説明

塗料配合検索システム。

【課題】所望の塗色を測色して得られた光学データに基づいて、塗色を再現するための調色塗料の配合情報を、容易に取得可能なシステムを提供すること。
【解決手段】本発明は、サーバと、ネットワークに接続された端末装置と、塗色の色及び/又は質感を測色する測色装置とを備えた塗料配合検索システムであって、塗料の配合情報と、対応する塗色の色及び質感を表わす光学データとが、塗料品種等を含む塗色情報に関連付けられてサーバ内に格納され、前記サーバは、塗料品種と光学データとを含む検索条件を前記端末装置から受信してサーバ内を検索し、対応する複数の配合番号を端末装置に送信し、複数の配合番号から選択された中の1つの配合番号に対応する配合情報を端末装置に送信して端末装置に表示することを特徴とする塗料配合検索機能を提供する塗料配合検索システムに関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所望の塗色を得るための塗料配合検索システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車外板を塗装によって補修する場合においては、塗装する部分の色を周囲の色と一致させることが重要となる。このため、所望の塗色が得られる調色塗料を調製する必要がある。調色塗料は、複数の原色塗料、着色顔料ペースト、光輝性顔料ペースト、艶調整剤等の着色材や添加剤等を種々の比率にて混合せしめるものであって、通常、塗料販売店、自動車補修工場、調色工場等で調色作業を行ない調製するものである。調色作業において作業者は、塗装する部分の周囲の色や塗色の色見本等を参照して、様々な原色塗料等の組み合わせや配合量を試行錯誤して、調色塗料を調製していた。この作業を迅速且つ正確に行なうためには、作業者の技量や経験が要求される。
【0003】
塗料会社は、通常、調色塗料を調製した際の配合情報を記録し、塗色に対応する調色塗料の配合情報を蓄積して、ホストコンピュータ内のデータベースとして管理している。また、前記データベースは、原色塗料の原料事情の変遷や、新規な塗色への対応等のため、常に更新されている。現在すでに塗料販売店や調色工場等のユーザーが、上記のような配合情報を参照するためのシステムがすでに実用化されている。
【0004】
特許文献1は、自動計量調色システムに関する発明であって、端末装置に被塗物の色に関するコード化された信号を入力して、入力した信号を通信回線を介してコンピュータ装置に送り、コンピュータ装置から出力した調色データを通信回線を介して端末装置に送り、送られた調色データに基づいて自動計量を行なう自動計量システムについて記載されている。しかし、ユーザーが上記システムを使用するには、専用の端末装置を購入する必要がある。該端末装置は、高価なものであり、また定期的な保守が必要である。さらに通信回線を介して調色データを入手するため端末装置の設置場所に制限がある等の問題点がある。
【0005】
特許文献2は、多額の投資をせずに、調色者が目的とする色を簡便かつ確実に調色するための塗料の調色支援システム及び塗料の調色方法に関する発明であって、コード化された塗料配合組成データを、情報入力手段、情報処理手段及び塗料配合組成表示手段を備えた計量機で処理し、上記塗料配合組成データを上記塗料配合組成表示手段に表示することによって調色者に調色情報を提供する塗料の調色支援システムについて記載されている。特許文献2に開示されているシステムにおいて、ユーザは、色を表わすカラーカードと、対応するコード化された配合データとの組み合わせを整理保管していて、調色作業を行なう際には、該配合データを情報入力手段を使用して、計量機に表示させるものである。色とそれに対応する配合情報が変更された場合、前記コード化された配合データを変更する必要があるが、コード化された配合データをユーザが簡便に変更することは困難である。
【0006】
一方、所望の塗色の光学データを測色によって取得し、取得した光学データ及び調色塗料に用いる着色材の光学データに基づいて、塗色を再現できる調色塗料の配合を計算によって求めるコンピュータ・カラー・マッチング(CCM)によって、所望の塗色を再現する調色塗料の配合を求める方法も一部実用化されている。CCMにおいては、調色塗料に用いる着色材の光学データと、着色材を組み合わせて得られた調色塗料を塗装して得られた塗色の光学データを計算するアルゴリズムが重要である。着色材の設計変更等によって、着色材の光学データが変わったり、研究開発によってアルゴリズムを変更した場合には、CCMのプログラムを変更する必要があるが、ユーザーが保有する演算装置にCCMのプログラムを格納している場合には、常に最新のプログラムにしておくことは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平2−184369号公報
