説明

塗料組成物及び塗装物品

【課題】塗装工程における加熱温度の低温化及び加熱時間の短縮が可能であり、また酸素雰囲気下の活性エネルギー線照射でも窒素雰囲気下の活性エネルギー線照射の場合と同等の硬度を有する塗膜を得ることができ、さらに硬化塗膜が耐擦り傷性、耐候性に優れる、塗料組成物を提供する。
【解決手段】イソソルバイドジ(メタ)アクリレート(A)、水酸基含有樹脂(B)及びイソシアネート基含有化合物(C)を含有することを特徴とする塗料組成物。イソシアネート基含有化合物(C)は、イソシアネート基含有化合物(C)が、カプロラクトン変性ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとポリイソシアネート化合物とを反応させることにより得られ、かつ300〜3,800の範囲のイソシアネート当量を有するラジカル重合性不飽和基含有化合物(C−1)を含有するのが望ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料組成物及び塗装物品に関する。
【背景技術】
【0002】
二輪車、自動車、コンテナ等の車両の車体や部品には、電着塗膜、中塗り塗膜、ベース塗膜が必要に応じて形成された後に、クリヤ塗膜が形成される。クリヤ塗膜は、一般的に、水酸基含有アクリル樹脂等の熱硬化性官能基含有樹脂及びメラミン樹脂等の架橋剤を含有する熱硬化性塗料組成物、酸基含有樹脂及びエポキシ基含有樹脂を含有する熱硬化性塗料組成物等を塗装後、加熱硬化する塗膜形成方法により形成される。この塗膜形成方法によれば、付着性、塗膜硬度等の塗膜性能に優れた塗膜を形成することができる。
【0003】
近年、塗装工程においては省エネルギー化及び生産性向上が要求されている。それにともなって、低温での硬化が可能な塗料組成物、短時間での硬化が可能な塗料組成物が期待されている。しかし、上記熱硬化性塗料組成物は、一般的な塗装工程において、通常、140℃程度の加熱温度、20〜40分間程度の加熱時間が必要であり、省エネルギー化及び生産性向上が求められていた。
【0004】
加熱時間を短縮する発明として、特許文献1には、紫外線硬化可能な多官能(メタ)アクリレート、多価アルコールモノ(メタ)アクリレート重合体、及びポリイソシアネート化合物を含有する紫外線硬化性且つ熱硬化性の塗料組成物の発明が開示されている。また、この塗料組成物を被塗物に塗装後、紫外線照射し、次いで30分間程度加熱硬化して塗膜を形成する方法の発明が開示されている。しかしながら、この発明は、加熱時間の短縮ができず、また、耐擦り傷性の点で満足するものではなかった。
【0005】
また、特許文献2には、(メタ)アクリロイル基と遊離イソシアネート基を含むウレタン(メタ)アクリレート、場合により前記ウレタン(メタ)アクリレート以外のポリイソシアネート、遊離基重合を開始する紫外線開始剤、及びイソシアネート反応性基を含む化合物を含有する塗料組成物の発明が開示されている。また、この塗料組成物を支持体に塗布し、紫外線照射による重合と、次いでNCO基とイソシアネート反応性基の反応により塗料を硬化させることを特徴とする塗膜形成方法の発明が開示されている。この発明は、迅速に紫外線硬化させることができ、非照射領域及び照射不良領域にも十分な硬化を提供できる。しかしながら、この発明は、耐擦り傷性、耐候性の点で満足するものではなかった。
【0006】
さらに特許文献3には、被塗物上にベース塗料組成物を塗装してベース塗膜を形成し、次にウェットオンウェット工程でクリヤ塗料組成物を塗装してクリヤ塗膜を形成し、同時に焼付け又は硬化する前に、クリヤ塗膜に活性エネルギー線を照射する複層塗膜形成方法が開示されている。この複層塗膜形成方法におけるクリヤ塗料組成物は熱的に硬化する成分及びラジカル重合性二重結合を含む成分を含有し、かつ熱的に硬化する成分には実質的にラジカル重合性二重結合を含まないことを特徴としている。この発明は、クリヤ塗料組成物が簡単な組成であり既知成分から配合できる利点があるが、加熱温度が低下できず、また耐擦り傷性の点で満足するものではなかった。
【0007】
また、従来の活性エネルギー線により硬化する成分による組成物は、酸素雰囲気下で活性エネルギー線照射を行った場合、酸素による硬化阻害が起こるのが通常であった。そのため、窒素雰囲気下で活性エネルギー線照射を行った場合に比べて、硬化性、特に硬化塗膜の硬度が低下するという問題を有していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭63−113085号公報
【特許文献2】特開平11−263939号公報
【特許文献3】特表2001−524868号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、塗装工程における加熱温度の低温化及び加熱時間の短縮が可能であり、また酸素雰囲気下の活性エネルギー線照射でも窒素雰囲気下の活性エネルギー線照射の場合と同等の硬度を有する硬化塗膜を得ることができ、さらに硬化塗膜が耐擦り傷性、耐候性に優れる、塗料組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、特定のラジカル重合性不飽和基含有化合物、水酸基含有樹脂及びイソシネート基含有化合物を含有する塗料組成物を用いることにより課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち本発明は、
1.イソソルバイドジ(メタ)アクリレート(A)、水酸基含有樹脂(B)及びイソシアネート基含有化合物(C)を含有することを特徴とする塗料組成物、
2.水酸基含有樹脂(B)が水酸基含有アクリル樹脂である1項に記載の塗料組成物、
3.水酸基含有樹脂(B)のガラス転移点温度が0℃以上である1又は2項に記載の塗料組成物、
4.イソシアネート基含有化合物(C)が、カプロラクトン変性ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとポリイソシアネート化合物とを反応させることにより得られ、かつ300〜3,800の範囲のイソシアネート当量を有するラジカル重合性不飽和基含有化合物(C−1)を含有する1ないし3のいずれか1項に記載の塗料組成物、
5.イソシアネート基含有化合物(C)が、化合物(C−1)に加え、さらに化合物(C−1)以外のイソシアネート化合物(C−2)を含有するものである1ないし4のいずれか1項に記載の塗料組成物、
6.さらに光重合開始剤(D)を含有する1ないし5のいずれか1項に記載の塗料組成物、
7.さらに前記イソソルバイドジ(メタ)アクリレート(A)及び化合物(C−1)以外のラジカル重合性不飽和基含有化合物(E)を含有する1ないし6のいずれか1項に記載の塗料組成物、
8.さらに着色顔料を含有する1ないし7のいずれか1項に記載の塗料組成物、
9.1〜8のいずれか1項に記載の塗料組成物を塗装して得られる塗装物品、
に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、塗装工程における加熱温度の低温化及び加熱時間の短縮が可能であり、また酸素雰囲気下の活性エネルギー線照射でも窒素雰囲気下の活性エネルギー線照射の場合と同等の硬度を有する硬化塗膜を得ることができ、さらに硬化塗膜が耐擦り傷性、耐候性に優れる、塗料組成物を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
塗料組成物
本発明の塗料組成物は、イソソルバイドジ(メタ)アクリレート(A)、水酸基含有樹脂(B)及びイソシアネート基含有化合物(C)を含有する。
【0014】
イソソルバイドジ(メタ)アクリレート(A)
本発明で用いるイソソルバイドジ(メタ)アクリレート(A)[以下、単に「化合物(A)」と略すことがある。]は、通常、下記一般式
【0015】
【化1】

【0016】
