説明

塗料組成物及び塗膜形成方法

【課題】
各種工業製品、特に自動車の外板に適用できる全体に低明度で、ハイライト(正反射光近傍)からシェード(斜め方向)に色変化する塗膜であって且つ遮熱機能を有する塗膜を形成可能な塗膜を形成可能な塗料組成物及び塗膜を形成可能な塗膜形成方法を提供することである。
【解決手段】本発明は、マルチカラー光輝性顔料及び赤外線を反射及び/又は透過する着色顔料を含む塗料組成物及び基材上に該塗料組成物を塗装しさらにクリヤー塗料を塗装する塗膜形成方法に関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全体に低明度で、ハイライト(正反射光近傍)からシェード(斜め方向)に色変化する塗膜であって且つ遮熱機能を有する塗膜を形成可能な塗料組成物及び塗膜形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車等の工業製品において、観察角度によって見え方が変化するメタリック塗色の中で全体に低明度の塗色は、落ち着いた質感の塗色として注目されている。特に色の見え方の変化として、単に明度が変化するだけでなく、色相が変化する2色性を発現する塗色へのユーザーの要求は強い。2色性を発現する方法としては、例えば特許文献1には、カラーベース塗膜層を形成した後、金属酸化物被覆シリカフレーク顔料を含有する光輝性塗膜層を形成し、さらに上記光輝性塗膜層上にトップクリヤー塗膜層を形成する方法において、カラーベース塗膜層の色と金属酸化物被覆シリカフレーク顔料の干渉色を特定する方法が記載されている。しかしながら、特許文献1に開示の方法は、3コートによる塗膜形成方法であり、2コートによる塗膜形成方法と比較する工程数が多くなる問題点があった。
【0003】
また、低明度で2色性を有する塗膜を形成する方法として、構造色を発現する光輝性顔料とカーボンブラック顔料を併用する塗料組成物を塗装する方法があるが、カーボンブラック顔料は、明度を調整する効果に優れるが、色相が単調である問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−192067号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、全体に低明度で、ハイライト(正反射光近傍)からシェード(斜め方向)に色変化する塗膜であって且つ遮熱機能を有する塗膜を形成可能な塗料組成物及び塗膜形成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
1.マルチカラー光輝性顔料及び赤外線を反射及び/又は透過する着色顔料を含む塗料組成物、
2.マルチカラー光輝性顔料が多層構造の鱗片状光干渉性顔料、コレステリック液晶ポリマー、金属酸化物で被覆された鱗片状シリカ顔料から選択されたものである1項に記載の塗料組成物、
3.赤外線を反射及び/又は透過する着色顔料が、ペリレンである1項又は2項に記載の塗料組成物、
4.塗装して得られる塗膜のL*a*b*表色系における明度L*が0〜40の範囲内である1〜3項のいずれか1項に記載の塗料組成物
5.基材に、1〜4項に記載された塗料組成物を塗装し、さらにクリヤー塗料を塗装する塗膜形成方法に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、全体に低明度で、ハイライト(正反射光近傍)からシェード(斜め方向)に色変化する塗膜であって且つ遮熱機能を有する塗膜を形成可能なメタリック塗料組成物及び塗膜形成方法を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の塗料組成物は、塗装して得られる塗膜をハイライト(正反射光近傍)からシェード(斜め方向)に色変化せしめることを目的として、マルチカラー光輝性顔料を含有する。
マルチカラー光輝性顔料としては、多層構造の鱗片状光干渉性顔料、金属酸化物で被覆された鱗片状シリカ及びコレステリック液晶ポリマーを挙げることができる。
【0009】
多層構造の鱗片状光干渉性顔料は、多層構造を構成する材料の屈折率や各層の厚さによって、反射する光の波長域が決定されるので、特定の入射・反射方向に対して決まった波長の光だけが強く反射されるため、色が観察角度によって変化する構造色を発現可能なものである。
【0010】