【特許文献2】特開2004−269745号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、所望の塗色を測色して得られた光学データに基づいて、塗色を再現するための調色塗料の配合情報を、容易に取得可能なシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、
1.記録部を有するサーバと、
操作部、表示部及びネットワークに接続されたインターフェース部を有する端末装置と、
塗色の色及び/又は質感を測色する測色装置とを備えた
塗料配合検索システムであって、
塗料の配合情報と、該塗料を塗装して得られた塗色の色及び質感を表わす光学データとが、
塗色情報に関連付けられて前記記録部に格納され、
該塗色情報が、塗料品種、塗装対象製品のメーカー名、塗料を識別する塗色番号、
及び同一の塗色番号に対応した複数の異なる色各々を特定する配合番号を含み、
前記サーバは、塗料品種と、測色装置を使用して所望の塗色を測色して取得した光学データとを含む検索条件を前記端末装置から受信し、該検索条件に基づいて記録部を検索し、対応する複数の配合番号を得て、前記端末装置に送信する工程1、
前記端末装置は、表示部に受信した複数の配合番号を表示し、操作部によって選択された複数の配合番号中の1つの配合番号を前記サーバに送信する工程2、
前記サーバは、受信した配合番号に対応する配合情報を端末装置に送信する工程3、端末装置は受信した配合情報を表示部に表示する工程4を含む塗料配合検索機能を提供する塗料配合検索システム、
2.サーバは、前記工程2及び工程3に換えて、受信した検索条件中の光学データを目標とするCCMを行なって、計算結果に対応する配合情報を端末装置に送信する工程5を含む塗料配合検索機能を提供する塗料配合検索システム、
3.端末装置は、受信した配合情報に基づいて調製された塗料を塗装して得られた塗色について測色装置を使用して得られた光学データをサーバに送信し、サーバは、受信した光学データを基点とし、前記所望の塗色の光学データを目標とするCCMを行ない、得られた配合情報を端末装置に送信し、端末装置は受信した配合情報を表示部に表示することを特徴とする1項又は2項に記載の塗料配合検索システム、
4.端末装置は、受信した配合情報に基づいて調製した塗料を塗装して得られた塗色が所望の塗色から許容範囲の塗色であった場合には、該塗色を測色して得られた光学データと、塗装した塗料との配合情報との組み合わせをサーバに送信し、サーバは、受信した光学データと配合情報の組み合わせを記録ベースに記録することを特徴とする1〜3項のいずれか1項に記載の塗料配合検索システム
に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の塗料配合検索システムによれば、所望の塗色の光学データを測色装置によって取得し、取得した光学データをネットワーク回線を介してサーバに送信して、サーバ内のデータベースを検索することにより、所望の塗色を再現する調色塗料の配合を入手することができ、さらに必要に応じて、入手した配合に基づいて調製した調色塗料を、試し塗装して得られた塗色の光学データをサーバに送信して、修正配合を入手できる効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の塗料配合情報システムのシステム体系を示すシステム構成図である。
【図2】本発明の実施の形態を示すフローチャート図である。
【図3】本発明の実施の形態を示すフローチャート図である。
【図4】本発明の実施の形態を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付の図面を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0013】
