を1種若しくは2種以上用いることができる。上記パーフルオロ系重合体の分子鎖における上記微量共単量体に由来する繰り返し単位は、上記パーフルオロ系重合体の全単量体単位の10モル%未満であることが好ましい。
上記フッ素樹脂(C)としては、乳化重合若しくは懸濁重合で得たディスパージョン又は粉末を用いることができるほか、更に、粉砕を行い微粉化した微粉末を用いることができる。
上記フッ素樹脂(C)を粉末で用いる場合の平均粒子径は、0.1〜50μmであることが好ましい。0.1μm未満であると、フッ素樹脂層をあまり厚くすることができず、50μmを超えると、本発明の塗料組成物を塗装して得られる塗膜の平滑性が悪くなる場合がある。薄塗り等に使用する場合、平均粒子径のより好ましい上限は、10μmである。膜厚が200μmを超えるライニング等に用いる場合、平均粒子径のより好ましい下限は、1μm、より好ましい上限は、40μmであり、更に好ましい下限は、5μmである。
本明細書において、平均粒子径は、レーザー式測定法によって測定し得られる値である。
上記フッ素樹脂(C)は、上記アミド基含有性高分子化合物(A)と上記抗酸化性物質(B)と上記フッ素樹脂(C)との合計の50〜90質量%であることが好ましい。50質量%未満であると、上記塗料組成物を後述のプライマー組成物として用いる場合、上記プライマー組成物を塗装して得られた塗膜と、上記塗膜上に積層するフッ素樹脂層との密着性が悪くなりやすく、90質量%を超えると、上記塗膜と後述の被塗装物との密着性が悪くなりやすい。より好ましい下限は、60質量%であり、より好ましい上限は、85質量%である。
上記数値範囲は、フッ素樹脂(C)の固形分質量についての値である。上記フッ素樹脂(C)の固形分質量は、本発明の塗料組成物を調製するに際し、上記フッ素樹脂(C)を上述のようにディスパージョン等の液状物で配合する場合があるが、この場合、上記液状物中のフッ素樹脂(C)からなる粒子を取り出して得られる粉末の乾燥質量に該当する値である。
本発明の塗料組成物は、上記塗料組成物から得られる塗膜の造膜性、耐腐蝕性等を向上する目的で、必要に応じ、上記アミド基含有性高分子化合物(A)、抗酸化性物質(B)、又は、フッ素樹脂(C)の何れでもないその他の200℃以上の耐熱性を有する樹脂を配合したものであってもよい。
上記その他の樹脂としては特に限定されず、例えば、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂等が挙げられ、これらは、1種又は2種以上を用いることができる。
本発明の塗料組成物は、必要に応じ、塗装作業性や上記塗料組成物から得られる塗膜の性質を改善するために、添加剤類を含むものであってもよい。
上記添加剤類としては特に限定されず、例えば、レベリング剤、固体潤滑剤、顔料、光輝材、充填材、顔料分散剤、沈降防止剤、水分吸収剤、表面調整剤、チキソトロピー性付与剤、粘度調整剤、ゲル化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、可塑剤、色分かれ防止剤、皮張り防止剤、スリ傷防止剤、防カビ剤、抗菌剤、抗蝕剤、帯電防止剤、シランカップリング剤等が挙げられる。
本明細書において、上記抗蝕剤は、アミド基の酸化は抑制しないが被塗装物の酸化を抑制する性質を有するものを意味する。
本発明の塗料組成物は、粉体塗料タイプ又は液状塗料タイプの何れであっても製造可能である。本発明の塗料組成物において、上記アミド基含有性高分子化合物(A)及び上記抗酸化性物質(B)は、適当な溶媒に溶解して溶液として用いてもよい。厚みが100μmを超える塗膜を形成する場合、後述のように粉体塗料タイプであることが好ましいが、本発明の塗料組成物は、被塗装物に満遍なく塗装することができる点で、液状塗料タイプであることが好ましい。上記液状塗料タイプとしては、フッ素樹脂(C)からなる粒子を分散媒に分散している分散体中に、アミド基含有性高分子化合物(A)及び抗酸化性物質(B)を溶解又は分散しているものであることが好ましく、厚膜化のためには、アミド基含有性高分子化合物(A)からなる粒子と、抗酸化性物質(B)からなる粒子と、フッ素樹脂(C)からなる粒子とを分散媒に分散してなるものであることがより好ましい。本発明の塗料組成物は、上述のその他の樹脂を配合した液状塗料タイプである場合、上記分散媒の種類と上記その他の樹脂の溶解性等にもよるが、通常上記その他の樹脂からなる粒子をも上記分散媒に分散してなるものである。
上記分散媒は、水又は有機媒体を用いることができる。上記分散媒として水を用いる場合、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、又は、ノニオン界面活性剤を分散剤として分散させることができるが、得られる塗膜中に残りにくい点で、ノニオン性界面活性剤が好ましく用いられる。上記分散媒として水を用いる場合、また、フッ素系界面活性剤を併用してもよい。
上記有機媒体としては特に限定されず、例えば、1−ブタノール、ジアセトンアルコール等の低級アルコール類;メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸ブチル等のエステル類;N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類;トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン、メチルエチルベンゼン、プロピルベンゼン、ブチルベンゼン等の芳香族炭化水素類等が挙げられ、1種又は2種以上用いることができる。
上記分散媒としては、更に、水と上記有機媒体との混合溶剤も使用可能である。
本発明の塗料組成物は、フッ素樹脂(C)を含まないものである場合、上述のアミド基含有性高分子化合物(A)及び抗酸化性物質(B)並びに所望により用いる上述のその他の樹脂を上記有機媒体及び/又は水に溶解若しくは分散してなるバインダー樹脂液状物として得ることができる。
本発明の塗料組成物は、フッ素樹脂(C)を含むものである場合、上記フッ素樹脂(C)分散体と、上記バインダー樹脂液状物とを攪拌混合する方法等により調製することができる。上記フッ素樹脂(C)分散体は、上記フッ素樹脂(C)からなる粒子を上述の分散媒で濡らしたのち、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤等の分散剤で分散させて得る方法、上述の分散媒の表面張力をフッ素系界面活性剤等で下げフッ素樹脂(C)からなる粒子を分散させて得る方法等により得ることができる。