多層構造の鱗片状光干渉性顔料としては、例えば、マイカ、人工マイカ、ガラス、シリカ、酸化鉄、酸化アルミニウムやアルミニウム等各種金属等鱗片状基材の表面に、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、二酸化チタン、酸化鉄、硫化亜鉛、硫化亜鉛、フッ化マグネシウム、フッ化アルミニウム、フッ化ナトリウム、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、フッ化トリウム、クロミウム等の中から屈折率の異なるものを選択して3層以上の干渉被膜を形成した顔料や、これら屈折率の異なる皮膜を3層以上積層させた顔料を挙げることができる。
【0011】
金属酸化物で被覆された鱗片状シリカは、表面が平滑で且つ厚さが均一な基材である鱗片状シリカを基材とは屈折率が異なる金属酸化物で被覆したものであり、金属酸化物層の厚さも均一であることから、塗料組成物に配合した場合に、塗装して得られた塗膜がハイライトからシェードにかけて大きく色変化するものである。
【0012】
コレステリック液晶ポリマーは、例えば、メタクリロイロキシ基またはアクリロイロキシ基を側鎖に有するポリオルガノシロキサン等の三次元架橋性ポリマーと液晶性物質を基材に、分子をそれぞれ平行な層に整えた後、螺旋構造とするために、電場または磁場により少しずつ異なる分子配向となるように層状に積み重ね、重合反応によって配向した分子を固定化し薄膜層を三次元架橋させた後、基材から分離し、続いて所望の粒子サイズに粉砕することにより得られたものを挙げることができる。
【0013】
コレステリック液晶ポリマーは、螺旋構造を有しているため螺旋構造のピッチ幅、液晶の屈折率によって反射する光の波長域が決定され、特定範囲の波長の反射光が、光波長に相当するピッチの螺旋構造に偏光した光線成分に分割され、螺旋の回転方向に従って反射成分と透過成分となる。観察角度によって、螺旋のピッチが異なるため、色が変化する構造色が発現する。
【0014】
本発明においては、マルチカラー光輝性顔料として特に金属酸化物で被覆された鱗片状シリカを使用することが、塗装して得られる塗膜が耐候性に優れること及び入手が容易な点から好ましい。
【0015】
本発明において、マルチカラー光輝性顔料は、塗膜の仕上がり性の点から、長手方向の平均粒子径(D50)が1〜50μmの範囲内のものを使用することが好ましく、3〜30μmの範囲内のものを使用することがより好ましく、5〜25μmの範囲内のものを使用することが特に好ましい。また厚さは、0.01μm〜10μmの範囲内のものを使用することが好ましく、0.1μm〜5μmの範囲内のものを使用することが特に好ましい。
【0016】
上記マルチカラー光輝性顔料の含有量は、塗装して得られる塗膜のハイライト(正反射光近傍)からシェード(斜め方向)に色変化を発現する点から、塗料組成物中の樹脂組成物の固形分100質量部に対して、0.01〜50質量部の範囲内であることが好ましく、さらに好ましくは0.05〜40質量部の範囲内、特に好ましくは0.1〜20質量部の範囲内である。
【0017】
本発明の塗料組成物は、塗装して得られる塗膜の全体の明度を低くせしめること及び塗膜に遮熱性を付与することを目的として、赤外線を反射及び/又は透過する着色顔料を含む。
【0018】
本明細書において、赤外線を反射及び/又は透過する着色顔料とは、波長780nm〜2500nmの領域において、JIS K5101 4隠ぺい率試験紙法に記載された隠ぺい率試験紙に該着色顔料のみを着色材として含む塗料を塗装して得られた塗膜の白素地上のJIS K5602に定義された日射反射率が50%以上又は黒素地上の日射反射率が10%以上の顔料を意味する。
【0019】
本明細書における具体的な試験方法を以下に説明する。水酸基含有アクリル樹脂(水酸基価100、数平均分子量20000)及びメラミン樹脂からなる樹脂成分100固形分質量部あたり、該着色顔料を15質量部配合して攪拌混合し、適当な溶媒を用いて希釈して固形分約25%の有機溶剤型塗料を調製する。隠ぺい率試験紙を平らなガラス板の上に水平に固定し、その上にドクターブレードを使用して、硬化塗膜厚が30μmとなるように塗装し、室温約20℃の実験室に15分間放置し、その後に熱風乾燥機を使用して140℃で30分間加熱して硬化せしめてテストピースを作成する。白素地部分及び黒素地部分の日射反射率は、積分球ISR−3100を搭載した分光光度計UV−3100PC(共に島津製作所社製)を使用して入射角度を8°としたときの日射反射率として定義するものとする。
【0020】
赤外線を反射及び/又は透過する着色顔料としては具体的には、アゾ系顔料、アニリンブラック、ペリレンブラック等の有機顔料や複合酸化物顔料等を挙げることができる。
【0021】
