説明

塗料組成物

【課題】塗料貯蔵安定性および塗膜表面乾燥性のいずれにも優れ、特に補修用パテとして有用な塗料組成物を提供する。
【解決手段】不飽和ポリエステル樹脂(A)、所定の構成単位を有する化合物(B)および成分(A)および成分(B)以外の重合性不飽和化合物(C)を含み、成分(A)、成分(B)および成分(C)の合計質量に基いて(A)を20〜90質量%、(B)を1〜70質量%、(C)を5〜75質量%の範囲内で含有する塗料組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料組成物に関する。本発明は、特に、塗料の貯蔵安定性および塗膜の表面乾燥性に優れ、特に補修用パテとして有用な塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
不飽和ポリエステル樹脂は、一般に、他の樹脂に比べて比較的安価であり、また常温でも短時間で硬化するため作業性に優れ、さらに主原料の選択によって種々のすぐれた物理的および化学的特性を有するため、例えば、自動車等の車両用の補修用パテ塗料、木工用塗料、成形物、シーリング材などの各種用途に広く使用されている。
【0003】
これらの用途に使用されている不飽和ポリエステル樹脂組成物には、(1)常温で速やかに硬化し、表面乾燥性に優れていること、(2)基材との付着性に優れていること等の性能が要求される。特に、前記(1)の常温での表面乾燥性は作業性の重要な要素となっている。
【0004】
従来、このような不飽和ポリエステル樹脂の反応性希釈剤としては、硬化性や物性の面からスチレンモノマーが用いられていたが、近年、その臭気の点からスチレンモノマーの使用が規制されつつある。そこで、硬化性や物性を低下させることなく、スチレンモノマーに代えてヒドロキシアルキルメタクリレートを反応性希釈剤として用いた不飽和ポリエステル樹脂組成物が特許文献1に記載されている。この組成物によれば、臭気が低く、硬化安定性に優れ、表面乾燥性に優れるものの、基材との付着性が不十分な場合があった。
【0005】
そうした問題点に関して、例えば、特許文献2には、不飽和ポリエステル樹脂および重合性不飽和化合物に特定の芳香族アミン化合物を特定量含むパテまたは塗料組成物が記載されている。かかる組成物によれば、表面乾燥性が良好で、上塗り塗装後の仕上がり面も黄変することなく良好な外観を有し、また厚塗りにした際の内部乾燥性にも優れ、基材や上塗り塗料に対する付着性にも優れた塗膜を形成できるが、貯蔵中に組成物の表面が皮張りする現象が起きることがあり、かといって組成物の硬化性を抑制する設計を行うと塗膜表面乾燥性が低下するので、塗料の貯蔵安定性と塗膜の表面乾燥性を両立させることが極めて困難である。
【0006】
【特許文献1】特開2002−332316号公報
【特許文献2】特開2005−206781号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、塗料貯蔵安定性および塗膜表面乾燥性のいずれにも優れ、特に補修用パテとして有用な塗料組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記した課題に関して鋭意検討した結果、特定の構成単位を分子中に有する化合物が酸素捕獲能とラジカル重合性とを有することを見出し、これを含む塗料組成物が内部硬化性および表面乾燥性が良好であること、さらには塗料貯蔵安定性および塗膜表面乾燥性を両立させることができることを見出し、本発明に到達した。
【0009】
したがって、本発明は、下記の構成からなる手段を提供する。
【0010】
1.不飽和ポリエステル樹脂(A)、式(1)で表される構成単位を有する化合物(B)および成分(A)および成分(B)以外の重合性不飽和化合物(C)を含む塗料組成物であって、成分(A)、成分(B)および成分(C)の合計質量に基いて、(A)を20〜90質量%、(B)を1〜70質量%、(C)を5〜75質量%の範囲内で含有することを特徴とする塗料組成物。
【0011】
【化1】

【0012】
(式(1)中、RおよびRは、同一であっても相異なっていてもよく、それぞれ、水素原子または炭素数1〜10の有機基を表す)
2.化合物(B)が、カルボキシル基のカルボニル部分に共役した共役二重結合を有するカルボン酸化合物に由来する化合物である、上記1に記載の塗料組成物。
【0013】
3.化合物(B)が、カルボキシル基のカルボニル部分に共役した共役二重結合を有するカルボン酸化合物とエポキシ基含有化合物とを反応させることにより得られる反応生成物である、上記1または2に記載の塗料組成物。
【0014】
4.化合物(B)が、式(1)で表される構成単位を分子中に2個以上有するものである、上記1〜3のいずれかに記載の塗料組成物。
【0015】
5.重合性不飽和化合物(C)が、その成分の一部としてヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートおよび/またはジシクロペンテニル基含有重合性不飽和化合物を含む、上記1〜4のいずれかに記載の塗料組成物。
【0016】
6.防錆剤をさらに含む、上記1〜5のいずれかに記載の塗料組成物。
【0017】
7.芳香族アミンをさらに含有する、上記1〜6のいずれかに記載の塗料組成物。
【0018】
8.上記1〜7のいずれかに記載の塗料組成物を基材面に塗装する塗装方法。
【0019】
9.上記1〜7のいずれかに記載の塗料組成物を基材面に塗装した後、上塗り塗装する塗装方法。