図1は、本発明の実施の形態に係る塗料配合検索システムの構成の概略を示すシステム構成図である。本発明の塗料配合検索システムは、サーバ、端末装置及び測色装置を有している。サーバと端末装置は、ネットワークを介して接続されている。本発明の塗料配合検索システムの概要は以下の通りである。
【0014】
測色装置は、試料を測色して試料の色及び/又は質感を測定する装置であり、測定して取得した光学データは、端末装置に送信することができる。測色装置の詳細については、後述するが、本発明の塗料配合検索システムは、複数の異なるタイプの測色装置を有していてもよい。
【0015】
サーバは、データ処理を行なうCPU、データ処理を行なう作業領域に使用するメモリ、処理データを記憶する記録部及び外部機器との電子データの送受信を行なうインターフェース部(以下I/F部)を有している。
【0016】
端末装置は、前記サーバと同様に、CPU、メモリ、記録部及びI/F部を有しており、さらに作業者が操作を行なう操作部、処理結果を表示する表示部を有している。さらにI/F部を介して印刷装置や計量装置との間で電子データの送受信が可能なものである。
【0017】
印刷装置は、端末装置が受信した調色塗料の配合情報を印刷する装置であって、端末装置から配合情報を電子データとして受け取って印刷することができる。
【0018】
計量装置は、端末装置において受信した配合情報に基づいて調色塗料を調製するときに、
調製する塗料の量に応じて原色塗料、着色顔料ペースト、光輝性顔料ペースト、艶調整剤等の着色材や添加剤等を計量する装置である。特に本発明の塗料配合検索システムにおいては、配合情報と調製する調色塗料の量に応じて、調色塗料に配合せしめる前記原色塗料等の配合量を、配合する順に名称と共に表示し、作業者が調色塗料を容易に調製できる機能を有するものを使用することができる。また、調色作業において実際に投入された前記原色塗料の量や、調色塗料を試し塗装した際に使用した調色塗料の量を記憶したり、電子データとして端末装置に送信することができる機能を有するものを使用してもよい。
【0019】
本発明において、サーバは、記録部に、調色塗料を調製した際の配合情報と、調色塗料を塗装した塗板の色や質感を表わす光学データが、塗色情報と対応させてデータベースとして格納している。端末装置から受信した検索条件によってデータ処理を行ない、処理結果をウェブサイトの形式で提供する。
【0020】
端末装置は、測色装置から受信した所望の塗色の光学データ及び操作部から入力される塗色情報等を組み合わせた検索条件を、ネットワーク回線を介してサーバに送信し、サーバ内でデータ処理して得られた塗色情報や対応する配合情報を含む処理結果を受信する。受信した配合情報は、計量装置や印刷装置に送信して出力することができる。
【0021】
図2〜4は、本発明の塗料配合検索システムが行なう処理を示すフローチャート図である。以下、本発明の塗料配合検索システムが行なう処理を図2〜4のフローチャート図に基づいて詳細に説明する。
【0022】
本発明の塗料配合検索システムの動作の概要は次の通りである。まず、サーバと端末装置の間で、サーバが端末装置を認証する処理を行なう。次に所望の塗色を測色装置で測定して光学データを取得して、次に端末装置からサーバに該光学データを含む検索条件を送信して、サーバは、受信した検索条件に基づいて記録部を検索し、対応する複数の配合番号を取得して、端末装置に送信する。端末装置においては、受信した複数の配合番号及び対応する塗色情報を表示する。塗色情報とは、検索条件に対応した複数の配合番号の中から、作業者が1つの配合番号を選択する際に参照するものであって、例えば、配合番号に対応する配合情報に基づいて調製された調色塗料を塗装して得られた塗色の光学データと、検索条件として端末装置からサーバに送信した光学データとの差分等を挙げることができる。端末装置は、受信した複数の配合番号から選択された1つの配合番号をサーバに送信する。サーバは、受信した配合番号に対応する配合情報を端末装置に送信する。サーバの記録部に検索条件に対応する配合番号が記録されていない場合、サーバは、検索条件の光学データに基づき、CCMを行なって得られた配合情報を端末装置に送信する。ここまでの処理で、端末装置からサーバに送信した検索条件に対応する初回配合の配合情報が取得されている。
【0023】
