説明

塗料組成物、塗装仕上げ方法及び塗装物品

【課題】耐侯性、耐酸性、及び被塗物表面の微細な凹凸に対する下地隠蔽性に優れた塗膜が得られ、かつ、十分な貯蔵安定性を有する塗料組成物、塗装仕上げ方法、及び塗装物品を提供する。
【解決手段】(A)カルボキシル基含有ラジカル重合性単量体と、その他のラジカル重合性単量体との共重合によって得られる1分子中にカルボキシル基を2個以上含有し、酸価が100〜300mgKOH/g、重量平均分子量が2,000〜30,000である樹脂であって、かつ、樹脂固形分中にラクトン化合物に基づく構成単位を5〜50質量%含有するカルボキシル基含有樹脂、(B)1分子中にエポキシ基を2個以上含有するエポキシ基含有樹脂、(C)紫外線吸収剤、及び(D)塩基性度(pKb)が9以上である光安定剤を必須成分として含有し、(A)成分のカルボキシル基と(B)成分のエポキシ基との割合が、モル比で75/25〜25/75の範囲である塗料組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な塗料組成物、塗装仕上げ方法及び塗装物品に関する。さらに詳しく言えば、特に自動車塗装分野において、耐侯性、耐酸性、および、被塗物表面の微細な凹凸に対する下地隠蔽性に優れた塗膜を得ることができ、かつ、1液型塗料としての十分な貯蔵安定性を有する塗料組成物、その塗料組成物を用いた塗装仕上げ方法、及び塗装物品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車塗装分野においては、上塗り塗料に、高い耐侯性、耐酸性、および、優れた外観性を有する塗膜を得ることができ、かつ、サーキュレーションでの使用に耐えうる十分な貯蔵安定性が要求されている。
耐侯性を向上させるためには、塗膜中に、紫外線吸収剤、および、光安定剤を含有させる手法が一般的であり、また、下地隠蔽性は、脱離物を生じない付加反応の硬化形式が硬化収縮が少なく下地隠蔽性に優れ、耐酸性には、メラミン樹脂などのアミノ樹脂による架橋反応を用いない手法が有効である。これらの反応形式としては、酸/エポキシ架橋、水酸基/イソシアネート架橋を用いた技術が知られているが、水酸基/イソシアネートの架橋では、低温での反応性が著しく速く、1液型塗料としての使用は不可能である。また、ブロックイソシアネートを用いた架橋も知られているが、この場合、反応の際、ブロック基が脱離するため、硬化収縮が大きく、十分な下地隠蔽性が得られない。また、酸/エポキシ架橋の場合にも、低温での貯蔵安定性が悪く、1液型塗料としての使用には限界がある。
【0003】
酸/エポキシ架橋を用いた技術としては、ラクトン変性のカルボキシル基含有単量体を共重合させて得られるアクリル共重合体と、エポキシ基含有アクリル共重合体、および、アミノ樹脂からなる塗料組成物が報告されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、この塗料組成物においては、アミノ樹脂を使用しているため、十分な耐酸性が得られず、また、酸/エポキシの反応性を制御していないため、1液型塗料として十分な貯蔵安定性も得られない。
さらに、アクリルポリカルボン酸、ポリエポキシド、および、抗酸化物からなる塗料組成物(例えば、特許文献2参照)、および、カルボキシル基含有低ラクトン変性ヒドロキシ(メタ)アクリレートに基づく構成単位を含むアクリルポリカルボン酸樹脂、ポリエポキシドからなる塗料組成物(例えば、特許文献3参照)が報告されているが、これらの場合においても、酸/エポキシの反応性を制御していないため、1液型塗料として十分な貯蔵安定性を得られない。
【0004】
【特許文献1】特開平5−171103号公報
【特許文献2】特開平9−104803号公報
【特許文献3】特開2002−167426号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、耐侯性、耐酸性、及び、被塗物表面の微細な凹凸に対する下地隠蔽性に優れた塗膜を得ることができ、かつ、1液型塗料としての十分な貯蔵安定性を有する塗料組成物、その塗料組成物を用いた塗装仕上げ方法、及び塗装物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記の課題を解決するべく鋭意研究を重ねた結果、1分子中にカルボキシル基を2個以上含有するラジカル共重合体樹脂であって、かつ、ラクトン化合物に基づく構成単位を特定量含有し、特定の酸価及び特定の重量平均分子量を有するカルボキシル基含有樹脂、及び、1分子中にエポキシ基を2個以上含有するエポキシ基含有樹脂を基体樹脂として特定割合で含有し、さらに、紫外線吸収剤、及び特定の塩基性度を有する光安定剤を含有する塗料組成物を用いることにより、その目的を達成し得ることを見出し、これらの知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、(A)カルボキシル基含有ラジカル重合性単量体と、その他のラジカル重合性単量体との共重合によって得られる1分子中にカルボキシル基を2個以上含有し、酸価が100〜300mgKOH/g、重量平均分子量が2,000〜30,000である樹脂であって、かつ、樹脂固形分中にラクトン化合物に基づく構成単位を5〜50質量%含有するカルボキシル基含有樹脂、(B)1分子中にエポキシ基を2個以上含有するエポキシ基含有樹脂、(C)紫外線吸収剤、及び(D)塩基性度(pKb)が9以上である光安定剤を必須成分として含有し、(A)成分のカルボキシル基と(B)成分のエポキシ基との割合が、モル比で75/25〜25/75の範囲であることを特徴とする塗料組成物を提供するものである。
【0008】
また、本発明は、上記塗料組成物において、前記(A)成分の全カルボキシル基中、50%以上がアクリル酸及び/またはメタクリル酸に由来するカルボキシル基である塗料組成物を提供するものである。
