説明

塗料組成物及び塗膜形成方法

【課題】塗装工程における加熱温度の低温化及び加熱時間の短縮が可能であり、さらに耐擦り傷性及び耐候性に優れる塗膜を得ることができる塗料組成物を提供する。
【解決手段】カプロラクトン変性ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとポリイソシアネート化合物とを反応してなり、300〜3,800の範囲のイソシアネート当量を有するラジカル重合性不飽和基含有化合物(A)、及び(A)成分以外のラジカル重合性不飽和基含有樹脂(B)を含有する塗料組成物及び塗膜形成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗膜硬化にかかる時間短縮、塗装設備等の縮小化、及び焼き付け時間短縮に伴うCO削減等の環境対応を備えた、耐擦り傷性、耐候性、及び耐酸性に優れる塗料組成物及び塗膜形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
二輪車、自動車、コンテナ等の車両の車体には、電着塗膜、中塗り塗膜、ベース塗膜等が必要に応じて形成された後に、クリヤ塗膜が形成される。クリヤ塗膜は、一般的に、水酸基含有アクリル樹脂等の熱硬化性官能基含有樹脂及びメラミン樹脂等の架橋剤を含有する熱硬化性塗料組成物、酸基含有樹脂及びエポキシ基含有樹脂を含有する熱硬化性塗料組成物等を塗装後、加熱硬化する塗膜形成方法により形成される。この塗膜形成方法によれば、付着性、塗膜硬度等の塗膜性能に優れた塗膜を形成することができる。
【0003】
近年、塗装工程においては省エネルギー化及び生産性向上が要求されている。それに伴って、低温での硬化が可能な塗料組成物、及び短時間での硬化が可能な塗料組成物が期待されている。しかし、上記熱硬化性塗料組成物は、一般的な塗装工程において、通常、140℃の加熱温度、20〜40分間の加熱時間が必要であり、省エネルギー化及び生産性向上の要求を満足するものではない。
【0004】
特許文献1には、加熱時間を短縮する発明として、紫外線硬化可能な多官能(メタ)アクリレート、多価アルコールモノ(メタ)アクリレート重合体、及びポリイソシアネート化合物を含有する紫外線硬化性且つ熱硬化性の塗料組成物の発明が開示されている。さらに、この塗料組成物を被塗物に塗装後、紫外線照射し、次いで30分間加熱硬化して塗膜を形成する方法が開示されている。しかしながら、この方法では、加熱時間の短縮ができなかった。また、耐擦り傷性の点で満足するものではなかった。
【0005】
他に、特許文献2には、(メタ)アクリロイル基と遊離イソシアネート基とを含むウレタン(メタ)アクリレート、場合により前記ウレタン(メタ)アクリレート以外のポリイソシアネート、遊離基重合を開始する紫外線開始剤、及びイソシアネート反応性基を含む化合物を含有する塗料組成物の発明が開示されている。さらに、この塗料組成物を支持体に塗布し、紫外線照射による重合と、次いでNCO基とイソシアネート反応性基の反応により塗料を硬化させることを特徴とする塗膜形成方法が開示されている。
【0006】
この方法は、耐擦り傷性、耐候性の点で満足するものではなかった。
【0007】
他に、特許文献3には、被塗物上にベース塗料組成物を塗装してベース塗膜を形成し、次にウェットオンウェット工程でクリヤ塗料組成物を塗装してクリヤ塗膜を形成し、同時に焼付け又は硬化する前に、クリヤ塗膜に高エネルギー放射線を照射する複層塗膜形成方法が開示されている。
【0008】
この複層塗膜形成方法におけるクリヤ塗料組成物は熱的に硬化する成分及びラジカル重合性二重結合を含む成分を含有し、かつ熱的に硬化する成分には実質的にラジカル重合性二重結合を含まないことを特徴としている。この方法は、クリヤ塗料組成物が簡単な組成であり、既知成分から配合できる利点がある。しかしながら加熱温度を低下することができなかった。さらに、耐擦り傷性の点で満足するものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭63−113085号公報
【特許文献2】特開平11−263939号公報
【特許文献3】特表2001−524868号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、塗膜硬化にかかる加熱温度の低温化、塗装設備等の縮小化、焼き付け時間短縮化に伴うCO削減等の環境対応を備えた、耐擦り傷性、耐候性、耐酸性に優れる塗料組成物及び塗膜形成方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、塗料組成物に上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、特定のラジカル重合性不飽和基含有化合物(A)、及び(A)成分以外のラジカル重合性不飽和基含有樹脂(B)を塗料組成物に配合し、当該塗料組成物を用いた塗膜形成方法を行うことによって、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
即ち、本発明は、以下の項に関する:
項1.(A)カプロラクトン変性ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとポリイソシアネート化合物とを反応してなり、かつ300〜3,800の範囲のイソシアネート当量を有するラジカル重合性不飽和基含有化合物、及び
(B)重量平均分子量5,000以上のラジカル重合性不飽和基含有樹脂((A)成分に相当するものを除く)
を含有する塗料組成物。
【0013】
項2.(B)成分がラジカル重合性不飽和基含有アクリル樹脂である項1に記載の塗料組成物。
【0014】
項3.さらに(C)光重合開始剤を含有する項1又は2に記載の塗料組成物。
【0015】
項4.さらに(D)イソシアネート化合物((A)成分に相当するものを除く)を含有する項1〜3のいずれか1項に記載の塗料組成物。
【0016】
項5.さらに(E)重量平均分子量5,000未満のラジカル重合性不飽和基含有化合物((A)成分に相当するものを除く)を含有する項1〜4のいずれか1項に記載の塗料組成物。
【0017】
項6.被塗物上に、活性水素基を含有する樹脂及び着色顔料を含有するベース塗料組成物を塗装してベース塗膜を形成し、次いでベース塗膜上に、項1〜5のいずれか1項に記載の塗料組成物を塗装して塗膜を形成し、さらに活性エネルギー線の照射及び加熱を行う塗膜形成方法。
【0018】
項7.項6に記載の塗膜形成方法を塗装して得られる塗装物品。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、塗膜硬化にかかる加熱温度の低温化、塗装設備等の縮小化、焼き付け時間短縮化に伴うCO削減等の環境対応が可能である。さらに、耐擦り傷性、耐候性及び耐酸性に優れる塗装物品を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、(A)カプロラクトン変性ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとポリイソシアネート化合物とを反応してなり、300〜3,800の範囲のイソシアネート当量を有するラジカル重合性不飽和基含有化合物[以下、単に「化合物(A)」又は「(A)成分」と略すことがある。]、及び(B)ラジカル重合性不飽和基含有樹脂であって、ラジカル重合性不飽和基含有化合物(A)に相当するもの以外のもの[以下、単に「(B)成分」と略すことがある]を含有する塗料組成物に関する。
【0021】
さらに、被塗物上に、ベース塗料組成物を塗装してベース塗膜を形成し、次いで該塗料組成物を塗装して塗膜を形成し、次いで活性エネルギー線の照射及び加熱を行う塗膜形成方法に関する。以下、本発明の塗料組成物及び塗膜形成方法について詳細に説明する。
【0022】
[塗料組成物]
ラジカル重合性不飽和基含有化合物(A)
ラジカル重合性不飽和基含有化合物(A)は、カプロラクトン変性ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(a1)とポリイソシアネート化合物(a2)とを反応してなり、イソシアネート当量が300〜3,800の範囲にある化合物である。
【0023】
この化合物(A)は、活性エネルギー線の照射による硬化性に優れ、かつ低温(具体的には、常温〜100℃)での硬化性に優れる。このことにより塗装工程における加熱温度の低温化及び加熱時間の短縮化が可能になる。また、この化合物(A)を含む塗料組成物から得られる塗膜は、耐擦り傷性及び耐候性に優れる。
【0024】
カプロラクトン変性ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(a1)
本発明において、カプロラクトン変性ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(a1)は、以下の一般式で表わされる化合物を示す。
【0025】
【化1】

【0026】
(式中、Rは水素原子又はメチル基を示し、Rは炭素数2〜6のアルキレン基を示し、mは3〜8の整数を示し、nは1〜5の整数を示す)
かかるカプロラクトン変性ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(a1)としては、例えば、以下の一般式(I)で表される化合物が挙げられる:
【0027】
【化2】