本発明の塗料配合検索システムを使用するユーザーが、システムを提供する塗料会社等が作成した専用の色見本帳等を有していて、所望の塗色を再現するための調色塗料の配合番号が既知の場合には、配合番号を端末装置からサーバに送信して、送信した配合番号に対応する配合情報をサーバから受信して、初回配合とすることができる。その場合においても後述する修正配合を取得するために、再現したい塗色の光学データを測色装置を使用して取得して、端末装置からサーバに送信する必要がある。
【0024】
作業者は、該配合情報に基づいて調色塗料を調製して塗装し、得られた塗色が所望の塗色と合致している場合は、処理を終了する。得られた塗色が所望の塗色と合致しない場合には、得られた塗色を測色して光学データを取得して端末装置からサーバに送信する。サーバは受信した光学データを基点とし、前記所望の塗色の光学データを目標とするCCMを行ない、新たな配合情報を取得して端末装置に送信する。CCMとは、コンピュータ・カラーマッチング(Computer Color Matching)の意味であり、基準となる塗色の光学データ(基点)、基準となる塗色を再現する調色塗料の配合及び調色に使用することができる原色塗料等の着色材それぞれに固有の色特性から、目標となる塗色を再現する調色塗料の配合を計算する手法を意味する。塗色が観察角度によって色の見え方が異なるメタリック塗色の場合には、複数の観察角度においてそれぞれCCMを行なう手法を用いることができる。また、光学データとして、分光反射率を用いることが一般的であるが、メタリック塗色の粒子感など、他の特徴量を使用した目標とする塗色の配合計算方法も提案されており、本明細書におけるCCMは、これら公知の手法を包含する。
【0025】
作業者は、端末装置が受信した新たな配合情報(修正配合)に基づいて、調色塗料を調製して、前記と同様に所望の塗色を再現可能か否かの判断を行なう。その結果によって、処理を終了するか又は再度光学データを送信してサーバから新たな配合情報を取得する処理を繰り返す。作業者は、所望の塗色を再現する塗料を調製したら、該塗料を塗装して得られた塗色を測色して得られた光学データと、塗装した塗料と配合情報との組み合わせをサーバに送信し、サーバは、受信した光学データと配合情報の組み合わせを記録ベースに記録する。
【0026】
以下の説明において,サーバ及び端末装置が行なう処理は、実際には、サーバ及び端末装置のCPUが行なう処理を意味する。サーバ及び端末装置において、CPUは、メモリを作業領域として、設定値や処理途中の中間データ等を一時記憶し記録部に処理結果等を適宜記録する。また、CPUは、処理の必要に応じて、操作部からの入力をメモリ又は記録部に記録し、入力された情報に基づいて、データ処理を行ない、結果を表示部に表示する。端末装置においては、測色装置からの光学データの入力を受け付け、必要に応じてメモリや記録部に記録することができる。また、サーバから受信した配合情報等のデータは、メモリや記録部に適宜記録され、表示部に表示したり、計量装置や印刷装置に出力することができる。
【0027】
本発明において、サーバと端末装置は、ネットワークを介して電子データを送受信することができる。端末装置において、測色装置から取得した光学データや、操作部から入力された検索条件等は、電子データとして、ネットワークを介してサーバに送信することができる。また、サーバは検索条件等の電子データに基づいて、所定のデータ処理を行なって、処理結果を電子データとして端末装置に送信することができる。本発明のシステムにおいて、ネットワークとは特に限定されるものではなく、公知の携帯電話網、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)、電話回線網、ADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)回線網、ISDN(Integrated Services Digital Network)回線網、移動体通信網、通信衛星回線、CATV(Community Antenna Television)、光通信回線、無線通信回線等を挙げることができる。
【0028】
以下、本発明の塗料配合検索システムにおいて提供される配合検索機能について、工程ごとに詳細に説明する。
【0029】