また、本発明は、上記塗料組成物において、前記(B)成分のエポキシ基含有樹脂が、エポキシ基含有ラジカル重合性単量体に基づく構成単位を含有する共重合体であり、エポキシ価100〜300mgKOH/g、重量平均分子量2,000〜30,000のエポキシ基含有樹脂である塗料組成物を提供するものである。
また、本発明は、上記塗料組成物において、前記(B)成分のエポキシ基含有樹脂が、水酸基含有ラジカル重合性単量体由来の水酸基を、水酸基価で100mgKOH/g以下含有するエポキシ基含有樹脂である塗料組成物を提供するものである。
【0009】
また、本発明は、上記塗料組成物において、さらに、(E)1分子中にカルボキシル基を2個以上含有する樹脂であって、酸価が100〜800mgKOH/g、重量平均分子量が200〜30,000のカルボキシル基含有樹脂(ただし、(A)成分を除く。)を含有し、(A)成分と(E)成分の割合が、樹脂固形分質量比で99/1〜50/50の範囲であり、かつ、(A)成分及び(E)成分のカルボキシル基と(B)成分のエポキシ基との割合が、モル比で75/25〜25/75の範囲である塗料組成物を提供するものである。
また、本発明は、上記塗料組成物において、さらに、(F)トリス(アルコキシカルボニルアミノ)トリアジン及び/又はブロックイソシアネート化合物を全樹脂の固形分中20質量%未満含有する塗料組成物を提供するものである。
さらに、上記の塗料組成物を塗装することを特徴とする塗装仕上げ方法を提供し、また、上記塗装仕上げ方法により塗装された塗装物品を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の塗料組成物は、耐侯性、耐酸性、及び、被塗物表面の微細な凹凸に対する下地隠蔽性に優れた塗膜を得ることができ、かつ、1液型塗料としての十分な貯蔵安定性を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明において用いる(A)成分は、酸価100〜300mgKOH/g、重量平均分子量2,000〜30,000であるカルボキシル基含有樹脂である。(A)成分の酸価の好ましい範囲は110〜250mgKOH/gであり、特に好ましい範囲は120〜200mgKOH/gである。酸価が100mgKOH/g未満の場合は、得られる塗膜の硬度が不足し、300mgKOH/gを超える場合は、他の樹脂との相溶性が低下し、塗膜の外観性が劣る。また、(A)成分の重量平均分子量のより好ましい範囲は、2,500〜20,000であり、特に好ましい範囲は、2,500〜15,000)である。重量平均分子量が2,000未満の場合は、得られる塗膜の硬度が不足し、30,000を超える場合は、他の樹脂との相溶性が低下し、塗膜の外観性が劣る。
【0012】
(A)成分は、カルボキシル基含有ラジカル重合性単量体と、その他のラジカル重合性単量体との共重合によって得られる1分子中にカルボキシル基を2個以上含有する共重合体樹脂である。
(A)成分を製造するために用いられるカルボキシル基含有ラジカル重合性単量体の具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸などが挙げられる。これらのカルボキシル基含有ラジカル重合性単量体は1種で用いてもよいし、2種以上を組合せて用いてもよいが、(A)成分の全カルボキシル基中50%以上、好ましくは55%以上、特に好ましくは60%以上がアクリル酸及び/またはメタクリル酸に由来するカルボキシル基であることが好ましい。アクリル酸及び/またはメタクリル酸に由来するカルボキシル基が、(A)成分の全カルボキシル基中50%未満の場合には、カルボキシル基の反応性が高くなりすぎて、貯蔵安定性が劣る。
【0013】
(A)成分を製造するために用いられるその他のラジカル重合性単量体の具体例としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸sec−ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ステアリル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸sec−ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ステアリル、スチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミドなどが挙げられる。これらのラジカル重合性単量体は、1種で用いてもよいし、2種以上を組合せて用いてもよい。
【0014】
また、(A)成分は、樹脂中にラクトン化合物に基づく構成単位を含有する。樹脂中にラクトン化合物に基づく構成単位を含有させるには、例えば、上記カルボキシル基にラクトン化合物が付加することによって、側鎖の末端カルボキシル基が延長され、樹脂中にラクトン化合物に基づく構成単位を含有させる方法が挙げられる。この場合、カルボキシル基は、その他のラジカル重合性単量体に由来する側鎖の立体障害を避けることができ、反応性が高まる利点を有する。
該ラクトン化合物としては、例えば、4〜14員環の環構造を有するラクトン、炭素数1〜5のアルキル基が1〜3個、好ましくは1個環に置換されている4〜14員環の環構造を有するラクトンなどが挙げられ、具体的には、β−メチル−δ−バレロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、δ−カプロラクトン、γ−カプロラクトン、ε−カプロラクトン、β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、γ−ノナノイックラクトン、δ−ドデカノラクトンなどが挙げられ、ε−カプロラクトンが特に好ましい。ラクトン化合物は、1種で用いてもよいし、2種以上を組合せて用いてもよい。
【0015】