ペリレン系の顔料としては、特開2003−41144号公報及び特関2003−41145号公報に開示のペリレンテトラカルボン酸の酸無水物、特開2006−328238号に開示の2−メチル−2,4−ペンタンジオール及び硝酸を加熱反応して得られる黒色顔料、ペリレンテトラカルボン酸のジイミド誘導体、ペリレンジイミノジカルボン酸のジイミド誘導体を焼成処理して得られた黒色ペリレン系顔料や、特開2007−522297号公報に開示の式1a又は1bで表される異性体の1種又は2つの異性体の混合物を含有する黒色顔料を使用することができる。
【0022】
【化1】

【0023】
(式中、R1、R2は互いに独立にフェニレン、ナフチレンまたはピリジレンであり、これらはそれぞれC1〜C12−アルキル、C1〜C6−アルコキシ、ヒドロキシル、ニトロおよび/またはハロゲンにより一置換または多置換されていてもよく、Xはハロゲンであり、nは0〜4である)。
【0024】
無機顔料としては、Cu−Fe−Mn系、Cu−Cr系、Cu−Cr―Mn系、Cu−Cr―Mn―Ni系、Cu−Cr―Fe系、Co―Cr―Fe系、Mn−Bi系、Mn−Y系、等の複合酸化物顔料を挙げることができる。
【0025】
本発明において、赤外線を反射及び/又は透過する着色顔料は、塗装して得られる塗膜の色調によって、上記から1種類又は複数を選択して使用することができる。本発明の塗料組成物における赤外線を反射及び/又は透過する着色顔料としては、色調や仕上がり性の点からペリレンを使用することが好ましい。ペリレンを使用する場合、ハイライトでは青〜緑に発色し、シェードでは赤く発色するので、観察角度による色相変化が強調される効果も奏する。
【0026】
本発明の塗料組成物における赤外線を反射及び/又は透過する着色顔料の量は、塗装して得られる塗膜の色調や、仕上がり性の点から、塗料組成物中の樹脂固形分100質量部に対して、合計で1〜40質量部の範囲内が好ましく、より好ましくは2〜30質量部の範囲内、特に好ましくは3〜20質量部の範囲内である。
【0027】
本発明の塗料組成物は、塗装して得られる塗膜の色相を微調整することを目的として、上記赤外線を反射及び/又は透過する着色顔料以外の着色顔料を含有することができる。該着色顔料としては、特に制限されるものではないが、具体的には、透明性酸化鉄顔料や微粒子酸化チタン顔料等の無機顔料やアゾ系顔料、キナクリドン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、ペリノン系顔料、ベンズイミダゾロン系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、金属キレートアゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、アンスラキノン系顔料、ジオキサジン系顔料、スレン系顔料、インジゴ系顔料等の有機顔料等の中から任意のものを1種もしくはそれ以上を組み合わせて使用することができる。
【0028】
本発明の塗料組成物に赤外線を反射及び/又は透過する着色顔料以外の着色顔料を配合せしめる場合その含有量は、塗膜のハイライトからシェードへの色変化を阻害しない点から、塗料中の樹脂固形分100質量部に対し0.01〜30質量部の範囲内であることが好ましく、より好ましくは0.1〜25質量部、特に好ましくは0.2〜20質量部の範囲内であることが好ましい。
【0029】
本発明の塗料組成物には、通常、ビヒクルとして、樹脂成分を含有することができる。樹脂成分としては、具体的には、水酸基などの架橋性官能基を有する、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂などの基体樹脂と、メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリイソシアネ−ト化合物(ブロック体も含む)などの架橋剤とを併用したものが挙げられ、これらは有機溶剤及び/又は水などの溶媒に溶解または分散して使用される。
【0030】
さらに、本発明のメタリック塗料組成物には、必要に応じて、水あるいは有機溶剤等の溶媒、顔料分散剤、沈降防止剤、硬化触媒、消泡剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、表面調整剤、レオロジーコントロール剤等の各種添加剤、体質顔料などを適宜配合することができる。
【0031】
本発明の塗料組成物は、前述の成分を混合分散せしめることによって調製される。塗装時の固形分含有率を、塗料組成物に基づいて、12〜60質量%、好ましくは15〜50質量%に調整しておくことが好ましい。
【0032】
