説明

塗料組成物

【課題】エナメルタイプの弱溶剤形塗料における顔料混和性を高める。
【解決手段】溶剤成分として脂肪族炭化水素系溶剤を主成分とする塗料組成物において、(A)溶剤可溶形樹脂及び/または非水分散形樹脂、(B)少なくとも2種以上の着色顔料、(C)少なくともイソシアネート基を2個有し、重量平均分子量が600以下であり、リジン骨格を有するイソシアネート(p´)と、1個以上のアミノ基を有するアミン化合物(q)との反応生成物を必須成分とし、(A)成分の固形分100重量部に対し、(B)成分を5〜500重量部、(C)成分を0.1〜30重量部混合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート、モルタル、サイディングボード、押出成形板、金属、磁器タイル、プラスチック、木材、合板等の各種基材の表面仕上げに好適な塗料組成物に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来、建築物、土木構造物等においては、その躯体の保護や美観性の向上等を目的として、各種の塗料によって塗装仕上げが行われており、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤を媒体とする強溶剤形塗料が多く用いられてきた。これに対し、近年、環境や健康に対する意識が高まっており、塗装時の安全性や、作業衛生の点、あるいは大気汚染への影響等を考慮し、このような芳香族炭化水素系溶剤の使用を抑える動きが強まっている。
【0003】
このような動きに対応するため、塗料としては脂肪族炭化水素系溶剤を用いる弱溶剤形塗料への転換が要望されるようになってきた。このような弱溶剤形塗料は、強溶剤形塗料に比べ低毒性であり、作業上の安全性が高く、さらには大気汚染に対する影響も小さいという長所をもつため、環境対応型の塗料として好ましいものである。
【0004】
このような弱溶剤形塗料は、大別してクリヤータイプ、エナメルタイプに分類される。このうちエナメルタイプは、酸化チタン等の白顔料のほか、赤色顔料、黄色顔料、青色顔料、黒色顔料等の着色顔料を、所望の色相に応じて適宜配合することによって調製されている。しかし、弱溶剤形塗料では、これら顔料が2種以上混在した場合の挙動を制御することが難しく、顔料混和性が不十分となる場合がある。
【0005】
弱溶剤形塗料に使用する樹脂として、例えば、特開2001−270972号公報(特許文献1)には、シクロアルキル基含有重合性不飽和単量体、水酸基含有重合性不飽和単量体、及び3級アミノ基含有重合性不飽和単量体等を重合して得られる共重合体の存在下に、重合性不飽和単量体を重合させて得られる共重合体粒子を含有してなる非水分散型樹脂組成物が開示されている。また、特開2002−121468号公報(特許文献2)には、主鎖が実質的ビニル系重合体からなり、分子内に加水分解性珪素基と第3級アミノ基を有する樹脂組成物が開示されている。これらの特許文献においては、それぞれの樹脂が有する特定アミノ基の作用によって、顔料混和性が高まることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−270972号公報
【特許文献2】特開2002−121468号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述のような特定官能基を有する樹脂を使用しても、塗装時の各種条件、例えば温度・湿度等の塗装環境や、塗装に供する塗料の希釈割合や塗付量等によっては顔料混和性が不十分となる場合があり、実用上改善の余地がある。
本発明は、上述のような問題点に鑑みなされたものであり、エナメルタイプの弱溶剤形塗料における顔料混和性を高めることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、2種以上の着色顔料が混在する弱溶剤形塗料において、特定のイソシアネートとアミン化合物との反応生成物を配合することが実用上有効な手段であることを見出し、本発明を完成させるに到った。
【0009】
すなわち、本発明は以下の特徴を有するものである。
第1の発明は、
溶剤成分として脂肪族炭化水素系溶剤を主成分とする塗料組成物であって、