配合検索を行なう場合において、図2に示した手順にて、認証を受ける。まず、端末装置が、塗料配合検索システムを利用可能なものであるという認証を受ける。端末装置は、固有のHWアドレス(Hardware Address、MACアドレス:Media control Addressと同義語)を有している。このHWアドレスをサーバに送信する。サーバは、受信したHWアドレスが塗料配合検索システムを利用可能な端末装置のものであるかを判断し、登録されている場合には、端末装置に検索サイトのURLを送信する。登録されていない場合には、その旨を端末装置に送信する。その場合、端末装置は、予め取得しているIDとパスワードをサーバに送信し、サーバは受信したIDとパスワードを、端末装置のHWアドレスと関連付けて記録する。
【0030】
端末装置が認証を受け、検索サイトのURLにアクセスすると、端末装置の表示部には、検索条件を入力する画面が表示される。検索条件について説明する。本発明の塗料配合検索システムは、ユーザーが、自動車外板等の補修塗装を行なう上で、補修部周辺の色を再現可能な塗料の配合を取得可能なシステムである。そこで検索条件としては、塗料の品種及び再現したい色(塗色)の光学データが必須である。
【0031】
塗料の品種について説明する。例えば、自動車外板の補修用塗料の場合、塗料会社は、数種類の塗料品種を準備している。適用する部位の材質や溶剤系と水系の違い、期待耐用年数や仕上がりに対するユーザーの要求に対応するためである。塗料品種毎に、ビヒクル形成成分である樹脂や添加剤等が異なるため、所定の塗色を得るための塗料配合は塗料の品種毎に異なる。そこで、本発明の塗料配合検索システムにおいては、塗料の品種を検索条件とする。検索条件としての塗料の品種の端末装置への入力方法は特に制限されるものではないが、操作部から入力することができる。端末装置が塗料の品種の入力方法を示す画面をサーバから受け取り、画面上の表示にしたがって操作部を操作して入力してもよい。または、リーダライタを準備しておいて、塗料製品のラベルに描かれたバーコードを読み取る方法によって入力することができる。
【0032】
塗色の光学データの取得について説明する。本発明の塗料配合検索システムは、測色装置を有している。測色装置とは、再現したい色を測定して、色の見え方を数値化する装置であり、具体的には、市販の分光光度計、三刺激値直読型の色彩計を意味する。測色装置によって測定された光学データは、分光反射率、各種の表色系に対応した色座標等である。また、塗色が観察角度によって見え方が変化するメタリック塗色の場合には,光学データとして、複数の観察角度において測定した多角度の分光反射率や分光反射率から計算して得られる各種の表色系に対応した色座標等を光学データとして使用する。端末装置には、測色装置を用いて測定した塗色の光学データを取得するためのソフトウェアが格納されている。本発明の塗料配合検索システムにおいては、複数の測色装置を用いることができる。
【0033】
本発明における検索条件としては、前記光学データ及び再現したい色(塗色)の光学データに限定されない。そこで上記以外の検索条件について説明する。本発明においては、サーバ内のデータベースに塗料の配合情報と、該塗料を塗装して得られた塗色の色及び質感を表わす光学データとが、塗料品種、塗装対象製品のメーカー名、塗料を識別する塗色番号や同一の塗色番号に対応した複数の異なる色各々を特定する配合番号等の塗色情報に関連付けられて格納されている。したがって、塗色の配合情報を特定するための検索条件として、塗装対象製品のメーカー名や塗色番号等の塗色情報の中から項目を選択して使用することができる。
【0034】
次に、図3に示した手順にて、初回配合を取得する。端末装置から、サーバから提供された検索サイトのURLにアクセスして、端末装置からサーバに検索条件を送信する。前述したように、検索条件としては、前記塗料の品種及び取得した光学データを使用する。
【0035】
サーバ内に記録されたデータベースの構造とも関連するが、検索条件は、塗料の品種及び光学データのみに限定されるものではない。塗料の配合や塗料を塗装して得られた塗色を特定するための種々の情報を検索条件とすることができる。検索条件として用いる情報については、サーバ内に記録されたデータベースにおいて、塗料の配合情報と関連付けて記録させておく必要がある。
【0036】
本発明の塗料配合検索システムを使用した塗料配合の検索においては、光学データとして、塗色の色を表わす数値や塗色の質感を表わす数値を使用することができる。色を表わす数値としては、分光反射率を使用することができる。塗色が観察角度によって色の見え方が変わるメタリック塗色の場合には、複数の観察角度における分光反射率を使用することができる。また、分光反射率から計算して得られる各種表色系の色座標を使用することができる。