(上記式中、Rは水素原子又は(メタ)アクリロイル基を表わす。)で示されるものであり、特に限定されないが、イソソルバイドから以下のような(メタ)アクリレート化反応を用いて製造することができる。イソソルバイドは公知の製造方法で製造することができる。即ち、各種脱水触媒、特に強酸触媒の作用でソルビトールを脱水反応することにより生成することができる。上記触媒の例としては、例えば硫酸、パラトルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、塩酸、燐酸などが挙げられる。これらの脱水反応は、一般的に水、その他トルエンやキシレンのような有機溶媒中において効率的に行われる。(メタ)アクリレート化反応としては、(メタ)アクリル酸ハライドや(メタ)アクリル酸無水物を使用して水酸基をエステル化する方法、MMA等の(メタ)アクリル酸の低級アルコールのエステルを使用するエステル交換反応、DCC(N,N´−ジシクロヘキシルカルボジイミド)、WSCD(水溶性カルボジイミド)などのカルボジイミド系脱水縮合剤を使用して(メタ)アクリル酸と脱水縮合させる方法、若しくは酸触媒を使用して脱水縮合させる方法等である。なお、必要に応じて、製造時や製品保管中に重合が進行しないよう公知の重合禁止剤を使用してもよい。
【0017】
水酸基含有樹脂(B)
水酸基含有樹脂(B)は、1分子中に少なくとも1個の水酸基を有する樹脂である。水酸基含有樹脂(B)としては、例えば、水酸基を有する、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アルキド樹脂等の樹脂が挙げられる。これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。なかでも、水酸基含有樹脂(B)は、得られる塗膜の耐候性の点から水酸基含有アクリル樹脂であることが好ましい。
【0018】
水酸基含有アクリル樹脂は、通常、水酸基含有重合性不飽和モノマー及び該水酸基含有重合性不飽和モノマーと共重合可能な他の重合性不飽和モノマーを、それ自体既知の方法、例えば、有機溶媒中での溶液重合法、水中でのエマルション重合法等の方法により共重合せしめることによって製造することができる。
【0019】
水酸基含有重合性不飽和モノマーは、1分子中に水酸基及び重合性不飽和結合をそれぞれ1個以上有する化合物であって、具体的には、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物;該(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物のε−カプロラクトン変性体;N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド;アリルアルコール、さらに、分子末端が水酸基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0020】
また、水酸基含有重合性不飽和モノマーと共重合可能な他の重合性不飽和モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、「イソステアリルアクリレート」(商品名、大阪有機化学工業社製)、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート等のアルキル又はシクロアルキル(メタ)アクリレート;イソボルニル(メタ)アクリレート等のイソボルニル基を有する重合性不飽和モノマー;アダマンチル(メタ)アクリレート等のアダマンチル基を有する重合性不飽和モノマー;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等のビニル芳香族化合物;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等のアルコキシシリル基を有する重合性不飽和モノマー;パーフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート等のパーフルオロアルキル(メタ)アクリレート;フルオロオレフィン等のフッ素化アルキル基を有する重合性不飽和モノマー;マレイミド基等の光重合性官能基を有する重合性不飽和モノマー;N−ビニルピロリドン、エチレン、ブタジエン、クロロプレン、プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル等のビニル化合物;(メタ)アクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、β−カルボキシエチルアクリレート等のカルボキシル基含有重合性不飽和モノマー;(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、グリシジル(メタ)アクリレートとアミン化合物との付加物等の含窒素重合性不飽和モノマー;アリル(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオ−ルジ(メタ)アクリレート等の重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマー;グリシジル(メタ)アクリレート、β−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルプロピル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有重合性不飽和モノマー;分子末端がアルコキシ基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート;2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、アリルスルホン酸、スチレンスルホン酸ナトリウム塩、スルホエチルメタクリレート及びそのナトリウム塩、アンモニウム塩等のスルホン酸基を有する重合性不飽和モノマー;2−アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−アクリロイルオキシプロピルアシッドホスフェート、2−メタクリロイルオキシプロピルアシッドホスフェート等のリン酸基を有する重合性不飽和モノマー;2−ヒドロキシ−4−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2,2´−ジヒドロキシ−4−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2,2´−ジヒドロキシ−4−(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2−(2´−ヒドロキシ−5´−メタクリロイルオキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール等の紫外線吸収性官能基を有する重合性不飽和モノマー;4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−クロトノイル−4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等の紫外線安定性重合性不飽和モノマー;アクロレイン、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタクリルアミド、アセトアセトキシエチルメタクリレート、ホルミルスチロール、4〜7個の炭素原子を有するビニルアルキルケトン(例えば、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルブチルケトン)等のカルボニル基を有する重合性不飽和モノマー化合物等が挙げられ、これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0021】
水酸基含有樹脂(B)は、低温での硬化性の点、及び得られる塗膜の耐水性の点から、一般に30〜300mgKOH/g、特に40〜250mgKOH/g、さらに特に50〜200mgKOH/gの範囲内の水酸基価を有することが好ましい。
【0022】
水酸基含有樹脂(B)は、化合物(A)との反応性を高める点から、カルボキシル基等の酸基を有していることが好ましい。
【0023】
水酸基含有樹脂(B)は、1〜25mgKOH/g、特に1〜20mgKOH/gの範囲内の酸価を有することが好ましい。
【0024】
水酸基含有樹脂(B)は、一般に3,000〜100,000、特に4,000〜50,000、さらに特に5,000〜30,000の範囲内の重量平均分子量を有することが好ましい。
