説明

塗料組成物、筐体、液晶表示部、および電子製品

【課題】 耐摩耗性に優れた樹脂積層体を与えることが可能で、かつハードコート処理の際、反りやクラックが生じず、透明性に優れ意匠性、液晶視認性の妨げにならない塗料組成物を提供するものである。
【解決手段】 紫外線硬化性樹脂を100重量部に対して、ポリエーテルポリオールと直鎖脂肪族または脂環式ジイソシアネートとを反応させて得られるイソシアネート化合物、および水酸基を有するアクリレートモノマーの反応生成物である2官能ウレタンアクリレートを20重量部以上60重量部以下、5官能以上のアクリレートを40重量部以上80重量部以下含む塗料組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料組成物、筐体、液晶表示部、および電子製品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯電話、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、テレビ、パソコン、携帯用ゲーム機、GPS(全地球測位システム:GlobalPositioningSystem)、タッチパネルなどの液晶表示部や筐体部の表面を保護するために樹脂積層体が使用されており、通常、樹脂積層体の表面は傷付きや摩耗を防ぐ目的で、ハードコート処理がなされている。
ハードコート処理の際、基材に反りやクラックが生じると、製品不良となり歩留まり低下の原因となった。
従来、ハードコートの反りやクラックを防止する方法として、ハードコートの架橋度を落とす手法や薄膜化する手法がある。しかしながら、この手法は、ハードコート性が低下してしまい実用性に欠けるものである。
さらに、ハードコート中に、架橋樹脂ビーズやコロイダルシリカを入れ、ハードコートの硬化収縮を押さえる手法が開示されている(例えば、特許文献1、2参照)。しかしながら、この手法はヘイズの上昇や光の散乱が生じ、液晶のちらつき、意匠性の低下が生じる問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−87279号公報
【特許文献2】特開2005−162836号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的とするところは、耐摩耗性に優れた樹脂積層体を与えることが可能で、かつハードコート層形成の際、反りやクラックが生じず、透明性に優れ意匠性、液晶視認性の妨げにならない塗料組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、耐摩耗性に優れた樹脂積層体を与えることが可能で、かつハードコート層形成の際、反りやクラックが生じず、透明性に優れ意匠性、液晶視認性の妨げにならない塗料組成物を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的は、以下の[1]〜[7]により達成される。
[1] 紫外線硬化性樹脂100重量部に対して、ポリエーテルポリオールと直鎖脂肪族または脂環式ジイソシアネートとを反応させて得られるイソシアネート化合物、および水酸基を有するアクリレートモノマーの反応生成物である2官能ウレタンアクリレートオリゴマーを20重量部以上60重量部以下、5官能以上のアクリレートを40重量部以上80重量部以下含む塗料組成物。
[2] 前記2官能ウレタンアクリレートの重量平均分子量が、1000以上3000以下である[1]に記載の塗料組成物 。
[3] さらに、脂肪酸エステルを紫外線硬化性樹脂100重量部に対して、0.2重量部以上15重量部以下含む請求項1または2に記載の塗料組成物
[4] 請求項1〜3のいずれか1項に記載の塗料組成物の硬化物を形成した筐体。
[5] [6]に記載の筐体を有する製品。
[6] [1]〜[3]のいずれか1項に記載の塗料組成物の硬化物を形成した液晶表示部。
[7] [6]に記載の液晶表示部を有する電子製品。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の紫外線硬化性樹脂を用いた塗料組成物を説明するにあたり、まず、紫外線硬化型樹脂における各成分ついて、説明する。
紫外線硬化性樹脂とは、紫外線を照射されることより硬化する化合物であり、紫外線硬化性のオリゴマーまたは紫外線硬化性のモノマーまたはその多量体であり、一般的な紫外線硬化性オリゴマーおよび紫外線硬化性モノマーおよびその多量体のうちのいずれか単独、または紫外線硬化性オリゴマーおよび紫外線硬化性モノマーの組み合わせである。
紫外線硬化性オリゴマーとしては、例えば、ウレタンアクリレートオリゴマー、エポキ
シアクリレートオリゴマー、ポリエステルアクリレートオリゴマーなどが挙げられる。
ウレタンアクリレートオリゴマーは、例えば、ポリオールとジイソシアネートを反応さ
せて得られるイソシアネート化合物と、水酸基を有するアクリレートモノマーの反応によ
り得られる。
