説明

塗料組成物

【課題】 従来の紫外線吸収剤を用いた場合に比較して、非ブリードアウト性、相溶性、耐水性、耐熱性並びに光劣化が抑制されると共に耐久性に優れた塗料組成物を提供する。
【解決手段】
紫外線吸収型ポリマー(A)と、ポリウレタン(B)のディスパージョンとからなるポリマー組成物に、ポリウレタンゲル粒子(C)を添加してなる塗料組成物が提供される。 前記(A)は、二重結合及び紫外線吸収基を有する化合物(a)と、二重結合含有成分(h)とを重合したものであり、前記(B)のディスパージョンは、活性水素含有基及びアニオン性親水性基(水酸基を除く。)を有する化合物(b)と、ポリオール(c)及び/又はポリアミン(d)と、ポリイソシアネート(e)とを反応させて得られる生成物の水分散体である。前記(C)の粒子径は0.5〜100μmであり、前記(A)と(B)の合計量を基準として、3〜200質量%含有していることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料組成物に関するものであり、さらに詳しくは、紫外線吸収基を有するポリマーと、ポリウレタンのディスパージョン(以下、「PUD」とも記す。)との水分散性ポリマー組成物、およびポリウレタンゲル粒子を含有する塗料組成物に関するものである。本発明によれば、プラスチック材料用塗料組成物、特に自動車用内装材としてインパネ、ドアトリム、コンソールボックス、グローブボックスなどに使用される熱可塑性ポリオレフィン材料用の塗料組成物を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車内装用には柔軟性、難燃性、意匠性、真空成型性が良好でコストバランスの良い塩化ビニル樹脂が多く使用されてきた。しかし、近年、ハロゲン化合物起因のダイオキシン問題や、更なる燃費向上目的による部品軽量化に応じて、TPOを中心とする熱可塑性ポリオレフィン樹脂の使用頻度が高まっている。熱可塑性ポリオレフィンは、自動車用素材に適合した耐候性、耐薬品性などの諸物性を有し、可塑剤を使用しなくとも柔軟であり密度が低いため軽量化が可能であり、リサイクル性などに優れる素材のため、塩化ビニル樹脂の代替素材として有望とされている。しかしながら、熱可塑性ポリオレフィンからなる成型材料をそのまま自動車用内装材に使用した場合グロス調の材料となる。自動車内装材は運転者が安全に走行するために防眩性のある艶消し調であることが重要であり、意匠性のある艶消し塗料を塗工する必要性がある。更に自動車内装材用塗料は、耐摩耗性、屈曲性、人間の皮脂や化粧品などに対する耐油性、密着性、耐候性等を必要とし、高級感を演出する触り心地も重要な要素である。
【0003】
一方、ポリウレタン系樹脂は、耐摩耗性、屈曲性、密着性などの諸物性に優れ、かつ、各種加工法への適性にも優れるため、各種コーティング剤、インキ、塗料等のバインダーとして、或いはフィルム、シート及び各種成型物用材料として広く使用されている。そして、ポリウレタン系樹脂は、本発明に係る塗料組成物の最適な成分として使用できることが推定される。なお、本明細書で言う「ポリウレタン系樹脂」とは、ポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂、ポリウレタン−ポリウレア樹脂の総称である。ポリウレタン系樹脂は、基本的には高分子量ポリオール成分、有機ポリイソシアネート成分、さらには必要に応じて鎖伸長剤成分を反応させて得られるものであり、これらの各成分の種類、組み合わせを変化させることによって、種々の性能を有するポリウレタン系樹脂の提供を可能としている。
【0004】
しかしながら、ポリウレタン系樹脂は長期にわたって使用すると、紫外線曝露によって、分子量低下による弾性低下、引張強度の低下、割れの発生などの物性低下、光沢低下、着色、退色、及び変色などの外観変化など種々の性能劣化を生ずる。
【0005】
従って、耐紫外線対策は、自動車内装材など耐久性が要求されるプラスチック材料用塗料組成物にとって最重要点である。このような問題を改善するために、例えばベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サリシレート系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤などの紫外線吸収剤がプラスチック材料用塗料組成物には添加され使用されている。この塗料は熱可塑性ポリオレフィンにスプレー、グラビアなどの手法で塗工され、内装部材を摩耗組成物、光、熱、汚染物質などから保護するだけでなく、意匠性(色、艶消しなど)、触感(ソフトタッチ)などを付与し、付加価値を高めている(非特許文献1参照。)。
【0006】
しかしながら、従来用いられてきた前記の紫外線吸収剤は、非反応性の低分子化合物であるため、経時的に塗膜からのブリードアウトを起こしたり、乾燥や成形時の熱による揮発や分解、溶剤や薬品による溶出などが起こり、長期的な効果が持続されないという問題が生ずるおそれがあった。また塗膜中に多量に紫外線吸収剤を添加しようとした場合、低分子量の紫外線吸収剤は相溶性が低いために層分離を起こし、透明性や機械的強度の低下が生ずるおそれがあることも指摘されてきた。
【0007】
また、当該プラスチック材料用塗料組成物やコーティング剤は、従来の溶剤型から、環境負荷の小さい水性型への転換が進んでいる。しかしながら、従来の紫外線吸収剤を水性型の塗料等に高濃度に配合するには、分散剤を用いて予め分散させてから配合する必要がある。このため配合に際して手間がかかるとともに、ブリードアウトし易く、使用した分散剤が塗膜に悪影響を及ぼすといった重大な弱点がある。
【0008】
水性アクリル系樹脂は、耐候性及び強靭性に優れるため、塗料として広く用いられているが、アクリル樹脂単独では、耐久性を求めガラス転移点(Tg)を高くすると造膜性が低下してしまい、クラックが入りやすくなるので、溶剤を併用する必要がある。一方、アクリル樹脂のガラス転移点(Tg)を低くすると、簡便に成膜は可能となるがタックが強くなるため汚れ易くなり、或いは耐久性が低くなるという問題が生ずる。これらの問題を改善するため、水性アクリル系樹脂を、弾性、密着性、及び耐摩耗性に優れるPUDと併用することで、双方の樹脂の長所を併せ持つようにすることが提案されている。このため、水性アクリル系樹脂とPUDを含有する塗料組成物については、水性アクリル系樹脂とPUDの相溶性が優れていることが望まれ、水性アクリル系樹脂とPUDとを混合する際のショック凝集の発生防止及び塗膜の濁りが生じない様に混合することが重要である。
【0009】
このような観点から、その分子内に反応型の二重結合(不飽和結合)を有する低分子量の紫外線吸収剤を重合し、高分子量化することが考えられる。しかしながら、このような紫外線吸収剤を単独で重合しようとしても、水性アクリル系樹脂とPUDの相溶性を改良することはできない。このため、重合性基を有するベンゾフェノン型紫外線吸収剤とアクリル系モノマーとを重合して、ブリードアウト、溶出性、及び耐熱性を改良し、添加する高分子材料との相溶性を向上させる試みがなされている(特開平3−281685号公報(以下、「特許文献1」という。)。しかしながら、この試みでは、一部の高分子材料との相溶性の改善効果が不十分であるとともに、水性製品への応用は困難であるといった問題がある。
【0010】
また、水性エマルジョン型の高分子紫外線吸収剤が提案されている(特開2002−121253号公報(以下、「特許文献2」という。)。しかしながら、この高分子紫外線吸収剤は、水に分散させるために乳化剤を使用する必要があるため、耐水性が不十分であるとともに、基材との密着性が低下したり、乳化剤がブリードアウトしたりする場合がある。
【0011】
また、ベンゾトリアゾール型の紫外線吸収剤にラクトンを付加させてポリエステルポリオールとしたものを用いて、紫外線吸収PUDを得る報告がなされている(特許文献3参照)。しかしながら、ポリエステルポリオール中にはポリエステル構造が存在するため、耐加水分解性が低いなどの耐候性に劣る場合がある。
【0012】
従って、このような開発状況に鑑み、熱可塑性ポリオレフィンの塗料組成物として前記の如き難点を解決できるものの提供が要求されてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平3−281685号公報
【特許文献2】特開平6−73368号公報
【特許文献3】特開2002−121253号公報
【非特許文献1】岩田 敬治 編、ポリウレタン樹脂ハンドブック、第571〜599頁、15.ポリウレタン皮革(昭和62年9月25日、日刊工業新聞社発行)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
従って、本発明の課題は、このような従来技術が有する問題点に鑑み、従来の紫外線吸収剤を用いた場合に比して、非ブリードアウト性、相溶性、耐水性及び耐熱性に優れ、また、光劣化が抑制され、耐久性の向上した塗料組成物を提供すると共に、特に、艶消し調であり、触感性がよく、耐摩耗性、接着性、真空成形性等に優れた塗膜の形成が可能な塗料組成物であり、熱可塑性ポリオレフィンに好適な塗料組成物及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
そこで、本発明者らは、前記の本発明の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、紫外線吸収型ポリマー(A)と、ポリウレタン(B)のディスパージョンとからなるポリマー組成物にポリウレタンゲル粒子(C)を含有させることにより、前記の課題を解決できることに着目し、かかる知見に基き本発明に想到するに至った。
【0016】
即ち、本発明によれば以下に示す塗料組成物が提供される。
【0017】
[1]紫外線吸収型ポリマー(A)と、ポリウレタン(B)のディスパージョンとからなるポリマー組成物を含有し、更にポリウレタンゲル粒子(C)を含有する塗料組成物であって、前記紫外線吸収型ポリマー(A)は、二重結合及び紫外線吸収基を有する化合物(a)(以下、単に「化合物(a)」ということがある。)と、二重結合含有成分(h)とを含む重合成分を重合させて得られる重合生成物であり、前記ポリウレタン(B)は、活性水素含有基及びアニオン性親水性基(水酸基を除く。)を有する化合物(b)(以下、単に「化合物(b)」ということがある。)と、ポリオール(c)及び/又はポリアミン(d)と、ポリイソシアネート(e)とを含む反応成分を反応させて得られる反応生成物である塗料組成物。
【0018】
[2]前記化合物(a)が、下記一般式(1)〜(4)のいずれかで表される前記[1]に記載の塗料組成物。
【0019】
【化1】

【0020】
(前記一般式(1)中、Xは、ハロゲン、水素原子、又は炭素数10以下のアルキル基を示し、Rは、水素原子又は炭素数10以下のアルキル基を示し、Rは、単結合、炭素数10以下のアルキレン基、炭素数10以下のオキシアルキレン基、又は炭素数10以下のヒドロキシオキシアルキレン基を示し、Rは、水素原子又はメチル基を示す。)
【0021】
【化2】

【0022】
(前記一般式(2)中、Xは、ハロゲン、水素原子、又は炭素数10以下のアルキル基を示し、Rは、単結合、炭素数10以下のアルキレン基、炭素数10以下のオキシアルキレン基、又は炭素数10以下のヒドロキシオキシアルキレン基を示し、Rは、水素原子又はメチル基示す。)
【0023】
【化3】

【0024】
(前記一般式(3)中、Xは、ハロゲン、水素原子、又は炭素数10以下のアルキル基を示し、Rは、単結合、炭素数10以下のアルキレン基、炭素数10以下のオキシアルキレン基、又は炭素数10以下のヒドロキシオキシアルキレン基を示し、Rは、水素原子又はメチル基示す。)
【0025】
【化4】

