説明

塗料組成物

【課題】 本発明は缶用塗料であって、ネジ加工部を有するボトル缶の上塗塗料又はボトル缶用のキャップ用内面上塗塗料において、ネジ加工性と高温時(約40〜80℃付近)の開栓性とに優れ、更に光沢の高い意匠性に優れる塗膜を形成できる塗料組成物を提供することを課題とする。
【解決手段】 ポリエステル樹脂(A)、硬化剤(B)及び有機高分子微粒子(C)を含有し、前記の硬化剤(B)はアミノ樹脂又はフェノール樹脂である塗料組成物であって、前記のポリエステル樹脂(A)と硬化剤(B)との配合比率が固形分の質量比で(A)/(B)が45/55〜90/10の範囲であり、前記の有機高分子微粒子(C)の材質は、ベンゾグアナミン・メラミン・ホルムアルデヒド縮合物、メラミン・ホルムアルデヒド縮合物、尿素・ホルムアルデヒド縮合物、ポリメタクリル酸メチル系架橋物から成る群から選ばれる一つ以上である塗料組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は缶用塗料のなかでも、ネジ加工部を有するボトル缶の上塗塗料又はボトル缶用のキャップの内面上塗塗料であって、該ネジ部に優れた開栓性を付与する塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、缶用上塗塗料としては、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂又はエポキシ樹脂を主体樹脂として、アミノ樹脂、フェノール樹脂などの硬化剤及び硬化触媒を配合した熱硬化塗料が多く用いられている。
【0003】
2ピース缶などの飲料用の缶の蓋としては従来イージーオープン蓋が広く使われている。近年蓋の再栓性(蓋の開閉を繰り返せるかどうか)の観点から、ネジ加工されたキャップ付きボトル缶が開発され、使われるようになった。ボトル缶は、アルミニウムやアルミニウム合金製の金属板にサイズ塗料が塗装されて焼付け乾燥させ、その上にインキによって絵柄等が印刷され、さらにウェットオンウェットで上塗塗料が塗装される。その後絞り、しごき加工により缶本体とネック部の成型及びネジ加工が行われる。
【0004】
従来の缶用上塗塗料では、前記のボトル缶の加工性を重視するため、塗膜のガラス転移温度(Tg)は60℃以下が一般的である。ところが飲料缶はホットドリンク用として約60℃付近に加熱されることがあり、その場合は塗膜のTgを超えるので、塗膜に粘着性が出て開栓性が常温に比べて劣化し、問題となる。開栓性を向上させるため塗膜のTgを60℃以上にすると、缶本体、ネック部やネジを成型する際の加工性が悪くなる。加工性と開栓性との両方を高いレベルで満足する塗料が要望されている。
【0005】
特許文献1にはオルガノゾル塗料からなる内面塗膜を備えた金属製容器蓋が記載されている。この塗膜は耐傷付き、耐磨耗性に優れ、びん口の開栓、密栓操作を多数回行ってもネジ内面の黒変を防げるとされている。これらは常温での効果であり、約60℃付近での開栓性向上には結びつかない。
【0006】
特許文献2には結晶性熱可塑性樹脂とワックスを使用し、自己潤滑性を有する樹脂被覆金属板が記載されている。自己潤滑性を向上することで、開栓性を改善できる可能性はあるが、結晶性熱可塑性樹脂は溶剤に溶解しないので塗料化は困難であり、塗装方法が押し出しコート法、キャストフィルム熱接着法などに限定される。ボトル缶には適用は難しい。
【0007】
特許文献3には、開栓性が良好な金属製ボトル缶が記載されている。しかし、上塗塗料はワックスを添加した概略配合しか記載されておらず、高温時(約60℃)に優れた開栓性を有する塗料を得ることは難しいと考えられる。
【0008】
【特許文献1】特開平5−319445号公報
【特許文献2】特開2002−347170号公報
【特許文献3】特開2003−252330号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は缶用塗料であって、ネジ加工部を有するボトル缶の上塗塗料又はボトル缶用のキャップ用内面上塗塗料において、ネジ部の加工性と高温時(約40〜80℃付近)の開栓性とに優れ、更に光沢の高い意匠性に優れる塗膜を形成できる塗料組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明者らは上塗り塗料に有機高分子微粒子を添加することにより、前記の課題が解決されることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち本発明の塗料組成物は、ポリエステル樹脂(A)、硬化剤(B)及び有機高分子微粒子(C)を含有し、前記の硬化剤(B)はアミノ樹脂及び又はフェノール樹脂である塗料組成物である。