【0037】
質感を表わす数値としては、塗膜の正反射方向の光輝感を表わすIV値、すかし方向の光輝感を表わすSV値、この両者の関係から光輝性顔料の塗膜内における配向状況を表すフリップフロップ値(FF値)、ミクロ光輝感を表わすHG値等が挙げられる。質感を表わす上記数値のうちIV値、SV値及びFF値は、多角度分光反射率計で測定して得られた測定値から演算して求めることができる。HG値は、塗膜を入射角15度/受光角0度にてCCDカメラで撮像し、得られたデジタル画像データ、すなわち2次元の輝度分布データを2次元フーリエ変換処理し、得られたパワースペクトル画像から、粒子感に対応する空間周波数領域のみを抽出し、算出した計測パラメータを、さらに0から100の数値を取り且つ粒子感との間に直線的な関係が保たれるように変換して得られるものであって、ミクロ光輝感測定装置を使用して測定することができる。質感を表わす数値としては、質感を数値として表わすことができる物理量及び心理物理量であれば上記に限定されるものではない。
【0038】
サーバは、端末装置から検索条件を取得したら、データベースを検索する。検索条件に対応する配合番号が存在する場合には、検索条件に対応する複数の配合番号を端末装置に送信する。併せて、配合番号に対応する塗色情報を送信する。ここで送信する塗色情報として、特に光学データを送信することが好ましい。光学データとして、検索条件として受信した光学データと、検索条件に対応する配合番号と関連する光学データとの差分を使用することが好ましい。端末装置においては、受信した配合番号及び光学データを表示部に表示する。作業者は表示内容を参照して、複数の配合番号から、1つの配合番号を選択して、サーバに選択した配合番号を受信する。ここで配合番号の選択は、配合番号に関連した光学データによって判断することができる。例えば、当初測色装置を使用して得られた再現したい色の光学データと、サーバから送信された検索条件に対応する配合番号に関連する光学データとの差分を表わす特徴量をサーバ内で計算して配合番号に対応するパラメータを端末装置に送信し、作業者は、端末装置に表示された該特徴量を参照して配合番号を選択することができる。
【0039】
サーバは、端末装置から受信した配合番号に関連付けられた配合情報を初回配合として端末装置に送信する。
【0040】
一方、サーバ内のデータベースに、検索条件に対応する配合番号が存在しない場合においては、公知のCCM(Computer Color Matching)技術を利用して、検索条件に対応する調色塗料の配合情報をサーバ内で演算して、配合情報を取得し、初回配合として端末装置に送信する。
【0041】
端末装置は、受信した初回配合を表示部に表示する。次に初回配合を受信後の修正配合の取得について説明する。端末装置の表示部に表示された初回配合を使用することで、調色塗料の調製が可能である。ユーザーは調色塗料を調製して、得られた塗料の試し塗装を行なう。試し塗装によって得られた塗色が、所望の塗色に近く、補修に使用できるという判断であれば、目的を達したことになるが、所望の塗色を再現できない場合には、調製した調色塗料を修正して、新たな調色塗料を調製する必要がある。新たな調色塗料を調製するための新たな配合である修正配合を取得する手順について説明する。
【0042】
修正配合の取得は、図4に示した手順にて行なうことができる。端末装置は、前記初回配合を受信する。ついで、受信した初回配合に基づいて調製された調色塗料を試し塗装して得られた塗色がユーザー所望のものであるか否かの判断を端末装置から受信する。初回配合による調色塗料を塗装して得られた塗色が、所望のものであるという判断であった場合には、配合情報及び光学データを端末装置のHWアドレスと関連付けて記録する。
【0043】
試し塗装して得られた塗色がユーザー所望のものでなかった場合にサーバは、試し塗装して得られた塗色を測色装置を用いて測色した光学データを受信する。受信した光学データを基点とし、前記初回配合を送信する際に取得した検索条件の光学データを目標とするCCMを行なう。計算によって得られた配合情報を端末装置に修正配合として送信する。
【0044】