【0026】
(前記一般式(4)中、Rは、単結合、炭素数20以下のアルキレン基、炭素数20以下のオキシアルキレン基、又は炭素数20以下のヒドロキシアルコキシル基を示し、Rは、水素原子又はメチル基を示し、R〜Rは、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、又はアルコキシル基を示す。)
【0027】
[3]前記二重結合含有成分(h)が、スチレン系モノマー、アクリル酸系モノマー、メタクリル酸系モノマー、及びアクリロニトリル系モノマーからなる群より選択される少なくとも一種である前記[1]に記載の塗料組成物。
【0028】
[4]前記紫外線吸収型ポリマー(A)に含有される前記化合物(a)に由来する構成成分の割合が1〜80質量%である前記[1]に記載の塗料組成物。
【0029】
[5]前記紫外線吸収型ポリマー(A)は、ガラス転移点(Tg)が−20〜160℃、重量平均分子量(Mw)が1,000〜1,500,000、及び酸価が2〜200mgKOH/gであるとともに、水に溶解又は分散可能である前記[1]に記載の塗料組成物。
【0030】
[6]前記ポリウレタン(B)が短鎖ジオール成分(f)及び/又は短鎖ジアミン成分(g)をさらに含む前記[1]に記載の塗料組成物。
【0031】
[7]前記ポリウレタン(B)が、前記化合物(b)、前記ポリオール(c)、前記ポリアミン(d)、前記短鎖ジオール成分(f)、及び前記短鎖ジアミン成分(g)の合計の活性水素含有基(アニオン性親水性基を除く)(1)と、前記ポリイソシアネート(e)のイソシアネート基(2)と、を(1)/(2)=0.9〜1.5の当量比で反応させて得られたものである前記[1]又は[6]に記載の塗料組成物。
【0032】
[8]前記化合物(b)が、下記一般式(5)で表される前記[1]又は[7]に記載の塗料組成物。
【0033】
(HO−R’−)−R−(R”−X ・・・(5)
(前記一般式(5)中、Rは、アルキレン基、シクロアルキル環、芳香族環、アミン構造、又は複素環を示し、R’は、アルキレン基、シクロアルキル環、又は芳香族環を示し、R”は、単結合、アルキレン基、シクロアルキル環、又は芳香族環を示し、Xは、−COOH、−SOH、又は−POを示し、nは1又は2を示し、mは1又は2を示し、lは1〜3の整数を示す。)
[9]前記化合物(b)が、ジメチロールアルカン酸類である前記[1]又は[7]に記載の塗料組成物。
【0034】
[10]前記ポリオール(c)又は前記ポリアミン(d)として、ポリイソシアネート基と反応可能である活性水素含有ポリシロキサンセグメントが前記ポリウレタン(B)の1〜50質量%導入されている前記[1]又は[7]の塗料組成物。
【0035】
[11]前記ポリウレタン(B)の重量平均分子量が、1,000〜500,000である前記[1]、[6]又は[7]のいずれかに一項に記載の塗料組成物。
【0036】
[12]前記ポリマー組成物の全成分に対する前記紫外線吸収型ポリマー(A)の含有割合が、0.1〜50質量%である前記[1]に記載の塗料組成物。
【0037】
[13] 前記ポリウレタンゲル粒子(C)(以下、「粒子(C)」ということがある。)が、少なくともいずれか一方が3官能以上である、ポリイソシアネートと分子内に活性水素を有する化合物と、を共重合してなる三次元架橋したポリウレタンゲル粒子(D)(以下、「粒子(D)」ということがある。)と、該粒子Dの表面を被覆してなるポリウレアコロイド非水溶媒溶液から析出したポリウレアコロイド粒子(E)(以下、「粒子(E)」ということがある。)とからなる粒子集合体である前記[1]に記載の塗料組成物。
【0038】
[14]前記粒子(E)が、溶媒に対して溶媒和されている部分と非溶媒和部分とから構成されてなり、非溶媒和部分の粒子径が0.01〜1.0μmであり、油脂変性ポリオールとポリイソシアネートとポリアミン化合物との反応で得られるポリウレアコロイド粒子であって、非溶媒和部分がウレア結合の水素結合からなっている前記[1]又は[13]に記載の塗料組成物。
【0039】
[15] 前記粒子(C)の粒子径が、0.5〜100μmの範囲である[1]又は[13]に記載の塗料組成物。
【0040】
[16] 前記ポリウレタンゲル粒子(C)の含有量が、前記[1]〜[15]のいずれか一項に記載の塗料組成物中の紫外線吸収型ポリマー(A)とポリウレタン(B)の合計量を基準として3〜200質量%である塗料組成物。
【0041】
[17]前記[1]〜[16]のいずれか一項に記載の塗料組成物が、が、エポキシ化合物、カルボジイミド化合物、アジリジン化合物、オキサゾリン化合物、及びイソシアネート化合物(ブロック体含む)からなる群より選択される少なくとも1種の架橋剤により架橋反応させて得られる塗料組成物。
【0042】
[18]前記[1]〜[17]のいずれか一項に記載の塗料組成物が、前記紫外線吸収型ポリマー(A)の溶液又は水分散体と、前記ポリウレタン(B)ディスパージョンとを混合する混合工程、
及び該混合工程により得られた前記紫外線吸収型ポリマー(A)と前記ポリウレタン(B)のディスパージョンとの混合物に前記ポリウレタンゲル粒子(C)を配合する配合工程、
又は、前記ポリウレタン(B)のディスパージョンを調製する工程の中間段階で、前記紫外線吸収型ポリマー(A)の溶液又は水分散体を添加する工程、
及び該工程により得られた前記紫外線吸収型ポリマー(A)と前記ポリウレタン(B)のディスパージョンとの混合液に前記ポリウレタンゲル粒子(C)を配合する配合工程
を包含する製造方法において製造される塗料組成物。
【0043】
[19]前記塗料組成物の用途が、プラスチック用コーティング剤である前記[1]〜[18]のいずれか一項に記載の塗料組成物。
【0044】
[20]前記プラスチックが、熱可塑性ポリオレフィン基材である前記[19]に記載の塗料組成物。
【0045】
[21]前記ポリウレタンゲル粒子(D)と、該ポリウレタンゲル粒子(D)の表面を被覆してなるポリウレアコロイド粒子(E)とからなるポリウレタンゲル粒子(C)であって、塗料組成物の塗膜成分として用いられるポリウレタンゲル粒子(C)集合体。
【0046】
よって、本発明によれば、熱可塑性ポリオレフィン樹脂基材に、塗料組成物として[1]〜[19]に記載の塗料組成物を塗工して塗膜を形成してなる熱可塑性ポリオレフィン樹脂基材、特に自動車内装材及びその製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0047】
本発明の塗料組成物は、従来の紫外線吸収剤を用いた場合に比して、紫外線吸収成分の非ブリードアウト性、相溶性、耐水性、及び耐熱性に優れ光劣化が抑制されるとともに、耐久性の向上した塗膜の形成可能な塗料組成物を提供することができる。特に、本発明によれば、光沢度が低く(防眩性が優れる)、触感性が良く、耐摩耗性、接着性、真空成形性、耐傷性等の後記実施例で示すように、優れた塗膜の形成可能なプラスチック用塗料組成物を提供することができ、該塗料組成物を用いることにより、前記の如き優れた性能を有し、耐久性にも優れた自動車内装材を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態により限定されるものではない。本発明の塗料組成物は紫外線吸収機能を有するものであり、紫外線吸収型ポリマー(A)と、ポリウレタン(B)のディスパージョン(以下、「PUD(B)」とも記す。)と、ポリウレタンゲル粒子(C)とを含有してなるものであり、好ましくは安定な水分散物を必須成分として含有するものである。以下、その詳細について説明する。
【0049】
(紫外線吸収型ポリマー(A))
紫外線吸収型ポリマー(A)は、分子内に反応性を有する二重結合(不飽和結合)及び紫外線吸収基を有する化合物(a)と、二重結合(不飽和結合)含有成分(h)とを含有してなる重合成分を重合させて得られる重合生成物である。化合物(a)の二重結合は、ラジカル重合、カチオン重合、及びアニオン重合などの通常の重合法で重合可能な、反応性を有する二重結合であればよい。反応性及び入手の容易性又は合成の容易さなどの観点から、アクリル系又はメタクリル系の二重結合が好ましい。以下、「アクリル」と「メタクリル」を、併せて「(メタ)アクリル」とも記す。
【0050】
化合物(a)の紫外線吸収基の構造としては、例えば、一般的に用いられている紫外線吸収剤の構造を挙げることができる。そのような紫外線吸収剤の具体例としては、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、サリシレート系、及びトリアジン系の紫外線吸収剤等を挙げることができる。なお、化合物(a)には、これらの紫外線吸収剤の構造以外の構造を有する紫外線吸収基が含まれていてもよい。
【0051】
紫外線吸収基の構造がベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の構造である場合における化合物(a)としては、前記一般式(1)で表わされる構造を有するものを挙げることができる。前記一般式(1)で表される化合物(a)の具体例としては、2−[2′−ヒドロキシ−5′−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−3′−t−ブチル−5′−(メタクリロイルオキシプロピル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−5' −メチルフェニル)−5−(2′−メタクリロイルオキシエチル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−[(2' −ヒドロキシ−5′−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル)−5−クロロ]−2H−ベンゾトリアゾール等を挙げることができる。これらの化合物(a)は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0052】
紫外線吸収基の構造がベンゾフェノン系紫外線吸収剤の構造である場合における化合物(a)としては、前記一般式(2)で表わされる構造を有するものを挙げることができる。前記一般式(2)で表される化合物(a)の具体例としては、2−ベンゾイル−5−(2' −ヒドロキシ−3' −メタクリロイルオキシプロポキシ)−フェノール、2−ベンゾイル−5−(2' −メタクリロイルオキシエトキシ)−フェノール、2−ベンゾイル−5−(2' −アクリロイルオキシエトキシ)−フェノール、2−ベンゾイル−5−(2' −アクリロイルオキシエトキシ)−6−tert−ブチル−フェノール等を挙げることができる。これらの化合物(a)は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0053】
紫外線吸収基の構造がサリシレート系紫外線吸収剤の構造である場合における化合物(a)としては、前記一般式(3)で表わされる構造を有するものを挙げることができる。また、紫外線吸収基の構造がトリアジン系紫外線吸収剤の構造である場合における化合物(a)としては、一般式(4)で表わされる構造を有するものを挙げることができる。前記一般式(4)で表される化合物(a)の具体例としては、2,4−ジフェニル−6−[2−ヒドロキシ−4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)]−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2−メチルフェニル)−6−[2−ヒドロキシ−4−(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピオキシ)]−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−[2−ヒドロキシ−4−(11−アクリロイルオキシ−ウンデシルオキシ)フェニル]−1,3,5−トリアジン等を挙げることができる。これらの化合物(a)は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0054】
化合物(a)と共重合させる二重結合含有成分(h)としては、(メタ)アクリル酸系モノマーが好適である。このような(メタ)アクリル酸系モノマーの具体例としては、(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、n−ラウリル(メタ)アクリレート、n−ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。なお、二重結合含有成分としては、スチレン系モノマーやアクリロニトリル系モノマーも使用することができる。これらの二重結合含有成分は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0055】
紫外線吸収型ポリマー(A)に含まれる化合物(a)に由来する構成単位の割合が高いほど、紫外線吸収効果は高まる。しかしながら、化合物(a)に由来する構成単位の含有割合が高過ぎると、合成時の紫外線吸収型ポリマー(A)の安定性や、ポリウレタン(B)との相溶性が低下する傾向にある。このため、紫外線吸収型ポリマー(A)に含まれる化合物(a)に由来する構成単位の割合は、1〜80質量%であることが好ましく、30〜80質量%であることがさらに好ましい。
【0056】
化合物(a)以外の重合成分として、カルボキシル基などの親水性基を有するモノマーを用いることにより、水分散性が付与された紫外線吸収型ポリマー(A)を得ることができる。なお、親水性基を有するポリマーとしては、(メタ)アクリル酸等を挙げることができる。紫外線吸収型ポリマー(A)は、酸価が高いほど水分散性は高まる。しかしながら、酸価が高すぎる紫外線吸収型ポリマー(A)を含有するポリマー組成物を用いて形成される塗膜は、耐水性が低下したり、硬くなりすぎて塗料性能が低下したりする傾向にある。このため、紫外線吸収型ポリマー(A)の酸価は、2〜200mgKOH/gであることが好ましく、5〜100mgKOH/gであることがさらに好ましい。
【0057】
二重結合含有成分(h)として、(メタ)アクリル酸と長鎖アルコールとのエステルを用いると、得られる紫外線吸収型ポリマー(A)のガラス転移点(Tg)が低下する傾向にある。このようなガラス転移点(Tg)の低い紫外線吸収型ポリマー(A)を用いると、柔軟性が向上した塗膜の形成可能な、造膜性に優れたポリマー組成物とすることができる。一方、二重結合含有成分(h)として、(メタ)アクリル酸と短鎖アルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸、スチレン、又はアクリロニトリルを用いると、得られる紫外線吸収型ポリマー(A)のガラス転移点(Tg)が高まる傾向にある。このようなガラス転移点(Tg)の高い紫外線吸収型ポリマー(A)を用いると、耐久性及び強靭性が向上した塗膜の形成可能なポリマー組成物とすることができる。すなわち、紫外線吸収型ポリマー(A)のガラス転移点(Tg)が適当な数値となるように、重合成分の種類や比率を選択することで、強靭性の高い塗膜が形成可能であるとともに、造膜性に優れたポリマー組成物を得ることができる。具体的には、二種類以上の(メタ)アクリル酸系モノマーを二重結合含有成分(h)として用いることが好ましい。紫外線吸収型ポリマー(A)のガラス転移点(Tg)は、−20〜160℃であることが好ましい。紫外線吸収型ポリマー(A)のガラス転移点(Tg)が、160℃を超えると、造膜性及び相溶性が低下する傾向にある。一方、紫外線吸収型ポリマー(A)のガラス転移点(Tg)が−20℃未満であると、塗膜形成時にタックが生じやすくなるとともに、耐熱性などの耐久性が低下する傾向にある。
【0058】
紫外線吸収型ポリマー(A)を得るために用いられる重合成分には、得られる紫外線吸収型ポリマー(A)の紫外線吸収機能、耐久性、水分散性、及び相溶性などの特性を損なわない範囲で、光安定性や酸化防止機能などの「その他の機能」を有するモノマー(重合成分)を含有させてもよい。このような「その他の機能」を有するモノマーの具体例としては、4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルアミノ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン等を挙げることができる。これらのモノマーは、ヒンダードアミン系光安定剤の部分構造である。
【0059】
(紫外線吸収型ポリマー(A)の製造方法)
紫外線吸収型ポリマー(A)は、化合物(a)と二重結合含有成分を含む重合成分を、例えば、乳化重合、懸濁重合、溶液重合、又は塊状重合などの従来公知の重合方法によって重合することにより得ることができる。例えば、溶液重合においては、重合開始剤の存在下、適当な溶剤中で重合成分を重合させればよい。なお、溶液重合では、通常、乳化剤を用いないので、得られる紫外線吸収型ポリマー(A)の相溶性、透明性、及び耐水性が良好になる。
【0060】
溶液重合の際に用いる溶剤の種類は、重合反応に悪影響を及ぼさないものであれば特に限定されない。溶剤の具体例としては、水;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、n−ペンチルアルコール、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレンングリコールなどのアルコール系溶剤;石油エーテル、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素系溶剤;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶剤;ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサンなどのエーテル系溶剤;メチルエチルケトン、2−ペンタノン、3−ペンタノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、2−オクタノン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶剤;酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチルなどのエステル系溶剤;N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン(NMP)などのアミド系溶剤を挙げることができる。これらのなかでも、得られる紫外線吸収型ポリマー(A)が水分散性になることから、水と混和するアルコール系溶剤、エーテル系溶剤、アミド系溶剤が好ましい。溶剤の使用量は、重合反応の条件によって適宜決定される。通常、重合成分に対して質量比で0.1〜100倍程度、好ましくは0.2〜20倍程度である。なお、これらの溶剤は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0061】
重合開始剤としては、従来既知のものを用いることができる。重合開始剤の具体例としては、過酸化ベンゾイル、ジブチルパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイドなどの過酸化物類;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)などのアゾ系重合開始剤を挙げることができる。これらの重合開始剤は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。重合開始剤の使用量は特に限定されないが、通常、重合成分に対して0.1〜10質量%程度である。
【0062】
重合反応の温度は、他の反応条件によって適宜設定される。通常は、室温(25℃)〜使用する溶剤の沸点以下の温度であればよい。また、得られる紫外線吸収型ポリマー(A)の重合度を調整するために、メルカプタン類などの連鎖移動剤やハイドロキノンなどの重合禁止剤を重合反応系に添加してもよい。
【0063】
このようして得られる紫外線吸収型ポリマー(A)の重量平均分子量(Mw)は、非ブリードアウト性、耐熱性、耐久性、水分散性、相溶性、塗膜性能などの諸性能を満足するためには、1,000〜1,500,000であることが好ましく、5,000〜100,000であることがさらに好ましい。なお、本明細書における「重量平均分子量(Mw)」及び「数平均分子量(Mn)」とは、特に断らない限り、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定されるポリスチレン換算の値を意味する。
【0064】
溶液重合によって得られた紫外線吸収型ポリマー(A)の溶液を、例えば溶液状態の高分子製品に添加することにより、紫外線吸収剤として使用することができる。また、紫外線吸収型ポリマー(A)の溶液から溶剤を蒸発させて乾固させたものを高分子製品に練り込んでも、紫外線吸収剤として使用することができる。
【0065】
なお、水分散体とすることにより、紫外線吸収型ポリマー(A)の機能がさらに有効に発揮される処理剤を得ることができる。紫外線吸収型ポリマー(A)の水分散体を調製するには、紫外線吸収型ポリマー(A)の溶液に中和剤を添加して紫外線吸収型ポリマー(A)の塩を形成させた後、水を投入すればよい。中和剤は、水に溶解又は分散させたものを添加してもよい。
【0066】
中和剤の具体例としては、アンモニア、エチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、トリブチルアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−フェニルジエタノールアミン、モノエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、モルホリン、N−メチルモルホリン、2−アミノ−2−エチル−1−プロパノールなどの有機アミン類;リチウム、カリウム、ナトリウムなどのアルカリ金属;水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの無機アルカリ類を挙げることができる。中和剤の添加量は、通常は、紫外線吸収型ポリマー(A)のカルボキシル基に対して0.8〜1当量とすることが好ましいが、紫外線吸収型ポリマー(A)の酸価が高い場合は中和剤の添加量を減らすことも可能である。
【0067】
紫外線吸収型ポリマー(A)の水分散体は、紫外線吸収型ポリマー(A)が水中に均一に分散した形態のものであり、該ポリマー(A)の固形分は質量基準で5〜55質量%であり、好ましくは、20〜50質量%である。
【0068】
固形分が20質量%に満たないと最終塗料の固形分が低くなる可能性があり、一方、55質量%を超えると均一な分散体の製造が困難となり、又、水分散体の粘度が上がり流動性やPUD(B)との混合性に弊害が生ずるおそれがある。
【0069】
紫外線吸収型ポリマー(A)の水分散体は、必要に応じて、減圧蒸留などの方法により脱溶剤して重合時に使用した溶剤を除去し、揮発性有機化合物(VOC)を含まない水分散体とすることができる。紫外線吸収型ポリマー(A)を、VOCを含まない水分散体とすることにより、PUD(B)と配合する際にPUD(B)の分散安定性を高めることができる。また、得られたポリマー組成物を、処理剤として使用する際の作業環境が大幅に改善される。
【0070】
(ポリウレタン(B)のディスパージョン)
ポリウレタン(B)は、活性水素含有基及びアニオン性親水性基(水酸基を除く)を有する化合物(b)と、ポリオール(c)及び/又はポリアミン(d)と、ポリイソシアネート(e)とを含む反応成分を反応させて得られる。より好ましくは、ポリウレタン(B)は、化合物(b)、ポリオール(c)、及びポリアミン(d)、並びに必要に応じて用いられる短鎖ジオール成分(f)及び短鎖ジアミン成分(g)の合計の活性水素含有基(アニオン性親水性基を除く)(1)と、ポリイソシアネート(e)のイソシアネート基(2)とを、(1)/(2)=0.9〜1.5の当量比(モル比)で反応させて得られる。
【0071】
本明細書における「ポリウレタン」とは、ポリウレタン及びポリウレタン−ウレアの総称を意味する。なお、この「ポリウレタン」は、必要に応じてアミン成分を反応させたものであってもよい。また、本明細書における「活性水素含有基」とは、イソシアネート基との反応性を有する、活性水素を有する官能基を意味する。このような「活性水素含有基」の具体例としては、水酸基、メルカプト基、カルボキシル基、及びアミノ基などを挙げることができる。
【0072】
ポリウレタン(B)のディスパージョンは、前記の如き、化合物(b)、ポリオール(c)及び/又はポリアミン(d)とポリイソシアネート(e)とを反応させることにより得られるポリウレタン(B)に対し、水が添加され、その含有量が5〜55質量%、好ましくは、20〜50質量%に調整され、ポリウレタン粒子が均一に分散した淡青色ないし淡白色の分散体である。経時的に安定であり、平均粒子径は、1〜1,000nmであり、好ましくは5〜800nmである。平均粒子径が1nmに満たないと水溶液状態であり耐水性が非常に低下する、更に適切な粘度状態で高分子量化することが不可能となり、接着性、摩耗性、耐傷性、耐候性、耐熱性、耐加水分解性が低下し、本発明の効果を奏することができない。
【0073】
一方、1,000nmを超えると、ディスパージョンが不安定化し沈降が発生し易く、
紫外線吸収型ポリマー(A)との混合性に不具合が発生する場合がある。また均一な塗膜生成が困難となり接着性、耐摩耗性、耐傷性試験等にて所定の効果を奏することができないおそれが生ずる。
【0074】
活性水素含有基及びアニオン性親水性基を有する化合物(b)は、そのアニオン性親水性基によって得られるポリウレタン(B)に水分散性を付与する構成要素である。即ち、ポリウレタン(B)は、乳化剤を用いなくても安定な自己乳化型分散体となりうる。化合物(b)としては、前記一般式(5)で表される化合物を挙げることができる。具体的には、スルホン酸系化合物、カルボン酸系化合物、及びリン酸系化合物などを化合物(b)として用いることができる。これらの化合物(b)は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0075】
スルホン酸系化合物の具体例としては、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸などを挙げることができる。カルボン酸系化合物の具体例としては、ジメチロールプロパン酸、ジメチロールブタン酸などのジメチロールアルカン酸;ジメチロールアルカン酸のアルキレンオキシド低モル付加物(末端官能基定量による数平均分子量500未満);ジメチロールアルカン酸のε−カプロラクトン低モル付加物(末端官能基定量による数平均分子量500未満);ジメチロールアルカン酸の酸無水物とグリセリンとから誘導されるハーフエステル類;ジメチロールアルカン酸の水酸基と、不飽和結合を有するモノマーと、カルボキシル基及び不飽和結合を有するモノマーと、をフリーラジカル反応させて得られる化合物などを挙げることができる。なかでも、ジメチロールプロパン酸、及びジメチロールブタン酸などのジメチロールアルカン酸が、入手の容易さ、酸価の調整のしやすさなどの観点から好適である。反応成分中の化合物(b)の含有量は、得られるポリウレタン(B)の水分散性と耐水性の両立といった観点から設定される。より具体的には、反応成分中の化合物(b)の含有量は、得られるポリウレタン(B)の酸価が2〜200mgKOH/gとなる量とすることが好ましく、5〜100mgKOH/gとなる量とすることがさらに好ましい。
【0076】
ポリオール(c)は単独で、又はポリアミン(d)と併用することにより、ポリウレタン(B)の主骨格を構成しうる成分である。ポリオール(c)としては、ウレタン合成に用いられている従来公知のポリオールを用いることができる。ポリオール(c)の具体例としては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、及びその他のポリオールなどを挙げることができる。
【0077】
ポリエステルポリオールとしては、脂肪族系ジカルボン酸(例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、グルタル酸、アゼライン酸など)及び/又は芳香族系ジカルボン酸(例えば、イソフタル酸、テレフタル酸など)と、低分子量グリコール(例えば、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,6−ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール,1,4−ビスヒドロキシメチルシクロヘキサンなど)と、を縮重合したものが例示される。
【0078】
このようなポリエステルポリオールの具体例としては、ポリエチレンアジペートジオール、ポリブチレンアジペートジオール、ポリヘキサメチレンアジペートジオール、ポリネオペンチルアジペートジオール、ポリエチレン/ブチレンアジペートジオール、ポリネオペンチル/ヘキシルアジペートジオール、ポリ−3−メチルペンタンアジペートジオール、ポリブチレンイソフタレートジオール、ポリカプロラクトンジオール、ポリ−3−メチルバレロラクトンジオールなどを挙げることができる。
【0079】
ポリエーテルポリオールの具体例としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、及びこれらのランダム/ブロック共重合体などを挙げることができる。
【0080】
ポリカーボネートポリオールの具体例としては、ポリテトラメチレンカーボネートジオール、ポリペンタメチレンカーボネートジオール、ポリネオペンチルカーボネートジオール、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール、ポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレンカーボネート)ジオール、及びこれらのランダム/ブロック共重合体などを挙げることができる。
【0081】
その他のポリオールの具体例としては、ダイマージオール、ポリブタジエンポリオール及びその水素添加物、ポリイソプレンポリオール及びその水素添加物、アクリルポリオール、エポキシポリオール、ポリエーテルエステルポリオール、シロキサン変性ポリオール、α,ω−ポリメチルメタクリレートジオール、α,ω−ポリブチルメタクリレートジオール、各種油脂変性ポリオールなどを挙げることができる。
【0082】
シロキサン変性ポリオールとして、具体的に以下の構造のものが使用できる。
【0083】
【化5】