【発明の効果】
【0020】
本発明の塗料組成物によれば、不飽和ポリエステル樹脂および重合性不飽和化合物を含む塗料組成物に、カルボニル基と共役した共役二重結合を分子中に有する化合物を配合し、これらの成分の配合割合を最適化することで、塗料貯蔵安定性と塗膜表面乾燥性を両立させることができる。この塗料組成物は、ポットライフが適度にあり、塗装作業性が良好で、耐水付着性などの性能にも優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に本発明の好ましい実施の形態について説明するが、本発明はこれらの形態のみに限定されるものではなく、本発明の精神とその実施の範囲内において様々な変形が可能であることを理解されたい。
【0022】
以下、本発明の塗料組成物に含まれる各成分について順に説明する。
【0023】
不飽和ポリエステル樹脂(A)
本発明に使用される不飽和ポリエステル樹脂(A)としては、従来から塗料やパテに用いられているものを制限なく適用でき、本発明の塗料組成物を用いて形成される塗膜の表面乾燥性が良好であることから、多価アルコールのアリルエーテル単位を有するものであることが望ましい。
【0024】
上記多価アルコールのアリルエーテル単位を有する不飽和ポリエステル樹脂の製造原料としての多価アルコールとしては、例えば、水酸基を有するアリル化合物を挙げることができる。
【0025】
水酸基を有するアリル化合物としては、エチレングリコールモノアリルエーテル、ジエチレングリコールモノアリルエーテル、トリエチレングリコールモノアリルエーテル、ポリエチレングリコールモノアリルエーテル、プロピレングリコールモノアリルエーテル、ジプロピレングリコールモノアリルエーテル、トリプロピレングリコールモノアリルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアリルエーテル、1,2−ブチレングリコールモノアリルエーテル、1,3−ブチレングリコールモノアリルエーテル、ヘキシレングリコールモノアリルエーテル、オクチレングリコールモノアリルエーテル、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、グリセリンジアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル等を挙げることができる。
【0026】
本発明では、不飽和ポリエステル樹脂(A)は、塗膜内部硬化性、塗膜表面乾燥性の点から、多価アルコールのアリルエーテル単位を不飽和ポリエステル樹脂(A)全構造単位の合計モル数に基づいて5〜50モル%、好ましくは10〜35モル%含有することが望ましい。
【0027】
不飽和ポリエステル樹脂(A)には水酸基を有するアリル化合物以外の他の多価アルコールを使用することもでき、他の多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、水素化ビスフェノールA、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、ビスフェノールAとプロピレンオキシドまたはエチレンオキシドとの付加物、1,2,3,4−テトラヒドロキシブタン、グリセリン、トリメチロールプロパン、1,3−プロパンジオール、1,2−シクロヘキサングリコール、1,3−シクロヘキサングリコール、1,4−シクロヘキサングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、パラキシレングリコール、ビシクロヘキシル−4,4’−ジオール、2,6−デカリングリコール、2,7−デカリングリコール、ビスヒドロキシエチルテレフタレート等が挙げられ、これらは1種を単独でまたは2種以上を併用して使用できる。
【0028】
不飽和ポリエステル樹脂(A)は、上記多価アルコールと多塩基酸との縮合反応によって製造することができる。
【0029】
多塩基酸としては、不飽和多塩基酸として、例えば、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水イタコン酸、テトラヒドロフタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、テトラブロモ無水フタル酸、テトラクロロ無水フタル酸、無水ヘット酸、無水ハイミック酸等が挙げられ、これらは1種を単独でまたは2種以上を併用して使用できる。
【0030】
不飽和多塩基酸には、飽和多塩基酸を併用してもよく、かかる飽和多塩基酸としては、例えば、フタル酸、無水フタル酸、ハロゲン化無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、コハク酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、1,12−ドデカン二酸,2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸無水物、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、並びにそれらのジアルキルエステル等を挙げることができ、これらは1種を単独でまたは2種以上を併用して使用できる。
【0031】
