説明

塗料組成物

【課題】 つや消し効果、適度な触感(ザラツキ感)、ソフト感を持つ塗膜を得ることができる塗料組成物を提供する。
【解決手段】 (メタ)アクリル酸エステルの含有割合が5〜30質量%であるエチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体の球状粒子を含む塗料組成物。また、その塗料組成物を用いて塗装した塗装物。
これらの塗料組成物を金属、木材、紙、プラスチック、フィルム、ゴム、熱可塑性エラストマー等の基材に塗装することで、つや消し感、触感(ザラツキ感)、ソフト感に優れた塗装物を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、家庭用品、自動車内装部品、OA機器、建築材料、電気製品等の基材には、外観保護および質感向上の目的でつや消し効果のある塗料が用いられている。
【0003】
例えば、自動車の内装部品のプラスチック成型品や金属製品等の表面塗装には、ビニル系樹脂、アルキッド系樹脂、アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂等が使用されている。これらの塗料につや消し効果と高級感を付与する目的で、例えば、ワニス、カラーポリマービーズ、シリカおよび/またはポリエチレンワックスの微粉末を添加する方法(特許文献1参照)、特定の物性を有するポリオレフィン微粒子を添加する方法(特許文献2参照)、平均粒子径が300μm以下の球状セルロースを添加する方法(特許文献3参照)等が知られている。
【0004】
一方、質感の向上の一つであるソフト感を付与する目的で、一般には、ポリウレタン粒子を添加することが知られており、さらに、ラノリン付着ポリウレタン樹脂微粒子を添加する方法(特許文献4参照)、発泡ポリウレタン樹脂粉末を添加する方法(特許文献5参照)等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平3−17164号公報
【特許文献2】特開昭59−187027号公報
【特許文献3】特開平3−162465号公報
【特許文献4】特開2003−212947号公報
【特許文献5】特開昭62−149767号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1〜5に記載の塗料組成物により得られる塗膜は、つや消し効果、適度な触感(ザラツキ感)、および、ソフト感に満足できるものではなかった。
【0007】
したがって本発明の目的は、つや消し効果、適度な触感(ザラツキ感)、ソフト感を持つ塗膜を得ることができる塗料組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
項1. (メタ)アクリル酸エステルの含有割合が5〜30質量%であるエチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体の球状粒子を含む塗料組成物、
項2. エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体の曲げ剛性率が、10〜120MPaである項1に記載の塗料組成物、
項3. エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体の球状粒子の体積平均粒子径が、3〜50μmである項1または2に記載の塗料組成物、
項4. エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体が、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体および/またはエチレン−メタクリル酸エチル共重合体である項1〜3のいずれか1項に記載の塗料組成物、
項5. エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体の球状粒子の配合量が、塗料組成物中の塗料樹脂100質量部に対して、1〜50質量部である項1〜4のいずれか1項に記載の塗料組成物、
項6. 項1〜5のいずれか1項に記載の塗料組成物を用いて塗装した塗装物、
に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、つや消し効果、適度な触感(ザラツキ感)、ソフト感を持つ塗膜を得ることができる塗料組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明にかかる塗料組成物は、(メタ)アクリル酸エステルを特定量含有するエチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体の球状粒子を含む塗料組成物である。
【0011】
エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体〔本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」および「メタクリル」を意味する。以下同じ。〕としては、例えば、エチレン−(メタ)アクリル酸メチル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エチル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸プロピル共重合体等が挙げられる。これらのエチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体の中でも、安価に使用できるとともに、形成した塗膜に良好な触感(ザラツキ感)、ソフト感を発現させる観点から、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−メタクリル酸エチル共重合体が好適に用いられる。これらのエチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、それぞれ単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0012】
エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体中の(メタ)アクリル酸エステルの含有割合は、3〜30質量%、好ましくは7〜28質量%である。(メタ)アクリル酸エステル含有割合が、3質量%未満の場合、得られる塗膜のソフト感が低下する。また、(メタ)アクリル酸エステル含有割合が、30質量%を超える場合、球状粒子の耐溶剤性が低下し、例えば、トルエンのような芳香族炭化水素系溶剤が含まれる塗料には使用できなくなる。
【0013】
エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体の曲げ剛性率は、10〜120MPaであることが好ましく、20〜80MPaであることがより好ましい。曲げ剛性率が、10MPa未満の場合、得られる塗膜のソフト感は優れるものの、球状粒子の耐溶剤性が低下し、例えば、トルエンのような芳香族炭化水素系溶剤が含まれる塗料には使用できなくなるおそれがある。また、曲げ剛性率が、120MPaを超える場合、球状粒子は硬くなり、得られる塗膜のソフト感が低下するおそれがある。ここで曲げ剛性率とは、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体の弾性率を示すものであり、ASTM D747−70に従って測定することができる。
【0014】
本発明に用いられるエチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体の球状粒子の製造方法としては、例えば、まず、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体を、該樹脂が溶解しない溶媒、例えば水中で分散剤や乳化剤とともに融点以上の温度で溶融、撹拌した後、融点未満まで冷却して球状の微粒子が分散した分散液を得る。次いで、得られた分散液を濾過、乾燥することにより、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体の球状粒子を得る方法等が挙げられる。なお、本発明において、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体の球状粒子の球状とは、真球に対しての歪みが10%以下であることを意味する。
【0015】
エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体の球状粒子の体積平均粒子径は、3〜50μmであることが好ましく、5〜30μmであることがより好ましい。体積平均粒子径が、3μm未満の場合、得られる塗膜中に球状粒子が埋没しやすくなり、つや消し効果が発現しないおそれがある。また、体積平均粒子径が、50μmを超える場合、得られる塗膜の表面が粗くなり、塗膜の外観や触感(ザラツキ感)が悪くなると共に、球状粒子が塗膜から脱離しやすくなるおそれがある。なお、本明細書における体積平均粒子径とは、電気検知式粒度分布測定装置(ベックマンコールター社製、商品名:コールターマルチサイザー)にて測定された体積平均粒子径である。
【0016】
本発明にかかる塗料組成物中のエチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体の球状粒子の配合量は、塗料組成物中の塗料樹脂100質量部に対して、1〜50質量部であることが好ましく、2〜30質量部であることがより好ましい。配合量が、1質量部未満の場合、得られる塗膜の表面に露出する球状粒子が少なくなり、つや消し効果およびソフト感の付与が充分でない。また、配合量が、50質量部を超える場合、得られる塗膜の外観や触感(ザラツキ感)が悪くなると共に塗膜強度が低下するおそれがある。
【0017】