【0011】
そして前記のポリエステル樹脂(A)と硬化剤(B)との配合比率が固形分の質量比で(A)/(B)が45/55〜90/10の範囲であり、
(A)と(B)の合計を100質量部として、平均粒子径が0.1〜10μmの有機高分子微粒子(C)を0.005〜1質量部含有し、
前記の有機高分子微粒子(C)の材質は、ベンゾグアナミン・メラミン・ホルムアルデヒド縮合物、メラミン・ホルムアルデヒド縮合物、尿素・ホルムアルデヒド縮合物、ポリメタクリル酸メチル系架橋物から成る群から選ばれる一つ以上であり、
前記のポリエステル樹脂(A)は数平均分子量が300〜30000、ガラス転移温度が−10〜60℃及び水酸基価が2〜100mgKOH/gであることが好ましい。尚、前記のポリエステル樹脂や硬化剤はその取り扱いを容易にするために、通常溶剤分を40〜60%程度含んだ形で供給される。前記の配合比率は、その溶剤分を除いた固形分について表す。また部や%は質量基準である。
【0012】
また本発明の塗料組成物は、滑剤としては天然ワックス又は合成滑剤を含有しても良く、また硬化触媒としてスルホン酸化合物、スルホン酸化合物のアミン中和物及びリン酸若しくはリン酸化合物から成る群から選ばれる一つ以上を含有することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の塗料組成物を缶のネジ部の塗装に用いることにより、優れたネジ部の加工性と高温での良好な開栓性を達成することができる。さらに本発明の塗料組成物は、光沢が高く意匠性に優れる塗膜を形成できることから、缶用塗料などの意匠性を要求される器物に加工される塗装鋼板用の上塗クリヤー塗料として好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の塗料組成物について、さらに詳しく説明する。
ポリエステル樹脂(A)と硬化剤(B)との配合比率は、固形分質量比で(A)/(B)が45/55〜90/10の範囲であり、好ましくは60/40〜80/20の範囲である。(A)成分と(B)成分との合計100質量部中、(A)成分が45質量部未満になると塗膜の加工性が低下し、一方、(A)成分が90質量部を超えると、得られる塗膜の開栓性、耐汚染性、硬度、耐溶剤性などが低下する。
【0015】
前記のポリエステル樹脂(A)は、数平均分子量が300〜30000、ガラス転移温度が−10〜60℃、水酸基価が2〜100mgKOH/gの範囲が好ましく、より好ましくは数平均分子量が500〜20000、ガラス転移温度が−10〜40℃の範囲である。加工性を高めるためには数平均分子量は300以上が良く、また溶解性の点から、数平均分子量は30000以下が良い。
【0016】
上記のポリエステル樹脂は水酸基を含有するものであり、オイルフリーポリエステル樹脂、アルキド樹脂、又は、これらの変性物等いずれであってもよい。前記のポリエステル樹脂は主に多価アルコールと多塩基酸とのエステル化合物である。多塩基酸と多価アルコールの結合を骨格とし、油脂(脂肪酸)で変性していないものをオイルフリーポリエステル樹脂と言い、油脂(脂肪酸)で変性したものをアルキド樹脂と言う。その脂肪酸としては、しなきり油脂肪酸、ぬか油脂肪酸、ヤシ油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸、大豆油脂肪酸、トール油脂肪酸、キリ油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、脱水ヒマシ油脂肪酸などが挙げられる。アルキド樹脂の油長は35%以下が好ましい。
【0017】
