説明

塗料組成物および塗膜の形成方法

【課題】危険物に該当せず、安全性が高く、輸送、保管、取り扱いが容易で、塗膜形成に好適な組成物を提供する。
【解決手段】熱硬化性樹脂、チクソ付与剤、及び反応性モノマーを必須成分とし、非水性で、かつ引火点を持たないことを特徴とする塗料組成物であり、熱硬化性樹脂が、不飽和ポリエステル樹脂および/またはエポキシエステル樹脂であり、分解温度が140℃未満の有機過酸化物を含む塗料組成物およびそれを用いた塗膜の形成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車、車両、電気機器などの産業用機材や建材などの塗装用として好適であり、安全で環境に優しい塗料組成物および塗膜の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、主に金属被覆に良好な熱硬化性樹脂ベースの塗料には、有機溶剤を含有する樹脂系が使用されてきた。これは塗膜硬度、耐候性、耐衝撃性、耐食性、耐水性の点で優れた皮膜を形成することができるからである。
しかしながら、有機溶剤を含む塗料組成物は、塗装、造膜、硬化乾燥工程において多くの有機溶剤が飛散蒸発する為、安全、衛生の点から作業環境が厳しく制限されているのが現状である。
他方、無溶剤の塗料組成物としては、塗装面の密着性やレベリング性を向上させるために、ポリエステル樹脂やエポキシ樹脂などを反応性希釈剤や低沸点溶剤で希釈し、低粘度化したものが使用することができる(例えば、特許文献1〜2参照)。
また、無溶剤の塗料組成物として、100〜10000mPa・sのイソシアネート樹脂及び活性水素含有樹脂とタレ止め剤とを含有する透明塗料なども提案されている(例えば、特許文献3参照)。
しかしながら、このような塗料組成物も危険物であることには変わりなく、輸送や保管時における容量が制限され、また、作業環境において防爆仕様を必要とするなどコスト的にも大きな負担となっている。さらに塗料を塗装し、硬化させる際の乾燥工程では、その中に含まれる揮発成分による爆発を防止するため、単位時間あたりの処理数量も限られてしまう。
【0003】
これらの問題を改善するために、水溶性塗料が開発されているが、水溶性塗料は塗膜物性能が不十分であるため、特定の用途にしか使用できないという問題がある。また、溶媒である水の蒸発潜熱が大きいために乾燥工程では莫大なエネルギー損失を生じるという問題がある。
一方、粉体塗料は、上記問題は皆無であるが、塗膜形成が不十分であり、被塗装物表面の保護を充分に行うことができない。
【0004】
また、無溶剤形塗料は、無溶剤であっても反応性希釈成分としてスチレンなどを使用する為、引火点は低く、危険物に分類されるものであった。
【0005】
【特許文献1】特開平8−34826号公報
【特許文献2】特開平9−20878号公報
【特許文献3】特開2007−137942号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題を解決するためになされたもので、危険物に該当せず、安全性が高く、輸送、保管、取り扱いが容易で、塗膜形成に好適な組成物を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、特定の性状を有する塗料組成物が、危険物に該当せず、かつ揮発性有機化合物が非常に少ないため、塗布してから硬化に至るまでの膜厚変動が非常に少なく、塗装表面に優れた性能を有することを見出した。本発明はかかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち本発明は、以下の塗料組成物および塗膜形成方法を提供するものである。
【0008】
1.熱硬化性樹脂、チクソ付与剤、及び反応性モノマーを必須成分とし、非水性で、かつ引火点を持たないことを特徴とする塗料組成物。
2.ゲル化点が、反応性モノマーの引火点よりも低い上記1に記載の塗料組成物。
3.熱硬化性樹脂が、不飽和ポリエステル樹脂および/またはエポキシエステル樹脂である上記1または2に記載の塗料組成物。
4.ゲル化点が170℃未満である上記1〜3のいずれかに記載の塗料組成物。
5.さらに、分解温度が140℃未満の有機過酸化物を含む上記1〜4のいずれかに記載の塗料組成物。
6.反応性モノマー含有量が、塗料組成物全量基準で30〜90質量%である上記1〜5のいずれかに記載の塗料組成物。
7.反応性モノマーのうち80〜100質量%が引火点140℃以上250℃未満のものである上記1〜6のいずれかに記載の塗料組成物。
8.さらに、金属石鹸を含む上記1〜7のいずれかに記載の塗料組成物。
