説明

塗料組成物

【課題】本発明の課題は、特に塗装が困難な基材に対しても簡便に確実に塗装できる塗料組成物を提供することである。
【解決手段】本発明の塗料組成物は、水と、炭化水素界面活性剤と、フルオロカーボン界面活性剤と、バインダー成分とを含み、炭化水素界面活性剤の含有量が0.001質量%以上0.0085質量%以下であり、フルオロカーボン界面活性剤の含有量が0.0001質量%以上0.5質量%以下であり、バインダー成分の含有量が0.1質量%以上50質量%以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、塗料は、環境対応の必要性もあり、水系化が求められている。しかしながら、水系の塗料は水の高い表面張力により塗装性が低下するという問題点がある。この問題を解決するため各種塗れ剤が利用されているが、特に撥水性の基材に対してはまだ充分な性能ではない。また、フッ素塗膜、無機塗膜等の高耐候性塗膜は撥水性が高いことも多く、水系の塗料を重ね塗りするのは困難である。特許文献1には、特定量の炭化水素界面活性剤および特定量のフルオロカーボン界面活性剤を含む組成物を添加することにより、塗料の表面張力を低下させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2003−535950号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、塗料の塗装性と泡立ち性との両立は実現できておらず、特に塗装が困難な基材に対して簡便に確実に塗装することは困難である。
【0005】
本発明の課題は、塗装性と泡立ち性とに優れ、特に塗装が困難な基材に対しても簡便に確実に塗装できる塗料組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。
【0007】
すなわち、本発明は以下の通りである。
【0008】
[1]
水と、炭化水素界面活性剤と、フルオロカーボン界面活性剤と、バインダー成分とを含み、
炭化水素界面活性剤の含有量が0.001質量%以上0.0085質量%以下であり、フルオロカーボン界面活性剤の含有量が0.0001質量%以上0.5質量%以下であり、バインダー成分の含有量が0.1質量%以上50質量%以下である塗料組成物。
【0009】
[2]
さらに飽和炭化水素アルコールを含み、
飽和炭化水素アルコールの含有量が5質量%以上40質量%以下である[1]に記載の塗料組成物。
【0010】
[3]
飽和炭化水素アルコールが、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール及びイソプロピルアルコールからなる群より選ばれる少なくとも1種である[2]に記載の塗料組成物。
【0011】
[4]
最大泡圧法で測定した20ミリ秒における動的表面張力が45mN/m以下である[1]〜[3]のいずれかに記載の塗料組成物。
【0012】
[5]
[1]〜[4]のいずれかに記載の塗料組成物を含む機能性複合体。
【0013】
[6]
[1]〜[4]のいずれかに記載の塗料組成物を含む皮膜を基材上に形成してなる機能性複合体。
【0014】
[7]
基材の23℃における水接触角が90°以上である[6]に記載の機能性複合体。
【0015】
[8]
[1]〜[4]のいずれかに記載の塗料組成物を用いる塗装方法。
【0016】
[9]
[1]〜[4]のいずれかに記載の塗料組成物をスプレー吹き付け法で基材上に塗装する塗装方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明の塗料組成物は、塗装性と泡立ち性とに優れ、特に塗装が困難な基材に対しても簡便に確実に塗装ができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。ただし、本発明は下記本実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0019】
≪塗料組成物≫
本実施形態の塗料組成物は、水と、炭化水素界面活性剤と、フルオロカーボン界面活性剤と、バインダー成分とを含む。また、炭化水素界面活性剤の含有量は、0.001質量%以上0.0085質量%以下であり、フルオロカーボン界面活性剤の含有量が0.0001質量%以上0.5質量%以下であり、バインダー成分の含有量が0.1質量%以上50質量%以下である。本実施形態の塗料組成物において、水の含有量は、他の成分の含有量が上記特定の範囲内となれば特に限定されないが、0.1質量%以上99.9質量%以下であることが好ましく、1質量%以上99質量%以下であることがより好ましい。
【0020】