【0028】
(式(I)中、Rは水素原子又はメチル基を示し、Rは炭素数2〜6のアルキレン基を示し、nは1〜5である)。
【0029】
カプロラクトン変性ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートは、具体的には、「プラクセルFA−1」、「プラクセルFA−2」、「プラクセルFA−2D」、「プラクセルFA−3」、「プラクセルFA−4」、「プラクセルFA−5」、「プラクセルFM−1」、「プラクセルFM−2」、「プラクセルFM−2D」、「プラクセルFM−3」、「プラクセルFM−4」、「プラクセルFM−5」(いずれもダイセル化学社製、商品名)等を挙げることができる。なかでも、活性エネルギー線硬化性の点から、一般式(I)において、Rが水素原子であり、Rがエチレン基であるカプロラクトン変性ヒドロキシエチルアクリレートが好ましい。
【0030】
ポリイソシアネート化合物(a2)
一方、ポリイソシアネート化合物(a2)は、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物である。例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート系化合物及びこれらのポリイソシアネートのビューレットタイプ付加物又はイソシアヌレート環付加物;イソホロンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチルシクロヘキサン−2,4−ジイソシアネート、メチルシクロヘキサン−2,6−ジイソシアネート、1,3−ジ(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4−ジ(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,2−シクロヘキサンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート系化合物及びこれらのポリイソシアネートのビューレットタイプ付加物及びイソシアヌレート環付加物;キシリレンジイソシアネート、メタキシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、1,4−ナフタレンジイソシアネート、4,4’−トルイジンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、ビス(4−イソシアナトフェニル)スルホン、イソプロピリデンビス(4−フェニルイソシアネート)等の芳香族ジイソシアネート化合物及びこれらのポリイソシアネートのビューレットタイプ付加物又はイソシアヌレート環付加物;トリフェニルメタン−4,4’,4’’−トリイソシアネート、1,3,5−トリイソシアナトベンゼン、2,4,6−トリイソシアナトトルエン、4,4’−ジメチルジフェニルメタン−2,2’,5,5’−テトライソシアネート等の1分子中に3個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート系化合物及びこれらのポリイソシアネートのビューレットタイプ付加物又はイソシアヌレート環付加物;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、ジメチロールプロピオン酸、ポリアルキレングリコール、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール等のポリオールの水酸基にイソシアネート基が過剰量となる比率でポリイソシアネート化合物を反応させてなるウレタン化付加物及びこれらのポリイソシアネートのビューレットタイプ付加物又はイソシアヌレート環付加物等が挙げられる。これらは1種又は2種以上の混合物として使用できる。なかでも、塗膜の耐候性の点から、脂肪族ポリイソシアネート系化合物のイソシアヌレート環付加物が好ましく、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート環付加物が特に好ましい。
【0031】
前記カプロラクトン変性ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(a1)とポリイソシアネート化合物(a2)との反応は、ヒドロキシ基含有化合物とポリイソシアネート化合物とを反応させる際の、公知の方法によって行うことができる。
【0032】
前記カプロラクトン変性ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(a1)及びポリイソシアネート化合物(a2)の配合割合は、得られる(A)成分のイソシアネート当量が上記範囲内となれば特に限定されない。
【0033】
上記反応は、通常有機溶液中で行うことができる。有機溶剤としては、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソブチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤等が挙げられる。これらは1種又は2種以上の混合物として使用できる。反応温度は、常温〜100℃であるのが好ましく、反応時間は1〜10時間であるのが好ましい。
【0034】
上記反応においては、必要に応じてジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジエチルヘキソエート、ジブチルスズサルファイト等の触媒を使用してもよい。触媒の添加量は、反応原料の総量100質量部に対して0.01〜1質量部であるのが好ましく、0.1〜0.5質量部であるのがより好ましい。また、ハイドロキノンモノメチルエーテル等の重合禁止剤を使用してもよい。重合禁止剤の添加量は、反応原料の総量100質量部に対して0.01〜1質量部であるのが好ましい。
【0035】
ラジカル重合性不飽和基含有化合物(A)は、イソシアネート基を有するため、カプロラクトン変性ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとポリイソシアネート化合物との反応における両者の混合比は、通常、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基がカプロラクトン変性ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのヒドロキシル基に対して当量比で過剰(イソシアネート基/ヒドロキシキル基>1.0)となる混合比である。そして、混合比を調節することでラジカル重合性不飽和基含有化合物(A)のイソシアネート当量を調節することができる。
【0036】
上記化合物(A)は300〜3,800の範囲のイソシアネート当量を有する。化合物(A)が上記範囲のイソシアネート基を有することにより、本発明の塗料組成物は低温での硬化性に優れる。化合物(A)のイソシアネート当量は、塗膜の耐擦り傷性の点から500〜2,500の範囲が好ましい。
【0037】
ここで本明細書においてイソシアネート当量は、ジブチルアミンを用いた逆滴定により求められるイソシアネート当量である。逆滴定は、試料に過剰のジブチルアミンを加えて反応させ、滴定指示薬としてブロモフェノールブルーを用い残余のジブチルアミンを塩酸水溶液で滴定することにより行う。
【0038】
さらに化合物(A)は、不飽和基当量が300〜2,000であることが好ましい。より好ましくは500〜1,000である。不飽和基当量がこれら範囲であると、より耐擦り傷性及び耐候性に優れる塗膜を得ることができる。
【0039】
ここで本明細書において不飽和基当量は、ラジカル重合性不飽和基にドデシルメルカプタンを付加し、残余のドデシルメルカプタンをヨウ素溶液で逆滴定することにより求められる。
【0040】
ここで化合物(A)の分子量は特に限定されない。好ましくは重量平均分子量が500〜2,000であり、より好ましくは800〜1,500である。重量平均分子量がこれら範囲であることは、取扱い易い塗料粘度にできる点で意義がある。
【0041】
本発明において重量平均分子量は、溶媒としてテトラヒドロフランを使用し、
ゲルパーミエーションクロマトグラフ装置として、「HLC−8120GPC」(商品名、東ソー社製)を使用し、カラムとして、「TSKgel G4000HXL」を1本、「TSKgel G3000HXL」を2本、及び「TSKgel G2000HXL」を1本(商品名、いずれも東ソー社製)の計4本を使用し、検出器として、示差屈折率計を使用し、移動相:テトラヒドロフラン、測定温度:40℃、流速:1mL/minの条件下で行ったものである。
【0042】
ラジカル重合性不飽和基含有樹脂(B)
次いで、本発明において用いられるラジカル重合性不飽和基含有樹脂(B)は、ラジカル重合性不飽和基含有化合物(A)以外の化合物であって、分子中にラジカル重合性不飽和二重結合を有する樹脂である。ラジカル重合性不飽和基とは、ラジカル重合しうる不飽和基を意味する。かかる重合性不飽和基としては、例えば、ビニル基、(メタ)アクリロイル基等が挙げられる。
【0043】
ラジカル重合性不飽和基含有樹脂(B)は、例えば、ラジカル重合性不飽和基含有ポリエステル樹脂、ラジカル重合性不飽和基含有エポキシ樹脂、ラジカル重合性不飽和基含有エポキシ・ポリエステル樹脂、ラジカル重合性不飽和基含有アクリル樹脂、ラジカル重合性不飽和基含有ポリウレタン樹脂、ラジカル重合性不飽和基含有ポリアミド樹脂等が挙げられる。
【0044】
ラジカル重合性不飽和基含有樹脂(B)の重量平均分子量は、5,000以上、好ましくは8,000〜100,000、さらに好ましくは10,000〜30,000の範囲が更に好ましい。ラジカル重合性不飽和基含有樹脂(B)の不飽和基当量としては、耐擦傷性の点から300〜5,000の範囲が好ましく、350〜2,000の範囲が更に好ましい。
【0045】
ラジカル重合性不飽和基含有樹脂(B)は、水酸基を有していることが好ましい。ラジカル重合性不飽和基含有樹脂(B)が水酸基を有することにより、該水酸基がラジカル重合性不飽和基含有化合物(A)の有するイソシアネート基と反応し、より硬化性に優れる塗膜を得ることができる。水酸基価は特に限定されないが、30〜300mgKOH/gの範囲が好ましく、40〜250mgKOH/gの範囲がより好ましい。
【0046】
ラジカル重合性不飽和基含有樹脂(B)としては、耐候性の点からラジカル重合性不飽和基含有アクリル樹脂が好ましい。
【0047】
ラジカル重合性不飽和基含有アクリル樹脂は、例えば、1)エポキシ基含有アクリル樹脂にカルボキシル基含有不飽和化合物を付加反応させる方法、2)カルボキシル基含有アクリル樹脂にエポキシ基含有不飽和化合物を付加反応させる方法、3)水酸基含有アクリル樹脂にイソシアネート基含有不飽和化合物を付加反応させる方法、4)イソシアネート基含有アクリル樹脂に水酸基含有不飽和化合物を付加反応させる方法、等で得られる。
【0048】
この際に用いるエポキシ基含有アクリル樹脂、カルボキシル基含有アクリル樹脂、水酸基含有アクリル樹脂等の官能基含有アクリル樹脂と、カルボキシル基含有不飽和化合物、エポキシ基含有不飽和化合物、イソシアネート基含有不飽和化合物、水酸基含有不飽和化合物等のラジカル重合性不飽和化合物との付加反応は、通常、有機溶剤中、40〜160℃で、必要に応じて触媒を用いて行うことができる。なお、官能基含有アクリル樹脂を溶融させて付加反応を行うこともできるが、製造の容易さから有機溶剤中で反応を行うことが好ましい。
【0049】
続いて、上記付加反応に用いるカルボキシル基含有不飽和化合物、エポキシ基含有不飽和化合物、イソシアネート基含有不飽和化合物、及び水酸基含有不飽和化合物について説明する。
【0050】
カルボキシル基含有不飽和化合物(以下、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマーと記載することもある)としては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸等のモノカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、塩素化マレイン酸等のα,β-不飽和ジカルボン酸又はそれらのハーフエステル等が挙げられる。
【0051】
エポキシ基含有不飽和化合物は(以下、エポキシ基含有重合性不飽和モノマーと記載することもある)、1分子中にエポキシ基とラジカル重合性不飽和基とをそれぞれ1つ有する化合物が代表的であり、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸β-メチルグリシジル、グリシジルビニルエーテル、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有単量体化合物;(メタ)アクリル酸(2-オキソ-1,3-オキソラン)メチル等の(2-オキソ-1,3-オキソラン)基含有ビニル単量体化合物;(メタ)アクリル酸3,4-エポキシシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸3,4-エポキシシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸3,4-エポキシシクロヘキシルエチル等の脂環式エポキシ基含有ビニル単量体等が挙げられる。
【0052】
イソシアネート基含有不飽和化合物(以下、イソシアネート基含有重合性不飽和モノマーと記載することもある)としては、イソシアネート基とラジカル重合性不飽和基とをそれぞれ1つ有する化合物が代表的であり、例えば、イソシアネートメチル(メタ)アクリレート、イソシアネートエチル(メタ)アクリレート、イソシアネートプロピル(メタ)アクリレート、イソシアネートオクチル(メタ)アクリレート、p−メタクリロキシ−α,α’−ジメチルベンジルイソシアネート、m−アクリロキシ−α,α’−ジメチルベンジルイソシアネート、m−又はp−イソプロペニル−α,α’−ジメチルベンジルイソシアネート等が挙げられる。また、ポリイソシアネート化合物のイソシアネートの一部を水酸基含有不飽和化合物と反応させたものが挙げられる。
【0053】
水酸基含有不飽和化合物(以下、水酸基含有重合性不飽和モノマーと記載することもある)としては、水酸基とラジカル重合性不飽和基とをそれぞれ1つ有する化合物が代表的であり、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピングリコールモノ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリレート化合物とε-カプロラクトン系化合物との開環反応物等が挙げられる。また、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0054】
次に、前記したカルボキシル基含有アクリル樹脂、エポキシ基含有アクリル樹脂、水酸基含有アクリル樹脂等の官能基含有アクリル樹脂について説明する。
【0055】
前記官能基含有アクリル樹脂を調製するには各種の方法が適用できるが、前記したカルボキシル基含有重合性不飽和モノマー、エポキシ基含有重合性不飽和モノマー、イソシアネート基含有重合性不飽和モノマー、及び水酸基含有重合性不飽和モノマーのうちから所望とする官能基含有アクリル樹脂を得るために選択された重合性不飽和モノマーと、必要に応じてその他の重合性不飽和モノマーとを有機溶剤中で共重合反応する方法が、最も簡便であり好ましい。
【0056】
その際に使用する重合開始剤及び有機溶剤としては、各種のものが使用できる。なお、上記エポキシ基含有アクリル樹脂の調製に際してはカルボキシル基含有重合性不飽和モノマー、イソシアネート基含有重合性不飽和モノマー、及び水酸基含有重合性不飽和モノマーが、カルボキシル基含有アクリル樹脂の調製に際してはエポキシ基含有重合性不飽和モノマー、イソシアネート基含有重合性不飽和モノマー、及び水酸基含有重合性不飽和モノマーが、水酸基含有アクリル樹脂の調製に際してはカルボキシル基含有重合性不飽和モノマー、エポキシ基含有重合性不飽和モノマー、及びイソシアネート基含有重合性不飽和モノマーが、イソシアネート基含有アクリル樹脂の調製に際してはカルボキシル基含有重合性不飽和モノマー、エポキシ基含有重合性不飽和モノマー、及び水酸基含有重合性不飽和モノマーが、いずれもその他の重合性不飽和モノマーとして取り扱われる。
【0057】
ただし、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマーをその他のビニル単量体として用いる際には、アクリル樹脂調製中に増粘して反応が困難になるため、その使用量は少量に限定される。
【0058】
前記、その他の重合性不飽和モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2-エチルオクチル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;
ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルカルビトール;
イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニロキシエチル(メタ)アクリレート等のその他の(メタ)アクリル酸エステル;
γ-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン等の加水分解性シリル基含有重合性不飽和モノマーフッ化ビニル、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ブロモトリフルオロエチレン、ペンタフルオロプロピレン、ヘキサフルオロプロピレン等のフッ素含有α-オレフィン系化合物;
トリフルオロメチルトリフルオロビニルエーテル、ペンタフルオロエチルトリフルオロビニルエーテル、ヘプタフルオロプロピルトリフルオロビニルエーテル等のパーフルオロアルキル・パーフルオロビニルエーテル又は(パー)フルオロアルキルビニルエーテル(ただし、アルキル基の炭素数は1〜18である。)等のような含フッ素ビニル系重合性不飽和モノマー;
フマル酸、マレイン酸、イタコン酸等で代表されるような種々の多価カルボキシル基含有重合性不飽和モノマーと、炭素数が1〜18なるモノアルキルアルコールとのモノ-ないしはジエステル系化合物;スチレン、ビニルトルエン、α-メチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン等の芳香族ビニル化合物;
(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-n-プロピル(メタ)アクリルアミド、N-iso-プロピル(メタ)アクリルアミド、N-n-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-iso-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-tert-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-アミル(メタ)アクリルアミド、N-(メタ)アクリルアミド、N-ヘキシル(メタ)アクリルアミド、N-ヘプチル(メタ)アクリルアミド、N-2-エチルヘキシル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-n-プロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-iso-プロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-n-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-iso-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-tert-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-アミロキシメチルアクリルアミド、N-ヘキシロキシ(メタ)アクリルアミド、N-ヘプチロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-オクチロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-2-エチル-ヘキシロキシメチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド等のアミノ基含有アミド系重合性不飽和モノマー;
ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸ジアルキルアミノアルキル系化合物;tert-ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、tert-ブチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、アジリジニルエチル(メタ)アクリレート、ピロリジニルエチル(メタ)アクリレート、ピペリジニルエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルモルフォリン、N-ビニル-2-ピロリドン、N-ビニルカプロラクタム、N-ビニルオキサゾリン、(メタ)アクリロニトリル等の含窒素重合性不飽和モノマー;
酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、炭素数9の分岐状(分枝状)脂肪族カルボン酸ビニル、炭素数10の分岐状(分枝状)脂肪族カルボン酸ビニル、炭素数11の分岐状(分枝状)脂肪族カルボン酸ビニル、ステアリン酸ビニル等の脂肪族カルボン酸ビニル;
シクロヘキサンカルボン酸ビニル、メチルシクロヘキサンカルボン酸ビニル、安息香酸ビニル、p-tert-ブチル安息香酸ビニル等の環状構造を有するカルボン酸のビニルエステル系化合物;
エチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシn-ブチルビニルエーテル、ヒドロキシイソブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ラウリルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル系化合物;
塩化ビニル、塩化ビニリデン等の前記したフルオロオレフィン系化合物以外のハロゲン化オレフィン系化合物;エチレン、プロピレン、ブテン-1等のα-オレフィン系化合物等が挙げられる。
【0059】
前記カルボキシル基含有アクリル樹脂、エポキシ基含有アクリル樹脂、水酸基含有アクリル樹脂、イソシアネート基含有アクリル樹脂等の官能基含有アクリル樹脂の調製に使用するラジカル重合開始剤としては、例えば、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス-メチルブチロニトリル、2,2’-アゾビス-2,4-ジメチルバレロニトリル、1,1’-アゾビス-シクロヘキサンカルボニトリル、ジメチル-2,2’-アゾビスイソブチレート、4,4’-アゾビス-4-シアノ吉草酸、2,2’-アゾビス-(2-アミジノプロペン)2塩酸塩、2-tert-ブチルアゾ-2-シアノプロパン、2,2’-アゾビス(2-メチル-プロピオンアミド)2水和物、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロペン]、2,2’-アゾビス(2,2,4-トリメチルペンタン)等のアゾ化合物;過酸化ベンゾイル、メチルエチルケトンパーオキサイド、キュメンハイドロパーオキサイド、カリウムパーサルフェート、tert-ブチルパーオキシネオデカノエート、tert-ブチルパーオキシピバレート、tert-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、tert-ブチルパーオキシイソブチレート、1,1-ビス-tert-ブチルパーオキシ-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、tert-ブチルパーオキシーラウレート、tert-ブチルパーオキシイソフタレート、tert-ブチルパーオキシアセテート、tert-ブチルパーオキシベンゾエート、ジクミルパーオキシド、ジ-tert-ブチルパーオキシド等のケトンパーオキシド系化合物;パーオキシケタール系化合物;ハイドロパーオキシド系化合物;ジアルキルパーオキシド系化合物;ジアシルパーオキシド系化合物;パーオキシエステル系化合物;パーオキシジカーボネート系化合物;過酸化水素等が挙げられる。
【0060】
また、前記官能基含有アクリル樹脂の調製に際して使用する有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、sec-ブタノール、tert-ブタノール、n-ペンタノール、イソペンタノール等のアルキルアルコール系溶剤;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶剤;エクソンアロマティックナフサNo.2(米国エクソン社製)等の芳香族炭化水素を含有する混合炭化水素系溶剤;n-ペンタン、n-ヘキサン、n-オクタン等の脂肪族炭化水素系溶剤;アイソパーC、アイソパーE、エクソールDSP100/140,エクソールD30(いずれも米国エクソン社製)、IPソルベント1016(出光石油化学社製)等の脂肪族炭化水素を含有する混合炭化水素系溶剤;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素系溶剤;
テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジイソプロピルエーテル、ジ-n-ブチルエーテル等のエーテル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、酢酸n-アミル、酢酸イソアミル、酢酸ヘキシル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル等のエステル系溶剤等が挙げられる。これら有機溶剤には少量の水を併用することもできる。
【0061】
さらに、前記アクリル樹脂の調製に際しては、必要に応じて連鎖移動剤を用いることもできる。連鎖移動剤としては、例えば、ドデシルメルカプタン、ラウリルメルカプタン、チオグリコール酸エステル、メルカプトエタノール、α-メチルスチレンダイマー等が挙げられる。
【0062】
ラジカル重合性不飽和基含有アクリル樹脂としては、硬化性の点からエポキシ基含有アクリル樹脂にカルボキシル基含有不飽和化合物を付加反応せしめて得られるラジカル重合性不飽和基含有アクリル樹脂、カルボキシル基含有アクリル樹脂にエポキシ基含有不飽和化合物を付加反応せしめて得られるラジカル重合性不飽和基含有アクリル樹脂が好ましい。
【0063】
エポキシ基含有アクリル樹脂にカルボキシル基含有不飽和化合物を付加反応せしめて得られるラジカル重合性不飽和基含有アクリル樹脂、及びカルボキシル基含有アクリル樹脂にエポキシ基含有不飽和化合物を付加反応せしめて得られるラジカル重合性不飽和基含有アクリル樹脂は、エポキシ基とカルボシキル基とが付加反応した際に水酸基を生成し、該水酸基がラジカル重合性不飽和基含有化合物(A)のイソシアネート基と反応することから硬化性に優れるものと推測される。
【0064】
光重合開始剤(C)
本発明の塗料組成物は、さらに光重合開始剤(C)を含有することができる。
光重合開始剤(C)としては、活性エネルギー線を吸収してラジカルを発生する開始剤であれば特に限定されることなく使用できる。
【0065】
前記光重合開始剤としては、例えばベンジル、ジアセチル等のα−ジケトン類;ベンゾイン等のアシロイン類;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のアシロインエーテル類;チオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、チオキサントン−4−スルホン酸等のチオキサントン類;ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;ミヒラーケトン類;アセトフェノン、2−(4−トルエンスルホニルオキシ)−2−フェニルアセトフェノン、p−ジメチルアミノアセトフェノン、α,α’−ジメトキシアセトキシベンゾフェノン、2,2’−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、p−メトキシアセトフェノン、2−メチル〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノ−1−プロパノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、α−イソヒドロキシイソブチルフェノン、α,α’−ジクロル−4−フェノキシアセトフェノン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン等のアセトフェノン類;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(アシル)フォスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキサイド類;アントラキノン、1,4−ナフトキノン等のキノン類;フェナシルクロライド、トリハロメチルフェニルスルホン、トリス(トリハロメチル)−s−トリアジン等のハロゲン化合物;ジ−t−ブチルパーオキサイド等の過酸化物等が挙げられる。これらは1種又は2種以上の混合物として使用できる。
【0066】
光重合開始剤(C)の市販品としては、例えば、イルガキュア(IRGACURE)−184、イルガキュア−261、イルガキュア−500、イルガキュア−651、イルガキュア−907、イルガキュア−CGI−1700(チバ スペシャルティ ケミカルズ社製、商品名)、ダロキュア(Darocur)−1173、ダロキュア−1116、ダロキュア−2959、ダロキュア−1664、ダロキュア−4043(メルクジャパン社製、商品名)、カヤキュア(KAYACURE)−MBP、カヤキュア−DETX−S、カヤキュア−DMBI、カヤキュア−EPA、カヤキュア−OA(日本化薬社製、商品名)、ビキュア(VICURE)−10、ビキュアー55〔ストウファー社(STAUFFER Co., LTD.)製、商品名〕、トリゴナル(TRIGONAL)P1〔アクゾ社(AKZO Co., LTD.)製、商品名〕、サンドレイ(SANDORAY)1000〔サンドズ社(SANDOZ Co., LTD.)製、商品名〕、ディープ(DEAP)〔アプジョン社(APJOHN Co., LTD.)製、商品名〕、カンタキュア(QUANTACURE)−PDO、カンタキュア−ITX、カンタキュア−EPD〔ウォードブレキンソプ社(WARD BLEKINSOP Co., LTD.)製、商品名〕等を挙げることができる。
【0067】
イソシアネート化合物(D)
本発明の塗料組成物は、さらに化合物(A)以外のイソシアネート化合物(D)を含有することができる。イソシアネート化合物(D)は、分子中にイソシアネート基を有する化合物であって、上記化合物(A)の説明において例示したポリイソシアネート化合物が挙げられる。なかでも、塗膜の耐候性の点から脂肪族ポリイソシアネート類のイソシアヌレート環付加物が好ましく、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート環付加物が特に好ましい。
【0068】
ラジカル重合性不飽和基含有化合物(E)
本発明の塗料組成物はさらに、(E)重量平均分子量5,000未満のラジカル重合性不飽和基含有化合物であって、化合物(A)以外のもの(本明細書中において、単に、ラジカル重合性不飽和基含有化合物(E)と記載することもある)を含有することができる。ラジカル重合性不飽和基含有化合物(E)は、単官能ラジカル重合性不飽和基含有化合物、多官能ラジカル重合性不飽和基含有化合物が挙げられる。
【0069】
単官能ラジカル重合性不飽和基含有化合物としては、例えば、一価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化物等が挙げられる。具体的には、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ネオペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、N−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド等が挙げられる。また、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレート;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、2−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、2−カルボキシプロピル(メタ)アクリレート、5−カルボキシペンチル(メタ)アクリレート等のカルボキシル基含有(メタ)アクリレート;グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等のグリシジル基含有ラジカル重合性不飽和基含有化合物;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、α−クロルスチレン等のビニル芳香族化合物;N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の含窒素アルキル(メタ)アクリレート;アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド等の重合性アミド類等が挙げられる。
【0070】
多官能ラジカル重合性不飽和基含有化合物としては、例えば、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化物等が挙げられる。具体的には、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAエチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリレート化合物;グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンプロピレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ε−カプロラクトン変性トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート等のトリ(メタ)アクリレート化合物;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等のテトラ(メタ)アクリレート化合物;その他、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0071】
ラジカル重合性不飽和基含有化合物(E)は、塗膜の耐擦り傷性の点から、3官能以上のラジカル重合性不飽和基含有化合物を含むことが好ましい。
【0072】
ラジカル重合性不飽和基含有化合物(E)は、低温硬化性の点から水酸基を有するラジカル重合性不飽和基含有化合物を含むことが好ましい。
【0073】
ラジカル重合性不飽和基含有化合物(E)は、重量平均分子量5,000未満、好ましくは500〜3,000、さらに好ましくは700〜2,500である。また、ラジカル重合性不飽和基含有化合物(E)は、低温硬化性及び塗膜の耐擦り傷性の点から、不飽和基当量が100〜1,500であることが好ましい。より好ましくは150〜1,000である。
【0074】