上記攪拌混合は、バスケットミル、ダイナモミル、ボールミル等の粉砕分散機を用いて行うことが好ましい。
本発明の塗料組成物は、上記攪拌混合後、所望により貧溶媒で希釈し粘度調整を行ってもよい。
本発明の塗料組成物において、アミド基含有性高分子化合物(A)を粒子の状態として使用する場合、上記アミド基含有性高分子化合物(A)からなる粒子及び上記抗酸化性物質(B)からなる粒子の平均粒子径は、フッ素樹脂(C)からなる粒子の平均粒子径に比べて相対的に小さいことが好ましく、20μm以下であることが好ましい。上記アミド基含有性高分子化合物(A)からなる粒子及び上記抗酸化性物質(B)からなる粒子の平均粒子径は上記範囲内であれば、好ましい下限を0.01μm、より好ましい下限を0.1μmとすることができる。
上記アミド基含有性高分子化合物(A)からなる粒子、上記抗酸化性物質(B)からなる粒子及び上記フッ素樹脂(C)からなる粒子は、上述の粉体塗料タイプにおけるものであってもよいが、特に、これらの各粒子が分散媒に分散している分散体におけるものである場合、上記平均粒子径の条件を満たすことが好ましい。本発明の塗料組成物を上述の粉体塗料として用いる場合、上記アミド基含有性高分子化合物(A)からなる粒子及び上記抗酸化性物質(B)からなる粒子の平均粒子径のより好ましい上限は、200μm、更に好ましい上限は、150μmである。上記フッ素樹脂(C)からなる粒子の平均粒子径は、上述のように0.1〜50μmであることが好ましい。
本発明の塗料組成物は、フッ素樹脂(C)を含むものである場合、上述のように2層構造に分かれ、被塗装物との密着性に優れた塗膜が通常得られることから、表層がフッ素樹脂からなる層であるコーティングを施すことを目的とする場合、いわゆるワンコート法によって1回コーティングするだけでもよいし、本発明の塗料組成物をプライマー組成物として用い、このプライマー組成物を塗装することにより形成した塗膜上に上塗り塗料を塗装してもよい。
本発明の塗料組成物は、プライマー組成物として好適に用いることができる。
上記プライマー組成物は、上塗り塗料を塗装することに先立ち、被塗装物上に塗装する下塗り用塗料組成物である。本明細書において、プライマー組成物は、プライマーということがある。上記上塗り塗料は、塗装して得られる塗装物の用途にもよるが、耐蝕性、非粘着性等のフッ素樹脂の一般的な特性を付与し得る点で、フッ素樹脂(D)からなる塗料であることが好ましい。本明細書において、上記上塗り塗料として上記フッ素樹脂(D)からなる塗料を塗装して得られる塗膜をフッ素樹脂層ということがある。本発明の塗料組成物は、即ち、プライマー組成物であり、上記プライマー組成物が、フッ素樹脂(D)からなるフッ素樹脂層の下塗り用塗料組成物であるものが好ましい。上記フッ素樹脂(D)については、後述する。
本発明の塗料組成物は、バインダー成分の役割を果たす6価クロムを含まないクロムフリープライマーであって、上記塗料組成物を被塗装物上に塗装することにより得られる測定用塗膜について、350℃に50時間おく耐熱性試験後の剥離接着強さが3kgf/cm以上、90℃以上の熱水に120時間浸漬する耐熱水処理試験後の剥離接着強さが3kgf/cm以上であるものであることが好ましい。
本明細書において、上記「クロムフリープライマー」とは、6価クロムがバインダー成分の役割を果たさないプライマーを意味する。上記クロムフリープライマーは、従って、たとえ6価クロム単体又は6価クロムを有する化合物を含有するものであっても、6価クロム単体又は6価クロムを有する化合物がバインダー成分としての役割を果たさないプライマーであり、好ましくは、6価クロム単体又は6価クロムを有する化合物を含有しないプライマーである。
本発明の塗料組成物は、クロム元素を含まないクロムフリープライマーであることがより好ましい。
本発明の塗料組成物は、フッ素樹脂(C)を含むものである場合、被塗装物との密着性を高めるとともに、上記上塗り塗料及び上記プライマー組成物が共に有するフッ素樹脂の相溶性により、上記フッ素樹脂層との密着性を高める役割を果たすものである。本発明の塗料組成物は、フッ素樹脂(C)を含まない場合、主に被塗装物との密着性を高める役割を果たすものである。
本発明の塗料組成物は、クロムフリープライマー、好ましくは、クロム元素を含まないクロムフリープライマーであり、上記塗料組成物を被塗装物上に塗装することにより得られる測定用塗膜について、350℃に50時間おく耐熱性試験後の剥離接着強さが3kgf/cm以上、90℃以上の熱水に120時間浸漬する耐熱水処理試験後の剥離接着強さが3kgf/cm以上であるもの(以下、「塗料組成物(Z1)」ということがある。)であることが好ましい。
本発明の塗料組成物(Z1)は、上記条件を満たすものであればよく、上述のアミド基含有性高分子化合物(A)と抗酸化性物質(B)とからなる塗料組成物であって、上記抗酸化性物質(B)が上記アミド基含有性高分子化合物(A)と上記抗酸化性物質(B)との合計の0.1〜20質量%であるもの(以下、本発明の塗料組成物(Y)ということがある)である必要は必ずしもない。
本発明の塗料組成物(Z1)は、上記測定用塗膜について、350℃に50時間おく耐熱性試験後の剥離接着強さが3kgf/cm以上であるものである。本発明の塗料組成物(Z1)は、上記耐熱性試験後の剥離接着強さが上記範囲内であるように、得られる塗膜の耐熱性に優れたものであり、塗膜の高温下における長期使用において充分な耐性と、被塗装物との密着性を保持することができる。
上記耐熱性試験後の剥離接着強さの好ましい下限は、5kgf/cm、より好ましい下限は、7kgf/cmである。剥離接着強さは、上記範囲内であれば上限を例えば、20kgf/cmとすることができる。
本明細書において、剥離接着強さは、テンシロン万能試験機を用い、JIS K 6854−1(1999年)に準拠して試験片に対して90°方向に引っ張り速度50mm/分で剥離するのに要する力である。