9.上記1〜8のいずれかに記載の塗料組成物を基材面に塗布し、乾燥、硬化させることを特徴とする塗膜の形成方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の塗料成物は、引火点を持たないので、危険物に該当せず、このため輸送や保管時における容量に制限がない。したがって、製造設備や保管設備における取り扱い数量を大幅に増加させることができるため、塗装製品の生産性やコストの低下を図ることができる。また、本発明の塗料組成物により形成された塗膜は優れた性能を有するので、従来の塗装方法により、塗料組成物を被塗装物表面に充分に被覆させることができる。このため、塗装表面にボイドや外観不良がなく、信頼性の高い塗膜を効率的に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の塗料組成物およびそれを用いた塗膜形成方法について説明する。
本発明の塗料組成物は、少なくとも熱硬化性樹脂、チクソ付与剤、及び反応性モノマーを含み、非水性で、かつ引火点を持たないものであり、塗膜形成用として好適である。
【0011】
本発明の塗料組成物における樹脂成分としては、硬化性および硬化物性能の観点から、不飽和ポリエステル樹脂および/またはエポキシエステル樹脂を使用することが好ましい。
【0012】
上記不飽和ポリエステル樹脂は、不飽和二塩基酸を含む酸成分と多価アルコール成分とのエステル化反応によって製造することができる。
【0013】
酸成分としては、アジピン酸等の脂肪族飽和二塩基酸、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸等の脂肪族不飽和二塩基酸またはそれらの無水物、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の芳香族二塩基酸またはそれらの無水物、テトラヒドロフタル酸や同無水物等の脂環式不飽和二塩基酸、ヘキサヒドロフタル酸や同無水物等の脂環式飽和二塩基酸が挙げられる。これらの二塩基酸の中で、好ましくは、脂肪族不飽和二塩基酸または芳香族二塩基酸を必須成分として使用し、適宜、脂肪族飽和二塩基酸や脂環式二塩基酸が混合して使用される。
酸成分としては、一塩基酸を使用することができ、一塩基酸として、大豆油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、ヤシ油脂肪酸、トール油脂肪酸、米ぬか油脂肪酸等の複数種の脂肪酸を混合したものが挙げられる。
【0014】
多価アルコール成分としては、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,6−シクロヘキサンジメタノール、グリセリンモノアリルエーテル、トリメチロールプロパンモノアリルエーテル、ペンタエリスリトールジアリルエーテルなどの二価アルコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリスー2−ヒドロキシエチルイソシアヌレート、などの三価以上のアルコールが挙げられる。これらは単独でまたは二種以上を混合して使用することができる。
【0015】
上記の酸成分と多価アルコール成分とを、カルボキシル基と水酸基とのモル比(COOH基/OH基)が約1/1になるように仕込んで反応させることにより不飽和ポリエステル樹脂が得られる。
【0016】
また、上記エポキシエステル樹脂は、酸成分とエポキシ成分をエステル化触媒により反応させて得られるものである。ここで用いる酸成分としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、桂皮酸、ソルビン酸などの不飽和一塩基酸が挙げられる。これらは単独でまたは二種以上を組み合わせて使用することができる。さらに必要に応じてフタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、マレイン酸およびアジピン酸などの二塩基酸を、単独でまたは一種以上を組み合わせて使用することができる。
【0017】
エポキシ成分としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するものであればよく、分子構造、分子量などは特に制限されることなく、各種のものを広く使用することができる。具体的には、ビスフェノール型、ノボラック型、ビフェニル型などの芳香族基を有するエポキシ樹脂、ポリカルボン酸をグリシジルエステル化したエポキシ樹脂、シクロヘキサン誘導体とエポキシが縮合した脂環式のエポキシ樹脂などが挙げられる。これらは単独でまたは二種以上を混合して使用することができる。
