説明

塗料

【課題】不燃性に優れた塗料を提供する。
【解決手段】シラスバルーン(A)、雲母(B)、珪藻土(C)及びバインダー樹脂(D)を含有してなることを特徴とする塗料を用いる。さらに造膜助剤(E)を含有することが好ましく、造膜助剤(E)は(ポリ)エチレングリコールアルキルエーテル、(ポリ)エチレングリコールアルキルエーテルカルボン酸エステル、(ポリ)プロピレングリコールアルキルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールフェニルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールアルキルエーテルカルボン酸エステル及びカルボン酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料に関する。
【背景技術】
【0002】
中空球状又は鱗片状の低熱伝導体(シラス、雲母等)、構造助剤及びシランカップリング剤を含有することを特徴とする遮熱塗料組成物(特許文献1)や、アルミノ珪酸ソーダガラスと、顔料と、樹脂エマルションと、分散剤と、粘着剤とを含んでなる塗布式断熱材であって、該アルミノ珪酸ソーダガラスが、中空ビーズ構造であると共に粒径が10〜50μmであり、かつその含有量が該断熱材の全重量の10〜20重量%であることを特徴とする塗布式断熱材(特許文献2)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−045447号公報
【特許文献2】特開2002−105385号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の遮熱塗料組成物や塗布式断熱材では、不燃性が不十分であるという問題がある。すなわち、本発明の目的は、不燃性に優れた塗料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の塗料の特徴は、シラスバルーン(A)、雲母(B)、珪藻土(C)及びバインダー樹脂(D)を含有してなる点を要旨とする。
【0006】
本発明の塗料は、さらに造膜助剤(E)を含有してなることが好ましい。また、造膜助剤(E)が、(ポリ)エチレングリコールアルキルエーテル、(ポリ)エチレングリコールアルキルエーテルカルボン酸エステル、(ポリ)プロピレングリコールアルキルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールフェニルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールアルキルエーテルカルボン酸エステル及びカルボン酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0007】
本発明の塗料は、シラスバルーン(A)、雲母(B)、珪藻土(C)及びバインダー樹脂(D)の重量に基づいて、シラスバルーン(A)の含有量が10〜30重量%、雲母(B)の含有量が0.5〜3重量%、珪藻土(C)の含有量が10〜40重量%、バインダー樹脂(D)の含有量が30〜70重量であることが好ましい。また、造膜助剤(E)の含有量が、シラスバルーン(A)、雲母(B)、珪藻土(C)及びバインダー樹脂(D)の重量に基づいて、2〜30重量%であることが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明の塗料は、従来の遮熱塗料組成物や塗布式断熱材に比較して著しく不燃性に優れている。したがって、建物等の内壁や外壁、屋根等に塗装するだけで、炎の建物内部への進入を効率的に遮断することができる。不燃性に優れるため、火災の発生を防止できるだけでなく、隣家の火災による延焼等も効率的に防ぐことができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
シラスバルーン(A)とは、火山灰(主に九州シラス台地から産出するシラス)を原料とした0.1mm以下の微細な中空ガラス球で九工試において発明されたものを意味する。
【0010】
シラスバルーン(A)の重量平均粒子径(μm)は、14〜300が好ましく、さらに好ましくは35〜100、特に好ましくは40〜80、最も好ましくは60〜70である。この範囲であると、不燃性がさらに良好となる。
【0011】
なお、重量平均粒子径は、JIS Z8815−1994に準じて、ロータップ試験ふるい振とう機及びJIS Z8801−1:2006に規定されたJIS標準ふるいを用いて測定される{各ふるい及び受け皿上の測定サンプル粒子の重量を秤量し、その合計を100%として各ふるい上の粒子の重量分率を求め、この重量分率を対数確率紙(横軸がふるいの目開き(粒子径)、縦軸が重量分率)にプロットし、各点を結ぶ線を引いて「粒子径−重量分率」線を得た後、この線から50重量%に対応する粒子径(重量平均粒子径)を求める。}。