また、不飽和ポリエステル樹脂(A)は、必要に応じて脂肪酸により変性されていてもよい。かかる脂肪酸としては、乾性油脂肪酸および/または半乾性油脂肪酸が好適であり、例えば、魚油脂肪酸、脱水ヒマシ油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、大豆油脂肪酸、ゴマ油脂肪酸、ケシ油脂肪酸、エノ油脂肪酸、麻実油脂肪酸、ブドウ核油脂肪酸、トウモロコシ油脂肪酸、トール油脂肪酸、ヒマワリ油脂肪酸、綿実油脂肪酸、クルミ油脂肪酸、ゴム種油脂肪酸、ハイジエン脂肪酸等を挙げることができ、これらは1種を単独でまたは2種以上を併用して使用できる。
【0032】
不飽和ポリエステル樹脂(A)は、常法によって製造することができ、例えば、前記多価アルコールと多塩基酸を含む成分を窒素雰囲気下に縮合反応させることにより得られる。縮合反応時の加熱温度は、140〜250℃、好ましくは160〜200℃の範囲内であることがゲル化防止の点から望ましい。
【0033】
不飽和ポリエステル樹脂(A)の酸価は、基材との付着性の点から、10〜50mgKOH/g、好ましくは20〜40mgKOH/gの範囲内であるのが望ましい。
【0034】
また、不飽和ポリエステル樹脂(A)の重量平均分子量は、1,000〜100,000、好ましくは2,000〜50,000の範囲内であることが望ましい。
【0035】
本発明において、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定し、ポリスチレン換算した値である。ゲルパーミエーションクロマトグラフ装置としては「HLC8120GPC」(東ソー(株)社製、商品名)が使用でき、これに用いるカラムとしては、「TSKgel G−4000H×L」、「TSKgel G−3000H×L」、「TSKgel G−2500H×L」、「TSKgel G−2000H×L」(いずれも東ソー(株)社製、商品名)の4本を使用することができる。ここでは、移動相としてテトラヒドロフランを用い、測定温度40℃、流速1cc/分とし、検出器としてRI屈折計を用いた。
【0036】
化合物(B)
本発明において、化合物(B)は、本発明の塗料組成物の貯蔵安定性とこの塗料組成物を用いて形成される塗膜の表面乾燥性を両立させるために配合される必須成分であり、前記式(1)で表される構成単位を分子中に少なくとも1個有する化合物である。ここで、式(1)におけるR、Rは水素であることが好ましく、R、Rが有機基である場合にはアルキル基、特にメチル基であるのが好ましい。
【0037】
本発明に用いる化合物(B)は、例えば、カルボキシル基のカルボニル部分に共役した共役二重結合を有するカルボン酸化合物であってよい。
【0038】
かかるカルボン酸化合物の具体例としては、例えば、ソルビン酸、2,4−ペンタジエン酸、トリエニック酸、6−フェニル−2,4,6−ヘプタトリエン酸、レチノイン酸(ビタミンA)、5−フェニル−2,4−ペンタジエン酸、ムコン酸、ヘキサエンジカルボン酸等を例示することができ、なかでもソルビン酸が特に好適である。
【0039】
本発明において、上記カルボン酸化合物は、そのまま配合することもできるが、後述の重合性不飽和化合物(C)との相溶性、塗膜表面乾燥性等の点から、エポキシ基含有化合物、ビニルエーテル基含有化合物およびオキセタン化合物よりなる群から選ばれる化合物と上記カルボン酸化合物とを反応させて得られる反応生成物として配合することが望ましい。
【0040】
カルボン酸化合物と反応させるための上記化合物としては、製造の容易さ、後述の重合性不飽和化合物(C)との相溶性、形成塗膜の付着性などの観点から、エポキシ基含有化合物であるのが好ましい。
【0041】
かかるエポキシ基含有化合物としては、シクロへキセンオキサイドもしくはシクロペンテンオキサイド構造などを有する脂環式エポキシ基またはグリシジル基を1分子中に少なくとも1個有する化合物であって、エポキシ当量が70〜5,000、好ましくは80〜3,000のものを好適に使用することができる。このエポキシ基含有化合物には、1分子中に脂環式エポキシ基およびグリシジリル基の両者が混在していてもよい。
【0042】
本発明においては、化合物(B)が前記式(1)で表される構成単位を分子中に2個以上有すると、本発明の塗料組成物から形成される塗膜の内部硬化性と塗膜表面乾燥性とを共に向上させる効果があることから、上記カルボン酸化合物がモノカルボン酸である場合には、エポキシ基含有化合物が上記エポキシ基を1分子中に2個以上有する化合物であることが望ましい。
【0043】
脂環式エポキシ基を含有するエポキシ基含有化合物としては、例えば、ジシクロペンタジエンジオキサイド、(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテル、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシル)メチル−3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アセタール、エチレングリコールのビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)エーテル、エチレングリコールの3,4−エポキシシクロヘキサンカルボン酸ジエステル、「エポリードGT300」(ダイセル化学工業(株)製、商品名、3官能脂環式エポキシ樹脂)、「エポリードGT400」(ダイセル化学工業(株)製、商品名、4官能脂環式エポキシ樹脂)、「EHPE−3150」(ダイセル化学工業(株)製、商品名、多官能脂環式エポキシ樹脂)、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレートなどの脂環式エポキシ基含有エチレン性不飽和モノマーと、必要に応じて、その他の重合性不飽和モノマーとを(共)重合してなる脂環式エポキシ基含有(共)重合体などを挙げることができる。