前記の多価アルコールとしては、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチルペンタンジオール、1,4−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、グリセリン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン等が挙げられる。塗膜の硬度と加工性を考慮して適宜選択して使用できる。
【0018】
前記の多塩基酸としてはセバシン酸、ヘット酸、無水フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸コハク酸、フマル酸、アジピン酸、無水マレイン酸、安息香酸、クロトン酸、P−tert−ブチル安息香酸などの1塩基酸、メチルシクロヘキセントリカルボン酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸などが挙げられる。塗膜の硬度と加工性を考慮して、適宜選択して使用できる。多価アルコールと多塩基酸のエステル化反応は公知の方法で行える。
【0019】
前記の硬化剤(B)はアミノ樹脂(メラミン樹脂、ベンゾグアンミン樹脂、尿素樹脂等であり)またはフェノール樹脂であり、これらを単独又は混合して使用しても良い。好ましくはエーテル化メラミン樹脂、エーテル化ベンゾグアナミン樹脂である。
【0020】
前記のエーテル化メラミン樹脂は、メラミンとホルムアルデヒドとの付加反応生成物(メチロール化)である、メチロール化メラミン樹脂の中のメチロール基の一部又は、全部をアルコール類でエーテル化したものである。硬化性と加工性の点から数平均分子量が300〜4000の範囲であることが好ましく、400〜3000の範囲にあることがより好ましい。
【0021】
前記のエーテル化ベンゾグアナミン樹脂は、ベンゾグアナミンとホルムアルデヒドとの付加反応生成物(メチロール化)であるメチロール化ベンゾグアナミン樹脂の中のメチロール基の一部又は全部をアルコール類でエーテル化したものである。硬化性と加工性の点から数平均分子量が300〜4000の範囲であることが好ましく、400〜3000の範囲にあることがより好ましい。
【0022】
前記の有機高分子微粒子(C)は、その平均粒子径が0.1〜10μmであることが好ましく、その配合量は、(A)成分と(B)成分との合計100質量部に対して、0.005〜1質量部の範囲であり、好ましくは0.02〜0.5質量部の範囲である。(C)成分の配合量が0.005質量部未満だとブロッキング性の効果が期待できない。また(C)成分の配合量が1質量部を超えると、塗面が凹凸になって光沢が低下し、意匠性が低下するとともに塗膜の加工性が低下する。
【0023】
また有機高分子微粒子(C)成分の平均粒子径が10μmを超えると塗面が凹凸になり、意匠性が低下する。好ましくは0.1〜5μmである。
【0024】
有機高分子微粒子(C)の材質として好ましくは、ベンゾグアナミン・メラミン・ホルムアルデヒド縮合物、メラミン・ホルムアルデヒド縮合物、尿素・ホルムアルデヒド縮合物、ポリメタクリル酸メチル系架橋物などが挙げられる。
【0025】
また本発明の塗料組成物には、滑性及び耐磨耗性付与の目的で滑剤(D)を添加することができる。この滑剤としては天然ワックス又は合成の滑剤が好適である。天然ワックスは動物系、植物系いずれでも良い。また、合成滑剤はシリコ−ン系滑剤、フッ素系滑剤、ポリオレフィン系滑剤、その他ポリオール化合物と脂肪酸とのエステル化合物を用いることができる。又、滑剤は2種類以上を併用することもできる。好ましくは、天然系ワックス、シリコーン系滑剤、及びフッ素系滑剤を併用することである。
【0026】
滑剤(D)の配合量は、(A)成分と(B)成分との合計100質量部に対して、0.05〜4質量部の範囲である。好ましくは0.2〜3質量部の範囲である。(D)成分の配合量が0.05質量部未満だと、滑性が低下し、開栓性も低下する。(D)成分の配合量が4質量部を超えると、ワックス又は滑剤が浮上し、塗膜が白く濁り、意匠性が低下する。
【0027】
また本発明の塗料組成物には、硬化促進作用の目的で硬化触媒(E)を添加することができる。硬化触媒(E)としては、強酸、強酸の中和物などがあり、例えば、P−トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸、ジノニルナフタレンジスルホン酸、キシレンスルホン酸、クメンスルホン酸などの強度の酸であるスルホン酸化合物、これらのスルホン酸化合物のアミン中和物、リン酸及びリン酸化合物などを挙げることができる。