〈炭化水素界面活性剤〉
本実施形態に用いる炭化水素界面活性剤としては、非イオン性、陰イオン性、陽イオン性および両性界面活性剤のいずれも用いることが可能である。
【0021】
非イオン性界面活性剤としては、グリセリン、ソルビトール、しょ糖などの多価アルコールと脂肪酸とがエステル結合したエステル型、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール等のポリエーテル型等が挙げられる。
【0022】
陰イオン性界面活性剤としては、アルキルエーテルカルボン酸塩等のカルボン酸塩型、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、ジアルキルスルホこはく酸塩等のスルホン酸塩型、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩等の硫酸エステル塩型等が挙げられる。
【0023】
陽イオン界面活性剤としては、アミン塩型、第4級アンモニウム塩型が挙げられる。
【0024】
両性界面活性剤としては、カルボン酸塩型、アミノ酸型、ベタイン型が挙げられる。
【0025】
これらの炭化水素界面活性剤の中でもジオクチルスルホコハク酸塩は塗れ性改良効果が大きく好ましい。ジオクチルスルホコハク酸塩の具体例としては、商品名ペレックスOT−P(花王株式会社)、商品名エアロゾルOT−75(サイテックインダストリー社)等が挙げられる。
【0026】
これらの炭化水素界面活性剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0027】
本実施形態の塗料組成物において、炭化水素界面活性剤の含有量は、0.001質量%以上0.0085質量%以下であり、好ましくは0.002質量%以上0.0085質量%以下である。炭化水素界面活性剤の含有量は、塗れ性改良効果と泡立ち性との点から、0.0085質量%以下が好ましい。
【0028】
〈フルオロカーボン界面活性剤〉
本実施形態に用いるフルオロカーボン界面活性剤としては、特に制限はないが、炭素数が3〜20のパーフルオロアルキル基を含有した、非イオン性、陰イオン性、陽イオン性および両性界面活性剤等が好ましく用いることが可能である。
【0029】
フルオロカーボン界面活性剤の具体例としては、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物等が挙げられ、その中でも、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物を用いると、塗料の表面張力の低下効果が大きく、好ましい。パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物の具体例としては、メガファックF−444(DIC株式会社)、サーフロンS−242(AGCセイミケミカル株式会社)等が挙げられる。
【0030】
これらのフルオロカーボン界面活性剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0031】
本実施形態の塗料組成物において、フルオロカーボン界面活性剤の含有量は、0.0001質量%以上0.5質量%以下であり、費用対効果を考えると、好ましくは0.3質量%以下、さらに好ましくは、0.1質量%以下である。
【0032】
〈バインダー成分〉
本実施形態に用いるバインダー成分としては、ラテックス等の高分子水分散体の固形分、水溶性樹脂の固形分が挙げられるが、耐候性、耐水性等の面からラテックスの固形分を用いることが好ましい。このようなラテックスは種々公知の物が利用できるが、アクリルラテックス、スチレン−ブタジエンラテックス、PTFEラテックス等を例示することができる。特にシリコーン変性ラテックスは高い耐候性、耐久性を発現することからより好ましい。このようなシリコーン変性ラテックスは、例えば特開2003−3030号公報に記載の方法によって得ることが可能である。
【0033】
これらのバインダー成分は、1種単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0034】
本実施形態の塗料組成物において、バインダー成分の含有量は、0.1質量%以上50質量%以下であり、好ましくは0.1質量%以上40質量%以下である。バインダー成分の含有量が前記範囲内であると、成膜性がより良好となり、好ましい。
【0035】
〈飽和炭化水素アルコール〉
本実施形態の塗料組成物は、さらに飽和炭化水素アルコールを含むことが好ましい。
【0036】
本実施形態の塗料組成物に飽和炭化水素アルコールを含むことで、濡れ性がより向上する傾向にある。飽和炭化水素アルコールとしては、揮発性、臭気、塗れ性改良効果の点から、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール及びイソプロピルアルコールからなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。安全性の面からエチルアルコールであることがさらに好ましい。
【0037】
これらの飽和炭化水素アルコールは、1種単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0038】
本実施形態の塗料組成物において、飽和炭化水素アルコールの含有量は、5質量%以上40質量%以下であることが好ましい。飽和炭化水素アルコールの含有量は、塗れ性向上と安全性やコストとのバランスから、40質量%以下であることが好ましい。
【0039】
〈その他の成分〉
本実施形態の塗料組成物には、必要物性に応じてその他の成分を含有させることができる。その他の成分としては、紫外線吸収剤、光安定剤、光触媒、親水化剤、着色顔料、体質顔料、分散安定剤、消泡剤、粘性調整剤、染料等が挙げられる。本実施形態の塗料組成物において、その他の成分の含有量は、本実施形態の目的を阻害しない範囲であれば特に限定されないが、例えば、0.1質量%以上99.9質量%以下であることが好ましい。
【0040】
紫外線吸収剤として、例えば、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤及びトリアジン系紫外線吸収剤からなる群から選ばれる少なくとも1種を用いることができ、光安定剤として、例えば、ヒンダードアミン系光安定剤からなる群から選ばれる少なくとも1種を用いることができる。また、紫外線吸収剤と光安定剤とを併用した方が、耐候性に優れるため好ましい。
【0041】
本実施形態に用いることができる光触媒としては、例えば、TiO2、ZnO、SrTiO3、BaTiO3、BaTiO4、BaTi49、K2NbO3、Nb25、Fe23、Ta25、K3Ta3Si23、WO3、SnO2、Bi23、BiVO4、NiO、Cu2O、RuO2、CeO2等、さらにはTi、Nb、Ta、及びVから選ばれた少なくとも1種の元素を有する層状酸化物(例えば特開昭62−74452号公報、特開平2−172535号公報、特開平7−24329号公報、特開平8−89799号公報、特開平8−89800号公報、特開平8−89804号公報、特開平8−198061号公報、特開平9−248465号公報、特開平10−99694号公報、特開平10−244165号公報等参照)を挙げることができる。
【0042】
これらの光触媒の中でTiO2(酸化チタン)は無害であり、化学的安定性にも優れるため好ましい。酸化チタンとしては、アナターゼ型、ルチル型、ブルッカイト型のいずれも使用できる。
【0043】
本実施形態に用いることができる親水化剤としては、例えば、コロイダルシリカ、コロイダルジルコニア等の親水性金属酸化物が挙げられる。親水化剤を含有することで、得られる機能性複合体をより親水性にすることが可能となる。親水化剤の含有量は必要とする親水性の度合いに応じて任意に変えられるが、好ましくは0.1質量%以上50質量%以下である。
【0044】
〈塗料組成物の特性〉
本実施形態の塗料組成物は、最大泡圧法で測定した20ミリ秒における動的表面張力が45mN/m以下であることが好ましく、より好ましくは40mN/m以下であり、さらに好ましくは35mN/m以下である。当該動的表面張力の下限は、特に限定されないが、例えば、10mN/m以上である。
【0045】
当該動的表面張力は、高速度で動く基材に対して塗装する場合に特に重要な数値であり、低い値であるほど好ましい。また、基材温度が高い場合(プレヒート条件)において塗装を行う場合にも重要であり、低い値であるほど好ましい。
【0046】
本実施形態の塗料組成物は、最大泡圧法で測定した5000ミリ秒における静的表面張力が、40mN/m以下であることが好ましく、より好ましくは30mN/m以下であり、さらに好ましくは20mN/m以下である。静的表面張力の下限は、特に限定されないが、例えば、5mN/m以上である。当該静的表面張力が前記範囲内であると、特に塗料組成物の乾燥までに時間がかかる条件下での塗装性の観点から、好ましい。
【0047】
なお、本実施形態において、動的表面張力及び静的表面張力は、詳細には後述の実施例に記載の方法で測定することができる。
【0048】