塗料樹脂としては、特に限定されず、一般に使用されているものを用いることができる。例えば、セルロース系樹脂、アルキッド系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリルシリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、アクリルウレタン系樹脂、ポリビニルブチラール系樹脂、メラミン系樹脂等が挙げられる。これらの塗料樹脂の中でも、得られる塗膜のソフト感の点から、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、アクリルウレタン系樹脂が好適に用いられる。これらの塗料樹脂は、それぞれ単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0018】
本発明にかかる塗料組成物中の塗料樹脂濃度は、特に限定されないが、塗料組成物の粘度や、得られる塗膜の厚さの観点から、5〜99質量%であることが好ましく、10〜99質量%であることがより好ましい。塗料樹脂濃度が、5質量%未満の場合、塗料組成物の粘度が低下し、基材に塗装する際に液ダレ、ハジキ等が発生しやすくなるおそれがある。
【0019】
本発明にかかる塗料組成物は、様々な形態の塗料に適用することができる。例えば、アクリルラッカーやニトロセルロースラッカーのような溶剤が蒸発して塗膜を形成する揮発乾燥型塗料;アクリルエマルジョン塗料(水性、溶剤性)のような溶剤が蒸発の際に樹脂粒子が凝集、融着する融合乾燥型塗料;湿気硬化型ウレタン樹脂塗料やアクリルシリコーン樹脂塗料のような空気中に存在する水分と反応しながら硬化する湿気硬化型塗料;二液型ウレタン塗料やニ液型エポキシ塗料のような主剤と硬化剤が反応して塗膜を形成する重合乾燥型塗料;熱硬化性ウレタン樹脂塗料;熱硬化アクリル樹脂塗料;粉体塗料;電着塗料のような加熱により溶剤の揮発や樹脂の反応により硬化する高温反応硬化型塗料;モノマー、オリゴマー、紫外線開始剤を含んだアクリル化合物を紫外線硬化させる紫外線硬化型塗料等が挙げられる。
【0020】
本発明にかかる塗料組成物には、塗工時の作業性の観点から、溶剤を含んでいてもよい。溶剤としては、特に限定されず、例えば、芳香族炭化水素系溶剤、脂肪族炭化水素系溶媒、エステル系溶媒、ケトン系溶媒、アルコール系溶剤、エーテル系溶剤等が挙げられる。また、前記エマルジョン樹脂塗料の場合、分散媒としては、水および/または水溶性有機溶剤等が挙げられる。前記水溶性有機溶剤としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール等の水溶性アルコール類、グリコール類、グリコールエーテル類等が挙げられる。
【0021】
また、本発明にかかる塗料組成物には、つや消し感、触感(ザラツキ感)、ソフト感を阻害しない範囲で、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル、ウレタン、シリーコン等のような樹脂粒子、シリカ、タルク、酸化亜鉛、酸化チタン等の無機粒子、顔料、染料、レベリング剤、濡れ剤、高分子分散剤、増粘剤等を添加させてもよい。
【0022】
本発明にかかる塗料組成物を基材に塗装する方法としては、特に限定されず、例えば、はけ塗り、ローラー塗工、スプレー塗工等が挙げられる。さらに、塗装効率を向上させる目的で、静電スプレー塗工、カーテン塗工、ロールコーター塗工、浸漬塗工等を用いることもできる。
【0023】
前記基材としては、特に限定されず、例えば金属、木材、紙、フィルム製品、プラスチック形成品、エラストマー等が使用できる。具体的には金属としては、ステンレス、アルミ、銅、真鍮等;フィルム、プラスチックとしては、全芳香族ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、ABS、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアセタール、セルロース、ポロエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリフェニレンオキサイド、ポリウレタン、不飽和ポリエステル等;エラストマーとしては、天然ゴム、クロロプレンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム、フロロシリコーンゴム等の熱加硫ゴムやオレフィン系、スチレン系、ウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の熱可塑性のエラストマー等が挙げられる。
【0024】
本発明にかかる塗装物の塗装膜厚は、特に限定されず、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体の球状粒子が塗膜の表面に露出すればよく、例えば、5〜100μmであることが好ましく、5〜50μmであることがより好ましい。また、これらは、公知の塗装方法により得ることができる。