【0028】
硬化触媒(E)の配合量は、(A)成分と(B)成分との合計100質量部に対して、0.01〜3質量部の範囲であり、好ましくは0.1〜1質量部の範囲である。(E)成分の配合量が0.01未満だと、硬度、開栓性などが低下する。(E)成分の配合量が2質量部を超えると、加工性が低下する。
【0029】
本発明の塗料組成物は、上記(A)、(B)、(C)、(D)、及び(E)成分に加えて、塗装に適した粘度に調整して塗装しやすくするなどの目的で通常、有機溶剤が加えられる。有機溶剤としては、キシレン、トリメチルベンゼン、トルエン、高沸点石油系炭化水素などの炭化水素系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、イソホロン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶剤;エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルなどのエーテル系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、などのエステル系溶剤;プロピレングリコール、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、などのプロピレン系溶剤;ブタノール、イソブタノール、イソプロピルアルコール、2-エチルヘキサノールなどのアルコール系溶剤などが挙げられ、これらは単独で又は2種以上併用して使用することができる。
【0030】
本発明の塗料組成物はクリヤー塗料として使用することができるが、着色顔料を含有する着色塗料としても使用できる。着色顔料としては、例えばカーボンブラック、黒鉛などの黒色顔料;フタロシアニングリーン、フタロシアニンブルー、キナクリドン系やアゾ系などの有機着色顔料;群青、ベンガラ、チタン白、チタンエローなどの無機着色顔料が使用できる。更に、カオリン、クレー、タルク、マイカ、シリカ、アルミナなどの体質顔料、充填材、添加剤などを併用してもよい。
【0031】
本発明塗料組成物を塗装する被塗装物としては、フィルムラミネート金属板、錫メッキ鋼板、クロムメッキ鋼板などの鋼板、アルミニウム、アルミニウム合金などの金属板又はこれらの金属板にリン酸塩系、クロム酸塩系及びジルコニウム系などの表面処理を施した金属板、又は、これらの板を絞り加工した有底円筒状缶などが好適であるが、プラスチック、セメント、木材などにも適用可能である。前記の塗料は、これらの被塗装物に直接に塗装してもよい。又サイズ(下塗り)塗装、ホワイトコーチング(中塗り)塗装後に上塗クリヤー塗料として、及び印刷後に上塗クリヤー塗料として塗装することができる。上塗クリヤー塗料はホワイトコーチング(中り塗り)塗膜や、印刷された意匠デザインを保護するために使用する。サイズとしては、エポキシ系、ポリエステル系、アクリル系、及びこれらの変性系などが挙げられ、加工性の面からポリエステル系サイズが特に好適である。サイズ塗膜の膜厚は特に限定されるものではないが、通常1〜10μm、好ましくは1.5〜5μmの範囲である。
【0032】
ホワイトコーチング(中塗り)塗料としては、ポリエステル系、アクリル系及びこれらの変性系などが挙げられ、加工性の面からポリエステル系ホワイトコーチング(中塗り)塗料が特に好適である。ホワイトコーチングの塗膜の膜厚は特に限定されるものではないが、通常4〜20μm、好ましくは5〜15μmの範囲である。
【0033】
本発明の塗料組成物は通常の塗料と同様の方法で製造でき、前記の溶剤で原料を溶解し、又は分散させて塗料化する。本発明塗料組成物の塗装方法は、ロール塗装、コイルコーティング塗装、及び曲面塗装などが可能であり、通常、乾燥した後の塗膜厚が3〜15μmの範囲となるよう塗装される。本発明の塗料の焼付け条件は、塗料が硬化する温度及び焼付け時間の範囲から適宜選択できる。曲面塗装分野では、基材の到達温度が180〜230℃で15〜180秒の範囲が好ましく、特に190〜220℃で20〜60秒の範囲が好ましい。