(A)溶剤可溶形樹脂及び/または非水分散形樹脂、
(B)少なくとも2種以上の着色顔料、
(C)少なくともイソシアネート基を2個有し、重量平均分子量が600以下であり、リジン骨格を有するイソシアネート(p´)と、1個以上のアミノ基を有するアミン化合物(q)との反応生成物、を必須成分とし、(A)成分の固形分100重量部に対し、(B)成分が5〜500重量部、(C)成分が0.1〜30重量部含まれることを特徴とする塗料組成物。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、顔料混和性に優れた弱溶剤形塗料を得ることができる。本発明の塗料組成物は、塗装時における条件が変動した場合であっても、安定した顔料混和性を発揮することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
【0012】
本発明の塗料組成物は、溶剤成分として脂肪族炭化水素系溶剤を主成分とする所謂弱溶剤形の塗料組成物である。このような脂肪族炭化水素系溶剤は、芳香族炭化水素系溶剤に比べ、低毒性であり、作業上の安全性が高く、さらには大気汚染に対する影響も小さいという特徴をもつものである。脂肪族炭化水素系溶剤としては、例えば、n−ヘキサン、n−ペンタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン、n−ウンデカン、n−ドデカンのほか、テルピン油やミネラルスピリット等が例示できる。このような脂肪族炭化水素系溶剤の他には、通常塗料に用いられる非水系溶剤を使用することも可能であるが、その比率は50重量%未満とすることが望ましい。このような非水系溶剤としては、トルエン、キシレン、ソルベントナフサ等の芳香族炭化水素系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が例示できる。
【0013】
本発明における溶剤としては、全溶剤のうち50重量%以上(好ましくは60重量%以上、より好ましくは70重量%以上)が脂肪族炭化水素となるように1種又は2種以上の脂肪族炭化水素を組み合わせて使用することが望ましい。特に、トルエン、キシレンを含まず、引火点21℃以上の消防法第四類第2石油類に該当するものが、安全衛生上好ましい。脂肪族炭化水素が少なすぎる場合は、臭気が強くなり作業安全性が低下したり、旧塗膜上に塗装を行った際にリフティングを誘発したりするおそれがある。
【0014】
本発明の塗料組成物では、樹脂成分として(A)溶剤可溶形樹脂及び/または非水分散形樹脂(以下「(A)成分」ともいう)を使用する。
【0015】
このうち、溶剤可溶形樹脂としては、前述の脂肪族炭化水素系溶剤に溶解可能なものであれば特に限定されず、各種の樹脂、例えばアクリル樹脂、アクリルウレタン樹脂、アクリルシリコン樹脂、フッ素樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂等、あるいはこれらの複合物等を使用することができる。
【0016】
好適な溶剤可溶形樹脂の一例としては、アルキル基の炭素数が4以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステル及びその他のエチレン性不飽和単量体を重合させて得られるアクリル系樹脂が挙げられる。このような樹脂では、アルキル基の炭素数が4以上の(メタ)アクリル酸エステルの共重合比率を調整することにより、脂肪族炭化水素系溶剤への溶解性を高めることができる。
【0017】
具体的に、アルキル基の炭素数が4以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体としては、例えば、n−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル等が挙げられる。
【0018】
