説明

塗料組成物及び当該組成物を含む反射塗膜系

本願発明による塗料組成物は本質的にクロム酸塩不含であり、かつ、樹脂、金属塩及び干渉顔料を含有する。当該干渉顔料は雲母を含有し、この雲母はその上に施与された太陽光反射塗料を有する。反射塗膜系は、支持体上に施与された塗料組成物から形成された硬化フィルムを含む。当該硬化フィルムは、ASTM 1746により測定された少なくとも75%の透明度を有する。さらに硬化フィルムは、ASTM E 1918及びASTM E 903により測定された少なくとも55%の太陽光反射率を有する。当該硬化フィルムは優れた耐腐蝕特性及び支持体に対する付着性を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2007年10月2日に提出された仮出願番号60/977,031のUS特許出願の優先権及び全ての利益を請求する。
【0002】
本発明は、一般には塗料組成物及びより詳細には、当該組成物から形成されかつ支持体上に施与された硬化フィルムを含む反射塗膜系に関する。当該硬化フィルムは透明であり、かつ優れた太陽光反射能及び耐腐蝕特性を有する。
【0003】
コイル被覆組成物は公知であり、かつ典型的には支持体、たとえば金属支持体に対して塗布され、支持体の最終用途に先だって硬化フィルムを形成する。支持体の典型的な最終用途は、家庭用電化製品、自動車部品及び自動車アッセンブリ及び建築用途を含む。特に、コイル被覆組成物は、一般に、支持体を建築用途において、たとえば住宅用建築物又は商業用建築物における屋根材又は雨樋において適用する場合に使用される。硬化フィルムは、支持体に対して美的特性及びエネルギー保存特性の双方を提供するために使用され、かつ支持体が金属支持体である場合には、この硬化フィルムはさらに金属支持体を不動態化するために使用され、それにより腐蝕に対する耐性が提供される。
【0004】
コイル被覆組成物の選択は、多くの好ましい特性及びコイル被覆組成物から形成された硬化フィルムの特性、たとえば太陽光反射特性、放射特性、耐腐蝕特性、耐候特性、紫外線保護特性及び美的特性に依存する。
【0005】
太陽光反射能は、典型的にはアルベド(α)値として呼称され、かつ、一般には、太陽光の可光線、赤外線及び紫外線の波長を含む太陽光を反射する能力の尺度である。アルベド値は、入射束に対する反射太陽光放射束の値であり、かつ0.0〜1.0の値として定量される。0.0のアルベド値は、太陽光の全吸収を示し、その一方で1.0のアルベド値は、太陽光の全反射を意味する。Environmental Protection Agencyガイドライン下でエナジースター効率に適合させるために、アルベド値は、ほぼ傾斜のない屋根材に関しては0.65と同じ又はそれ以上でなければならず(典型的には商業用建築物)、かつ、傾斜を有する屋根材に関しては、0.25と同じか又はそれ以上でなければならない(典型的には住宅用建築物)。アルベド値が高い、たとえば約1.0である場合には、太陽光に暴露することによる住宅用建築物又は商業用建築物の熱増加量は減少する。熱増加量は、屋根材が設置された建築物内における温度上昇であり、これは、屋根材が太陽光又は太陽放射を反射しない場合に生じる。したがって、コイル被覆組成物から形成された硬化フィルムが、高いアルベド値を有し、かつ、これにより最大限の太陽放射率を有することは有利である。
【0006】
放射率(ε)は、一般にはエネルギー放射の尺度である。放射率は、典型的には、同一温度での黒体により放射されたエネルギーに対する対象物により放射されたエネルギーの比として定められ、かつ0.0〜1.0の値として定量される。黒体は、黒体に達するすべての電磁線放射を吸収する対象物であり、すなわち、黒体は電磁線を反射しない。多くの金属の放射率は、典型的には低く、たとえばアルミニウムに関しては約0.20である。エナジースター率に関して、Environmental Protection Agencyにより認可された放射率基準が存在しない一方で、住居用建築物又は商業用建築物の屋根材の放射率は、好ましくは高く、たとえば約1.0に達し、太陽光からの住居用又は商業用建築物中の熱増加量を減少させる。コイル被覆組成物から形成された硬化フィルムの放射率を最大限にすることはそれ自体有利である。硬化フィルムの放射を最大限にする場合には、住居用及び/又は商業用建築物を冷却するためのコストは減少する。さらに、放射率を最大限にする場合には、都市部における増加した温度を引き起こす「ヒートアイランド」効果が減少する。
