説明

塗料組成物およびこれを用いた化粧材

【目的】 迅速かつ連続的な製造が可能であって、しかも表面特性にすぐれた電離放射線硬化型塗料組成物およびこれを用いた化粧材を提供すること。
【構成】 電離放射線重合性オリゴマー、電離放射線重合性モノマーおよび離型剤を含有する組成物からなり、該組成物の粘度を1000cps以下に制御してなることを特徴する電離放射線硬化型塗料組成物および該組成物の粘度を1000cps以下に制御してなる電離放射線硬化型塗料組成物を基材上に塗布形成し、電離放射線を照射して前記塗料組成物層を硬化させてなることを特徴とする化粧シート。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は塗料組成物に関し、さらに詳しくは、建築物の内装、家具あるいは各種キャビネットなどの表面装飾用塗料組成物として好適な電離放射線硬化型塗料組成物ならびにこの組成物を用いて形成されてなる化粧シートなどの化粧部材に関する。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】建築物の内装、家具あるいは各種キャビネットなどの表面装飾に用いられる化粧紙としては、従来、たとえば紙に木目印刷を施したのち、この木目印刷表面にウレタン系塗料を塗布してトップコート層を形成したものが主流である。このようなウレタンコート紙は塗膜の表面特性に比較的すぐれたものが得られるが、製造工程において塗膜の養生に数日を要する場合もあり、生産性の点で不利であり、また耐摩耗性や耐溶剤性の点でも必ずしも十分満足のいくものではない。
【0003】一方、電離放射線硬化性樹脂を用いて塗膜形成を行う方法も知られており、たとえば基材紙上に絵柄を印刷したのち、アクリレート系樹脂などの電子線硬化性樹脂組成物を塗布ないし含浸させたものに電子線を照射してこれを硬化することによって化粧紙の迅速な製造が可能である(特公平1−55991号など)。しかしながら、上記のような従来知られている電離放射線硬化性塗料は、形成される被膜の特性において、必ずしも十分満足のいくものではない。
【0004】一般に建築物の内装、家具あるいは各種キャビネットなどの表面装飾に用いられる化粧材としては、塗膜表面の耐摩耗性は勿論のこと、耐薬品性、耐セロテープ性、耐汚染性などの特性において総合的にすぐれていることが要請される。さらに化粧材の製造プロセスに着目しても、工程の簡略化、迅速性の観点、さらには経済性の観点においても有利であることが重要なファクターとなる。
【0005】しかしながら、従来の化粧材用塗料組成物においては、塗膜特性ならびに製造工程の操作性の双方においてすぐれたものは未だ得られていないのが現状である。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は上述した従来技術に鑑みてなされたものであり、製造工程が迅速で連続的な製造が可能であり、しかも塗膜の表面特性にもすぐれた塗料組成物ならびにこれを用いた化粧材を提供することを目的としている。
【0007】本発明による塗膜組成物は、電離放射線硬化型の塗料組成物であって、電離放射線重合性オリゴマーと電離放射線重合性モノマーとを組合わせて含有しさらにこれに離型剤を添加した組成物からなり、該組成物の粘度を1000cps以下に制御してなることを特徴とするものである。
【0008】さらに本発明による化粧シートは、上記塗料組成物を基材上に塗布形成し、電離放射線を照射して前記塗料組成物層を硬化させてなることを特徴とするものである。
【0009】さらにまた、本発明による化粧板は、上記化粧シートの基材の裏面側(塗料組成物層が形成されていない方の面)に接着剤層を介して板を接合してなることを特徴とするものである。
【0010】また、本発明による化粧シートの製造方法は、上記電離放射線硬化型塗料組成物を、好ましくは溶剤を用いないで塗布形成し、この塗布形成された組成物層に対して電離放射線を照射してこれを硬化させることを特徴とするものである。
【0011】本発明による塗料組成物においては、組成物中でシリコーンアクリレートのような離型剤が分散状態で存在し、また粘度が特定範囲内に制限されているので、基材上への組成物層の形成は迅速かつ良好に行うことができ、さらに塗布後に最適状態に分散されている離型剤が組成物層の表面に適度に局在化するので、形成される塗膜は表面特性(特に耐セロテープ性)にすぐれたものとなる。