【0012】
シラスバルーン(A)は、市場から容易に入手でき、たとえば、ウインライト(株式会社アクシーズの登録商標)MSB−301、MSB−3011、MSB−5011、MSB5021、SC−50(株式会社アクシーズケミカル);タイセツバルーン(美瑛白土工業株式会社の登録商標)K、同A、同B及び同C(美瑛白土工業株式会社);マールライト(丸中白土株式会社の登録商標)BA−15、同BA−20、同BA−25、同EA−15、同EA−20及び同EA−25(丸中白土株式会社);トワナライトSYB−5005、同SYB−5000、同SYB−2000、同SYB−1000H、同SYB−1000S、同SYB−0005、同SKB−9000、同SKB−6000、同SSB−4000及び同FTB(豊和直株式会社);DSRF(大建工業株式会社の登録商標)シリーズ(大建工業株式会社);サンキライトシリーズ(三機化工建設株式会社);シリカバルーンシリーズ(釧路石炭乾溜株式会社);シラックスシリーズ(株式会社シラックスウ);テラバルーンシリーズ(宇部マテリアルズ株式会社);スーパーバルーン(昭和化学工業株式会社);及びシラスバルーン(浅間軽石株式会社、エスケーライフ株式会社、株式会社システック等)等が挙げられる。
【0013】
雲母(B)としては、黒雲母、木下雲母、リチア雲母、真珠雲母、益富雲母、白雲母、金雲母、絹雲母、白水雲母、砥部雲母及びチンワルド雲母等が挙げられる。雲母(B)は複数種類の雲母の混合体でもよいが、白雲母を含むことが好ましく、さらに好ましくは白雲母を少なくとも50重量%(好ましくは70重量%、さらに好ましくは80重量%、特に好ましくは90重量%)含むこと、特に好ましくは白雲母だけからなることである。
【0014】
雲母(B)の体積平均粒子径(μm)は、1〜60が好ましく、さらに好ましくは2〜45、特に好ましくは2〜35、最も好ましくは5〜25である。この範囲であると、不燃性がさらに良好となる。
【0015】
なお、体積平均粒子径は、測定試料を適当な分散媒(例えば、水、メタノール及びこれらの混合物)に分散させ、JIS Z8825−1−2001「粒子径解析−レーザー回折法−第1部」:測定原理に記載された測定原理を有するレーザー回折式粒度分布測定装置(例えば株式会社島津製作所製SALD−1100、株式会社堀場製作所製LA−950、日機装株式会社製マイクロトラック粒度分布測定装置UPA−ST150等、「マイクロトラック」はリーズ、アンド、ノースラップ、カンパニーの登録商標である。)等により測定される。
【0016】
雲母(B)は、市場から容易に入手でき、たとえば、マイカ100MESH(株式会社東京興業貿易商会);Aシリーズ、グローバルバリューシリーズ、Bシリーズ、Cシリーズ、Yシリーズ、SAシリーズ、FKシリーズ、CTシリーズ(株式会社山口雲母工業所);ミクロマイカMK−100、MK−200、MK−300、MK−100F、S1MK(コープケミカル株式会社:非膨潤性合成雲母);及びソフシフME−100、S1ME(コープケミカル株式会社:膨潤性合成雲母)等が挙げられる。
【0017】
珪藻土(C)とは、珪藻(藻類の一種)の殻の化石が堆積した物であり、二酸化ケイ素を主成分とするものを意味する。
【0018】
珪藻土(C)の体積平均粒子径(μm)は、0.5〜200が好ましく、さらに好ましくは1〜100、特に好ましくは2〜50、最も好ましくは5〜25である。この範囲であると、不燃性がさらに良好となる。
【0019】
珪藻土(C)は、市場から容易に入手でき、たとえば、ダイアフィル(DiaFil)シリーズ(株式会社東京興業貿易商会);SILIKA製品(中央シリカ株式会社);珪藻土(昭和化学工業株式会社)等が挙げられる。
【0020】
バインダー樹脂(D)としては、アクリル樹脂及びウレタン樹脂等が含まれる。
アクリル樹脂としては、公知のアクリル樹脂エマルション等が使用でき、たとえば、特公昭62−10269号、特公昭62−10545号、特公昭58−44707号、特公昭58−44707号、特公平01−53310号、特公平04−15803号、特公平05−25914号、特公昭63−4874号、特公昭63−28948号、特公平04−77030号、特公昭61−28699号、特公平06−45769号、特許第2517965号、特許第2642142号、特許第2763790号、特公平07−2929号、特公平07−13207号、特許第2689844号、特公平08−19370号、特開2006−335938号、特開2002−212207号、特開2005−232331号、特開2005−187675号、特開2004−250607号、特開2003−201305号、特開2003−176311号、特開2003−165803号又は特開2002−256154号の各公報に記載されたアクリル樹脂エマルション等が使用できる。