エポキシアクリレートオリゴマーは、例えば、低分子量のビスフェノール型エポキシ樹
脂やノボラックエポキシ樹脂のオキシラン環とアクリル酸とのエステル化反応により得ら
れる。
ポリエステルアクリレートオリゴマーは、例えば、多価カルボン酸と多価アルコールの
縮合によって両末端に水酸基を有するポリエステルオリゴマーを得、次いで、その両末端
の水酸基をアクリル酸でエステル化することにより得られる。
本発明に用いる2官能ウレタンアクリレートオリゴマーは、ポリエーテルポリオールと直鎖脂肪族または脂環式ジイソシアネートとを反応させて得られるイソシアネート化合物、および水酸基を有するアクリレートモノマーを互いに反応させて得ることができる。
2官能ウレタンアクリレートオリゴマーの分子量が、1000未満の場合、硬化時の収縮が大きくなり、クラックが生じ、分子量が3000より大きい場合、耐摩耗性は発現しにくくなる。
【0008】
前記ポリエーテルポリオールとしては、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、エチレンオキシド−プロピレンオキシドランダム共重合体が挙げられ、なかでも数平均分子量が400以上のものが望ましい。数平均分子量が400未満では、充分な熱成形性が得られない可能性があるからである。
前記直鎖脂肪族ジイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネートが挙げられる。
前記脂環式ジイソシアネートとしては、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、水添トリレンジイソシアネート、水添メチレンジフェニルジイソシアネートなどが挙げられる。なお耐摩耗性の維持の点から脂環式ジイソシアネートが好ましい。
【0009】
本発明に用いる水酸基を有するアクリレートモノマーとしては、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、3−ヒドロキシブチルアクリレート、ポリエチレングリコールモノアクリレートを挙げることができる。
【0010】
5官能以上のアクリレートとしては、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、デンドリックアクリレート、ハイパーブランチアクリレートなどが挙げられる。
【0011】
次に、本発明の塗料組成物は、光重合開始剤を含むものである。
光重合開始剤は、紫外線照射によって紫外線硬化性樹脂の反応(重合)を開始させるために樹脂組成物に添加されるものであり、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテルベンゾインイソプロピルエーテルなどのベンゾインまたはベンゾインアルキルエーテル類、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸などの芳香族ケトン類、ベンジルなどのアルファージカルボニル類、ベンジルジメチルケタール、ベンジルジエチルケタールなどのベンジルケタール類、アセトフェノン、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパン−1−オン、1−(4−イソプロピ
ルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチル-プロパン−1−オン、2−メチル−1−[4
−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパノン−1などのアセトフェノン類、2
−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン等のアントラキノン類、2,4−ジメチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサント
ン、2,4−ジイソプロピルチオキサントンなどのチオキサントン類、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド等のフォスフィンオキサイド類
、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−[o−エトキシカルボニル]オキシム等の
アルファーアシルオキシム類、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルなどのアミン類などを使用することができる。
光重合開始剤は、表面硬化性に優れるものと内部硬化性に優れるもの、2種以上を併用することが好ましい。
【0012】
上記塗料組成物には、脂肪酸、脂肪酸エステルまたはそれら誘導体、表面調整剤、希釈溶剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤など必要に応じて適宜含有することができる。
まず、上記脂肪酸、脂肪酸エステルまたはそれら誘導体としては、以下のものが挙げられ、これらは、1種単独であっても2種以上であってもよい。