その他のエチレン性不飽和単量体としては、例えば、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル、スチレン系単量体、アルキル基の炭素数が3以下の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、エポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル、アミノ基含有(メタ)アクリル酸エステル、酸化重合性基含有(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、ヒンダードアミノ基含有(メタ)アクリル酸エステル、ベンゾトリアゾール基含有(メタ)アクリル酸エステル、ビニル系化合物等が挙げられる。
【0019】
溶剤可溶形樹脂を製造する方法としては、例えば、通常のラジカル重合法を利用することができ、特にその方法が制限されるものではない。ラジカル重合法を利用して重合させる方法としては、溶剤の存在下で、前記単量体及び重合開始剤を混合し、50〜200℃で1〜10時間程度重合する方法等を採用することができる。重合開始剤としては、例えば、有機過酸化物、アゾ系化合物等が使用できる。
【0020】
本発明における溶剤可溶形樹脂の重量平均分子量は、通常10000〜400000、好ましくは20000〜200000である。重量平均分子量が小さすぎる場合は、耐候性、耐薬品性等の塗膜物性が不十分となりやすく、重量平均分子量が大きすぎる場合は、樹脂が高粘度化し、実用上塗料化が困難となる。
【0021】
本発明における(A)成分のうち、非水分散型樹脂は、前述の脂肪族炭化水素系溶剤に樹脂粒子として分散しているものであり、脂肪族炭化水素系溶剤に溶解可能な樹脂部分と溶解しない樹脂部分の両方を併せ持つものである。
【0022】
このような非水分散型樹脂は、例えば、上記脂肪族炭化水素系溶剤及び上記溶剤可溶形樹脂の存在下で、脂肪族炭化水素系溶剤に不溶な重合体(m)を形成させることによって製造できる。この際、重合体(m)では溶剤可溶形樹脂と同様の単量体を用いることができるが、その単量体の種類や比率は重合体(m)が脂肪族炭化水素系溶剤に不溶となるように選択される。通常は、アルキル基の炭素数が2以下の(メタ)アクリル酸エステルを必須の単量体成分とし、その共重合比率を調整することで不溶化できる。
【0023】
非水分散型樹脂の重量平均分子量は、通常20000〜500000、好ましくは30000〜300000である。また、非水分散型樹脂の平均粒子径は、100〜2000nm程度である。
【0024】
本発明では、以上のような溶剤可溶形樹脂、非水分散型樹脂のいずれか一方または両方を(A)成分として使用することができる。(A)成分が架橋反応基を有する場合は、当該反応基と反応可能な硬化剤を併せて使用することもできる。例えば、(A)成分が水酸基を有する場合には、イソシアネート系硬化剤を使用することができる。
【0025】
(A)成分のガラス転移点は、通常−5℃〜70℃、好ましくは0℃〜50℃である。ガラス転移点が−5℃より低い場合は耐汚染性が不十分となり、70℃より高い時は可撓性、耐久性等において満足な物性が得られ難くなる。
【0026】
本発明の塗料組成物は、(B)着色顔料(以下「(B)成分」という)を少なくとも2種以上含むものである。(B)成分としては、通常塗料において使用可能な着色顔料が挙げられる。具体的には例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、カーボンブラック、鉄黒、銅・クロムブラック、コバルトブラック、銅・マンガン・鉄ブラック、モリブデートオレンジ、酸化第二鉄(ベンガラ)、黄色酸化鉄、チタンイエロー、群青、紺青、コバルト・アルミブルー、クロムグリーン、コバルトグリーン等の無機着色顔料、アゾ系、ナフトール系、ピラゾロン系、アントラキノン系、ペリレン系、キナクリドン系、ジスアゾ系、イソインドリノン系、ベンゾイミダゾロン系、フタロシアニン系、キノフタロン系等の有機着色顔料が例示される。
本発明では、(B)成分の少なくとも1種が酸化チタンであり、少なくとも1種が酸化チタン以外の着色顔料である場合において、顕著な効果を得ることができる。
【0027】
(B)成分の混合比率は、(A)成分の固形分100重量部に対し、通常2〜300重量部、好ましくは5〜200重量部である。(B)成分に酸化チタンが含まれる場合、酸化チタンと酸化チタン以外の着色顔料との重量比は、通常99.5:0.5〜10:90、好ましくは99.5:0.5〜50:50である。