本発明の塗料組成物(Z1)は、上記測定用塗膜について、90℃以上の熱水に120時間浸漬する耐熱水処理試験後の剥離接着強さが3kgf/cm以上であるものである。本発明の塗料組成物(Z1)は、上記耐熱水処理試験後の剥離接着強さが上記範囲内であるように、得られる塗膜の耐熱水性に優れたものであり、塗膜を熱水に接させて使用する用途であっても、充分な耐性と、被塗装物との密着性を保持することができる。上記耐熱水処理試験後の剥離接着強さの好ましい下限は、5kgf/cm、より好ましい下限は、7kgf/cmである。剥離接着強さは上記範囲内であれば上限を例えば、20kgf/cmとすることができる。
本発明の塗料組成物(Z1)は、上記測定用塗膜について、上記範囲内の上記耐熱性試験後の剥離接着強さと、上記範囲内の上記耐熱水処理試験後の剥離接着強さとの両方を達成するものである。本発明の塗料組成物(Z1)は、このように被塗装物との密着性に優れたものであり、被塗装物との密着性は、従来のリン酸クロム系プライマーに匹敵するか又はそれ以上の密着力をも実現することができるものである。
本発明の塗料組成物は、クロム元素を含まないクロムフリープライマーであり、塗料組成物を被塗装物上に塗装することにより得られる測定用塗膜について、350℃に20時間おく熱処理を行った後に90℃以上の水に24時間浸漬する熱水処理を行う耐熱・熱水処理試験後の剥離接着強さが2kgf/cm以上であるもの(以下、「塗料組成物(Z2)」ということがある。)が好ましい。
本発明の塗料組成物(Z2)は、上記条件を満たすものであればよく、上述の本発明の塗料組成物(Z1)又は本発明の塗料組成物(Y)である必要は必ずしもない。
上記耐熱・熱水処理試験は、熱処理後に熱水に浸漬するものであり、上述の耐熱性試験単独よりも、また、耐熱水処理試験単独よりも、苛酷な試験である。本発明の塗料組成物(Z2)は、このように苛酷な耐熱・熱水処理試験後であっても剥離接着強さが上記範囲内であり、耐熱性と耐熱水性の両方が要求される用途にも充分な耐性と、被塗装物に対する密着性とを維持し得る塗膜を提供することができる。より好ましい下限は、3kgf/cmであり、更に好ましい下限は、5kgf/cmである。剥離接着強さは上記範囲内であれば上限を例えば、15kgf/cmとすることができる。
本発明の塗料組成物は、また、クロム元素を含まないクロムフリープライマーであり、塗料組成物を被塗装物上に塗装することにより得られる測定用塗膜について、350℃に30時間おく熱処理を行った後に90℃以上の水に24時間浸漬する熱水処理を行う耐熱・熱水処理試験後の剥離接着強さが0.5kgf/cm以上であるもの(以下、「塗料組成物(Z3)」ということがある。)が好ましい。
本発明の塗料組成物(Z3)は、上記条件を満たすものであればよく、上述の本発明の塗料組成物(Z1)、本発明の塗料組成物(Z2)又は本発明の塗料組成物(Y)の何れかである必要は必ずしもない。
本発明の塗料組成物(Z3)は、苛酷な耐熱・熱水処理試験後であっても剥離接着強さが上記範囲内であり、耐熱性、耐熱水性、及び、被塗装物に対する優れた密着性とを有する塗膜を提供することができる。より好ましい下限は、1kgf/cmであり、更に好ましい下限は、5kgf/cmであり、最も好ましい下限は、6kgf/cmである。剥離接着強さは上記範囲内であれば上限を例えば、15kgf/cmとすることができる。
本明細書において、(Z1)、(Z2)、(Z3)又は(Y)を付すことなく単に本発明の「塗料組成物」というときは、本発明の塗料組成物(Z1)、本発明の塗料組成物(Z2)、本発明の塗料組成物(Z3)又は本発明の塗料組成物(Y)の何れであるかを区別することなく何れをも含み得る概念を表す。
本発明の塗料組成物(Z1)、本発明の塗料組成物(Z2)及び本発明の塗料組成物(Z3)のそれぞれにおいて、上記測定用塗膜は、塗料組成物を被塗装物上に塗装することにより得られるものである。上記測定用塗膜は、上記被塗装物としてアルミナ粉を用いて吹き付け圧力0.5MPaでブラスト処理した鉄板(SS400、縦100mm×横50mm×厚さ1.5mm、平均粗さ〔Ra〕=2〜3μm)を用い、この鉄板上に、塗料組成物を乾燥膜厚が30μmになるようにスプレー塗装し、120℃で30分間乾燥したのち、得られた乾燥皮膜上にPFA粉体塗料(平均粒子径:220μm、メルトフローレート:6g/10分)を、焼成後の膜厚合計が1mmになるように盛り起きし、350℃で1時間焼成することにより得られる塗膜である。
本発明の塗料組成物(Z1)、本発明の塗料組成物(Z2)及び本発明の塗料組成物(Z3)は、被塗装物が上述した酸化膜遅形成性金属又は酸化膜速形成性金属の何れであっても上記範囲内の剥離接着強さを達成することができる。
本発明の塗料組成物(Z1)、本発明の塗料組成物(Z2)及び本発明の塗料組成物(Z3)は、耐熱性高分子化合物からなる塗料組成物であることが好ましい。
本発明の塗料組成物(Z1)、本発明の塗料組成物(Z2)及び本発明の塗料組成物(Z3)は、上記耐熱性高分子化合物と、更に、上述の抗酸化性物質(B)とからなる塗料組成物であることがより好ましい。
上記抗酸化性物質(B)は、上記耐熱性高分子化合物と上記抗酸化性物質(B)との合計の0.1〜20質量%であることが好ましい。
上記抗酸化性物質(B)としては、ポリアリレンサルファイドが好ましい。上記抗酸化性物質(B)がポリアリレンサルファイドである場合、上記耐熱性高分子化合物はアミド基含有性高分子化合物(A)であることが好ましい。
本発明の塗料組成物(Z1)、本発明の塗料組成物(Z2)及び本発明の塗料組成物(Z3)は、本発明の塗料組成物(Y)であることが更に好ましい。
本発明の塗料組成物は、塗装に際し、長時間の高温での焼成に耐える耐熱密着性を有するものである。本発明の塗料組成物が耐熱密着性を有する機構としては明確ではないが、以下のように考えられる。
即ち、従来、PAIからなるプライマー層において観測されていた耐熱密着性の低下は、PAIが持つアミド基等の接着性官能基が長時間の高温での焼成により酸化劣化したことによるものと考えられる。本発明の塗料組成物は、PAI等のアミド基含有性高分子化合物(A)が持つアミド基等の接着性官能基の酸化を抑制する抗酸化性物質(B)を添加することにより、リン酸クロム系プライマーに匹敵する耐熱密着性を実現できたものと考えられる。本発明の塗料組成物は、また、フッ素樹脂(C)を添加することによって、1回の塗装により、被塗装物から離れるにつれフッ素樹脂(C)の濃度を高くすることができるので、上記アミド基含有性高分子化合物(A)及び抗酸化性物質(B)を主成分とする層と、フッ素樹脂(C)を主成分とする層との間の密着性に優れた塗膜を得ることができる。本発明の塗料組成物は、また、このように表面にフッ素樹脂(C)を有する層が得られることから、本発明の塗料組成物からなる塗膜とフッ素樹脂層との間の耐熱密着性を向上することができるものと考えられる。本発明の塗料組成物は、また、フッ素樹脂(C)が後述の接着性官能基を有するものである場合、この塗料組成物からなる塗膜とフッ素樹脂層との間の耐熱密着性を一段と向上することができるものと考えられる。