本明細書の塗料組成物は、塗装して得られる塗膜のL*a*b*表色系における明度L*を0〜40の範囲内となるように、上記着色顔料の量組成を決定することができる。本明細書において塗料組成物を塗装して得られる塗膜の明度とは、予めグレー色(N−6)の塗膜を形成した塗板上に、該塗料組成物を塗装に適正な粘度に希釈して、硬化塗膜として18μmの膜厚となるようにエアスプレー塗装し、室温にて15分間放置し、ついで、未硬化塗面にクリヤー塗料(ル−ガベ−ククリヤ−、関西ペイント製、商品名、アクリル樹脂・アミノ樹脂系、有機溶剤型)を硬化塗膜として、35μmとなるようにエアスプレー塗装し、さらに室温にて15分間放置し、その後に熱風乾燥機を使用して140℃で30分加熱して硬化乾燥せしめて得られた塗膜をX−Rite社製のMA−68II(商品名、多角度分光光度計)を使用して、正反射光に対して45°で受光した分光反射率に基づいて計算した数値で定義するものとする。
【0033】
本発明の塗膜形成方法は、基材上に上記塗料組成物を塗装し、硬化乾燥せしめる方法に関するものである。
【0034】
次に本発明の塗膜形成方法について説明する。本発明の塗膜形成方法においては、上記の如き料組成物を基材に塗装し、さらに得られた塗膜上にクリヤー塗料を塗装する。
【0035】
基材としては、鉄、亜鉛、アルミニウム、マグネシウム等の金属やこれらを含む合金、及びこれらの金属によるメッキまたは蒸着が施された成型物、ならびに、ガラス、プラスチックや発泡体などによる成型物等を挙げることができる。さらにこれらの素材に応じて適宜、脱脂処理や表面処理を行なったものを基材とすることができる。さらに、上記基材に下塗り塗膜や中塗り塗膜を形成させて基材とすることもでき、これらの塗装された基材が特に好ましい。
【0036】
上記下塗り塗膜とは、素材表面を隠蔽したり、素材に防食性及び防錆性などを付与するために形成されるものであり、下塗り塗料を塗装し、乾燥、硬化することによって得ることができる。この下塗り塗料種としては特に限定されるものではなく、例えば、電着塗料、溶剤型プライマー等を挙げることができる。
【0037】
また、上記中塗り塗膜とは、素材表面や下塗り塗膜を隠蔽したり、付着性や耐チッピング性などを付与したり、複層塗膜における明度を調整するために形成されるものであり、素材表面や下塗り塗膜上に、中塗り塗料を塗装し、乾燥、硬化することによって得ることができる。中塗り塗料種は、特に限定されるものではなく、既知のものを使用でき、例えば、熱硬化性樹脂組成物及び着色顔料を必須成分とする有機溶剤系又は水系の中塗り塗料を好ましく使用できる。
【0038】
特に基材として、下塗り塗膜あるいは中塗り塗膜を形成させる場合においては、下塗り
塗膜及び中塗り塗膜を加熱し、架橋硬化後に前述の塗料組成物を塗装することができる。あるいは、下塗り塗膜を加熱し、架橋硬化後に中塗り塗膜を形成せしめ、中塗り塗膜が未硬化の状態で、前述の塗料組成物を塗装することもできる。又は、下塗り塗膜及び中塗り塗膜が未硬化の状態で前述の塗料組成物を塗装してもよい。
【0039】
本発明の塗料組成物は、上記各種基材に静電塗装、エアスプレ−、エアレススプレーなどの方法で塗装することができ、その膜厚は硬化塗膜に基づいて5〜30μmの範囲内とするのが、塗膜の平滑性の点から好ましい。通常、所定の膜厚となるように塗装した後に、加熱し、乾燥硬化せしめることができるが、未硬化の状態で後述するクリヤー塗料を塗装することができる。本発明の塗料組成物の塗膜それ自体は、焼き付け乾燥型の場合、通常、約50〜約180℃の温度で架橋硬化させることができ、常温乾燥型又は強制乾燥型の場合には、通常、常温乾燥〜約80℃の温度で硬化させることができる。
【0040】
本発明方法におけるクリヤー塗料は、前述の塗料組成物の未硬化もしくは硬化させてなる塗面に塗装する塗料であり、樹脂成分および溶剤を主成分とし、さらに必要に応じてその他の塗料用添加剤などを配合してなる無色もしくは有色の透明塗膜を形成する液状塗料である。
【0041】
本発明方法におけるクリヤー塗料としては、従来公知のものが制限なく使用できる。例
えば、基体樹脂及び架橋剤を含有する液状もしくは粉体状の塗料組成物が適用できる。基
体樹脂の例としては、水酸基、カルボキシル基、シラノ−ル基、エポキシ基などの架橋性
官能基を含有する、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、フッ素樹脂、ウレ
タン樹脂、シリコン含有樹脂などが挙げられる。架橋剤としては、前記基体樹脂の官能基
と反応しうるメラミン樹脂、尿素樹脂、ポリイソシアネ−ト化合物、ブロックポリイソシ