なお、ラクトン化合物としては、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、アクリル酸4−ヒドロキシブチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸3−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸4−ヒドロキシブチルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシ低級アルキルエステルのε−カプロラクトンなどのラクトン化合物付加物等も市販されているが、本発明の目的であるカルボキシル基の反応性を高めることに寄与しない。
【0016】
該ラクトン化合物は、ラクトン化合物に基づく構成単位の含有量が、(A)成分である樹脂固形分中5〜50質量%の範囲になるように用いられるが、5〜40質量%の範囲になるように用いられることがより好ましく、5〜30質量%の範囲になるように用いられることが特に好ましい。該ラクトン化合物に基づく構成単位の含有量が、50質量%を超えた場合には、樹脂の結晶性が高くなり、塗料中で析出する。該ラクトン化合物に基づく構成単位の含有量が、5質量%未満の場合には、反応性が低下し、得られる塗膜の硬度が不足する。
該ラクトン化合物のカルボキシル基含有ラジカル重合性単量体への付加反応は、カルボキシル基含有ラジカル重合性単量体とその他のラジカル重合性単量体との共重合反応の後でもよいし、または、同時反応であってもよい。
【0017】
(A)成分のカルボキシル基含有樹脂を製造するためのラジカル共重合は、公知のラジカル共重合方法により行なうことができる。ラジカル共重合には、通常ラジカル重合開始剤が用いられる。ラジカル重合開始剤としては、例えば2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、4,4'−アゾビス−4−シアノ吉草酸、1−アゾビス−1−シクロヘキサンカルボニトリル、ジメチル−2,2'−アゾビスイソブチレート等のアゾ化合物、メチルエチルケトンパーオキシド、シクロヘキサノンパーオキシド、3,5,5−トリメチルヘキサノンパーオキシド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−シクロヘキサン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)オクタン、t−ブチルヒドロパーオキンド、ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキシド、ジクミルパーオキシド、t−ブチルクミルパーオキシド、イソブチルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシネオデカネート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート等の有機過酸化物が挙げられる。
【0018】
ラジカル重合開始剤は1種単独で用いてもよいし、又は2種以上を組合せて用いてもよい。
ラジカル重合開始剤の使用量は、特に制限ないが、ラジカル重合性単量体の全量に対して0.01〜20質量%にすることが好ましい。
これらのラジカル重合開始剤の系においては必要に応じてジメチルアニリン、硫酸第1鉄、塩化第1鉄、酢酸第1鉄等の第1鉄塩、酸性亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、ロンガリット等の還元剤を組合せても差し支えないが、重合温度が低くなりすぎないように留意して選択する必要がある。
【0019】
本発明の(A)成分のカルボキシル基含有樹脂の製造において用いられる有機溶剤はカルボキシル基と反応する官能基を有さないものが好ましい。用いられる有機溶剤の適当な例としては、例えばシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、芳香族ナフサ等の芳香族炭化水素系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン等のケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸3−メトキシブチル、アジピン酸ビス(2−エチルヘキシル)等のエステル系溶剤、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,3,5−トリオキサン等のエーテル系溶剤、アセトニトリル、バレロニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド等の含窒素系溶剤が挙げられる。有機溶剤は1種単独であっても、あるいは2種以上の複数種類の混合溶剤であっても差し支えない。また、(A)成分のカルボキシル基含有樹脂の固形分濃度は樹脂の分散安定性を損なわない範囲において任意に選ぶことができるが、通常固形分濃度で10〜70質量%である。
【0020】
上記重合反応の重合温度はラジカル重合開始剤の種類、併用する還元剤の有無、カルボキシル基とエポキシ基の反応触媒の有無によって異なるが、50〜200℃の条件で行うことが好ましく、80〜160℃の条件で行うことがさらに好ましい。重合温度が50℃未満の場合には、ラジカル共重合の反応が十分に進行せず、他方、200℃を越える場合には予期せぬ解重合等の副反応が起こることがある。
本発明において、(B)成分として用いられる1分子中にエポキシ基を2個以上含有するエポキシ基含有樹脂は、具体的には、例えば、エポキシ基含有ラジカル重合性単量体、及び、その他のラジカル重合性単量体との共重合体として得ることができる。
【0021】
エポキシ基を含有するラジカル重合性単量体の具体例としては、例えば、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、アクリル酸3,4−エポキシシクロヘキシルメチル、メタクリル酸3,4−エポキシシクロヘキシルメチルなどが挙げられ、これらの単量体は、1種で用いてもよいし、2種以上を組合せて用いてもよい。