本発明の塗料組成物から得られる塗膜の厚みは10〜300μmであることが好ましい。上述の液状塗料タイプの塗料組成物を用いる場合、塗膜の厚みは10〜100μmであることが好ましく、厚みが100μmを超える塗膜は、粉体塗料タイプの塗料組成物を用いて得ることが好ましい。
本発明の含フッ素積層体は、被塗装物、塗膜、及び、フッ素樹脂層からなるものである。上記塗膜は、上述のように、本発明の塗料組成物の塗装により得られるものであり、上記含フッ素積層体において、上記被塗装物に本発明の塗料組成物を塗装することにより得られるものである。本発明の含フッ素積層体において、上記被塗装物、上記塗膜及び上記フッ素樹脂層は、この順に積層している。
上記被塗装物は、本発明の塗料組成物を塗装する対象である。
上記被塗装物としては特に限定されず、例えば、アルミニウム、ステンレス〔SUS〕、鉄等の金属;耐熱樹脂;セラミック等からなるものが挙げられ、金属からなるものであることが好ましい。金属としては、単体金属又は合金であってよく、また、得られる塗膜との接着性が良好である点で、ステンレス、銅、銅合金等の酸化膜速形成性金属であってもよいし、アルミニウム、鉄等の酸化膜遅形成性金属であってもよい。
上記酸化膜速形成性金属は、表面に酸化皮膜を形成しやすく、この酸化皮膜が、従来の塗料組成物を塗装して得られるコーティング膜との密着性を低下させる原因となっていたものと考えられる。本発明の塗料組成物は、抗酸化性物質(B)としてアミド基の酸化を抑制するのみならず被塗装物の酸化を抑制することができる物質を用いることにより、被塗装物が酸化膜速形成性金属からなるものであっても、上記塗膜との充分な密着性を得ることができる。
上記被塗装物は、本発明の塗料組成物を塗装することに先立ち、この塗料組成物から塗装により得られる塗膜との接着性を向上させ得る点から、樹脂成分の除去及び粗面化処理を行ったものであることが好ましい。上記樹脂成分の除去の方法としては、有機溶剤、アルカリ等を用いて行う方法;300℃以上の温度で樹脂成分を分解させる方法等が挙げられる。
上記塗膜は、本発明の塗料組成物を塗布し、所望により80〜150℃で10〜60分間乾燥を行った後、焼成を行うことにより上記被塗装物上に形成することができる。
上記塗布の方法としては、本発明の塗料組成物が液状塗料タイプである場合、スプレー塗布、ローラーによる塗布等を用いることが好ましく、本発明の塗料組成物が粉体塗料タイプである場合、静電塗布、流動浸漬塗布又はロトライニング塗布を用いることが好ましい。
上記焼成は、上述のように、本発明の塗料組成物中のアミド基含有性高分子化合物(A)、抗酸化性物質(B)、及び、フッ素樹脂(C)の融点にもよるが、通常、フッ素樹脂(C)の融点以上の温度で10〜60分間加熱することにより行う。上記焼成は、本発明の塗料組成物をプライマー組成物として用いる場合、上塗り塗料を塗装する前に行ってもよいし、上塗り塗料を塗装する前には行わず、上塗り塗料を塗布した後の焼成時に上塗り塗料の焼成と同時に行うものであってもよい。
上記フッ素樹脂層は、上記塗膜上に形成するものであって、フッ素樹脂(D)からなるものである。
上記フッ素樹脂(D)としては、本発明の塗料組成物がフッ素樹脂(C)を含まないものである場合、フッ素樹脂(C)と同じものを用いてもよい。
本発明の塗料組成物がフッ素樹脂(C)を含むものである場合、上記塗料組成物を被塗装物上に塗装し形成される塗膜の表面には、フッ素樹脂(C)が多く含まれており、上記塗膜の表面との相溶性及び接着性を高める意味で、上記塗膜上に形成するフッ素樹脂層におけるフッ素樹脂(D)としては、フッ素樹脂(C)と同一又は類似の組成を有するフッ素樹脂を用いることが好ましい。
上記フッ素樹脂層は、本発明の塗料組成物が上述のフッ素樹脂(C)を含むものである場合、本発明の塗料組成物の塗装により得られる塗膜との密着性を高め得る点で、フッ素樹脂(D)とともにフッ素樹脂(C)を含むものであってもよい。
本発明の塗料組成物から得られる塗膜とフッ素樹脂層との密着性は、フッ素樹脂(C)として末端官能基を有するポリマーからなる樹脂を利用することにより向上させることができる。
上記末端官能基としては特に限定されず、例えば、−COOR(Rは、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、又は、炭素数1〜3のパーフルオロアルキル基を表す。)、−COF、−CONH、−CHOH、−COOM、−SO、−SO(M、M及びMは、同一又は異なり、I族原子若しくは1価の陽イオンとなることができる原子団を表す。)、−SO1/2、−SO1/2(M及びMは、同一又は異なり、II族原子、鉄等の遷移金属、若しくは、2価の陽イオンとなることができる原子団を表す。)が挙げられる。上記I族原子としては、例えば、水素原子、ナトリウム原子、カリウム原子等が挙げられ、上記1価の陽イオンとなることができる原子団としては、例えば、アンモニウム基等が挙げられる。上記II族原子としては、例えば、カルシウム、マグネシウム等が挙げられる。遷移金属としては、例えば、鉄等が挙げられる。
上記末端官能基の量は、フッ素樹脂(C)のポリマー分子鎖中の炭素数100万個あたり50〜100000個の範囲であることが好ましい。50個未満であると、密着力が低下しやすく、100000個を超えると、焼成時の発泡が激しくなり、塗膜欠陥を生じやすい。フッ素樹脂(C)のポリマー分子鎖中の炭素数100万個あたりより好ましい下限は、100個、更に好ましい下限は、500個であり、より好ましい上限は、50000個、更に好ましい上限は、10000個である。
上記末端官能基の量は、赤外分光光度計を用いて測定し得られる値である。
上記末端官能基を有するポリマーにおける末端官能基の量は、通常、適切な触媒、連鎖移動剤及び重合条件を選んで重合することにより調整することができる。
上記末端官能基を有するポリマーにおける官能基の量は、上記官能基を有するモノマーを重合することによって増やすことができる。
