説明

塗材組成物

【課題】建築分野で使用する塗材、特に内外壁面へ意匠性を付与する用途として施工され、コンクリート、モルタル、ケイカル、合板、プラスターボード下地への密着性、耐久性を付与し、ホルムアルデヒド、トルエン、キシレン、パラジクロロベンゼン、エチルベンゼン、スチレンの揮発性有機化合物を使用しない環境に配慮した塗材組成物を得ることを目的とする。
【解決手段】上記課題の解決のため、塗材組成物中にn一ヘプタン、イソヘキサンのうちいずれか1種類を使用し、室内汚染物質であるホルムアルデヒド、トルエン、キシレン、パラジクロロベンゼン、エチルベンゼン、スチレンの揮発性有機化合物を含まず、従来品と比較して下地への密着性、耐久性、表面仕上がり性を有する塗剤組成物を得ることによって上記課題を解決した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は建築分野で使用する塗材、特に内外壁面へ意匠性を付与する用途として施工され、コンクリート、モルタル、ケイカル、合板、プラスターボード下地への密着性、耐久性を付与し、ホルムアルデヒド、トルエン、キシレン、パラジクロロベンゼン、エチルベンゼン、スチレンの揮発性有機化合物を使用しない環境に配慮した塗材組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、塗材分野においては、有機溶剤を溶媒とする溶剤型塗材から、水を溶媒とする塗材への転換が図られつつある。これは、塗装作業者や居住者の健康被害を低減するためや、大気環境汚染を低減する目的で行われているものである。厚塗タイプの建築・土木用塗材においても、水性化への動きが進んでおり、バインダーとして合成樹脂エマルジョンを用い、これに粒子径0.1〜200μm程度の無機質粉粒体を充填剤として多量に配合した塗材が主流となってきている。このような背景の中、塗材用シンナー等の有機溶剤を使用せずに、塗材によって形成される化粧面の平坦化処理を行うことができる方法として、合成樹脂エマルジョンを固形分で100重量部、撥水剤を固形分で1〜100重量部、平均粒子径0.1〜200μmの無機質粉粒体を100〜2000重量部含有する塗材が開示されている(特許文献1参照)。
また、生産効率がよく、安価で、人や環境に優しい水系艶消しコーティング組成物と、艶消し風合いを要求される下地面、特に打ち放しコンクリート面や石材調仕上面及び改修時の磁器タイル面などに透明性、耐水性、防水性、耐候性に優れ、またカビや藻などによる汚染防止性に優れた処理面を付与することができる艶消しコーティング方法として、合成樹脂エマルジョン及び水溶性樹脂から選ばれる少なくとも1種と、水に天然ワックス及び合成ワックスから選ばれる少なくとも1種のワックスが分散しているワックス分散液とを含有する水系艶消しコーティング組成物が開示されている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2004−249268号
【特許文献2】特開2001−288415号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
建築分野で使用する塗材、特に内外壁面へ意匠性を付与する用途として施工され、コンクリート、モルタル、ケイカル、合板、プラスターボード下地への密着性、耐久性を付与し、ホルムアルデヒド、トルエン、キシレン、パラジクロロベンゼン、エチルベンゼン、スチレン等の揮発性有機化合物を使用しない環境に配慮した塗材組成物を得ることを目的とする。建築分野で使用する塗材、特に内、外壁面へ意匠性を付与する用途として施工され、コンクリート、モルタル、ケイカル、合板、プラスターボード下地への密着性、耐久性を付与し、ホルムアルデヒド、トルエン、キシレン、パラジクロロベンゼン、エチルベンゼン、スチレン等の揮発性有機化合物を使用しない環境に配慮した塗材組成物を得ることを目的とする。