【0012】さらに本発明による塗料組成物は、粘度が特定範囲内に制限され、しかも溶剤を用いないで塗布形成することが可能となるので、繁雑な溶剤の除去(乾燥)工程が不要となり工程上あるいは安全性、経済性においても有利である。
【0013】本発明による電離放射線硬化型塗料組成物において使用する電離放射線重合性オリゴマーは、硬化後の物性(特に、硬さ、密着性、電気特性)や耐薬品性の向上において重要であり、このような観点で、分子量1000〜3000のアクリレート系プレポリマーが好ましく用いられ得る。具体的には、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、ポリウレタンアクリレート、ポリエーテルアクリレート、オリゴアクリレート、アルキッドアクリレート、ポリオールアクリレートなどが挙げられるが、粘度の低減化ならびに低コスト化の観点からは、ポリエステルアクリレートが特に好ましく用いられる。
【0014】一方、電離放射線重合性モノマーとしては、その選択にあたっては、■低粘度であること、■溶解性が大きいこと、■揮発性が小さいこと(特にEB硬化においては瞬時に温度が上昇する)、■官能基を2個以上持っていること、■皮膚刺激性が小さいなどの安全性が良好であること、が考慮されるべきである。このような観点から、本発明における電離放射線重合性モノマーとしては、分子量100〜400のアクリレート系またはメタクリレート系モノマーが好ましく用いられ得る。具体的には、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレートなどが特に好ましく用いられ得る。
【0015】上記オリゴマーとモノマーとの配合比は、その種類に応じて適宜選択され得るが、通常、オリゴマー5重量%以上、モノマー95重量%以下の範囲で選択することが好ましい。ポリエステル系のものを使用する場合においては、たとえば、オリゴマー100重量部に対して約70重量部のモノマーを配合することが好ましい。
【0016】モノマーの配合量が少なすぎると、粘度がいきおい増大してレベリング性が低下し、高速コーティングに適さなくなり、生産性が低下することになるので好ましくない。一方、モノマーの配合量が多すぎる場合には、硬化反応時(たとえばEB照射時)に発煙してフィラメントの劣化などの弊害が生じ、また製造環境的にも好ましくない。
【0017】本発明による塗料組成物においては、上記のような電離放射線重合性オリゴマーと電離放射線重合性モノマーとの組合わせからなる混合物に対してシリコーンアクリレートのような離型剤が分散状態で存在している。
【0018】一般に、建材用の化粧シートとしては、■耐セロテープ性、■耐溶剤性、■耐熱性、■耐摩耗性、■耐薬品性、■耐汚染性ならびに■耐水性にすぐれていることが要求される。上記特性の内■から■の特性については上記オリゴマーおよびモノマーを適宜選択することによってある程度すぐれた特性のものにすることが可能であるが、上記■の耐セロテープ性については、オリゴマーおよびモノマーの選択のみによっては十分ではない。耐セロテープ性を良好なものにするためには塗膜表面の表面エネルギーを小さくしてテープの粘着作用を抑制する必要があるが、本発明者の知見によれば、組成物中においてシリコーンアクリレートのような離型剤を分散状態、特にエマルジョン型の分散状態で存在させて、塗工、硬化させることによって、上記■から■の特性を低下させることなく耐セロテープ性を良好なものにすることができることを見出している。
【0019】このようなシリコーンアクリレートとしては、下記の条件を満足するものが好ましく用いられる。
分子量:500〜10,000さらに好ましくは2,000〜4,000官能基当量(分子量/官能基数):400〜8,000さらに好ましくは500〜2,000官能基の種類:特にEB硬化(電子線照射)を考慮した場合、メタクリル基、アクリル基、メルカプト基が好ましい。
【0020】なお、本発明においては、上記のシリコーンアクリレートは、上記オリゴマーおよびモノマーの混合物中にそのままの状態で存在していてもよいが、ある程度上記オリゴマーまたはモノマーとコポリマー化していてもよく、本発明はこのような態様をも包含する。