【0025】
水酸基含有樹脂(B)は、耐擦り傷性及び耐候性の点からガラス転移点温度が0℃以上、特に5℃〜50℃の範囲であることが好ましい。
【0026】
ここで、ガラス転移温度(℃)は、静的ガラス転移温度であり、例えば示差走査熱量計「DSC−50Q型」(島津製作所製、商品名)を用いて、試料を測定カップにとり、真空吸引して完全に溶剤を除去した後、3℃/分の昇温速度で−100℃〜100℃の範囲で熱量変化を測定し、低温側における最初のベースラインの変化点をガラス転移温度とすることができる。
【0027】
イソシアネート基含有化合物(C)
イソシアネート基含有化合物(C)は、1分子中に少なくとも1個のイソシアネート基を有する化合物である。本発明では特にイソシネート基含有化合物(C)として、カプロラクトン変性ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとポリイソシアネート化合物とを反応させることにより得られ、かつ300〜3,800の範囲のイソシアネート当量を有するラジカル重合性不飽和基含有化合物(C−1)[以下、単に「化合物(C−1)」と略すことがある。]を含有することが、得られる塗膜の耐擦り傷性及び耐候性向上の点から好適である。
【0028】
化合物(C−1)
化合物(C−1)は、カプロラクトン変性ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとポリイソシアネート化合物とを反応させることにより得られ、かつ300〜3,800の範囲のイソシアネート当量を有する。この化合物(C−1)は、活性エネルギー線の照射による硬化性に優れ、さらには低温(具体的には、常温〜100℃)での硬化性に優れる。このことにより、塗装工程における加熱温度の低温化及び加熱時間の短縮が可能になる。また、この化合物(C−1)は、得られる塗膜の耐擦り傷性及び耐候性の向上に寄与する。
【0029】
上記カプロラクトン変性ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートは、下記一般式(I)で表される化合物である。
【0030】
【化2】

【0031】
[式中、Rは水素原子又はメチル基を示し、Rは炭素数2〜6のアルキレン基を示し、nは1〜5である。]。
【0032】
カプロラクトン変性ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートは、具体的には、「プラクセルFA−1」、「プラクセルFA−2」、「プラクセルFA−2D」、「プラクセルFA−3」、「プラクセルFA−4」、「プラクセルFA−5」、「プラクセルFM−1」、「プラクセルFM−2」、「プラクセルFM−2D」、「プラクセルFM−3」、「プラクセルFM−4」、「プラクセルFM−5」(いずれもダイセル化学社製、商品名)等を挙げることができる。なかでも、活性エネルギー線硬化性の点から、一般式(I)において、Rが水素原子であり、Rがエチレン基であり、nが1〜3の範囲、特にnが2であるカプロラクトン変性ヒドロキシエチルアクリレートが好ましい。
【0033】
ポリイソシアネート化合物は、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物である。例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート化合物及びこれらのポリイソシアネートのビューレットタイプ付加物、イソシアヌレート環付加物;イソホロンジイソシアネート、4,4´−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチルシクロヘキサン−2,4−ジイソシアネート、メチルシクロヘキサン−2,6−ジイソシアネート、1,3−ジ(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4−ジ(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,2−シクロヘキサンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート化合物及びこれらのポリイソシアネートのビューレットタイプ付加物、イソシアヌレート環付加物;キシリレンジイソシアネート、メタキシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、1,4−ナフタレンジイソシアネート、4,4´−トルイジンジイソシアネート、4,4´−ジフェニルエーテルジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4´−ビフェニレンジイソシアネート、3,3´−ジメチル−4,4´−ビフェニレンジイソシアネート、ビス(4−イソシアナトフェニル)スルホン、イソプロピリデンビス(4−フェニルイソシアネート)等の芳香族ジイソシアネート化合物及びこれらのポリイソシアネートのビューレットタイプ付加物、イソシアヌレート環付加物;トリフェニルメタン−4,4´,4´´−トリイソシアネート、1,3,5−トリイソシアナトベンゼン、2,4,6−トリイソシアナトトルエン、4,4´−ジメチルジフェニルメタン−2,2´,5,5´−テトライソシアネート等の1分子中に3個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物及びこれらのポリイソシアネートのビューレットタイプ付加物、イソシアヌレート環付加物;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、ジメチロールプロピオン酸、ポリアルキレングリコール、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール等のポリオールの水酸基にイソシアネート基が過剰量となる比率でポリイソシアネート化合物を反応させてなるウレタン化付加物及びこれらのポリイソシアネートのビューレットタイプ付加物、イソシアヌレート環付加物等が挙げられる。これらは1種又は2種以上の混合物として使用できる。なかでも、塗膜の耐候性の点から、脂肪族ポリイソシアネート化合物のイソシアヌレート環付加物が好ましく、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート環付加物が特に好ましい。
【0034】
前記カプロラクトン変性ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとポリイソシアネート化合物との反応は、ヒドロキシ基含有化合物とポリイソシアネート化合物とを反応させる際の公知の方法によって行うことができる。
【0035】
上記反応は、通常有機溶液中で行うことができる。有機溶剤としては、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソブチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤等が挙げられる。これらは1種又は2種以上の混合物として使用できる。
【0036】
反応温度は、常温〜100℃であるのが好ましく、反応時間は1〜10時間であるのが好ましい。
【0037】
上記反応においては、必要に応じてジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジエチルヘキソエート、ジブチルスズサルファイト等の触媒を使用してもよい。触媒の添加量は、反応原料の総量100質量部に対して0.01〜1質量部であるのが好ましく、0.1〜0.5質量部であるのがより好ましい。また、ハイドロキノンモノメチルエーテル等の重合禁止剤を使用してもよい。重合禁止剤の添加量は、反応原料の総量100質量部に対して0.01〜1質量部であるのが好ましい。
【0038】