その他のラジカル重合性単量体としては、(A)成分の製造のために用いられる前記のその他のラジカル重合性単量体が挙げられる。その他のラジカル重合性単量体は、1種で用いてもよいし、2種以上を組合せて用いてもよい。
【0022】
(B)成分のエポキシ基含有樹脂のエポキシ価は、100〜300mgKOH/gが好ましく、より好ましくは、120〜270mgKOH/gであり、特に好ましくは、140〜250mgKOH/gである。エポキシ価が100mgKOH/g未満の場合には、得られる塗膜の硬度が低下し、300mgKOH/gを超えた場合には、(A)成分のカルボキシル基含有樹脂との相溶性が低下し、塗膜の外観性に劣る。また、(B)成分のエポキシ基含有樹脂の重量平均分子量は、2,000〜30,000が好ましく、より好ましくは、2,500〜20,000であり、特に好ましくは、2,500〜15,000である。重量平均分子量が2,000未満の場合には、得られる塗膜の硬度が低下し、30,000を超えた場合には、(A)成分のカルボキシル基含有樹脂との相溶性が低下し、塗膜の外観性に劣る。
【0023】
また、本発明の(B)成分として用いられるエポキシ基含有樹脂は、水酸基を含有していてもよい。(B)成分の水酸基を含有するエポキシ基含有樹脂は、例えば、水酸基含有ラジカル重合性単量体と、前記(B)成分のエポキシ基含有樹脂の製造に用いられるラジカル重合性単量体の共重合により製造することができる。(B)成分のエポキシ基含有樹脂に水酸基を導入することで、高い極性のカルボキシル基含有樹脂の極性を変えずに、他の樹脂との相溶性を高める効果のみならず、例えば、上塗り塗料として用いられた場合、下のベースコート塗料が含有している架橋剤とも反応することで、界面における付着力を高める効果がある。
【0024】
水酸基を含有するラジカル重合性単量体としては、例えば、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、アクリル酸4−ヒドロキシブチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸3−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸4−ヒドロキシブチル、アリルアルコール、アクリル酸とバーサチック酸グリシジルエステルの付加物、メタクリル酸とバーサチック酸グリシジルエステルの付加物;アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、アクリル酸4−ヒドロキシブチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸3−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸4−ヒドロキシブチルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルのエチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイド付加物などが挙げられる。水酸基を有するラジカル重合性単量体は、1種又は2種以上を組合せて用いることができる。
【0025】
(B)成分のエポキシ基含有樹脂の水酸基価は、100mgKOH/g以下が好ましいが、より好ましくは、80mgKOH/g以下であり、特に好ましくは、60mgKOH/g以下である。(B)成分のエポキシ基含有樹脂の水酸基価が、100mgKOH/gを超えた場合には、塗膜の親水性が増加し、耐水性に劣る。
【0026】
本発明の(B)成分のエポキシ基含有樹脂の製造において用いられる有機溶剤はエポキシ基及び水酸基と反応する官能基を有さないものが好ましく、有機溶剤の適当な例としては、例えばシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、芳香族ナフサ等の芳香族炭化水素系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン等のケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸3−メトキシブチル、アジピン酸ビス(2−エチルヘキシル)等のエステル系溶剤、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,3,5−トリオキサン等のエーテル系溶剤、アセトニトリル、バレロニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド等の含窒素系溶剤が挙げられる。有機溶剤は1種単独であっても、あるいは2種以上の複数種類の混合溶剤であっても差し支えない。また、(B)成分のエポキシ基含有樹脂の固形分濃度は樹脂の分散安定性を損なわない範囲において任意に選ぶことができるが、通常固形分濃度で10〜70質量%である。
【0027】
また、(A)成分の樹脂中のカルボキシル基と(B)成分のエポキシ基含有樹脂中のエポキシ基との割合は、モル比で75/25〜25/75の範囲であり、65/35〜35/65の範囲がより好ましく、60/40〜40/60の範囲が特に好ましい。(A)成分中のカルボキシル基の(B)成分中のエポキシ基に対する比率が、75/25よりも多い場合には、塗膜硬度が低下するという不具合が発生し、25/75よりも少ない場合にも、塗膜硬度が低下するという不具合が付発生する。
【0028】
本発明の塗料組成物には、(E)成分のカルボキシル基含有樹脂を含有させることができる。(E)成分であるカルボキシル基含有樹脂は、1分子中にカルボキシル基を2個以上含有する樹脂であって、酸価が100〜800mgKOH/g、重量平均分子量が200〜30,000のカルボキシル基含有樹脂(ただし、(A)成分を除く。)である。(E)成分のカルボキシル基は、ブロック剤でブロックされていても、ブロックされていなくてもよい。(E)成分のカルボキシル基含有樹脂としては、カルボキシル基を含有するアクリル樹脂、ポリエステル樹脂など通常の樹脂を用いることができ、カルボキシル基をブロックするブロック剤としては、プロピルビニルエーテルなどのビニルエーテルなどや、他の公知のブロック剤が挙げられる。