【0021】上記のようなシリコーンアクリレートの含有量は、5重量%以下が好ましく、さらに好ましくは0.1〜3.0重量%であり、特に0.5〜2.0の範囲が好ましい。前述したように、離型剤の添加による耐セロテープ性の向上とレベリング性の向上とは互いに相殺し合う傾向があるが、離型剤として上記のシリコーンアクリレートを選択し、量範囲を上記範囲にすることにより、耐セロテープ性とレベリング性(すなわちピンホールの無い)の双方にすぐれた塗膜を得る上で有利である。
【0022】本発明による塗料組成物においては、その粘度を1000cps以下に制御することが、塗工工程の高速化ならびに上記離型剤の組成物中での移動度や塗膜表面への局在化において重要である。また、塗工方法に応じても、好ましい粘度範囲を適宜調整することが望ましい。たとえば、グラビアコート法を採用する場合においては、1000cpsよりもさらに低い値、たとえば常温において400cps以下に粘度を調整することが好ましい。このような粘度の調整は、塗料組成物や塗工装置の加温や、上述したようなモノマー成分の配合範囲の調整によって行うことができる。
【0023】本発明による塗料組成物においては、塗膜表面をマット化することを目的として、粒径0.1〜30μm、さらに好ましくは粒径10〜20μmの粒状物質からなるマット剤を含有させることができる。このようなマット剤としては、シリカ、シリコーン樹脂(パウダー、ビーズ)などの無機粒子、架橋アルキル、架橋スチレン、インゾグアナミン樹脂、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、フェノール樹脂、ポリエチレン、ナイロンなどの有機材料パウダーないしビーズなどが用いられ得る。マット剤の添加量は、0.5〜40重量%が好ましく、さらに好ましくは、5〜30重量%である。
【0024】さらに本発明による塗料組成物においては、組成物中に硬化を阻害しない範囲内で、顔料や染料などを添加して着色してもよい。
【0025】本発明による塗料組成物は溶剤を含有させることもできるが、溶剤を含有させる必要はなく、また塗工時においても溶剤を使用する必要はない。この点、本発明による塗料組成物は、粘度が特定範囲内に制限され、しかも溶剤を用いないで塗布形成することが可能となるので、繁雑な溶剤の除去(乾燥)工程が不要となり工程上あるいは安全性、経済性においても有利である。
【0026】次に、上記塗料組成物を用いて化粧材を製造する方法について説明する。
【0027】たとえば、化粧紙などの化粧シートを形成する場合の基材としては、チタン紙、薄様紙、クラフト紙、パルプボード、板紙、石膏ボード紙、合成紙などの秤量20〜300g/m2 程度の紙質材、あるいは紙以外でも、布や各種塗工紙などが適宜用いられ得る。
【0028】塗料組成物の塗布量は、基材の性質や目的に応じて適宜選択され得るが、3〜60g/m2 の範囲が適当である。
【0029】硬化は、紫外線や電子線などの電離放射線により行う。電子線により硬化させる場合においては、2〜15Mrad の範囲、さらに好ましくは3〜5Mrad の範囲でEB照射を行うことが望ましい。2Mrad未満では線量不足による硬化不良が発生するので好ましくなく、一方15Mrad を超えて照射すると線量過剰による基材の劣化が生じ、基材割れや破断(たとえば巻取時やさらに板への積層時)が発生する要因となるので好ましくない。
【0030】特に、紙などの塗料組成物が浸透しやすい基材シートに対しては、電離放射線の内でも、電子線が好ましい。紫外線の場合、基材中に組成物が浸透しにくく、基材中の塗料の硬化が不十分となること、また塗料中に顔料などを添加した場合にも、顔料に紫外線が吸収されて硬化が不十分になりやすくなる。したがって、このような場合には電子線を使用することが好ましい。
【0031】上記のような塗工ならびに硬化方法を採用することによって迅速かつ連続的な化粧シートの製造が可能となる。
【0032】紫外線照射によって硬化を行う場合においては、光開始剤や増感剤を塗料組成物に添加することが好ましい。光開始剤は、紫外線を吸収して重合反応を開始させる作用を有するものであり、たとえば公知のカルボニル化合物、イオウ化合物、アゾ化合物、有機過酸化物などが用いれ得る。また、増感剤は、光開始剤とともに使用するとさらに効果があり、公知の化合物、たとえばアミン類、イオウ化合物、ニトリル、リン化合物、塩素化合物、窒素化合物などが用いられ得る。