【0007】
コイル被覆組成物は、当該コイル被覆組成物から形成された硬化フィルムの望ましい物理的特性に依存して、典型的には樹脂、架橋剤、溶剤(又は水)及び1種又はそれ以上の成分を含む。樹脂は、通常、硬化フィルムに形成する際の可とう性を維持すると同時に、耐候性、耐薬品性、耐汚性及び他の天然要素に対する耐性に関する検討に基づいて選択される。
【0008】
クロム酸塩は、典型的にはコイル被覆組成物中に含まれ、かつ、金属支持体の不動態中で作用する。クロム酸塩は強酸化剤であり、かつ水の存在下で、腐蝕促進イオンを回避し、かつ化学吸着的に結合する不溶性化合物を形成し、それにより、腐蝕から金属支持体を保護する。さらにクロム酸塩は、コイル塗料組成物並びにそれから形成された硬化フィルムに、金属支持体に対する良好な接着性を付与する。金属支持体に対する硬化フィルムの良好な付着は、金属支持体を一定の金属から形成する場合に獲得することは困難である。しかしながらクロム塩は、揮発性有機化合物(VOC)であり、かつ潜在的に発ガン性である。したがって、クロム酸塩の有するものと類似の好ましい特性を有するより安全な代替物が要求される。
【0009】
クロム酸塩に加えて、コイル被覆組成物は典型的には着色顔料を含み、これは、コイル被覆組成物及びこれから形成された硬化フィルムの機能面及び美的な面を調整するために使用される。着色顔料をコイル被覆組成物中に混合する場合には、着色顔料は、典型的にはコイル被覆組成物から形成される硬化フィルムに色を付与する。金属支持体の最終用途が屋根材である場合には、この色は典型的には美的理由から選択されるが、それというのも、これはしばしば屋根材に特別な色を有し、かつ商業用建築物又は住居用建築物の他の構造に適合させるのに好ましいためである。しかしながら、色は同様に機能的義務を有し、それというのも、硬化フィルムの色が明るければ明るいほど、屋根材はより高いアルベド値を有し、これにより熱増加量が減少する。コイル被覆の着色顔料は、これから形成された硬化フィルムの隠蔽力に寄与し、これは、金属支持体の外観が、硬化フィルムを通して露わになることを抑止する。しかしながら幾つかの適用、たとえば商業的建築物のための屋根材としての適用において、金属支持体の外観を保持することが好ましくてもよい。
【0010】
硬化フィルムが透明である場合には、屋根材は、腐蝕及び天候から保護される。しかしながら、透明である従来の硬化フィルムは、高いアルベド値又は太陽反射率を有するものではなく、従って、屋根材が設置された商業的建築物を冷却するためのコストを増加させる。
【0011】
前記理由から、支持体上に塗布することができ、これにより、硬化フィルムがエナジースター効率の基準を満たす程度の太陽光反射能を有する硬化フィルムを形成する改善された塗料組成物を提供することが有利である。前記欠点に向けて改善された塗料組成物を提供することはさらに有利であってもよい。
【0012】
本発明は塗料組成物を提供する。当該塗料組成物は、本質的にクロム酸塩不含であり、かつ樹脂、金属塩及び干渉顔料を含有する。当該干渉顔料は雲母を含み、この雲母はその上に施与された太陽光反射塗料を有する。さらに本発明は、当該塗料組成物から形成された硬化フィルムを含有する反射塗膜系を提供する。当該反射塗膜系において、硬化フィルムは支持体上に施与され、かつASTM 1746により測定された少なくとも75%の透明度を有する。
【0013】
本発明の塗料組成物は本質的にクロム酸塩不含であるが、しかしながら依然としてクロム酸塩を含む通常の塗料組成物とほぼ同様の物理的特性を有し、これは、支持体への良好な付着性及び耐腐蝕性を含む。当該塗料組成物は、前記に示すような透明な硬化フィルムを形成する。したがって、反射塗膜系の支持体は、その上に施与された硬化フィルムを有する場合であっても、支持体の外観を維持する。
【0014】