【0084】
【化6】

【0085】
【化7】

【0086】
【化8】

【0087】
【化9】

【0088】
【化10】

【0089】
【化11】

【0090】
上記のシロキサン変性ポリオールは本発明において使用する好ましい化合物の一例であるが、本発明はこれらの例示の化合物にだけ限定されるものではない。列記したポリシロキサンはジメチルポリシロキサン化合物類を挙げているが、その他のフェニル系ポリシロキサン化合物等も使用可能である。
【0091】
これらの他にもポリシロキサンをラクトンで変性したポリラクトン(ポリエステル)−ポリシロキサンや、アルキレンオキサイドで変性したポリアルキレンオキサイド−ポリシロキサンなども好ましく使用される。ここで使用する好ましいラクトンは、β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、7−ヘプタノリド、8−オクタノリド、γ−バレロラクトン、γ−カプロラクトンおよびδ−カプロラクトンなどである。また、上記アルキレンオキサイドとしては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、α−ブチレンオキサイド、β−ブチレンオキサイド、ヘキセンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、スチレンオキサイド、α−メチルスチレンオキサイドなどが挙げられる。
【0092】
ポリオール(c)の数平均分子量(Mn、末端官能基定量による)は、特に限定されないが、500〜6,000であることが好ましい。ポリオール(c)の数平均分子量(Mn)が6,000超であると、ウレタン結合の凝集力が発現し難くなって機械特性が低下する傾向にあり、一方、数平均分子量が、500に達しないものを単独で使用すると柔軟性や接着性が低下するおそれがある。
【0093】
また、結晶性ポリオールの場合、Mnが3,500以上となると皮膜化した際に白化現象を引き起こす場合があるので単独使用の場合Mn3、000以下のものを使用するのが好ましい。なお、ポリオール(c)は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0094】
ポリアミン(d)は単独で、又は上記のポリオール(c)と併用することで、ポリウレタン(B)の主骨格を構成しうる成分である。ポリアミン(d)の具体例としては、
長鎖アルキレンジアミン、ポリオキシアルキレンジアミン、末端アミンポリアミド、シロキサン変性ポリアミン類などを挙げることができる。
【0095】
シロキサン変性ポリアミンは、具体的に以下のものが使用できる。
【0096】
【化12】