化合物(C−1)はイソシアネート基を有するため、カプロラクトン変性ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとポリイソシアネート化合物との反応における両者の混合比は、通常、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基がカプロラクトン変性ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのヒドロキシル基に対して当量比で過剰(イソシアネート基/ヒドロキシキル基>1.0)となる混合比である。そして、混合比を調節することで化合物(C−1)のイソシアネート当量を調節することができる。
【0039】
化合物(C−1)は300〜3,800の範囲のイソシアネート当量を有する。化合物(C−1)は、塗膜の耐擦り傷性の点から、500〜2,500の範囲のイソシアネート当量を有することが好ましい。化合物(C−1)がイソシアネート基を有することにより、本発明の塗料組成物は低温での硬化性に優れる。また、化合物(C−1)がイソシアネート基を有することにより、化合物(C−1)は水酸基含有樹脂(B)と反応して強靭な塗膜を形成する。
【0040】
また、化合物(C−1)を複層塗膜に使用する際には、化合物(C−1)のイソシアネート当量は300〜3,800、さらには500〜2,500の範囲が好ましい。イソシアネート当量を、上記範囲にすることにより、耐擦り傷性に優れる複層塗膜が得られるとともに、化合物(C−1)がベース塗膜へ染み込みにくく、付着性と仕上り性の両方が良好な複層塗膜を得ることができる。特に、ベース塗料組成物が光輝顔料を含有する塗料組成物の場合、化合物(C−1)がベース塗膜へ染み込みにくいことにより、ベース塗膜中の光輝顔料の配向が乱れることが抑えられ、得られる複層塗膜の仕上り性は良好となる。
【0041】
ここで、本明細書において、イソシアネート当量とは、イソシアネート基1個あたりのモル質量をいう。当該化合物のg分子量をM、当該化合物1分子中に含まれるイソシアネート基の数をνとすると、イソシアネート当量は、M/νで表わされる。
【0042】
また、本明細書においてイソシアネート当量は、ジブチルアミンを用いた逆滴定により求められるイソシアネート当量である。逆滴定は、試料に過剰のジブチルアミンを加えて反応させ、滴定指示薬としてブロモフェノールブルーを用い残余のジブチルアミンを塩酸水溶液で滴定することにより行う。
【0043】
化合物(C−1)は不飽和基当量が300〜2,000であることが好ましく、より好ましくは500〜1,000である。不飽和基当量がこの範囲であると、より耐擦り傷性及び耐候性に優れる塗膜を得ることができる。
【0044】
ここで、本明細書において、不飽和基当量とは、過剰のドデシルメルカプタンを化合物(C−1)に加えることにより、不飽和基1個あたりのモル質量をいう。当該化合物のg分子量をM、当該化合物1分子中に含まれる不飽和基の数をσとすると、不飽和基当量はM/σで表される。
【0045】
また、本明細書において不飽和基当量は、ラジカル重合性不飽和基にドデシルメルカプタンを付加し、残余のドデシルメルカプタンをヨウ素溶液で逆滴定することにより求められる。
【0046】
化合物(C−1)の分子量は特に限定されるものではなく、好ましくは重量平均分子量が500〜2,000であり、より好ましくは800〜1,500である。重量平均分子量がこれら範囲であることは、取扱い易い塗料粘度にできる点で意義がある。
【0047】
ここで本明細書において重量平均分子量は、溶媒としてテトラヒドロフランを使用し、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(東ソー(株)社製、「HLC8120GPC」)で測定した保持時間(保持容量)を、ポリスチレンの重量平均分子量を基準にして換算した値である。カラムは、「TSKgel G−4000HXL」、「TSKgel G−3000HXL」、「TSKgel G−2500HXL」、「TSKgel G−2000XL」(いずれも東ソー(株)社製、商品名)の4本を用い、移動相;テトラヒドロフラン、測定温度;40℃、流速;1ml/分、検出器;RIの条件で行ったものである。
【0048】
イソシアネート化合物(C−2)
本発明においてイソシアネート基含有化合物(C)としては、上記化合物(C−1)以外のイソシアネート化合物(C−2)を含有することができる。
【0049】
イソシアネート化合物(C−2)は、分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物であって、上記化合物(C−1)の説明において例示したポリイソシアネート化合物が挙げられる。なかでも、得られる塗膜の耐候性の点から、脂肪族ポリイソシアネート化合物のイソシアヌレート環付加物が好ましく、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート環付加物が特に好ましい。
【0050】
光重合開始剤(D)
本発明の塗料組成物はさらに光重合開始剤(D)を含有することができる。
【0051】
光重合開始剤としては、活性エネルギー線を吸収してラジカルを発生する開始剤であれば特に限定されることなく使用できる。
【0052】
前記光重合開始剤としては、例えばベンジル、ジアセチル等のα−ジケトン化合物;ベンゾイン等のアシロイン化合物;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のアシロインエーテル化合物;チオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、チオキサントン−4−スルホン酸等のチオキサントン化合物;ベンゾフェノン、4,4´−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4´−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン化合物;ミヒラーケトン化合物;アセトフェノン、2−(4−トルエンスルホニルオキシ)−2−フェニルアセトフェノン、p−ジメチルアミノアセトフェノン、α,α´−ジメトキシアセトキシベンゾフェノン、2,2´−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、p−メトキシアセトフェノン、2−メチル〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノ−1−プロパノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、α−イソヒドロキシイソブチルフェノン、α,α´−ジクロル−4−フェノキシアセトフェノン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン等のアセトフェノン化合物;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(アシル)フォスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキサイド化合物;アントラキノン、1,4−ナフトキノン等のキノン;フェナシルクロライド、トリハロメチルフェニルスルホン、トリス(トリハロメチル)−s−トリアジン等のハロゲン化合物;ジ−t−ブチルパーオキサイド等の過酸化物等が挙げられる。これらは1種又は2種以上の混合物として使用できる。
【0053】
光重合開始剤の市販品としては、例えば、イルガキュア(IRGACURE)−184、イルガキュア−261、イルガキュア−500、イルガキュア−651、イルガキュア−907、イルガキュア−CGI−1700(チバ スペシャルティ ケミカルズ社製、商品名)、ダロキュア(Darocur)−1173、ダロキュア−1116、ダロキュア−2959、ダロキュア−1664、ダロキュア−4043(メルクジャパン社製、商品名)、カヤキュアー(KAYACURE)−MBP、カヤキュアー−DETX−S、カヤキュアー−DMBI、カヤキュアー−EPA、カヤキュアー−OA(日本化薬社製、商品名)、ビキュア(VICURE)−10、ビキュア−55〔ストウファー社(STAUFFER Co., LTD.)製、商品名〕、トリゴナル(Trigonal)P1〔アクゾ社(AKZO Co., LTD.)製、商品名〕、サンドレイ(SANDORAY)1000〔サンドズ社(SANDOZ Co., LTD.)製、商品名〕、ディープ(DEAP)〔アプジョン社(APJOHN Co., LTD.)製、商品名〕、カンタキュア(QUANTACURE)−PDO、カンタキュア−ITX、カンタキュア−EPD〔ウォードブレキンソプ社(WARD BLEKINSOP Co., LTD.)製、商品名〕等を挙げることができる。