上記脂肪酸としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リシノール酸、リノール酸、アラキジン酸、リグノセリン酸などが挙げられる。
上記脂肪酸エステルとしては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル(モノグリセリド)、有機酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、エトキシ化グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、トリオレイン、レシチン、などが挙げられる。具体的には、酢酸モノグリセリド、乳酸モノグリセリド、クエン酸モノグリセリド、ジアセチル酒石酸モノグリセリド、コハク酸モノグリセリド、ヒマシ油(リシノール酸トリグリセリド)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、イソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル、トリステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル、ジイソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル、ラウリン酸ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、イソステアリン酸ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、トリステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、トリオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット、テトラステアリン酸ポリオキシエチレンソルビット、硬化ヒマシ油(水添リシノール酸トリグリセリド)、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレンフィトステロール、ポリオキシエチレン水添ダイマージリノール酸エステル、ポリオキシエチレンコレステリルエーテル、ポリオキシエチレンデシルテトラデシルエーテルなどである。
【0013】
脂肪酸の誘導体および脂肪酸エステルの誘導体としては、脂肪酸の誘導体または脂肪酸エステルの誘導体の側鎖の一部または全部をメチル基から他の有機基に置き換えた構造のものである。有機基としては、ポリエーテル基、ポリアルキル基、アラルキル基、ポリエステル基などが挙げられ、これらは、単独でもまたは2種類以上の組み合わせでもよい。これらのうち脂肪酸、脂肪酸エステルまたはそれら誘導体としては、モノステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル、イソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル、トリステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル、ジイソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル、ラウリン酸ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、イソステアリン酸ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、トリステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、トリオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット、テトラステアリン酸ポリオキシエチレンソルビット、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンフィトステロール、ポリオキシエチレンコレステリルエーテル、ポリオキシエチレン水添ダイマージリノール酸エステル、などのように、脂肪酸、脂肪酸エステルおよびまたはそれら誘導体のうち、分子内に炭素数12以上の炭化水素(直鎖または環状)を1つ以上、かつ、繰り返し単位が合計で10以上となるポリエーテル鎖を同じ分子内に有する構造のものが好適であり、さらに、分子内に炭素数16から18の直鎖の炭化水素を2つ以上、かつ、繰り返し単位が合計で20から80のポリエーテル鎖を同じ分子内に2つ以上有する構造のものが、特に好適である。
【0014】
脂肪酸エステルまたはそれらの誘導体の配合量は、前記紫外線硬化性樹脂に対して重量比で0.01以上20以下が好ましく、0.1以上10以下の時、特に手垢や指紋などの皮脂汚れを容易に除去可能とする防汚性が高まる。0.01未満では効果が発現せず、20を超えると、表面への析出などの外観不良が発生したり、クリアコート層の耐摩耗性が低下したりする場合がある。