【0097】
【化13】

【0098】
【化14】

【0099】
【化15】

【0100】
【化16】

【0101】
【化17】

【0102】
上記のシロキサン変性ポリアミンは本発明において使用する好ましい化合物の一例であるが、本発明はこれらの例示の化合物にだけ限定されるものではない。列記したポリシロキサンはジメチルポリシロキサン化合物類を挙げているが、その他のフェニル系ポリシロキサン化合物等も使用可能である。
【0103】
上記化合物(c)、又は(d)の一部又は全量成分として導入されるシロキサン変性物は、前記ポリウレタン(B)に対し、1〜50質量%導入されているのが好ましい。シロキサン変性物がポリウレタン(B)の1質量%以下の場合、シロキサン変性物による耐摩耗性、耐滑り性、耐低温特性等の性能を発現することが難しく、一方50質量%以上の場合は、シロキサンが多いことにより機械物性の低下、相溶性の問題が発生する。
【0104】
ポリイソシアネート(e)としては、ポリウレタンの製造に用いられている従来公知のポリイソシアネートを用いることができる。ポリイソシアネート(e)の具体例としては、トルエン−2,4−ジイソシアネート、4−メトキシ−1,3−フェニレンジイソシアネート、4−イソプロピル−1,3−フェニレンジイソシアネート、4−クロル−1,3−フェニレンジイソシアネート、4−ブトキシ−1,3−フェニレンジイソシアネート、2,4−ジイソシアネートジフェニルエーテル、4,4' −メチレンビス(フェニレンイソシアネート)(MDI)、ジュリレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート、ベンジジンジイソシアネート、o−ニトロベンジジンジイソシアネート、4,4' −ジイソシアネートジベンジルなどの芳香族ジイソシアネート;メチレンジイソシアネート、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、1,10−デカメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート;1,4−シクロヘキシレンジイソシアネート、4,4−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,5−テトラヒドロナフタレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添MDI、水添XDIなどの脂環式ジイソシアネート;これらのジイソシアネートと、低分子量のポリオール又はポリアミンとを、末端がイソシアネートとなるように反応させて得られるポリウレタンプレポリマーなどを挙げることができる。耐候性に優れたポリマー組成物を得るといった観点からは、脂肪族ジイソシアネート、及び脂環式ジイソシアネートが好ましい。
【0105】
なお、ポリウレタン(B)を得るための反応成分として、必要に応じて、短鎖ジオール成分(f)及び/又は短鎖ジアミン成分(g)を用いることも好ましい。短鎖ジオール成分(f)の具体例としては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,6−ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコールなどの脂肪族グリコール及びそのアルキレンオキシド低モル付加物(末端官能基定量による数平均分子量500未満);1,4−ビスヒドロキシメチルシクロヘキサン、2−メチル−1,1−シクロヘキサンジメタノールなどの脂環式グリコール及びそのアルキレンオキシド低モル付加物(数平均分子量500未満、同上);キシリレングリコールなどの芳香族グリコール及びそのアルキレンオキシド低モル付加物(数平均分子量500未満、同上);ビスフェノールA、チオビスフェノール、スルホンビスフェノールなどのビスフェノール及びそのアルキレンオキシド低モル付加物(数平均分子量500未満、同上);C〜C18のアルキルジエタノールアミンなどのアルキルジアルカノールアミンなどを挙げることができる。
【0106】
なお、短鎖ジオール成分(f)として、多価アルコール系化合物を用いることもできる。このような多価アルコール系化合物の具体例としては、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、トリス−(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、1,1,1−トリメチロールエタン、1,1,1−トリメチロールプロパンなどを挙げることができる。なお、短鎖ジオール成分(f)としてポリオールを用いる場合には、そのようなポリオールとしてはジオール化合物が好ましい。これらの短鎖ジオール成分(f)は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0107】
短鎖ジアミン成分(g)の具体例としては、メチレンジアミン、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミンなどの脂肪族ジアミン化合物;フェニレンジアミン、3,3' −ジクロロ−4,4' −ジアミノジフェニルメタン、4,4' −メチレンビス(フェニルアミン)、4,4' −ジアミノジフェニルエーテル、4,4' −ジアミノジフェニルスルホンなどの芳香族ジアミン化合物;シクロペンチルジアミン、シクロヘキシルジアミン、4,4' −ジアミノジシクロヘキシルメタン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミンなどの脂環式ジアミン化合物などを挙げることができる。さらには、ヒドラジン、カルボジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、フタル酸ジヒドラジドなどのヒドラジン類を、短鎖ジアミン成分(g)として用いることができる。なお、水分散させたプレポリマーの鎖伸長剤として短鎖ジアミン成分(g)を用いる場合には、短鎖ジアミン成分(g)は水溶性であることが好ましい。なお、短鎖ジアミン成分(g)としてポリアミンを用いる場合には、そのようなポリアミンとしてはジアミン化合物が好ましい。これらの短鎖ジアミン成分(g)は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0108】
(ポリウレタン(B)のディスパージョンの製造方法)
ポリウレタン(B)は、従来公知のポリウレタンの製造方法により製造することができる。具体的には、先ず、分子内に活性水素を含まない有機溶剤の存在下又は不存在下、化合物(b)と、ポリオール(c)及び/又はポリアミン(d)と、ポリイソシアネート(e)と、鎖伸長剤として必要に応じて用いられる短鎖ジオール成分(f)とからなる反応成分を反応させて反応物(例えばプレポリマー)を得る。反応成分は、一般的には末端イソシアネート基を有するプレポリマーが形成される配合組成とすればよい。また、ワンショット法又は多段法により、通常20〜150℃、好ましくは60〜110℃で、理論イソシアネート%となるまで反応させればよい。
【0109】
得られた反応生成物(プレポリマー)に水と中和剤を添加して乳化させれば、ポリウレタン(B)のディスパージョン(水分散体)を得ることができる。中和剤としては、紫外線吸収型ポリマー(A)の水分散体を調製する際に用いられるものと同様の有機アミン類、アルカリ金属、無機アルカリ類を用いることができる。ポリウレタン(B)のディスパージョンは、ウレタンプレポリマーに水と中和剤を添加して乳化させることにより製造することができる。
【0110】
具体的には、合成完了したプレポリマーを約50℃以下にて設定し、攪拌条件下に
水と中和剤の混合水を添加して均一になる迄攪拌することによって得られる。
この際、中和剤を先にプレポリマーへ添加して均一となった後に水を添加しても良い。
【0111】
なお、必要に応じて、プレポリマーに短鎖ジアミン成分(g)を反応させて所望の分子量となるように鎖伸長させてもよい。また、化合物(b)、ポリオール(c)、ポリアミン(d)、短鎖ジオール成分(f)、及び短鎖ジアミン成分(g)の合計の活性水素含有基(アニオン性親水性基を除く)(1)と、ポリイソシアネート(e)のイソシアネート基(2)とを、(1)/(2)=0.9〜1.5の当量比(モル比)で反応させることが好ましい。さらに、必要に応じて脱溶剤することで、ポリウレタン(B)を得ることもできる。
【0112】
上記のようにして得られるポリウレタン(B)の重量平均分子量(Mw)は1,000〜500,000であることが、ポリウレタンの柔軟性、接着性、及び耐摩耗性などの特性がより有効に発揮されるために好ましい。
【0113】
本発明では、ウレタン合成において、必要に応じて触媒を使用できる。例えば、ジブチルチンラウレート、ジオクチルチンラウレート、スタナスオクトエート、オクチル酸亜鉛、テトラn−ブチルチタネートなどの金属と有機及び無機酸の塩、及び有機金属誘導体、トリエチルアミンなどの有機アミン、ジアザビシクロウンデセン系触媒などが挙げられる。
【0114】
ポリウレタン(B)は、溶剤を用いずに合成しても、有機溶剤を用いて合成してもよい。有機溶剤としては、イソシアネート基に対して不活性な有機溶剤、又はイソシアネート基に対して反応成分よりも低活性な有機溶剤を用いることができる。有機溶剤の具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶剤;トルエン、キシレン、スワゾール(商品名、コスモ石油社製)、ソルベッソ(商品名、エクソン化学社製)などの芳香族系炭化水素溶剤;n−ヘキサンなどの脂肪族系炭化水素溶剤;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール系溶剤;ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチルなどのエステル系溶剤;エチレングリコールエチルエーテルアセテ−ト、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、エチル−3−エトキシプロピオネートなどのグリコールエーテルエステル系溶剤;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド系溶剤;N−メチル−2−ピロリドンなどのラクタム系溶剤などを挙げることができる。これらのなかでも、溶剤回収の容易さ、反応成分の溶解性、反応性、沸点、及び水への乳化分散性などを考慮すれば、メチルエチルケトン、酢酸エチル、アセトン、及びテトラヒドロフランが好ましい。
【0115】
なお、ウレタン合成において、イソシアネート基がポリマー末端に残った場合、イソシアネート基の停止反応を行うことも好ましい。イソシアネート基の停止反応は、イソシアネート基との反応性を有する化合物を用いて行うことができる。このような化合物としては、モノアルコール、モノアミンなどの単官能性の化合物;イソシアネートに対して異なる反応性を有する二種の官能基を有する化合物を用いることができる。このような化合物の具体例としては、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコールなどのモノアルコール;モノエチルアミン、n−プロピルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、ジ−n−ブチルアミンなどのモノアミン;モノエタノールアミン、ジエタノールアミンなどのアルカノールアミンなどを挙げることができる。これらのなかでもアルカノールアミンが、反応制御が容易であるために好ましい。
【0116】
(ポリマー組成物及びその製造方法)
紫外線吸収型ポリマー(A)の溶液又は水分散体と、ポリウレタン(B)のディスパージョンとを混合することで、ポリマー組成物を製造することができる。また、ポリウレタン(B)を調製する工程の中間段階で、紫外線吸収型ポリマー(A)の溶液又は水分散体と混合することも好ましい態様である。より具体的には、(1)ポリウレタン(B)のプレポリマー反応の終了後、プレポリマーを水に乳化(分散)させる前の段階、又は(2)プレポリマーを水に乳化(分散)させた後であって鎖伸長反応を行う前の段階で、紫外線吸収型ポリマー(A)の溶液又は水分散体を添加し、その後、必要に応じて鎖伸長反応を行えばよい。このように、ポリウレタン(B)のディスパージョンを調製する途中の段階で、紫外線吸収型ポリマー(A)の溶液又は水分散体を添加して混合すると、ショック凝集が極めて発生し難くなる。また、紫外線吸収型ポリマー(A)とポリウレタン(B)との相溶性がさらに向上する。そして、このようにして得られたポリマー組成物を塗料とする場合、均一で強靭な塗膜を形成することができ、熱可塑性ポリオレフィンからなる自動車内装材料塗料として適切である。
【0117】
本発明の塗料組成物に含まれる紫外線吸収型ポリマー(A)の割合は、ポリマー組成物中の全樹脂成分に対して0.1〜50質量%とすることが好ましく、1〜50質量%とすることがさらに好ましい。また、ポリマー組成物には、その水分散安定性や相溶性などを損なわない範囲で、その他樹脂、酸化防止剤、光安定剤、難燃剤、帯電防止剤、フィラー、着色剤、架橋剤などの従来公知の添加剤を添加し、性能向上を図る、或いは機能性又は意匠性を付与したプラスチック材料用塗料組成物とすることができる。
【0118】
次に、本発明に係る塗料組成物に使用するポリウレタンゲル粒子(C)について説明する。該粒子(C)においては、ポリウレタンゲル粒子(D)を被覆しているポリウレアコロイド粒子(E)が、溶媒に対して溶媒和されている部分と非溶媒和部分とから構成されており、非溶媒和部分の粒子径が0.01〜1.0μmであること、前記粒子(E)が、油脂変性ポリオールとポリイソシアネートとポリアミンとの反応で得られる粒子であって、非溶媒和部分がウレア結合の水素結合からなっていることが好ましく、また、前記粒子(C)は、その粒子径が0.5〜100μm、特に1〜50μmの範囲であることが好ましい。粒子経が0.5μmに達しないと、防眩性欠如となり、一方、100μmを超えると、接着性、摩耗性、触感性が低下するおそれがあり、いずれの場合においても本発明の課題を解決することが困難となるおそれがある。ここで該粒子(C)の粒径は日機装株式会社製、マイクロトラックMT300にてn−オクタンを溶剤として25℃にて測定されたレーザー散乱法による平均粒子経である。同様に該粒子(E)の粒径は日機装株式会社製、マイクロトラックUPA−EX150にてn−オクタンを溶剤として25℃にて測定されたレーザー散乱法による平均粒子経である。
【0119】
更に、粒子(C)は、粒子集合体として用いられ、塗料組成物中の紫外線吸収型ポリマー(A)とポリウレタン(B)の合計量を基準として3〜200質量%含有していることが好ましい。さらに好ましくは、10〜180質量%であり、特に好ましい範囲は、30〜150質量%である。粒子(C)の含有量が、3質量%未満においては、その塗料組成物を用いた塗料成型物の防眩性を欠如するおそれがあり、一方、200質量%を超えると塗膜強度が低下し、接着性、摩耗性の低下等の問題が生ずるので、粒径の場合と同様に本発明の課題を解決する上で困難となるおそれが生ずる。
【0120】
以上のポリウレタン粒子(C)は、その原材料であるポリイソシアネート(以下「化合物e' 」という場合がある)と、水酸基やアミノ基等の活性水素含有基を有する化合物(以下「化合物i' 」という場合がある)とを、ポリウレアコロイド溶液(粒子(E)の分散液)を分散剤として、不活性溶媒中に乳化分散させて重合することで得られる。この際、上記ポリウレアコロイド溶液が、原料である化合物e' と化合物i' とを不活性溶媒中に容易に粒子状に乳化することが重要である。
【0121】
また、この状態で化合物e' と化合物i' とを重合反応して、粒子(D)を生成し、生成した粒子(D)の周囲には、上記ポリウレアコロイド溶液から析出した粒子(E)が均一に付着しており、粒子(C)を分散溶媒から分離した状態において、粒子(D)が上記粒子(E)によって均一に被覆されている。
【0122】
さらに、従来の粒子(D)または(C)の合成過程においては、通常著しい粘度上昇が発生するが、ポリウレアコロイド溶液の存在下に上記粒子(D)を合成すると、合成過程において重合液の著しい粘度上昇は発生せず、生成した粒子(C)が凝集することなく、優れた分散安定性を維持するという特徴がある。この作用は従来公知の有機系乳化剤や分散安定剤とは根本的に異なる作用である。
【0123】
本発明で使用する粒子(C)は上記方法によって得られるが、好ましい方法は、ポリウレアコロイド溶液を、撹拌機や乳化機付きのジャケット式合成釜中の不活性溶媒中に仕込み、この中に少なくともいずれか一方が3官能以上である化合物e' と化合物i' とを、不活性溶媒溶液に添加および乳化し、これらの合成原料を反応させて粒子(C)を合成する方法や、少なくとも一方が3官能以上である化合物e' と化合物i' とを夫々別個に、ポリウレアコロイド溶液の存在下に不活性溶媒中に乳化させ、これらを反応させる方法などが挙げられる。
【0124】
上記合成方法における合成温度は特に限定されないが、好ましい温度は40℃〜140℃である。また、合成時に使用するポリウレアコロイド溶液は、その固形分としての使用量は、少なくともいずれか一方が3官能以上である化合物e' と化合物i' とを夫々100質量部当たり0.01質量部以上を使用することができ、好ましくは0.1〜20質量部である。使用量が0.01質量部未満では生成する粒子(C)の安定性が不十分で、合成過程で粒子(D)の大きい凝集塊が発生し、目的とする粒子(C)の分散体が得難い。一方、使用量が20質量部を越えると、ポリウレタンの原料(化合物e' と化合物i' )の乳化性には問題はなく、粒子(C)の分散体は製造することができるが、乳化剤としての作用として過剰な量であり特に利点はない。化合物e' と化合物i' の不活性溶媒中における濃度は、低い程小さい粒径の粒子(C)が得られ易いが、生産性から好ましい濃度は20〜70質量部である。
【0125】
粒子(D)の合成に使用される化合物i' としてのポリオールとしては、前記化合物c又は、fと同様な短鎖ジオール、多価アルコールおよび高分子ポリオールなどの従来公知のものが挙げられる。これらのポリオールの分子量は特に限定されないが、化合物e' と反応するものは全て使用可能であり、通常数平均分子量は500〜3,000程度が好ましい。また、これらのポリオールは単独或いは2種類以上を組み合わせて使用することができる。ポリオールしては、活性水素含有基が2個以上のポリオールが好ましく、特に好ましいのは3個以上の活性水素含有基を有するポリオールである。
【0126】
また、化合物i' としてのポリアミンとしては前記化合物d又はgと同様な短鎖ジアミン、高分子ポリアミンなどが使用できる。これらのポリアミンとしては、活性水素含有基が2個以上のポリアミンが好ましく、特に好ましいのは3個以上の活性水素含有基を有するポリアミンである。
【0127】
前記粒子(D)の合成に使用する化合物e' としては、前記化合物eと同様のものがいずれも使用でき特に限定されない。また、化合物e' をイソシアヌレート体、ビューレット体、アダクト体、ポリメリック体とした多官能のイソシアネート基を有するもので従来から使用されている公知のものが使用でき特に限定されない。例えば、2,4−トルイレンジイソシアネートの二量体、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス−(p−イソシアネートフェニル)チオフォスファイト、多官能芳香族イソシアネート、多官能芳香族脂肪族イソシアネート、多官能脂肪族イソシアネート、脂肪酸変性多官能脂肪族イソシアネート、ブロック化多官能脂肪族イソシアネートなどのブロック型ポリイソシアネート、ポリイソシアネートプレポリマーなどが挙げられる。
【0128】
これらのうち、芳香族系或いは脂肪族系のどちらでも使用可能であり、好ましくは芳香族系ではジフェニルメタンジイソシアネートおよびトリレンジイソシアネート、脂肪族系ではヘキサメチレンジイソシアネートおよびイソホロンジイソシアネートなどの変性体であり、分子中にイソシアネート基を3個以上含むものが好ましく、前記ポリイソシアネートの多量体や他の化合物との付加体、さらには低分子量のポリオールやポリアミンとを末端イソシアネートになるように反応させたウレタンプレポリマーなども好ましく使用される。それらを下記に構造式を挙げて例示するが、これらに限定されるものではない。
【0129】
【化18】