アネ−ト化合物、エポキシ化合物又は樹脂、カルボキシル基含有化合物又は樹脂、酸無水
物、アルコキシシラン基含有化合物又は樹脂等が挙げられる。また、必要に応じて、水や
有機溶剤等の溶媒、硬化触媒、消泡剤、紫外線吸収剤、レオロジーコントロール剤、酸化
防止剤、表面調整剤等の添加剤を適宜配合することができる。
【0042】
本発明方法におけるクリヤー塗料には、透明性を損なわない範囲内において、着色顔料
を適時配合することができる。着色顔料としては、インク用、塗料用として従来公知の顔
料を1種あるいは2種以上を組み合わせて配合することができる。その添加量は、適宜決
定されて良いが、クリヤー塗膜中の樹脂固形分100質量部に対して、固形分として30
質量部以下、好ましくは0.01〜15質量部、特に好ましくは0.1〜10質量部の範
囲内である。
【0043】
本発明方法におけるクリヤー塗料は、静電塗装、エアスプレ−、エアレススプレ−などの方法で塗装することができ、その膜厚は硬化塗膜に基づいて15〜70μmの範囲内とするのが好ましい。クリヤー塗料の塗膜それ自体は、焼き付け乾燥型の場合、通常、約50〜約180℃の温度で架橋硬化させることができ、常温乾燥型又は強制乾燥型の場合には、通常、常温乾燥〜約80℃の温度で架橋硬化させることができる。
【実施例】
【0044】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、「部」及び「%」はいずれも質量基準によるものである。
(製造例1)水酸基含有アクリル樹脂の製造
温度計、サーモスタット、撹拌器、還流冷却器及び滴下装置を備えた反応容器にエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート50部を仕込み、撹拌混合し、135℃に昇温した。次いで下記のモノマー/重合開始剤の混合物を3時間かけて、同温度に保持した反応容器内に滴下し、滴下終了後1時間熟成を行なった。その後、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート10部、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)0.6部からなる混合物を135℃に保持した反応容器内に1時間30分かけて滴下し、さらに2時間熟成した。次にエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートを減圧下で留去し、樹脂固形分65%の水酸基含有アクリル樹脂溶液を得た。得られた水酸基含有樹脂は、水酸基価54mgKOH/g、数平均分子量20,000であった。ここで数平均分子量とは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって標準ポリスチレンの検量線を用いて測定したものを意味する。
モノマー/重合開始剤の混合物:
メチルメタクリレ−ト38部、エチルアクリレ−ト17部、n−ブチルアクリレ−ト17部、ヒドロキシエチルメタクリレ−ト7部、ラウリルメタクリレ−ト20部及びアクリル酸1部及び2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)2部からなる混合物。
(着色顔料の白素地上と黒素地上の日射反射率測定)
実施例及び比較例に使用する着色顔料各々の白素地及び黒素地上の日射反射率を以下の要領で測定し、結果を表1に示した。
【0045】
製造例1で得た水酸基含有アクリル樹脂溶液を固形分として75部、ユーバン28−60(商品名、ブチルエーテル化メラミン樹脂、三井化学社製)を固形分として25部からなるビヒクル形成成分である樹脂固形分100部に対して、測定する着色顔料を15部配合して攪拌混合し、塗装に適正な粘度に希釈して固形分約25%の有機溶剤型塗料を調製する。JIS K5101 4隠ぺい率試験紙法に記載された隠ぺい率試験紙を平らなガラス板の上に水平に固定し、その上にドクターブレードを使用して、硬化塗膜厚が30μmとなるように塗装し、室温約20℃の実験室に15分間放置し、その後に熱風乾燥機を使用して140℃で30分間加熱して硬化せしめた塗膜の白素地部分及び黒素地部分の日射反射率として、積分球ISR−3100を搭載した分光光度計UV−3100PC(共に島津製作所社製)を使用して入射角度を8°としたときのJIS K5602に定義された反射率を測定した。
実施例1〜4,比較例1〜2
(塗料組成物の調製)