上記官能基を有するモノマーを単量体として重合し得られたフッ素樹脂(C)のポリマーを適宜酸、アルカリ等の反応試剤と反応させる事及び熱により処理する事により、上記(末端)官能基は反応試剤及び熱の作用により、化学構造の一部が変化する。
本発明の含フッ素積層体は、本発明の塗料組成物を塗装して得られた塗膜上に、フッ素樹脂(D)からなる上塗り塗料を塗装し、フッ素樹脂(D)の融点以上の温度で30〜120分間焼成することにより得ることができる。
フッ素樹脂(D)を含有する上塗り塗料は、本発明の塗料組成物と同様に、所望の膜厚によって粉体塗料タイプと液状塗料タイプとが使い分けられ、耐蝕性の観点(厚膜化の観点)では、粉体塗料を用いることが好ましい。フッ素樹脂(D)を含有する上塗り塗料には、本発明の塗料組成物と同様の分散媒、分散剤、添加剤、その他の樹脂等を用いることができる。
フッ素樹脂層は、膜厚が200μm以上であるものであることが好ましい。
本発明の塗料組成物は、フッ素樹脂層の膜厚が200μm以上であっても、充分な密着性を保持することができ、高温で長時間の焼成が必要なライニング加工に特に有用である。
本発明の含フッ素積層体の用途としては特に限定されず、例えば、従来のPAIエナメル線と比較し耐加工劣化性に優れる点で、耐熱エナメル線等の各種電線の被覆材用途;情報機器部品(紙分離爪、プリンタガイド、ギア、ベアリング)、コネクタ、バーニインソケット、ICソケット、油田用電気部品、リレー、電磁波シールド、リレーケース、スイッチ、カバー、端子板母線等の電気・電子産業関連用途;
バルブシート、油圧用シール、バックアップリング、ピストンリング、ウェアバンド、ベーン、ボールベアリングリテーナー、ローラー、カム、ギア、ベアリング、ラビリンスシール、ポンプ部品、機械的リンク機構、ブッシング、ファスナ、スプラインライナー、ブラケット、油圧ピストン、ケミカルポンプケーシング、バルブ、弁、タワーパッキン、コイルボビン、パッキン、コネクター、ガスケット、バルブシール等の機械工業関連用途;
スラストワッシャ、シールリング、ギア、ベアリング、タペット、エンジン部品(ピストン、ピストンリング、バルブステア)、トランスミッション部品(スプール弁、ボール逆止弁、シーリング)、ロッカーアーム等の車両工業関連用途;
ジェットエンジン部品(ブッシング、ワッシャ、スペーサー、ナット)、パワーコントロールクラッチ、ドアヒンジ用ベアリング、コネクター、チューブクランプ、ブラケット、油圧部品、アンテナ、レドーム、フレーム、燃料系統部品、コンプレッサ部品、ロケットエンジン部品、ウェアストリップ、コネクタシェルフ、宇宙構造体等の航空、宇宙産業関連用途等が挙げられる。その他にも、製罐機ピンカバー、メッキ装置用部品、原子力関連部品、超音波トランデューサ、ポテンショメータシャフト、給水栓部品等の用途が挙げられる。
上記各用途は、本発明の塗料組成物がフッ素樹脂(C)をも含むものである場合にも、適用することができるが、フッ素樹脂(C)を含まないものである場合に好適である。
本発明の含フッ素積層体の用途としては、本発明の塗料組成物がフッ素樹脂(C)をも含むものである場合、上記各用途に加え、例えば、攪拌翼、タンク内面、ベッセル、塔、遠心分離器、ポンプ、バルブ、配管、熱交換器、メッキ冶具、タンクローリー内面、スクリューコンベア等の耐蝕用途;半導体工場ダクト等の半導体関連用途;OAロール、OAベルト、製紙ロール、フィルム製造用カレンダーロール、インジェクション金型等の工業用離型用途;炊飯釜、ポット、ホットプレート、アイロン、フライパン、ホームベーカリー、パントレー、ガステーブル天板、パン天板、鍋、釜等の家電・厨房関連用途;各種ギアを含む精密機構摺動部材、製紙ロール、カレンダーロール、金型離型部品、ケーシング、バルブ、弁、パッキン、コイルボビン、オイルシール、継ぎ手、アンテナキャップ、コネクター、ガスケット、バルブシール、埋設ボルト、埋設ナット等の工業部品関連用途等が挙げられる。
本発明の樹脂組成物は、アミド基を有しているか又はアミド基を有することとなるアミド基含有性高分子化合物(A)と、ポリアリレンサルファイドとからなるものであって、上記アミド基含有性高分子化合物(A)は、アミド基と芳香環とを有しているアミド基含有ポリマー(a1)、及び/又は、上記塗料組成物を塗装する際の焼成により上記アミド基含有ポリマー(a1)に変化するアミド基含有ポリマー前駆体(a2)であり、上記ポリアリレンサルファイドは、上記アミド基含有性高分子化合物(A)と上記ポリアリレンサルファイドとの合計の1〜40質量%であるものである。
上記アミド基含有性高分子化合物(A)及び上記ポリアリレンサルファイドは、それぞれ本発明の塗料組成物について上述したものである。本発明の樹脂組成物は、上記アミド基含有性高分子化合物(A)と、上記ポリアリレンサルファイドとからなるものであるので、上記樹脂組成物を用いて塗装したり成形体を作製する際、及び/又は、得られる塗膜や成形体の使用時における例えば200℃以上のような高温での加熱下において、上記アミド基含有性高分子化合物(A)の熱劣化を防止することができ、耐熱性等の物性に優れ、高温下での長期使用にも充分に耐え得る塗膜及び成形体を得ることができる。
上記アミド基含有性高分子化合物(A)のうち上述のアミド基含有ポリマー(a1)としては、ポリアミドイミド[PAI]が好ましい。
上記ポリアリレンサルファイドは、上記アミド基含有性高分子化合物(A)と上記ポリアリレンサルファイドとの合計の1〜40質量%であるものである。1質量%未満であると、得られる塗膜や成形体の耐熱性が不充分であり、40質量%を超えると、上記アミド基含有性高分子化合物(A)の特性を充分に活かすことができない。好ましい下限は、4質量%であり、好ましい上限は、30質量%である。
本発明の樹脂組成物は、液状塗料であってもよいし粉体塗料であってもよいが、厚塗り用途においては、粉体塗料であることが好ましい。粉体塗料である場合、上記ポリアリレンサルファイドは、上記アミド基含有性高分子化合物(A)と上記ポリアリレンサルファイドとの合計の1〜40質量%であることが好ましい。より好ましい下限は、10質量%、更に好ましい下限は、20質量%、特に好ましい下限は、25質量%、より好ましい上限は、38質量%、更に好ましい上限は、35質量%である。