【0130】
【化19】

【0131】
【化20】

【0132】
【化21】

【0133】
【化22】

【0134】
【化23】

【0135】
【化24】

【0136】
前記の化合物e' と化合物i' の種類、使用量および使用比率は、得られる粒子(C)の使用目的によって決定されるが、いずれか一方の成分が3官能以上であることが必要である。例えば、化合物e' が2官能である場合には、化合物i' が3官能以上であり、また、化合物i' 2官能である場合には、3官能以上化合物e' が必要であり、使用目的に応じて使用する官能基数を使い分ける。勿論、全ての成分が3官能以上であってもよい。また、NCO/OH比は、使用する前記原料化合物と得られる粒子(C)に要求される性能によって決定されるが、好ましくは0.5〜1.2の範囲である。
【0137】
前記粒子(C)の合成反応に使用し、生成する粒子(C)の分散体の連続相を形成する不活性溶媒は、生成する粒子(D)に対して実質的に非溶媒でありかつ活性水素を有しないものである。その例として、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、石油エーテル、石油ベンジン、リグロイン、石油スピリット、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、トルエン、キシレン、脂環族炭化水素の構造を有するエチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサンなどの炭化水素、ジメチルポリシロキサンなどの単独または混合物が挙げられ、これらの不活性溶媒は、該不活性溶媒と合成された粒子(C)の分離工程の生産性の点からは150℃以下の沸点を有するものが好ましい。前記粒子Aの合成に際しては公知の触媒を使用すれば低温でもよいが、作業面から40℃以上の反応温度が好ましい。
【0138】
前記粒子(D)の合成時に乳化剤として使用するポリウレアコロイド溶液中の粒子(E)は、溶媒に対して溶媒和されている部分と非溶媒和部分とから構成されており、非溶媒和部分の粒子径が好ましくは0.01μm〜1.0μmの粒子であり、かかるポリウレアコロイド溶液は、例えば、非水溶媒中で、油脂変性ポリオールと化合物e' (またはこれらの化合物からなる末端NCOプレポリマー)とポリアミンとの反応で得られる。
【0139】
この反応では、反応が進むにつれて、ウレア結合同士の水素結合により、溶媒中に不溶解のウレアドメインが形成され、同時に油脂変性ポリオール鎖が溶媒中で溶媒和されることにより、非溶解性のウレアドメインの凝集などによる粒子(E)の巨大化が防止され、安定なポリウレアコロイド溶液が容易に得られる。
【0140】
さらに、使用する油脂変性ポリオールが、非水溶媒中での結晶性が少なく、反応が進むにつれて生じる高分子化の過程でも、溶媒中で油脂変性ポリオールを主体とするポリマー鎖がある程度自由に動き得るために、非溶解性結晶部分と溶解性非結晶部分の分離が容易に行われ、ウレア結合同士の水素結合による非溶解性結晶部分を粒子(E)の中心とするウレアドメインを形成し、その周囲に溶媒和されたポリマー鎖が規則正しく外向きに配向される。これは従来のミセル下に重合することにより得られる公知のコロイド溶液の製造方法における界面活性剤とは根本的に異なる作用である。
【0141】
前記ポリウレアコロイド溶液の製造方法をさらに具体的に説明する。先ず、最初に油脂変性ポリオールと化合物e' とを非水溶媒中または無溶媒で反応させ、NCO基を有するプレポリマーを合成する。次にこのプレポリマーを撹拌機付きのジャケット式合成釜に仕込み、濃度が5〜70質量%になるように非水系溶媒を添加して濃度を調整する。この溶液を撹拌しながら、予め1〜20質量%の濃度に調整したポリアミンの溶液を徐々に添加し反応を行い、ポリウレア化反応においてポリウレアコロイド溶液を製造する。
【0142】
ポリアミンの添加方法は、上記の方法の他にポリアミン溶液に前記プレポリマーまたはその溶液を添加する方法でもよい。ポリマー合成のための温度は特に限定されないが、好ましい温度は20〜120℃である。ポリマー合成のための反応濃度、温度、撹拌機の形態、撹拌力、ポリアミン溶液およびプレポリマーまたはその溶液の添加速度などは特に限定されないが、ポリアミンとプレポリマーのイソシアネート基との反応は速いので、急激な反応が行われないように、反応を制御することが好ましい。
【0143】
ポリウレアコロイド溶液の製造に使用する油脂変性ポリオールは、官能基が2個以下のポリオールであって、好ましい分子量は700〜3,000であるが、これに限定されない。油脂変性ポリオールの具体例としては、例えば、各種の油脂を低級アルコールやグリコールを用いてアルコリシス化する方法、油脂を部分鹸化する方法、水酸基含有脂肪酸をグリコールによりエステル化する方法などによって、油脂に約2個以下の水酸基を含有させたものが好ましく、上記の水酸基含有脂肪酸としては、例えば、リシノレイン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、ヒマシ油脂肪酸、水添ヒマシ油脂肪酸などが挙げられる。
【0144】
油脂変性ポリオールと化合物e' との反応は、1<NCO/OH≦2の条件で行い、溶媒和されるプレポリマー鎖の分子量をコントロールする。このように合成されるプレポリマーの分子量は、特に限定されないが、好ましい範囲は約500〜15,000である。上記で使用される化合物e' としては、前記化合物eと同様のものがいずれも使用でき特に限定されるものではない。特に好ましいものはヘキサメチレンジイソシアネート、水添加TDI、水添加MDI、イソホロンジイソシアネート、水添XDIなどの脂肪族または脂環族系ジイソシアネートである。
【0145】
ポリウレアコロイド溶液の製造に使用する非水系溶媒としては、使用原料である油脂変性ポリオール、ジイソシアネートおよびポリアミンを溶解するもので、活性水素を有さない全ての非水系溶媒を使用することができる。特に好ましいものはペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、石油エーテル、石油ベンジン、リグロイン、石油スピリット、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、トルエン、キシレン、脂環族炭化水素の構造を有するエチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサンなどの炭化水素、ジメチルポリシロキサンなどの単独または混合物が挙げられる。なお、本発明において「溶解」とは常温および高温下での溶解の両方を包含する。
【0146】
ポリウレアコロイド溶液の製造に使用するポリアミンとして、前記本発明の樹脂または粒子(D)の製造に使用するポリアミンが挙げられ、これらは単独で或いは2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0147】
ポリウレアコロイド溶液の製造に使用する油脂変性ポリオール、ポリイソシアネート、ポリアミン、得られるプレポリマーの種類、使用量および使用比率は、使用する溶媒中での粒子(E)の大きさおよび安定性などを制御する目的で決定される。すなわち、前記のポリウレアコロイド溶液中の粒子(E)は、溶媒中で溶媒和されない結晶部分のウレアドメインと、そのウレアドメインから伸びて溶媒中で溶媒和されたポリマー鎖により形成されている。
【0148】
ポリウレアコロイド溶液中の粒子(E)のウレアドメインの大きさおよび溶媒和されたポリマー鎖の大きさと形態がポリウレアコロイド溶液の性質を左右する。このように、ウレアドメインと溶媒和されたポリマー鎖とで形成された粒子(E)は、溶媒中で安定なポリウレアコロイド溶液であり、その溶液中の粒子(E)のウレアドメインの粒径は、通常0.01〜1.0μmであり、溶媒和されているポリマー鎖の1個の分子量は約500〜15,000であり、両者の質量比はウレアドメイン(ウレア結合またはポリアミン)/ポリマー鎖が0.5〜30の範囲が好ましい。ウレア結合の割合が上記範囲未満であると、得られる粒子(E)中の非溶媒和性ウレアドメインが形成されにくく、粒子(E)が非水溶媒に溶解し易くなり、良好なポリウレアコロイド溶液が生成されない。一方、ウレア結合の割合が上記範囲を越えると、非溶媒和性ウレアドメインが大きくなり、得られるポリウレアコロイド溶液の安定性が低下し、粒子(E)の凝集が生じ易くなる。
【0149】
本発明で使用する粒子(E)の溶媒中における形態は、図1に示すようなものと想像される。この粒子(E)の粒径の制御については、溶媒和したポリマー部分とウレアドメインを含んだ粒子(E)全体の大きさと、溶媒和したポリマー部分とウレアドメインのそれぞれの大きさについて、両者ともに制御が可能である。なお、先に記載の粒子(E)の粒径は、ウレアドメイン部分を表現している。
【0150】
安定に制御されたポリウレアコロイド溶液を製造するためには、図1のように、溶媒和したポリマー部分とウレアドメイン部分が明瞭に相分離しているのが望ましく、そのためには溶媒和されるポリマー鎖と結晶部分のウレアドメインとが混在しないように製造することが必要である。このためには、合成過程で溶媒和したポリマー部分とウレアドメイン部分が分離しやすい合成条件が要求される。
【0151】
ポリウレアコロイド溶液の合成は、NCO基を有するプレポリマーの溶液およびポリアミンの溶液の両方の濃度が低く、一方の溶液に他方の溶液を添加する添加速度が遅いほど良好な結果が得られ、撹拌はプロペラミキサー撹拌で充分である。また、原料溶液の濃度が高い場合や溶液の添加速度が速い場合には、ホモジナイザーなどの使用による高剪断力の混合を行いながら合成することが好ましい。反応温度は使用する溶媒の種類と、その溶媒に対するウレアドメインの溶解度により決まるが、好ましい温度は合成を制御し易い20〜120℃であるが、この温度範囲に特に限定されない。ウレアドメインの形成は合成過程で形成する方法、或いは高温で合成したものを冷却過程で形成する方法でもよい。
【0152】
ポリウレアコロイド溶液中の粒子(E)の重要な因子は、その表面基の種類および濃度であり、さらには不活性溶媒中における分散性と分散粒径である。すなわち、ポリウレアコロイド溶液の乳化剤としての作用は、W/O、O/O型の乳化剤であり、ポリイソシアネート、活性水素を有する化合物の親水性、疎水性の強さと不活性溶媒との相関性で作用する。これらの条件を加味して検討を加えた結果として、ポリイソシアネート、活性水素を有する化合物に対するポリウレアコロイド溶液の添加量の調整で、粒子(C)の粒径をコントロールすることが可能であり、前記の範囲で添加量が多い程粒径は小さくなり、少ない程粒径が大きくなる。
【0153】
以上の如き原材料から得られた粒子(C)の分散溶液から、常圧または減圧下で不活性溶媒を分離することによって、前記の粒子(C)が得られる。粒子化に用いる装置としてスプレイドライヤー、濾過装置付き真空乾燥機、撹拌装置付真空乾燥機、棚式乾燥機など公知のものがいずれも使用でき、好ましい乾燥温度は不活性溶媒の蒸気圧、ゲル粒子の軟化温度、粒径などに影響されるが、好ましくは減圧下40〜130℃である。
【0154】
このようにして製造された粒子(C)の粒径は、0.5μm〜100μmで円形度が0.9〜1.0の真球状である。粒径のコントロールは、ポリウレタンの組成が同一の場合、合成釜の乳化型式(プロペラ式、錨型式、ホモジナイザー、螺旋帯式など)および撹拌力の大小に左右されるが、特に不活性溶媒中のポリイソシアネートと活性水素を有する化合物の濃度、ポリウレアコロイド溶液の種類および添加量に影響される。ポリイソシアネートと活性水素を有する化合物を乳化するための機械的撹拌や剪断力は乳化の初期段階で決定され、これが強力な程分散体の粒径が小さくなる。その後の撹拌および剪断力は大きくは影響しない。かえってその力が強すぎると分散体同士の凝集を促進することになり好ましくない。
【0155】
これらの粒子(C)は、図2の電子顕微鏡写真(倍率500倍)に示すように、ほぼ完全に真球状の粒子であり、図3の想像図に示す如く個々の粒子(D)の表面にはポリウレアコロイド溶液から析出した粒子(E)が付着或は被覆されており、かつ粒子(E)が非粘着性と耐熱性に優れているため、該粒子(C)を分散溶媒から単に除去するのみで極めて流動性に富んだ粒子(C)となり、粒子化に当たっては従来技術における如き煩雑かつコスト高な粉砕工程や分級操作を何ら要しないなどの種々の利点を有している。
【0156】
さらに、粒子(C)は、[円形度=円相当径から求めた円の周囲長/粒子投影の周囲長]で示される円形度が0.9〜1.0であることが好ましい。ここで円形度は、株式会社セイシン企業の粒子形状画像解析装置PITA−1により上記式で算出されるものであり、円形度を円相当径(実際に撮像された周囲長と同じ投影面積をもつ真円の直径)から算出された周囲長を実際に撮像された粒子の周囲長で割った値として定義し、真円で1になり、形状が複雑になるほど小さい値となる。このため、円形度は0.9以上の極めて球状性が高い粒子が好ましく、粒子を水などに分散した分散体は、電荷的反発により、極めて安定的に分散しており、製品に使用した際には分散安定性、増粘効果を有する。なお、円形度が0.9より小さい粒子(C)の場合には球形でなくなり、安定的な分散性を喪失するとともに、該粒子(C)を含む塗料組成物はざらつき感が生じる。
【0157】
さらに、粒子(C)の圧縮強度は0.01から1.0MPaであり、回復率が60から100%の範囲であることが好ましい。圧縮強度は、粒子(C)は、粒子(D)が粒子(E)によって被覆されたポリウンタンゲル粒子であることから、0.01MPa以上で十分なさらさら感を得ることができ、ソフトタッチ感、滑り性、ヌメリ感を得る観点から粒子(C)の圧縮強度は1MPa以下が好ましい。
【0158】
さらに、粒子(C)の回復率は、圧力により変形した場合、力が解放されると同時に、元の形状に復元することが求められ、60から100%の範囲であることが好ましい。ここで圧縮強度および回復率とは、樹脂粒子を株式会社島津製作所の微小圧縮試験機MCT−W500にて圧縮試験を行った場合に、粒子径に対して10%変形したときの荷重と粒子径から式[圧縮強度(MPa)=2.8×荷重(N)/{π×粒子径(mm)×粒子径(mm)}]によって算出される値である。
【0159】
さらに、粒子(C)の回復率は、粒子に50mNの圧力をかけ、変位した距離(L1)と圧力を解放したときに変位した距離(L2)から式[回復率(%)=L2/L1×100]によって計算される値である。なお、樹脂粒子の圧縮強度および回復率は、粒子(D)の構成成分である化合物e' および化合物i' の種類と配合量を制御することにより調節できる。
【0160】
本発明の塗料組成物の必須成分は上記の通りであるが、本発明の目的達成を妨げない範囲で、従来公知の樹脂や各種の添加剤、例えば、酸化防止剤(ヒンダードフェノール系、ホスファイト系、チオエーテル系など)、光安定剤(ヒンダードアミン系など)、紫外線吸収剤(ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系など)を本件に紫外線吸収ポリマーとの併用、ガス変色安定剤(ヒドラジン系など)、金属不活性剤などやこれら2種類以上の併用が挙げられる。さらに意匠性付与剤(有機微粒子、無機微粒子)、防黴剤、難燃剤やその他の添加剤を適宜使用することができる。有機微粒子、無機微粒子としては、例えば、シリカ、シリコーン樹脂微粒子、フッ素樹脂微粒子、アクリル樹脂微粒子、ウレタン系樹脂微粒子、シリコーン変性ウレタン系樹脂微粒子、ポリエチレン微粒子、反応性シロキサンなどを含み得る。
【0161】
本発明の塗料組成物が塗布されるプラスチックとしては、例えば、オレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン系など)、エチレンプロピレンジエン系樹脂、スチレンアクリロニトリル系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ノルボルネン系樹脂、セルロース系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリビニルホルマール系樹脂、ポリビニルブチラール系樹脂、ポリビニルピロリドン系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル、エンジニアプラスチック、生分解性プラスチックなどの従来公知の各種のプラスチック成型品が挙げられ、特に自動車用の内装材として使用される熱可塑性ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリプロピレンなどのプラスチック成型品が挙げられる。例えば、TPO基材シートの場合、コロナ放電処理されたTPO基材シート上に2液型とした本発明の塗料をスプレー塗装やグラビア塗装により塗工した後に、真空成型して車輌内装材の成型物を製造することができる。
【0162】
また、プラスチック成型品に本発明の塗料組成物を直接塗工する方法や、金型上に本発明の塗料組成物をスプレー塗装後に、ポリプロピレンやウレタン系樹脂などを金型に入れるモールド成型法なども有用である。ただし、接着性の劣るポリプロピレン成型品に本発明の塗料組成物を塗布する場合には、予めプラスチック成型品の表面をプライマー処理することもできる。
【0163】
本発明の塗料組成物をTPOシート上に塗布(固形分厚み3〜25μm)した後に、90〜120℃1〜3分間乾燥した後、160〜220℃下で真空成型することで、本発明の塗料からなる塗膜形成した車輌内装用の成型物が得られる。
【0164】
以上の本発明の塗料組成物は、塗装の際に使用する有機溶剤などの揮発性有機溶剤(VOC)を含んでおらず、環境対応型の自動車内装材に適合した塗料組成物である。しかしながら、公知の如き、塗装性や乾燥性を向上させる目的として有機溶剤を併用することも可能である。また、以上の如くして得られたプラスチック成型品は、本発明の塗料からなる塗膜によって低摩擦性、ブロッキング防止性、摺動性、弾性、耐摩耗性、低温特性、耐候性が良好であり、かつ機械的特性、伸縮性、回復性、基材との密着性、耐屈曲性、滑り性、耐熱性、低温特性、耐溶剤性、耐薬品性、耐加水分解性、耐スクラッチ性、撥水性、耐水性、防汚染性、断熱性に優れており、特に光硬化型シロキサン変性ウレタン系樹脂とポリウレタンゲル粒子との組み合わせによりソフトタッチで、ブロッキング防止性、耐摩耗性や摺動性、耐水性、耐薬品性、耐スクラッチ性、低温特性、弾性、変形回復が非常に向上しているプラスチック塗装品が提供される。
【0165】
本発明の塗料組成物は、架橋剤を添加することにより耐久性がさらに向上した塗膜を得ることができる。特に、紫外線吸収型ポリマー(A)及びポリウレタン(B)の分子中に存在するカルボキシル基と反応しうる架橋剤を使用し、紫外線吸収型ポリマー(A)とポリウレタン(B)とを架橋反応させることが好ましい。またイソシアネート架橋剤を使用して架橋反応させることも好ましい。
【0166】
架橋剤としては、オキサゾリン化合物、水系エポキシ化合物、水系カルボジイミド化合物、アジリジン化合物、水系イソシアネート化合物、金属錯体系架橋剤などの従来公知の架橋剤を用いることができる。これらの架橋剤のなかでも、エポキシ化合物、カルボジイミド化合物、アジリジン化合物、オキサゾリン化合物、イソシアネート化合物が好ましい。架橋剤として用いることのできるエポキシ化合物の市販品としては、「jER」(三菱化学社製)などを挙げることができる。カルボジイミド化合物の市販品としては、「カルボジライト」(日清紡ケミカル社製)などを挙げることができる。アジリジン化合物の市販品としてはとしては、「ケミタイト」(日本触媒社製)などを挙げることができる。オキサゾリン化合物の市販品としては、「エポクロス」(日本触媒社製)などを挙げることができる。イソシアネート化合物の市販品としては、「デュラネート」(旭化成ケミカルズ社製)などを挙げることができる。
【0167】
これらの架橋剤は、適量であれば耐熱性や耐候性の向上に有効である。但し、架橋剤の使用量が多すぎると、皮膜の脆化や、未反応の架橋剤による可塑化等の不具合を引き起こす場合がある。このため、架橋剤の使用量は、プラスチック材料用塗料組成物中の紫外線吸収型ポリマー(A)とポリウレタン(B)の混合物100質量部に対して、架橋剤固形分換算で40質量部以下とすることが好ましく、0.5〜20質量部とすることがさらに好ましい。
【0168】
このようにして得られたプラスチック材料用塗料組成物は、一般的な塗料として種々の素材の対象物に対して用いることができるが、インパネ、ドアトリム、コンソールボックス、グローブボックスなど自動車内装材に対して効果を発揮する。特に熱可塑性ポリオレフィン樹脂などに対し、従来公知の方法によって成型前の表面にグラビア、スプレーなど従来公知の種々の手法によって塗工することで優れた効果を発揮する。この場合、塗工量は乾燥厚みで0.1〜100μmが好ましく、1〜50μmが特に好ましい。
【0169】
本発明の塗料組成物を塗工することによって紫外線吸収成分による耐光性の向上だけでなく、耐候性、耐摩耗性、耐薬品性などの耐久性に優れた自動車内装材を提供することができる。
【実施例】
【0170】
以下、本発明を実施例、比較例及び製造例等に基づいて具体的に説明する。もっとも、本発明はこれらの実施例等により限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の「部」及び「%」は、特に断りのない限り質量基準である。
【0171】
(1)<紫外線吸収型ポリマー(A)の合成>
[合成例A1:ベンゾトリアゾール型ポリマー(溶液)]
攪拌機、還流冷却管、温度計、窒素吹き込み管、及びマンホールを備えた反応容器を用意した。反応容器の内部を窒素ガスで置換した後、メチルエチルケトン(MEK)100g、及び2−[2' −ヒドロキシ−5' −(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール(大塚化学社製、商品名「RUVA−93」、以下「(a)−1」と記す)50gを仕込み、窒素雰囲気下で60℃に加熱した。メタクリル酸メチル38g、メタクリル酸5g、メタクリル酸ヒドロキシエチル3g、アクリル酸ブチル3g、アクリル酸エチル1g、及び2,2' −アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)2gの混合物を用意した。混合物の半分を反応容器内に添加し、残りの半分を滴下ロートで1時間かけて反応容器内に滴下した。滴下後、そのままの状態で6時間反応させて、酸価が32.6mgKOH/g、重量平均分子量(Mw)が37,000、及び数平均分子量(Mn)が15,000の紫外線吸収型ポリマーの溶液(固形分濃度50%)を得た。
[合成例A2:ベンゾトリアゾール型ポリマー(溶液)]
表1に示す配合としたこと以外は、前述の合成例A1と同様にして紫外線吸収型ポリマーの溶液(固形分濃度50%)を得た。
[合成例A3:ベンゾトリアゾール型ポリマー(溶液)]
表1に示す配合としたこと以外は、前述の合成例A1と同様にして紫外線吸収型ポリマーの溶液(固形分濃度50%)を得た。
[合成例A4:ベンゾトリアゾール型ポリマー(溶液)]
表1に示す配合としたこと以外は、前述の合成例A1と同様にして紫外線吸収型ポリマーの溶液(固形分濃度50%)を得た。
[合成例A5:ベンゾフェノン型ポリマー(溶液)]
表1に示す配合としたこと以外は、前述の合成例A1と同様にして紫外線吸収型ポリマーの溶液(固形分濃度50%)を得た。
[合成例A6:サリシレート型ポリマー(溶液)]
表1に示す配合としたこと以外は、前述の合成例A1と同様にして紫外線吸収型ポリマーの溶液(固形分濃度50%)を得た。
[合成例A7:トリアジン型ポリマー(溶液)]
表1に示す配合としたこと以外は、前述の合成例A1と同様にして紫外線吸収型ポリマーの溶液(固形分濃度50%)を得た。
【0172】
【表1】