初回配合及び修正配合は、調色塗料全量(質量)に対する百分率が基本となるが、その場合、作業者は、調製する調色塗料の量に基づいて演算して、実際に使用する原色塗料等配合せしめる原材料の量を計算する必要がある。本発明の配合検索システムにおいては、作業者が必要とする調色塗料の量を端末装置に入力することによって、配合せしめる原材料の名称及び配合量を配合情報に基づいて計算することができる。さらに試し塗装後に、修正配合を取得した場合には、試し塗装に使用した塗料の質量と、試し塗装した調色塗料に配合せしめた原材料の量に基づいて計算して、初回配合に基づいて調製した調色塗料にさらに追加して配合せしめる原材料の量を計算することができる。これらの計算は、端末装置で行なっても、端末装置から送信された電子データに基づいてサーバにおいて行なってもよい。また、計算結果を計量表示に送信することも可能である。
【0045】
修正配合によって調製されて塗色がユーザー所望のものであるかの判断によって、この手順は繰り返すことができる。サーバは、最終的に修正配合による調色塗料を塗装して得られた塗色がユーザー所望のものであるという判断を受信したら、配合情報及び光学データを端末装置のHWアドレスと関連付けて記録する。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の塗料配合検索システムは、調色工場及び塗料販売店等において,所望の塗色を再現可能な調色塗料の配合情報を取得する調色分野に適用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録部を有するサーバと、
操作部、表示部及びネットワークに接続されたインターフェース部を有する端末装置と、
塗色の色及び/又は質感を測色する測色装置とを備えた
塗料配合検索システムであって、
塗料の配合情報と、該塗料を塗装して得られた塗色の色及び質感を表わす光学データとが、
塗色情報に関連付けられて前記記録部に格納され、
該塗色情報が、塗料品種、塗装対象製品のメーカー名、塗料を識別する塗色番号、
及び同一の塗色番号に対応した複数の異なる色各々を特定する配合番号を含み、
前記サーバは、塗料品種と、測色装置を使用して所望の塗色を測色して取得した光学データとを含む検索条件を前記端末装置から受信し、該検索条件に基づいて記録部を検索し、対応する複数の配合番号を得て、前記端末装置に送信する工程1、
前記端末装置は、表示部に受信した複数の配合番号を表示し、操作部によって選択された複数の配合番号中の1つの配合番号を前記サーバに送信する工程2、
前記サーバは、受信した配合番号に対応する配合情報を端末装置に送信する工程3、端末装置は受信した配合情報を表示部に表示する工程4を含む塗料配合検索機能を提供する塗料配合検索システム。
【請求項2】
サーバは、前記工程2及び工程3に換えて、受信した検索条件中の光学データを目標とするCCMを行なって、計算結果に対応する配合情報を端末装置に送信する工程5を含む塗料配合検索機能を提供する塗料配合検索システム。
【請求項3】
端末装置は、受信した配合情報に基づいて調製された塗料を塗装して得られた塗色について測色装置を使用して得られた光学データをサーバに送信し、サーバは、受信した光学データを基点とし、前記所望の塗色の光学データを目標とするCCMを行ない、得られた配合情報を端末装置に送信し、端末装置は受信した配合情報を表示部に表示することを特徴とする請求項1又は2に記載の塗料配合検索システム。
【請求項4】
端末装置は、受信した配合情報に基づいて塗料を調製した塗料を塗装して得られた塗色が所望の塗色から許容範囲の塗色であった場合には、該塗色を測色して得られた光学データと、塗装した塗料との配合情報との組み合わせをサーバに送信し、サーバは、受信した光学データと配合情報の組み合わせを記録ベースに記録することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の塗料配合検索システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−242018(P2010−242018A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−94737(P2009−94737)
【出願日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【出願人】(000001409)関西ペイント株式会社 (815)
【Fターム(参考)】