本発明の塗料組成物における上記各成分の含有量は、特に限定されないが、次に述べる範囲が下記塗膜性能の点から好ましい。
【0075】
化合物(A)の含有量は、好ましくは、本発明の塗料組成物の不揮発分100質量部に対して、1〜70質量部であり、より好ましくは10〜55質量部である。これら範囲は、耐擦り傷性及び耐候性の点で意義がある。
【0076】
ラジカル重合性不飽和基含有樹脂(B)の含有量は、好ましくは、本発明の塗料組成物の不揮発分100質量部に対して、1〜70質量部であり、より好ましくは10〜60質量部である。これら範囲は、低温硬化性の点で意義がある。
【0077】
光重合開始剤(C)の含有量は、好ましくは、本発明の塗料組成物の不揮発分100質量部に対して、1〜8質量部であり、より好ましくは2〜6質量部である。これら範囲は、活性エネルギー線に対する反応性の点で意義がある。
【0078】
イソシアネート化合物(D)の含有量は、好ましくは、本発明の塗料組成物の不揮発分100質量部に対して、5〜30質量部であり、より好ましくは10〜25質量部である。これら範囲は、低温硬化性の点で意義がある。
【0079】
ラジカル重合性不飽和基含有化合物(E)の含有量は、好ましくは、本発明の塗料組成物の不揮発分100質量部に対して、1〜50質量部であり、より好ましくは5〜40質量部である。これら範囲は、耐擦り傷性及び耐候性の点で意義がある。
【0080】
イソシアネート化合物(D)が塗料組成物に含有される場合、化合物(A)及びイソシアネート化合物(D)の配合割合は、化合物(A)の有するイソシアネート基とイソシアネート化合物(D)の有するイソシアネート基とが、当量比で化合物(A)のNCO/イソシアネート化合物(D)のNCO=0.10〜9.00となる範囲が好ましく、0.20〜4.00となる範囲がより好ましい。これら範囲は、塗膜の耐酸性の点で意義がある。
【0081】
水酸基含有樹脂
また、本発明の塗料組成物は、必要に応じて、硬化性向上の点から水酸基含有樹脂を含有することができる。水酸基含有樹脂は、1分子中に少なくとも1個の水酸基を有する樹脂である。水酸基含有樹脂としては、例えば、水酸基を有する、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アルキド樹脂等の樹脂が挙げられる。これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。なかでも、水酸基含有樹脂は、得られる塗膜の耐候性の点から水酸基含有アクリル樹脂であることが好ましい。
【0082】
水酸基含有アクリル樹脂は、通常、水酸基含有重合性不飽和モノマー及び該水酸基含有重合性不飽和モノマーと共重合可能な他の重合性不飽和モノマーを、それ自体既知の方法、例えば、有機溶媒中での溶液重合法、水中でのエマルション重合法等の方法により共重合せしめることによって製造することができる。
【0083】
水酸基含有重合性不飽和モノマーは、1分子中に水酸基及び重合性不飽和結合をそれぞれ1個以上有する化合物であって、具体的には、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレ−ト、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物;該(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物のε−カプロラクトン変性体;N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド;アリルアルコール、さらに、分子末端が水酸基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0084】
また、水酸基含有重合性不飽和モノマーと共重合可能な他の重合性不飽和モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、「イソステアリルアクリレート」(商品名、大阪有機化学工業社製)、シクロヘキシル(メタ)アクリレ−ト、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート等のアルキル又はシクロアルキル(メタ)アクリレート;イソボルニル(メタ)アクリレート等のイソボルニル基を有する重合性不飽和モノマー;アダマンチル(メタ)アクリレート等のアダマンチル基を有する重合性不飽和モノマー;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等のビニル芳香族化合物;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等のアルコキシシリル基を有する重合性不飽和モノマー;パーフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート等のパーフルオロアルキル(メタ)アクリレート;フルオロオレフィン等のフッ素化アルキル基を有する重合性不飽和モノマー;マレイミド基等の光重合性官能基を有する重合性不飽和モノマー;N−ビニルピロリドン、エチレン、ブタジエン、クロロプレン、プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル等のビニル化合物;(メタ)アクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、β−カルボキシエチルアクリレート等のカルボキシル基含有重合性不飽和モノマー;(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、グリシジル(メタ)アクリレートとアミン類との付加物等の含窒素重合性不飽和モノマー;アリル(メタ)アクリレ−ト、1,6−ヘキサンジオ−ルジ(メタ)アクリレ−ト等の重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマー;グリシジル(メタ)アクリレート、β−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルプロピル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有重合性不飽和モノマー;分子末端がアルコキシ基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート;2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、アリルスルホン酸、スチレンスルホン酸ナトリウム塩、スルホエチルメタクリレート及びそのナトリウム塩やアンモニウム塩等のスルホン酸基を有する重合性不飽和モノマー;2−アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−アクリロイルオキシプロピルアシッドホスフェート、2−メタクリロイルオキシプロピルアシッドホスフェート等のリン酸基を有する重合性不飽和モノマー;2−ヒドロキシ−4−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロイルオキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール等の紫外線吸収性官能基を有する重合性不飽和モノマー;4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−クロトノイル−4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等の紫外線安定性重合性不飽和モノマー;アクロレイン、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタクリルアミド、アセトアセトキシエチルメタクリレート、ホルミルスチロール、4〜7個の炭素原子を有するビニルアルキルケトン(例えば、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルブチルケトン)等のカルボニル基を有する重合性不飽和モノマー化合物等が挙げられ、これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0085】
水酸基含有樹脂は、低温での硬化性の点、及び得られる塗膜の耐水性の点から、一般に30〜300mgKOH/g、特に40〜250mgKOH/g、さらに特に50〜200mgKOH/gの範囲内の水酸基価を有することが好ましい。
【0086】
水酸基含有樹脂は、化合物(A)との反応性を高める点から、酸基を有していることが好ましい。水酸基含有樹脂は、1〜25mgKOH/g、特に1〜20mgKOH/gの範囲内の酸価を有することが好ましい。
【0087】
水酸基含有樹脂は、一般に3,000〜100,000、特に4,000〜50,000、さらに特に5,000〜30,000の範囲内の重量平均分子量を有することが好ましい。
【0088】
また本発明の塗料組成物は、必要に応じて、耐候性の向上の点から、紫外線吸収剤及び光安定剤を含有することができる。また、本発明の塗料組成物は、必要に応じて、着色顔料及び体質顔料を含有することができる。
【0089】
本発明の塗料組成物は、さらに必要に応じて、硬化触媒、増粘剤、消泡剤、防錆剤、可塑剤、有機溶剤、表面調整剤、沈降防止剤等の通常の塗料用添加剤をそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて含有することができる。
【0090】
本発明の塗料組成物は、有機溶剤型塗料組成物及び水性塗料組成物のいずれであってもよいが、貯蔵安定性等の観点から、有機溶剤型塗料組成物であることが好適である。なお、本明細書において、水性塗料組成物は溶媒の主成分が水である塗料であり、有機溶剤型塗料組成物は溶媒として実質的に水を含有しない塗料である。
【0091】
有機溶剤型塗料の場合に使用される有機溶剤は特に限定されない。具体的には、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルアミルケトン、エチルイソアミルケトン、ジイソブチルケトン、メチルへキシルケトン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、安息香酸メチル、プロピオン酸メチル等のエステル類;テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン等のエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテート等のグリコールエーテル類;芳香族炭化水素類、脂肪族炭化水素類等が挙げられる。
【0092】
[塗膜形成方法]本発明の塗料組成物による塗膜形成方法は、被塗物上に後述するベース塗料
組成物を塗装してベース塗膜を形成し、該ベース塗膜上に、塗料組成物を塗装して塗膜を形成し、さらに活性エネルギー線の照射及び加熱を行う方法である。なお本発明の塗料組成物は、耐擦り傷性、耐候性、及び耐酸性に優れる塗膜を形成できることから、最上層に塗装されるクリヤ塗料として使用することが好ましい。以下、本発明の好ましい実施形態として、本発明の塗料組成物をクリヤ塗料として用いる場合につて記載する。本発明の塗料組成物をベース塗料として用いる場合も下記に準じて、行うことができる。
【0093】
被塗物
被塗物は特に限定されない。例えば、鉄、アルミニウム、真鍮、銅、ステンレス鋼、ブリキ、亜鉛メッキ鋼、合金化亜鉛(Zn−Al、Zn−Ni、Zn−Fe等)メッキ鋼等の金属材料;ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂や各種のFRP等のプラスチック材料;ガラス、セメント、コンクリート等の無機材料;木材;繊維材料(紙、布等)等を挙げることができ、なかでも、金属材料及びプラスチック材料が好適である。
【0094】
また、塗膜形成方法が適用される被塗物の用途としては、特に制限されず、例えば、乗用車、トラック、オートバイ、バス等の自動車車体の外板部;自動車部品;携帯電話、オーディオ機器等の家庭電気製品の外板部等を挙げることができ、なかでも自動車車体の外板部及び自動車部品が好ましい。
【0095】
被塗物は、上記金属材料やそれから成形された車体等の金属表面に、例えば、リン酸塩処理、クロメート処理、ジルコニウム処理、複合酸化物処理等の表面処理が施されたものであってもよい。また、被塗物は、上記金属材料や車体等に各種電着塗膜や、水性又は有機溶剤型の中塗塗膜の未硬化又は硬化塗膜であってもよく、さらに必要に応じて予備加熱(プレヒート)を施したものであってもよい。
【0096】
また、被塗物は、上記プラスチック材料に、水性又は有機溶剤型プライマー塗膜の未硬化又は硬化塗膜であってもよく、さらに必要に応じて予備加熱(プレヒート)を施したものであってもよい。
【0097】
ここで熱乾燥炉の焼付け回数やエネルギー消費量を抑える省工程や省エネルギーの面から、上記プライマー塗料は有機溶剤型プライマーを用いて予備加熱(プレヒート)を施さず、かつプライマー塗膜上に塗装されるベース塗料組成物は、水性塗料を用いることが望ましい。次いで、ベース塗料組成物について述べる。
【0098】
ベース塗料組成物
ベース塗料組成物は、活性水素基を含有する樹脂及び着色顔料を含有する水性又は有機溶剤型の塗料である。さらに、低揮発性有機化合物(低VOC)の面から水性塗料であることが好ましい。
【0099】
活性水素基を含有する樹脂の有する活性水素基としては、水酸基、ヒドロキシフェニル基、アミノ基等が挙げられる。本発明においては耐候性の点から水酸基含有樹脂が好ましい。水酸基含有樹脂としては、例えば、水酸基含有アクリル樹脂、水酸基含有ポリエステル樹脂、水酸基含有ポリウレタン樹脂、水酸基含有ポリエーテル樹脂等が挙げられる。なかでも、耐候性の点から水酸基含有アクリル樹脂が好ましい。
【0100】
水酸基含有アクリル樹脂は、通常、水酸基含有重合性不飽和モノマー及び該水酸基含有重合性不飽和モノマーと共重合可能な他の重合性不飽和モノマーを、それ自体既知の方法、例えば、有機溶媒中での溶液重合法、水中でのエマルション重合法等の方法により共重合せしめることによって製造することができる。
【0101】
水酸基含有重合性不飽和モノマーは、1分子中に水酸基及び重合性不飽和結合をそれぞれ1個以上有する化合物であって、具体的には、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物;該(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物のε−カプロラクトン変性体;N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド;アリルアルコール、さらに、分子末端が水酸基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0102】
また、水酸基含有重合性不飽和モノマーと共重合可能な他の重合性不飽和モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、「イソステアリルアクリレート」(商品名、大阪有機化学工業社製)、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート等のアルキル又はシクロアルキル(メタ)アクリレート;イソボルニル(メタ)アクリレート等のイソボルニル基を有する重合性不飽和モノマー;アダマンチル(メタ)アクリレート等のアダマンチル基を有する重合性不飽和モノマー;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等のビニル芳香族化合物;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等のアルコキシシリル基を有する重合性不飽和モノマー;パーフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート等のパーフルオロアルキル(メタ)アクリレート;フルオロオレフィン等のフッ素化アルキル基を有する重合性不飽和モノマー;マレイミド基等の光重合性官能基を有する重合性不飽和モノマー;N−ビニルピロリドン、エチレン、ブタジエン、クロロプレン、プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル等のビニル化合物;(メタ)アクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、β−カルボキシエチルアクリレート等のカルボキシル基含有重合性不飽和モノマー;(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、グリシジル(メタ)アクリレートとアミン類との付加物等の含窒素重合性不飽和モノマー;アリル(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオ−ルジ(メタ)アクリレ−ト等の重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマー;グリシジル(メタ)アクリレート、β−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルプロピル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有重合性不飽和モノマー;分子末端がアルコキシ基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート;2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、アリルスルホン酸、スチレンスルホン酸ナトリウム塩、スルホエチルメタクリレート及びそのナトリウム塩やアンモニウム塩等のスルホン酸基を有する重合性不飽和モノマー;2−アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−アクリロイルオキシプロピルアシッドホスフェート、2−メタクリロイルオキシプロピルアシッドホスフェート等のリン酸基を有する重合性不飽和モノマー;2−ヒドロキシ−4−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロイルオキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール等の紫外線吸収性官能基を有する重合性不飽和モノマー;4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−クロトノイル−4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等の紫外線安定性重合性不飽和モノマー;アクロレイン、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタクリルアミド、アセトアセトキシエチルメタクリレート、ホルミルスチロール、4〜7個の炭素原子を有するビニルアルキルケトン(例えば、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルブチルケトン)等のカルボニル基を有する重合性不飽和モノマー化合物等が挙げられ、これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0103】
水酸基を有する樹脂の水酸基価は、0.5〜200mgKOH/gの範囲が好ましい。0.5mgKOH/g未満では付着性、硬度が低下し、一方200mgKOH/gを超えると得られる複層塗膜の耐水性が低下することがあるために好ましくない。水酸基を有する樹脂は、一般に1,000〜200,000、特に2,000〜100,000の範囲内の重量平均分子量を有することが好ましい。
【0104】
着色顔料としては、アルミニウムペースト、パール粉、グラファイト、MIO等の光輝顔料、チタン白、フタロシアニンブルー、カーボンブラック等が挙げられ、必要に応じて、体質顔料を配合してもよい。着色顔料の配合量は特に限定されないが、例えば、ベース塗料の樹脂不揮発分100質量部に対して、1〜150質量部の範囲が好ましく、より好ましくは1〜100質量部の範囲である。
【0105】
ベース塗料組成物には、硬化剤が配合されていてもよい。硬化剤としては、通常、活性水素基を含有する樹脂中の活性水素基と反応し得る架橋性官能基を有する化合物を使用することができる。そのような硬化剤としては、例えば、アミノ樹脂、ポリイソシアネート化合物、ブロック化ポリイソシアネート化合物等を好適に用いることできる。硬化剤は、それぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0106】
アミノ樹脂としては、例えば、メラミン、尿素、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン、ステログアナミン、スピログアナミン、ジシアンジアミド等のアミノ成分とアルデヒドとの反応によって得られる部分もしくは完全メチロール化アミノ樹脂が挙げられる。アミノ樹脂としては、メラミン樹脂が好ましい。
【0107】
メラミン樹脂としては市販品を用いることができ、市販品としては、例えば、「サイメル202」、「サイメル203」、「サイメル238」、「サイメル251」、「サイメル303」、「サイメル323」、「サイメル324」、「サイメル325」、「サイメル327」、「サイメル350」、「サイメル385」、「サイメル1156」、「サイメル1158」、「サイメル1116」、「サイメル1130」(以上、日本サイテックインダストリーズ社製)、「ユーバン120」、「ユーバン20HS」、「ユーバン20SE60」、「ユーバン2021」、「ユーバン2028」、「ユーバン28−60」(以上、三井化学社製)等が挙げられる。
【0108】
メラミン樹脂はそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。ポリイソシアネート化合物は、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物である。
【0109】
ブロック化ポリイソシアネート化合物は、上記ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基にブロック剤を付加することによって得られるものであり、加熱により該ブロック剤が解離してイソシアネート基が再生することにより、水酸基と反応することができる。該ブロック剤の解離温度は通常約60〜約140℃、好ましくは約70〜約120℃の範囲内にあることが好適である。
【0110】
ベース塗料組成物における硬化剤の含有量は、耐候性の点から、活性水素基を含有する樹脂及び硬化剤の合計100質量部に対して、1〜70質量部、特に1〜60質量部、さらに特に1〜50質量部の範囲内にあることが好適である。ベース塗料組成物には、必要に応じて紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、表面調整剤、顔料分散剤、硬化触媒等の塗料用添加剤を配合することができる。ベース塗料組成物は、有機溶剤型塗料組成物及び水性塗料組成物のいずれであってもよい。塗装工程における揮発性有機化合物(VOC)を低減できる点から、ベース塗料組成物は、水性塗料組成物であることが好ましい。
【0111】
ベース塗膜の形成
ベース塗膜は、被塗物上にベース塗料組成物を塗装して形成される。ベース塗料組成物は、塗装時において、不揮発分含有率を通常15質量%以上、特に20〜35質量%の範囲内とし、さらに、その粘度を20〜40秒/フォードカップ#4/20℃の範囲内に調整しておくことが好ましい。
【0112】
塗装方法は特に限定されず、例えば、エアスプレー、エアレススプレー、回転霧化塗装機、浸漬塗装、刷毛等により塗装することができる。塗装の際、静電印加を行ってもよい。ベース塗料組成物を塗装して形成されるベース塗膜の膜厚は、通常、硬化塗膜に基づいて3〜30μm、特に7〜25μm、さらに特に10〜20μmの範囲内であることが好ましい。
【0113】
形成されたベース塗膜上には、その上に本発明によるクリヤ塗料が塗装される。ベース塗膜は、その塗膜上に塗料組成物が塗装される際に、硬化していてもよく、又は未硬化であってもよい。
【0114】
ベース塗膜を硬化させるためには通常加熱を行う。加熱条件としては、例えば、80〜150℃の温度で、5〜30分間の時間が挙げられる。未硬化の場合には、ベース塗膜の揮発分を低くする又は揮発分を除去するために、予備加熱(プレヒート)、エアブローを行うことができる。プレヒートは、通常、塗装された被塗物を乾燥炉内で、50〜110℃、好ましくは60〜90℃の温度で1〜30分間直接的又は間接的に加熱することにより行うことができる。また、エアブローは、通常、被塗物の塗装面に常温又は25℃〜80℃の温度に加熱された空気を吹き付けることにより行うことができる。
【0115】
クリヤ塗膜の形成
クリヤ塗料を塗装する方法は、特に限定されるものではない。例えば、エアスプレー、エアレススプレー、回転霧化塗装機、浸漬塗装、刷毛等により塗装することができる。塗装の際、静電印加を行ってもよい。塗装膜厚は、硬化膜厚で通常10〜100μm、好ましくは10〜50μm範囲内とすることができる。
【0116】
塗装後には、塗装直後の塗膜の揮発分を減少させる又は揮発分を除去するために、予備加熱(プレヒート)、エアブローを行うことができる。プレヒートは、通常、塗装された被塗物を乾燥炉内で、50〜110℃、好ましくは60〜90℃の温度で1〜30分間直接的又は間接的に加熱することにより行うことができる。また、エアブローは、通常、被塗物の塗装面に常温又は25℃〜80℃の温度に加熱された空気を吹き付けることにより行うことができる。
【0117】
クリヤ塗料を硬化させる際には、加熱及び活性エネルギー線照射を行う。加熱及び活性エネルギー線照射の順序は特に限定されず、加熱の後に活性エネルギー線照射を行ってもよく、活性エネルギー線照射の後に加熱を行ってもよく、加熱と活性エネルギー線照射とを同時に行ってもよい。
【0118】
また、上記の加熱と活性エネルギー線照射とを同時に行う際には、活性エネルギー線の照射源からの熱(例えばランプが発する熱)を熱源としてもよい。さらに、加熱の後に活性エネルギー線照射を行う際には、被塗物が熱を帯びた状態(余熱を持った状態)で活性エネルギー線照射を行ってもよい。
【0119】
加熱条件は特に限定されるものではない。例えば、50〜140℃の温度で1〜60分間加熱することができる。本発明において、クリヤ塗料は、低温での熱硬化性を有しており、高い温度(例えば100℃以上)で加熱せずとも耐擦り傷性、耐候性等の所望の性能が得られることから、50〜100℃の温度で加熱することが好ましい。また、クリヤ塗料は、活性エネルギー線でも硬化するため、長い時間で加熱せずとも耐擦り傷性、耐候性等の所望の性能が得られることから、1〜30分間加熱することが好ましく、1〜20分間加熱することがより好ましい。
【0120】
上記活性エネルギー線としては、例えば紫外線、可視光線、レーザー光(近赤外線、可視光レーザー、紫外線レーザー等)が挙げられる。その照射量は、通常100〜5,000mJ/cm、好ましくは300〜3,000mJ/cmの範囲内が好ましい。また、活性エネルギー線の照射源としては、従来から使用されているもの、例えば超高圧、高圧、中圧、低圧の水銀灯、FusionUV社製無電極ランプ、ケミカルランプ、カーボンアーク灯、キセノン灯、メタルハライド灯、蛍光灯、タングステン灯、太陽光等の各光源により得られる光源や紫外カットフィルターによりカットした可視領域の光線や、可視領域に発振線を持つ各種レーザー等が使用できる。また、パルス発光型の活性エネルギー線照射装置も使用できる。
【実施例】
【0121】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。尚、「部」及び「%」は、別記しない限り「質量部」及び「質量%」を示す。
水酸基含有アクリル樹脂エマルションの製造
製造例1 水酸基含有アクリル樹脂エマルション
温度計、サーモスタット、撹拌器、還流冷却器及び滴下装置を備えた反応容器に脱イオン水130部及びアクアロンKH−10(注1)0.52部を仕込み、窒素気流中で撹拌混合し、80℃に昇温した。次いで下記のモノマー乳化物(1)のうちの全量の1%量及び6%過硫酸アンモニウム水溶液5.3部とを反応容器内に導入し80℃で15分間保持した。その後、残りのモノマー乳化物(1)を3時間かけて、同温度に保持した反応容器内に滴下し、滴下終了後1時間熟成を行なった。その後、下記のモノマー乳化物(2)を1時間かけて滴下し、1時間熟成した後、5%ジメチルエタノールアミン水溶液40部を反応容器に徐々に加えながら30℃まで冷却し、100メッシュのナイロンクロスで濾過しながら排出し、平均粒子径100nm[サブミクロン粒度分布測定装置「COULTER N4型」(ベックマン・コールター社製)を用いて、脱イオン水で希釈し20℃で測定した。]、不揮発分30%、酸価33mgKOH/g、水酸基価25mgKOH/gの水酸基含有アクリル樹脂エマルションを得た。
(注1)アクアロンKH−10: ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩エステルアンモニウム塩:第一工業製薬社製、有効成分97%。
【0122】
モノマー乳化物(1): 脱イオン水42部、アクアロンKH−10(注1参照)0.72部、メチレンビスアクリルアミド2.1部、スチレン2.8部、メチルメタクリレート16.1部、エチルアクリレート28部及びn−ブチルアクリレート21部を混合攪拌して、モノマー乳化物(1)を得た。
【0123】
モノマー乳化物(2): 脱イオン水18部、アクアロンKH−10(注1参照) 0.31部、過硫酸アンモニウム0.03部、メタクリル酸5.1部、2−ヒドロキシエチルアクリレート5.1部、スチレン3部、メチルメタクリレート6部、エチルアクリレート1.8部及びn−ブチルアクリレート9部を混合攪拌して、モノマー乳化物(2)を得た。
【0124】
水酸基含有ポリエステル樹脂の製造
製造例2 水酸基含有ポリエステル樹脂溶液(PE1)の製造
温度計、サーモスタット、攪拌装置、還流冷却器及び水分離器を備えた反応容器に、トリメチロールプロパン109部、1,6−ヘキサンジオール141部、ヘキサヒドロ無水フタル酸126部及びアジピン酸120部を仕込み、160℃〜230℃の間を3時間かけて昇温させた後、230℃で4時間縮合反応させた。次いで、得られた縮合反応生成物にカルボキシル基を付加するために、さらに無水トリメリット酸38.3部を加え、170℃で30分間反応させた後、2−エチル−1−ヘキサノールで希釈し、酸価が46mgKOH/g、水酸基価が150mgKOH/g、不揮発分70%、重量平均分子量が6,400である水酸基含有ポリエステル樹脂溶液(PE1)を得た。
【0125】
製造例3 水酸基含有ポリエステル樹脂溶液(PE2)の製造
希釈溶剤の2−エチル−1−ヘキサノールを、エチレングリコールモノn−ブチルエーテルに変更する以外は、製造例2と同様にして、水酸基含有ポリエステル樹脂溶液(PE2)を得た。
【0126】
光輝性顔料濃厚液の製造
製造例4 光輝性顔料濃厚液(P1)の製造
攪拌混合容器内において、アルミニウム顔料ペースト「GX−180A」(旭化成メタルズ社製、金属含有量74%)19部、2−エチル−1−ヘキサノール35部、リン酸基含有樹脂溶液(注2)8部及び2−(ジメチルアミノ)エタノール0.2部を均一に混合して、光輝性顔料濃厚液(P1)を得た。
【0127】
(注2)リン酸基含有樹脂溶液: 温度計、サーモスタット、撹拌器、還流冷却器及び滴下装置を備えた反応容器にメトキシプロパノール27.5部及びイソブタノール27.5部の混合溶剤を入れ、110℃に加熱し、スチレン25部、n−ブチルメタクリレート27.5部、「イソステアリルアクリレート」(商品名、大阪有機化学工業社製、分岐高級アルキルアクリレート)20部、4−ヒドロキシブチルアクリレート7.5部、リン酸基含有重合性モノマー(注3)15部、2−メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート12.5部、イソブタノール10部及びt−ブチルパーオキシオクタノエート4部からなる混合物121.5部を4時間かけて上記混合溶剤に加え、さらにt−ブチルパーオキシオクタノエート0.5部及びイソプロパノール20部からなる混合物を1時間滴下した。その後、1時間攪拌熟成して不揮発分50%のリン酸基含有樹脂溶液を得た。本樹脂のリン酸基による酸価は83mgKOH/g、4−ヒドロキシブチルアクリレートに由来する水酸基価は29mgKOH/g、重量平均分子量は10,000であった。
【0128】
(注3)リン酸基含有重合性モノマー: 温度計、サーモスタット、撹拌器、還流冷却器及び滴下装置を備えた反応容器にモノブチルリン酸57.5部及びイソブタノール41部を入れ、90℃に昇温後、グリシジルメタクリレート42.5部を2時間かけて滴下した後、さらに1時間攪拌熟成した。その後、イソプロパノ−ル59部を加えて、不揮発分50%のリン酸基含有重合性モノマー溶液を得た。得られたモノマーのリン酸基による酸価は285mgKOH/gであった。
【0129】
製造例5 光輝性顔料濃厚液(P2)の製造
2−エチル−1−ヘキサノール35部を、エチレングリコールモノn−ブチルエーテル35部に変更する以外は、製造例4と同様にして、光輝性顔料濃厚液(P2)を得た。
【0130】
ベース塗料組成物の製造
製造例6 ベース塗料組成物No.1の製造
製造例1で得られた水酸基含有アクリル樹脂エマルション150部、製造例2で得られた水酸基含有ポリエステル樹脂溶液(PE1)64部、製造例4で得られた光輝性顔料濃厚液(P1)62部及び「サイメル202」(商品名、日本サイテックインダストリーズ社製、メラミン樹脂、不揮発分80%)12.5部を均一に混合し、更に、脱イオン水及び2−(ジメチルアミノ)エタノールを加えてpH8.0、不揮発分23%のベース塗料組成物No.1を得た。
【0131】
製造例7 ベース塗料組成物No.2の製造
製造例1で得られた水酸基含有アクリル樹脂エマルション150部、製造例3で得られた水酸基含有ポリエステル樹脂溶液(PE2)64部、製造例5で得られた光輝性顔料濃厚液(P2)62部及び「サイメル202」12.5部を均一に混合し、更に、脱イオン水及び2−(ジメチルアミノ)エタノールを加えてpH8.0、不揮発分23%のベース塗料組成物No.2を得た。
【0132】
化合物(A)の製造
製造例8 化合物(A−1)溶液の製造
攪拌機、温度計、還流冷却器、及び滴下装置を備えた反応容器に、メトキシプロピルアセテート33.8部、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート環付加物(NCO含量21%)50.0部、ジブチルスズジラウレート0.02部、及びハイドロキノンモノメチルエーテル0.2部の混合物を仕込んだ。該混合物を攪拌しながら、50℃まで加熱した。続いて、混合物の温度が60℃を超えないようにしながら、プラクセルFA−2D(商品名、ダイセル化学社製、一般式(I)においてRが水素原子であり、Rがエチレン基であり、nが2であるカプロラクトン変性ヒドロキシエチルアクリレート)85.2部を8時間かけて滴下し、混合物を60℃で更に1時間撹拌し、不揮発分80%の化合物(A−1)溶液を得た。得られた化合物(A−1)のイソシアネート当量は2,731、不飽和基当量は546、重量平均分子量は1,366であった。
【0133】
製造例9〜19
製造例8において、配合を表1に記載の配合にした以外は、製造例8と同様にして、化合物(A−2)〜(A−7)及び化合物(A’−1)〜(A’−5)溶液を得た。得られた化合物のイソシアネート当量、不飽和基当量、及び重量平均分子量を表1に示す。
【0134】
【表1】