【0015】
次に、上記表面調整剤は、塗膜の基材に対する濡れ性や均一性、塗膜表面の平滑性や滑り性などを付与するものであり、シリコーン系やアクリル共重合物系のものが挙げられ、特にシリコーン系のものが好ましい。
このシリコーン系表面調整剤としては、ポリジメチルシロキサンや、ポリジメチルシロキサンを変性した変性シリコーンなどが挙げられる。上前記変性シリコーンとしては、例えば、ポリエーテル変性体、アルキル変性体、ポリエステル変性体などが挙げられ、これらの中でもポリエーテル変性体が最も好適である。
上記希釈溶剤は、塗料組成物を透明樹脂基板に塗工しやすくするために必要に応じて塗料組成物に添加されるものである。
このような希釈溶剤としては例えば、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール、メチルエチルケトン、2−ペンタノン、イソホロンなどのケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸メトキシプロピルなどのエステル、エチルセロソルブなどのセロソルブ系溶剤、メトキシプロパノール、エトキシプロパノール、メトキシブタノールなどのグリコール系溶剤を単独または混合して使用できる。
【0016】
上記紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系やヒドロキシフェニルトリアジン系の化合物などが挙げられる。その含有量は、紫外線硬化性樹脂100重量部に対して10重量部以下が好ましく、さらに好ましくは2重量部以上、4重量部以下である。
上記光安定剤としては、ヒンダードアミン系化合物などが挙げられる。その含有量は、紫外線硬化性樹脂100重量部に対して2重量部以下が好ましく、さらに好ましくは1重量部以下である。
【0017】
本発明の塗料組成物を用いたハードコート層の形成については、上記の塗料組成物を、例えば、スピンドルコーター、ロールコーター、グラビアコーター、フローコーター、スプレーコーター、カーテンフローコーター、ディップコーター、スリットダイコーターなどの種々の塗布手段を用いることにより、基材に塗布し、その後硬化することでハードコート層を形成することができる。ハードコート層が形成された基材は、樹脂積層体となる。
基材としては、ポリカーボネート、ABS(アクリルニトリルブタジエンスチレン共重合)樹脂、ポリカーボネート/ABS樹脂のアロイ樹脂、メチルメタクリレート(アクリル)樹脂、塩化ビニル樹脂、などの各種樹脂基材(樹脂プレート)、焼付け塗装された金属基材、金属基材など特に制限されないが、金属基材に塗工する場合などは、プライマーを使用することが望ましい。プライマーとしては有色または無色のラッカー塗料など市販のものでよく、特に制限されることなく使用可能である。
溶剤成分を含有している塗料組成物を用いる場合には、蒸発揮散に際しては樹脂プレートおよび雰囲気の温度を昇温させることでハードコート層を形成する。そして、紫外線照射には、一般の有電極型や無電極型の高圧紫外線灯やメタルハライドランプを使用することできる。
上記基材に形成されるハードコート層の厚さは、2μm〜50μmの範囲になるのが好ましい。厚さが2μm未満では、十分な耐摩耗性が得られず、厚さが50μmを超える場合は、硬化時の基材の反りやクラックが生じる。
溶剤により希釈した塗料組成物は、樹脂プレートへ塗布された後、雰囲気温度を40℃以上に、望ましくは50℃以上に上げ、充分に希釈溶剤を蒸発させるとともに、加熱させた状態にて紫外線を照射し塗膜を硬化させる。
ここで硬化の度合いは、赤外線吸光分析により反応基の残存量を測定することで定量化することができる。紫外線照射には、一般の有電極型や無電極型の高圧水銀灯やメタルハライドランプが使用可能である。また、100keV程度の低電圧の電子線照射装置も使用可能である。電子線を硬化手段とする場合は、先に例示したような重合開始剤は不要となる。
【0018】
本発明の用途としては、自動車や車両の内装材、GPS(全地球測位システム:GlobalPositioning System)、タッチパネル式操作パネルなどの車載機器、携帯電話、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、テレビ、パソコン、携帯用ゲーム機、炊飯器、冷蔵庫などの電気製品などに筐体として使用されている、各種プラスチック材料や金属材料へのクリアコート層用塗料である。
クリアコート層用塗料とは、筐体のキズ付防止、加飾の保護用途として、最外層に塗布する紫外線硬化性塗料のことであり、紫外線硬化性化合物、溶剤、重合開始剤、レベリング剤から構成しており、脂肪酸、脂肪酸エステルまたはそれら誘導体、表面調整剤、希釈溶剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤など必要に応じて適宜含有することができる。
