説明

塗料組成物

【課題】 本発明は、耐候性、耐久性に優れ、高いTg、良好な耐擦り傷性、高い硬度を持った2液型ポリウレタン塗料組成物を提供する事を目的課題とする。
【解決手段】 (A)有機ジイソシアネート、及びそれらから得られるイソシアネートプレポリマーから選ばれる少なくとも1種類のイソシアネート化合物と脂環構造を有するジオールを原料とする、固形分100%時の粘度が1200〜15000mPa.s、また固形分100%時の数平均官能基数が3.0〜8.0であるポリイソシアネート組成物と、(B)数平均分子量500〜10000である、アクリルポリオールあるいはポリエステルポリオールを含有する主剤ポリオール組成物とを含む塗料組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脂環構造を有するジオールを用いたポリイソシアネート組成物と、低分子量の主剤ポリオール組成物を用いた塗料組成物、特に自動車及び情報家電用途に用いる塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイソシアネート組成物を用いた塗料組成物は、外観、耐候性、耐久性が優れるために、建築、自動車、情報家電用等の塗料として広く用いられている。中でも、自動車のトップコート用途のように、高品質な外観と優れた耐候性、耐久性が要求される用途では、緻密な架橋塗膜が形成でき、かつ仕上がり外観が良好である2液ポリウレタン塗料が高く評価されている。
自動車のトップコート用途には、高品質な外観と優れた耐候性、耐久性に加えてさらに、高いガラス転移温度(以下、Tg)、良好な耐擦り傷性を持ちつつ、さらに高い硬度を持つ塗料組成物が望まれている。従来は、このような塗料組成物を作製する場合、主剤ポリオール組成物には、比較的分子量の高いアクリルポリオールやポリエステルポリオールなどを、ポリイソシアネート組成物には、特許文献1に記載されているヘキサメチレンジイソシアネート(以下、HDI)などのジイソシアネートをイソシアヌレート化したポリイソシアネート組成物や、特許文献2に記載されている、HDIなどのジイソシアネートと多価アルコールを原料に用いてイソシアヌレート化する事により、官能基数を高くしたポリイソシアネート組成物を用いていた。
【0003】
近年、塗料分野において、大気汚染に対する環境安全、省資源の観点から有機溶剤の使用量削減が急務になってきている。こうした状況の中で、有機溶剤の使用量を削減する目的から、塗料組成物の固形分を上げるために、主剤ポリオール組成物の低粘度化が検討されてきた。
主剤ポリオール組成物において、低粘度化を行う方法の1つに分子量を下げる方法がある。例えば、特許文献3には、分子量を低く抑えたウレタン変成アクリル樹脂を用いたトップクリアー塗料が提案され、また特許文献4には、特定のポリオールとカルボン酸から作ったハイソリッドなポリエステルポリオールを用いた自動車補修塗料が提案されている。しかし、分子量を下げると、官能基数も小さくなり、架橋密度が減少するため良好な塗膜性能、すなわち、高Tg、耐擦り傷性、高い硬度を発揮出来ない場合がある。
【0004】
塗膜性能を維持するには、ポリイソシアネート組成物が、主剤ポリオール組成物側の官能基数の減少を補う事が重要であり、ポリイソシアネート組成物の高官能化が必要とされる。
高官能なポリイソシアネート組成物を作製する方法としては、特許文献1、2に記載されている様な、HDIや、HDIと多価アルコールのウレタン体を、イソシアヌレート化する方法を用いる事が出来るが、イソシアヌレート化反応は重合反応であるので、官能基を上げるために重合度を高めると、高分子量体が多数生成され、非常に高粘度化し、塗料組成物の粘度が上がってしまい、塗料組成物の固形分を上げる事が困難な場合があった。
【0005】
高官能なポリイソシアネート組成物を作製するもう1つの方法としては、HDIなどのジイソシアネートとアルコールを原料に用いて、アロファネート化する方法がある。アロファネート化反応は、ウレタン基にイソシアネート基を付加反応させる方法であり、アロファネート化反応の原料であるウレタン基が反応により次第に減少していくため、反応が自然に収束し、イソシアヌレート化反応のような高分子量化が起こりにくいので、比較的低粘度なポリイソシアネート組成物が得られる。
【0006】
アロファネート化反応を用いたイソシアネート組成物の製造方法について述べた文献として、特許文献5、6、7がある。特許文献5にはアロファネート化触媒に2−エチルヘキサン酸鉛を、特許文献6にはアロファネート化触媒に2−エチルヘキサン酸錫を、特許文献7にはアロファネート化触媒に2−エチルヘキサン酸ジルコニルを用いたアロファネート化ポリイソシアネートの製造方法が記載されている。これらの文献には、使用可能な原料アルコールの例として、脂肪族、脂環式のアルコールを挙げているが、アルコール種が塗膜硬度やTgに及ぼす影響については何も記載されておらず、実施例でも全て脂肪族アルコールが用いられている。
【0007】
また、特許文献8にはモノアロファネート体(モノオールを原料としたアロファネート体)とポリアロファネート体(ヒドロキシル基を2つ以上持つポリオールを原料としたアロファネート体)を組み合わせて、高官能と低粘度を併せ持つポリイソシアネート組成物が提案されている。この文献では、使用可能な原料アルコールの例として、脂肪族、脂環式のアルコールを挙げているが、やはりアルコール種が塗膜硬度やTgに及ぼす影響については何も記載されていない。また、実施例で、原料アルコールに脂肪族のモノオールやポリオールを用いたアロファネート体を作製しているが、脂肪族のアルコールを原料に用いたアロファネート体をポリイソシアネート組成物として、塗料組成物を作製すると、塗膜のTgが低くなる場合があり、自動車のトップコートの様な高Tgの塗膜が要求される分野では、主剤ポリオール組成物の設計の幅が狭くなる場合があった。
【特許文献1】特開昭64−33115号公報
【特許文献2】特開平6−312969号公報
【特許文献3】特開平5−59326号公報
【特許文献4】特表平9−508174号公報
【特許文献5】特開平8−188566号公報
【特許文献6】特開平7−304724
【特許文献7】国際公開第02/32979号パンフレット
【特許文献8】特開平2003−128989