【0021】
ウレタン樹脂としては、公知のウレタン樹脂エマルション等が使用でき、たとえば、特開昭59−138212号、特開昭59−210978号、特開平03−149214号、特開平5−132535号、特開平05−25239号、特開平06−122747号、特開平07−157526号、特開平07−157527号、特開平09−100335号、特開平10−279650号、特開2006−30707号、特開2000−34322号、特開2005−154721号、特開2006−96852号、特開2005−146089号、特開2005−60690号、特開2002−145976号、特開2006−96893号、特開2006−96852号、特開2006−22222号、特開2006−22221号、特開2005−239841号、特開2005−187685号、特開2005−132961号、特開2003−171570号、特開2003−165818号又は特開2003−138021号の各公報に記載されたウレタン樹脂エマルション等が使用できる。
【0022】
バインダー樹脂(D)として樹脂エマルションを用いる場合、バインダー樹脂(D)の含有量(重量%)は、バインダー樹脂及び溶剤(水等)の重量に基づいて、20〜65が好ましく、さらに好ましくは30〜60、特に好ましくは45〜55である。また、この場合、溶剤(水等)の含有量(重量%)は、バインダー樹脂及び溶剤(水等)の重量に基づいて、35〜80が好ましく、さらに好ましくは40〜70、特に好ましくは45〜55である。
【0023】
バインダー樹脂(D)は、市場から容易に入手でき、たとえば、プライマル(ローム エンド ハースコムパニーの登録商標)JP−120S、同2949、同AS−300、同AS−398、同PR−1058M、同SF−016、同SD−017、同SF−3122、同E−3131、同SD−021、同AC−2235、同AC−264、同AC−6310、同AC−2615、同AC−2508、同PR−29、同MA−23LO及びPR−1042{ローム・アンド・ハース・ジャパン株式会社製アクリル樹脂エマルション};モビニール(日本合成化学工業株式会社の登録商標)701、同727、同742A、同745、同749E、同752、同790、同880、同937、同940、同972、同1710、同1720、同1752、同1760、同6520、同6530、同7110、同7220、同7470、同7480、同7502、同7540、同8010、同DM60、同DM765F、同DM772、同DM774、同LDM6316、同LDM6740、同LDM7010、同LDM7158、同LDM7159、同LDM7512、同LDM7520、同LDM7522、同LDM7523及び同VDM7410(ニチゴー・モビニール株式会社製アクリル樹脂エマルション);SE−810A、SE841A、SE−909E、SE953A、SE−1314F、SE1645E、SE−2223L、UW−319SX、UW−223SX及びUW−550CS(大成ファインケミカル株式会社製アクリル樹脂エマルション);ユーコート(三洋化成工業株式会社の登録商標)UX−150、同UX−310、同UX−4300及び同UWS−145(三洋化成工業株式会社製ウレタン樹脂エマルション);WBR−016U、WBR−022U、WBR−201U、WBR−223U、WBR−401U及びWBR−601U(大成ファインケミカル株式会社製ウレタン樹脂エマルション);並びにWEM−031U、WEM−202U、WEM−321U、WEM−268A、WEM−279A、8UA−017A及び3DR−057(大成ファインケミカル株式会社製ウレタン・アクリルハイブリット樹脂エマルション)等が挙げられる。
【0024】
シラスバルーン(A)の含有量(重量%)は、シラスバルーン(A)、雲母(B)、珪藻土(C)及びバインダー樹脂(D)の重量に基づいて、10〜30が好ましく、さらに好ましくは12〜28、特に好ましくは14〜25である。
【0025】
雲母(B)の含有量(重量%)は、シラスバルーン(A)、雲母(B)、珪藻土(C)及びバインダー樹脂(D)の重量に基づいて、0.5〜3が好ましく、さらに好ましくは0.7〜2.5、特に好ましくは1〜1.5である。
【0026】