【0173】
表1中の略号の意味を以下に示す。
【0174】
(a)−1:2−[2' −ヒドロキシ−5' −(メタクリロキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール
(a)−2:2−[2' −ヒドロキシ−5' −(2' −ヒドロキシ−3' −メタクリロイルオキシプロポキシ)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール
(a)−3:2−ベンゾイル−5−(2' −メタクリロイルオキシエチル)−フェノール
(a)−4:フェニル−3−(2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピル)サリシレート
(a)−5:2,4−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−6−[2−ヒドロキシ−4−(2−メタクリロイルオキシエトキシ,2−ドデシロキシメチル)]−1,3,5−トリアジン
MMA:メタクリル酸メチル
AA:アクリル酸
MAA:メタクリル酸
HEMA:メタクリル酸ヒドロキシエチル
BA:アクリル酸ブチル
EA:アクリル酸エチル
重合開始剤:2,2' −アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)
[合成例A8:(水分散体)]
合成例A1で得た紫外線吸収型ポリマーの溶液100gに、トリエチルアミン(TEA)2.9g(紫外線吸収型ポリマーのカルボキシル基に対して当量)及びイオン交換水113.8gからなるTEA水溶液を撹拌しながら少量ずつ添加した。反応系が均一になった後、真空脱気によりMEKを除去して、透明な紫外線吸収型ポリマーの水分散体(固形分濃度30%)を得た。
[合成例A9〜A14(水分散体)]
合成例A1で得た紫外線吸収型ポリマーの溶液に代えて、合成例A2〜A7で得た紫外線吸収型ポリマーの溶液を用いたこと以外は、前述の合成例A8と同様にして紫外線吸収型ポリマーの水分散体(固形分濃度30%)を得た。いずれもの水分散体も微青色〜透明液体であった。
(2)<シロキサン変性ポリウレタン(B)の合成>
[合成例B1:ポリウレタン(B1)のディスパージョン]
攪拌機、還流冷却管、温度計、窒素吹き込み管、及びマンホールを備えた反応容器を用意した。反応容器の内部を窒素ガスで置換した後、ジメチロールプロピオン酸(DMPA)6.0g、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール(商品名「プラクセルCD220」、ダイセル化学工業社製、末端官能基定量による数平均分子量2000)80g、シロキサンポリオール(下記構造 nは整数)
【0175】
【化25】