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述の現状に鑑み、特定の構造を有し、官能基数が高く架橋能力に優れたポリイソシアネート組成物と、低分子量の主剤ポリオール組成物とを組み合わせる事により、耐候性、耐久性に優れ、高いTg、良好な耐擦り傷性、高い硬度を持った2液型ポリウレタン塗料組成物を提供する事を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意研究した結果、原料に脂環構造を有するジオールを用いた、アロファネート基を有するポリイソシアネート組成物と、分子量を低く抑えたアクリルポリオールあるいはポリエステルポリオールを含有する主剤ポリオール組成物とを用いる事で、上記目的を達成出来る事を見出し、これに基づき本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち本発明は、下記の通りである。
1) (A)有機ジイソシアネート、及びそれらから得られるイソシアネートプレポリマーから選ばれる少なくとも1種類のイソシアネート化合物と脂環構造を有するジオールを原料とする、固形分100%時の粘度が1200〜15000mPa.s、また固形分100%時の数平均官能基数が3.0〜8.0であるポリイソシアネート組成物と、(B)数平均分子量500〜10000である、アクリルポリオールあるいはポリエステルポリオールを含有する主剤ポリオール組成物を含む塗料組成物。
2) ポリイソシアネート組成物が、ポリイソシアネート組成物中に含まれるアロファネート構造とイソシアヌレート構造とウレタン構造のトータルモル量を100%とした際、アロファネート構造のモル分率が75モル%以上である上記1)記載の塗料組成物。
3) 脂環構造を有するアルコールが、1,4−シクロヘキサンジオールあるいは1,4−シクロヘキサンジメタノールである上記1)〜2)のいずれかに記載の塗料組成物。
4) 塗装時の不揮発分が65質量%以上である、上記1)〜3)のいずれかに記載の塗料組成物。
5) 自動車車体あるいは自動車用プラスチック部品あるいは情報家電製品用プラスチック部品のトップクリアー用途である、上記1)〜4)のいずれかに記載の塗料組成物。
6) 上記5)に記載の塗料組成物が塗布された自動車車体あるいは自動車用プラスチック部品あるいは情報家電製品用プラスチック部品。
【発明の効果】
【0011】
本発明の塗料組成物は、特定の構造を有すると共に、官能基数が高く架橋能力に優れたポリイソシアネート組成物と、低分子量の主剤ポリオール組成物とを組み合わせる事により、耐候性、耐久性に優れ、高いTg、良好な耐擦り傷性、高い硬度を持つという効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、本発明について詳しく説明する。
本発明では、有機ジイソシアネート、及びそれらから得られるイソシアネートプレポリマーから選ばれる少なくとも1種類のイソシアネート化合物を原料として使用する。
有機ジイソシアネートとは、脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネートの事である。
脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、HDI、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、ノナンジイソシアネートが挙げられる。
脂環式ジイソシアネートとして、例えば、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、1,4−ジイソシアネートシクロヘキサン等が挙げられる。
脂肪族ジイソシアネート、及び脂環式ジイソシアネートの中で、HDI、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネートは、工業的に入手し易いため好ましい。脂肪族ジイソシアネート、及び脂環式ジイソシアネートでは、作製したポリイソシアネートの粘度が低くなる脂肪族ジイソシアネートが好ましく、HDIが最も好ましい。
【0013】
イソシアネートプレポリマーとは、有機ジイソシアネート等を公知の技術でプレポリマー化したものである。プレポリマー化とは、具体的には、有機ジイソシアネート等を、ビウレット化反応、イソシアヌレート化反応、ウレタン化反応、ウレトジオン化反応、アロファネート化反応、イミノオキサジアンジオン化反応等させる事を指し、これらは公知の技術で行う事が出来る。
【0014】
脂環構造を持つジオールとは、構造中にシクロ環を1個、または2個以上持つジオールの事である。脂環構造を持つジオールとして、1,2−、1,3−及び1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,2−及び1,3−シクロペンタンジオール、シクロドデカンジオール、2,4−ジヒドロキシ−1,1,3,3−テトラメチルシクロブタン、ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)−メタン、2,4−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)−2−メチルペンタン、水添ビスフェノールAなどの化合物が挙げられる。1分子中の環構造の数は、何個でも構わないが、作製したポリイソシアネート組成物の粘度を考慮すると、1個が好ましい。中でも、炭素数が10個以下がより好ましい。さらにその中でも、1,2−、1,3−及び1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールは、工業的に入手しやすいためより好ましく、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールは、さらに好ましい。1,4−シクロヘキサンジメタノールは最も好ましい。これらの脂環構造を持つジオールは、単独で用いても良いし、組み合わせて用いても良い。
【0015】