【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題の解決のため、合成樹脂エマルジョン、充填剤、顔料、増粘剤、分散剤、防カビ剤、防藻剤を少なくとも含む水系塗材であって、ホルムアルデヒド、トルエン、キシレン、パラジクロロベンゼン、エチルベンゼン、スチレンの揮発性有機化合物を含まない有機溶媒を含むことを特徴とする塗材組成物であり、この有機溶媒が、n−ヘプタン、イソヘキサンのうち少なくとも1種類であり、配合の割合が全重量組成物中0.1〜1.0重量%の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の塗材組成物である。従来品と比較して下地への密着性、耐久性、表面仕上がり性を有する塗剤組成物を得ることによって上記課題を解決した。
【0005】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の塗材組成物は水系合成樹脂エマルジョンを主成分とし、ホルムアルデヒド、トルエン、キシレン、パラジクロロベンゼン、エチルベンゼン、スチレンの揮発性有機化合物を含まない有機溶媒を含み、好ましい溶媒として n−ヘプタン、イソヘキサンのうち少なくとも1種類を配合している。さらに、充填剤、顔料、増粘剤、分散剤、防カビ剤、防藻剤を既調合とした塗材組成物であり、必要に応じて水、骨材を配合して使用する。
有機溶媒は溶剤型の塗材の溶剤としての溶媒でなく、本発明は水系塗材の成膜過程での調整剤として 作用するもので、塗膜中に残留しないことが条件であり、種々の溶媒を実験した結果、良調整剤であるが、シックハウス、シックスクールの原因物質であるトルエンと同等の性能が得られる水系塗材の発明に至った。
【0006】
前記、水系合成樹脂エマルジョンとして、アクリル酸エステル共重合系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合系樹脂、酢酸ビニル・アクリル酸エステル共重合系樹脂、エチレン・塩化ビニル共重合系樹脂、シリコン変性アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂等の水系合成樹脂エマルジョンが使用できる。塗材組成物中の樹脂固形分は1.0〜15重量%が好ましく、1.0重量%より少ないと粘着性、塗布性等が低下するため好ましくない。また15重量%を超えると粘度が低くなり添加剤、配合剤等の配合に制約が生じ好ましくない。
【0007】
充填剤には、固形分の調整、粘度・塗布性の調整などのため水酸化アルミニウム、重質炭酸カルシウム、クレー、カオリン、タルク、沈降性硫酸バリウム、炭酸バリウム、珪砂、細珪砂等が使用できるが、中でも重質炭酸カルシウムは安価でコスト的負担を減らすことができ、白色であるために塗材の各種調色に好都合である。また、顔料には、酸化チタン、酸化亜鉛、カーボンブラック、酸化第二鉄(べんがら)、クロム酸鉛(モリブデードオレンジ)黄鉛、黄色酸化鉄等の無機系顔料等が使用できるが、中でも酸化チタンは下地の隠蔽性に優れ、白色であるため塗材の各種調色に好都合である。
【0008】
充填剤の配合量は塗材組成物の固形分換算で5〜90重量%が好ましい。5重量%未満では塗材組成物の粘度が低くなり施工に適さない、90重量%を超えると塗材組成物の粘度が高くなり施工に適さなくなるため好ましくない。また、顔料の配合量は塗材組成物の固形分換算で20重量%以下が好ましい。20重量%を超えると塗材組成物の粘度が高くなり施工に適さなくなるため好ましくない。
【0009】
添加剤には、増粘剤、成膜助剤、分散剤、防カビ剤、防藻剤から構成される。添加剤の配合量は塗材組成物中の固形分換算で20重量%以下が好ましい。20重量%を超えると塗膜の弾性、耐久性に劣るため好ましくない。
【0010】
上記、塗材組成物中に配合する有機溶媒はホルムアルデヒド、トルエン、キシレン、パラジクロロベンゼン、エチルベンゼン、スチレン等の揮発性有機化合物を含まず、塗材組成物との相溶性、塗膜の乾燥性に優れて、さらに化学物質管理促進法(PRTR法)で規制されるような環境に有害な溶剤ではなく、臭気が少ない溶剤であるために好ましい。n−ヘプタン、イソヘキサンが好適である。添加量は、塗材組成物の固形分換算で0.1〜1.0重量%が好ましい。0.1重量%未満では低温時に施工した場合塗膜に亀裂が生じる可能性が高くなり、1.0重量%を超えると塗材の乾燥性が速く、作業時間が短くなるため好ましくない。
【0011】
塗材組成物中に骨材を配合する場合は、一般に塗材に配合されるものであれば何ら問題無く使用でき、具体的には、寒水石、珪砂、大理石、山砂、ガラス粉砕物、セラミック粉砕物等が使用できる。
【0012】
骨材の配合量は塗材組成物の固形分換算で10〜90重量%が好ましい。10重量%未満では塗材組成物の粘度が低くなり施工に適さない、90重量%を超えると塗材組成物の粘度が高くなり施工に適さなくなるため好ましくない。さらに、骨材の粒径としては、0.05〜5.0mmのものが好ましい。0.05mmより小さいと乾燥時に塗膜表面にひび割れが発生しやすく、5.0mmよりも大きくなると施工性が著しく低下するため好ましくない。
【0013】
塗布方法としてコテ、ローラー、吹き付けガン等を使用して、塗布量0.5〜1.5kg/m塗布し、下塗り層を形成する。適正粘度としては塗布作業の面から、300〜700Pa・S/30℃が好ましい。このような適正粘度にするため、下塗り層用の塗材組成物中に水を加えて調整することができる。
【0014】