本発明は塗料組成物を提供する。塗料組成物は、硬化フィルムを形成するために支持体上に塗布されてもよい。さらに本発明は、反射塗膜系を提供し、この系は、支持体上に施与された、塗料組成物から形成された硬化フィルムを含む。反射塗膜系は、これに制限されることはないが、自動車部品及びアッセンブリ、ベネチアンブラインド及び建築適用を含む用途において使用することができる。特に、反射塗膜系は、特に、建築適用、たとえば住宅用及び/又は商業用建築物のための屋根材において特に有用である。硬化フィルムは、支持体に美的品質、保護特性及び良好なエネルギー効率特性を付与し、これは、さらに以下において説明する。本発明の塗料組成物は、コイル被覆組成物として特に有用である。コイル被覆組成物は、典型的には金属支持体上に塗布される。金属支持体は、典型的にはコイル形であるが、硬化フィルムを形成するために、その上にコイル被覆組成物を適用する前に解かれる。硬化フィルムが金属支持体上に形成されるや否や、金属支持体は典型的にはコイル形に巻き戻される。しかしながら好ましくは、塗料組成物を、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、他の用途、たとえば自動車塗装に使用してもよい。
【0015】
前記のように、支持体は、典型的には金属支持体である。特定の実施態様において、金属支持体はさらに鋼であってもよい。金属支持体の鋼はその上に施与された塗膜を有していてもよい。金属支持体の鋼上に施与することができる塗膜の一つの例は、アルミニウム亜鉛合金である。鋼上に施与されたアルミニウム亜鉛合金の塗膜を有する鋼の特別な例は、Galvalume(登録商標)である。さらに金属支持体は、その上に施与された亜鉛塗膜を有する鋼を含有していてもよく、これは通常「亜鉛メッキ」鋼と呼称される。さらに、金属支持体は、鋼、たとえばステンレス鋼を含有していてもよい。しかしながら、好ましくは、任意の金属又は合金を、本発明の目的のための金属支持体として使用することができる。さらに好ましくは、支持体は、金属支持体に制限されることがなく;この支持体は任意の材料、たとえばプラスチック、ガラス、繊維等であってもよい。
【0016】
当該塗料組成物は、本質的にクロム酸塩不含である。ここでクロム酸塩に関して使用する用語「本質的に〜不含」とは、塗料組成物中に存在するクロム酸塩の量が、塗料組成物の毒性に関して強い影響を与える望ましくない副作用を回避するのに十分に低いものである。典型的には、塗料組成物中に存在するクロム酸塩の量は、塗料組成物の全質量に対して5質量%未満であり、典型的には0.5質量%未満、より典型的には0.1質量%未満であり、かつ最も典型的には0質量%である。
【0017】
当該塗料組成物は樹脂を含有する。樹脂は、典型的には自己架橋性である。代替的に、塗料組成物はさらに樹脂と反応性の架橋剤を含有していてもよい。当該樹脂は、アクリル酸樹脂、エポキシ樹脂、フルオロカーボン樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン処理したポリエステル樹脂、プラスチゾル樹脂、ウレタン樹脂及びこれらの組合せ物から成る群から選択されていてもよい。さらに、樹脂は溶剤系樹脂又は水系樹脂であってもよい。樹脂は、典型的には塗料組成物中に、塗料組成物の全質量に対して約40〜約95質量%、より典型的には約40〜約55質量%の量で存在する。
【0018】
本発明の1つの実施態様において、架橋性樹脂は、アクリル酸樹脂である。前記のようにアクリル酸樹脂は、溶剤系樹脂又は水系樹脂であってもよい。溶剤系樹脂に関して、溶剤はたとえば、メチルn−アミル−ケトン、n−ブチルアセテート、t−ブチルアセテート、キシレン、アセトン等であってもよい。水又は溶剤は、典型的には塗料組成物中で、塗料組成物の全質量に対して約25〜45質量%の量で存在する。本発明の1つの実施態様において、樹脂は、水系アクリル酸樹脂である。水系アクリル酸樹脂は、典型的には自己架橋性である。
【0019】
アクリル酸樹脂は、典型的には0〜約500,000g/モルの数平均分子量Mnを有する。アクリル酸は典型的には約200〜約500g/モルの質量平均分子量Mwを有する。適したアクリル酸樹脂は、アクリル酸とアルコールとの反応によってカルボン酸エステルを形成してもよい。カルボン酸エステルは、それ自体又は他のモノマーと組合せてアクリル酸樹脂を形成してもよく、この場合、これはホモポリマーであってもよい。
【0020】