上記の酸成分とエポキシ樹脂とを、カルボキシル基とエポキシ基とのモル比〔COOH基/エポキシ基〕が約1/1になるように仕込んで反応させることによりエポキシエステル樹脂が得られる。
本発明においては、樹脂成分として、上記不飽和ポリエステル樹脂のみを用いてもよく、エポキシポリエステル樹脂のみを用いてもよく、あるいはそれらを併用してもよい。
【0018】
本発明の塗料組成物には、塗膜厚の保持、塗膜のレベリングのためにチクソ付与剤を配合する。チクソ付与剤としては、例えばシリカ粉末、炭酸カルシウム粉末、アルミナ粉末、水酸化アルミニウム粉末、マグネシア粉末、水酸化マグネシウム粉末、チタニア粉末、タルク、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、硫酸バリウムなどが配合できる。
【0019】
チクソ付与剤の含有量は、熱硬化性樹脂100質量部に対し、好ましくは0.1〜30質量部であり、より好ましくは0.5〜20質量部である。この含有量が0.1質量部以上であると、塗膜厚が十分に保持される。30質量部以下であると、塗膜のレベリング性が十分なものとなる。
【0020】
本発明の塗料組成物に含まれる反応性モノマーは、反応性希釈剤としての役割をも果たす。反応性モノマーとしては、不飽和基を1分子中に1個以上有するモノマーであれば制限なく使用することができる。反応性モノマーのうち、80〜100質量%が引火点140℃以上250℃未満のものであることが好ましい。上記反応性モノマーの引火点の下限としては、160℃以上であることがより好ましい。
【0021】
このような引火点を有する反応性モノマーとして具体的には、芳香族系アクリルモノマー、アルキル(メタ)アクリレート誘導体およびポリアルキレングリコールのジ(メタ)アクリレート誘導体などが挙げられる。
芳香族系アクリルモノマーとしては、フェノキシエチルアクリレート、フェノキシテトラエチレングリコールアクリレートなどが挙げられる。
アルキル(メタ)アクリレート誘導体としては、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ステアリルアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレートなどが挙げられる。
ポリアルキレングリコールのジ(メタ)アクリレート誘導体としては、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレートおよびポリプロピレングリコールジメタクリレートなどが挙げられる。
これらの中で、テトラエチレングリコールジメタクリレートおよびトリエチレングリコールジメタクリレートなどが好ましい。これらの反応性モノマーは単独でまたは二種以上を混合して使用することができる。
【0022】
反応性モノマーの含有量は、塗料組成物全量基準で通常30〜90質量%程度、好ましくは37〜70質量%である。反応性モノマーの含有量が30質量%以上であると、塗料組成物の粘度が適正となるため、塗膜形成性、及び平滑性が良好であり、また、90質量%以下であると、硬化物の機械強度が十分なものとなる。
【0023】
本発明の塗料組成物は、そのゲル化点が、それに含まれる反応性モノマーの引火点よりも低いことが好ましい。このような条件が満たされると、塗料としての輸送、保管における取り扱い許容量を大幅に増やすことができる。また、本発明の塗料組成物を被塗装物に塗装し、乾燥、硬化のため熱処理を行う際にも、爆発の危険性が大幅に低下する。このため、塗装処理量を大幅に向上させることができる。
塗料組成物のゲル化点が、反応性モノマーの引火点よりも低ければ、引火点140℃未満の反応性モノマーを、反応性モノマー含有量の20質量%を限度として混合して使用することができる。
本発明の塗料組成物のゲル化点と反応性モノマーの引火点との差は、5℃以上であることが好ましく、より好ましくは10〜60℃である。
【0024】
本発明の塗料組成物は、ゲル化点が170℃未満であることが好ましく、140℃未満であることがより好ましい。このゲル化点が170℃未満であれば、塗料組成物の引火点がなくなり、消防法における危険物分類に該当しない。
【0025】
本発明の塗料組成物において、そのゲル化点が反応性モノマーの引火点よりも低いものとする観点から、塗料組成物にさらに分解温度が140℃未満の有機過酸化物及び/又は金属石鹸を含むことが好ましく、両者を併用することがより好ましい。有機過酸化物、及び金属石鹸を含むことにより、反応性モノマーの反応開始温度を低下させ、塗料組成物のゲル化を促進させることができる。
【0026】