【0176】
(末端官能基定量による数平均分子量2000)20g及びMEK59.0gを仕込んだ。次いで、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)31.9g(OH基に対してNCO基が2倍当量)を加え、樹脂のNCO基が理論値の4.0%となるまで90℃で反応を行ってシロキサン変性ウレタンプレポリマー溶液を得た。得られたシロキサン変性ウレタンプレポリマー溶液を40℃に冷却した後、TEA4.5gを添加した。さらに、イオン交換水317.3gを添加し、系内が均一になるまで撹拌して乳化させることでシロキサン変性ウレタンプレポリマー水分散体を得た。得られたシロキサン変性ウレタンプレポリマー水分散体に、イソホロンジアミン(IPDA)15.3gをイオン交換水35.7gで希釈したものを滴下して、ウレタンプレポリマーのNCO基と反応させた。赤外吸収スペクトル分析で測定される、遊離イソシアネート基による2,270cm−1の吸収が消失するまで攪拌した。次いで、真空脱気によりMEKを除去して、酸価が16.4mgKOH/gのシロキサン変性ポリウレタン(B1)のディスパージョン(固形分濃度30%)を得た。なお固形分中のシロキサン由来成分の濃度は13.1%であった。
(3)<ポリマー組成物の製造>
以下に示す「製造法1」、「製造法2」、又は「製造法3」にしたがってポリマー組成物を製造した。
【0177】
「製造法1」:別々に合成した紫外線吸収型ポリマー(A)の溶液又は水分散体とシロキサン変性ポリウレタン(B)のディスパージョンとを混合する。
「製造法2」:シロキサン変性ポリウレタン(B)のプレポリマーを調製したところに、紫外線吸収型ポリマー(A)の重合体溶液を添加して、均一に水分散させた後ウレタン鎖伸長反応を行う。
「製造法3」:シロキサン変性ポリウレタン(B)のプレポリマーを調製して水分散させた後、紫外線吸収型ポリマー(A)の水分散体を添加し、次いで、ウレタン鎖伸長反応を行う。
【0178】
[製造例1:ポリマー組成物(製造法1)]
シロキサン変性ポリウレタン(B1)のディスパージョン100gに対して、合成例A8で得た紫外線吸収型ポリマーの水分散体4.1gを撹拌しながら少量ずつ添加してポリマー組成物(製造例1)を得た。得られたポリマー組成物は、析出物なども発生しなかった。また、得られたポリマー組成物の固形分濃度は30%、固形分(樹脂成分)の酸価は17.0mgKOH/g、及び固形分に含まれる化合物(a)に由来する構成単位の割合(化合物(a)含有割合)は2%であった。
[製造例2〜7:ポリマー組成物(製造法1)]
合成例A8で得た紫外線吸収型ポリマーの水分散体に代えて、合成例A9〜A14で得た紫外線吸収型ポリマーの水分散体を用いたこと以外は、前述の製造例1と同様にしてポリマー組成物(製造例2〜7)を得た。いずれのポリマー組成物も、析出物なども発生しなかった。得られたポリマー組成物の性状を表2に示す。
[製造例8:ポリマー組成物(製造法2)]
攪拌機、還流冷却管、温度計、窒素吹き込み管、及びマンホールを備えた反応容器を用意した。反応容器の内部を窒素ガスで置換した後、DMPA10.0g、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール(プラクセルCD220)80g、シロキサンポリオール(下記構造 )
【0179】
【化26】

【0180】
(末端官能基定量による数平均分子量2000)20g及びMEK70.9gを仕込んだ。次いで、イソホロンジイソシアネート(IPDI)55.3g(OH基に対してNCO基が2倍当量)を加え、樹脂のNCO基が理論値の4.4%となるまで90℃で反応を行ってシロキサン変性ウレタンプレポリマー溶液を得た。得られたシロキサン変性ウレタンプレポリマー溶液を40℃に冷却した後、合成例A1で得た紫外線吸収型ポリマーの溶液15.2gを添加した。さらにTEA8.0gを添加した後、イオン交換水395.4gを添加し、系内が均一になるまで攪拌して乳化させることで紫外線吸収型ポリマー及びシロキサン変性ウレタンプレポリマーの水分散体の混合物を得た。得られたシロキサン変性ウレタンプレポリマー水分散体に、IPDA20.1gをイオン交換水46.9gで希釈したものを滴下して、シロキサン変性ウレタンプレポリマーのNCO基と反応させた。赤外吸収スペクトル分析で測定される、遊離イソシアネート基による2,270cm−1の吸収が消失するまで攪拌した。次いで、真空脱気によりMEKを除去してポリマー組成物(製造例8)を得た。得られたポリマー組成物の固形分濃度は30%、固形分(樹脂成分)の酸価は23.0mgKOH/g、及び化合物(a)含有割合は2%であった。なお、得られたポリマー組成物に含まれるポリウレタンを「ポリウレタン(B2)」とする。なお得られたポリウレタン(B2)の固形分に相当量のシロキサン由来成分の濃度は10.7%であった。
[製造例9〜14:ポリマー組成物(製造法2)]
合成例A1で得た紫外線吸収型ポリマーの溶液に代えて、合成例A2〜A7で得た紫外線吸収型ポリマーの溶液を用いたこと以外は、前述の製造例8と同様にしてポリマー組成物(製造例9〜14)を得た。得られたポリマー組成物の性状を表2に示す。
[製造例15:ポリマー組成物(製造法3)]
攪拌機、還流冷却管、温度計、窒素吹き込み管、及びマンホールを備えた反応容器を用意した。反応容器の内部を窒素ガスで置換した後、DMPA12.0g、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール(プラクセルCD220)80g、シロキサンポリアミン(下記構造 )
【0181】
【化27】

【0182】
(末端官能基定量による数平均分子量2000)20g、及び酢酸エチル79.4gを仕込んだ。次いで、水添MDI(HMDI)73.2g(OH基に対してNCO基が2倍当量)を加え、樹脂のNCO基が理論値の4.4%となるまで70℃で反応を行ってシロキサン変性ウレタンプレポリマー溶液を得た。得られたシロキサン変性ウレタンプレポリマー溶液を40℃に冷却した後、TEA9.1gをイオン交換水423.0gに溶解させた水溶液を添加し、系内が均一になるまで攪拌して乳化させることでウレタンプレポリマー水分散体を得た。得られたウレタンプレポリマー水分散体に、合成例A8で得た紫外線吸収型ポリマーの水分散体28.3gを添加した。さらに、IPDA22.5gを水52.5gで希釈したものを滴下して、ウレタンプレポリマーのNCO基と反応させた。赤外吸収スペクトル分析で測定される、遊離イソシアネート基による2,270cm−1の吸収が消失するまで攪拌した。次いで、真空脱気により酢酸エチルを脱気してポリマー組成物(製造例15)を得た。得られたポリマー組成物の固形分濃度は30%、固形分(樹脂)の酸価は24.5mgKOH/g、及び化合物(a)含有割合は2%であった。なお、得られたポリマー組成物に含まれるポリウレタンを「ポリウレタン(B3)」とする。なお得られたポリウレタン(B3)の固形分に相当量のシロキサン由来成分の濃度は9.6%であった。
[製造例16〜21:ポリマー組成物(製造法3)]
合成例A8で得た紫外線吸収型ポリマーの水分散体に代えて、合成例A9〜A14で得た紫外線吸収型ポリマーの水分散体を用いたこと以外は、前述の製造例15と同様にしてポリマー組成物(製造例16〜21)を得た。得られたポリマー組成物の性状を表2に示す。
【0183】
【表2】

【0184】
(3)<ポリウレタンゲル粒子(C)の合成>
[合成例C1:ポリウレアコロイド溶液の作成]
水酸基価119.5の2官能の油脂変性ポリオール(伊藤製油(株)製 URIC Y−202)100部とn−オクタン100部とを撹拌機付き合成釜に仕込み上記ポリオールを溶解した。撹拌しながら温度を50℃に制御し、NCO/OH=2になるように予め用意したイソホロンジイソシアネート47.3部を1時間かけて徐々に添加し、この条件で3時間反応を続け、さらに80℃、3時間の反応を行い合成した。次にn−オクタンで濃度50%に調整し、NCO基を3.0%含有するプレポリマー溶液(PP−1)を得た。このものの分子量は1,383である。
【0185】
上記のPP−1の40部と、n−オクタン60部を撹拌機付き合成釜に仕込み溶解した、撹拌しながら温度を70℃に制御しながら、予め用意したイソホロンジアミンのn−オクタンの10%溶液24.3部を5時間かけて徐々に添加し反応を完結して、(ポリアミン(ウレア結合部)/プレポリマー鎖)×100=12.15%のポリウレアコロイド溶液(固形分18.0%)(PE−1;粒子(E)の分散液)を得た。この溶液は青い乳光色の安定な溶液であり、平均粒径は17μmであった。
[合成例C2:ポリウレタンゲル粒子Cの製造]
平均分子量1,000のポリブチレンアジペート20部を60℃で溶解し、さらに下記の構造式で示されるヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレートポリイソシアネート(旭化成工業(株)製 デュラネートTPA−100、NCO%=23.1)7.3部を添加し均一に混合した。このものを予め1リットルのステンレス容器に準備した、上記合成例のポリウレアコロイド溶液(PE−1)5.0部とn−オクタン25部の混合液のなかに徐々に加え、ホモジナイザーで15分間乳化した。この乳化液は分散質の平均分散粒子径が5μmで分離もなく安定な乳化液であった。
【0186】
【化28】

【0187】
次にこれを錨型撹拌機付き反応釜に仕込み、400rpmの回転をさせながら温度を80℃まで上げ、6時間の反応を終了しポリウレタンゲル粒子(C)の溶液を得た。この溶液を100Torrで真空乾燥を行ってn−オクタンを分離しポリウレタンゲル粒子(C)を得た。このものは平均粒子径が5μmで円形度が0.92の真球状の白色粉末状であった。圧縮強度は、0.35MPaで回復率は89%であった。
[比較製造例1:高分子紫外線吸収剤の配合]
合成例B1で得たシリコン変性ポリウレタン(B1)のディスパージョン100gに、高分子紫外線吸収剤(商品名「ULS−1700」、一方社油脂工業社製、ベンゾトリアゾール系のノニオン性水エマルション)3.1g、及びイオン交換水1.0gを添加して、高分子紫外線吸収剤を配合したポリマー組成物(比較製造例1)を得た。得られたポリマー組成物の固形分濃度は30%であった。
[比較製造例2:低分子紫外線吸収剤の配合]
2−(2H−べンゾトリアゾール−2−イル)−4' ,6−ジ−tert−ペンチルフェノール(商品名「チヌビン328」、BASF社製)3.1gをシリコン変性ウレタンプレポリマー溶液に添加したこと以外は、前述の合成例B1と同様にして、低分子紫外線吸収剤を配合したポリマー組成物(比較製造例2)を得た。得られたポリマー組成物の固形分濃度は30%、固形分(樹脂)の酸価は16.4mgKOH/gであった。
[比較製造例3:紫外線吸収型ポリマーの水分散体]
前述の合成例A8で得た紫外線吸収型ポリマーの水分散体(固形分濃度30%)を「比較製造例3のポリマー組成物」とする。
【0188】
<プラスチック用塗料化>
[実施例1〜26]
前記製造例1〜21で得られたポリマー組成物と、ポリウレタンゲル粒子(C)と、架橋剤とを下記表3で示す割合で、同表に示す割合のイオン交換水中に同時に添加して配合し、各塗料組成物を調製した。各塗料組成物の品質性能を下記の実施加工例により評価した。
【0189】
【表3】

【0190】
※架橋剤
*カルボジライト V−02(カルボジイミド化合物 日清紡ケミカル社製 固形分40%)
*jER W2821R70(エポキシ化合物 三菱化学社製 固形分70%)
*エポクロス WS−700(オキサゾリン化合物 日本触媒社製 固形分25%)
*ケミタイト DZ−22E(アジリジン化合物 日本触媒社製 固形分30%)
*デュラネート WT20−100(イソシアネート化合物 旭化成ケミカル社製 固形分100%)
【0191】
[比較例1〜8]
前記比較製造例1〜3、製造例8で得られたポリマー組成物を用い、表4に示す割合でポリウレタン粒子(C)及び架橋剤を同表4に示す割合のイオン交換水に混合して各塗料組成物を調製した。各塗料組成物の品質性能は、下記の比較加工例により示す。
なお、比較例4〜7に示す配合により、ポリウレタン粒子(C)を含有しない塗料組成物および比較例8で示すポリウレタン粒子(C)の含有量が、本発明により特定した範囲を逸脱する塗料組成物も調製し、後述するように、品質性能の評価に供した。
【0192】
【表4】