本発明で使用するポリイソシアネート組成物の粘度は、有機溶剤量や官能基数の面から、1200〜15000mPa.sが好ましい。1200mPa.s以上であれば、官能基数を十分多くする事が出来、15000mPa.s以下であれば有機溶剤量は少なくなる。より好ましくは、1300〜8000mPa.sであり、さらに好ましくは、1500〜5000mPa.sである。粘度は、E型粘度計(株式会社トキメック社)を用いて25℃で測定した。
ポリイソシアネート組成物の数平均官能基数(以下、fn)は、硬化性、粘度の面から3.0〜8.0が好ましい。fnが3.0以上であれば、充分な硬化性が得られ、8.0以下であれば、粘度が高くなりすぎない。好ましくは、3.4〜7.0であり、より好ましくは、3.8〜5.0である。
【0016】
ポリイソシアネート組成物のfnは、次の式から求めた。(ポリイソシアネート組成物のfn)=(数平均分子量)×NCO%/4200。
数平均分子量は、ゲル濾過クロマトグラフィー(以下、GPC。使用機器:HLC−8120(東ソー株式会社製)、使用カラム:TSK GEL SuperH1000、TSK GEL SuperH2000、TSK GEL SuperH3000(何れも東ソー株式会社製)、試料濃度:5wt/vol%、キャリア:THF、検出方法:視差屈折計、流出量0.6ml/min.、カラム温度30℃)を用いて測定した。GPCの検量線は、分子量50000〜2050のポリスチレン(ジーエルサイエンス株式会社製PSS−06(Mw50000)、BK13007(Mp=20000、Mw/Mn=1.03)、PSS−08(Mw=9000)、PSS−09(Mw=4000)、5040−35125(Mp=2050、Mw/Mn=1.05)と、HDI系ポリイソシアネート組成物(デュラネートTPA−100、旭化成ケミカルズ株式会社製)のイソシアヌレート体の3量体〜7量体(イソシアヌレート3量体分子量=504、イソシアヌレート5量体分子量=840、イソシアヌレート7量体分子量=1176)及びHDI(分子量=168)を標準として作成した。なお、本発明で用いる、イソシアネート組成物、ポリオール組成物等の数平均分子量は、全て上記の方法で求めた。
【0017】
ポリイソシアネート組成物のNCO%は、固形分100%において、塗膜にした際の性能、ポリイソシアネート組成物の毒性の面から、10.0%〜30.0%が好ましい。10.0%以上であれば塗膜にした際の性能は良好で、30.0%以下であれば毒性が低く、安全に取り扱う事が出来る。より好ましくは、12.0%〜27.0%であり、さらに好ましくは15.0%〜24.0%である。NCO%は、イソシアネート基を過剰の2Nアミンで中和した後、1N塩酸による逆滴定によって求めた。
【0018】
本発明で使用するポリイソシアネート組成物は、アロファネート構造を含む、またはアロファネート構造とイソシアヌレート構造とウレタン構造を含む。本発明の目的を達成するには、ポリイソシアネート組成物中の、アロファネート構造とイソシアヌレート構造とウレタン構造のトータルモル量を100%とした際、アロファネート構造のモル分率が75モル%以上、好ましくは80モル%以上、より好ましくは85モル%以上、最も好ましくは90モル%以上が適当である。75モル%以上であれば、官能基数を大きくしつつ粘度をより低く出来る。
【0019】
なお、アロファネート構造のモル分率は、NMRにより求めることができる。有機ジイソシアネート、及びそれらから得られるイソシアネートプレポリマーを原料として用いたポリイソシアネート組成物を1H−NMRで測定する方法を以下に示す。本発明においてアロファネート構造のモル分率は以下の条件で測定したものである。
1H−NMRの測定方法:ポリイソシアネート組成物を重水素クロロホルムに10質量%の濃度で溶解する(ポリイソシアネート組成物に対して0.03質量%テトラメチルシランを添加)。化学シフト基準は、テトラメチルシランの水素のシグナルを0ppmとした。1H−NMRにて測定し、8.5ppm付近のアロファネート基の窒素に結合した水素原子のシグナル(アロファネート基1モルに対して、1モルの水素原子)と、3.85ppm付近のイソシアヌレート基に隣接したメチレン基の水素原子(イソシアヌレート基1モルに対して、6モルの水素原子)のシグナルの面積比を測定する。
(アロファネート構造のモル分率)=100×(8.5ppm付近のシグナル面積)/((8.5ppm付近のシグナル面積)+(3.85ppm付近のシグナル面積)/6)
【0020】
また、ウレトジオン体は、2官能であるために架橋能力を低下させるだけでなく、熱などにより解離してHDIを生成し易い。従って、ウレトジオン体は、ポリイソシアネート組成物に対して、10質量%以下、好ましくは7.5質量%以下、より好ましくは5質量%以下である事が適している。ウレトジオン量の測定は、FT−IRを用いて、1770cm−1程度のウレトジオン基のピークの高さと、1690cm−1程度のイソシアヌレート基のピークの高さの比を、内部標準を用いて定量すれば良い。
【0021】
また、本発明のポリイソシアネート組成物は、公知の技術で作製したモノアロファネート体等と組み合わせて使用する事も出来る。モノアロファネート体とは、有機ジイソシアネート、及びそれらから得られるイソシアネートプレポリマーから選ばれる少なくとも1種類のイソシアネート化合物と、モノオールを原料としたアロファネート体である。モノアロファネート体は、原料アルコールに、脂肪族、脂環式モノアルコールのどちらを用いても良いが、脂環式モノアルコールを用いたモノアロファネート体が、Tgや硬度が高くなるためより好ましい。
【0022】
次に本発明で用いるポリイソシアネート組成物の製造法について述べる。本発明で用いるポリイソシアネート組成物は、有機ジイソシアネート、及びそれらから得られるイソシアネートプレポリマーから選ばれる少なくとも1種類のイソシアネート化合物と、脂環構造を持つジオールを反応させた化合物をアロファネート化反応することによって得ることができる。
【0023】
ジイソシアネートと脂環構造を持つジオールのイソシアネート基と水酸基のモル比は、6/1〜100/1、好ましくは8/1〜40/1、より好ましくは10/1〜30/1が適当である。6/1以上にイソシアネート基が過剰であれば、低粘度のポリイソシアネートを製造することができる。100/1以上に水酸基が存在すれば、生産効率を保つことができる。