本発明の樹脂組成物は、上記アミド基含有性高分子化合物(A)と、上記ポリアリレンサルファイドと、更に、窒素含有化合物とからなるものであってもよい。上記窒素含有化合物は、本発明の塗料組成物について上述したものである。上記樹脂組成物は、上記窒素含有化合物からなるものであることにより、上記アミド基含有性高分子化合物(A)の熱劣化を効果的に防止することができる。
本発明の樹脂組成物は、アミド基含有性高分子化合物(A)及びポリアリレンサルファイド、並びに、所望により用いる窒素含有化合物に加え、更に、フッ素樹脂からなるものであってもよい。上記フッ素樹脂としては特に限定されず、例えば、上述のフッ素樹脂(C)と同様のものを用いることができる。本発明の樹脂組成物は、フッ素樹脂をも含むことにより、耐熱性に加え、撥水性、耐薬品性、非粘着性等のフッ素樹脂特有の性質をも有する塗膜と成形体を得ることができる。
本発明の樹脂組成物は、粉体塗料であり、アミド基含有性高分子化合物(A)と、ポリアリレンサルファイドと、更に、フッ素樹脂とからなるものであることが好ましい。
本発明の樹脂組成物は、上述のように耐熱性に優れるので、これらの特性が要求される塗膜や各種成形体の形成に好適に用いることができる。
本発明の樹脂組成物を用いて塗膜を形成する方法としては、本発明の塗料組成物について上述した方法を用いることができる。上記アミド基含有性高分子化合物(A)としてPAIを用いる場合、PAIは通常、ワニスとして市販されているので、上述の液状塗料タイプとして好適に用いることができる。
本発明の樹脂組成物を用いて成形体を作製する方法としては特に限定されず、例えば、射出成形等が挙げられ、一旦得られた成形物を切削することにより所望の形状を有する成形体を得ることもできる。
本発明の樹脂組成物を用いて得られる成形体の用途としては特に限定されず、例えば、本発明の含フッ素樹脂積層体について上述した用途等が挙げられる。
【発明を実施するための最良の形態】
以下に実験例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実験例のみに限定されるものではない。
実験例1
ポリアミドイミド樹脂(商品名:HI−680、日立化成工業社製、30%N−メチル−2−ピロリドン溶液)〔PAI〕10.00g、テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニル)エーテル共重合体〔PFA〕(融点:310℃、平均粒子径:25μm)6.66g、ポリフェニレンサルファイド樹脂〔PPS〕(商品名:ライトンV−1、フィリップス社製)0.33gをN−メチル−2−ピロリドン13.80g、メチルイソブチルケトン9.20gの混合溶剤に加え、ディスパー(商品名:スリーワンモーター、新東科学社製)を用いて溶解分散して本発明の塗料組成物を得た。
アルミナ粉(商品名:トサエメリー#40、宇治電化学工業社製)を用いて吹き付け圧力1.0MPaでブラスト処理した鉄板(SS400、縦100mm×横50mm×厚さ1.5mm、平均粗さ〔Ra〕=2〜3μm)上に、上記塗料組成物を乾燥膜厚が30μmになるようにスプレー塗装し、120℃で30分間乾燥した。得られた上記塗料組成物の乾燥皮膜上にPFA粉体塗料(平均粒子径:220μm、メルトフローレート:6g/10分)を、焼成後の膜厚合計が1mmになるように盛り起きし、350℃で1時間焼成して積層体Aを得た。
得られた積層体Aから試験片を切り出し、以下のような評価を行った。
耐熱性試験
10mmの幅に切れ目を入れた試験片を350℃の電気炉に入れ、20時間又は50時間加熱した後、室温に戻し、テンシロン万能試験機を用いてJIS K 6854−1(1999年)に準拠して引っ張り速度50mm/分で試験片に対して90°方向に剥離接着強さを測定した。但し、上記加熱後に試験片の塗膜が剥離した場合、剥離接着強さは0kg/cmとした。
耐熱水処理試験
10mmの幅に切れ目を入れた試験片を90℃以上の熱水に24時間浸漬した後、室温に戻し、耐熱性試験と同様にして試験片に対して90°方向に剥離接着強さを測定した。
剥離状態評価
上記剥離接着強さの試験において、剥離状態を観察し以下のように評価した。
/A:被塗装物と塗料組成物の焼成塗膜との間での剥離〔基材剥離〕
/B:塗料組成物の焼成塗膜とPFA樹脂層との間での剥離〔層間剥離〕
/C:塗料組成物の焼成塗膜の破壊による剥離〔凝集破壊〕
実験例2
実験例1のPFAを13.32gにする以外は実験例1と同様にして積層体Bを作製し実験例1と同様の評価を行った。
実験例3
PAIを11.00g、PPSを0.03gにする以外は実験例1と同様にして積層体Cを作製し実験例1と同様の評価を行った。
実験例4
PAIを11.00g、抗酸化性物質として亜鉛系酸化防止剤であるベンゾチアゾール系化合物(2−メルカプトベンゾチアゾール亜鉛塩)0.03gを用いた以外は実験例1と同様に積層体Dを作製し実験例1と同様の評価を行った。
実験例5
PAIを8.88g、PPSを0.67gにする以外は実験例1と同様にして積層体Eを作製し実験例1と同様の評価を行った。
実験例6
実験例1のPFAを1.67g用いた以外は実験例1と同様にして積層体Fを作製し実験例1と同様の評価を行った。
実験例7
実験例1のPFAを23.31g用いた以外は実験例1と同様にして積層体Gを作製し実験例1と同様の評価を行った。
実験例8
PFAを6.00g用い、PPSを添加しなかった以外は実験例1と同様にして積層体Hを作製し実験例1と同様の評価を行った。
実験例9
PAIを5.55g、PPSを1.67g用いた以外は実験例1と同様にして積層体Iを作製し実験例1と同様の評価を行った。
実験例10
PAIを7.77g、PPSを1.00g用いた以外は実験例1と同様にして積層体Jを作製し実験例1と同様の評価を行った。
実験例11
実験例1で用いた鉄板に代えて実験例1で用いたものと同じアルミナ粉を用いてブラスト処理したステンレス鋼板(SUS304、縦100mm×横50mm×厚さ1.5mm、平均粗さ〔Ra〕=2〜3μm)を用いた以外は実験例1と同様にして積層体Kを作製し実験例1と同様の評価を行った。
実験例12
抗酸化性物質としてPPS0.33gに代えてベンゾチアゾール系化合物(2−メルカプトベンゾチアゾール亜鉛塩)0.03gとPPS0.33gとのブレンドを用いた以外は実験例1と同様に塗料組成物を調製した。次に実験例1で用いた鉄板を実験例11で用いたステンレス鋼板にする以外は実験例1と同様にして積層体Lを作製し実験例1と同様の評価を行った。