【0054】
ラジカル重合性不飽和基含有化合物(E)
本発明の塗料組成物はさらに化合物(A)及び(C−1)以外のラジカル重合性不飽和基含有化合物(E)を含有することができる。
【0055】
ラジカル重合性不飽和基含有化合物(E)としては、単官能ラジカル重合性不飽和基含有化合物、多官能ラジカル重合性不飽和基含有化合物が挙げられる。
【0056】
単官能ラジカル重合性不飽和基含有化合物としては、例えば、一価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化物等が挙げられる。具体的には、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ネオペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、N−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド等が挙げられる。
【0057】
また、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレート;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、2−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、2−カルボキシプロピル(メタ)アクリレート、5−カルボキシペンチル(メタ)アクリレート等のカルボキシル基含有(メタ)アクリレート;グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等のグリシジル基含有ラジカル重合性不飽和基含有化合物;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、α−クロルスチレン等のビニル芳香族化合物;N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の含窒素アルキル(メタ)アクリレート;アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド等の重合性アミド化合物等が挙げられる。
【0058】
多官能ラジカル重合性不飽和基含有化合物としては、例えば、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化物等が挙げられる。具体的には、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAエチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリレート化合物;グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンプロピレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン変性トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート等のトリ(メタ)アクリレート化合物;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等のテトラ(メタ)アクリレート化合物;その他、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。さらに、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂、ポリエステル(メタ)アクリレート樹脂等が挙げられる。ウレタン(メタ)アクリレート樹脂は、例えばポリイソシアネート化合物、ヒドロキシルアルキル(メタ)アクリレート及びポリオール化合物を原料として用い、イソシアネート基に対してヒドロキシル基が等モル量もしくは過剰になるような量で反応させて得ることができる。これらラジカル重合性不飽和基含有化合物は単独で又は2種以上組合せて使用することができる。
【0059】
ラジカル重合性不飽和基含有化合物(E)は、塗膜の耐擦り傷性の点から、3官能以上のラジカル重合性不飽和基含有化合物を含むことが好ましい。
【0060】
ラジカル重合性不飽和基含有化合物(E)は、低温硬化性の点から、水酸基を有するラジカル重合性不飽和基含有化合物を含むことが好ましい。
【0061】
ラジカル重合性不飽和基含有化合物(E)は、低温硬化性及び塗膜の耐擦り傷性の点から、不飽和基当量が100〜1,500であることが好ましく、より好ましくは150〜1,000である。
【0062】
ラジカル重合性不飽和基含有化合物(E)としては、耐擦り傷性、耐候性の点から脂肪族ウレタンアクリレート化合物を用いることが好ましい。
【0063】
本発明の塗料組成物における上記各成分の含有量は、特に限定されないが、次に述べる範囲が下記塗膜性能の点から好ましい。
【0064】
化合物(A)の含有量は、好ましくは、本発明の塗料組成物の不揮発分100質量部に対して、1〜80質量部であり、より好ましくは20〜70質量部である。これらの範囲は、擦り傷、耐酸性、さらにウエットオンウエットで複層膜を形成する場合には、仕上がり性(モドリ耐性)の点で意義がある。
【0065】
水酸基含有樹脂(B)の含有量は、好ましくは、本発明の塗料組成物の不揮発分100質量部に対して、1〜70質量部であり、より好ましくは10〜60質量部である。これらの範囲は、低温硬化性の点で意義がある。
【0066】
上記水酸基含有樹脂(B)及びイソシアネート基含有化合物(C)の配合割合は、該イソシアネート基含有化合物(C)の有するイソシアネート基の合計量と水酸基含有樹脂(B)の有する水酸基とが、当量比でNCO/OH=0.30〜2.00となる範囲が好ましく、0.50〜1.80となる範囲がより好ましい。これら範囲は、塗膜の耐擦り傷性及び耐候性の点で意義がある。
【0067】
化合物(C−1)の含有量は、好ましくは、本発明の塗料組成物の不揮発分100質量部に対して、1〜70質量部であり、より好ましくは10〜40質量部である。これらの範囲は、耐擦り傷性及び耐候性の点で意義がある。
【0068】
イソシアネート化合物(C−2)の含有量は、好ましくは、本発明の塗料組成物の不揮発分100質量部に対して、5〜30質量部であり、より好ましくは10〜25質量部である。これらの範囲は、低温硬化性の点で意義がある。
【0069】
化合物(C−1)及びイソシアネート化合物(C−2)を併用する場合には、化合物(C−1)及びイソシアネート化合物(C−2)の配合割合は、化合物(C−1)の有するイソシアネート基とイソシアネート化合物(C−2)の有するイソシアネート基とが、当量比で化合物(C−1)のNCO/イソシアネート化合物(C−2)のNCO=0.10〜9.00となる範囲が好ましく、0.20〜4.00となる範囲がより好ましい。これら範囲は、塗膜の耐酸性の点で意義がある。
【0070】
また光重合開始剤(D)を用いる場合、その含有量は、好ましくは、本発明の塗料組成物の不揮発分100質量部に対して、1〜8質量部であり、より好ましくは2〜6質量部である。これらの範囲は、活性エネルギー線に対する反応性の点で意義がある。
【0071】
ラジカル重合性不飽和基含有化合物(E)を用いる場合、その含有量は、好ましくは、本発明の塗料組成物の不揮発分100質量部に対して、1〜50質量部であり、より好ましくは5〜40質量部である。これらの範囲は、耐擦り傷性及び耐候性の点で意義がある。
【0072】
本発明の塗料組成物は、さらに必要に応じて、着色材、体質顔料、硬化触媒、増粘剤、紫外線吸収剤、光安定剤、消泡剤、防錆剤、可塑剤、有機溶剤、表面調整剤、沈降防止剤等の通常の塗料用添加剤をそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて含有することができる。