ウレタン化反応とアロファネート化反応の順番としては、製造する際の容易性を考慮すると、ジイソシアネートと脂環構造をもつジオールのウレタン化反応と一緒に、または必用に応じてウレタン化反応を行った後に、アロファネート化反応する方法がより好ましい。
アロファネート化反応は、公知のアロファネート化触媒を用いて行う事が出来る。好ましい触媒の例は、鉛を含む化合物、亜鉛を含む化合物、スズを含む化合物、ジルコニウムを含む化合物、ビスマスを含む化合物、リチウムを含む化合物である。これらの化合物の一種、または二種以上を用いる事ができる。
【0024】
これらの触媒の中で、更に好ましいのは亜鉛を含む化合物、鉛を含む化合物、スズを含む化合物、ジルコニウムを含む化合物、より好ましいのは、ジルコニウムを含む化合物である。ジルコニウムを含む化合物の例としては、ナフテン酸ジルコニル、2−エチルヘキサン酸ジルコニルがある。これらは、比較的安価で、工業的に入手しやすく、かつアロファネート化反応の選択率が高く、さらに安全性が高いために特に好ましい。
【0025】
本発明において、アロファネート化触媒の添加方法は限定されない。例えば、ウレタン基を含有する化合物の製造の前、即ちジイソシアネートとアルコールの反応に先だって添加しても良いし、ジイソシアネートとアルコールの反応中に添加しても良く、ウレタン基含有化合物製造の後に添加しても良い。
また、添加の方法として、所要量のアロファネート化触媒を一括して添加しても良いし、何回かに分割して添加しても良い。または、一定の添加速度で連続的に添加する方法も採用できる。
アロファネート化反応は、一般に20〜200℃の温度で行われる。好ましくは、30〜180℃であり、より好ましくは60〜160℃である。20℃以上であれば、副反応を起こさずに、適当な反応速度でアロファネート化反応を進行させることができる。200℃以下であれば、副反応や着色を起こさないことが可能となる。
【0026】
本発明で使用するポリイソシアネート組成物を製造する際のアロファネート化反応においては、ウレタン基からアロファネート基への変換率は、出来るだけ高くすることが好ましい。ウレタン基からアロファネート基へ変換する事により、比較的粘度を低く維持したままイソシアネート基の官能基数を高くする事が可能となる。
ウレタン化反応やアロファネート化反応は、無溶媒中で進行するが、必要に応じて酢酸ブチル、メチルエチルケトン、トルエン、キシレン、炭化水素系溶剤、芳香族系溶剤等のイソシアネート基との反応性を有していない有機溶剤を溶媒として使用する事ができる。
本発明における反応の過程は、反応混合物のNCO%を測定するか、屈折率を測定する事により追跡できる。
【0027】
アロファネート化反応は、室温に冷却するか、反応停止剤を添加することにより停止できるが、アロファネート化触媒を用いる場合、反応停止剤を添加することによって停止させる方が、ポリイソシアネート組成物の安定性が良くなるため好ましい。反応停止剤を添加する量は、アロファネート化触媒に対して、0.2〜100倍のモル量、好ましくは0.5〜50倍のモル量、より好ましくは1.0〜20倍のモル量である。0.2倍以上であれば、触媒を完全に失活させることが可能となる。100倍以下の場合に、濁りがないポリイソシアネート組成物を得ることが可能となる。
【0028】
反応停止剤としては、アロファネート化触媒を失活させるものであれば何を使っても良い。反応停止剤の例としては、リン酸、ピロリン酸、メタリン酸、ポリリン酸などのリン酸酸性を示す化合物、リン酸、ピロリン酸、メタリン酸、ポリリン酸のモノアルキルあるいはジアルキルエステル、モノクロロ酢酸などのハロゲン化酢酸、塩化ベンゾイル、スルホン酸エステル、硫酸、硫酸エステル、イオン交換樹脂、キレート剤等が挙げられる。工業的にみた場合、リン酸、ピロリン酸、メタリン酸、ポリリン酸、およびリン酸モノアルキルエステルや、リン酸ジアルキルエステルは、ステンレスを腐食し難いので、好ましい。リン酸モノエステルや、リン酸ジエステルとして、例えば、リン酸モノエチルエステルや、リン酸ジエチルエステル、リン酸モノブチルエステルやリン酸ジブチルエステル、リン酸モノ(2−エチルヘキシル)エステルや、リン酸ジ(2−エチルヘキシル)エステルなどが挙げられる。
【0029】
更に、水を実質的に含有しないリン酸、ピロリン酸、メタリン酸、ポリリン酸は停止剤としてより好ましい。水を含有しない状態で用いた場合は、停止剤と触媒の反応生成物が、析出しやすくなるため、ポリイソシアネート組成物中に停止剤と触媒の反応生成物が残留しにくくなるという効果がある。更に、水を含有しない状態で用いると、水とイソシアネートの反応生成物がポリイソシアネート中に混入しないために、ポリイソシアネートの粘度上昇がなく、また有機溶剤に対する希釈性を低下することもないという効果もある。なお、本発明でいう実質的に水を含有しないとは、上記の効果が発現される程度であれば水を含んでも良いと言うことであり、その目安を言えば、停止剤に対して5.0質量%未満、好ましくは2.0質量%未満、更に好ましくは0.50質量%未満である。
【0030】
また、アロファネート化触媒を用いた場合の別の好ましい停止方法としては、触媒を吸着剤により吸着させて、反応を停止する方法がある。また、吸着剤と上記の反応停止剤を組み合わせて停止する事も好ましい方法である。吸着剤の例として、シリカゲルや活性炭が挙げられる。吸着剤を添加する量は、触媒に対して、好ましくは1.4〜3000倍の質量であり、より好ましくは7.0〜1500倍の質量であり、さらに好ましくは10.0〜700倍の質量である。1.4倍以上であれば、ポリイソシアネート組成物中に残存する触媒、熱失活した触媒、反応停止剤と触媒の反応物、未反応の反応停止剤などを吸着する能力が充分であり、3000倍以下であれば、吸着剤をポリイソシアネート組成物中から除去する事が容易である。
【0031】
反応終了後、ポリイソシアネート組成物は、未反応のジイソシアネートや溶媒から分離する方が好ましい。未反応のジイソシアネートや溶媒を分離する方法として、例えば、薄膜蒸留法や溶剤抽出法が挙げられる。
本発明における反応は、一つの反応器で、ウレタン化反応、アロファネート化反応を行うことができる。また、二つの反応器を連結し、ウレタン化反応の工程とアロファネート化反応の工程を分けて実施することも出来る。あるいは数基の反応器を縦に並べて配置する事により、連続的に実施する事も可能である。