珪藻土(C)の含有量(重量%)は、シラスバルーン(A)、雲母(B)、珪藻土(C)及びバインダー樹脂(D)の重量に基づいて、10〜40が好ましく、さらに好ましくは15〜35、特に好ましくは20〜30である。
【0027】
バインダー樹脂(D)の含有量(重量%)は、シラスバルーン(A)、雲母(B)、珪藻土(C)及びバインダー樹脂(D)の重量に基づいて、30〜70が好ましく、さらに好ましくは35〜65、特に好ましくは45〜55である。なお、バインダー樹脂(D)として樹脂エマルションを用いる場合、バインダー樹脂(D)の含有量に溶剤(水等)の含有量は含まれない。
これらの範囲であると、不燃性がさらに良好となる。
【0028】
本発明の塗料には、さらに造膜助剤(E)を含有することが好ましい。造膜助剤を含有すると、不燃性がさらに良好となる。これは、シラスバルーン(A)、雲母(B)及び珪藻土(C)が沈降等により偏在することを防止する機能を有するからであると考えられる。また、バインダー樹脂(D)として樹脂エマルションを用いる場合、造膜助剤(E)は、大部分の水が蒸発した後も塗膜中に残って、エマルション粒子同士の融合を促進させる機能を有し、さらに、シラスバルーン(A)、雲母(B)及び珪藻土(C)が沈降等により偏在することを防止する機能を有すると考えられる。
【0029】
造膜助剤(E)としては、沸点が少なくとも100℃の有機化合物等が含まれ、(ポリ)エチレングリコールアルキルエーテル、(ポリ)エチレングリコールアルキルエーテルカルボン酸エステル、(ポリ)プロピレングリコールアルキルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールフェニルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールアルキルエーテルカルボン酸エステル及びカルボン酸エステル等が使用できる。
【0030】
なお、「(ポリ)エチレン・・・」とは、「エチレン・・・」又は「ポリエチレン・・・」を意味し、「(ポリ)プロピレン・・・」は「プロピレン・・・」又は「ポリプロピレン・・・」を意味する。
【0031】
(ポリ)エチレングリコールアルキルエーテルとしては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル及びジエチレングリコールモノヘキシルエーテル等が挙げられる。
【0032】
(ポリ)エチレングリコールアルキルエーテルカルボン酸エステルとしては、エチレングリコールエチルエーテルアセテート及びジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等が挙げられる。
【0033】
(ポリ)プロピレングリコールアルキルエーテルとしては、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールペンチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル及びポリプロピレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。
【0034】
(ポリ)プロピレングリコールフェニルエーテルとしては、プロピレングリコールフェニルエーテル及びジプロピレングリコールフェニルエーテル等が挙げられる。
【0035】
(ポリ)プロピレングリコールアルキルエーテルカルボン酸エステルとしては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールジアセテート及びプロピレングリコールモノ−2−エチルヘキサン酸エステル等が挙げられる。
【0036】
カルボン酸エステルとしては、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブタン酸エステル、プロピオン酸ペンチルエステル及びフタル酸ジブチルエステル等が挙げられる。
【0037】
これらの造膜助剤のうち、(ポリ)プロピレングリコールアルキルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールアルキルエーテルカルボン酸エステル及びカルボン酸エステルが好ましく、さらに好ましくは(ポリ)プロピレングリコールアルキルエーテル及びカルボン酸エステル、特に好ましくはプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールペンチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、ポリプロピレングリコールモノメチルエーテル、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブタン酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1種である。