【0135】
(注4)プラクセルFA−1:商品名、ダイセル化学社製、一般式(I)においてRが水素原子であり、Rがエチレン基であり、nが1であるカプロラクトン変性ヒドロキシエチルアクリレート
(注5)プラクセルFM−3:商品名、ダイセル化学社製、一般式(I)においてRがメチル基であり、Rがエチレン基であり、nが3であるカプロラクトン変性ヒドロキシエチルメタクリレート
(注6)表1における「−」は、イソシアネート基が確認されなかったことを示す。
【0136】
ラジカル重合性不飽和基含有樹脂(B)の製造例
製造例20 水酸基含有アクリル樹脂No.1の製造
攪拌機、温度計、還流冷却器、及び滴下装置を備えた反応容器に、キシレン80部を仕込み、窒素ガスを吹き込みながら100℃で攪拌し、この中にスチレン10部、メチルメタクリレート40部、i−ブチルメタクリレート8部、2−ヒドロキシエチルアクリレート40部、アクリル酸2部及び2,2’−アゾビスイソブチロニトリル5部の混合物を3時間かけて均一速度で滴下し、さらに同温度で2時間熟成した。その後、さらにキシレン10部及び2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.5部の混合物を1時間かけて反応容器に滴下し、滴下終了後1時間熟成させ、不揮発分55%の水酸基含有アクリル樹脂No.1溶液を得た。得られた水酸基含有アクリル樹脂No.1の酸価は15.6mgKOH/g、水酸基価は193.2mgKOH/g、重量平均分子量は12,000であった。
【0137】
製造例21 イソホロンジイソシアネートと2−ヒドロキシエチルアクリレートの付加物(IPDI-HEA)の製造
温度計、サーモスタット、撹拌機、還流冷却器及び空気吹込装置を備え付けた反応容器に、イソホロンジイソシアネート888部(4モル)、2−ヒドロキシエチルアクリレート464部(4モル)及びハイドロキノンモノメチルエーテル0.7部を仕込み、反応容器内に空気を吹き込みながら、80℃に昇温してその温度に5時間保ち、加えた2−ヒドロキシエチルアクリレートが実質的に全て反応したのを確認して、イソホロンジイソシアネートと2−ヒドロキシエチルアクリレートの付加物(IPDI−HEA)を得た。
【0138】
製造例22 ラジカル重合性不飽和基含有樹脂B−1の製造
製造例20で得た水酸基含有アクリル樹脂No.1を1055部(固形分580部)に、製造例21で得たイソホロンジイソシアネートと2−ヒドロキシエチルアクリレートの付加物(IPDI−HEA)338部(固形分338部)、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.4部、酢酸ブチル277部及びジブチルチンジラウレート0.2部を仕込み、反応容器内に空気を吹き込みながら、80℃に昇温してその温度に5時間保ち、イソシアネート基が実質的に全て反応したのを確認して冷却して、樹脂固形分55%のラジカル重合性不飽和基含有樹脂B−1の溶液を得た。この樹脂は、水酸基価96.6mgKOH/g、重量平均分子量が19,000であった。
【0139】
製造例23 ラジカル重合性不飽和基含有樹脂B−2溶液の製造
製造例20で得た水酸基含有アクリル樹脂No.1を1055部(固形分580部)に、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート(AOI)141部(1モル)、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.4部、酢酸ブチル115部及びジブチルチンジラウレート0.2部を仕込み、反応容器内に空気を吹き込みながら、80℃に昇温してその温度に5時間保ち、イソシアネート基が実質的に全て反応したのを確認して冷却し、樹脂固形分55%のラジカル重合性不飽和基含有樹脂B−2の溶液を得た。この樹脂は、水酸基価96.6mgKOH/g、重量平均分子量が15,000であった。
【0140】
製造例24 ラジカル重合性不飽和基含有樹脂B−3の製造
製造例20で得た水酸基含有アクリル樹脂No.1を1055部(固形分580部)に、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート(AOI)282部(2モル)、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.4部、酢酸ブチル231部及びジブチルチンジラウレート0.2部を仕込み、反応容器内に空気を吹き込みながら、80℃に昇温してその温度に5時間保ちイソシアネート基が実質的に全て反応したのを確認して冷却し、樹脂固形分55%のラジカル重合性不飽和基含有樹脂B−3の溶液を得た。この樹脂は、水酸基価0、重量平均分子量が18000であった。
【0141】
製造例25 ラジカル重合性不飽和基含有樹脂B−4の製造
攪拌機、温度計、還流冷却器、及び滴下装置を備えた反応容器に、キシレン80部を仕込み、窒素ガスを吹き込みながら100℃で攪拌し、この中にスチレン10部、メチルメタクリレート37.6部、n−ブチルアクリレート20部i−ブチルメタクリレート8部、グリシジルメタクリレート24.4部、及び2,2’−アゾビスイソブチロニトリル5部の混合物を3時間かけて均一速度で滴下し、さらに同温度で2時間熟成した。その後、さらにキシレン10部及び2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.5部の混合物を1時間かけて反応容器に滴下し、滴下終了後1時間熟成させ、不揮発分55%のグリシジル基含有アクリル樹脂溶液を得た。
【0142】
さらに、該グリシジル基含有アクリル樹脂溶液に、アクリル酸12.4部、t−ブチルアンモニウムブロマイド0.5部酢酸ブチル15.2部を加えて8時間反応させ、ラジカル重合性不飽和基含有樹脂B−4溶液を得た。得られたラジカル重合性不飽和基含有樹脂B−4の水酸基価は96.6mgKOH/g、重量平均分子量は14,500であった。
【0143】
製造例26 ラジカル重合性不飽和基含有樹脂B−5の製造
攪拌機、温度計、還流冷却器、及び滴下装置を備えた反応容器に、キシレン80部を仕込み、窒素ガスを吹き込みながら100℃で攪拌し、この中にスチレン10部、メチルメタクリレート39.6部、n−ブチルアクリレート30部i−ブチルメタクリレート8部、アクリル酸12.4部、及び2,2’−アゾビスイソブチロニトリル5部の混合物を3時間かけて均一速度で滴下し、さらに同温度で2時間熟成した。その後、さらにキシレン10部及び2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.5部の混合物を1時間かけて反応容器に滴下し、滴下終了後1時間熟成させ、不揮発分55%のカルボン酸基含有アクリル樹脂溶液を得た。
【0144】
さらに、該カルボン酸基含有アクリル樹脂溶液に、グリシジルメタクリレート24.4部、t−ブチルアンモニウムブロマイド0.5部酢酸ブチル20.4部を加えて8時間反応させ、ラジカル重合性不飽和基含有樹脂No.5溶液を得た。得られたラジカル重合性不飽和基含有樹脂B−5の水酸基価は96.6mgKOH/g、重量平均分子量は14,500であった。
【0145】
製造例27 水酸基含有アクリル樹脂No.2の製造
攪拌機、温度計、還流冷却器、及び滴下装置を備えた反応容器に、キシレン80部を仕込み、窒素ガスを吹き込みながら110℃で攪拌し、この中にスチレン10部、メチルメタクリレート40部、i−ブチルメタクリレート8部、2−ヒドロキシエチルアクリレート40部、アクリル酸2部及び2,2’−アゾビスイソブチロニトリル12部の混合物を3時間かけて均一速度で滴下し、さらに同温度で2時間熟成した。その後、さらにキシレン10部及び2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.5部の混合物を1時間かけて反応容器に滴下し、滴下終了後1時間熟成させ、不揮発分55%の水酸基含有アクリル樹脂No.2溶液を得た。得られた水酸基含有アクリル樹脂No.2の酸価は15.6mgKOH/g、水酸基価は193.2mgKOH/g、重量平均分子量は3200であった。
【0146】
製造例28 ラジカル重合性不飽和基含有樹脂B−1’(比較例用)
製造例27で得られた水酸基含有アクリル樹脂No.2を1055部(固形分580部)に、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート(AOI)141部(1モル)、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.4部、酢酸ブチル115部及びジブチルチンジラウレート0.2部を仕込み、反応容器内に空気を吹き込みながら80℃に昇温してその温度に5時間保ちイソシアネート基が実質的に全て反応したのを確認して冷却し、樹脂固形分55%のラジカル重合性不飽和基含有樹脂B−1’の溶液を得た。この樹脂は、水酸基価96.6、重量平均分子量が4,000であった。
【0147】
ラジカル重合性不飽和基含有化合物(E)の製造
製造例29 ウレタンアクリレート樹脂(E1)溶液の製造
温度計、サーモスタット、撹拌機、還流冷却器及び空気吹込装置を備え付けた反応容器に、イソホロンジイソシアネート888部、2−ヒドロキシエチルアクリレート464部及びハイドロキノンモノメチルエーテル0.7部を仕込み、反応容器内に空気を吹き込みながら、80℃に昇温してその温度に5時間保ち、加えた2−ヒドロキシエチルアクリレートが実質的に全て反応したのを確認した後、ペンタエリスリトール136部、酢酸ブチル372部及びジブチルチンジラウレート0.2部を添加してさらに80℃に保持し、イソホロンジイソシアネートが実質的に全て反応したのを確認して冷却し、不揮発分80%のウレタンアクリレート樹脂(E1)溶液を得た。得られたウレタンアクリレート樹脂(E1)の不飽和基当量は372、重量平均分子量は1500であった。
【0148】
クリヤ塗料組成物の製造
実施例1 クリヤ塗料組成物No.1の製造
製造例8で得られた化合物(A−1)80%溶液65.5部(不揮発分52.4部)、製造例22で得られた樹脂固形分55%のラジカル重合性不飽和基含有樹脂B−1を86.6部(不揮発分47.6部)、ダロキュア1173(商品名、メルクジャパン社製、光重合開始剤)3.0部、及びTINUVIN384(商品名、チバスペシャルティ ケミカルズ社製、紫外線吸収剤)2.0部を均一に混合し、さらに酢酸ブチルで不揮発分を調整して、不揮発分50%のクリヤ塗料組成物No.1を得た。
【0149】
クリヤ塗料組成物No.1における(A)成分のイソシアネート基(NCO)と(B)成分の水酸基(OH)との当量比は、NCO/OH=0.23である。
【0150】
実施例2〜13、比較例1〜6 クリヤ塗料組成物No.2〜No.19
実施例1において、各成分の配合を表2に示す配合とする以外は実施例1と同様にして、実施例2〜13、比較例1〜6の不揮発分50%のクリヤ塗料組成物No.2〜No.19を得た。なお表2の配合量は、不揮発分の配合量を示す。
【0151】
【表2】