【0032】
次に、主剤ポリオール組成物について詳細に記載する。
本発明において主剤ポリオール組成物は、数平均分子量500〜10000であるアクリルポリオール、あるいはポリエステルポリオールを用いる。これらは単独で用いても、混合して用いても良い。さらには、アクリルポリオール、あるいはポリエステルポリオールと、他の樹脂を混合して用いても良い。他の樹脂としては、例えば、ポリエーテルポリオールや、フッ素含有ポリオール、脂肪族炭化水素ポリオール、ケイ素含有系ポリオール、ポリカーボネートポリオール、エポキシ樹脂、及びアルキドポリオール類があげられる。
また、本発明の主剤ポリオール組成物には、アクリルポリオールやポリエステルポリオールを、脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネートあるいはこれらから得られるポリイソシアネートで変成した、ウレタン変成アクリルポリオールやウレタン変成ポリエステルポリオールなどを用いることもできる。
【0033】
主剤ポリオール組成物の数平均分子量は、500〜10000、好ましくは500〜8000、より好ましくは500〜5000である。数平均分子量が500以上であれば、十分な官能基数を有する塗料を設計することが可能となる。数平均分子量が10000以下であれば、粘度を低く抑えることが可能となる。
なお、数平均分子量は、GPCで測定することができる。上記のポリイソシアネート組成物の数平均分子量を求めるのと同様の方法で測定する事が出来る。
本発明で用いる主剤ポリオールは、5〜350mgKOH/g、好ましくは10〜300mgKOH/g、より好ましくは20〜250mgKOH/gの水酸基を有することが好ましい。水酸価が5mgKOH/g以上であれば強靱な塗膜を得ることが可能となる。350mgKOH/g以下であれば、平滑な塗膜を得ることが可能となる。
【0034】
以下、主剤ポリオール組成物の製造方法について述べる。
アクリルポリオールの製造方法としては、例えば、一分子中に1個以上の活性水素を有する重合性モノマーと、これに共重合可能な他のモノマーを共重合させることによって得ることができる。例えば、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸−2−ヒドロキシブチル等の活性水素を有するアクリル酸エステル類、またはメタクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸−2−ヒドロキシブチル、メタクリル酸−3−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸−4−ヒドロキシブチル等の活性水素を有するメタクリル酸エステル類、またはグリセリンやトリメチロールプロパンなどのトリオールのアクリル酸モノエステルあるいはメタクリル酸モノエステル等の多価活性水素を有する(メタ)アクリル酸エステル類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等のポリエーテルポリオール類と上記の活性水素を有する(メタ)アクリル酸エステル類とのモノエーテル、グリシジル(メタ)アクリレートと酢酸、プロピオン酸、p−tert−ブチル安息香酸などの一塩基酸との付加物、
【0035】
あるいは上記の活性水素を有する(メタ)アクリル酸エステル類の活性水素にε−カプロラクタム、γ−バレロラクトンなどのラクトン類を開環重合させることにより得られる付加物の群から選ばれた単独または混合物を必須成分として、必用に応じてアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル等のアクリル酸エステル類、またはメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸−n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸−n−ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸グリシジル等のメタクリル酸エステル類、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸類、アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド等の不飽和アミド類、またはビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロプロピルトリメトキシシラン等の加水分解性シリル基を有するビニルモノマー類、スチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル、アクリルニトリル、フマル酸ジブチル等のその他の重合性モノマーの群から選ばれた単独、又は混合物を、常法により共重合させて得ることができる。例えば、上記の上記の単量体成分を、公知の過酸化物やアゾ化合物などのラジカル重合開始剤の存在下で溶液重合することによって得ることができる。
【0036】
ポリエステルポリオールの製造方法としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、ダイマー酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等のカルボン酸等の二塩基酸の単独または混合物と、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、トリメチルペンタンジオール、1,2−、1,3−及び1,4−シクロヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、2−メチロールプロパンジオール、エトキシ化トリメチロールプロパン等の多価アルコールの単独または混合物とを公知の縮合反応を行うことによって得ることができる。例えば、上記の成分を一緒にし、そして約160〜220℃で加熱することによって行うことができる。更に、例えばε−カプロラクトンなどのラクトン類を多価アルコールを用いて開環重合して得られるようなポリカプロラクトン類等もポリエステルポリオールとして用いることができる。