【0033】本発明による化粧材においては、基材の表面に予め印刷層や絵柄層を形成したり、基材表面に目止層を形成することもできる。
【0034】なお、絵柄層を形成するインキのビヒクルとしては、基材との密着性が良く凝集力の強い樹脂系を選定すべきである。これは、本発明で用いる電離放射線硬化型塗料は硬化時に急速に収縮する為、インキと基材との密着性の悪いインキを用いた場合、硬化収縮により発生するインキと基材界面の剪断応力の為、インキと基材が、微視的に1部剥離し、塗膜の耐セロテープ性が大きく低下する為であると推測される。
【0035】基材として紙を作った場合は水溶塩型アクリル、ウレタン、ウレタンと塩化ビニル酢酸ビニル共重合体との混合体が好ましく用いられる。
【0036】また、硝酸繊維素等繊維系のビヒクルでは満足な耐セロテープ性が出ないことが判明している。
【0037】さらに目的に応じて、上記のような化粧シートを他の被装飾部材(たとえば木材製品など)の表面に接着剤を介して接合し一体化することができる。
【0038】次に、本発明による組成物を用いて、絵柄に同調した凹凸が形成された化粧シートの製造方法について説明する。
【0039】上記のような同調凹凸が形成された化粧シートを得るにあたっては、まず、基材シート上に撥液性の絵柄層を形成し、この絵柄層上に、上述した本発明の塗料組成物を塗工し、このようにして形成された前記撥液性絵柄層と前記塗工層との間の撥液作用によって前記絵柄層の上部に形成された塗工層に凹部を形成し、さらにこのようにして形成された塗工層に対して電離放射線を照射して、前記絵柄層に同調した凹凸が形成された塗工層を硬化させることによって、絵柄に同調した凹凸形成層を有する化粧シートを得ることができる。
【0040】上述したような撥液性の絵柄層を形成するためには、グラビア、シルクスクリーンなどの常法にしたがった印刷法を使用することができる。撥液性のインキとしては、下記のようなものを用いることができる。
(1) それ自体撥液性を有するバインダーに顔料、染料などを添加してなる撥液性インキ。
【0041】この場合のバインダー樹脂としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニルなどのフッ素樹脂、ポリシロキサン、シリコンアクリレートなどのシリコーン樹脂が用いられ得るが、特に、下記の条件を満足するバインダー樹脂が用いられ得る。
【0042】結合剤の臨界表面張力<塗料組成物(液体状態)の表面張力(2) それ自体撥液性のないバインダー中に撥液性の物質を添加し、更に顔料、染料などを添加したもの。
【0043】この場合の撥液性物質としては、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、上記(1) の物質、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリプロピレン、ワックス類などが用いられ得る。またこの場合のバインダーとしては、アミノアルキド樹脂などが用いられ得る。
(3) それ自体撥液性のバインダーに、さらに撥液性の添加剤を添加し、さらに顔料などを添加したもの。
【0044】
【実施例】
実施例1下記の組成からなる電子線硬化型塗料組成物を調製した。
ポリエステルアクリレート(諸星インキ(株)製) 60重量部トリメチロールプロパントリアクリレート(東亜合成(株)製) 10重量部1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(日本化薬(株)製) 29重量部シリコンアクリレート(MEB−1:信越化学(株)製) 1重量部一方、基材としての紙間強化紙(30g/m2 、三興製紙(株)製)に、グラビア輪転機にてアクリル系インキ(諸星インキ(株)製:HAT)を用いて木目模様を印刷した。
【0045】次いで、上記の塗料組成物を、上記木目印刷がなされた基材上に塗布した。塗布前の上記塗料組成物の性状、特に粘度ならびにシリコンアクリレートの分散状態は次の通りであった。