【0038】
造膜助剤(E)を含有量する場合、造膜助剤(E)の含有量(重量%)は、シラスバルーン(A)、雲母(B)、珪藻土(C)及びバインダー樹脂(D)の重量に基づいて、2〜30が好ましく、さらに好ましくは6〜20、特に好ましくは8〜15である。この範囲であると、不燃性がさらに良好となる。
なお、冬季等の寒い環境で使用する場合、造膜助剤(E)は多目に{およそ10〜20重量%増量して}使用し、逆に、夏季等の暖かい環境で使用する場合、造膜助剤(E)は少な目に{およそ10〜20重量%減量して}使用することが好ましい。
【0039】
バインダー樹脂(D)として樹脂エマルションを用いることが好ましく、バインダー樹脂(D)として樹脂エマルションを用いた場合、本発明の塗料に含有する水は、バインダー樹脂(D)として用いた樹脂エマルションに含まれる水以外に、さらに水を含有させてもよい。本発明の塗料に含有する水の含有量(重量%)は、シラスバルーン(A)、雲母(B)、珪藻土(C)及びバインダー樹脂(D)の重量に基づいて、30〜170が好ましく、さらに好ましくは40〜120、特に好ましくは50〜70である。この範囲であると、不燃性がさらに良好となる。
【0040】
本発明の塗料には、塗料としての各種機能を付与させるために、さらにその他の添加剤{顔料、染料、消泡剤、レベリング剤、粘弾性調整剤(増粘剤及び減粘剤等)、分散剤、防かび剤、防腐剤、紫外線吸収剤、沈降防止剤、防錆剤、つや消し剤及び酸化防止剤等}を含有させてもよい。
【0041】
本発明の塗料は、シラスバルーン(A)、雲母(B)、珪藻土(C)及びバインダー樹脂(D)、並びに必要により、造膜助剤(E)、水及び/又はその他の添加剤を均一混合することにより容易に得られる。均一混合の方法は、公知の塗料を得る方法と同様である。
【0042】
本発明の塗料は、セラミック、ガラス、磁器、陶器、コンクリート、金属、木材、プラスチックス及びこれらの複合体等に適用でき、建築用の折板、トタン板、瓦棒、スレート、ACL板、コンクリート及びカラーベスト等や産業用のダクト配管、サイロ、貯蔵タンク、制御盤、配電盤、コンテナ、保冷車、冷凍車及びその他熱が発生する装置(洗浄機等)等に好適である。
塗装に際しては、基材に直接塗装することもできるし、何らかの表面処理(シーラー、サーフェーサー又はフィラー等による下地処理等)を施した上に塗装することができる。
【0043】
塗装方法としては、ハケ塗り、スプレー塗装、ローラー塗装、ロールコーター、フローコーター塗装、浸漬塗装及びプレコート塗装等が適用できる。
塗装した塗膜は、自然乾燥又は低温度(およそ100℃以下)で強制乾燥させることができる。
【実施例】
【0044】
以下、特記しない限り、部は重量部を、%は重量%を意味する。
<実施例1>
シラスバルーン(A1){ウインライトMSB−5011、株式会社アクシーズケミカル、平均粒子径70μm}19部、雲母(B1){100MESH、株式会社東京興業貿易商会}1.5部、珪藻土(C1){ダイアフィルD110、株式会社東京興業貿易商会}27部及びバインダー樹脂(D1){プライマルJP−120S、ローム・アンド・ハース・ジャパン株式会社、アクリル・シリコンエマルション、固形分50%、最低造膜温度25℃、粒子径70nm}105部を均一混合して、本発明の塗料(1)を得た。
【0045】
<実施例2>
実施例1で得た塗料(1)152.5部及び造膜助剤(E1){ダルパッドD、ダウケミカル株式会社、ジプロピレングリコール−n−ブチルエーテル}8部を均一混合して、本発明の塗料(2)を得た。
【0046】
<実施例3>
シラスバルーン(A1){ウインライトMSB−5011、株式会社アクシーズケミカル、平均粒子径70μm}14部、雲母(B2){A−11、株式会社山口雲母工業所、平均粒子径5μm}1部、珪藻土(C1){ダイアフィルD110、株式会社東京興業貿易商会}30部、バインダー樹脂(D1){プライマルJP−120S、ローム・アンド・ハース・ジャパン株式会社、アクリル・シリコンエマルション、固形分50%、最低造膜温度25℃、粒子径70nm}110部及び水15部を均一混合して、本発明の塗料(3)を得た。
【0047】
<実施例4>
実施例3で得た塗料(3)170部及び造膜助剤(E1){ダルパッドD、ダウケミカル株式会社、ジプロピレングリコール−n−ブチルエーテル}15部を均一混合して、本発明の塗料(4)を得た。
【0048】
<実施例5>