【0044】
一方、グリシジル基を含有するエポキシ基含有化合物としては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、ジグリセリンテトラグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、スピログリコールジグリシジルエーテル、2,6−ジグリシジルフェニルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ブタジエンジオキサイド、フタル酸ジグリシジルエステル、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ε−カプロラクトン変性ビスフェノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、グリシジル(メタ)アクリレートなどのグリシジル基含有エチレン性不飽和モノマーと、必要に応じて、その他の重合性不飽和モノマーとを(共)重合してなるグリシジル基含有(共)重合体などを挙げることができる。
【0045】
また、上記エポキシ基含有化合物としては、例えば、ビニルシクロヘキセンジオキサイド、リモネンジオキサイドや、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレートなどの脂環式エポキシ基含有エチレン性不飽和モノマーとグリシジル(メタ)アクリレートなどのグリシジル基含有エチレン性不飽和モノマーと、必要に応じて、その他の重合性不飽和モノマーとを(共)重合してなる脂環式エポキシ基とグリシジル基とを含有する(共)重合体などであってもよい。
【0046】
上記カルボン酸化合物とエポキシ基含有化合物とのエステル化反応は、通常、重合禁止剤の存在下に、ゲル化などの反応上の問題を起こすことなく、カルボキシル基とエポキシ基とが円滑に反応できる条件下で行うことができ、通常、約80〜約180℃の温度で約0.5〜約24時間加熱することにより行うのが適している。
【0047】
カルボキシル基とエポキシ基の当量比は、好ましくは0.75:1〜1.25:1、より好ましくは0.8:1〜1.2:1の範囲内となるような割合で反応させることができる。
【0048】
この反応において、N,N−ジメチルアミノエタノール等の3級アミン、テトラエチルアンモニウムブロミド、臭化テトラブチルアンモニウムブロミド等の4級アンモニウム塩等のエステル化反応触媒を用いることができ、さらに反応に対して不活性な有機溶剤かまたは後述の重合性不飽和化合物(C)を用いることによって、反応が円滑に進行するように系内の粘度を調整することもできる。
【0049】
上記重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ピロカテコール、p−tert−ブチルカテコール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、トリハイドロキノンなどのヒドロキシ化合物;ニトロベンゼン、ニトロ安息香酸、o−,m−またはp−ジニトロベンゼン、2,4−ジニトロトルエン、2,4−ジニトロフェノール、トリニトロベンゼン、ピクリン酸などのニトロ化合物;p−ベンゾキノン、1,4−ナフトチノン、ジクロロベンゾキノン、クロルアニル、アントラキノン、フェナントロキノンなどのキノン化合物;ニトロソベンゼン、ニトロソ−β−ナフトールなどのニトロソ化合物等の、それ自体既知のラジカル重合禁止剤が挙げられ、これらは単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0050】
重合性不飽和化合物(C)
本発明において、重合性不飽和化合物(C)は、塗布時には組成物の粘度を低くせしめて塗布作業性を向上させつつ、かつ、膜形成成分ともなりうる反応性希釈剤として作用するものであり、重合性不飽和基を有する化合物であって、上記の樹脂(A)および化合物(B)以外の化合物であってよい。その具体例としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、クロルスチレン、ビニルトルエン、t−ブチルスチレン、ジビニルベンゼン等の芳香族ビニル化合物;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス(4−(3−メタクリロキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)−フェニル)プロパン、ジ(メタクリロキシエチル)トリメチルヘキサメチレンジウレタン、2,2−ビス(4−メタクリロキシポリエトキシフェニル)プロパンなどの1価または多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステル;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート、ジシクロペンテニルオキシプロピルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシプロピルメタクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、ジシクロペンテニルメタクリレート等のジシクロペンテニル基含有重合性不飽和化合物;エチレングリコールジマレエート、プロピレングリコールジイタコネートなど;4−(メタ)アクリロイルオキシメトキシカルボニルフタル酸、4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシカルボニルフタル酸などの4−(メタ)アクリロイルオキシ基含有芳香族ポリカルボン酸およびその酸無水物;ジアリルフタレート、ジアリルイソフタレ−ト、トリアリルフタレ−ト等のアリル化合物;エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリジメチルシリコンジ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート等のオリゴマーなどが挙げられ、これらは1種を単独でまたは2種以上を併用して使用できる。
【0051】
これらのうちでは、塗膜表面乾燥性と基材に対する付着性の観点から、重合性不飽和化合物(C)としては、その成分の少なくとも一部として、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートおよび/またはジシクロペンテニル基含有重合性不飽和化合物を含むものが望ましい。
【0052】
本発明において、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートおよびジシクロペンテニル基を有する化合物を併用する場合には、その使用割合が、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート/ジシクロペンテニル基含有重合性不飽和化合物の質量比で95/5〜5/95、好ましくは90/10〜10/90の範囲内であると、表面乾燥性と基材に対する付着性を両立させることができ、望ましい。
【0053】
塗料組成物
本発明の塗料組成物は、上記樹脂(A)、化合物(B)および化合物(C)を必須成分として含有してなり、樹脂(A)、化合物(B)、化合物(C)の使用割合は、樹脂(A)、化合物(B)および化合物(C)の合計質量に基いて、(A)を20〜90質量%、好ましくは25〜85質量%、(B)を1〜70質量%、好ましくは3〜63質量%、(C)を5〜75質量%、好ましくは10〜70質量%の範囲で含有する。
【0054】
(A)が20質量%未満では、塗膜の内部硬化性、塗膜表面乾燥性が不十分であり、一方90質量%を超えると、高粘度になり、塗装作業性が低下する。
【0055】
(B)が1質量%未満では、塗膜乾燥性および貯蔵安定性が不十分であり、一方70質量%を超えると、塗装作業性が低下する。
【0056】
また、(C)が5質量%未満では、塗膜表面乾燥性、塗装作業性が不十分であり、一方75質量%を超えると、基材との密着性が低下する。
【0057】
顔料
本発明において、顔料は、本発明の塗料組成物の塗装作業性、仕上がり性などの点を考慮して配合されるものであり、従来公知の顔料を使用できるが、特に好適には、例えば、タルク、マイカ、硫酸バリウム、カオリン、炭酸カルシウム、クレー、シリカ、石英、ガラスなどの体質顔料;チタン白、ベンガラ、カーボンブラック、鉄黒などの着色顔料が挙げられ、さらにガラスバルーン、プラスチックバルーンなどを用いることもできる。これらは1種を単独でまたは2種以上を併用して使用できる。
【0058】
また、上記顔料の使用量は、パテ用途で使用する場合は、研磨作業性や仕上がり性、耐水付着性の点から、塗料組成物中に含まれる樹脂固形分100質量部に対し70〜500質量部、好ましくは80〜200質量部の範囲内が適当である。
【0059】
防錆剤
本発明の塗料組成物には、形成塗膜の耐水付着性向上の観点から、防錆剤を含有させることができる。防錆剤としては、例えば、リン酸亜鉛、リン酸カルシウム、亜リン酸亜鉛、亜リン酸カリウム、亜リン酸カルシウム等のリン酸塩系;トリポリリン酸二水素アルミニウム等のポリリン酸系;モリブデン酸亜鉛、モリブデン酸カルシウム等のモリブデン酸塩系、リンモリブデン酸アルミニウム等のリンモリブデン酸塩系;ホウ酸塩系;メタホウ酸バリウム等のメタホウ酸塩系;シアナミド亜鉛カルシウム系;カルシウム、亜鉛、コバルト、鉛、ストロンチウム、バリウム等のカチオンを多孔質シリカ粒子に結合させた変性シリカ、カチオンをイオン交換によって結合させることによるイオン交換シリカ;ピロリン酸アルミニウム系;酸化亜鉛などの防錆顔料や、さらに1−(ベンゾチアゾール−2−イルチオ)コハク酸、(2−ベンゾチアゾール−2−イルチオ)コハク酸ジ−(C12〜14アルキル)アンモニウム塩などのベンゾチアゾール系化合物;4−メチル−γオキソ−ベンゼンブタン酸とN−エチルモルホリンとの付加反応物、4−メチル−γオキソ−ベンゼンブタン酸とジルコニウムとの付加反応物などのケトカルボン酸系などの有機防錆剤が挙げられ、これらは1種を単独でまたは2種以上を併用して使用できる。これらのうちでは、鋼板面においての耐水付着性向上の観点から、リン酸塩系の防錆顔料が特に好適である。
【0060】
防錆剤の配合量は、パテ用途で使用する場合の研磨作業性や仕上り性、硬化性や乾燥性、ヘラ付け性、耐熱黄変性等の観点から、不飽和ポリエステル樹脂(A)、化合物(B)および重合性不飽和化合物(C)の合計質量100質量部に対して、3〜50質量部、好ましくは5〜45質量部の範囲であるのがよい。
【0061】
芳香族アミン