本実施形態の塗料組成物は、下記操作Aを行った後の発泡倍数が4倍以下であることが好ましく、3倍以下であることがより好ましく、2倍以下であることがさらに好ましい。該発泡倍数の下限は、特に限定されないが、例えば、1倍である。発泡倍数が前記範囲内であると、泡立ち性に優れるため、塗装を適切に行うことができる。
〔操作A:塗料組成物(30mL)を250mLのメスシリンダーに入れて密閉し、上下を逆転させる工程を10回繰り返す操作。〕
発泡倍数=(操作Aを行った後の、発生した泡を含む塗料組成物の体積/操作Aを行う前の塗料組成物の体積(30mL))
近年、高耐久性のフッ素含有塗料や無機塗料が多く用いられているが、これらのフッ素含有塗料や無機塗料から形成される塗膜は水接触角が90°以上の場合もある撥水性塗膜であり、その上から水系塗料を塗布することは困難である。
【0049】
しかしながら、本実施形態の塗料組成物を用いると撥水性の塗膜や基材にも簡便に塗装することが可能となり、高耐久性のフッ素塗料から形成される塗膜にさらに機能を付与することが可能となる。その他、無機塗料、有機・無機複合塗料、有機塗料から形成される塗膜等に対しても良好な塗装性を発現する。このように本実施形態の塗料組成物は、極めて優れた塗装性を有するので、該塗料組成物から形成される塗膜は均一でムラが無く外観に優れる。
【0050】
≪塗装方法≫
本実施形態の塗装方法としては、上述の塗料組成物を用いれば特に限定されず、種々公知の方法を用いることが可能であるが、例えばスプレー吹き付け法、フローコーティング法、ロールコート法、刷毛塗り法、ディップコーティング法、スピンコーティング法、スクリーン印刷法、キャスティング法、グラビア印刷法、フレキソ印刷法等が挙げられる。中でもスプレー吹き付け法が好ましい。具体的には、上述の塗料組成物をスプレー吹き付け法で基材上に塗装する方法が好ましい。
【0051】
≪機能性複合体≫
本実施形態の機能性複合体は、上述の塗料組成物を含む。例えば、上述の塗料組成物を含む皮膜を基材上に形成してなる機能性複合体が好ましい。
【0052】
本実施形態の機能性複合体は、例えば塗料組成物を基材に塗布し、乾燥した後、所望により好ましくは20℃〜500℃、より好ましくは40℃〜250℃での熱処理や紫外線照射等を行い、基材上に塗料組成物を含む皮膜を形成することにより得ることができる。また、40〜250℃に熱した基材に対して塗料組成物を塗布することによっても得ることができる。
【0053】
本実施形態の塗料組成物を基材上に皮膜状に形成させる場合、該皮膜の厚みは、好ましくは0.05〜100μm、さらに好ましくは0.1〜10μmであることが好ましい。
【0054】
本実施形態の機能性複合体を得るのに用いられる基材としては、特に限定はされず、例えば後述の用途に使用される基材は全て用いることができる。
【0055】
一般的に、機能性複合体を構成する基材としては、塗装性の観点から水接触角が低い方が好ましいが、本実施形態の機能性複合体においては、上述の塗装性の優れた塗料組成物を用いているので、23℃における水接触角が90°以上である基材であってもよい。
【0056】
本実施形態において、水接触角は、後述の実施例に記載の方法で測定することができる。
【0057】
本実施形態の機能性複合体を得るのに用いられる基材の具体例としては、例えば合成樹脂、天然樹脂等の有機基材や、金属、セラミックス、ガラス、石、セメント、コンクリート等の無機基材や、それらの組み合わせ等を挙げることができる。形状としては、フィルム、ボード等が挙げられる。
【0058】
≪用途≫
本実施形態の塗料組成物の用途としては、例えば建材、建物外装、建物内装、窓枠、窓ガラス、構造部材、住宅等建築設備等のコーティング材が挙げられる。従って本実施形態の塗料組成物を含む上記機能性複合体を建築物の外装に用いることができる。本実施形態の塗料組成物は、上述したとおり外観に優れた塗膜を形成できるので、乗物の外装及び塗装、車両用照明灯のカバー、窓ガラス、計器、表示盤等、透明性が要求される部材におけるコーティング材として有用である。また、本実施形態の塗料組成物は、機械装置や物品の外装、防塵カバー及び塗装、表示機器、そのカバー、交通標識、各種表示装置、広告塔等の表示物、道路用、鉄道用等の遮音壁、橋梁、ガードレールの外装及び塗装、トンネル内装及び塗装、碍子、太陽電池カバー、太陽熱温水器集熱カバー等外部で使用される電子、電気機器の外装部、特に透明部材、ビニールハウス、温室等の外装にも用いることができる。
【実施例】
【0059】
以下の実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
【0060】
実施例及び比較例において、各種の物性は下記の方法で測定した。
【0061】
[物性の測定方法]
1.表面張力