【0025】
本発明にかかる塗料組成物により得られる塗膜が、つや消し効果、適度な触感(ザラツキ感)、ソフト感を同時に満たしている理由は明らかではないが、以下の理由に基づくものと推測される。すなわち、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体の球状粒子を配合することで、塗膜表面に凹凸を有する塗膜を形成し、例えば、塗膜表面に向かって照射された光の一部が塗膜表面で乱反射することにより、塗膜の表面の光沢が抑制されることで、つや消し効果が得られ、また、適度な触感(ザラツキ感)が発現されるものと考えられる。また、(メタ)アクリル酸エステルを特定量含有するエチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体を使用することにより、ソフト感を同時に付与することができるものと考えられる。
【0026】
以下に、本発明を実施例および比較例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0027】
[製造例1](メタクリル酸メチル10質量%の球状粒子)
500mL容の撹拌機付き耐圧容器に、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体樹脂(メタクリル酸メチルの含有割合:10質量%、融点:100℃、曲げ剛性率:69MPa)100g、乳化剤としてエチレンオキシド−プロピレンオキシド共重合体(旭電化工業株式会社製、商品名:プルロニックF108、質量平均分子量:15500)15g、および、水135gを仕込み密閉した。
引き続き、毎分500回転で撹拌しながら、180℃まで昇温した。容器内を180℃に保って30分間撹拌した。
次いで、50℃まで冷却して、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体樹脂の水分散体を取り出し、水分散体を濾過、乾燥して、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体の球状粒子を得た。
【0028】
得られたエチレン−メタクリル酸メチル共重合体の球状粒子0.1gを、水10gに分散させ、電気検知式粒度分布測定装置(ベックマンコールター社製、商品名:コールターマルチサイザー)にて体積平均粒子径を測定したところ11.9μmであった。また、電子顕微鏡(日本電子株式会社製、品番:JSM−6390LA)で500倍に拡大し、粒子形状を観察したところ球状であった。
【0029】
[製造例2](メタクリル酸メチル15質量%の球状粒子)
製造例1において、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体樹脂(メタクリル酸メチルの含有割合:10質量%、融点:100℃、曲げ剛性率:69MPa)100gに代えて、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体樹脂(メタクリル酸メチルの含有割合:15質量%、融点:94℃、曲げ剛性率:43MPa)100gを用いた以外は製造例1と同様にして、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体の球状粒子を得た。
【0030】
得られたエチレン−メタクリル酸メチル共重合体の球状粒子の体積平均粒子径を、製造例1と同様に測定したところ9.5μmであった。また、製造例1と同様に、粒子形状を観察したところ球状であった。
【0031】
[製造例3](メタクリル酸メチル10質量%の球状粒子)
製造例1において、エチレンオキシド−プロピレンオキシド共重合体(旭電化工業株式会社製、商品名:プルロニックF108)の使用量を15gから10gに変更し、180℃までの昇温を150℃までの昇温に変更した以外は製造例1と同様にして、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体の球状粒子を得た。
【0032】
得られたエチレン−メタクリル酸メチル共重合体の球状粒子の体積平均粒子径を、製造例1と同様に測定したところ60μmであった。また、製造例1と同様に、粒子形状を観察したところ球状であった。
【0033】
[製造例4](メタクリル酸メチル2.5質量%の球状粒子)
ポリエチレンとエチレン−メタクリル酸メチル共重合体樹脂(メタクリル酸メチルの含有割合:5質量%、融点:106℃、曲げ剛性率:88MPa)とを等質量部混合後、ロールにて溶融混練して、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体樹脂(メタクリル酸メチルの含有割合:2.5質量%、融点:106℃、曲げ剛性率:115MPa)を得た。
【0034】