前記のように、塗料組成物はさらに架橋剤を含有していてもよい。しかしながら、前記のように、樹脂は自己架橋性であってもよく、この場合、架橋剤は必要とされない。樹脂が水系アクリル酸樹脂である場合には、樹脂は典型的には自己架橋性であり、かつ自己架橋剤は必要とされない。本発明の目的のための適した架橋剤の例は、これに制限されることはないが、メラミン樹脂、たとえばモノマー及び/又はポリマーメラミンホルムアルデヒド樹脂を含み、この場合、これは、部分及び完全アルキル化メラミンの双方を含むものであって、たとえば他のメチル化メラミン、ブチル化メラミン及びメチル化/ブチル化メラミンである。メラミンホルムアルデヒド樹脂は、以下の一般式:
−CHOR
[式中、Rは1〜20個の炭素原子を有するアルキル鎖である]のアルコキシメチル基を含有していてもよい。本発明の目的のために、架橋剤中で含有されるのに適したメラミンホルムアルデヒド樹脂の1つの特別な例は、ヘキサメトキシメチルメラミン、Resimene(登録商標)(Solutia of St. Louis,Missouri)として商業的に入手可能なものである。架橋剤はさらに他のアミノプラスト樹脂を含むものであってもよく、これに制限されることはないが、尿素樹脂、たとえばメチロール尿素及びアルコキシ尿素、たとえばブチル化尿素ホルムアルデヒド樹脂を含む。架橋剤は、公知の他の架橋剤を含んでいてもよく、これに制限されることはないが、エポキシ樹脂、オキサゾリン樹脂、ブロックイソシアネート、メチル化尿素、ブチル化尿素、メチル化/ブチル化尿素及びこれらの組合せ物を含む。架橋剤は使用される場合には、典型的には塗料組成物の全質量に対して0〜約20質量%の量で、塗料組成物に存在する。
【0021】
さらに塗料組成物は干渉顔料を含有する。干渉顔料は、任意の方法で塗料組成物の他の成分と混合してもよく、かつ添加の程度は、本発明の目的に関しては重要ではない。たとえば、干渉顔料は直接的に樹脂及び架橋成分に、攪拌しながら添加してもよい。
【0022】
干渉顔料は雲母を含む。干渉顔料の雲母はその上に施与された太陽光反射塗料を有する。好ましくは、太陽光反射塗料は、典型的には雲母をカプセル化する。当該太陽光反射塗料は、干渉顔料を形成するために、多くの方法、たとえば沈澱析出法により雲母上に施与される。さらに好ましくは、当該干渉顔料は、雲母上に施与された1個以上の太陽光反射塗膜層を有していてもよい。
【0023】
干渉顔料は、典型的には250〜2500nmの範囲の全ての波長の少なくとも60%及び太陽エネルギーの50%未満を透過する。特に干渉顔料は、典型的には半透明であり、かつ無色である。ここで使用しているように、用語「無色」は、干渉顔料が色を有しないことを意味する。用語「無色」とは、さらに干渉顔料の吸収曲線が、400〜700nmの範囲での吸収ピークを欠いており、かつ太陽光条件下で見た場合において、反射光又は透過光における色相又は色調が存在しないことを意味すると定義される。さらに干渉顔料は、典型的には半透明である。ここで使用するように、用語「半透明」とは、光が干渉顔料中に拡散的に通過することを意味するものと定義される。理論による制限を意図することなく、干渉顔料の無色半透明性は、詳細については以下に記載するように、塗料組成物から形成された硬化フィルムの高い太陽光反射率に寄与する。
【0024】
前記のように、干渉顔料は雲母を含有し、これは、その上に施与された太陽光反射塗膜を有する。干渉顔料の太陽光反射塗料は、無機酸化物を含有する。無機酸化物は、典型的には、金属酸化物、ケイ素酸化物及びこれらの組合せの群から選択される。金属酸化物は、公知の任意の金属酸化物を含んでいてもよい。適した金属酸化物は、これに制限されることはないが、二酸化チタン、酸化錫、酸化ジルコニウム及びこれらの組合せ物を含む。ケイ素酸化物は、公知の任意のケイ素酸化物を含むものであってもよい。たとえば、一つの実施態様において、ケイ素酸化物はさらに二酸化ケイ素として定義されてもよい。塗料組成物への添加を容易にするために、干渉顔料は典型的にはISO1524により測定された10〜60μmの粒径を有する。干渉顔料の粒径は、干渉顔料の長さを基準とすることは好ましく、それいうのも干渉顔料、たとえばその中に含まれる雲母は、典型的には小板形状を有し、すなわち、干渉顔料は球状でないためである。本発明の目的に適した干渉顔料は、Solarflair(登録商標)の商標下でMerck KGaA of Darmstadt, Germanyから商業的に入手可能なものを含む。干渉顔料は、典型的には塗料組成物中で、塗料組成物の全質量に対して0〜15質量%、より好ましくは2〜10質量%の量で存在する。
【0025】