【0037】
次に、主剤ポリオール組成物とポリイソシアネート組成物を含有する本発明の塗料組成物について、詳しく記述する。本発明で用いる主剤ポリオール組成物とポリイソシアネート組成物の、イソシアネート基と水酸基の当量比(NCO/OH比)は、0.2〜5.0、好ましくは0.4〜3.0、より好ましくは0.5〜2.0が適当である。0.2以上であれば、強靱な塗膜を得ることが可能となる。5.0以下であれば、平滑な塗膜を得ることができる。
【0038】
本発明で用いる主剤ポリオール組成物、ポリイソシアネート組成物、塗料組成物はいずれも、有機溶剤と混合して使用することができる。この場合、有機溶剤は、水酸基及びイソシアネート基と反応する官能基を有していない方が好ましい。また、有機溶剤は本発明で用いる主剤ポリオール組成物、ポリイソシアネート組成物、塗料組成物と相溶する方が好ましい。このような有機溶剤として、一般に塗料溶剤として用いられているエステル化合物や、エーテル化合物、ケトン化合物、芳香族化合物、エチレングリコールジアルキルエーテル系の化合物、ポリエチレングリコールジカルボキシレート系の化合物、炭化水素系溶剤、芳香族系溶剤などを用いても良い。
【0039】
本発明の塗料組成物は、塗装時の不揮発分を65質量%以上にしてハイソリッド塗料組成物として用いる事も出来る。塗装時の不揮発分の質量%は、好ましくは65質量%以上、より好ましくは70質量%以上である。塗装時の不揮発分が65%以上であれば、大気中に放出される有機溶剤量を減らすことができる。不揮発分の測定は、例えば塗料組成物を、110℃1hr乾燥させ、その加熱残分を加熱前の質量と比較することによって測定することができる。
本発明の塗料組成物中には、目的及び用途に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、触媒、顔料、レベリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、可塑剤、界面活性剤等の当該技術分野で使用されている各種添加剤を混合して使用することもできる。これらは、主剤ポリオール組成物中、ポリイソシアネート組成物中、塗料組成物中いずれに含有していても良い。
【0040】
硬化促進用の触媒の例としては、ジブチルスズジラウレート、2−エチルヘキサン酸スズ、2−エチルヘキサン酸亜鉛、コバルト塩、等の金属塩、トリエチルアミン、ピリジン、メチルピリジン、ベンジルジメチルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、N−メチルピペリジン、ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N’−エンドエチレンピペラジン、及びN,N’−ジメチルピペラジンのような3級アミン類等があげられる。
本発明の塗料組成物は、特定の構造を有した高官能なポリイソシアネート組成物と、低分子量のアクリルポリオールあるいはポリエステルポリオールを含有する主剤ポリオールを用いており、得られた塗膜は、良好な外観、優れた耐候性に加え、耐擦り傷性が優れ、高硬度、高Tgを持つという特徴も有している。
【0041】
従って、本発明の塗料組成物は、自動車用途や情報家電用途、パソコンや携帯電話等の情報機器用途に用いることができる塗料組成物である。特に、優れた外観、耐候性、耐擦り傷性が要求される自動車の外装部分の塗装に適している。その中でもボディー、あるいはドアミラーやバンパーやホイール部などのプラスチック部分の新車上塗り用塗料、あるいは自動車補修用塗料に適している。更にその中でも耐候性、高硬度、高Tgが要求されるトップクリアー用途に適している。
【0042】
以下、本発明で用いるポリイソシアネートの合成方法、並びに本発明の塗料組成物についての実施例を記載する。
数平均分子量や重量平均分子量などは、GPC(使用機器:HLC−8120(東ソー株式会社製)、使用カラム:TSK GEL SuperH1000、TSK GEL SuperH2000、TSK GEL SuperH3000(何れも東ソー株式会社製)、試料濃度:5wt/vol%、キャリア:THF、検出方法:視差屈折計、流出量0.6ml/min.、カラム温度30℃)を用いて測定した。GPCの検量線は、分子量50000〜2050のポリスチレン(ジーエルサイエンス株式会社製PSS−06(Mw50000)、BK13007(Mp=20000、Mw/Mn=1.03)、PSS−08(Mw=9000)、PSS−09(Mw=4000)、5040−35125(Mp=2050、Mw/Mn=1.05)と、HDI系ポリイソシアネート組成物(デュラネートTPA−100、旭化成ケミカルズ株式会社製)のイソシアヌレート体の3量体〜7量体(イソシアヌレート3量体分子量=504、イソシアヌレート5量体分子量=840、イソシアヌレート7量体分子量=1176)及びHDI(分子量=168)を標準として作成した。
【0043】
アロファネート基のモル分率は、1H−NMR(Bruker社製FT−NMR DPX−400)を用いて、8.5ppm付近のアロファネート基の窒素原子上の水素のシグナルと、3.8ppm付近のイソシアヌレート基のイソシアヌレート環の窒素原子の隣のメチレン基の水素のシグナルの面積から求めた。
NCO%は、イソシアネート基を過剰の2Nアミンで中和した後、1N塩酸による逆滴定によって求めた。
粘度は、E型粘度計(株式会社トキメック社製)を用いて25℃で測定した。
標準ローター(1°34’×R24)を用いた。回転数は、以下の通り。
100r.p.m. (128mPa.s未満の場合)
50r.p.m. (128mPa.s〜256mPa.sの場合)
20r.p.m. (256mPa.s〜640mPa.sの場合)
10r.p.m. (640mPa.s〜1280mPa.sの場合)
5r.p.m. (1280mPa.s〜2560mPa.sの場合)
ゲル分率は、塗膜約0.1gをアセトン中に20℃で24時間浸漬し、塗膜取り出し後、80℃1時間乾燥した塗膜の質量から求めた。
【0044】
耐擦り傷性試験は、ラビングテスター(太平理化工業社製)を用いて以下の方法で行った。