【0073】
着色材としては、着色顔料や染料が使用でき、着色顔料としては、アルミニウムペースト、パール粉、グラファイト、MIO等の光輝顔料、チタン白、フタロシアニンブルー、カーボンブラック等が挙げられる。体質顔料としては、例えば、タルク、硫酸バリウム等を挙げることができる。着色材や体質顔料を配合する場合、その含有量は、好ましくは、本発明の塗料組成物の不揮発分100質量部に対して0.01〜250質量部の範囲内が適当である。また本発明の塗料組成物をクリヤ塗料として用いる場合には透明性を失わない程度に上記着色材や体質顔料の含有量を調整することが望ましい。
【0074】
紫外線吸収剤としては、従来から公知のものが使用でき、例えば、ベンゾトリアゾール系吸収剤、トリアジン系吸収剤、サリチル酸誘導体系吸収剤、ベンゾフェノン系吸収剤等を使用できる。紫外線吸収剤としては、また、公知の重合性紫外線吸収剤、例えば2−(2´−ヒドロキシ−5´−メタクリロイルオキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2,2´−ジヒドロキシ−4(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノンなども使用することが可能である。紫外線吸収剤の市販品としては、例えば、TINUVIN900、TINUVIN928、TINUVIN348−2、TINUVIN479、TINUVIN405(チバ スペシャルティ ケミカルズ社製、商品名)、RUVA93(大塚化学社製、商品名)等が挙げられる。
【0075】
上記紫外線吸収剤を配合する場合、その含有量は、好ましくは、本発明の塗料組成物の不揮発分100質量部に対して0.1〜10質量部の範囲内が適当である。
【0076】
一方、光安定剤は、被膜の劣化過程で生成する活性なラジカル種を捕捉するラジカル連鎖禁止剤として用いられるもので、例えば、ヒンダードアミン系の光安定剤等が挙げられる。
【0077】
光安定剤のなかで優れた光安定化作用を示す光安定剤としてヒンダードピペリジン類が挙げられる。また、公知の重合性光安定剤も使用することが可能である。光安定剤の市販品としては、例えば、TINUVIN123、TINUVIN152、TINUVIN292(チバ スペシャルティ ケミカルズ社製、商品名)、HOSTAVIN3058(クラリアント社製、商品名)、アデカスタブLA−82(株式会社ADEKA製、商品名)等が挙げられる。
【0078】
上記光安定剤を配合する場合、その含有量は、好ましくは、本発明の塗料組成物の不揮発分100質量部に対して0.1〜5質量部の範囲内が適当である。
【0079】
本発明の塗料組成物は、有機溶剤型塗料組成物及び水性塗料組成物のいずれであってもよいが、貯蔵安定性等の観点から、有機溶剤型塗料組成物であることが好適である。なお、本明細書において、水性塗料組成物は溶媒の主成分が水である塗料であり、有機溶剤型塗料組成物は溶媒として実質的に水を含有しない塗料である。
【0080】
有機溶剤型塗料の場合に使用される有機溶剤は特に限定されない。具体的には、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルアミルケトン、エチルイソアミルケトン、ジイソブチルケトン、メチルへキシルケトン等のケトン系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、安息香酸メチル、プロピオン酸メチル等のエステル系溶剤;テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン等のエーテル系溶剤;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテート等のグリコールエーテル系溶剤;芳香族炭化水素系溶剤、脂肪族炭化水素系溶剤等が挙げられる。
【0081】
塗装物品
本発明は、上記塗料組成物を塗装して得られる塗装物品を提供する。
【0082】
本発明の塗料組成物が塗装される被塗物は特に限定されない。例えば、鉄、アルミニウム、真鍮、銅、ステンレス鋼、ブリキ、亜鉛メッキ鋼、合金化亜鉛(Zn−Al、Zn−Ni、Zn−Fe等)メッキ鋼等の金属材料;ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂及び各種のFRP等のプラスチック材料;ガラス、セメント、コンクリート等の無機材料;木材;繊維材料(紙、布等)等を挙げることができ、なかでも、金属材料及びプラスチック材料が好適である。
【0083】
また、本発明の塗料組成物が塗装される被塗物の用途としては、特に制限されず、例えば、乗用車、トラック、オートバイ、バス等の自動車車体の外板部;自動車部品;携帯電話、オーディオ機器等の家庭電気製品の外板部等を挙げることができ、なかでも、自動車車体の外板部及び自動車部品が好ましい。
【0084】
被塗物は、上記金属材料又はそれから成形された車体等の金属表面に、例えば、リン酸塩処理、クロメート処理、ジルコニウム処理、複合酸化物処理等の表面処理が施されたものであってもよい。また、被塗物は、上記金属材料、車体等に各種電着塗料等の下塗り塗膜が形成されたものであってもよい。また、被塗物は、上記プラスチック材料にプライマー塗膜が形成されたものであってもよい。
【0085】
また、被塗物は、上記プラスチック材料に、水性又は有機溶剤型プライマー塗膜の未硬化又は硬化塗膜であってもよく、さらに必要に応じて予備加熱(プレヒート)を施したものであってもよい。
【0086】
さらに被塗物は、金属材料やプラスチック材料上の下塗り塗膜又はプライマー塗膜の上に上塗りベース塗膜が形成されたものでもよく、また該上塗りベース塗膜の上に上塗りクリヤ塗膜が形成されたものであってもよい。これら下塗り塗膜、上塗りベース塗膜、上塗りクリヤ塗膜を形成する塗料としては、従来公知の塗料を使用することができる。
【0087】
上記のうち、上塗りベース膜を形成する塗料としては、例えばアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、セルロースアセテートブチレート等の塗膜形成性樹脂と、それらの有する硬化性官能基に応じた硬化剤とからなる塗膜形成性成分、および、上記着色顔料やアルミニウム粉、アルミナ粉、ブロンズ粉、銅粉、スズ粉、亜鉛粉、リン化鉄、金属コーティングマイカ粉、二酸化チタンコーティングマイカ粉、二酸化チタンコーティングガラス粉等の光輝性顔料等の着色成分を含んでいるもので、その形態としても、有機溶剤型、水性型等、当業者によってよく知られている上塗りベース塗料を挙げることができる。上塗りベース塗料の膜厚は、乾燥膜厚として10〜60μmであることが好ましく、15〜50μmであることが隠蔽性やワキタレ防止の点からより好ましい。また、上塗りベース塗料が水性型である場合、得られた未硬化のベース塗膜に対してプレヒート工程を行うことが好ましい。かかるプレヒート工程は、例えば、室温〜110℃程度の温度で3〜10分間、放置または乾燥させるものである。
【0088】
本発明の塗料組成物は、塗装時において、不揮発分含有率を通常15質量%以上、特に20〜35質量%の範囲内とし、さらに、粘度を14〜20秒/フォードカップ#4/20℃の範囲内に調整しておくことが好ましい。
【0089】
本発明の塗料組成物を塗装する方法は、特に限定されるものではなく、例えば、エアスプレー、エアレススプレー、回転霧化塗装機、浸漬塗装、刷毛等により塗装することができる。塗装の際、静電印加を行ってもよい。塗装膜厚は、硬化膜厚で通常10〜100μm、好ましくは10〜50μm、さらに好ましくは15〜35μmの範囲内とすることができる。
【0090】
塗装後には、塗装直後の塗膜の揮発分を減少させる又は揮発分を除去するために、予備加熱(プレヒート)、エアブローを行うことができる。プレヒートは、通常、塗装された被塗物を乾燥炉内で、50〜110℃、好ましくは60〜90℃の温度で1〜30分間直接的又は間接的に加熱することにより行うことができる。また、エアブローは、通常、被塗物の塗装面に常温又は25℃〜80℃の温度に加熱された空気を吹き付けることにより行うことができる。
【0091】