実施例及び比較例で得られた塗料組成物の表面張力を、日本国協和界面科学社製BP−D5型動的表面張力計を用いて最大泡圧法により測定した。20ミリ秒における測定値を動的表面張力とし、5000ミリ秒における測定値を静的表面張力とした。
【0062】
2.外観
実施例及び比較例で得られた塗料組成物を基材上に塗装後の塗膜外観を目視で観察し、以下の基準で評価した。
【0063】
(評価基準)
良好:塗装ムラが無かった。
【0064】
普通:塗装ムラが若干あった。
【0065】
不良:明らかな塗装ムラがあった。
【0066】
3.水接触角
基材又は塗膜の表面に脱イオン水の滴を乗せ、23℃で1分間放置した後、日本国協和界面科学製CA−X150型接触角計を用いて水接触角を測定した。
【0067】
4.泡立ち性
塗料組成物の発泡倍数を以下のとおり求めた。該発泡倍数が小さいほど、泡立ち性に優れると評価した。
【0068】
操作A:実施例及び比較例で得られた塗料組成物(30mL)を250mLのメスシリンダーに入れて密閉し、上下を逆転させる工程を10回繰り返した。
【0069】
発泡倍数=(操作Aを行った後の、発生した泡を含む塗料組成物の体積/操作Aを行う前の塗料組成物の体積(30mL))
実施例及び比較例において、以下の成分を用いた。
【0070】
[成分]
1.炭化水素界面活性剤
ジオクチルスルホコハク酸塩(商品名エアロゾルOT−75(サイテックインダストリー社製))。
【0071】
2.フルオロカーボン界面活性剤
パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物(メガファックF−444(DIC株式会社製))。
【0072】
3.バインダー成分
アクリルラテックス(アクリルシリコンエマルジョンG620(旭化成ケミカルズ製))の固形分。
【0073】
4.飽和炭化水素アルコール
エタノール(試薬特級)。
【0074】
5.その他の成分
5−1.親水化剤:コロイダルシリカ(コロイダルシリカスノーテックスO(日産化学社製))。
【0075】
5−2.光触媒:アナターゼ型酸化チタン(ST−01(石原産業社製))。
【0076】
6.基材
外壁材(エクセレージ・セラ、KMEW製、水接触角98°)
[実施例1]
固形分を20質量%に調整したアクリルシリコンエマルジョンG620(旭化成ケミカルズ製)100g、メガファックF−444(DIC株式会社製)の1質量%水溶液を6g、エアロゾルOT−75(サイテックインダストリー社製)の0.1質量%水溶液を15g、エタノール20g、及び水59gを含有させ、塗料組成物を得た。得られた塗料組成物の、動的表面張力は33mN/m、静的表面張力は17mN/m、泡立ち性は2倍以下であった。したがって、得られた塗料組成物は、塗装を行う上で、問題ない範囲の物性を有することがわかった。
【0077】
得られた塗料組成物を板温100℃に熱した外壁材(エクセレージ・セラ、KMEW製、水接触角98°)に乾燥膜厚1μmになるようにスプレー吹き付け法で塗装した。形成された塗膜について、室温まで冷却後に外観を評価したところ、塗装ムラが無く良好であり、塗装前後で外壁材の外観に全く変化が無かった。得られた塗料組成物は、良好に塗装することが可能であることがわかった。
【0078】
[実施例2]
メガファックF−444(DIC株式会社製)の1質量%水溶液の含有量を40g、水の含有量を25gに変更した以外は実施例1と同様にして塗料組成物を得た。得られた塗料組成物の、動的表面張力は33mN/m、静的表面張力は16mN/m、泡立ち性は3倍と若干の泡立ちが見られた。
【0079】
得られた塗料組成物を板温100℃に熱した外壁材(エクセレージ・セラ、KMEW製、水接触角98°)に乾燥膜厚1μmになるようにスプレー吹き付け法で塗装した。形成された塗膜について、室温まで冷却後に外観を評価したところ、塗装ムラが無く良好であり、塗装前後で外壁材の外観に全く変化が無かった。得られた塗料組成物は、良好に塗装することが可能であることがわかった。
【0080】
[実施例3]
エアロゾルOT−75(サイテックインダストリー社製)の0.1質量%水溶液の含有量を4g、水の含有量を70gに変更した以外は実施例1同様にして塗料組成物を得た。得られた塗料組成物の、動的表面張力は38mN/m、静的表面張力は17mN/m、泡立ち性は2倍以下であった。したがって、得られた塗料組成物は、塗装を行う上で、問題ない範囲の物性を有することがわかった。
【0081】
得られた塗料組成物を板温100℃に熱した外壁材(エクセレージ・セラ、KMEW製、水接触角98°)に乾燥膜厚1μmになるようにスプレー吹き付け法で塗装した。形成された塗膜について、室温まで冷却後に外観を評価したところ、塗装ムラが無く良好であったが、塗装前後で外壁材の外観に若干の変化が見られた。得られた塗料組成物は、良好に塗装することが可能であることがわかった。