予め塗面の20°光沢を測定した。クレンザー(商品名マルゼンクレンザー、株式会社マルゼンクレンザー製)と水を3:2で混合し、研磨剤とした。研磨剤をラビングテスターのスポンジに約1g付着させ、200gの荷重をかけ試験板の塗膜を往復20回こすりつけた。
その後、塗面を流水で洗浄し、自然乾燥後、その塗面の20°光沢を測定した。次式によって20°光沢保持率を計算し、その値を耐擦り傷性の評価値とする。
20°光沢保持率=(試験後の20°光沢/試験前の20°光沢)×100
塗膜硬度は、塗膜を20℃、65%RH雰囲気下で14日間硬化させた後、ケーニッヒ硬度計(BYK chemie社製)で測定した。
Tgは、バイブロン(セイコーインスツルメント株式会社製:DMS6100)を用いて測定した。温度領域は−20℃〜140℃、昇温速度は+2℃/minで測定した。解析条件は、スライス周波数を10Hzとした。Tgはtanδピーク温度から求めた。
【実施例】
【0045】
合成例1(主剤ポリオール組成物の合成例)
攪拌器、温度計、冷却管を取り付けた四ッ口フラスコに、炭化水素系溶剤(商品名「ソルベッソ#150」:エクソン化学株式会社製の溶剤)120.0g、キシレン(和光純薬工業株式会社製)60.0gを仕込み、内部を窒素置換し、120℃に昇温した後、以下に述べる(メタ)アクリル系モノマーとベンゾイルパーオキサイド8.0gを2時間かけて滴下し、攪拌反応させた。滴下終了後、さらに120℃で4時間反応を続け、主剤ポリオール組成物を得た。
原料に用いた(メタ)アクリル系モノマー
メチルメタクリレート 128.8g
n−ブチルアクリレート 84.8g
シクロヘキサンメタクリレート 80.0g
2−ヒドロキシエチルメタクリレート 74.4g
スチレン 32.0g
得られた主剤ポリオール組成物は、固形分70%、水酸基価=80.0mgKOH/g(樹脂分に対して)、Tg=40.1℃、数平均分子量1700であった。得られた主剤ポリオールを、以下S1とする。なお、本発明で言う%は特に記載が無い場合は全て質量%を言う。
【0046】
合成例2(硬化剤組成物の合成例:1,4−シクロヘキサンジオール)
攪拌器、温度計、冷却管を取り付けた四ッ口フラスコの内部を窒素置換し、HDI1461gと1,4−シクロヘキサンジオール(和光純薬工業株式会社製)51gを仕込み、攪拌下130℃で1時間ウレタン化反応を行った。130℃で、アロファネート化触媒として2−エチルヘキサン酸ジルコニルの固形分20%ミネラルスピリット溶液(日本化学産業株式会社製、商品名「ニッカオクチックスジルコニウム12%」をミネラルスピリットで希釈したもの)を0.59g加えた。100分後、反応液の屈折率上昇が0.0055となった時点で105%リン酸(太平化学産業製)の固形分20%イソブタノール溶液0.21g(アロファネート化触媒に対して1.07倍モル)を加え反応を停止した。
【0047】
流下式薄膜蒸留装置を用いて、1回目160℃(27Pa)、2回目150℃(13Pa)で未反応のHDIを除去した。
得られたポリイソシアネート組成物は透明の液体であり、収量320g、粘度4000mPa.s、NCO含有率20.8%、fn=4.0であった。NMRを測定した所、アロファネート/イソシアヌレートのモル比は97/3であった。得られたポリイソシアネート組成物を、以下P1とする。
【0048】
合成例3(硬化剤組成物の合成例:1,4−シクロヘキサンジメタノール)
合成例2と同様に装置に、HDI1500gと1,4−シクロヘキサンジメタノール(和光純薬工業株式会社製)64gを仕込み、攪拌下130℃で1時間ウレタン化反応を行った。130℃で、アロファネート化触媒として2−エチルヘキサン酸ジルコニルの固形分20%ミネラルスピリット溶液を0.45g加えた。80分後、反応液の屈折率上昇が0.0055となった時点で105%リン酸(太平化学産業製)の固形分20%イソブタノール溶液0.16g(アロファネート化触媒に対して1.06倍モル)を加え反応を停止した。合成例2と同様の条件で、未反応のHDIを除去した。
【0049】
得られたポリイソシアネート組成物は、透明の液体であり、収量310g、粘度2600mPa.s、NCO含有率20.4%、fn=4.2であった。NMRを測定した所、アロファネート/イソシアヌレートのモル比は97/3であった。得られたポリイソシアネート組成物を、以下P2とする。
【0050】
合成例4(比較例に用いる硬化剤組成物の合成例:1,4−ブタンジオール)
合成例2と同様に装置に、HDI1500gと1,4−ブタンジオール(和光純薬工業株式会社製)40gを仕込み、攪拌下130℃で1時間ウレタン化反応を行った。130℃で、アロファネート化触媒として2−エチルヘキサン酸ジルコニルの固形分20%ミネラルスピリット溶液を0.31g加えた。90分後、反応液の屈折率上昇が0.0055となった時点で105%リン酸(太平化学産業製)の固形分20%イソブタノール溶液0.11g(アロファネート化触媒に対して1.07倍モル)を加え反応を停止した。合成例2と同様の条件で、未反応のHDIを除去した。
【0051】
得られたポリイソシアネート組成物は、透明の液体であり、収量330g、粘度1130mPa.s、NCO含有率21.3%、fn=4.2であった。NMRを測定した所、アロファネート/イソシアヌレートのモル比は97/3であった。得られたポリイソシアネート組成物を、以下P3とする。
【0052】
[実施例1〜2、比較例1〜2]
塗料組成物を以下のようにして作製した。
主剤ポリオール組成物としてS1を、ポリイソシアネート組成物としてP1〜P3とイソシアヌレート型ポリイソシアネートであるTKA−100(旭化成ケミカルズ株式会社製、粘度=2700mPa.s、NCO%=22.2%、fn=3.5、アロファネート/イソシアヌレートのモル比=0/100、以下P4とする)とを用い、イソシアネート基/水酸基のモル比が1/1となるように調整した。溶剤として、ウレタンシンナー(トルエン(和光純薬工業株式会社製):酢酸ブチル(和光純薬工業株式会社製):酢酸エチル(和光純薬工業株式会社製):キシレン(和光純薬工業株式会社製):プロピレングリコールメチルエーテルAC(ゴードー溶剤株式会社製)=30:30:20:15:5の重量比で混合)を用いて、固形分が70%になるように調整した。
【0053】