粘度:温度(℃) cps25 10030 9540 7050 5560 3570 25分散状態:一部分溶解のある懸濁状態上記塗料組成物の塗布方法は、グラビアダイレクトコート法を用い、塗布量12g/m2 で塗布した。ラインスピードは、100m/分であった。
【0046】次いで、得られた塗工物に対して、電子線照射を行って塗工層を硬化させた。この電子線照射は、スキャニング方式の電子線照射機を用いて、下記の条件で行った。
【0047】加速電圧 : 175kVビーム電流: 183mA電子線 : 5Mradこのようにして得られた木目模様の化粧シートは、表面に良好な光沢を有する鏡面仕上(75度鏡面状態(JISZ8741)が100)のシートであった。得られた化粧シートを酢酸ビニル系接着剤(AC500:中理(株)製)を用いて、MDF板にラミネートして一体化し、化粧板とした。
【0048】得られた化粧板を用いて耐セロテープ性(テープデラミネーションテスト)、耐溶剤性、耐摩耗性、ならびに耐汚染性を試験した。各試験の方法は以下の通りである。
耐セロテープ試験:プリント合板・カラー合板の標準規格(日本プリント・カラー合板工業組合)の基準に従い、ニチバンテープによる剥離(40℃±3℃、2時間後)を行い、表面状態を観察した。
耐溶剤試験:化粧シート表面にシンナー(JISK5538)を塗布して、500g荷重の条件でラビングを行い、溶剤による塗膜のダメージを観察した(前記標準規格による)。
耐摩耗性:JAS摩耗C試験の基準に従い、軟質摩耗輪2個を用いて荷重1kgの条件下で摩耗試験を行い、塗膜のダメ−ジの状態を観察した。
耐汚染性:油性インキ、水性インキならびにクレヨンを用いて塗膜表面に10m/m幅のラインを形成し、4時間放置後、メタノールで拭き取り、これにより汚染状態を観察した(JAS汚染A試験)。
【0049】各特性試験の結果を下記第1表に示す。
実施例2下記の組成からなる電子線硬化型塗料組成物を調製した。
ポリエステルアクリレート(諸星インキ(株)製) 60重量部トリメチロールプロパントリアクリレート(東亜合成(株)製) 10重量部1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(日本化薬(株)製) 19重量部シリコンアクリレート(MEB−1:信越化学(株)製) 1重量部シリカ粉末(触媒化成工業(株)製) 20重量部一方、基材としての紙間強化紙(30g/m2 、三興製紙(株)製)に、グラビア輪転機にてアクリル系インキ(諸星インキ(株)製:HAT)を用いて木目模様を印刷した。
【0050】次いで、上記の塗料組成物を、上記木目印刷がなされた基材上に塗布した。塗布前の上記塗料組成物の性状、特に粘度ならびにシリコンアクリレートの分散状態は次の通りであった。
粘度:温度(℃) cps40 55070 160分散状態:一部分溶解のある懸濁状態上記塗料組成物の塗布方法は、グラビアダイレクトコート法を用い、塗布量12g/m2 で塗布した。ラインスピードは、100m/分であった。
【0051】次いで、得られた塗工物に対して、電子線照射を行って塗工層を硬化させた。この電子線照射は、スキャニング方式の電子線照射機を用いて、下記の条件で行った。
【0052】加速電圧 : 175kVビーム電流: 183mA電子線 : 5Mradこのようにして得られた木目模様の化粧シートは、表面に良好なマット感を有する仕上(75度鏡面仕上光沢(JISZ8741)が40)のシートであった。得られた化粧シートを酢酸ビニル系接着剤(AC500:中央理化(株)製)を用いて、MDF板にラミネートして一体化し、化粧板とした。
【0053】得られた化粧板を用いて、耐セロテープ性(テープデラミネーションテスト)、耐溶剤性、耐摩耗性、ならびに耐汚染性を試験した。結果を下記第1表に示す。
比較例1下記の組成の塗料組成物を用いた他は実施例1と同様の方法で化粧板を作製し、その特性を試験した。結果を下記第1表に示す。
【0054】
アクリルポリオール 60(重量部)
変性シリコーンオイル 2アマイドワックス 1トリレンジイソシアネート 15トルエン 7酢酸エチル 15 第 1 表 実施例1 実施例2 比較例1 耐セロテープ性 剥離なし 剥離なし 剥離なし 耐溶剤性 100 回以上 100 回以上 100 回以上 耐摩耗性 柄とられなし 柄とられなし 柄とられあり 耐汚染性 汚染なし 汚染なし 汚染なし*)スチールウール性 ○ ○ × *) ○:良好 ×:不良