【実施例】
【0034】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。
表1〜表4に示す組成配合にて、実施例及び比較例のそれぞれ8種類の塗料(いずれも上塗りクリヤー塗料)を調製した。得られた塗料を用いて、下記の試験片1〜4の4種類の試験片を調製し、それらの試験片について表6及び表7に示す項目の試験を行った。塗料と試験片との組み合わせを表6及び表7に示す。また試験結果を同じく表6及び表7に示す。
【0035】
なお表1〜表4におけるポリエステル樹脂及びアミノ樹脂の量は、固形分質量による表示であり、硬化触媒の量は、それぞれのスルホン酸化合物の量に換算して質量表示した。滑剤の量は固形分による質量表示である。塗料化に際しては、溶剤としてエチレングリコールモノブチルエーテル(エーテル系)、ソルべッソ150(エッソスタンダ−ド石油株式会社製、高沸点石油系炭化水素系溶剤)を使用した。塗装に際しては、塗料粘度をフォードカップ#4で約80秒(25℃)に調整した。
【0036】
[試験片1](サイズ塗膜有り+上塗クリヤー塗料)
厚さ0.21mmのアルミニウム板上に大日本インキ化学工業社製6E−090サイズを塗装し、素材到達最高温度200℃で1分間焼付け、塗装板を得た。この塗装板上に前記のようにして得られた各上塗クリヤー塗料をバーコーターにて乾燥膜厚が約7μmとなるように塗装し、素材到達最高温度が210℃で2分間焼付けて上塗クリヤー塗装板を得た。
【0037】
[試験片2](サイズ塗膜無し+上塗クリヤー塗料)
厚さ0.21mmのアルミニウム板にサイズコーティングを塗装しない以外は試験片1の場合と同様にして試験片2を得た。
【0038】
[試験片3](ホワイトコーチング+上塗クリヤー塗料)
厚さ0.21mmのアルミニウム板にホワイトコーチング(中塗り塗料)を乾燥膜厚が6μmとなるように塗装し、素材到達最高温度200℃で1分間焼付け、塗装板を得た。この塗装板上に前記のように得られた各上塗クリヤー塗料をバーコーターにて乾燥膜厚が約7μmとなるように塗装し、素材到達最高温度が210℃で2分間焼付けて上塗クリヤー塗装板を得た。
【0039】
[試験片4](サイズ塗膜有り+インキ+上塗クリヤー塗料)
厚さ0.21mmのアルミニウム板上に大日本インキ化学工業社製6E−090サイズを塗装し、素材到達最高温度200℃で1分間焼付け、塗装板を得た。その上にポリエステル樹脂をビヒクルの主成分とするインキ(大日本インキ化学工業社製金属平版インキ MTC NS B墨)を印刷(未乾燥の膜厚が4μm)し、インキが未乾燥の状態で、各上塗クリヤー塗料をバーコーターにて乾燥膜厚が約7μmとなるように塗装し、素材到達最高温度が210℃で2分間焼付けて上塗クリヤー塗装板を得た。本塗装板を準備する目的は、下地が墨(黒色)であると、その上に塗る塗料のブツや塗膜外観を評価しやすいからである。
【0040】
【表1】

【0041】
【表2】

【0042】
【表3】

【0043】
【表4】

【0044】
表1中の(註)は、それぞれ下記のとおりである。
(*1〜*4)のポリエステル樹脂は、いずれも東洋紡績株式会社製のポリエステル樹脂であり、表5に性状値を示す。
(*5)スーパーベッカミン TD-126:大日本インキ化学工業株式会社製、n−ブチルエーテル化ベンゾグアナミン樹脂。
(*6)ユーバン 20SE60:三井サイテック株式会社製、n−ブチルエーテル化メラミン樹脂。
(*7)有機フィラーJT:日本化成株式会社製、平均粒子径約2μmの尿素ホルムアルデヒド樹脂の微粒子。
(*8)エポスターM14:日本触媒株式会社製、平均粒子径約1μmのベンゾグアナミン・メラミン・ホルムアルデヒド縮合物の微粒子。
(*9)エポスターS:日本触媒株式会社製、平均粒子径約0.2μmのメラミン・ホルムアルデヒド縮合物の微粒子。
(*10)エポスターL15:日本触媒株式会社製、平均粒子径約15μmのベンゾグアナミン・メラミン・ホルムアルデヒド縮合物の微粒子。
(*11)PTSA:明友産業株式会社製、パラトルエンスルホン酸。
(*12)NACURE 5225:キング株式会社製、ドデシルベンゼンスルホン酸アミン塩。
(*13)BYK−370:ビックケミー株式会社製、シリコ−ン滑剤。