シラスバルーン(A2){トワナライトSYB−2000、豊和直株式会社、平均粒子径60μm}25部、雲母(B3){AB−25S、株式会社山口雲母工業所、平均粒子径24μm}1部、珪藻土(C1){ダイアフィルD110、株式会社東京興業貿易商会}20部及びバインダー樹脂(D1){プライマルJP−120S、ローム・アンド・ハース・ジャパン株式会社、アクリル・シリコンエマルション、固形分50%、最低造膜温度25℃、粒子径70nm}108部を均一混合して、本発明の塗料(5)を得た。
【0049】
<実施例6>
実施例5で得た塗料(5)154部及び造膜助剤(E1){ダルパッドD、ダウケミカル株式会社、ジプロピレングリコール−n−ブチルエーテル}8部を均一混合して、本発明の塗料(6)を得た。
【0050】
<実施例7>
シラスバルーン(A3){トワナライトSYB−0005、豊和直株式会社、平均粒子径40μm}24部、雲母(B4){A−31、株式会社山口雲母工業所、平均粒子径35μm}1部、珪藻土(C1){ダイアフィルD110、株式会社東京興業貿易商会}30部、バインダー樹脂(D1){プライマルJP−120S、ローム・アンド・ハース・ジャパン株式会社、アクリル・シリコンエマルション、固形分50%、最低造膜温度25℃、粒子径70nm}90部及び水5部を均一混合して、本発明の塗料(7)を得た。
【0051】
<実施例8>
実施例7で得た塗料(5)150部及び造膜助剤(E2){スマックMP−40、花王株式会社、ポリプロピレングリコールモノメチルエーテル}15部を均一混合して、本発明の塗料(8)を得た。
【0052】
<実施例9>
シラスバルーン(A1){ウインライトMSB−5011、株式会社アクシーズケミカル、平均粒子径70μm}14部、雲母(B4){A−31、株式会社山口雲母工業所、平均粒子径35μm}1.5部、珪藻土(C1){ダイアフィルD110、株式会社東京興業貿易商会}30部及びバインダー樹脂(D1){プライマルJP−120S、ローム・アンド・ハース・ジャパン株式会社、アクリル・シリコンエマルション、固形分50%、最低造膜温度25℃、粒子径70nm}109部を均一混合して、本発明の塗料(9)を得た。
【0053】
<実施例10>
実施例9で得た塗料(5)154.5部及び造膜助剤(E2){スマックMP−40、花王株式会社、ポリプロピレングリコールモノメチルエーテル}8部を均一混合して、本発明の塗料(10)を得た。
【0054】
<実施例11>
シラスバルーン(A4){トワナライトSYB−1000S、豊和直株式会社、平均粒子径35μm}20部、雲母(B4){A−41S、株式会社山口雲母工業所、平均粒子径45μm}1部、珪藻土(C1){ダイアフィルD110、株式会社東京興業貿易商会}30部、バインダー樹脂(D2){モビニール7220、ニチゴー・モビニール株式会社、アクリル・シリコーンエマルション、不揮発分48%、粘度約200mPa・s、最低造膜温度45℃}102部及び造膜助剤(E2){スマックMP−40、花王株式会社、ポリプロピレングリコールモノメチルエーテル}8部を均一混合して、本発明の塗料(11)を得た。
【0055】
<実施例12>
シラスバルーン(A5){ウインライトMSB−5021、株式会社アクシーズケミカル、平均粒子径80μm}25部、雲母(B5){A−41S、株式会社山口雲母工業所、平均粒子径45μm}1部、珪藻土(C1){ダイアフィルD110、株式会社東京興業貿易商会}30部、バインダー樹脂(D2){モビニール7220、ニチゴー・モビニール株式会社、アクリル・シリコーンエマルション、不揮発分48%、粘度約200mPa・s、最低造膜温度45℃}91.7部、造膜助剤(E3){キョウワノールM、協和発酵ケミカル株式会社、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート}15部及び水5部を均一混合して、本発明の塗料(12)を得た。
【0056】
<実施例13>
シラスバルーン(A6){トワナライトSYB−5005、豊和直株式会社、平均粒子径100μm}14部、雲母(B6){A−51、株式会社山口雲母工業所、平均粒子径50μm}1部、珪藻土(C1){ダイアフィルD110、株式会社東京興業貿易商会}20部、バインダー樹脂(D3){プライマルAC−2508、ローム・アンド・ハース・ジャパン株式会社、アクリルエマルション、固形分46.5%、最低造膜温度22℃}93.5部及び造膜助剤(E2){スマックMP−40、花王株式会社、ポリプロピレングリコールモノメチルエーテル}8部を均一混合して、本発明の塗料(13)を得た。
【0057】
<実施例14>