製造例1で得た水酸基含有アクリル樹脂溶液を固形分として75部、ユーバン28−60(商品名、ブチルエーテル化メラミン樹脂、三井化学社製)を固形分として25部からなるビヒクル形成成分である樹脂固形分100部に対して、光輝性顔料及び着色顔料を表1に示す比率で配合して攪拌混合し、さらに有機溶剤を加えて希釈して、固形分約25%の有機溶剤型塗料を調製し、実施例及び比較例に使用する塗料組成物1〜6を調製した。
【0046】
【表1】

【0047】
(試験板の作成)
基材の調製
脱脂及びりん酸亜鉛処理した鋼板(JISG3141、大きさ400×300×0.8mm)にカチオン電着塗料「エレクロン9400HB」(商品名:関西ペイント株式会社製、エポキシ樹脂ポリアミン系カチオン樹脂に硬化剤としてブロックポリイソシアネ−ト化合物を使用したもの)を硬化塗膜に基づいて膜厚20μmになるように電着塗装し、170℃で20分加熱して架橋硬化させて電着塗膜を得た。
【0048】
得られた電着塗面に、中塗塗料「ル−ガベ−ク中塗りグレ−」(商品名:関西ペイント株式会社製、ポリエステル樹脂・メラミン樹脂系、有機溶剤型)をエアスプレーにて硬化塗膜に基づいて膜厚30μmになるように塗装し、140℃で30分加熱して架橋硬化させて、中塗塗膜を形成した塗板を基材を調製した。
(2)塗料組成物1〜6及びクリヤー塗料の塗装
上記基材に、塗料組成物1〜6をエアスプレーを用いて、硬化塗膜として20μmとなるように塗装し、塗装後、室温約20℃の実験室に約15分静置し、その後にクリヤー塗料「ル−ガベ−ククリヤ−」(商品名:関西ペイント製、アクリル樹脂・アミノ樹脂系、有機溶剤型)をミニベル型回転式静電塗装機を用いて、ブ−ス温度25℃、湿度75%の条件で硬化塗膜として、30μmとなるように塗装した。塗装後、室温にて15分間放置した後に、熱風循環式乾燥炉内を使用して、140℃で30分間加熱し、複層塗膜を同時に乾燥硬化せしめて試験板を得た。
(評価)
上記試験板の意匠性を以下の要領にて評価し、結果を表1に示した。
(1)明度の測定
X−Rite社製のMA−68II(商品名、多角度分光光度計)を使用して明度の測定を行った。正反射光に対して45°で受光した分光反射率に基づいて計算したL*a*b*表色系における明度L*を表1に示した。
(2)目視による評価
作成した塗板を、人工太陽灯(セリック社製、色温度6500K)で照明し、試験板の照明に対する角度を変えて観察して、ハイライト(正反射光近傍)からシェード(斜め方向)への色相変化を以下の基準に沿って目視にて評価した。評価は、色彩開発に3年以上従事するデザイナー2名と技術者3名の計5名が行ない、平均点を採用した。
3:大きな色相変化がある。
2:小さな色相変化がある。
1:色相変化がほとんどない。
(3)遮熱性評価
1辺が40cmのダンボール箱上部に70mm四方の正方形の穴をあけたものを、室温約20℃の実験室に30分間静置した。意匠性評価に使用した試験板を、75mm×75mmの大きさに切断して、裏に熱電対のセンサーをセロハンテープで固定した塗板を、
前記穴をふさぐように静置した。40cmの距離から、HALOGEN LIGHT(LPL1500)を照射し、15分後の塗板温度を測定し、結果を表1に示した。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の塗料組成物及び塗膜形成方法は、各種工業製品、特に自動車外板に適用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチカラー光輝性顔料及び赤外線を反射及び/又は透過する着色顔料を含む塗料組成物。
【請求項2】
マルチカラー光輝性顔料が多層構造の鱗片状光干渉性顔料、コレステリック液晶ポリマー、金属酸化物で被覆された鱗片状シリカ顔料から選択されたものである請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項3】
赤外線を反射及び/又は透過する着色顔料が、ペリレンである請求項1又は2に記載の塗料組成物。
【請求項4】
塗装して得られる塗膜のL*a*b*表色系における明度L*が0〜40の範囲内である請求項1〜3のいずれか1項に記載の塗料組成物。
【請求項5】
基材に、請求項1〜4のいずれか1項に記載されたメタリック塗料組成物を塗装し、さらにクリヤー塗料を塗装する塗膜形成方法。

【公開番号】特開2011−225652(P2011−225652A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−94575(P2010−94575)
【出願日】平成22年4月16日(2010.4.16)
【出願人】(000001409)関西ペイント株式会社 (815)
【Fターム(参考)】