塗料組成物は、さらに金属塩を含有し、この場合、金属塩は、塗料組成物から形成された硬化フィルムを不動態化し、それにより腐蝕に対する耐性を提供する。金属塩は、クロム酸塩を含有するもの以外の金属塩である。さらに金属塩は、典型的にはリン酸亜鉛として定義される。リン酸亜鉛は、硬化フィルム中での欠陥を修復することにより、金属支持体の腐蝕を防止する。より詳細には、リン酸亜鉛は、硬化フィルムの欠陥中で形成する第1の腐蝕生成物を、固体の水安定性の化合物に変換する。さらにリン酸亜鉛は、水酸化イオンを結合し、わずかに溶解性の化合物を形成し、それにより、硬化フィルム中での欠陥を効果的に充填し、かつ金属支持体の腐蝕を防止する。
【0026】
特定の実施態様において、組成物はさらに第2の金属塩を含み、これはリン酸亜鉛と一緒になって、塗料組成物から形成される硬化フィルムに対して、リン酸亜鉛単独の場合よりも、さらに優れた耐腐蝕特性を提供する。第2の金属塩は、クロム酸塩を含む金属塩以外の金属塩である。好ましくは、当該第2の金属塩は、1個以上の金属塩を含んでいてもよく、すなわち金属塩のブレンドであってもよい。本発明の目的のために適した第2の金属塩の例は、これに制限されないが、カルシウム金属塩、たとえばリン酸カルシウム、金属ホスホカーボネート、金属ホスホシリケート及びこれらの組合せ物である。第2の金属塩は、リン酸亜鉛と一緒になって相乗的に作用することが見出され、それによりリン酸亜鉛を単独で使用した場合と比較して、硬化フィルムの耐腐食性を改善する。金属塩及び第2の金属塩は、塗料組成物から形成された硬化フィルムに対して、金属支持体に対する優れた付着性及び優れた耐候性を付与し、その際、性能はクロム酸塩を含むものと本質的に類似する。金属塩及び第2の金属塩を含む塗料組成物は、典型的には、優れた耐候特性に帰する5年の耐用年数を有する。典型的には、金属塩及び第2の金属塩の双方は、約0.5nmの粒径を有する。金属塩及び第2の金属塩のいずれかは、典型的には無色である。金属塩及び第2の金属塩は、典型的には、塗料組成物中で、塗料組成物の全質量に対して0.01〜10質量%、より典型的には4〜10質量%、さらに典型的には5〜10質量%の組み合わされた量である。付加的に、それぞれに基づいて、リン酸亜鉛は、典型的には塗料組成物中で、塗料組成物の全質量に対して0.01〜5質量%の量で含まれる。
【0027】
要求はされないけれども、好ましくは、本発明の塗料組成物は、典型的には干渉顔料以外の着色顔料は本質的に不含である。着色顔料は、通常の有機及び無機着色顔料を含むものであって、これは、塗料組成物中に通常使用され、塗料組成物から形成される硬化フィルムに特定の色を導入する。塗料組成物が、着色顔料不含である場合には、当該塗料組成物から形成された硬化フィルムは十分に透明であり、これは、本発明の目的のために好ましく、かつ以下のように実際に定量される。しかしながら、好ましくは、本発明の塗料組成物は、明色を有する通常の硬化フィルムを形成してもよく、これは、明色を有する通常の硬化フィルムが十分に透明性を有する限りにおいて本発明の範囲とは逸脱することはなく、わずかな顔料着色を有し、詳細については以下で説明する。塗料組成物は、典型的には着色顔料を含有し、これは、塗料組成物の全質量に対して5質量%未満、典型的には1質量%未満、より典型的には0.5質量%未満及び最も典型的には0質量%の量である。
【0028】
塗料組成物はさらに添加物成分を含有していてもよい。典型的な付加成分は、艶消し剤、抗生剤、ワックス、表面活性剤、充填剤、可塑剤、乳化剤、テクスチャライザー、触媒、増粘剤、付着促進剤、安定化剤、脱泡剤、湿潤助剤及びこれらの組合せ物から成る群から選択された添加剤を含有していてもよい。存在する場合には、当該添加物成分は、典型的には塗料組成物中で、塗料組成物の全質量に対して0〜5質量%の量で存在する。
【0029】
金属支持体上に硬化フィルムを形成するために、塗料組成物を、金属支持体上に塗布する。塗料組成物は、公知の任意の方法で、たとえばスプレー塗布、ローラー塗布、浸漬塗布等で支持体上に適用することができる。特定の実施態様において、塗料組成物は典型的には、少なくとも1個のローラーを用いて金属支持体上に塗布する。一つの実施態様において、第1のローラーは、塗料組成物をオープンホールド型受け器(open holding reseptacle)から第2のローラーに転移させ、かつ第2のローラーは、金属支持体上に塗料組成物を塗布する。前記に示唆したように、好ましくは、塗料組成物を金属支持体に塗布するための他の方法を使用することもできる。