シラスバルーン(A6){トワナライトFTB、豊和直株式会社、平均粒子径14μm}14部、雲母(B2){A−11、株式会社山口雲母工業所、平均粒子径5μm}1部、珪藻土(C1){ダイアフィルD110、株式会社東京興業貿易商会}30部、バインダー樹脂(D4){ユーコートUX−310、三洋化成工業株式会社、ウレタンエマルション、蒸発残分40%、粘度2000mPa・s}137.5部及び造膜助剤(E2){スマックMP−40、花王株式会社、ポリプロピレングリコールモノメチルエーテル}8部を均一混合して、本発明の塗料(14)を得た。
【0058】
<比較例>
XOL-200(アルミノシリケート多空隙球体、Sphere One, Inc.、比重0.25g/cc、平均粒子径60μm、粒子径範囲10〜210μm、分解温度1700℃、「EXTENDOSPHERES」はキューピー・コーポレーションの登録商標)14.8部、二酸化チタン(JR−600A、テイカ株式会社、ルチル型酸化チタン、平均粒子径0.25μm、比重4.1、吸油量19g/100g)19.5部、アクリルエマルション樹脂{プライマルJP−120S、ローム・アンド・ハース・ジャパン株式会社、アクリル・シリコンエマルション、固形分50%、最低造膜温度25℃、粒子径70nm}60.7部、分散剤{ノプコスパース44−C、サンノプコ株式会社、ポリカルボン酸ナトリウム塩、40%}2部、粘着剤{ニチゴーポリスターWR−906、日本合成化学工業株式会社}0.8部、溶剤{ブチルセルソルブ、小原化学塗料株式会社、エチレングリコ−ルモノブチルエ−テル}2.2部及び水10部を均一混合して、比較用の塗料(H)を得た。
【0059】
実施例1〜14及び比較例で得た塗料(1)〜(14)、(H)を用いて、不燃性を評価し、その結果を表1に示した。
<不燃性>
床下地用合板(50cm×50cm×15mm)の裏表両面に、評価塗料を乾燥厚で0.4mmになるように重ね塗りし(はけ塗り)、約25℃で2日間乾燥して、評価用合板を得た。
評価用合板を垂直に立て、評価用合板の重心とイワタニカセットガストーチバーナー(岩谷産業株式会社)のノズル先端との距離を約30cmとして、評価用合板の中央面にほぼ垂直に炎(火炎温度約1400℃)を3分間当て続けて、その間の状態を次の評価基準により、評価した。
◎ 評価用合板に引火しなかった
△ 評価用合板に引火したが、トーチバーナーの炎を消すと評価用合板の炎も消えた
× 評価用合板に引火し、トーチバーナーの炎を消しても評価用合板は燃え続けた
【0060】
【表1】




ブランクは、評価塗料を塗らなかったこと以外、実施例及び比較例の塗料と同様にして評価した。
【0061】
本発明の塗料は、比較用の塗料や何もしなかった場合(ブランク)に比較して、不燃性に著しく優れていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シラスバルーン(A)、雲母(B)、珪藻土(C)及びバインダー樹脂(D)を含有してなることを特徴とする塗料。
【請求項2】
さらに造膜助剤(E)を含有してなる請求項1に記載の塗料。
【請求項3】
造膜助剤(E)が、(ポリ)エチレングリコールアルキルエーテル、(ポリ)エチレングリコールアルキルエーテルカルボン酸エステル、(ポリ)プロピレングリコールアルキルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールフェニルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールアルキルエーテルカルボン酸エステル及びカルボン酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項2に記載の塗料。
【請求項4】
シラスバルーン(A)、雲母(B)、珪藻土(C)及びバインダー樹脂(D)の重量に基づいて、シラスバルーン(A)の含有量が10〜30重量%、雲母(B)の含有量が0.5〜3重量%、珪藻土(C)の含有量が10〜40重量%、バインダー樹脂(D)の含有量が30〜70重量である請求項1〜3のいずれかに記載の塗料。
【請求項5】
造膜助剤(E)の含有量が、シラスバルーン(A)、雲母(B)、珪藻土(C)及びバインダー樹脂(D)の重量に基づいて、2〜30重量%である請求項2〜4のいずれかに記載の塗料。

【公開番号】特開2012−62336(P2012−62336A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−204991(P2010−204991)
【出願日】平成22年9月14日(2010.9.14)
【特許番号】特許第4846050号(P4846050)
【特許公報発行日】平成23年12月28日(2011.12.28)
【出願人】(510247319)
【出願人】(510247320)
【Fターム(参考)】