また、本発明の塗料組成物の硬化物であるハードコート層を形成した液晶表示部、その液晶表示部を有する電子製品としては、GPS(全地球測位システム:Global PositioningSystem)、タッチパネル式操作パネルなどの車載機器、携帯電話、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、テレビ、パソコン、携帯用ゲーム機、炊飯器、冷蔵庫など液晶表示部やその液晶表示部を有する製品が挙げられる。
【実施例】
【0019】
以下、本発明を実施例および比較例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<2官能ウレタンアクリレートオリゴマーの作製>
温度計、攪拌機、不活性ガス導入口、空気導入口及び還流冷却器を備えた1リットルの四つ口フラスコに水添トリレンジイソシアネート150部と数平均分子量2200のポリオキシプロピレンジオール300部を仕込み、窒素雰囲気下80℃で5時間反応させた。その後、40℃迄冷却し、次に2−ヒドロキシエチルアクリレートを150部加え、空気雰囲気下80℃で4時間反応させ、2官能ウレタンアクリレートオリゴマー(1)を得た。
上記数平均分子量2200のポリオキシプロピレンジオールを数平均分子量600に変更して同様の操作を行い、2官能ウレタンアクリレートオリゴマー(2)を得た。
上記数平均分子量2200のポリオキシプロピレンジオールを数平均分子量3400に変更して同様の操作を行い、2官能ウレタンアクリレートオリゴマー(3)を得た。
【0020】
[実施例1]
2官能ウレタンアクリレートオリゴマーとして、2官能ウレタンアクリレートオリゴマー(1)30重量部、5官能以上のアクリレートとしてオジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(商品名:A−DPH、新中村化学工業社製、「DPHA」とも記載する。)35重量部および15官能ウレタンアクリレートオリゴマー(商品名:U−15HA、新中村化学工業社製)35重量部配合し、樹脂成分の濃度が全体に対して30重量%となるようプロピレングリコールモノメチルエーテルで希釈した。
ここへ、脂肪酸エステルまたは脂肪酸エステル誘導体として、ポリオキシエチレンヒマシ油(商品名:C−40日本エマルジョン社製)5重量部、重合開始剤として1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンを5重量部、表面調整剤(商品名:グラノール450、共栄社化学社製)を樹脂比で0.05重量部添加し塗料組成物を調製した。塗料組成物は充分に撹拌した後、密閉容器に保存した。
樹脂プレートとして、厚さ0.8mmの透明ポリカーボネート樹脂プレート(住友ベークライト社製「ポリカエースEC105」)を準備し、スプレーを用いて、ウェット膜厚が約50μmになるように前記作製した塗料組成物を樹脂プレート上に塗布した。塗料組成物を塗布した樹脂プレートを60℃の熱風循環型オーブンに入れ、10分間乾燥した後、80W/cmメタルハライドランプ(ウシオ電機社製)を用い、照射距離100mm、コンベア搬送速度10m/minの条件で紫外線を照射して塗膜を硬化させ、ドライ膜厚約15μmのハードコート層を有するポリカーボネート樹脂積層体を得た。
【0021】
[実施例2]
2官能ウレタンアクリレートオリゴマーとして、2官能ウレタンアクリレートオリゴマー(2)を用いて、以下実施例1と同様な操作を行い、ポリカーボネート樹脂積層体を得た。
[実施例3]
2官能ウレタンアクリレートオリゴマーとして、2官能ウレタンアクリレートオリゴマー(2)60重量部、5官能以上のアクリレートとしてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(商品名:A−DPH、新中村化学工業社製)20重量部および15官能ウレタンアクリレートオリゴマー(商品名:U−15HA、新中村化学工業社製)20重量部配合し、樹脂成分の濃度が全体に対して30重量%となるようプロピレングリコールモノメチルエーテルで希釈し、以下実施例1と同様な操作を行い、ポリカーボネート樹脂積層体を得た。
[実施例4]
2官能ウレタンアクリレートオリゴマーとして、2官能ウレタンアクリレートオリゴマー(2)20重量部、5官能以上のアクリレートとしてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(商品名:A−DPH、新中村化学工業社製)40重量部および15官能ウレタンアクリレートオリゴマー(商品名:U−15HA、新中村化学工業社製)40重量部配合し、樹脂成分の濃度が全体に対して30重量%となるようプロピレングリコールモノメチルエーテルで希釈し、以下実施例1と同様な操作を行い、ポリカーボネート樹脂積層体を得た。
【0022】
[実施例5]