【特許請求の範囲】
【請求項1】電離放射線重合性オリゴマー、電離放射線重合性モノマーおよび離型剤を含有する組成物からなり、該組成物の粘度を1000cps以下に制御してなることを特徴とする、電離放射線硬化型塗料組成物。
【請求項2】前記離型剤が、シリコーンアクリレートまたはその変性物からなる、請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項3】前記組成物が、粒径0.1〜30μmの粒状物質からなるマット剤を含有する、請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項4】前記組成物が、溶剤を含有せず、かつ、溶剤を使用することなくその塗工が可能な性状を有している、請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項5】前記組成物中において、前記離型剤が分散状態で存在する、請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項6】前記電離放射線重合性オリゴマーが、分子量1000〜3000のアクリレート系プレポリマーからなる、請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項7】前記電離放射線重合性モノマーが、分子量100〜400のアクリレート系またはメタクリレート系モノマーからなる、請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項8】前記離型剤が、分子量1000〜10000、官能基当量2000以下のシリコーンアクリレートからなる、請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項9】電離放射線重合性オリゴマー、電離放射線重合性モノマーおよび離型剤を含有する組成物からなり、該組成物の粘度を1000cps以下に制御してなる電離放射線硬化型塗料組成物を基材上に塗布形成し、電離放射線を照射して前記塗料組成物層を硬化させてなることを特徴とする、化粧シート。
【請求項10】前記基材上に絵柄層を介して塗料組成物層が形成されてなる、請求項9に記載の化粧シート。
【請求項11】前記基材が紙からなる、請求項9に記載の化粧シート。
【請求項12】前記絵柄層と基材との間に目止層が介在している、請求項9に記載の化粧シート。
【請求項13】請求項9に記載の化粧シートの前記基材の裏面側(塗料組成物層が形成されていない方の面)に接着剤層を介して板が接合されてなる、化粧板。
【請求項14】前記基材上に絵柄層を介して塗料組成物層が形成されてなる、請求項13に記載の化粧板。
【請求項15】基材上に、電離放射線重合性オリゴマー、電離放射線重合性モノマーおよび離型剤を含有する組成物からなり該組成物の粘度を1000cps以下に制御してなる電離放射線硬化型塗料組成物を、好ましくは溶剤を用いないで塗布形成し、前記塗布形成された組成物層に対して電離放射線を照射してこれを硬化させることを特徴とする、化粧シートの製造方法。
【請求項16】前記電離照射線が電子線であり、照射を、2〜15Mrad の照射量条件で行う、請求項15に記載の方法。
【請求項17】基材として紙を用い、絵柄層が、水溶塩型アクリル、ウレタン、またはウレタンと塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体との混合体のいづれかのビヒクルからなるインキで形成されている、請求項10、12および14のいずれか1項に記載の化粧シート又は化粧板。
【請求項18】基材シート上に撥液性の絵柄層を形成し、前記絵柄層上に、請求項1ないし8に記載の塗料組成物を塗工し、このようにして形成された前記撥液性絵柄層と前記塗工層との間の撥液作用によって前記絵柄層の上部に形成された塗工層に凹部を形成し、さらにこのようにして形成された塗工層に対して電離放射線を照射して、前記絵柄層に同調した凹凸が形成された塗工層を硬化させることを特徴とする、絵柄に同調した凹凸形成層を有する化粧シートの製造方法。