該下塗り層の乾燥後、仕上がり外観によっては、下塗り層と同一の塗材組成物、塗布方法によって、仕上がりに適正な塗布量、施工方法で上塗り層を形成することができる。適正粘度としては塗布作業の面から、100〜900Pa・s/30℃が好ましい。このような適正粘度にするため、上塗り層用の塗材組成物中に水を加えて調整することができる。
【0015】
上記、塗布方法では下塗り層を形成後、同一の塗材組成物を使用して上塗り層を形成する2工程であるが、上塗り層だけの1工程で仕上げることも可能である。
【発明の効果】
【0016】
特有の風合いを持ち、意匠性に優れ、さらに、金属、ガラス、磁器タイル、コンクリート、サイディングボード、押出成形板、プラスチック等の各種素材の表面仕上げに使用することができる水系塗材組成物を得ることができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、実施例と比較例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
【0018】
実施例1〜6
下塗り材、上塗り材として表1に記載の塗材組成物を使用し、アクリル樹脂エマルジョンには、YJ−1701D(BASF社製、固形分55%)を25重量%、添加剤として、増粘剤、消泡剤、分散剤、防腐剤、防カビ剤を1.0重量%、充填剤には、重質炭酸カルシウム5.0重量%、骨材には、珪砂(平均粒径150μm)50重量%、顔料には酸化チタン4.0重量%を配合し、さらに、溶剤としてn−ヘプタンまたはイソヘキサン、メチルシクロヘキサンを添加し、水を加えて全体が100重量%となるように調整した。
実施例1〜6について以下の評価試験を行い、その結果を表1に示す。
【0019】
比較例1〜4
下塗り材、上塗り材として表1に記載の塗材組成物を使用し、アクリル樹脂エマルジョンには、YJ−1701D(BASF社製、固形分55%〉を25重量%、添加剤として、増粘剤、消泡剤、分散剤、防腐剤、防カビ剤を1.0重量%、充填剤には、重質炭酸カルシウム5.0重量%、骨材には、珪砂(平均粒径150μm)50重量%、顔料には酸化チタン4.0重量%を配合し、さらに、溶剤として、無、トルエン、n−ヘプタンまたはイソヘキサンを添加し、水を加えて全体が100重量%となるように調整した。
比較例1〜4について以下の評価試験を行い、その結果を表1に示す。
【0020】
試験方法
塗膜仕上がり性
下記乾燥試験(13℃、23℃)の乾燥後に割れ等の外観異常のないものを○、外観異常が生じたものを×とした。
【0021】
低温割れ試験
20mm厚の軽量モルタルを下地として、シーラーとして水系アクリル樹脂(JS−500、アイカ工業製)を塗布して乾燥したのち、表1に記載の塗材組成物を約2kg/mとなるように平滑に塗布し、左官コテを使用して段差をつけた。この試験体を−5℃、無風条件で3日間養生させた。養生終了後、段差部分に割れが生じているかどうかを目視にて確認した。
評価方法は下記基準で評価した。
○:段差をつけた部分にひび割れが生じていない
×:段差をつけた部分にひび割れが生じている
【0022】
乾燥試験(13℃、24時間)
20mm厚の軽量モルタルを下地として、シーラーとして水系アクリル樹脂(JS−500、アイカ工業製)を塗布して乾燥したのち、下塗り材として表1に記載の塗材組成物を1.0kg/mコテ塗り仕上げして下塗り層を形成し、乾燥後、該下塗り層に表1に記載の塗材組成物を2.0kg/mコテ塗り仕上げして塗装仕上した。この試験体を13℃の恒温槽内で養生させた。24時間後に円筒状の容器を塗膜に接着させ、容器内に水を張り、12時間後の塗膜の状態を指で触って確認した。
評価方法は下記基準で評価した。
○:硬い塗膜を形成しており、指で触っても塗膜がずれない
×:触ると塗膜が軟化しており、表面の膜がずれる
【0023】
乾燥試験(13℃、36時間)
20mm厚の軽量モルタルを下地として、シーラーとして水系アクリル樹脂(JS−500、アイカ工業製)を塗布して乾燥したのち、下塗り材として表1に記載の塗材組成物を1.0kg/mコテ塗り仕上げして下塗り層を形成し、乾燥後、該下塗り層に表1に記載の塗材組成物を2.0kg/mコテ塗り仕上げして塗装仕上した。この試験体を13℃の恒温槽内で養生させた。36時聞後に円筒状の容器を塗膜に接着させ、容器内に水を張り、12時間後の塗膜の状態を指で触って確認した。
評価方法は下記基準で評価した。
○:硬い塗膜を形成しており、指で触っても塗膜がずれない
×:触ると塗膜が軟化しており、表面の膜がずれる
【0024】
乾燥試験(23℃、12時間)
20mm厚の軽量モルタルを下地として、シーラーとして水系アクリル樹脂(JS−500 アイカ工業製)を塗布して乾燥したのち、下塗り材として表1に記載の塗材組成物を1.0kg/mコテ塗り仕上げして下塗り層を形成し、乾燥後、該下塗り層に表1に記載の塗材組成物を2.0kg/mコテ塗り仕上げして塗装仕上した。この試験体を23℃の恒温槽内で養生させた。12時間後に円筒状の容器を塗膜に接着させ、容器内に水を張り、12時間後の塗膜の状態を指で触って確認した。
評価方法は下記基準で評価した。
○:硬い塗膜を形成しており、指で触っても塗膜がずれない
×:触ると塗膜が軟化しており、表面の膜がずれる
【0025】
臭気試験
溶媒以外の臭気が存在し、構成が異なれば、異なるため、参考試験である。
三点比較式臭い袋法に操作を準じるが、希釈空気を無溶媒時の空気を使用し、溶媒以外の臭いをアンケートにより、除外し、新規の臭いの評価とした。50mの部屋で8m塗装仕上げを行う際に臭気を確認した。なお サンプリングは塗布後1時間で行い。作業前に外気を導入した。臭気は○、△、×の3段階で評価した。
○:臭気なし(溶媒の臭い感じることができない)
△:臭気有り(溶媒の臭い特定できる)
×:不快臭気有り
【0026】
【表1】