2官能ウレタンアクリレートオリゴマーとして、2官能ウレタンアクリレートオリゴマー(2)20重量部、5官能以上のアクリレートとしてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(商品名:A−DPH、新中村化学工業社製)30重量部および15官能ウレタンアクリレートオリゴマー(商品名:U−15HA、新中村化学工業社製)40重量部、2官能アクリレートモノマー(商品名:A−BPE−4、新中村化学工業社製)10重量部配合し、樹脂成分の濃度が全体に対して30重量%となるようプロピレングリコールモノメチルエーテルで希釈し、以下実施例1と同様な操作を行い、ポリカーボネート樹脂積層体を得た。
[実施例6]
2官能ウレタンアクリレートオリゴマーとして、2官能ウレタンアクリレートオリゴマー(2)40重量部、5官能以上のアクリレートとしてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(商品名:A−DPH、新中村化学工業社製)30重量部および15官能ウレタンアクリレートオリゴマー(商品名:U−15HA、新中村化学工業社製)30重量部配合し、樹脂成分の濃度が全体に対して30重量%となるようプロピレングリコールモノメチルエーテルで希釈した。ここへ、脂肪酸エステルまたは脂肪酸エステル誘導体として、ポリオキシエチレンヒマシ油(商品名:C−40日本エマルジョン社製)1重量部添加し、以下実施例1と同様な操作を行い、ポリカーボネート樹脂積層体を得た。
[実施例7]
樹脂プレートとして、厚さ0.8mmの透明ポリカーボネート樹脂プレート(住友ベークライト社製「ポリカエースEC105」)を準備し、スプレーを用いて、ウェット膜厚が約100μmになるように実施例2で作製した塗料組成物を樹脂プレート上に塗布した。塗料組成物を塗布した樹脂プレートを60℃の熱風循環型オーブンに入れ、10分間乾燥した後、80W/cmメタルハライドランプ(ウシオ電機社製)を用い、照射距離100mm、コンベア搬送速度10m/minの条件で紫外線を照射して塗膜を硬化させ、ドライ膜厚約30μmのハードコート層を有するポリカーボネート樹脂積層体を得た。
【0023】
[実施例8]
2官能ウレタンアクリレートオリゴマーとして、2官能ウレタンアクリレートオリゴマー(3)40重量部、5官能以上のアクリレートとしてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(商品名:A−DPH、新中村化学工業社製)30重量部および15官能ウレタンアクリレートオリゴマー(商品名:U−15HA、新中村化学工業社製)30重量部配合し、樹脂成分の濃度が全体に対して30重量%となるようプロピレングリコールモノメチルエーテルで希釈し、以下実施例1と同様な操作を行い、ポリカーボネート樹脂積層体を得た。
[実施例9]
2官能ウレタンアクリレートオリゴマーとして、2官能ウレタンアクリレートオリゴマー(2)40重量部、5官能以上のアクリレートとしてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(商品名:A−DPH、新中村化学工業社製)30重量部および15官能ウレタンアクリレートオリゴマー(商品名:U−15HA、新中村化学工業社製)30重量部配合し、樹脂成分の濃度が全体に対して30重量%となるようプロピレングリコールモノメチルエーテルで希釈した。ここへ、脂肪酸エステルまたは脂肪酸エステル誘導体として、ポリオキシエチレンヒマシ油(商品名:C−40日本エマルジョン社製)0.1重量部添加し、以下実施例1と同様な操作を行い、ポリカーボネート樹脂積層体を得た。
[実施例10]
2官能ウレタンアクリレートオリゴマーとして、2官能ウレタンアクリレートオリゴマー(2)40重量部、5官能以上のアクリレートとしてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(商品名:A−DPH、新中村化学工業社製)30重量部および15官能ウレタンアクリレートオリゴマー(商品名:U−15HA、新中村化学工業社製)30重量部配合し、樹脂成分の濃度が全体に対して30重量%となるようプロピレングリコールモノメチルエーテルで希釈した。ここへ、脂肪酸エステルまたは脂肪酸エステル誘導体として、ポリオキシエチレンヒマシ油(商品名:C−40日本エマルジョン社製)7重量部添加し、以下実施例1と同様な操作を行い、ポリカーボネート樹脂積層体を得た。
【0024】
[比較例1]
2官能ウレタンアクリレートオリゴマーとして、2官能ウレタンアクリレートオリゴマー(2)10重量部、5官能以上のアクリレートとしてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(商品名:A−DPH、新中村化学工業社製)45重量部および15官能ウレタンアクリレートオリゴマー(商品名:U−15HA、新中村化学工業社製)45重量部配合し、樹脂成分の濃度が全体に対して30重量%となるようプロピレングリコールモノメチルエーテルで希釈し、以下実施例1と同様な操作を行い、ポリカーボネート樹脂積層体を得た。