【0028】
第1の発明における(C)成分は、少なくともイソシアネート基を2個有し、重量平均分子量が600以下であり、リジン骨格を有するイソシアネート(以下「(p´)成分」という)と、1個以上のアミノ基を有するアミン化合物(q成分)との反応生成物である。
本発明では、これらのような(C)成分を配合することにより、上記着色顔料が2種以上混在する弱溶剤形塗料における顔料混和性を安定化させることができる。
【0029】
第1の発明における(C)成分では、(p´)成分がリジン骨格を有し、重量平均分子量が600以下であることによって、(C)成分の脂肪族炭化水素系溶剤への親和性が高まり、(C)成分による顔料混和性向上効果が十分に発揮される。重量平均分子量が600より大きい場合、あるいは、リジン骨格がない場合は、(C)成分の脂肪族炭化水素系溶剤への親和性が低下し、顔料混和性向上効果が十分に発揮されない。
【0030】
(p´)成分は、少なくともイソシアネート基を2個(好ましくは3個)有し、重量平均分子量が600以下(好ましくは400以下、さらに好ましくは300以下)であり、リジン骨格を有するイソシアネートである。
(p´)成分としては、例えば、化学式1で示されるイソシアネート等を挙げることができる。
(化学式1)
OCN−(CH−CH−NCO

CO−X
(Xは、炭素数1〜6のアルキル基、または、−YNCO(Yは、炭素数1〜6のアルキレン鎖))
【0031】
(p´)成分としては、例えば、リジンジイソシアネート、リジントリイソシアネートが挙げられる。具体的には、2−イソシアネートエチル−2,6−ジイソシアネートカプロエート(LTI)、2−イソシアネートブチル−2,6−ジイソシアネートカプロエート、エチル−2,6−ジイソシアネートカプロエート等が挙げられ、特に、リジントリイソシアネートとしての2−イソシアネートエチル−2,6−ジイソシアネートカプロエート(LTI)が好ましい。
【0032】
(C)成分を構成するもう一方の(q)成分としては、1個以上のアミノ基を有し、上記(p´)成分と反応可能な化合物が使用できる。(q)成分としては、第1級アミン化合物、第2級アミン化合物、第3級アミン化合物等が挙げられるが、このうち第1級アミン化合物が好適である。第1級アミン化合物の具体例としては、例えば、ベンジルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、sec−プロピルアミン、n−ブチルアミン、sec−ブチルアミン、tert−ブチルアミン、n−ペンチルアミン、α‐メチルブチルアミン、α‐エチルプロピルアミン、β‐エチルブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ラウリルアミン、ステアリルアミン、シクロヘキシルアミン、アニリン、ヘキサメチレンジアミン等が挙げられる。また第1級アミン化合物として、エタノールアミン、6−アミノヘキサノール、p−メトキシベンジルアミン、メトキシプロピルアミン、3,4−ジメトキシフエニルエチルアミン、2,5−ジメトキシアニリン、フルフリルアミン、テトラヒドロフルフリルアミン、ビス(3−アミノプロピル)ポリテトラヒドロフラン等を使用することも可能である。とりわけ(q)成分としては、炭素数2〜12(特に3〜10)の第1級アルキルアミンが好適である。
【0033】
(C)成分は、上記(p´)成分と(q)成分を混合し反応させることにより製造することができる。(p´)成分と(q)成分の混合比率は、(p´)成分のイソシアネート基と(q)成分のアミノ基のモル比が0.5〜2.0(好ましくは0.7〜1.5、より好ましくは0.8〜1.2)となるようにすることが望ましい。
反応温度は特に限定されないが、通常は0〜60℃程度である。
【0034】
この反応は溶剤の存在下で行うことができる。このような溶剤としては、前述の脂肪族炭化水素系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が使用でき、この中でも脂肪族炭化水素系溶剤が好適である。
【0035】