硬化性の指標として、塗膜の硬化初期のゲル分率の測定を行った。バーコーダーにて、ポリプロピレン板に、膜厚が約60ミクロンになるように塗布した後、20℃で1日乾燥した場合のゲル分率を測定した。この結果を表1に示す。なお、表1では80%以上を○、80%未満を×という記号で示す。
硬度の指標として、塗膜のケーニッヒ硬度の測定を行った。バーコーダーにて、ガラス板に、膜厚が約60ミクロンになるように塗布した後、20℃で7日乾燥を行い、その後に100℃で真空乾燥(13Pa)を8時間行った後、塗膜のケーニッヒ硬度を測定した。この結果を表1に示す。なお、表1では100回以上を○、100回未満を×という記号で示す。
【0054】
擦り傷性の指標として、塗膜の擦り傷性試験を行った。バーコーダーにて、白塗装したアルミ板に、膜厚が約60ミクロンになるように塗布した後、20℃14日乾燥した後、擦り傷性の試験を行った。この結果を表1に示す。なお、光沢保持率が、70%以上を○、70〜60%を△、60%未満を×とした。
Tgの測定は以下のように行った。バーコーダーにて、ポリプロピレン板に、膜厚が約60ミクロンになるように塗布した後、20℃で7日乾燥を行い、その後に100℃で真空乾燥(13Pa)を8時間行った後、塗膜のTgを測定した。この結果を表1に示す。なお、表1では75℃以上を○、75℃未満を×という記号で示す。
【0055】
[実施例3〜4、比較例3〜4]
塗料組成物を以下のようにして作製した。
主剤ポリオール組成物として、自動車用アクリルポリオール(商品名「Setalux 1767VV−65」:アクゾノーベル株式会社製、数平均分子量=2500、水酸基価=150mgKOH/g(樹脂分に対して)、Tg=9.0℃、以下S2とする)を用い、ポリイソシアネート組成物としてP1〜P4を用いて、イソシアネート基/水酸基のモル比が1/1となるように調整した。溶剤として、ウレタンシンナーを用いて、固形分が70%になるように調整した。
【0056】
硬化性の指標として、硬化初期のゲル分率の測定を行った。バーコーダーにて、ポリプロピレン板に、膜厚が約60ミクロンになるように塗布した後、20℃で1日乾燥した場合のゲル分率を測定した。この結果を表2に示す。なお、表2では80%以上を○、80%未満を×という記号で示す。
硬度の指標として、塗膜のケーニッヒ硬度の測定を行った。バーコーダーにて、ガラス板に、膜厚が約60ミクロンになるように塗布した後、20℃で7日乾燥を行い、その後に100℃で真空乾燥(13Pa)を8時間行った後、塗膜のケーニッヒ硬度を測定した。この結果を表2に示す。なお、表2では80回以上を○、80回未満を×という記号で示す。
【0057】
擦り傷性の指標として、塗膜の擦り傷性試験を行った。バーコーダーにて、白塗装したアルミ板に、膜厚が約60ミクロンになるように塗布した後、20℃14日乾燥した後、擦り傷性の試験を行った。この結果を表2に示す。なお、光沢保持率が、70%以上を○、70〜60%を△、60%未満を×とした。
Tgの測定は以下のように行った。バーコーダーにて、ポリプロピレン板に、膜厚が約60ミクロンになるように塗布した後、20℃で7日乾燥を行い、その後に100℃で真空乾燥(13Pa)を8時間行った後、塗膜のTgを測定した。この結果を表2に示す。なお、表2では65℃以上を○、65℃未満を×という記号で示す。
【0058】
耐候性、耐久性の指標として、S−WOMによる測定を行った。バーコーダーにて、白塗装したアルミ板に、膜厚が約60ミクロンになるように塗布した後、20℃14日乾燥した後、S−WOMによる塗膜の測定を行った。その結果、本件で作製した塗料組成物は、3000時間を超えても、光沢保持率が85%以上であった。この結果より、本件で作製した塗料組成物は、耐候性、耐久性は良好である事が確認出来た。
【0059】
【表1】

【0060】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明の組成物は、自動車用途や情報家電用途に用いる事が出来る塗料組成物である。特に、高品質な外観と優れた耐候性、耐久性が要求される、自動車のボディー、あるいはドアミラーやバンパーやホイール部などのプラスチック部分の新車上塗り用塗料、あるいは、自動車補修用塗料に適している。更にそのなかでも、高いTg、良好な耐擦り傷性、高い硬度が要求される自動車のトップコート用途に適している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)有機ジイソシアネート、及びそれらから得られるイソシアネートプレポリマーから選ばれる少なくとも1種類のイソシアネート化合物と脂環構造を有するジオールを原料とする、固形分100%時の粘度が1200〜15000mPa.s、また固形分100%時の数平均官能基数が3.0〜8.0であるポリイソシアネート組成物と、(B)数平均分子量500〜10000である、アクリルポリオールあるいはポリエステルポリオールを含有する主剤ポリオール組成物とを含む塗料組成物。
【請求項2】
ポリイソシアネート組成物が、ポリイソシアネート組成物中に含まれるアロファネート構造とイソシアヌレート構造とウレタン構造のトータルモル量を100%とした際、アロファネート構造のモル分率が75モル%以上である請求項1記載の塗料組成物。
【請求項3】
脂環構造を有するジオールが、1,4−シクロヘキサンジオール、あるいは1,4−シクロヘキサンジメタノールである請求項1〜2のいずれかに記載の塗料組成物。
【請求項4】
塗装時の不揮発分が65質量%以上である、請求項1〜3のいずれかに記載の塗料組成物。
【請求項5】
自動車車体あるいは自動車用プラスチック部品あるいは情報家電製品用プラスチック部品のトップクリアー用途である、請求項1〜4のいずれかに記載の塗料組成物。
【請求項6】
請求項5に記載の塗料組成物が塗布された自動車車体あるいは自動車用プラスチック部品あるいは情報家電製品用プラスチック部品。

【公開番号】特開2006−16430(P2006−16430A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−193150(P2004−193150)
【出願日】平成16年6月30日(2004.6.30)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】