本発明の塗料組成物には、さらに硬化性の向上を目的として、必要に応じて硬化促進剤を配合することができる。硬化促進剤としては、特に制限なく従来公知のものが使用できるが、特に硬化性、乾燥性の観点から芳香族アミンが好ましく、さらにパテ組成物上に塗装した上塗り塗膜の黄変が少ないことから、かかる芳香族アミンの中でも、ジメチルアミノ基を有する化合物が好適である。具体的には、4−ジメチルアミノ安息香酸、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸(n−ブトキシ)エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、4−ジメチルアミノ安息香酸2−エチルヘキシル、3−ジメチルアミノ安息香酸、3−ジメチルアミノ安息香酸エチル、3−ジメチルアミノ安息香酸(n−ブトキシ)エチル、3−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、3−ジメチルアミノ安息香酸2−エチルヘキシル、2−ジメチルアミノ安息香酸、2−ジメチルアミノ安息香酸エチル、2−ジメチルアミノ安息香酸(n−ブトキシ)エチル、2−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、2−ジメチルアミノ安息香酸2−エチルヘキシル等が挙げられ、これらは1種を単独でまたは2種以上を併用して使用できる。これらの中でも4−ジメチルアミノ安息香酸、3−ジメチルアミノ安息香酸が特に適している。
【0062】
芳香族アミンの使用量は、前記不飽和ポリエステル樹脂(A)、化合物(B)および重合性不飽和化合物(C)の合計質量100質量部に対して0.01〜2.0質量部、好ましくは0.05〜1.5質量部の範囲内であることが、ポットライフ(ゲル化時間)、形成塗膜の空気乾燥性や研磨性、上塗り塗膜の耐熱黄変性などの観点から望ましい。
【0063】
上記芳香族アミン以外の他の硬化促進剤としては、例えば、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸銅、ナフテン酸バリウム、オクテン酸コバルト、オクテン酸マンガン、オクテン酸亜鉛、オクテン酸バナジウム等の金属ドライヤー;上記に例示した芳香族アミン以外の3級アミン類、4級アンモニウム塩が挙げられ、これらは1種を単独でまたは2種以上を併用して使用できる。上記金属ドライヤーを使用する場合、その量は不飽和ポリエステル樹脂(A)、化合物(B)および重合性不飽和化合物(B)の合計質量100質量部に対して0.01〜5質量部の範囲が適している。
【0064】
本発明の組成物には、さらに必要に応じて、当該技術分野で公知の硬化助促進剤、上記化合物(B)の説明において列記した如き重合禁止剤などを配合することができる。
【0065】
上記硬化助促進剤としては、例えば、アニリン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、p−トルイジン、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−p−トルイジン、4−(N,N−ジメチルアミノ)ベンズアルデヒド、4−[N,N−ビス(2-ヒドロキシエチル)アミノ]ベンズアルデヒド、4−(N−メチル−N−ヒドロキシエチルアミノ)ベンズアルデヒド、N,N−ビス(2−ヒドロキシプロピル)−p−トルイジン、N−エチル−m−トルイジン、トリエタノールアミン、m−トルイジン、ジエチレントリアミン、ピリジン、フェニルモルホリン、ピペリジン、N,N−ビス(ヒドロキシエチル)アニリン、ジエタノールアニリン等のN,N−置換アニリン、N,N−置換p−トルイジン、4−(N,N−置換アミノ)ベンズアルデヒド等のアミン類が挙げられる。これらの硬化助促進剤は、単独で使用してもよいし2種以上の組み合わせで使用してもよい。
【0066】
本発明の塗料組成物には、さらに必要に応じて、例えば、紫外線安定剤、紫外線吸収剤、低収縮剤、酸化防止剤、皮張り防止剤、可塑剤、骨材、難燃剤、安定剤、強化材、減粘剤等の粘度調節剤、顔料分散剤、改質用樹脂、溶剤、チキソ剤、チキソ助剤、消泡剤、レベリング剤、シランカップリング剤、パラフィン等の空気遮断剤、アルデヒド捕捉剤等を配合することができる。
【0067】
本発明の塗料組成物は、有機溶剤を実質的に配合しなくても、塗装作業性が良好であり、諸物性に優れる塗膜を与えることができ、例えば、パテ用途として好適に使用することができるが、必要に応じてトルエン、キシレン、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトン、メチルエチルケトン等の有機溶剤を粘度調整剤として配合することもできる。
【0068】
本発明の塗料組成物には、塗膜を硬化するためのラジカル硬化剤を配合することができる。かかるラジカル硬化剤としては、有機過酸化物が挙げられ、具体的にはジアシルパーオキサイド系、パーオキシエステル系、ハイドロパーオキサイド系、ジアルキルパーオキサイド系、ケトンパーオキサイド系、パーオキシケタール系、アルキルパーエステル系、パーカーボネート系等の従来公知のものを使用することができ、これらは単独で使用してもよいし2種以上を併用してもよい。
【0069】
上記ラジカル硬化剤の配合量は、特に制限されるものではなく、塗装環境や塗膜物性に応じて適宜調整可能であるが、不飽和ポリエステル樹脂(A)、化合物(B)および重合性不飽和化合物(C)の合計質量100質量部に対して、0.1〜6質量部の範囲内となるようにすることが好ましい。