【0152】
実施例14 クリヤ塗料組成物No.20の製造
製造例8で得られた化合物(A−1)80%溶液31.3部(不揮発分25.0部)、製造例22で得られた樹脂固形分55%のラジカル重合性不飽和基含有樹脂B−1を113.6部(不揮発分62.5部)、ダロキュア1173を3.0部、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート環付加物(NCO含量21%)12.5部、及びTINUVIN384を2.0部均一に混合し、さらに不揮発分が50%となるように酢酸ブチルを加えて、不揮発分50%のクリヤ塗料組成物No.20を得た。
【0153】
クリヤ塗料組成物No.20における(A)成分及び(D)成分のイソシアネート基(NCO)の合計量と(B)成分の水酸基(OH)との当量比は、NCO/OH=0.77であり、(A)成分の有するイソシアネート基(NCO)と(D)成分の有するイソシアネート基(NCO)との当量比は、(A)成分のNCO/(D)成分のNCO=0.12である。
【0154】
実施例15〜27、比較例7〜12 クリヤ塗料組成物No.21〜No.39の製造
実施例14において、各成分の配合を表3に示す配合とする以外は実施例14と同様にして、実施例15〜27、比較例7〜12の不揮発分50%のクリヤ塗料組成物No.21〜No.39を得た。なお表3の配合量は、不揮発分の配合量を示す。
【0155】
【表3】