(*14)ハイディスパー1260:岐阜セラック株式会社製、マイクロクリスタリンワックス。
【0045】
【表5】

【0046】
【表6】

【0047】
【表7】

【0048】
表6及び表7における試験方法は次の通りである。
[塗面外観]
塗装面30cm×22cm(縦×横)の光沢、凹凸等を目視判定した。
◎:光沢感があり、凹凸感がないもの。
○:光沢感があるが、凹凸が僅かあるもの。
△:光沢感が若干劣り、凹凸があるもの。
×:塗膜がざらざらしているもの。
(○−△は、○乃至△の意味である。)
[ネジ部の加工性]
室温において試験板をキャップの形状に加工したものにネジ切加工を行い、該ネジ加工部の塗膜(キャップの表側)の状態を視覚判定した。本発明の塗料はボトル缶の本体側のネジ部に塗装されるが、この試験においては、ほぼ同じネジ加工がされて同等の結果が得られるキャップ側のネジ加工性によって評価を行った。
○:塗膜に破損がない。
△:塗膜に若干の破損がある。
×:塗膜のほとんどが破損している。
[開栓性]
室温において、塗装面を内側にして試験板をキャップ加工し、ネジ切加工を行った。市販のボトル缶に水を入れ、ネジ切加工したキャップで栓をして、60℃まで加熱し、キャップを手であける際の手の感覚で、開栓性を評価した。本発明の塗料はボトル缶の本体側のネジ部に塗装されるが、この試験においては、ほぼ同等の結果が得られるキャップ側の内面に塗装した場合について評価を行った。尚、25℃の水で評価した場合は全ての試験片において開栓性は抵抗感なくスムーズであった。
○:抵抗感なくスムーズである。
△:若干の抵抗感がある。
×:強い抵抗感がある。
[鉛筆硬度]
JIS S 6006の方法による。塗膜に傷が付かない最も硬い硬度を表示
【0049】
[表6、表7の結果について]
(1)塗面外観
比較例の4番は有機高分子微粒子の粒子径が大きい為、塗膜外観が悪くなる。
比較例の5番は有機高分子微粒子の添加量が多い為、塗膜外観が悪くなる。
比較例の6番は滑剤の添加量が多い為、塗膜外観が悪くなる。
(2)ネジ部の加工性
ホワイトコーチング塗装があると、ネジ部の加工性が若干劣る傾向にある。
比較例の1番はポリエステル樹脂のTgが高い為、ネジ部の加工性が劣る。
比較例の2番は硬化剤の比率が高い為、ネジ部の加工性が劣る。
比較例の7番は硬化触媒の添加量が多い為、加工性が劣る。
(3)開栓性
比較例の3番は、ポリエステル樹脂の比率が高く、開栓性が劣る。
比較例の8番は、無機微粉末を使用している為、開栓性が劣る。
(4)鉛筆硬度
比較例の3番は、ポリエステル樹脂の比率が高く、鉛筆硬度が低い。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル樹脂(A)、硬化剤(B)及び有機高分子微粒子(C)を含有し、
前記のポリエステル樹脂(A)と硬化剤(B)との配合比率が固形分の質量比で(A)/(B)が45/55〜90/10の範囲であり、
(A)と(B)の合計を100質量部として、平均粒子径が0.1〜10μmの有機高分子微粒子(C)を0.005〜1質量部含有し、
前記の有機高分子微粒子(C)の材質は、ベンゾグアナミン・メラミン・ホルムアルデヒド縮合物、メラミン・ホルムアルデヒド縮合物、尿素・ホルムアルデヒド縮合物、ポリメタクリル酸メチル系架橋物から成る群から選ばれる一つ以上であり、
前記のポリエステル樹脂(A)は数平均分子量が300〜30000、ガラス転移温度が−10〜60℃及び水酸基価が2〜100mgKOH/gである塗料組成物。
【請求項2】
滑剤として天然ワックス及び又は合成滑剤を含有し、硬化触媒としてスルホン酸化合物、スルホン酸化合物のアミン中和物及びリン酸若しくはリン酸化合物から成る群から選ばれる一つ以上を含有する請求項1に記載の塗料組成物。


【公開番号】特開2006−16486(P2006−16486A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−195436(P2004−195436)
【出願日】平成16年7月1日(2004.7.1)
【出願人】(000002886)大日本インキ化学工業株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】