【0029】
ただし(E)成分のカルボキシル基がブロックされていない場合には、(A)成分として、カルボキシル基が、アクリル酸由来のカルボキシル基とメタクリル酸由来のカルボキシル基のみからなるアクリル樹脂とを使用することが好ましい。アクリル酸由来のカルボキシル基とメタクリル酸由来のカルボキシル基のみからなるアクリル樹脂とを使用しない場合には、貯蔵安定性が低下するという不具合が起こる。
(E)成分の具体的なアクリル樹脂の例としては、前記(A)成分で記載した製造方法で、ラクトン化合物に基づく構成単位を含有しない樹脂、あるいは、水酸基含有アクリル樹脂の水酸基に酸無水物ハーフエステル化した樹脂などが挙げられ、(E)成分の具体的なポリエステル樹脂としては、特開平4−345602号公報の実施例で開示されたポリカルボキシル化合物、及び、そのカルボキシル基をビニルエーテルでブロックした潜在化カルボキシル化合物などが挙げられる。
【0030】
(E)成分のカルボキシル基含有樹脂のより好ましい酸価は、120〜400mgKOH/gであり、特に好ましくは、140〜300mgKOH/gである。カルボキシル基がブロックされていない場合、酸価が100mgKOH/g未満では、塗膜硬度が不足し、800mgKOH/gを超えると、他の樹脂との相溶性が低下し、塗膜の外観が不良となる。また、カルボキシル基がブロックされている場合、解離後の酸価が100mgKOH/g未満では、同じく、塗膜硬度が不足し、800mgKOH/gを超えると、他の樹脂との相溶性が低下し、塗膜の外観が不良となる。
(E)成分のカルボキシル基含有樹脂の重量平均分子量は、200〜30,000であるが、好ましくは400〜20,000であり、特に好ましくは600〜15,000である。重量平均分子量が200未満では、塗膜硬度が不足し、30,000を超えると、他の樹脂との相溶性が低下し、塗膜の外観が不良となる。
【0031】
(E)成分のカルボキシル基含有樹脂は、(B)成分のエポキシ基含有樹脂との反応性を高めるために用いられるが、(A)成分のカルボキシル基含有樹脂と(E)成分のカルボキシル基含有樹脂との割合は、樹脂固形分質量比で99/1〜50/50の範囲であることが好ましいが、99/1〜60/40の範囲になるように用いられることがより好ましく、99/1〜70/30の範囲になるように用いられることが特に好ましい(E)成分が、その樹脂固形分質量比で、50質量%を超えると、カルボキシル基がブロックされていない場合、貯蔵安定性が劣り、他方、カルボキシル基がブロックされている場合、下地隠蔽性が劣る。
【0032】
また、(A)成分のカルボキシル基及び(E)成分のカルボキシル基と(B)成分のエポキシ基との割合は、モル比で75/25〜25/75の範囲であることが好ましく、65/35〜35/65の範囲がより好ましく、60/40〜40/60の範囲が特に好ましい。(A)成分及び(E)成分のカルボキシル基の(B)成分中のエポキシ基に対する比率が、75/25よりも多い場合には、塗膜硬度が低下するという不具合が発生し、25/75よりも少ない場合にも、塗膜硬度が低下するという不具合が付発生する。
本発明の(B)成分のエポキシ基含有樹脂は、(A)成分のカルボキシル基含有樹脂及び(E)成分のカルボキシル基含有樹脂が配合されている場合には、(E)成分のカルボキシル基含有樹脂との塗膜形成過程における化学反応が期待される。
【0033】
本発明に用いられる(C)成分の紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系化合物、シュウ酸アニリド系化合物、トリアジン系化合物、ベンゾフェノン系化合物などが使用できる。ベンゾトリアゾール系化合物としては、例えば2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ(1,1−ジメチルベンジル)フェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、メチル−3−(3−2H−ベンゾ
トリアゾール−2−イル)−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオネート、他のビニル系単量体と容易にラジカル共重合させることが可能である2−(2′−ヒドロキシ−5′−メタクリロキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾールなどが挙げられる。シュウ酸アニリド系化合物としては、例えばエタンジアド−N−(2−エトキシフェニル)−N′−(4−イソドデシルフェニル)−オキサリックアニリドなどがあげられる。トリアジン系化合物としては、2−(4−((2−ヒドロキシ−3−ジデシルオキシプロピル)−オキシ)−2−ヒドロキシフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジンなどが挙げられる。ベンゾフェノン系化合物としては、例えば2,2′−ジヒドロキシ−4,4′−ジメトキシ−ベンゾフェノンなどが挙げられる。紫外線吸収剤は1種単独で使用することもできるし、2種以上を組合せて使用することもできる。
【0034】
(C)成分の含有量は、樹脂の固形分100質量部に対して0.05〜5質量部が好ましく、0.1〜2質量部がより好ましい。
本願発明に用いられる(D)成分の光安定剤は、塩基性度(pKb)が9以上であり、より好ましくは、11以上であり、さらに好ましくは12以上である。光安定剤の塩基性度が9未満の場合は、貯蔵安定性が低下する。
(D)成分の光安定剤としては、ヒンダードアミン系の光安定剤が適しており、市販されているものとしては、チヌビン123、チヌビン440(チバスペシャリティーケミカルズ(株)製)、サンドボア3058(クラリアント(株)製)などが挙げられる。(D)成分の光安定剤は、1種で用いてもよいし、2種以上組合せて用いてもよい。