また、上記反応は、樹脂成分中で行うこともできる。樹脂成分としては上述の(A)成分が好適である。(C)成分を樹脂成分中で製造する場合は、(p´)成分、または(q)成分のいずれか一方を予め樹脂成分と混合した後に他方を徐々に加える方法、あるいは(p´)成分、(q)成分をそれぞれ別々に樹脂成分に混合しておき、次いでこれらを混合する方法等の方法を採用することができる。
【0036】
(C)成分の混合比率は、(A)成分の固形分100重量部に対し、通常0.1〜30重量部、好ましくは0.2〜10重量部である。このような範囲内であれば、顔料混和性において十分な改善効果を得ることができる。
【0037】
上述の成分の他、本発明の塗料組成物には、通常塗料に配合することが可能な各種成分を本発明の効果に影響しない程度に配合することも可能である。このような成分としては、体質顔料、硬化剤、増粘剤、可塑剤、防腐剤、防黴剤、防藻剤、消泡剤、レベリング剤、顔料分散剤、皮張り防止剤、ドライヤー、艶消し剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、低汚染化剤、触媒等が挙げられる。
【0038】
このうち、体質顔料としては、例えば重質炭酸カルシウム、クレー、カオリン、タルク、沈降性硫酸バリウム、炭酸バリウム、ホワイトカーボン、珪藻土等が挙げられる。このような体質顔料を適宜混合することにより、形成塗膜の光沢度、肉厚感等を調整することができる。
【0039】
硬化剤は、本発明における(A)成分の種類に応じて適宜選定することができる。例えば、(A)成分が水酸基を有する場合は、イソシアネート化合物を含む硬化剤等を使用することができる。
【0040】
増粘剤としては、水素添加ひまし油、酸化ポリエチレン、アマイドワックス等が挙げられる。このような増粘剤は、顔料混和性や塗膜光沢度に悪影響を及ぼす場合があるが、本発明ではこのような増粘剤が含まれていても、(C)成分の作用によって良好な物性を確保することができる。増粘剤の混合比率は、(A)成分の固形分100重量部に対し、通常固形分換算で0.1〜30重量部、好ましくは0.2〜10重量部である。
【0041】
本発明の塗料組成物は、以上のような各成分を常法により均一に撹拌・混合して製造することができる。硬化剤を用いる場合は、流通時には2液型の形態としておき、塗装時に混合して使用することも可能である。
【0042】
本発明の塗料組成物は、コンクリート、モルタル、磁器タイル、サイディングボード、押出成形板、金属、ガラス、プラスチック、木材、合板等の各種基材の表面仕上げに使用することができる。本発明組成物は、主に建築物、土木構築物等の躯体の保護に使用でき、通常は上塗材として使用する。
本発明の塗料組成物を塗装する際には、基材に直接塗装することもできるし、何らかの表面処理(シーラー、サーフェーサ、フィラー、パテ等による下地処理等)を施した上に塗装することも可能である。
【0043】
また、本発明の塗料組成物は、塗装時に脂肪族炭化水素系溶剤で希釈することもできる。希釈割合は、通常0〜30重量%程度である。塗装方法としては、例えば、刷毛塗装、ローラー塗装、スプレー塗装、ロールコーター、フローコーター等、種々の方法を用いることができる。塗装時の塗付量は、通常0.1〜0.5kg/m程度である。
【0044】
本発明組成物は、全体の50重量%以上が脂肪族炭化水素であるので、旧塗膜を有する基材への塗装にも好適に用いることができる。これは、溶解力の強い溶剤を使用した塗料を再塗装すると、リフティングと呼ばれる旧塗膜のちぢみ現象が発生しやすいのに対し、脂肪族炭化水素が50%重量以上含有されている場合は、このようなリフティング現象が発生し難いためである。
【実施例】
【0045】
以下に実施例を示し、本発明の特徴をより明確にする。
【0046】
(参考例1)
樹脂A40重量部を容器に仕込み、これを攪拌羽根で攪拌しながらオクチルアミン0.3重量部を混合し、次いでポリイソシアネート0.4重量部を混合後5分間攪拌した。さらに、酸化チタン80重量部、樹脂A160重量部、アマイドワックス系増粘剤(固形分20重量%)6重量部、シリコーン系消泡剤(固形分30重量%)2重量部、金属ドライヤー(Co分0.3重量%、Zr分3重量%)8重量部、酸化第二鉄分散液(顔料濃度40重量%)10重量部を順次常法により混合して塗料1を製造した。この塗料1の全溶剤中における脂肪族炭化水素の比率は70重量%である。