【0030】
前記に示したように、塗料組成物を金属支持体上に塗布すると直ぐに、当該塗料組成物は、典型的には金属支持体上で、炉中で硬化して、反射塗膜系を形成する。塗料組成物は、典型的には炉中で華氏700度〜華氏900度の温度で、20〜100秒の時間に亘って硬化させる。温度を、華氏700度〜華氏900度で前記時間に亘って加熱する場合には、金属支持体は、典型的には、炉中に存在しながら華氏150度〜華氏500度の温度を維持する。好ましくは、塗料組成物の硬化段階は典型的には炉中でおこなわれるものの、さらに塗料組成物を、他の技術及び装置、たとえば開放型熱源(open heat source)を用いて硬化することができる。塗料組成物が硬化させ、硬化フィルムを形成すると直ぐに、当該硬化フィルムは、ほぼ周囲温度に冷却される。金属支持体上の硬化フィルムは、冷却剤、たとえば水でスプレーされてもよく、これにより冷却がおこなわれる。代替的に、硬化フィルムを、冷却剤を使用することなしに周囲温度に冷却することもできる。
【0031】
硬化フィルムは、典型的には0.1〜0.3ミリのフィルム構造を有する。好ましくは、以下において実際に定量された硬化フィルムの物理的特性は、硬化フィルムのフィルム構造の関数(function)である。実際に定量された物理的特性は、前記に示されたフィルム構造の範囲に関するものであるが、それにもかかわらずフィルム構造が、前記に示されたフィルム構造よりも大きいか又は小さい場合であっても、物理的特性は記載された範囲に入る。塗料組成物から形成された反射塗膜系の硬化フィルムは、典型的には、ASTM E 1918及び/又はASTM E 903により測定された55%を上廻る、より典型的には65%を上廻る太陽光反射率を有する。反射塗膜系の硬化フィルムは、典型的には、ASTM E 408及びASTM C 1371にしたがって測定された250〜2500nmの範囲のすべての波長において0.75を上廻り、典型的には0.80を上廻る放射率を有する。さらに、硬化フィルムは典型的には、ASTM E903により測定された約70の紫外線吸収度を有する。反射塗膜系の硬化フィルムは、ASTM 1746により測定された少なくとも75%、より典型的には少なくとも85%の透明度を有する。好ましくは、ASTM 1746は典型的には、プラスチックの明澄度を測定するために使用されるけれども、同様に硬化フィルムの透明度を測定するために使用することもできる。硬化フィルムの透明度は、依然として金属支持体を硬化フィルムで保護しながらも、覆われていない金属支持体の外観を残す。いいかえれば、反射塗膜系の金属支持体は、優れた太陽光反射能及び放射性を有しながらも、金属外観を保持する。さらに、反射塗膜系の金属支持体は、良好な耐腐蝕特性を有する。
【0032】
本発明の塗料組成物を形成するための方法を例証する以下の例は、本発明を例証することを意図するものであって、これに制限されるものではない。
【0033】

塗料組成物は、通常の配合及び混合方法により製造される。第1の例において、ベース組成物は、アンモニアをアクリル酸樹脂に添加することにより製造され、混合物を形成する。この混合物のpHを約8.5に調整する。以下の表に挙げた残りの成分をその後に添加し、それにより以下の成分を含むベース組成物が得られ、その際、ベース組成物中のそれぞれの成分の相当する質量%は、金属塩を添加する前のベース組成物の質量に対するものである:
【表1】

【0034】
樹脂は、自己架橋性水系アクリル酸樹脂であり、商業的には、BASF Corp.(Florham Park, NJ)から入手可能である。
【0035】
溶剤は、ブチルカルビトールである。
【0036】
干渉顔料は、太陽光反射塗料としてその上に施与された金属酸化物を有する雲母を含有し、かつ、商業的にMerck KGaA(Darmstadt, Germany)により入手可能である。
【0037】
添加物Aは脱泡剤である。
【0038】
添加物Bは付随する(assocciative)増粘剤である。
【0039】
添加物Cは殺生剤である。
【0040】
種々の金属塩をベース組成物に添加し、塗料組成物を形成する。種々の金属塩、及び前記ベース組成物及び種々の金属塩を含む、塗料組成物から形成された硬化フィルムが獲得する性質については以下記載する。塗料組成物は、Galvalume(登録商標)支持体上に塗布され、約0.1〜0.3ミリの厚さを有する硬化フィルムを形成する。