(D)成分の含有量は、樹脂の固形分100質量部に対して0.05〜2質量部が好ましく、0.1〜1質量部がより好ましい。
【0035】
また、本発明の塗料組成物には、(F)成分として、トリス(アルコキシカルボニルアミノ)トリアジン及び/又はブロックイソシアネート化合物を全樹脂の固形分中20質量%未満含有することができる。(F)成分の含有量は、より好ましくは、15質量%以下であり、特に好ましくは、10質量%以下である。トリス(アルコキシカルボニルアミノ)トリアジン及び/又はブロックイソシアネート化合物の含有量が20質量%を超えた場合には、下地隠蔽性が低下する。
(F)成分は、(A)成分並びに(E)成分のカルボキシル基と(B)成分のエポキシ基との反応で生成した水酸基、及び、場合によって(B)成分が含有している水酸基と反応し架橋密度を高める効果のみならず、例えば、上塗り塗料として用いられた場合、下のベースコート塗料が含有している水酸基とも反応することで、界面における付着力を高める効果がある。
【0036】
トリス(アルコキシカルボニルアミノ)トリアジンの具体例としては、トリス(メトキシカルボニルアミノ)トリアジン、または、トリス(エトキシカルボニルアミノ)トリアジンが好ましい。
ブロックイソシアネート化合物の具体例としては、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物、例えばヘキサメチレンジイソシアネート、フエニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等のポリイソシアネートを、アセト酢酸メチル、マロン酸ジメチル等の活性メチレン系、オキシム系等のブロック剤でブロックしたイソシアネート化合物を挙げることができる。
【0037】
本発明の塗料組成物は、そのままで、あるいは必要に応じて、有機溶剤、各種添加剤、例えば、界面活性剤、表面調整剤、硬化反応触媒、帯電防止剤、香料、脱水剤、さらにはポリエチレンワックス、ポリアマイドワックス、内部架橋型樹脂微粒子等のレオロジー調整剤などを1種又は2種以上添加して使用することができる。
本発明の塗料組成物は、1液型塗料として好適に使用でき、貯蔵安定性に優れている。
本発明の塗料組成物は、クリヤー塗料として用いてもよいし、染料、顔料などの着色剤を配合して着色塗料として用いてもよいが、上塗り塗料組成物として使用することが好ましい。
また、本発明の塗料組成物は、被塗物表面の微細な凹凸に対する下地隠蔽性に優れた塗膜を得ることができる。
【0038】
本発明の上塗り塗料の塗装仕上げ方法は、例えば、基材上に着色ベースコートを塗装し、未架橋のまま上塗り塗料として本発明の塗料組成物を塗装する2コート1ベーク塗装仕上げ方法、基材上に着色ベースコートを塗装し、未架橋のまま中塗り塗料を塗装し、同時に焼き付けた後に、オーバーコート塗料として本発明の塗料組成物を塗装し焼き付けるオーバーコート塗装仕上げ方法、及び上記オーバーコート塗装仕上げ方法において、下地コートとの密着性確保のために、プライマー塗料を塗装し、未架橋のまま本発明の塗料組成物をオーバーコート塗料として塗装する塗装仕上げ方法等が挙げられる。
前記着色ベースコート塗料、中塗り塗料、上塗り塗料、オーバーコート塗料、及びプライマー塗料は、必要に応じて加温したり、有機溶剤又は反応性希釈剤を添加することにより所望の粘度に調整した後、エアースプレー、静電エアースプレー、ロールコーター、フローコーター、ディッピング形式による塗装機等の通常使用される塗装機、又は刷毛、バーコーター、アプリケーターなどを用いて塗装が行われる。これらのうちスプレー塗装が好ましい。
【0039】
本発明の塗料組成物の塗布量は、乾燥膜厚が通常10〜100μmとなるようにすることが好ましい。本発明の塗料組成物を塗装して得られる塗膜は、通常焼付けることが好ましい。
また、焼付け温度は、通常120〜180℃の範囲で適宜選定すればよい。さらに、焼付け時間は、通常10〜60分の範囲で適宜選定すればよい。
また、本発明の塗料組成物を塗装する基材としては、木、ガラス、金属、布、プラスチック、発泡体、弾性体、紙、セラミック、コンクリート、石膏ボード等の有機素材及び無機素材などが挙げられる。これらの基材は、予め表面処理されたものでもよいし、予め表面に塗膜が形成されたものでもよい。
これまで具体例を示したが、本発明の塗料組成物の塗装仕上げ方法は、これらにより何ら制限されるものではない。
【0040】
本発明の塗料組成物により得られる塗装物品としては、例えば、構造物、木製品、金属製品、プラスチック製品、ゴム製品、加工紙、セラミック製品、ガラス製品などが挙げられる。より具体的には、自動車、自動車用部品(例えば、ボディー、バンパー、スポイラー、ミラー、ホイール、内装材等の部品であって、各種材質のもの)、鋼板等の金属板、二輪車、二輪車用部品、道路用資材(例えば、ガードレール、交通標識、防音壁等)、トンネル用資材(例えば、側壁板等)、船舶、鉄道車両、航空機、家具、楽器、家電製品、建築材料、容器、事務用品、スポーツ用品、玩具などが挙げられる。
【実施例】
【0041】
次に、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら制限されるものではない。なお、本発明のクリヤー塗料組成物により得られる塗膜の性能は次のようにして求めた。
(1)塗料の濁り
塗膜の目視観察により、次の基準に従い評価した。
○:塗膜に濁りが観察されない。
△:塗膜に僅かに濁りが観察される。
×:塗膜に白濁している。
【0042】
(2)外観性
塗膜の目視観察により、次の基準に従い評価した。
○:塗膜に蛍光灯を映すと、蛍光灯が鮮明に映る。
△:塗膜に蛍光灯を映すと、蛍光灯の周囲(輪郭)がややぼやける。
×:塗膜に蛍光灯を映すと、蛍光灯の周囲(輪郭)が著しくぼやける。
(3)塗膜硬度
JIS K5600−5−4(1999)の引っかき硬度(鉛筆法)試験方法に準拠して、塗膜硬度を測定した。
(4)耐酸性