【0070】
上記ラジカル硬化剤は、例えば、本発明の塗料組成物を2液型とし、使用直前に混合配合されることが望ましい。
【0071】
本発明組成物の塗装は、従来公知の方法で行うことができ、塗装された塗膜は、常温乾燥または強制乾燥により塗膜内部まで硬化可能である。基材面としては、鉄、亜鉛、アルミなどの金属面やその化学処理面、プラスチック、木材など、さらにこれらに塗装された旧塗膜面などが挙げられ、被塗面に損傷がある場合には、損傷部を中心に必要によりその周囲までサンディングを行っておくのが適当である。
【0072】
本発明では、上記組成物による塗膜に対して上塗り塗装を行ってもよく、上塗り塗料としてはアクリルラッカー、アクリルメラミン樹脂系塗料、ウレタン硬化型塗料、アクリルウレタン樹脂系塗料、酸−エポキシ硬化型塗料、フッ素樹脂系塗料、アルキド樹脂系塗料、アルキド樹脂メラミン樹脂系塗料、ポリエステルメラミン樹脂系塗料などの通常使用されている有機溶剤系、水系、粉体等の塗料が、特に制限なく使用できる。
【実施例】
【0073】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに説明する。ここで、『部』および『%』はそれぞれ『質量部』および『質量%』を意味する。
【0074】
不飽和ポリエステル樹脂の製造
製造例1
攪拌機、ガス導入管、精留塔、温度計、減圧装置および還流冷却器を備えた2リットルの4ツ口フラスコに、ジエチレングリコール397.5g、ジプロピレングリコール134g、フマル酸580g、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル256gおよびハイドロキノン0.5gを入れ、窒素ガスを吹き込みながら150℃に加熱後、180℃まで昇温した。続いて、同温度で精留塔を水分離器に換え、トルエンを還流させて縮合反応を行い、反応終了後にはトルエンを減圧下で除いて、酸価35mgKOH/g、重量平均分子量3,000の不飽和ポリエステル樹脂(A)を得た。
【0075】
ソルビン酸エステルの製造
製造例2
攪拌装置、温度計、空気導入管および冷却管を備えた500ml丸底フラスコに「エピコート828」(商品名、ジャパンエポキシレジン製、エポキシ当量186のビスフェノールA型エポキシ樹脂)100g、ソルビン酸62.3g、テトラブチルアンモニウムブロミド3.5g、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール0.33gを仕込み、105℃で7時間攪拌反応させ、ソルビン酸エステル(B−1)を得た。反応初期における酸価が188.2mgKOH/g、エポキシ価が3.24mmol/gであり、反応終了後の酸価が9.0mgKOH/g、エポキシ価が0.142mmol/gであり、約95%の反応率であった。
【0076】
製造例3
上記製造例2と同様に攪拌装置、温度計、空気導入管、冷却管を備えた500ml丸底フラスコに「エポライト1500NP」(商品名、共栄社化学製、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、エポキシ当量154)100g、ソルビン酸72.8g、テトラブチルアンモニウムブロミド4.2g、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール0.35gを仕込み、105℃で10時間攪拌反応させ、ソルビン酸エステル(B−2)を得た。反応初期の酸価が205.6mgKOH/g、エポキシ価が3.66mmol/gであり、反応終了後の酸価が9.8mgKOH/g、エポキシ価が0.174mmol/gであり、約95%の反応率であった。
【0077】
製造例4
上記製造例2と同様に攪拌装置、温度計、空気導入管、冷却管を備えた500ml丸底フラスコに、「エピオールTMP−100」(商品名、日本油脂製、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、エポキシ当量135)100g、ソルビン酸83g、テトラブチルアンモニウムブロミド4.7g、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール0.37gを仕込み、105℃で10時間攪拌反応させ、ソルビン酸エステル(B−3)を得た。反応初期の酸価が220.8mgKOH/g、エポキシ価が3.94mmol/gであり、反応終了後の酸価が10.4mgKOH/g、エポキシ価が0.18mmol/gであり、約95%の反応率であった。
【0078】
メタクリル酸エステルの製造
製造例5
ソルビン酸62.3gに代えてメタクリル酸47.7gを用いた以外は製造例2の操作を繰り返して、メタクリル酸エステルを得た。
【0079】
不飽和ポリエステル樹脂組成物の製造
実施例1〜11および比較例1〜3
下記表1の配合組成となるように各組成物を配合し、均一となるように攪拌し、各不飽和ポリエステル樹脂組成物を得た。尚、表中の不飽和ポリエステル樹脂(A)およびソルビン酸エステル(B)及びメタクリル酸エステルの量(部)は固形分の量である。
【0080】
【表1】

【0081】
パテベースの製造
実施例12〜23および比較例4〜6