[比較例2]
2官能ウレタンアクリレートオリゴマーとして、2官能ウレタンアクリレートオリゴマー(2)70重量部、5官能以上のアクリレートとしてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(商品名:A−DPH、新中村化学工業社製)15重量部、15官能ウレタンアクリレートオリゴマー(商品名:U−15HA、新中村化学工業社製)15重量部配合し、樹脂成分の濃度が全体に対して30重量%となるようプロピレングリコールモノメチルエーテルで希釈し、以下実施例1と同様な操作を行い、ポリカーボネート樹脂積層体を得た。
【0025】
上記作製した樹脂積層体について、以下の方法により評価し、結果を表1に示した。
[評価項目]
(1)ハードコート性
作製した樹脂積層体を用いて、スチールウール#0000を直径10mmの保持具に取り付け、一定荷重(1kg)、一定速度(10cm/秒)にて10往復した後、樹脂積層体表面の傷を目視により観察し、耐摩耗性を評価した。
評価基準は、以下のとおりとした。
キズなし:実用上優れる
数本キズあり、全体に薄いキズあり:実用上十分に使用可能である
全体に濃いキズあり:実用上問題あり。使用不可である。
(2)クラックの有無
作製した樹脂積層体の硬化後のハードコート層のクラックの有無を目視で判断した。
(3)反り量
作製した樹脂積層体を100×100mmにカットし、水平な定盤の上に凸面が下になるように置き、4辺の最大浮き量を測定し、平均した。
【0026】
(4)指紋の拭き取りやすさ《I》
上記の指紋の目立ちにくさの評価と同様にトリオレインをハードコート層表面に転写させた後、ワイパー(商品名:ハンディワイパー、クラレ社製)を直径30mmの保持具に取り付け、一定荷重(1kg)、一定速度(10cm/秒)にて50往復させ、その試験体の表面を暗室内で、20Wの3波長型蛍光灯の直下10cmの距離で目視観察し、トリオレインの付着状態を確認した。また、ヘイズメーター(商品名:NDH2000、日本電飾工業社製)を用いて、JIS K 7105に準拠して、試験前と比較したヘイズの増加(ΔH)を測定した。評価基準は、以下のとおりとした。
「A」:皮脂膜がほぼ完全に拭き取られており、ΔHが0.05%未満
「B」:皮脂膜がほぼ拭き取られており、ΔHが0.05%以上0.2%未満
「C」:皮脂膜がほとんど拭き取られておらず、白く曇っており、ΔHが0.2%以上
【0027】
(5)指紋の拭き取りやすさ《II》
上記の指紋の目立ちにくさの評価と同様にトリオレインをハードコート層表面に転写させた後、人差し指で一定荷重(1kg)、一定速度(10cm/秒)にて10往復させ、その試験体の表面を暗室内で、20Wの3波長型蛍光灯の直下10cmの距離で目視観察し、トリオレインの付着状態を確認した。また、ヘイズメーター(商品名:NDH2000、日本電飾工業社製)を用いて、JIS K 7105に準拠して、試験前と比較したヘイズの増加(ΔH)を測定した。評価基準は、以下のとおりとした。
「A」:皮脂膜がほぼ完全に拭き取られており、ΔHが0.05%未満
「B」:皮脂膜がほぼ拭き取られており、ΔHが0.05%以上0.2%未満
「C」:皮脂膜がほとんど拭き取られておらず、白く曇っており、ΔHが0.2%以上
【0028】
【表1】

【0029】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線硬化性樹脂100重量部に対して、ポリエーテルポリオールと直鎖脂肪族または脂環式ジイソシアネートとを反応させて得られるイソシアネート化合物、および水酸基を有するアクリレートモノマーの反応生成物である2官能ウレタンアクリレートオリゴマーを20重量部以上60重量部以下、5官能以上のアクリレートを40重量部以上80重量部以下含む塗料組成物。
【請求項2】
前記2官能ウレタンアクリレートオリゴマーの重量平均分子量が、1000以上3000以下である請求項1に記載の塗料組成物 。
【請求項3】
さらに、脂肪酸エステルを紫外線硬化性樹脂100重量部に対して、0.2重量部以上15重量部以下含む請求項1または2に記載の塗料組成物
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の塗料組成物の硬化物を形成した筐体。
【請求項5】
請求項6に記載の筐体を有する製品。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の塗料組成物の硬化物を形成した液晶表示部。
【請求項7】
請求項6に記載の液晶表示部を有する電子製品。

【公開番号】特開2012−214548(P2012−214548A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−79121(P2011−79121)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】