40%硫酸水溶液0.2mlを表面に塗膜を形成した試験板にスポット状に乗せた後60℃で15分間加熱し、その後水洗いしてシミ跡の発生度合いを目視観察した。
○:塗膜にほとんど変化が見られない。
△:塗膜に少し水シミ跡が見られる。
×:塗膜に著しい水シミ跡が見られる。
【0043】
(5)耐水性
JIS K−5400(1990)9.9耐候性試験方法に準じて屋外にて表面に塗膜を形成した試験板を3ヶ月曝露後、塗膜の未洗浄面の色をJIS K−5400(1990)7.4.2塗膜の色−計測法に準じて測定し、試験片を40℃の温水に240時間浸漬した後のL値から試験前のL値を引くことにより△L値を算出し、下記の基準で塗膜の白化を判定した。
○:0.5未満。
△:0.5以上1.0未満。
×:1.0以上。
(6)耐候性
サンシャインカーボンアーク灯式促進耐候性試験機(JIS K−5400(1990)9.8.1)を用いて表面に塗膜を形成した試験板を3000時間曝露後、塗膜の状態を目視判定した。
【0044】
(7)下地隠蔽性
表面租度Raが0.4の電着塗装鋼板上にクリヤー塗料を乾燥膜厚が30μmになるように塗装し、焼き付けした後の塗膜外観を目視判定した。
○:下地の凹凸がほとんど隠されている。
△:下地の凹凸がクリヤー表面に現れている。
×:下地の凹凸がまったく隠されていない。
(8)貯蔵安定性
クリヤー塗料をソルベッソ100(商品名、エッソ社製、芳香族石油ナフサ)で塗装粘度(フォードカップNo.4、20℃で25秒)に希釈したものを、30℃で10日間貯蔵後の粘度変化により確認した。
○:粘度変化が5秒以内である。
△:粘度変化が5秒以上、10秒未満である。
×:粘度変化が10秒以上である。
【0045】
<製造例1>
カルボキシル基含有樹脂溶液 A−1の製造
温度計、還流冷却器、攪拌機、滴下ロートを備えた4つ口フラスコに、キシレン 60質量部を仕込み、窒素気流下攪拌しながら加熱し140℃を保った。次に、140℃の温度で、アクリル酸11.5質量部、メタクリル酸11.5質量部、アクリル酸n−ブチル28質量部、メタクリル酸n−ブチル28質量部、及び、重合開始剤t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート4質量部の混合物を2時間かけて滴下ロートより等速滴下した。滴下終了後、140℃の温度を1時間保った後、反応温度を110℃に下げた。その後、5質量部のキシレンに溶解させたt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.5質量部の重合開始剤溶液(追加触媒)を添加し、さらに110℃の温度を2時間保った後、ε−カプロラクトン21質量部、キシレン5質量部とを加え、150℃の温度を3時間保ったところで反応を終了し、カルボキシル基含有樹脂溶液A−1を得た。樹脂酸価は157.7、不揮発分は59.6質量%、重量平均分子量は8,200であった。
【0046】
<製造例2〜8>
カルボキシル基含有樹脂溶液 A−2〜A−8の製造
表1に示した単量体の組成に替えた以外は、製造例1と同様にしてカルボキシル基含有樹脂溶液A−2〜A−8を得た。樹脂溶液の特性値を表1に示した。
【0047】
【表1】

【0048】
<製造例9>
エポキシ基含有樹脂溶液 B−1の製造
温度計、還流冷却器、攪拌機、滴下ロートを備えた4つ口フラスコに、キシレン 60質量部を仕込み、窒素気流下攪拌しながら加熱し140℃を保った。次に、140℃の温度で、メタクリル酸グリシジル53質量部、アクリル酸n−ブチル23.5質量部、メタクリル酸n−ブチル23.5質量部、及び、重合開始剤t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート4質量部の混合物を2時間かけて滴下ロートより等速滴下した。滴下終了後、140℃の温度を1時間保った後、反応温度を110℃に下げた。その後、5質量部のキシレンに溶解させたt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート1質量部の重合開始剤溶液(追加触媒)を添加し、さらに110℃の温度を2時間保ったところで反応を終了し、エポキシ基含有樹脂溶液B−1を得た。樹脂エポキシ価は199.4、不揮発分は61.8質量%、重量平均分子量は7,900であった。
【0049】
<製造例10〜15>
エポキシ基含有樹脂溶液 B−2〜B−7の製造
表2に示した単量体の組成に替えた以外は、製造例9と同様にしてエポキシ基含有樹脂溶液B−2〜B−7を得た。樹脂溶液の特性値を表2に示した。
【0050】
【表2】

【0051】
<製造例16>
カルボキシル基含有樹脂溶液 E−1の製造
温度計、還流冷却器、撹拌機を備えた4つ口フラスコにペンタエリスリトール18質量部、ヘキサハイドロ無水フタル酸82質量部、キシレン60質量部を仕込み、撹拌しながら加熱し還流温度を6時間保った。この後混合物の酸価(ピリジン/水質量比=9/1混合液で約50倍に希釈し、90℃で30分間加熱処理した溶液を水酸化カリウム標準溶液で滴定)が299mgKOH/gになるまで加熱撹拌を継続することによって、表3に示した重量平均分子量800、不揮発分62.5%のカルボキシル基含有樹脂溶液E−1を得た。
【0052】
<製造例17>
カルボキシル基含有樹脂溶液 E−2の製造
温度計、還流冷却器、撹拌機を備えた4つ口フラスコにペンタエリスリトール13質量部、ヘキサハイドロ無水フタル酸56質量部、キシレン60質量部を仕込み、撹拌しながら加熱し還流温度を6時間保った。その後、混合物の酸価(ピリジン/水質量比=9/1混合液で約50倍に希釈し、90℃で30分間加熱処理した溶液を水酸化カリウム標準溶液で滴定)が299mgKOH/gになるまで加熱撹拌を継続した。次に、温度を70℃まで下げて、n−プロピルビニルエーテル31質量部とキシレン2質量部を攪拌しながら加え、同温度で4時間反応を続けたのち、反応を終了、直ちに冷却することによって、表3に示した重量平均分子量1,100、不揮発分61.7%のカルボキシル基含有樹脂溶液E−2を得た。