本発明の塗料組成物を硬化させる際には、通常、加熱及び活性エネルギー線照射を行う。加熱及び活性エネルギー線照射の順序は特に限定されず、加熱の後に活性エネルギー線照射を行ってもよく、活性エネルギー線照射の後に加熱を行ってもよく、加熱と活性エネルギー線照射とを同時に行ってもよい。
【0092】
また、加熱と活性エネルギー線照射とを同時に行う際には、活性エネルギー線の照射源からの熱(例えばランプが発する熱)を熱源としてもよい。さらに、加熱の後に活性エネルギー線照射を行う際には、被塗物が熱を帯びた状態(余熱を持った状態)で活性エネルギー線照射を行ってもよい。
【0093】
加熱条件は特に限定されるものではない。例えば、50〜140℃の温度で1〜60分間加熱することができる。本発明の塗料組成物は、低温での硬化性を有しており、高い温度(例えば100℃以上)で加熱せずとも耐擦り傷性、耐候性等の所望の性能が得られることから、50〜100℃の温度で加熱することが好ましい。また、本発明の塗料組成物は、活性エネルギー線でも硬化するため、長い時間で加熱せずとも耐擦り傷性、耐候性等の所望の性能が得られることから、1〜30分間加熱することが好ましく、1〜20分間加熱することがより好ましい。
【0094】
上記活性エネルギー線としては、例えば紫外線、可視光線、レーザー光(近赤外線、可視光レーザー、紫外線レーザー等)が挙げられる。その照射量は、通常100〜5,000mJ/cm、好ましくは300〜3,000mJ/cmの範囲内が好ましい。また、活性エネルギー線の照射源としては、従来から使用されているもの、例えば超高圧、高圧、中圧、低圧の水銀灯、FusionUV社製無電極ランプ、ケミカルランプ、カーボンアーク灯、キセノン灯、メタルハライド灯、蛍光灯、タングステン灯、太陽光等の各光源により得られる光源、紫外カットフィルターによりカットした可視領域の光線、可視領域に発振線を持つ各種レーザー等が使用できる。また、パルス発光型の活性エネルギー線照射装置も使用できる。照射雰囲気としては、空気さらには炭酸ガスや窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下とすることができる。
【実施例】
【0095】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。尚、「部」及び「%」は、別記しない限り「質量部」及び「質量%」を示す。
【0096】
イソソルバイドジアクリレートの製造
製造例1
1L四ツ口フラスコにイソソルバイド146g(1mol)、アクリル酸144g(2mol)、p−ベンゾキノン0.15g(0.0014mol)、メタンスルホン酸1.5g(0.015mol)、トルエン700gを仕込み、空気導入しながらオイルバス中で120℃に加熱、10時間攪拌した。反応の進行に伴って出てくる水を留去しつつ反応を行った。反応終了後に室温まで冷却し、蒸留水100mlにて水洗を行う事で触媒を除去した。その後、ハイドロキノン0.025gを添加し、減圧下で脱溶剤を行う事で淡黄色粘凋液体を得た。
【0097】
このものを1H−NMR、液体クロマトグラフィー(HPLC)、GC−マススペクトルで解析し、下記のイソソルバイドジアクリレートであることを確認した。
【0098】
水酸基含有樹脂(B)の製造
製造例2
攪拌機、温度計、還流冷却器、及び滴下装置を備えた反応容器に、キシレン80部を仕込み、窒素ガスを吹き込みながら100℃で攪拌し、この中にスチレン10部、メチルメタクリレート40部、i−ブチルメタクリレート8部、n−ブチルアクリレート20部、2−ヒドロキシエチルアクリレート20部、アクリル酸2部及び2,2´−アゾビスイソブチロニトリル4部の混合物を3時間かけて均一速度で滴下し、さらに同温度で2時間熟成した。その後、さらにキシレン10部及び2,2´−アゾビスイソブチロニトリル0.5部の混合物を1時間かけて反応容器に滴下し、滴下終了後1時間熟成させ、不揮発分55%の水酸基含有アクリル樹脂(B−1)溶液を得た。得られた水酸基含有アクリル樹脂(B−1)の酸価は15.6mgKOH/g、水酸基価は96.6mgKOH/g、重量平均分子量は20,000、ガラス転移点温度は14.6℃であった。
【0099】
製造例3
攪拌機、温度計、還流冷却器、及び滴下装置を備えた反応容器に、キシレン80部を仕込み、窒素ガスを吹き込みながら100℃で攪拌し、この中にスチレン10部、メチルメタクリレート33部、i−ブチルメタクリレート8部、n−ブチルアクリレート27部、2−ヒドロキシエチルアクリレート20部、アクリル酸2部及び2,2´−アゾビスイソブチロニトリル4部の混合物を3時間かけて均一速度で滴下し、さらに同温度で2時間熟成した。その後、さらにキシレン10部及び2,2´−アゾビスイソブチロニトリル0.5部の混合物を1時間かけて反応容器に滴下し、滴下終了後1時間熟成させ、不揮発分55%の水酸基含有アクリル樹脂(B−2)溶液を得た。得られた水酸基含有アクリル樹脂(B−2)の酸価は15.6mgKOH/g、水酸基価は96.6mgKOH/g、重量平均分子量は20,000、ガラス転移点温度は3.9℃であった。
【0100】
製造例4
攪拌機、温度計、還流冷却器、及び滴下装置を備えた反応容器に、キシレン80部を仕込み、窒素ガスを吹き込みながら100℃で攪拌し、この中にスチレン20部、メチルメタクリレート40部、i−ブチルメタクリレート18部、2−ヒドロキシエチルアクリレート20部、アクリル酸2部及び2,2´−アゾビスイソブチロニトリル4部の混合物を3時間かけて均一速度で滴下し、さらに同温度で2時間熟成した。その後、さらにキシレン10部及び2,2´−アゾビスイソブチロニトリル0.5部の混合物を1時間かけて反応容器に滴下し、滴下終了後1時間熟成させ、不揮発分55%の水酸基含有アクリル樹脂(B−3)溶液を得た。得られた水酸基含有アクリル樹脂(B−3)の酸価は15.6mgKOH/g、水酸基価は96.6mgKOH/g、重量平均分子量は20,000であった。ガラス転移点温度は45.6℃であった。
【0101】
化合物(C−1)の製造
製造例5
攪拌機、温度計、還流冷却器、及び滴下装置を備えた反応容器に、メトキシプロピルアセテート33.8部、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート環付加物(NCO含量21%)50.0部、ジブチルスズジラウレート0.02部、及びハイドロキノンモノメチルエーテル0.2部の混合物を仕込んだ。該混合物を攪拌しながら、50℃まで加熱した。続いて、混合物の温度が60℃を超えないようにしながら、プラクセルFA−2D(商品名、ダイセル化学社製、一般式(I)においてRが水素原子であり、Rがエチレン基であり、nが2であるカプロラクトン変性ヒドロキシエチルアクリレート)85.2部を8時間かけて滴下し、混合物を60℃で更に1時間撹拌し、不揮発分80%の化合物(C−1−1)溶液を得た。得られた化合物(C−1−1)のイソシアネート当量は2,731、不飽和基当量は546、重量平均分子量は1,366であった。
【0102】
製造例6〜8
製造例5において、配合を表1に記載の配合にした以外は、製造例1と同様にして、化合物(C−1−2)〜(C−1−4)溶液を得た。得られた化合物のイソシアネート当量、不飽和基当量、及び重量平均分子量を表1に示す。また表1中の(注1)〜(注2)は下記の通りである。
【0103】
【表1】

【0104】
(注1)プラクセルFA−1:商品名、ダイセル化学社製、一般式(I)においてRが水素原子であり、Rがエチレン基であり、nが1であるカプロラクトン変性ヒドロキシエチルアクリレート
(注2)プラクセルFM−3:商品名、ダイセル化学社製、一般式(I)においてRがメチル基であり、Rがエチレン基であり、nが3であるカプロラクトン変性ヒドロキシエチルメタクリレート。
【0105】
塗料組成物の作製
実施例1