【0041】
試験は、種々の金属塩を含む塗料組成物の試料から形成された硬化フィルム上で実施し、ASTM B117塩水噴霧試験により測定される耐腐蝕特性を測定する。耐腐蝕特性は、スクライブ由来のクリープが約1/16インチ又はそれ未満である場合には「合格」であり、スクライブ由来のクリープが約1/8インチから約1/16インチである場合には「境界値」であり、かつスクライブ由来のクリープが1/8インチより大きい場合には「不合格」である。
【0042】
以下の試料(試料1−A〜5−A)は、本発明を例証し、かつ金属塩の組合せを使用する。特に、金属塩Bは、塗料組成物の全質量に対して2.5質量%でそれぞれの試料中に含まれ、かつ他の金属塩は、表に示された量で異なっており、この量については、塗料組成物の全量に対する質量%で示す。
【0043】
【表2】

【0044】
金属塩Aは、リン酸カルシウム(Halox of Hammond, IN.から商業的に入手可能なもの)である。
【0045】
金属塩Bは、リン酸亜鉛(Haloxから商業的に入手可能なもの)である。
【0046】
金属塩Cは、カルシウム冨化されたシリカ(Haloxから商業的に入手可能なもの)である。
【0047】
金属塩Dは、混合金属ホスホカーボネート(Haloxから商業的に入手可能なもの)である。
【0048】
金属塩Eは、混合金属ホスホカーボネート(Haloxから商業的に入手可能なもの)である。
【0049】
金属塩Fは、混合カルシウムホスホシリケート(Haloxから商業的に入手可能なもの)である。
【0050】
比較例
以下の比較例は、本願発明の塗料組成物と類似する塗料組成物から形成された硬化フィルムの比較例を示すが、金属塩の組合せ物ではなくむしろ単一の金属塩を含むものである。再度、試験を、種々の金属塩を含む塗料組成物の試料から形成された硬化フィルム上で実施し、ASTM B117塩水噴霧試験により測定された耐腐蝕特性を測定する。耐腐蝕特性は、スクライブ由来のクリープが約1/16インチ又はそれ未満である場合には「合格」であり、スクライブ由来のクリープが約1/8インチから約1/16インチである場合には「境界値」であり、かつスクライブ由来のクリープが1/8インチより大きい場合には「不合格」である。
【0051】
【表3】

【0052】
明らかであるように、本発明を示す試料と比較例の試料との間を比較した場合には、増加した耐腐蝕性が、金属塩組成物が、リン酸亜鉛及び第2の金属塩を含む金属塩の組合せの場合に達成される。これは、本発明の試料と、リン酸亜鉛のみを含む比較例の試料とを比較する場合にさえも達成され、その際、金属塩はそれぞれの試料中において、塗料組成物の質量に対する同一の質量%を示す。
【0053】
本発明を例証する方法でここに記載するが、使用される専門用語は、用語の意味の制限ではなくむしろ用語の意味の説明を意図するものであると解されるべきである。当然のことながら、上記教示を鑑みれば、本願発明の数多くの改変及び変法は可能である。上で述べたことを考え合わせれば、本発明の多くの変更及び変形実施形態が可能である。本発明は、上で特別に記載されたものとは異なる様式で実施することもできる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ASTM1746により測定された少なくとも75%の透明度を有する硬化フィルムを形成する塗料組成物において、前記塗料組成物が、本質的にクロム酸塩不含であり、かつ、樹脂、金属塩及び干渉顔料を含有し、この干渉顔料は、太陽光反射塗料がその上に施与された雲母を有する、前記塗料組成物。
【請求項2】
前記塗料組成物から形成された硬化フィルムの透明度が、ASTM1746により測定された少なくとも85%の透明度である、請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項3】
前記樹脂がアクリル酸樹脂である、請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項4】
前記アクリル酸樹脂が水系アクリル酸樹脂を含む、請求項3に記載の塗料組成物。
【請求項5】
前記水系アクリル酸樹脂が自己架橋性水系アクリル酸樹脂である、請求項4に記載の塗料組成物。