結果を表1に示す。なお、表中、/A、/B、及び、/Cは上述の剥離状態評価である。

表1から、実験例1〜5は、実験例6〜10に比べて耐熱性試験後又は耐熱水処理試験後の剥離接着強さの減少が小さいことが分かった。実験例12は実験例11に比べて耐熱性試験後の剥離接着強さの減少が小さいことが分かった。
実験例13
実験例1と同様にブラスト処理した処理済み鉄板(縦100mm×横10mm×厚さ1.5mm)を2枚用意し、そのうちの1枚の縦半分の面積に、実験例1のPFAを用いない以外は実験例1と同様にして調製した塗料組成物を乾燥膜厚が30μmになるように塗布し、塗布した部分にもう1枚の処理済み鉄板を張り合わせた後、350℃で1時間焼成して試験片を作製した。その後、上記試験片に対して、実験例1に従って耐熱性試験及び耐熱水処理試験を行った。また、上記耐熱性試験及び上記耐熱水処理試験の前後でJIS K 6850(1999年)に準拠して引張剪断接着強さを測定した。
実験例14
PFAのみならずPPSも用いない塗料組成物を用いた以外は実験例11と同様にして試験片を作製し実験例13と同様の評価を行った。
結果を表2に示す。なお、表中、/A、/B、及び、/Cは上述の剥離状態評価である。

表2から、実験例13は、実験例14に比べて耐熱性試験後又は耐熱水処理試験後の引張剪断接着強さの減少が小さいことが分かった。
実験例15
実験例1と同様の条件で、本発明の塗料組成物を得た。得られた塗料組成物を実験例1で用いたブラスト処理した鉄板上に乾燥膜厚が30μmになるようにスプレー塗装し、120℃で30分間乾燥し、350℃で1時間焼成して、被塗装物と塗膜(測定用塗膜)とからなる積層体Mを得た。
得られた積層体Nから試験片を切り出し、この試験片について下記評価を行った。
耐熱性試験
350℃で30時間加熱したものについても剥離接着強さを測定したこと以外は実験例1と同様にした。結果を表3のa)に示す。
耐熱水処理試験
90℃以上の水にそれぞれ72時間、120時間浸漬したものについても剥離接着強さを測定したこと以外は実験例1と同様にした。結果を表3のb)に示す。
耐熱・熱水処理試験
10cmの幅に切れ目を入れた試験片について、350℃に20時間又は30時間おく熱処理を行った後、90℃以上の水に24時間浸漬する熱水処理を行い、次いで室温に戻し、実験例1の耐熱性試験と同様にして試験片に対して90℃方向に剥離接着強さを測定した。結果を表4に示す。
比較例1
塗料組成物の作製においてPPSを添加しなかった以外は実験例15と同様にして、比較用積層体を得、評価した。結果を表3及び表4に示す。
比較例2
本発明の塗料組成物の代わりにリン酸クロム系プライマー(商品名:850−314/VM7799=100/35、DuPont社製)を塗装に供した以外は実験例15と同様にして比較用積層体を得、評価した。結果を表3及び表4に示す。
比較例3
本発明の塗料組成物の代わりに比較用クロムフリープライマー(商品名:420−703、DuPont社製)を塗装に供した以外は実験例15と同様にして比較例用積層体を得、評価した。結果を表3及び表4に示す。

表3から、実験例15の塗料組成物(クロムフリープライマー)は、比較例2のリン酸クロム系プライマーと比較例3の従来の比較用クロムフリープライマーに比べて、長時間の耐熱性試験や耐熱水処理試験を経た後であっても剥離接着強さがあまり低下しないことがわかった。また、実験例15は、比較例1のPPSを含まないものに比べ、剥離接着強さの低下率が耐熱水処理試験においては同等程度であるが、耐熱性試験においては、低く抑制されることがわかった。

表4から、剥離接着強さは、実験例15について、熱処理後に殆ど低下せず、更に熱水処理を行った後であっても低下率が低く抑制されており、比較例2のリン酸クロム系プライマーをはるかに上回るのに対し、比較例1のPPSを含まないものと比較例3の従来のクロムフリープライマーについては、著しく低下することがわかった。
実験例16
ポリアミドイミド樹脂(商品名:トーロン4000T−40、ソルベイアドバンストポリマーズ社製)〔PAI〕を粉砕機(商品名:アトマイザー、ダルトン社製)にて粉砕し平均粒子径が50μmのPAI粒子粉砕品を得た。得られたPAI粒子粉砕品90g、テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニル)エーテル共重合体〔PFA〕(融点:310℃、平均粒子径:25μm)400g、ポリフェニレンサルファイド樹脂〔PPS〕(商品名:ライトンV−1、フィリップス社製)10gを混合機(商品名:V型ブレンダー、ダルトン社製)にて均一分散し本発明の塗料組成物を得た。
アルミナ粉(商品名:トサエメリー#40、宇治電化学工業社製)を用いて吹き付け圧力1.0MPaでブラスト処理した鉄板(SS400、縦100mm×横50mm×厚さ1.5mm、平均粗さ〔Ra〕=2〜3μm)上に、上記塗料組成物を膜厚が120μmになるように静電塗装し、350℃で30分間焼成した。得られた上記塗料組成物の乾燥皮膜上にPFA粉体塗料(平均粒子径:220μm、メルトフローレート:6g/10分)を、焼成後の膜厚合計が1.1mmになるように盛り置きし、350℃で1時間焼成し積層体Nを得た。
得られた積層体Nから試験片を切り出し、この試験片について実験例15と同様にして耐熱性試験と耐熱水処理試験を行った。結果を表5に示す。なお、表中、/A、/B、及び、/Cは上述の剥離状態評価である。
実験例17
PPSを30g、PAIを70g用いた以外は実験例16と同様にして積層体Pを得、評価した。結果を表5に示す。
実験例18
PPSを40g、PAIを60g用いた以外は実験例16と同様にして積層体Qを得、評価した。結果を表5に示す。
比較例4
PPSを50g、PAIを50g用いた以外は実験例16と同様にして比較用積層体を得、評価した。結果を表5に示す。
比較例5
PPSを用いず、PAIを100g用いた以外は実験例16と同様にして比較用積層体を得、評価した。結果を表5に示す。


表5から、実験例16、実験例17、及び、実験例18は、50時間耐熱性試験後、120時間耐熱水処理試験後の剥離接着強さがともに3kgf/cm以上であるのに対して、比較例4は、120時間耐熱水処理試験後の剥離接着強さが1.2Kgf/cmであり、比較例5は、50時間耐熱性試験後の剥離接着強さが0Kgf/cmであることがわかった。
【産業上の利用可能性】