有機過酸化物の分解温度は140℃未満であることが好ましく、このような有機過酸化物としては、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、アシルパーオキサイドおよびクメンパーオキサイド、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキサンなどのパーオキシケタール、t−ブチルパーオキシベンゾエートなどのパーオキシエステルなど、さらには、いわゆる常温硬化型の有機過酸化物、例えば、メチルエチルケトンパーオキサイドなどが挙げられる。これらは単独でまたは二種以上を混合して使用することができる。
【0027】
分解温度が140℃未満の有機過酸化物の含有量は、熱硬化性樹脂100質量部当たり0.001質量部以上5.0質量部未満が好ましく、より好ましくは0.01〜2.0質量部である。分解温度が140℃未満の有機過酸化物の含有量が0.001質量部以上であると、塗料組成物において、反応性モノマーの引火点よりもゲル化点が低くなるため、塗料組成物が引火する危険性が大幅に軽減される。また、5.0質量部未満であると、ゲル化点が低くなりすぎることがないので、塗膜が均一になる間に塗料組成物かゲル化することがない。したがって、塗膜外観が十分なものとなる。
【0028】
金属石鹸としては、ナフテン酸コバルト、オクチル酸コバルト、ナフテン酸銅、オクテン酸銅、ナフテン酸マンガン、オクチル酸マンガンなどのナフテン酸又はオクチル酸等の金属塩が挙げられる。これらの中で、上記の観点から、ナフテン酸コバルト、オクチル酸コバルトが好ましい。
【0029】
金属石鹸の含有量は、熱硬化性樹脂100質量部当たり0.001質量部以上1質量部未満が好ましく、より好ましくは0.005〜0.7質量部である。金属石鹸の含有量が0.001質量部以上であると、塗料組成物において、含有する有機過酸化物を分解促進させるための十分量となり、ゲル化点が反応性モノマーの引火点よりも低くなるため、塗料組成物が引火する危険性が大幅に軽減される。また、1質量部未満であると、ゲル化点が低くなりすぎることがないので、塗膜が均一になる間に塗料組成物がゲル化することがない。したがって、塗膜外観が十分なものとなる。
【0030】
また、本発明の塗料組成物には、さらに必要に応じて、ハイドロキノン、メトキノン、p−t−ブチルカテコールおよびピロガロールなどの重合禁止剤、着色剤および沈降防止剤などを配合することもできる。
【0031】
本発明の塗料組成物は、JIS C2105に準拠して25℃において測定された粘度が、0.01〜100dPa・sであることが好ましく、0.1〜50dPa・sであることがより好ましい。この粘度を0.01dPa・s以上とすることにより、塗膜厚さを一定量確保でき、100dPa・s以下とすることにより、塗料組成物の表面平滑性を向上させることができる。
【0032】
本発明は、塗料組成物を被塗装物面に塗装し、乾燥、硬化させることを特徴とする塗膜の形成方法をも提供する。
本発明の塗料組成物を被塗装物面に塗装させる方法としては、特に限定されるものではなく、従来方法を適用することができ、ロールコーター法、ナイフコーター法、刷毛塗り法、エアーガンによるスプレー法などがある。さらに、加熱処理などの公知の方法により、乾燥硬化させて、塗膜を形成することができる。
【実施例】
【0033】
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
【0034】
実施例1
フラスコ中にテトラヒドロフタル酸6g、イソフタル酸13g、無水マレイン酸11g、プロピレングリコール22gおよびハイドロキノン0.01gを加え、180〜220℃で反応させ、酸価10mgKOH/gのポリエステル樹脂を得た。得られたポリエステル樹脂にハイドロキノン0.01gを加え、樹脂Aを製造した。
この樹脂Aにトリエチレングリコールジメタクリレート(ブレンマーPDE150、日本油脂株式会社製)44gとトリメチロールプロパンメタクリレート(SR−350、サートマー社製)を2.5g加え、さらにナフテン酸コバルト(大日本インキ化学工業株式会社製)0.1gとジクミルパーオキサイド(パークミルD、日本油脂株式会社製)0.03gを加え、均一になるまで撹拝混合して熱硬化性樹脂組成物を得た。
さらに、チクソ付与剤として、シリカ粉末(アエロジル#200、日本アエロジル株式会社製)5gを加え、混合して塗料組成物を得た。
次に、ハンドコーターで、鋼板に上記塗料組成物を厚さ120μmに塗装して、次いで、160℃で30分間加熱して乾燥硬化させて塗膜層を形成することにより、膜厚110μmの塗装鋼板を得た。塗料組成物及び塗装鋼板の特性について、下記の方法により評価した。結果を第1表に示す。
【0035】
(1)引火点