【0053】
【表3】

【0054】
<実施例1〜10>
クリヤー塗料 CC−1〜10の製造
表4に記載した原料を順次混合して均一になるように撹拌し、クリヤー塗料CC−1〜CC−10を得た。
<比較例1〜17>
クリヤー塗料 CC−11〜26の製造
表5及び6に記載した原料を順次混合して均一になるように撹拌し、クリヤー塗料CC−11〜CC−26を得た。
【0055】
【表4】

【0056】
【表5】

【0057】
【表6】

【0058】
≪表の注記≫
1)チヌビン900:紫外線吸収剤、商品名、チバスペシャルティケミカルス社製の20質量%キシレン溶液
2)チヌビン440:光安定剤、商品名、チバスペシャルティケミカルス社製の20質量%キシレン溶液、pKb12以上
3)チヌビン123:光安定剤、商品名、チバスペシャルティケミカルス社製の20質量%キシレン溶液、pKb9
4)チヌビン292:光安定剤、商品名、チバスペシャルティケミカルス社製の20質量%キシレン溶液、pKb5以下
5)デュラネートMF−K−60X:商品名、旭化成(株)製、HDI系ブロック化ポリイソシアネート、不揮発分60質量%、有効NCO6.6質量%
【0059】
<実施例11>
試験片の作成及び塗膜性能の検討
リン酸亜鉛処理軟鋼板にカチオン電着塗料アクアNo.4200(商品名、BASFコーティングスジャパン(株)製)を乾燥膜厚20μmとなるよう電着塗装して175℃で25分間焼き付け、さらに中塗り塗料HS−H300(商品名、BASFコーティングスジャパン(株)製)を乾燥膜厚30μmとなるようエアスプレー塗装し、140℃で30分間焼き付けた。次に、溶剤系ベースコート塗料であるベルコートNo.6000黒(商品名、BASFコーティングスジャパン(株)製、塗色:黒)を乾燥膜厚15μmとなるようエアスプレー塗装し20℃で3分間セット後、クリヤー塗料CC−1をソルベッソ100(商品名、エッソ社製、芳香族石油ナフサ)で塗装粘度(フォードカップNo.4、20℃で25秒)に希釈したものをウェット・オン・ウェット方式でそれぞれ乾燥膜厚40μmとなるようエアスプレー塗装し、140℃で30分間焼き付けて試験片を作成した。
ただし、耐汚染性の試験板のみは、ベースコート塗料をベルコートNo.6000白(商品名、BASFコーティングスジャパン(株)製、塗色:白)に替えて用いた。
塗膜性能を表7に示すが、優れた耐洗車傷性、耐酸性、耐水性、耐汚染性、耐候性を示し、また、塗料の濁りも生じず、均一でツヤのある塗膜が得られた。
【0060】
<実施例12〜20、比較例18〜33>
試験片の作成及び塗膜性能の検討
クリヤー塗料をCC−2〜26とした以外は、実施例1と同様にして、試験片を作成した。塗膜性能を表7〜9に示す。
【0061】
【表7】

【0062】
【表8】

【0063】
【表9】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)カルボキシル基含有ラジカル重合性単量体と、その他のラジカル重合性単量体との共重合によって得られる1分子中にカルボキシル基を2個以上含有し、酸価が100〜300mgKOH/g、重量平均分子量が2,000〜30,000である樹脂であって、かつ、樹脂固形分中にラクトン化合物に基づく構成単位を5〜50質量%含有するカルボキシル基含有樹脂、
(B)1分子中にエポキシ基を2個以上含有するエポキシ基含有樹脂、
(C)紫外線吸収剤、及び
(D)塩基性度(pKb)が9以上である光安定剤を必須成分として含有し、
(A)成分のカルボキシル基と(B)成分のエポキシ基との割合が、モル比で75/25〜25/75の範囲であることを特徴とする塗料組成物。
【請求項2】
(A)成分の全カルボキシル基中、50%以上がアクリル酸及び/またはメタクリル酸に由来するカルボキシル基である請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項3】
(B)成分のエポキシ基含有樹脂が、エポキシ基含有ラジカル重合性単量体に基づく構成単位を含有する共重合体であり、エポキシ価が100〜300mgKOH/g、重量平均分子量が2,000〜30,000のエポキシ基含有樹脂である請求項1又は2に記載の塗料組成物。
【請求項4】
(B)成分のエポキシ基含有樹脂が、水酸基含有ラジカル重合性単量体由来の水酸基を、水酸基価で100mgKOH/g以下含有するエポキシ基含有樹脂である請求項1〜3のいずれかに記載の塗料組成物。
【請求項5】
さらに、(E)1分子中にカルボキシル基を2個以上含有する樹脂であって、酸価が100〜800mgKOH/g、重量平均分子量が200〜30,000のカルボキシル基含有樹脂(ただし、(A)成分を除く。)を含有し、(A)成分と(E)成分の割合が、樹脂固形分質量比で99/1〜50/50であり、かつ、(A)成分及び(E)成分のカルボキシル基と(B)成分のエポキシ基との割合が、モル比で75/25〜25/75の範囲である請求項1〜4のいずれかに記載の塗料組成物。
【請求項6】
さらに、(F)トリス(アルコキシカルボニルアミノ)トリアジン、及び/又はブロックイソシアネート化合物を全樹脂の固形分中20質量%未満含有する請求項1〜5のいずれかに記載の塗料組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の塗料組成物を塗装することを特徴とする塗装仕上げ方法。
【請求項8】
請求項7の塗装仕上げ方法により塗装された塗装物品。

【公開番号】特開2007−177216(P2007−177216A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−303981(P2006−303981)
【出願日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【出願人】(599076424)BASFコーティングスジャパン株式会社 (59)
【Fターム(参考)】