【0027】
実施例1〜6では、トルエンを含まず、低温の割れ、初期乾燥性においても比較例1のトルエンと同等の性能を示した。比較例3、4は乾燥後塗膜表面に細かい亀甲状のひび割れが生じ、仕上がり不良となった。比較例2溶媒無使用では低温割れ試験で塗膜表面に割れが発生していた。
【産業上の利用可能性】
【0028】
従来 微少夾雑物として、トルエン等が混入し、意図しない良調整剤となっていた。室内汚染物質の点、不使用を前提で、水系塗材の高意匠、高性能化には必要な発明である。







【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂エマルジョン、充填剤、顔料、増粘剤、分散剤、防カビ剤、防藻剤を少なくとも含む水系塗材であって、ホルムアルデヒド、トルエン、キシレン、パラジクロロベンゼン、エチルベンゼン、スチレンの揮発性有機化合物を含まない有機溶媒を含むことを特徴とする塗材組成物。





【請求項2】
請求項1に記載の有機溶剤が、n−ヘプタン、イソヘキサンのうち少なくとも1種類であり、配合の割合が全重量組成物中0.1〜1.0重量%の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の塗材組成物。













【公開番号】特開2007−23194(P2007−23194A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−209113(P2005−209113)
【出願日】平成17年7月19日(2005.7.19)
【出願人】(000100698)アイカ工業株式会社 (566)
【Fターム(参考)】