【0156】
実施例28 クリヤ塗料組成物No.40の製造
製造例8で得られた化合物(A−1)80%溶液26.4部(不揮発分21.1部)、製造例22で得られた樹脂固形分55%のラジカル重合性不飽和基含有樹脂B−1を95.6部(不揮発分52.6部)、ダロキュア1173 3.0部、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート環付加物(NCO含量21%)10.5部、製造例29で得られたウレタンアクリレート樹脂(E−1)80%溶液19.8部(不揮発分15.8部)、TINUVIN384 2.0部を均一に混合し、さらに不揮発分が50%となるように酢酸ブチルを加えて、不揮発分50%のクリヤ塗料組成物No.40を得た。
【0157】
クリヤ塗料組成物No.40における(A)成分及び(D)成分のイソシアネート基(NCO)の合計量と(B)成分の水酸基(OH)との当量比は、NCO/OH=0.77であり、(A)成分の有するイソシアネート基(NCO)と(D)成分の有するイソシアネート基(NCO)との当量比は、(A)成分のNCO/(D)成分のNCO=0.12である。
【0158】
実施例29〜48、比較例13〜18
実施例28において、各成分の配合を表4に示す配合とする以外は実施例28と同様にして、実施例29〜48、比較例13〜18の不揮発分50%のクリヤ塗料組成物No.41〜54を得た。なお表4及び表5の配合量は、不揮発分の配合量を示す。
【0159】
【表4】