【0082】
[実施例4]
エタノールの含有量を50gに、水の含有量を29gに変更した以外は実施例1と同様にして塗料組成物を得た。得られた塗料組成物の、動的表面張力は32mN/m、静的表面張力は17mN/m、泡立ち性は2倍以下であった。したがって、得られた塗料組成物は、塗装を行う上で、問題ない範囲の物性を有することがわかった。
【0083】
得られた塗料組成物を板温100℃に熱した外壁材(エクセレージ・セラ、KMEW製、水接触角98°)に乾燥膜厚1μmになるようにスプレー吹き付け法で塗装した。形成された塗膜について、室温まで冷却後に外観を評価したところ、塗装ムラが無く良好であり、塗装前後で外壁材の外観に全く変化が無かった。得られた塗料組成物は、良好に塗装することが可能であることがわかった。
【0084】
[実施例5]
エタノールを含有させず、水の含有量を79gに変更した以外は実施例1と同様にして塗料組成物を得た。得られた塗料組成物の、動的表面張力は44mN/m、静的表面張力は17mN/m、泡立ち性は2倍以下であった。したがって、得られた塗料組成物は、塗装を行う上で、問題ない範囲の物性を有することがわかった。
【0085】
得られた塗料組成物を板温100℃に熱した外壁材(エクセレージ・セラ、KMEW製、水接触角98°)に乾燥膜厚1μmになるようにスプレー吹き付け法で塗装した。形成された塗膜について、室温まで冷却後に外観を評価したところ、塗装に若干のムラが確認できた。
【0086】
[実施例6]
固形分を20質量%に調整したアクリルシリコンエマルジョンG620(旭化成ケミカルズ製)50g、固形分20質量%のコロイダルシリカスノーテックスO(日産化学社製)50g、メガファックF−444(DIC株式会社製)の1質量%水溶液を6g、エアロゾルOT−75(サイテックインダストリー社製)の0.1質量%水溶液を15g、エタノール20g、及び水59gを含有させ、塗料組成物を得た。得られた塗料組成物の、動的表面張力は33mN/m、静的表面張力は17mN/m、泡立ち性は2倍以下であった。したがって、得られた塗料組成物は、塗装を行う上で、問題ない範囲の物性を有することがわかった。
【0087】
得られた塗料組成物を板温100℃に熱した外壁材(エクセレージ・セラ、KMEW製、水接触角98°)に乾燥膜厚1μmになるようにスプレー吹き付け法で塗装した。形成された塗膜について、室温まで冷却後に外観を評価したところ、塗装ムラが無く良好であり、塗装前後で外壁材の外観に全く変化が無かった。得られた塗料組成物は、良好に塗装することが可能であることがわかった。このようにして得られた外壁材上の塗膜(塗板)の水接触角は45°であり、塗膜に親水性を付与することが可能であった。
【0088】
[実施例7]
固形分を20質量%に調整したアクリルシリコンエマルジョンG620(旭化成ケミカルズ製)50g、固形分20質量%のコロイダルシリカスノーテックスO(日産化学社製)25g、固形分20質量%に調整したアナターゼ型酸化チタンゾル25g、メガファックF−444(DIC株式会社製)の1質量%水溶液を6g、エアロゾルOT−75(サイテックインダストリー社製)の0.1質量%水溶液を15g、エタノール20g、及び水59gを含有させ、塗料組成物を得た。得られた塗料組成物の、動的表面張力は33mN/m、静的表面張力は17mN/m、泡立ち性は2倍以下であった。したがって、得られた塗料組成物は、塗装を行う上で、問題ない範囲の物性を有することがわかった。
【0089】
得られた塗料組成物を板温100℃に熱した外壁材(エクセレージ・セラ、KMEW製、水接触角98°)に乾燥膜厚1μmになるようにスプレー吹き付け法で塗装した。形成された塗膜について、室温まで冷却後に外観を評価したところ、塗装ムラが無く良好であり、塗装前後で外壁材の外観に全く変化が無かった。得られた塗料組成物は、良好に塗装することが可能であることがわかった。このようにして得られた外壁材上の塗膜(塗板)の水接触角は59°であったが、照度1mw/cm2のブラックライトを12時間照射することで、水接触角0°となり、塗膜に光触媒活性を付与することが可能であった。
【0090】
[比較例1]
固形分を20質量%に調整したアクリルシリコンエマルジョンG620(旭化成ケミカルズ製)100g、エアロゾルOT−75(サイテックインダストリー社製)の0.1質量%水溶液を15g、エタノール20g、水65gを含有させ、塗料組成物を得た。得られた塗料組成物の、動的表面張力は53mN/mと高く、静的表面張力は35mN/mであった。泡立ち性は2倍以下であった。したがって、得られた塗料組成物は、塗装を行う上で、問題ない範囲の物性を有することがわかった。