製造例1で得られたイソソルバイドジアクリレート15.8部、製造例2で得られた水酸基含有アクリル樹脂(B−1)55%溶液95.6部(不揮発分52.6部)、製造例5で得られた化合物(C−1−1)80%溶液26.4部(不揮発分21.1部)、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート環付加物(NCO含量21%)10.5部、ダロキュア1173(メルクジャパン社製、商品名、光重合開始剤)3.0部、TINUVIN 400(BASF社製、商品名、光安定剤)1.0部、TINUVIN 292(BASF社製、商品名、紫外線吸収剤)0.5部を均一に混合し、さらに酢酸ブチルで不揮発分を調整して、不揮発分50%の塗料組成物No.1を得た。塗料組成物No.1における(C−1)成分及び(C−2)成分のイソシアネート基(NCO)の合計量と(B)成分の水酸基(OH)との当量比は、NCO/OH=0.77であり、(C−1)成分の有するイソシアネート基(NCO)と(C−2)成分の有するイソシアネート基(NCO)との当量比は、(C−1)成分のNCO/(C−2)成分のNCO=0.12である。下記試験板作製方法にしたがい、得られた塗料組成物No.1を塗装した試験板を作製し、各種評価に供した。評価結果を表2に示した。
【0106】
実施例2〜10、比較例1〜3
実施例1において、各成分の配合を表2に示す配合とする以外は実施例1と同様にして、実施例2〜10及び比較例1〜3の不揮発分50%の塗料組成物No.2〜13を得た。下記試験板作製方法にしたがい、各塗料組成物を塗装した試験板を作製し、各種評価に供した。評価結果を表2に示した。なお表2の配合量は、不揮発分の配合量を示す。また表2中の(注3)〜(注4)は下記の通りである。
(注3)イルガキュア 819:BASF社製、商品名、光重合開始剤
(注4)黒色ペースト:メトキシプロピルアセテート52.4部、カーボンブラック15部、DISPERBYK−2001(ビックケミー・ジャパン社製分散剤、有効成分46%)32.6部を混合しミルベースを作成し、ビーズミルで60分間分散し、顔料濃度15重量%の黒色ペーストを得た。
【0107】
【表2】

【0108】
(試験板作製方法)
ポリメチルメタクリレート樹脂板に各塗料組成物を乾燥膜厚が20μmとなるようエアスプレー塗装した。続いて、50℃で3分間プレヒートした後、空気雰囲気下(試験板I)、窒素雰囲気下(試験板II)のそれぞれについて、超高圧水銀灯を用い1,500mJ/cmの照射量で活性エネルギー線を照射した。続いて90℃で10分間乾燥させて各試験板を得た。
【0109】
またポリプロピレンNX−280AK(三菱油化株式会社製、板厚3.2mm)をトリクロルエタン蒸気脱脂1分間行った後に80℃で10分乾燥させた。次いで、プライマーとして「ソフレックスNo.1000」(関西ペイント株式会社製、ポリオレフィン含有導電有機溶剤型プライマー塗料)を乾燥膜厚15μm塗装し、常温で3分間セッティング後、ベース塗料として「ソフレックス#420シルバー」(関西ペイント(株)製、商品名、ポリエステルウレタン系1液型有機溶剤系メタリック塗料)を乾燥膜厚15μmになるように静電塗装し、室温で3分間セッティングを行って被塗物とした。この被塗物に各塗料組成物を乾燥膜厚が20μmとなるようエアスプレー塗装した。続いて、50℃で3分間プレヒートした後、空気雰囲気下、超高圧水銀灯を用い1,500mJ/cmの照射量で活性エネルギー線を照射し、続いて90℃で10分間乾燥させて各試験板(試験板III)を得た。
【0110】
(耐溶剤性)
試験板I及び試験板IIIの塗膜面に、アセトンを浸み込ませたガーゼにて塗膜面に荷重約1kg/cmの圧力をかけて、約5cmの長さの間を往復させて塗膜面に跡がつくまでの回数を数え、下記基準により耐溶剤性を評価した。
A:200往復でも全く跡がつかないもの
B:100〜199往復で跡がつくもの
C:50〜99往復で跡がつくもの
D:49往復以下で跡がつくもの。
【0111】
(塗膜面の硬化性)
試験板I及び試験板IIの塗膜面の硬化性を塗膜面のタック性と爪による傷つき有無で評価した。
A:タック無かつ爪による傷つき無
B:タック無だが爪で傷付き有
C:タック有。
【0112】
(耐擦り傷性)
試験板I及び試験板IIIについて、ASTM D1044に準じて、テーバー磨耗試験(磨耗輪CF−10P、荷重500g、100回転)を行った。試験前後の塗膜について、JIS K5600−4−7(1999)の鏡面光沢度(60度)に準じて各塗面の光沢度を測定した。試験前の光沢度に対する試験後の光沢度を光沢保持率(%)として求め、下記基準により評価した。
A:光沢保持率90%以上
B:光沢保持率80%以上90%未満
C:光沢保持率60%以上80%未満
D:光沢保持率60%未満。
【0113】
(仕上り性)
試験板IIIを目視にて観察し、メタリックムラの発生程度を下記基準で評価した。
A:メタリックムラがほとんど認められない
B:メタリックムラがわずかに認められる
C:メタリックムラが多く認められる。
【0114】
(耐候性)
試験板Iについて、JIS K 5600−7−8(1999)に準拠して、サンシャインウェザオメーターを用いて2000時間の耐候性試験を行った。試験後の試験板について、外観及び付着性を評価した:
<外観>
A:塗膜表面に異常が認められず、初期と試験後における試験板において、JIS Z 8730に準拠する色差ΔEが0.3未満である。
B:僅かな黄変が認められ、初期と試験後における試験板において、JIS Z 8730に準拠する色差ΔEが0.3以上で且つ0.5未満であり、製品とした場合に問題がないレベル。
C:塗膜に黄変が認められ、初期と試験後における試験板において、JIS Z 8730に準拠する色差ΔEが0.5以上で且つ0.8未満である。
D:塗膜の黄変が認められ、初期と試験後における試験板において、JIS Z 8730に準拠する色差ΔEが0.8以上であるか、もしくはワレが生じているもの。
【0115】
<付着性>
各塗面にJIS K 5600−5−6(1990)に準じて塗膜に2mm×2mmのゴバン目100個を作り、その面に粘着テープを貼着し、急激に剥がした後に、塗面に残ったゴバン目塗膜の数を評価した。
A:残存個数/全体個数=100個/100個
C:残存個数/全体個数=99個〜90個/100個
D:残存個数/全体個数=89個以下/100個。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソソルバイドジ(メタ)アクリレート(A)、水酸基含有樹脂(B)及びイソシアネート基含有化合物(C)を含有することを特徴とする塗料組成物。
【請求項2】
水酸基含有樹脂(B)が水酸基含有アクリル樹脂である請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項3】
水酸基含有樹脂(B)のガラス転移点温度が0℃以上である請求項1又は2に記載の塗料組成物。
【請求項4】
イソシアネート基含有化合物(C)が、カプロラクトン変性ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとポリイソシアネート化合物とを反応させることにより得られ、かつ300〜3,800の範囲のイソシアネート当量を有するラジカル重合性不飽和基含有化合物(C−1)を含有する請求項1ないし3のいずれか1項に記載の塗料組成物。
【請求項5】
イソシアネート基含有化合物(C)が、化合物(C−1)に加え、さらに化合物(C−1)以外のイソシアネート化合物(C−2)を含有するものである請求項1ないし4のいずれか1項に記載の塗料組成物。
【請求項6】
さらに光重合開始剤(D)を含有する請求項1ないし5のいずれか1項に記載の塗料組成物。
【請求項7】
さらに前記イソソルバイドジ(メタ)アクリレート(A)及び化合物(C−1)以外のラジカル重合性不飽和基含有化合物(E)を含有する請求項1ないし6のいずれか1項に記載の塗料組成物。
【請求項8】
さらに着色材を含有する請求項1ないし7のいずれか1項に記載の塗料組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の塗料組成物を塗装して得られる塗装物品。

【公開番号】特開2012−246351(P2012−246351A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−117365(P2011−117365)
【出願日】平成23年5月25日(2011.5.25)
【出願人】(000001409)関西ペイント株式会社 (815)
【Fターム(参考)】