製造例1において、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体樹脂(メタクリル酸メチルの含有割合:10質量%、融点:100℃、曲げ剛性率:69MPa)100gに代えて、前記エチレン−メタクリル酸メチル共重合体樹脂(メタクリル酸メチルの含有割合:2.5質量%、融点:106℃、曲げ剛性率:115MPa)100gを用いた以外は製造例1と同様にして、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体の球状粒子を得た。
【0035】
得られたエチレン−メタクリル酸メチル共重合体の球状粒子の体積平均粒子径を、製造例1と同様に測定したところ10μmであった。また、製造例1と同様に、粒子形状を観察したところ球状であった。
【0036】
[製造例5](ウレタン樹脂塗料の調製)
二液ウレタン樹脂塗料(大同塗料株式会社製、商品名:ボースイテックストップコートAU クリアー)100質量部と、うすめ液(大同塗料株式会社製、商品名:ユカクリートシンナーU)33質量部とを混合し、塗料樹脂が25質量%のウレタン樹脂塗料を調製した。
【0037】
[製造例6](アクリルウレタン樹脂塗料の調製)
アクリルウレタン樹脂塗料(DIC株式会社製、商品名:アクリディックA−801P)100質量部と、酢酸ブチル28質量部と、トルエン72質量部とを混合し、塗料樹脂が25質量%のアクリルウレタン樹脂塗料を調製した。
【0038】
[製造例7](アクリル樹脂塗料の調製)
アクリル樹脂塗料(武蔵塗料株式会社製、商品名:プラエース)100質量部と、合成樹脂シンナー(武蔵塗料株式会社製、商品名:プラエースシンナー)40質量部とを混合し、塗料樹脂が25質量%のアクリル樹脂塗料を調製した。
【0039】
[製造例8](水性ウレタン樹脂塗料の調製)
一液水性ウレタン樹脂塗料(大同塗料株式会社製、商品名:ユカクリート クリヤー#700)100質量部と、メタノール104質量部とを混合し、塗料樹脂が25質量%の水性ウレタン樹脂塗料を調製した。
【0040】
[実施例1]
製造例5で得られたウレタン樹脂塗料10gに、製造例1で得られたエチレン−メタアクリル酸メチル共重合体の球状粒子0.25gと、硬化剤としてポリイソシアネート化合物(大同塗料株式会社製、商品名:ボースイテックストップコートAU 硬化剤)2.5gとを添加、混合し、二液ウレタン系樹脂塗料組成物を調製した。
【0041】
[実施例2]
製造例6で得られたアクリルウレタン樹脂塗料10gに、製造例1で得られたエチレン−メタアクリル酸メチル共重合体の球状粒子0.25gと、硬化剤としてポリイソシアネート化合物(DIC株式会社製、商品名:バーノックDN980)0.5gとを添加、混合し、二液アクリルウレタン系樹脂塗料組成物を調製した。
【0042】
[実施例3]
製造例7で得られたアクリル樹脂塗料10gに、製造例1で得られたエチレン−メタアクリル酸メチル共重合体の球状粒子0.25gを添加、混合し、アクリル系樹脂塗料組成物を調製した。
【0043】
[実施例4]
製造例8で得られた水性ウレタン樹脂塗料10gに、製造例1で得られたエチレン−メタアクリル酸メチル共重合体の球状粒子0.25gを添加、混合し、一液水性ウレタン系樹脂塗料組成物を調製した。
【0044】
[実施例5]
製造例5で得られたウレタン樹脂塗料10gに、製造例2で得られたエチレン−メタアクリル酸メチル共重合体の球状粒子0.25gと、硬化剤としてポリイソシアネート化合物(大同塗料株式会社製、商品名:ボースイテックストップコートAU 硬化剤)2.5gとを添加、混合し、二液ウレタン系樹脂塗料組成物を調製した。
【0045】
[実施例6]
製造例5で得られたウレタン樹脂塗料10gに、製造例1で得られたエチレン−メタアクリル酸メチル共重合体の球状粒子1gと、硬化剤としてポリイソシアネート化合物(大同塗料株式会社製、商品名:ボースイテックストップコートAU 硬化剤)2.5gとを添加、混合し、二液ウレタン系樹脂塗料組成物を調製した。
【0046】
[実施例7]
製造例5で得られたウレタン樹脂塗料10gに、製造例3で得られたエチレン−メタアクリル酸メチル共重合体の球状粒子0.25gと、硬化剤としてポリイソシアネート化合物(大同塗料株式会社製、商品名:ボースイテックストップコートAU 硬化剤)2.5gとを添加、混合し、二液ウレタン系樹脂塗料組成物を調製した。
【0047】
[実施例8]
製造例5で得られたウレタン樹脂塗料10gに、製造例1で得られたエチレン−メタアクリル酸メチル共重合体の球状粒子1.8gと、硬化剤としてポリイソシアネート化合物(大同塗料株式会社製、商品名:ボースイテックストップコートAU 硬化剤)2.5gとを添加、混合し、二液ウレタン系樹脂塗料組成物を調製した。
【0048】
[比較例1]
製造例5で得られたウレタン樹脂塗料10gに、硬化剤としてポリイソシアネート化合物(大同塗料株式会社製、商品名:ボースイテックストップコートAU 硬化剤)2.5gを添加、混合し、二液ウレタン系樹脂塗料組成物を調製した。
【0049】
[比較例2]