【0160】
【表5】

【0161】
被塗物Aの作成
脱脂及びりん酸亜鉛処理した冷延鋼板(JISG3020、大きさ400×300×0.8mm)にカチオン電着塗料「エレクロンGT−10」(商品名:関西ペイント株式会社製、エポキシ樹脂ポリアミン系カチオン樹脂に硬化剤としてブロックポリイソシアネート化合物を使用したもの)を硬化塗膜に基づいて膜厚20μmになるように電着塗装し、170℃で20分間加熱して架橋硬化させて電着塗膜を得た。
【0162】
得られた電着塗面に、中塗塗料「TP−65−2(白塗色)」(関西ペイント株式会社製、ポリエステル樹脂・メラミン樹脂系、有機溶剤型)をエアスプレーにて硬化塗膜に基づいて膜厚30μmになるように塗装し、140℃で30分間加熱して架橋硬化させて、中塗塗膜を形成した塗板を被塗物Aとした。
【0163】
被塗物Bの作成
ポリプロピレンNX−280AK(三菱油化株式会社製、板厚3.2mm)をトリクロルエタン蒸気脱脂1分間行った後に80℃で10分乾燥させた。次いで、プライマーとして「ソフレックスNo.1000」(関西ペイント株式会社製、ポリオレフィン含有導電有機溶剤型プライマー塗料)を乾燥膜厚15μm塗装し、常温で3分間セッティングを行って被塗物とした。
【0164】
被塗物Cの作成
ポリプロピレンNX−280AK(三菱油化株式会社製、板厚3.2mm)をトリクロルエタン蒸気脱脂1分間行った後に80℃で10分乾燥させた。次いで、プライマーとして「アスカレックス#2850」(商品名、関西ペイント社製、ポリオレフィン含有導電水性プライマー塗料)を乾燥膜厚15μm塗装し、室温で5分間セッティングを行って被塗物とした。
【0165】
被塗物Dの作成
ポリプロピレンNX−280AK(三菱油化株式会社製、板厚3.2mm)をトリクロルエタン蒸気脱脂1分間行った後に80℃で10分乾燥させた。次いで、プライマーとして「アスカレックス#2850」(商品名、関西ペイント社製、ポリオレフィン含有導電水性プライマー塗料)を乾燥膜厚15μm塗装し、80℃で3分間の予備加熱(プレヒート)を行って被塗物とした。
【0166】
塗膜形成方法
実施例49
上記被塗物Aに製造例6で得たベース塗料組成物No.1を回転霧化型塗装機を用いて、乾燥膜厚が15μmとなるように塗装し、80℃で3分間プレヒートを行った。
【0167】
次いで、実施例1で得たクリヤ塗料組成物No.1を乾燥膜厚が20μmとなるようエアスプレー塗装した。続いて、50℃で3分間プレヒートした後、超高圧水銀灯を用い1,500mJ/cmの照射量で活性エネルギー線を照射した。続いて90℃で10分間加熱乾燥させて試験板を得た。
【0168】
なお試験板作成までの加熱工程回数(電着塗膜、中塗塗膜、ベース塗膜、及びクリヤ塗料のプレヒート及び加熱乾燥の合計)5回であった。得られた試験板について評価に供した評価結果を表6に示す。
【0169】
実施例50〜99、比較例19〜36
実施例1において、ベース塗料組成物及びクリヤ塗料組成物を表6〜表9に記載のベース塗料組成物及びクリヤ塗料組成物とした以外は、実施例1と同様に試験板を作成し、各種評価に供した。評価結果を表6〜表9に示す。
【0170】
実施例100
上記被塗物Aに製造例6で得たベース塗料組成物No.1を、回転霧化型塗装機を用いて、乾燥膜厚が15μmとなるように塗装し、80℃で3分間プレヒートを行った。
【0171】
次いで、実施例31で得たクリヤ塗料組成物No.43を乾燥膜厚が40μmとなるようエアスプレー塗装した。続いて、50℃で3分間プレヒートした後、フュージョン社製Dバルブを用い1,500mJ/cmの照射量で活性エネルギー線を照射した。続いて90℃で10分間乾燥させて試験板を得た。得られた試験板について評価に供した。評価結果を表8に示す。
【0172】
実施例101
上記被塗物Aに製造例6で得たベース塗料組成物No.1を回転霧化型塗装機を用いて、乾燥膜厚が15μmとなるように塗装し、80℃で3分間プレヒートを行った。
【0173】
次いで、実施例31で得たクリヤ塗料組成物No.43を乾燥膜厚が40μmとなるようエアスプレー塗装した。続いて、90℃で10分間乾燥させた後、フュージョン社製Dバルブを用い1,500mJ/cmの照射量で活性エネルギー線を照射して試験板を得た。得られた試験板について評価に供した。評価結果を表8に示す。
【0174】
【表6】