なお、樹脂Aとしては、溶剤可溶形アクリル樹脂(スチレン・イソブチルメタクリレート・2−エチルヘキシルアクリレート・グリシジルメタクリレート共重合体の大豆油脂肪酸変性物、変性率28重量%、重量平均分子量40000、固形分50重量%、ミネラルスピリット溶液)を使用した。ポリイソシアネートとしては、イソシアヌレート構造・アロファネート構造併有ポリイソシアネート(ヘキサメチレンジイソシアネートとn−ブチルアルコールとの反応生成物、不揮発分100重量%、NCO含有量21重量%)を使用した。
【0047】
・塗装試験1
上記塗料1にミネラルスピリットを10重量%加えて希釈した後、予め白色のプライマーが塗付されたスレート板(300×300mm)にこの塗料を塗付量0.15kg/mでスプレー塗装し、2時間後塗付量0.15kg/mで再度スプレー塗装した。3日間養生後、得られた塗膜の外観を確認したところ、特に異常は認められなかった。なお、塗装試験1における塗装作業及び養生は、すべて温度23℃・相対湿度50%の環境下で行った。
・塗装試験2
上記塗料1にミネラルスピリットを25重量%加えて希釈した後、予め白色のプライマーが塗付されたスレート板(300×300mm)にこの塗料を塗付量0.30kg/mでスプレー塗装した。3日間養生後、得られた塗膜の外観を確認したところ、特に異常は認められなかった。なお、塗装試験2における塗装作業及び養生は、すべて温度23℃・相対湿度50%の環境下で行った。
【0048】
(実施例1)
樹脂A40重量部を容器に仕込み、これを攪拌羽根で攪拌しながらオクチルアミン0.3重量部を混合し、次いで2−イソシアネートエチル−2,6−ジイソシアネートカプロエート0.45重量部を混合後5分間攪拌した。さらに、酸化チタン80重量部、樹脂A160重量部、アマイドワックス系増粘剤(固形分20重量%)6重量部、シリコーン系消泡剤(固形分30重量%)2重量部、金属ドライヤー(Co分0.3重量%、Zr分3重量%)8重量部、酸化第二鉄分散液(顔料濃度40重量%)10重量部を順次常法により混合して塗料2を製造した。この塗料2の全溶剤中における脂肪族炭化水素の比率は70重量%である。
得られた塗料2について、参考例1と同様の試験を行った。実施例1では、いずれの試験においても特に異常は認められず、光沢度は参考例1と同程度であった。
【0049】
(比較例1)
樹脂A200重量部、酸化チタン80重量部、アマイドワックス系増粘剤8重量部、シリコーン系消泡剤2重量部、ドライヤー8重量部、酸化第二鉄分散液10重量部を順次常法により混合して塗料3を製造した。
以上の方法で得られた塗料3について、実施例1と同様の試験を行った。その結果、塗装試験1において特に異常は認められなかったが、塗装試験2においては浮きまだらが発生しており、参考例1に比べ光沢度も低い状態であった。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶剤成分として脂肪族炭化水素系溶剤を主成分とする塗料組成物であって、
(A)溶剤可溶形樹脂及び/または非水分散形樹脂、
(B)少なくとも2種以上の着色顔料、
(C)少なくともイソシアネート基を2個有し、重量平均分子量が600以下であり、リジン骨格を有するイソシアネート(p´)と、1個以上のアミノ基を有するアミン化合物(q)との反応生成物、を必須成分とし、(A)成分の固形分100重量部に対し、(B)成分が5〜500重量部、(C)成分が0.1〜30重量部含まれることを特徴とする塗料組成物。




【公開番号】特開2012−97278(P2012−97278A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−7947(P2012−7947)
【出願日】平成24年1月18日(2012.1.18)
【分割の表示】特願2006−30213(P2006−30213)の分割
【原出願日】平成18年2月7日(2006.2.7)
【出願人】(000180287)エスケー化研株式会社 (227)
【Fターム(参考)】