【請求項6】
前記金属塩がリン酸亜鉛を含む、請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項7】
前記干渉顔料の前記太陽光反射塗料が、無機酸化物を含有する、請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項8】
前記無機酸化物が、ケイ素酸化物、金属酸化物及びこれらの組合せ物から成る群から選択される、請求項7に記載の塗料組成物。
【請求項9】
前記無機酸化物が、酸化チタン、酸化錫、酸化ジルコニウム及びこれらの組合せ物から成る群から選択される、請求項8に記載の塗料組成物。
【請求項10】
さらに第2の金属塩を含有する、請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項11】
前記第2の金属塩が、金属カルシウム塩、金属ホスホカーボネート、金属ホスホシリケート及びこれらの組合せ物から成る群から選択される、請求項10に記載の塗料組成物。
【請求項12】
前記塗料組成物が、前記干渉顔料以外の着色顔料を含まない、請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項13】
前記塗料組成物から形成された硬化フィルムが、ASTM E1918及びASTM E903により測定された少なくとも55%の太陽光反射率を有する、請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項14】
支持体上に施与され、かつASTM 1746により測定された少なくとも75%の透明度を有する硬化フィルムを含む反射塗膜系であって、その際、前記硬化フィルムは、本質的にクロム酸塩不含であり、かつ、樹脂、金属塩及び干渉顔料を含有し、この干渉顔料は、太陽光反射塗料がその上に施与された雲母を有する、前記反射塗膜系。
【請求項15】
前記硬化フィルムの前記透明度が、ASTM 1746により測定された少なくとも85%の透明度である、請求項14に記載の反射塗膜系。
【請求項16】
前記硬化フィルムが、ASTM E1918及びASTM E903により測定された少なくとも55%の太陽光反射率を有する、請求項15に記載の反射塗膜系。
【請求項17】
前記硬化フィルムが、ASTM E1918及びASTM E903により測定された少なくとも65%の太陽光反射率を有する、請求項16に記載の反射塗膜系。
【請求項18】
前記支持体が金属支持体である、請求項14に記載の反射塗膜系。
【請求項19】
前記金属支持体が鋼である、請求項18に記載の反射塗膜系。
【請求項20】
前記金属支持体が、その上に施与されたアルミニウム−亜鉛合金の塗膜を有する鋼である、請求項18に記載の反射塗膜系。
【請求項21】
塗料組成物に含まれる樹脂が、アクリル酸樹脂である、請求項14に記載の反射塗膜系。
【請求項22】
塗料組成物の金属塩が、リン酸亜鉛である、請求項14に記載の反射塗膜系。
【請求項23】
塗料組成物の干渉顔料の太陽光反射塗料が、無機酸化物を含む、請求項14に記載の反射塗膜系。
【請求項24】
太陽光反射塗料の無機酸化物が、ケイ素酸化物、金属酸化物及びこれらの組合せ物から成る群から選択される、請求項23に記載の反射塗膜系。
【請求項25】
太陽光反射塗料の金属酸化物が、酸化チタン、酸化錫、酸化ジルコニウム及びこれらの組合せ物から成る群から選択される、請求項24に記載の反射塗膜系。
【請求項26】
塗料組成物がさらに第2の金属塩を含有し、当該金属塩は、金属カルシウム塩、金属ホスホカーボネート、金属ホスホシリケート及びこれらの組合せ物から成る群から選択される、請求項14に記載の反射塗膜系。

【公表番号】特表2010−540747(P2010−540747A)
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−527935(P2010−527935)
【出願日】平成20年9月15日(2008.9.15)
【国際出願番号】PCT/US2008/010738
【国際公開番号】WO2009/045267
【国際公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【出願人】(505470786)ビー・エイ・エス・エフ、コーポレーション (81)
【Fターム(参考)】