上記製造例で得られた不飽和ポリエステル樹脂組成物100部に、「ニッカ オクチックスコバルト12%」(商品名、日本化学産業社製、オクチル酸コバルト)、ハイドロキノン、「CR−95」(商品名、石原産業社製、酸化チタン)、「クラウンタルクDR」(商品名、松村産業社製、タルク)および「EXPART NP−1007」(商品名、東邦顔料工業社製、亜リン酸カルシウム/リン酸亜鉛)を表2に示す配合組成で各成分を夫々配合攪拌し、これを300ml採取し、高速混練機で20分間混合分散させて、各パテベースを得た。
【0082】
塗装
「SPCC−SB」(日本テストパネル(株)製、鉄板)の表面を耐水ペーパー#240で軽く研磨し、これを基材面とした。上記で得られた各パテベースに、「LUC共通硬化剤」(商品名、主成分:シクロヘキサノンパーオキサイド、関西ペイント社製)を2%添加し、均一に混合したパテ組成物を各基材面上にヘラで塗布し、ならして2mm厚に塗布したものを試験塗板とし、下記評価試験に供した。結果を表2に示す。
【0083】
【表2】

【0084】
評価試験
上記で得た各パテ組成物について下記の評価方法、基準にて試験を行った。その結果を表2に示す。
【0085】
ヘラ付け性
各パテベースと硬化剤を混合し、ヘラを用いて試験片にヘラ付けをする。その時のノビ、ヘラ切れ、ヘラサバキを調べた(○:良好、△:若干不良、×:不良)。
【0086】
乾燥性
各試験塗板を常温(20℃)で40分間放置後、各試験板の表面のタックおよび内部の硬化度合を指触にて調べた(○:良好、○△:表面に若干タックあり、△:表面に若干タックあり、内部も若干硬化不良、×:表面にタックあり、内部も硬化不良)。
【0087】
ポットライフ
硬化剤を配合後の常温(20℃)放置でのゲル化時間。
【0088】
皮張り性
各パテベース20gをアルミ等の直径5cm程の皿にとり、40℃の雰囲気に10日間放置後(開放系)、パテ表面の皮張りの程度を調べた(○:皮張りなく良好、△:皮張り若干あり、やや不良、×:皮張りあり不良)。
【0089】
耐水付着性
上記試験塗板を室温(20℃)で6時間放置して乾燥させた後、塗面を#400耐水ペーパーで軽く研磨し、「レタンPG80ホワイトベース」(商品名、アクリルウレタン樹脂系上塗り塗料、関西ペイント(株)社製)を乾燥膜厚50μmになるようにスプレー塗装し、60℃で30分間乾燥させて各塗装板を得た。各塗装板を80℃の水に1日間浸漬した後、水中より取り出し、これを中央部より折り曲げて、折り曲げ部の塗膜状態を観察した(○:良好、△:塗膜が鋼板−パテ間から僅かに剥離している、×:塗膜が鋼板−パテ間から完全に剥離している)。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明は、塗料貯蔵安定性および塗膜表面乾燥性に優れた塗料組成物を提供するので、産業上有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不飽和ポリエステル樹脂(A)、式(1)で表される構成単位を有する化合物(B)および成分(A)および成分(B)以外の重合性不飽和化合物(C)を含む塗料組成物であって、成分(A)、成分(B)および成分(C)の合計質量に基いて、(A)を20〜90質量%、(B)を1〜70質量%、(C)を5〜75質量%の範囲内で含有することを特徴とする塗料組成物。
【化1】

(式(1)中、RおよびRは、同一であっても相異なっていてもよく、それぞれ、水素原子または炭素数1〜10の有機基を表す)
【請求項2】
化合物(B)が、カルボキシル基のカルボニル部分に共役した共役二重結合を有するカルボン酸化合物に由来する化合物である、請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項3】
化合物(B)が、カルボキシル基のカルボニル部分に共役した共役二重結合を有するカルボン酸化合物とエポキシ基含有化合物とを反応させることにより得られる反応生成物である、請求項1または2に記載の塗料組成物。
【請求項4】
化合物(B)が、式(1)で表される構成単位を分子中に2個以上有するものである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の塗料組成物。
【請求項5】
重合性不飽和化合物(C)が、その成分の一部としてヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートおよび/またはジシクロペンテニル基含有重合性不飽和化合物を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の塗料組成物。
【請求項6】
防錆剤をさらに含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の塗料組成物。
【請求項7】
芳香族アミンをさらに含有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の塗料組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の塗料組成物を基材面に塗装する塗装方法。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の塗料組成物を基材面に塗装した後、上塗り塗装する塗装方法。

【公開番号】特開2008−63528(P2008−63528A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−245778(P2006−245778)
【出願日】平成18年9月11日(2006.9.11)
【出願人】(000001409)関西ペイント株式会社 (815)
【Fターム(参考)】