製造例5で得られたウレタン樹脂塗料10gに、ポリエチレン球状粒子(住友精化株式会社製、商品名:フロービーズCL2080、体積平均粒子径:10μm、真球状粒子)0.25gと、硬化剤としてポリイソシアネート化合物(大同塗料株式会社製、商品名:ボースイテックストップコートAU 硬化剤)2.5gを添加、混合し、二液ウレタン系樹脂塗料組成物を調製した。
【0050】
[比較例3]
製造例5で得られたウレタン樹脂塗料10gに、製造例4で得られたエチレン−メタアクリル酸メチル共重合体の球状粒子0.25gと、硬化剤としてポリイソシアネート化合物(大同塗料株式会社製、商品名:ボースイテックストップコートAU 硬化剤)2.5gとを添加、混合し、二液ウレタン系樹脂塗料組成物を調製した。
【0051】
[評価]
(1)評価用塗装物の調製
アクリル板(三菱レイヨン株式会社製、商品名:アクリライト)を7cm×10cmに切り出し、アセトンにて脱脂を行ったものを基材とした。
ベーカー式アプリケーター(日本シーダースサービス株式会社製、型番:No−B−2)を用い、実施例1〜8および比較例1〜3で得られた塗料組成物を、塗布層が100μmとなるように試験片に均一に塗装した。
塗装後、温風乾燥機(アドバンテック東洋社製、商品名:送風乾燥機、型式:FU−320)を用いて、80℃で5時間乾燥させ、評価用塗装物を調製した。
【0052】
(2)塗膜の膜厚
マイクロメーター(MITUTOYO株式会社製、型番:MDE−25PJ)を用いて、塗装前の基材の厚さと、塗装物の厚さを測定し、塗装前後の厚みの差から膜厚を算出した。評価結果を、表2に示す。
【0053】
(3)60度光沢度(つや消し効果)
ハンディグロスメーター(日本電色工業株式会社製、型番:PG−1M)を用いて、JIS Z 8741−1997の方法に準じて測定した。評価結果を、表2に示す。
なお、60度光沢度が、30度以下であると、つや消し効果があると判断できる。
【0054】
(4)ソフト感、触感(ザラツキ感)
評価用塗装物の塗膜表面を手で触り、次に示す3段階評価(表1)に準じて、10人のパネラーが判定し、その平均値で評価した。評価結果を、表2に示す。
【0055】
【表1】

【0056】
【表2】

【0057】
表2に示された結果から、実施例1〜8の塗料組成物による塗膜は、つや消し効果、適度な触感(ザラツキ感)、ソフト感に優れていることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、塗料組成物に特定のエチレン−メタアクリル酸メチル共重合体の球状粒子を添加することで、つや消し効果と適度な触感(ザラツキ感)、ソフト感を付与した塗料組成物を得ることができる。したがって、これらの塗料組成物を金属、木材、紙、プラスチック、フィルム、ゴム、熱可塑性エラストマー等の基材に塗装することで、つや消し感、触感(ザラツキ感)、ソフト感に優れた塗装物を得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル酸エステルの含有割合が3〜30質量%であるエチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体の球状粒子を含む塗料組成物。
【請求項2】
エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体の曲げ剛性率が、10〜120MPaである請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項3】
エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体の球状粒子の体積平均粒子径が、3〜50μmである請求項1または2に記載の塗料組成物。
【請求項4】
エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体が、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体および/またはエチレン−メタクリル酸エチル共重合体である請求項1〜3のいずれか1項に記載の塗料組成物。
【請求項5】
エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体の球状粒子の配合量が、塗料組成物中の塗料樹脂100質量部に対して、1〜50質量部である請求項1〜4のいずれか1項に記載の塗料組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の塗料組成物を用いて塗装した塗装物。

【公開番号】特開2010−189550(P2010−189550A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−35366(P2009−35366)
【出願日】平成21年2月18日(2009.2.18)
【出願人】(000195661)住友精化株式会社 (352)
【Fターム(参考)】