【0193】
※架橋剤
*カルボジライト V−02(カルボジイミド化合物 日清紡ケミカル社製 固形分40%)
*エポクロス WS−700(オキサゾリン化合物 日本触媒社製 固形分25%)
*デュラネート WT20−100(イソシアネート化合物 旭化成ケミカル社製 固形分100%)
【0194】
[実施加工例及び比較加工例]
塗工直前にコロナ放電処理にて表面改質(50mN/m)をした硬度(JIS−A)75のポリオレフィン系熱可塑性(TPO)シート上に、実施例1で得られた塗料組成物をスプレー塗装(塗布量;10μm・dry)し、90℃で90秒間乾燥して積層シートを形成させた。更にそのシートを230℃に加温したロールで(表面側;塗装済み原反/未処理原反;裏側)シートをラミネートして積層シートを作製した。更に、シボ(模様)の入った金型を220℃で10秒間の条件下で雌引き成型して得られた成型物について各種評価試験を行った。この塗装成型物を実施スプレー加工例1とする。
【0195】
塗工直前にコロナ放電処理にて表面改質(50mN/m)をした硬度(JIS−A)75のポリオレフィン系熱可塑性(TPO)シート上に、実施例1で得られた塗料をグラビアコーティング(塗布量;10μm・dry)で塗工した後に、90℃で90秒間乾燥して積層シートを形成させた。更にそのシートを230℃に加温したロールで(表面側;塗装済み原反/未処理原反;裏側)のシートをラミネートして積層シートを作製した。更に、シボ(模様)の入った金型を220℃で10秒間の条件下で雌引き成型して得られた成型物について各種評価試験を行った。この塗装成型物を実施グラビア加工例1とする。
【0196】
実施例1の塗料組成物を使用し、実施スプレー加工例1、実施グラビア加工例1の塗装成型物を得たのと同様に、実施例2〜26の塗料を使用して、実施スプレー加工例2〜26、実施グラビア加工例2〜26の各塗装成型物組成物を得た。
【0197】
同様に比較例1〜8の塗料組成物を使用して、比較スプレー加工例1〜8、比較グラビア加工例1〜8の塗装成型物を得た。
【0198】
実施例1〜26、比較例1〜8にて得られた各塗料組成物を用い、前記の通り、スプレー塗装法およびグラビアコーティング法の各塗工法によって得られた塗装成型品に関して以下の項目で評価した。結果を表5〜8に示す。
【0199】
<触感性>
○;高級感のある触感(タッチ)が感じられる
×;触感が良くない
【0200】
<接着性試験>
塗布した面を接着剤にて貼り合せた試験片を、新東科学(株)製のHEIDON−14DRを使用して180度剥離力を測定した。
評価基準;
×;1kg/cm未満
○;1kg/cm以上
◎;基材破壊(3kg/cm以上)
【0201】
<摩耗性試験>
塗布した面を、平面摩耗試験機を使用して、6号帆布、荷重500gにて外観変化するまでの摩耗回数を測定した。
評価基準;
×;1000回未満
△;1000〜2000回未満
○;2000回以上
【0202】
<真空成型性試験>
展開率200%での真空成型前後における試料片の表面を、目視およびデジタルスコープ(100倍)にて観察し、外観不良(絞の変化、白化、クラックなど)の有無を確認した。
評価基準;
×;外観不良が発生している
○;外観不良はない
【0203】
<光沢度>
スガ試験機社製 直読ヘーズコンピューターHGM−2DPを使用し、各シートの光沢度(60°入射光/60°反射光)を測定した。自動車用内装材としては、光沢度は1.2以下が好ましい。
○;光沢度 1.2以下
×;光沢度 1.3以上
【0204】
<耐傷性試験>
各種シートの艶消し層の塗膜を約1kg/cmの荷重にてスコッチブライト(住友スリーエム(株)製)で100回擦り、表面の傷付きを目視にて確認した。
○;確認できる傷が0本以上5本未満
△;確認できる傷が5本以上10本未満
×;確認できる傷が10本以上
【0205】
<耐候性試験>
前記条件にて積層塗料塗膜形成後、耐候性試験を行い、キセノンウェザオメーターにて耐候促進試験を行い、塗膜の外観変化を確認した。
耐候性試験条件;キセノンウェザオメーターの照射条件は、照度(50〜150w/m、300〜400nm)、ブラックパネル温度90℃で照射時間8週間(2000kj)。
耐光性試験(外観)評価基準;
○;変色、チョーキング、ワレ・ヒビなどがない。
×;変色、チョーキング、ワレ・ヒビなどがある。
【0206】
<耐熱性試験>
前記条件にて自動車用内装材形成後、オーブンにて試験条件を120℃で400時間とし耐熱性試験を行い、塗膜の外観変化を確認した。
耐熱性試験(外観)評価基準;
○;黄色変色、チョーキング、ワレ・ヒビなどがない。
×;黄色変色、チョーキング、ワレ・ヒビなどがある。
【0207】
<耐加水分解性試験>
前記条件にて自動車用内装材形成後、ジャングル試験(温度:70℃で相対湿度95%、8週間)後の基材との接着強度を測定し、初期強度と比較した。
○;保持率が70%以上
△;70%未満〜40%
×;40%未満
【0208】
<可使時間>
連続塗工にあたり、各塗料に架橋剤配合後、25℃条件下での有効使用時間を評価した。
◎;8時間以上
○:4時間以上
×;4時間未満
【0209】
【表5】

【0210】
【表6】

【0211】
【表7】

【0212】
【表8】

【0213】
以上の実施例および比較例による塗料組成物から得られる塗膜の評価結果から、実施例で示す塗料組成物は、光沢度が低く、防眩性に優れることから艶消し調であり、触感性に優れ、また、接着性、磨耗性、真空成型性をはじめ、耐傷性、耐光性、耐加水分解性、可便時用においてもすべて顕著な効果を示す塗膜を形成することができるのに対し、本発明の構成要素を欠く比較例で示す塗料組成物による塗膜は、前記の評価項目すべてにおいて効果を発揮することができず、特に光沢度(防眩性)および触感性を欠如することが示されており、本発明による塗料組成物の有用性に優れていることが極めて明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0214】
本発明によれば、従来の添加型UV吸収剤では性能限界のあった熱可塑性プラスチックなどに使用できるVOC対応型の自動車内装用水系艶消し塗料が提供される。該塗料からなる塗膜は、基材との密着性に優れ、該塗膜を有するプラスチック成型品は、艶消し調で触感性が良く、耐摩耗性、耐久性、真空成型性、光沢度および耐スクラッチ性などが良好である。
【図面の簡単な説明】
【0215】
【図1】本発明の塗料組成物の構成要素であるポリウレタンゲル粒子(C)を構成するポリウレアコロイド粒子(E)(ポリウレアコロイド溶液中)の断面の概念図である。
【図2】本発明の塗料組成物の構成要素であるポリウレタンゲル粒子(C)の粒子集合体(電子顕微鏡)写真(倍率;500倍)である。
【図3】本発明の塗料組成物の構成要素であるポリウレタンゲル粒子(C)の断面の概念図である。
【符号の説明】
【0216】
1:溶媒和されているポリマー鎖(油脂セグメント)
2:非溶媒和部分のウレアドメイン
3:ポリウレタンゲル粒子(D)
4:ポリウレアコロイド粒子(E)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線吸収型ポリマー(A)と、ポリウレタン(B)のディスパージョンとを含むポリマー組成物と、さらに、ポリウレタンゲル粒子(C)とを含有してなることを特徴とする塗料組成物。
【請求項2】
前記紫外線吸収型ポリマー(A)は、二重結合及び紫外線吸収基を有する化合物(a)と、二重結合含有成分(h)とを含む重合成分を重合させて得られる重合生成物であり、前記ポリウレタン(B)は、活性水素含有基及びアニオン性親水性基(水酸基を除く。)を有する化合物(b)と、ポリオール(c)及び/又はポリアミン(d)と、ポリイソシアネート(e)とを含む反応成分を反応させて得られる反応生成物である請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項3】
前記二重結合及び紫外線吸収基を有する化合物(a)が、下記一般式(1)〜(4)のいずれかで表される化合物である請求項2に記載の塗料組成物。
【化1】

(前記一般式(1)中、Xは、ハロゲン、水素原子、又は炭素数10以下のアルキル基を示し、Rは、水素原子又は炭素数10以下のアルキル基を示し、Rは、単結合、炭素数10以下のアルキレン基、炭素数10以下のオキシアルキレン基、又は炭素数10以下のヒドロキシオキシアルキレン基を示し、Rは、水素原子又はメチル基を示す。)
【化2】

(前記一般式(2)中、Xは、ハロゲン、水素原子、又は炭素数10以下のアルキル基を示し、Rは、単結合、炭素数10以下のアルキレン基、炭素数10以下のオキシアルキレン基、又は炭素数10以下のヒドロキシオキシアルキレン基を示し、Rは、水素原子又はメチル基示す。)
【化3】

(前記一般式(3)中、Xは、ハロゲン、水素原子、又は炭素数10以下のアルキル基を示し、Rは、単結合、炭素数10以下のアルキレン基、炭素数10以下のオキシアルキレン基、又は炭素数10以下のヒドロキシオキシアルキレン基を示し、Rは、水素原子又はメチル基示す。)
【化4】

(前記一般式(4)中、Rは、単結合、炭素数20以下のアルキレン基、炭素数20以下のオキシアルキレン基、又は炭素数20以下のヒドロキシアルコキシル基を示し、Rは、水素原子又はメチル基を示し、R〜Rは、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、又はアルコキシル基を示す。)
【請求項4】
前記二重結合含有成分(h)が、スチレン系モノマー、アクリル酸系モノマー、メタクリル酸系モノマー、及びアクリロニトリル系モノマーからなる群より選択される少なくとも一種である請求項2に記載の塗料組成物。
【請求項5】
前記紫外線吸収型ポリマー(A)に含まれる、前記二重結合及び紫外線吸収基を有する化合物(a)に由来する構成単位の割合が1〜80質量%である請求項2に記載の塗料組成物。
【請求項6】
前記紫外線吸収型ポリマー(A)は、ガラス転移点(Tg)が−20〜160℃、重量平均分子量(Mw)が1,000〜1,500,000、及び酸価が2〜200mgKOH/gであるとともに、水に溶解又は分散可能な重合体である請求項1又は2に記載の塗料組成物。
【請求項7】
前記ポリウレタン(B)を合成するための反応成分にさらに添加される成分が、短鎖ジオール成分(f)及び/又は短鎖ジアミン成分(g)である請求項1又は2に記載の塗料組成物。
【請求項8】
前記ポリウレタン(B)が、 前記活性水素含有基及びアニオン性親水性基(水酸基を除く。)を有する化合物(b)、前記ポリオール(c)、前記ポリアミン(d)、前記短鎖ジオール成分(f)、及び前記短鎖ジアミン成分(g)の合計の活性水素含有基(アニオン性親水性基を除く。)(1)と、 前記ポリイソシアネート(e)のイソシアネート基(2)と、を(1)/(2)=0.9〜1.5の当量比で反応させて得られる反応生成物である請求項1又は2に記載の塗料組成物。
【請求項9】
前記活性水素含有基及びアニオン性親水性基(水酸基を除く。)を有する化合物(b)が、下記一般式(5)で表される化合物である請求項2又は8に記載の塗料組成物。
(HO−R’−)−R−(R”−X ・・・(5)
(前記一般式(5)中、Rは、アルキレン基、シクロアルキル環、芳香族環、アミン構造、又は複素環を示し、R’は、アルキレン基、シクロアルキル環、又は芳香族環を示し、R”は、単結合、アルキレン基、シクロアルキル環、又は芳香族環を示し、Xは、−COOH、−SOH、又は−POを示し、nは1又は2を示し、mは1又は2を示し、lは1〜3の整数を示す。)
【請求項10】
前記活性水素含有基及びアニオン性親水性基(水酸基を除く。)を有する化合物(b)が、ジメチロールアルカン酸類である請求項2、8又は9のいずれか一項に記載の塗料組成物。
【請求項11】
前記ポリオール(c)又は前記ポリアミン(d)として、ポリイソシアネート基と反応可能である活性水素含有ポリシロキサンセグメントが前記ポリウレタン(B)の1〜50質量%導入されている請求項2又は8に記載の塗料組成物。
【請求項12】
前記ポリウレタン(B)の重量平均分子量が、1,000〜500,000である請求項1、2、7、8又は11のいずれか一項に記載の塗料組成物。
【請求項13】
前記ポリマー組成物の全成分に対する前記紫外線吸収型ポリマー(A)の含有割合が、0.1〜50質量%である請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項14】
前記ポリウレタンゲル粒子(C)が、少なくともいずれか一方が3官能以上であるポリイソシアネートと分子内に活性水素を有する化合物とを共重合してなる三次元架橋したポリウレタンゲル粒子(D)と、該ポリウレタンゲル粒子(D)の表面を被覆してなるポリウレアコロイド非水溶媒溶液から析出したポリウレアコロイド粒子(E)とからなる粒子集合体である請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項15】
前記ポリウレアコロイド粒子(E)が、溶媒に対して溶媒和されている部分と非溶媒和部分とからなり、該非溶媒和部分の粒子径が0.01〜1.0μmであり、油脂変性ポリオールとポリイソシアネートとポリアミン化合物との反応により得られるポリウレアコロイド粒子であって、前記非溶媒和部分がウレア結合の水素結合から構成されてなる請求項14に記載の塗料組成物。
【請求項16】
前記ポリウレタンゲル粒子(C)の粒子径が、0.5〜100μmの範囲にある請求項1又は14に記載の塗料組成物。
【請求項17】
前記ポリウレタンゲル粒子(C)の含有量が、請求項1〜16のいずれか一項に記載の塗料組成物中の紫外線吸収型ポリマー(A)とポリウレタン(B)の合計量を基準として3〜200質量%である塗料組成物。
【請求項18】
請求項1〜17のいずれか一項に記載の塗料組成物であって、エポキシ化合物、カルボジイミド化合物、アジリジン化合物、オキサゾリン化合物、及びイソシアネート化合物(ブロック体を含む。)からなる群より選択される少なくとも1種の架橋剤により架橋反応させて得られる反応生成物である塗料組成物。
【請求項19】
請求項1〜18のいずれか一項に記載の塗料組成物が、
前記紫外線吸収型ポリマー(A)の溶液又は水分散体と、前記ポリウレタン(B)のディスパージョンとを混合する工程及び該混合工程により得られた前記紫外線吸収型ポリマー(A)と前記ポリウレタン(B)ディスパージョンとの混合物にポリウレタンゲル粒子を配合する配合工程、又は前記ポリウレタン(B)のディスパージョンを調製する中間段階において、前記紫外線吸収型ポリマー(A)の溶液又は水分散体を添加する工程及び該添加工程により得られた前記紫外線吸収型ポリマー(A)と前記ポリウレタン(B)のディスパージョンとの混合物にポリウレタンゲル粒子を配合する配合工程を包含する製造方法によって製造される塗料組成物。
【請求項20】
前記塗料組成物の用途が、プラスチック用コーティング剤である請求項1〜19のいずれか一項に記載の塗料組成物。
【請求項21】
前記プラスチックが、熱可塑性ポリオレフィン基材である請求項20に記載の塗料組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−67793(P2013−67793A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−197122(P2012−197122)
【出願日】平成24年9月7日(2012.9.7)
【出願人】(000002820)大日精化工業株式会社 (387)
【出願人】(000238256)浮間合成株式会社 (99)
【Fターム(参考)】