反応性モノマーおよび塗料組成物の引火点を、クリーブランド開放法(JIS K 2655に準拠)により測定した。
(2)ゲル化点
上記クリーブランド開放法に従い、塗料組成物がゲル化した温度をゲル化点とした。
(3)タレ性
ハンドコーターで厚さ120μmに塗布後、塗料組成物のタレを目視にて確認評価した。
○:タレなし、×:タレ多い
(4)揮発性有機化合物(VOC)量、及び硬化時ミスト
直径50mm、深さ15mmのシャーレに塗料組成物を2g採取し、160℃で30分で硬化させたときの揮発分を測定してVOCとした。また、シャーレに付着したミスト成分を目視により評価した。
O:付着なし、×:付着あり
(5)表面硬度
硬化後の塗膜硬度を鉛筆硬度試験(JIS K 5400に準拠)により測定した。
(6)仕上がり性(寸法安定性)
ハンドコーターで塗布した塗料組成物の厚みと、硬化後の塗料組成物の厚みを測定し、その変化量を求めることにより評価した。
O:変化量10%未満、△:変化量10%以上30%未満、×:変化量30%以上
(7)信頼性
塗膜を80℃、85%RHで500時間処理した後、クロスカット試験(JIS K 5600に準拠)によって評価した。
【0036】
実施例2〜6および比較例1〜4
第1表に示す配合成分を用い、実施例1と同様にして塗料組成物を調製し、これを用いて塗膜を形成し、実施例1と同様の評価を行った。結果を第1表に示す。
【0037】
実施例7
第1表に示す配合成分を用い、実施例1と同様にして塗料組成物を調製した。次いで、25℃で24時間乾燥硬化させて塗膜層を形成したこと以外は、実施例1と同様に、上記塗料組成物を用いて塗膜を形成し、実施例1と同様の評価を行った。結果を第1表に示す。
【0038】
なお、実施例2〜7および比較例1〜4において、実施例1で用いた配合成分以外の配合成分の商品名等は以下のとおりである。
(1)テトラエチレングリコールジメタクリレート:ブレンマーPDE200、日本油脂株式会社製
(2)ポリエチレングリコールジアクリレート:ブレンマーADE200、日本油脂株式会社製
(3)ポリプロピレングリコールジアクリレート:ブレンマーADP200、日本油脂株式会社製
(4)フェノキシエチルアクリレート:ビスコート#192、大阪有機化学工業株式会社製
(5)トリメチロールプロパントリメタクリレート:SR−350、巴工業株式会社製
(6)2−ヒドロキシエチルメタクリレート:2−HEMA、三菱ガス化学株式会社製
(7)ジクミルパーオキサイド:パーミクルD、日本油脂株式会社製
(8)メチルエチルケトンパーオキサイド:パーメックN、日本油脂株式会社製
【0039】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の塗料組成物およびそれを用いた塗膜の形成方法は、自動車、車両、電気機器などの産業用機材や建材などの塗装に広く適用し得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化性樹脂、チクソ付与剤、及び反応性モノマーを必須成分とし、非水性で、かつ引火点を持たないことを特徴とする塗料組成物。
【請求項2】
ゲル化点が、反応性モノマーの引火点よりも低い請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項3】
熱硬化性樹脂が、不飽和ポリエステル樹脂および/またはエポキシエステル樹脂である請求項1または2に記載の塗料組成物。
【請求項4】
ゲル化点が170℃未満である請求項1〜3のいずれかに記載の塗料組成物。
【請求項5】
さらに、分解温度が140℃未満の有機過酸化物を含む請求項1〜4のいずれかに記載の塗料組成物。
【請求項6】
反応性モノマー含有量が、塗料組成物全量基準で30〜90質量%である請求項1〜5のいずれかに記載の塗料組成物。
【請求項7】
反応性モノマーのうち80〜100質量%が引火点140℃以上250℃未満のものである請求項1〜6のいずれかに記載の塗料組成物。
【請求項8】
さらに、金属石鹸を含む請求項1〜7のいずれかに記載の塗料組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の塗料組成物を基材面に塗布し、乾燥、硬化させることを特徴とする塗膜の形成方法。

【公開番号】特開2009−249456(P2009−249456A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−97258(P2008−97258)
【出願日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【出願人】(390022415)京セラケミカル株式会社 (424)
【Fターム(参考)】