【0091】
得られた塗料組成物を板温100℃に熱した外壁材(エクセレージ・セラ、KMEW製、水接触角98°)に乾燥膜厚1μmになるようにスプレー吹き付け法で塗装した。形成された塗膜について、室温まで冷却後に外観を評価したところ、明らかな塗装ムラが確認できた。動的表面張力が高いために塗装ムラが生じたと考えられる。
【0092】
[比較例2]
固形分を20質量%に調整したアクリルシリコンエマルジョンG620(旭化成ケミカルズ製)100g、メガファックF−444(DIC株式会社製)の1質量%水溶液を6g、エタノール20g、及び水74gを含有させ、塗料組成物を得た。得られた塗料組成物の、動的表面張力は50mN/mと高く、静的表面張力は17mN/m、泡立ち性は2倍以下であった。したがって、得られた塗料組成物は、塗装を行う上で、問題ない範囲の物性を有することがわかった。
【0093】
得られた塗料組成物を板温100℃に熱した外壁材(エクセレージ・セラ、KMEW製、水接触角98°)に乾燥膜厚1μmになるようにスプレー吹き付け法で塗装した。形成された塗膜について、室温まで冷却後に外観を評価したところ、明らかな塗装ムラが確認できた。静的表面張力は低いが、動的表面張力が高いために塗装ムラが生じたと考えられる。
【0094】
[比較例3]
固形分を20質量%に調整したアクリルシリコンエマルジョンG620(旭化成ケミカルズ製)100g、メガファックF−444(DIC株式会社製)の1質量%水溶液を6g、エアロゾルOT−75(サイテックインダストリー社製)の0.1質量%水溶液を30g、エタノール20g、及び水44gを含有させ、塗料組成物を得た。得られた塗料組成物の、動的表面張力は33mN/m、静的表面張力は17mN/mであった。泡立ち性は5倍程度と非常に悪く、スプレー吹き付け法で塗装することが困難であった。
【0095】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明の塗料組成物は、特に建築外装、自動車、ディスプレイ、レンズのコーティング材として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水と、炭化水素界面活性剤と、フルオロカーボン界面活性剤と、バインダー成分とを含み、
炭化水素界面活性剤の含有量が0.001質量%以上0.0085質量%以下であり、フルオロカーボン界面活性剤の含有量が0.0001質量%以上0.5質量%以下であり、バインダー成分の含有量が0.1質量%以上50質量%以下である塗料組成物。
【請求項2】
さらに飽和炭化水素アルコールを含み、
飽和炭化水素アルコールの含有量が5質量%以上40質量%以下である請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項3】
飽和炭化水素アルコールが、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール及びイソプロピルアルコールからなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項2に記載の塗料組成物。
【請求項4】
最大泡圧法で測定した20ミリ秒における動的表面張力が45mN/m以下である請求項1〜3のいずれか一項に記載の塗料組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の塗料組成物を含む機能性複合体。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の塗料組成物を含む皮膜を基材上に形成してなる機能性複合体。
【請求項7】
基材の23℃における水接触角が90°以上である請求項6に記載の機能性複合体。
【請求項8】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の塗料組成物を用いる塗装方法。
【請求項9】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の塗料組成物をスプレー吹き付け法で基材上に塗装する塗装方法。

【公開番号】特開2012−219215(P2012−219215A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−88153(P2011−88153)
【出願日】平成23年4月12日(2011.4.12)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】