【0175】
【表7】

【0176】
【表8】

【0177】
【表9】

【0178】
被塗物B〜Dの検討結果
実施例102
前記被塗物Bに、ベース塗料組成物として「ソフレックス#420シルバー」(関西ペイント(株)製、商品名、ポリエステルウレタン系1液型有機溶剤系メタリック塗料)を乾燥膜厚15μmになるように静電塗装し、室温で3分間セッティングした。
【0179】
次いで、実施例98で得たクリヤ塗料組成物No.60を乾燥膜厚が20μmとなるようエアスプレー塗装した。続いて、50℃で3分間プレヒート(予備加熱)した後、超高圧水銀灯を用い1,500mJ/cmの照射量で活性エネルギー線を照射した。続いて90℃で10分間乾燥させて試験板を得た。
【0180】
実施例103
前記被塗物Bに、ベース塗料組成物として「ソフレックス#420シルバー」(関西ペイント(株)製、商品名、ポリエステルウレタン系1液型有機溶剤系メタリック塗料)を乾燥膜厚15μmになるように静電塗装し、80℃で3分間のプレヒート(予備加熱)を行った。これらの工程以外は、実施例102と同様にして試験板を得た。
【0181】
実施例104
前記被塗物Bに、製造例6で得たベース塗料組成物No.1を、乾燥膜厚が15μmとなるように静電塗装し、80℃で3分間プレヒート(予備加熱)を行った。これらの工程以外は、実施例102と同様にして試験板を得た。
【0182】
実施例105
前記被塗物Cに、ベース塗料組成物として「ソフレックス#420シルバー」(関西ペイント(株)製、商品名、ポリエステルウレタン系1液型有機溶剤系メタリック塗料)を乾燥膜厚15μmになるように静電塗装し、室温で3分間セッティングした。
【0183】
これらの工程以外は、実施例102と同様にして試験板を得た。
【0184】
実施例106
前記被塗物Cに、ベース塗料組成物として「ソフレックス#420シルバー」(関西ペイント(株)製、商品名、ポリエステルウレタン系1液型有機溶剤系メタリック塗料)を乾燥膜厚15μmになるように静電塗装し、80℃で3分間のプレヒート(予備加熱)を行った。これらの工程以外は、実施例102と同様にして試験板を得た。
【0185】
実施例107
前記被塗物Cに、製造例6で得たベース塗料組成物No.1を乾燥膜厚が15μmとなるように静電塗装し、80℃で3分間のプレヒート(予備加熱)を行った。これらの工程以外は、実施例102と同様にして試験板を得た。
【0186】
実施例108
前記被塗物Dに、ベース塗料組成物として「ソフレックス#420シルバー」(関西ペイント(株)製、商品名、ポリエステルウレタン系1液型有機溶剤系メタリック塗料)を乾燥膜厚15μmになるように静電塗装し、室温で3分間セッティングした。これらの工程以外は、実施例102と同様にして試験板を得た。
【0187】
実施例109
前記被塗物Dに、ベース塗料組成物として「ソフレックス#420シルバー」(関西ペイント(株)製、商品名、ポリエステルウレタン系1液型有機溶剤系メタリック塗料)を乾燥膜厚15μmになるように静電塗装し、80℃で3分間プレヒート(予備加熱)を行った。これらの工程以外は、実施例102と同様にして試験板を得た。
【0188】
実施例110
前記被塗物Dに、製造例6で得たベース塗料組成物No.1を乾燥膜厚15μmになるように静電塗装し、80℃で3分間のプレヒート(予備加熱)を行った。これらの工程以外は、実施例102と同様にして試験板を得た。
【0189】
実施例102〜110の塗料内容及び試験結果を表10に示す。
【0190】
【表10】

【0191】
試験方法
(注10)耐溶剤性:
試験板の塗膜面に、アセトンを浸み込ませたガーゼにて塗膜面に荷重約1kg/cmの圧力をかけて、跡がつくまで約5cmの長さの間を往復させて回数を数え、下記基準により耐溶剤性を評価した:
◎:200回往復でも全く跡がつかないもの
○:100〜200回往復で跡がつくもの
△:50〜99回往復で跡がつくもの
×:49回往復以下で跡がつくもの。
【0192】
(注11)付着性:
試験板の塗膜面にJIS K 5600−5−6(1990)に準じて塗膜に2mm×2mmのゴバン目100個を作り、その面に粘着テープを貼着し、急激に剥がした後に、塗面に残ったゴバン目塗膜の数を評価した。
【0193】
◎:残存個数/全体個数=100個/100個で縁欠けなし
○:残存個数/全体個数=100個/100個で縁欠けあり
△:残存個数/全体個数=99個〜90個/100個
×:残存個数/全体個数=89個以下/100個。
【0194】
(注12)仕上り性:
各試験板について下記目視評価及び光沢測定により仕上り性を評価した:
<目視評価>
各試験板を目視にて観察し、メタリックムラの発生程度を下記基準で評価した。
【0195】
◎:メタリックムラがほとんど認められず、極めて優れた塗膜外観を有する
○:メタリックムラがわずかに認められるが、優れた塗膜外観を有する
△:メタリックムラが認められ、塗膜外観がやや劣る
×:メタリックムラが多く認められ、塗膜外観が劣る
<光沢測定>
JIS K5600−4−7(1999)の鏡面光沢度(60度)に準じて各塗面の光沢度を測定した。測定した光沢度を下記基準により評価した:
◎:鏡面光沢度が90以上
○:鏡面光沢度が70以上90未満
△:鏡面光沢度が50以上70未満
×:鏡面光沢度が50未満。
【0196】
(注13)耐擦り傷性:
各試験板について、ASTM D1044に準じて、テーバー磨耗試験(磨耗輪CF−10P、荷重500g、100回転)を行った。試験前後の塗膜について、JIS K5600−4−7(1999)の鏡面光沢度(60度)に準じて各塗面の光沢度を測定した。試験前の光沢度に対する試験後の光沢度を光沢保持率(%)として求め、下記基準により評価した:
◎:光沢保持率90%以上
○:光沢保持率80%以上90%未満
△:光沢保持率60%以上80%未満
×:光沢保持率60%未満。
【0197】
(注14)耐候性:
各試験板について、JIS K 5600−7−8(1999)に準拠して、サンシャインウェザオメーターを用いて2000時間の耐候性試験を行った。試験後の試験板について、外観及び付着性を評価した:
<外観(耐候試験後)>
◎:塗膜表面に異常が認められず、初期と試験後における試験板において、JIS Z 8730に準拠する色差ΔEが0.3未満である
○:僅かな黄変が認められるがワレの発生がなく、初期と試験後における試験板において、JIS Z 8730に準拠する色差ΔEが0.3以上かつ0.5未満であり、製品とした場合に問題がないレベル
△:塗膜に黄変が認められるがワレの発生がなく、初期と試験後における試験板において、JIS Z 8730に準拠する色差ΔEが0.5以上かつ0.8未満である
×:塗膜の黄変が認められ、初期と試験後における試験板において、JIS Z 8730に準拠する色差ΔEが0.8以上であるか、もしくはワレが生じているもの。
【0198】
<付着性(耐候試験後)>
各塗面にJIS K 5600−5−6(1990)に準じて塗膜に2mm×2mmのゴバン目100個を作り、その面に粘着テープを貼着し、急激に剥がした後に、塗面に残ったゴバン目塗膜の数を評価した:
◎:残存個数/全体個数=100個/100個で縁欠けなし
○:残存個数/全体個数=100個/100個で縁欠けあり
△:残存個数/全体個数=99個〜90個/100個
×:残存個数/全体個数=89個以下/100個。
【0199】
(注15)耐酸性:
各塗膜表面に1%硫酸水溶液を0.5mL滴下して、温度20℃、相対湿度65%の雰囲気下に24時間放置した後に、塗膜表面をガーゼで拭取り、外観を目視評価した:
◎:塗膜表面の異常が認められないもの
○:塗膜表面にわずかに跡がみられるが、水洗すると消えるもの
△:塗膜表面に変色又は白化が少し認められるもの
×:塗膜表面の変色又は白化が著しいもの。
【0200】
(注16)耐汚染性:
試験板に泥土、カーボンブラック、鉱油及びクレーの混合物からなる汚染物質をネルに付着させて各試験塗板の塗面に軽くこすりつけた。これを20℃で75%RHの恒温恒湿室中に24時間放置後、塗面を流水で洗浄し、塗膜の汚染度を塗板の明度差(ΔL)により下記の基準により評価した。ΔL値が小さいほど耐汚染性は良好である。ΔLは以下の式により算出した:
ΔL=(耐汚染性試験前のL値)−(耐汚染性試験後のL値)
L値の測定はコニカミノルタ製CR400(商品名、三刺激値直読式色彩計 D65光源 2°視野 拡散照明垂直受光(d/0))を用いて行なった。なお、上記L値はCIE 1976 L表色系に基く値である
◎は、ΔL<0.2、
〇は、0.2≦ΔL<1、
△は、1≦ΔL<2、
×は、2≦ΔL。
【0201】
(注17)加熱工程回数:水性プライマー塗料のプレヒート、ベース塗料組成物のプレヒート、クリヤ塗料組成物のプレヒート及び加熱乾燥において、加熱回数合計を省エネルギー性の目安とした。
【0202】
(注18)総合評価
本発明が属する自動車車体の塗装に関する技術分野においては、耐溶剤性、付着性、仕上り性、耐擦り傷性、耐候性、耐酸性及び耐汚染性の全ての性能が優れていることが重要である。従って、下記の基準にて、各塗料の総合評価を行った:
◎:耐溶剤性、付着性、仕上り性(目視)、仕上り性(光沢)、耐擦り傷性、耐候性(外観)、耐候性(付着性)、耐酸性及び耐汚染性の全てが◎である;
○:上記項目の全てが◎又は○であり、かつ少なくとも1つが○である;
△:上記項目の全てが◎、○又は△であり、かつ少なくとも1つが△である;
×:上記項目の全てが◎、○、△又は×であり、かつ少なくとも1つが×である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)カプロラクトン変性ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとポリイソシアネート化合物とを反応してなり、かつ300〜3,800の範囲のイソシアネート当量を有するラジカル重合性不飽和基含有化合物、及び
(B)重量平均分子量5,000以上のラジカル重合性不飽和基含有樹脂((A)成分に相当するものを除く)
を含有する塗料組成物。
【請求項2】
(B)成分がラジカル重合性不飽和基含有アクリル樹脂である請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項3】
さらに(C)光重合開始剤を含有する請求項1又は2に記載の塗料組成物。
【請求項4】
さらに(D)イソシアネート化合物((A)成分に相当するものを除く)を含有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の塗料組成物。
【請求項5】
さらに(E)重量平均分子量5,000未満のラジカル重合性不飽和基含有化合物((A)成分に相当するものを除く)を含有する請求項1〜4のいずれか1項に記載の塗料組成物。
【請求項6】
被塗物上に、活性水素基を含有する樹脂及び着色顔料を含有するベース塗料組成物を塗装してベース塗膜を形成し、次いでベース塗膜上に、請求項1〜5のいずれか1項に記載の塗料組成物を塗装して塗膜を形成し、さらに活性エネルギー線の照射及び加熱を行う塗膜形成方法。
【請求項7】
請求項6に記載の塗膜形成方法を塗装して得られる塗装物品。

【公開番号】特開2011−225744(P2011−225744A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−97843(P2010−97843)
【出願日】平成22年4月21日(2010.4.21)
【出願人】(000001409)関西ペイント株式会社 (815)
【Fターム(参考)】