本発明の塗料組成物は、上述の構成よりなるので、塗装に際し、高温で長時間焼成を行っても密着性が低下しにくく、リン酸クロム系プライマーに匹敵する耐熱密着性を有する含フッ素積層体を得ることができる。本発明の樹脂組成物は、上述の構成よりなるので、耐熱性に優れた塗膜や成形体を得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミド基を有しているか又はアミド基を有することとなるアミド基含有性高分子化合物(A)と、前記アミド基の酸化を抑制することができる抗酸化性物質(B)とからなる塗料組成物であって、
前記アミド基含有性高分子化合物(A)は、アミド基と芳香環とを有しているアミド基含有ポリマー(a1)、及び/又は、前記塗料組成物を塗装する際の焼成により前記アミド基含有ポリマー(a1)に変化するアミド基含有ポリマー前駆体(a2)であり、
前記抗酸化性物質(B)は、前記アミド基含有性高分子化合物(A)と前記抗酸化性物質(B)との合計の0.1〜20質量%である
ことを特徴とする塗料組成物。
【請求項2】
アミド基を有しているか又はアミド基を有することとなるアミド基含有性高分子化合物(A)と、前記アミド基の酸化を抑制することができる抗酸化性物質(B)とからなる塗料組成物であって、
プライマー組成物であり、
前記アミド基含有性高分子化合物(A)は、アミド基と芳香環とを有しているアミド基含有ボリマー(a1)、及び/又は、前記塗料組成物を塗装する際の焼成により前記アミド基含有ポリマー(a1)に変化するアミド基含有ポリマー前駆体(a2)であり、
前記抗酸化性物質(B)は、前記アミド基含有性高分子化合物(A)と前記抗酸化性物質(B)との合計の0.1〜20質量%である
ことを特徴とする塗料組成物。
【請求項3】
プライマー組成物は、フッ素樹脂(D)からなるフッ素樹脂層の下塗り用塗料組成物である請求の範囲第2項記載の塗料組成物。
【請求項4】
アミド基含有ポリマー(a1)は、ポリアミドイミドである請求の範囲第1、2又は3項記載の塗料組成物。
【請求項5】
抗酸化性物質(B)は、ポリアリレンサルファイドである請求の範囲第1、2、3又は4項記載の塗料組成物。
【請求項6】
抗酸化性物質(B)は、窒素含有化合物である請求の範囲第1、2、3又は4項記載の塗料組成物。
【請求項7】
抗酸化性物質(B)は、ポリアリレンサルファイドと窒素含有化合物とである請求の範囲第1、2、3又は4項記載の塗料組成物。
【請求項8】
アミド基含有性高分子化合物(A)からなる粒子と、抗酸化性物質(B)からなる粒子とを分散媒に分散してなる請求の範囲第1、2、3、4、5、6又は7項記載の塗料組成物。
【請求項9】
アミド基含有性高分子化合物(A)と、抗酸化性物質(B)と、更に、フッ素樹脂(C)とからなり、
前記フッ素樹脂(C)は、前記アミド基含有性高分子化合物(A)と前記抗酸化性物質(B)と前記フッ素樹脂(C)との合計の50〜90質量%である請求の範囲第1、2、3、4、5、6、7又は8項記載の塗料組成物。
【請求項10】
フッ素樹脂(C)は、塗装時の焼成の温度が300℃以上のものである請求の範囲第9項記載の塗料組成物。
【請求項11】
フッ素樹脂(C)は、パーフルオロ系樹脂である請求の範囲第9又は10項記載の塗料組成物。
【請求項12】
アミド基含有性高分子化合物(A)からなる粒子と、抗酸化性物質(B)からなる粒子と、フッ素樹脂(C)からなる粒子とを分散媒に分散してなる請求の範囲第9、10又は11項記載の塗料組成物。
【請求項13】
バインダー成分の役割を果たす6価クロムを含まないクロムフリープライマーである塗料組成物であって、
前記塗料組成物を被塗装物上に塗装することにより得られる測定用塗膜について、350℃に50時間おく耐熱性試験後の剥離接着強さが3kgf/cm以上、90℃以上の熱水に120時間浸漬する耐熱水処理試験後の剥離接着強さが3kgf/cm以上である
ことを特徴とする塗料組成物。
【請求項14】
粉体塗料である請求の範囲第13項記載の塗料組成物。
【請求項15】
被塗装物、前記被塗装物上に請求の範囲第1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13又は14項記載の塗料組成物を塗装することにより得られる塗膜、及び、フッ素樹脂層からなる含フッ素積層体であって、
前記フッ素樹脂層は、フッ素樹脂(D)からなるものであり、
前記被塗装物、前記塗膜及び前記フッ素樹脂層は、この順に積層している
ことを特徴とする含フッ素積層体。
【請求項16】
フッ素樹脂層は、膜厚が200μm以上であるものである請求の範囲第15項記載の含フッ素積層体。
【請求項17】
塗料組成物は、抗酸化性物質(B)が窒素含有化合物からなるものであり、
被塗装物は、酸化膜速形成性金属からなるものである請求の範囲第15又は16項記載の含フッ素積層体。
【請求項18】
アミド基を有しているか又はアミド基を有することとなるアミド基含有性高分子化合物(A)と、ポリアリレンサルファイドとからなる樹脂組成物であって、
前記アミド基含有性高分子化合物(A)は、アミド基と芳香環とを有しているアミド基含有ポリマー(a1)、及び/又は、前記塗料組成物を塗装する際の焼成により前記アミド基含有ポリマー(a1)に変化するアミド基含有ポリマー前駆体(a2)であり、
前記ポリアリレンサルファイドは、前記アミド基含有性高分子化合物(A)と前記ポリアリレンサルファイドとの合計の1〜40質量%である
ことを特徴とする樹脂組成物。
【請求項19】
粉体塗料である請求の範囲第18項記載の樹脂組成物。
【請求項20】
アミド基含有性高分子化合物(A)と、ポリアリレンサルファイドと、更に、フッ素樹脂とからなるものである請求の範囲第19項記載の樹脂組成物。
【請求項21】
アミド基含有ポリマー(a1)は、ポリアミドイミドである請求の範囲第18、19又は20項記載の樹脂組成物。

【国際公開番号】WO2004/048489
【国際公開日】平成16年6月10日(2004.6.10)
【発行日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−510278(P2005−510278)
【国際出願番号】PCT/JP2003/014171
【国際出願日】平成15年11月7日(2003.11.7)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】