説明

塗膜の色の変化方法

【課題】 塗膜面の法線に対して、光の入射角を変化させた時に、無彩色の塗膜から鮮やかな有彩色の塗膜へと劇的な変化する塗膜を形成することができる塗膜の色の変化方法を提供する。
【解決手段】 (A)角度依存性の干渉効果を有する光輝材、及び(B)金属酸化物被覆マイカ及び/又は金属酸化物被覆アルミナフレークを、(A)成分の(B)成分に対する含有比率((A)/(B))が、固形分質量比で2.5/1〜1/6である割合で含有しており、塗膜のフェイスアングルにおける(A)成分の干渉色と(B)成分の干渉色が補色関係にある塗料組成物を塗装し、得られる塗膜の観察角度をフェイスアングルからグレイジングアングルへと変化させたときに該塗膜の色を無彩色から有彩色に変化させることを特徴とする塗膜の色の変化方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗膜面の法線に対して、光の入射角を変化させた時に、無彩色の塗膜から鮮やかな有彩色の塗膜へと劇的な変化する塗膜を形成することができる塗料組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、角度依存性の干渉効果を持つ光輝材を含有する塗料を使用した場合、形成される塗膜の観察角度をフェイスアングルからグレイジングアングルへと変化させることによって得られる正反射光の干渉色相の変化は有彩色から異なった色相の有彩色への変化のみであり、フェイスアングルにおいて無彩色となり、かつグレイジングアングルにおいて有彩色に変化するような効果は得られなかった。
【0003】
たとえば、見る角度により異なる発色を呈する、落ち着きのある2色性を可能にした2色性塗料組成物として、(1)ビヒクル、(2)金属酸化物被覆シリカフレーク顔料、更に必要に応じて(3)光輝性顔料及び/又は着色顔料を含有する2色性塗料組成物が知られている(特許文献1参照)。しかしながら、塗装後の塗膜を見る俯瞰角度を、フェイスアングルであるほぼ真上90度から、グレイジングアングルとなる15度程度に移動させたときに、無彩色から有彩色へと変化する効果は得られなかった。
【0004】
また、塗膜を見る角度によって3色性の意匠を発現可能な光輝性塗料組成物として、ビヒクルおよび2種以上の干渉光輝性顔料を含有するクリヤー塗料組成物であって、上記2種以上の干渉光輝性顔料の中のある一種が(a)平均粒径5〜10μmの干渉光輝性顔料、および他の一種が(b)平均粒径10〜30μmで、かつ(a)の干渉光輝性顔料と非同系の干渉色を発現する干渉光輝性顔料であり、(c){(b)の干渉光輝性顔料の平均粒径−(a)の干渉光輝性顔料の平均粒径=10〜25μm}の関係にある光輝性塗料組成物が知られている(特許文献2参照)。しかしながら、この光輝性塗料組成物から形成される塗膜は、見る角度によって色は異なるが、ハイライトの彩度のほうがシェードの彩度より高く、フェイスアングルにおいては無彩色となり、グレイジングアングルにおいては有彩色となるような効果は得られなかった。
【0005】
また、色域の選択度が高い着色光輝性顔料と他の光輝性顔料との相乗効果により、シェード部での白ボケの少ない深み感とハイライト部での高彩度感を呈する塗膜を得ることができるものとして、(a)薄片状基材の表面全体が実質的に、珪素酸化物を主成分とするマトリックス中に着色顔料を分散させた層によって被覆されている第1光輝性顔料、(b)前記第1光輝性顔料と異なる光輝性顔料からなる第2光輝性顔料、および(c)ビヒクルを含有する光輝性塗料組成物であって、第1光輝性顔料と前記第2光輝性顔料との総含有量が、顔料質量含有量(PWC)で、1〜30%である光輝性塗料組成物が知られている(特許文献3参照)。しかしながら、この光輝性塗料組成物から形成される塗膜は、ハイライトでは高彩度でシェードでは彩度が低く、フェイスアングルにおいては無彩色となり、グレイジングアングルにおいては有彩色となるような効果は得られなかった。また、グレイジングアングルにおける塗膜の色が黒い深みのある無彩色であり、フェイスアングルからみたときの色が有彩色であり、本願発明者が目指している新規な意匠とは異なるものであった。
【0006】
また、干渉マイカ顔料含有塗膜に起こる、シェード位置から見た場合に底色が白くなる(無色化する)現象を二酸化チタンコートシリカフレークを用いることで抑制し、透明感に優れた積層パール塗膜を得る方法として、下塗り塗膜及び中塗り塗膜が形成された基材上にマイカベース塗膜を形成する工程;マイカベース塗膜を硬化させないでその上にクリヤー塗膜を形成する工程;及び加熱することによりマイカベース塗膜及びクリヤー塗膜を硬化させる工程;を包含する積層パール塗膜の形成方法において、該マイカベース塗膜を形成するマイカベース塗料が、二酸化チタンコートシリカフレークを、顔料質量含有量(PWC)1〜18%の範囲でを含有し、且つ、該積層パール塗膜の明度がL値で0〜30であることを特徴とする積層パール塗膜の形成方法が知られている(特許文献4参照)。しかしながら、この積層パール塗膜は、ハイライトでは高彩度でシェードでは彩度が低く、フェイスアングルにおいては無彩色となり、グレイジングアングルにおいては有彩色となるような効果は得られなかった。また、また、グレイジングアングルにおける塗膜の色が黒い深みのある無彩色であり、フェイスアングルからみたときの色が有彩色であって、本願発明者が目指している新規な意匠とは異なるものであった。
【0007】
また、シェード部で高彩度感が得られ、ハイライト部とシェード部とで干渉色の色差が強調され、多色性のある意匠を発現可能な、より高級感のある光輝感を得る塗膜を形成することができる光輝性塗料組成物として、ビヒクル、干渉光輝性顔料および複合酸化物焼成顔料を含有する塗料組成物であって、前記干渉光輝性顔料の干渉色色相をマンセル表示系における色相0とし、マンセル色相環100に対し、左廻り+50、右廻り−50で表示した際に、複合酸化物焼成顔料の干渉色色相Hが、+30〜+50、または−30〜−50の色相範囲にある光輝性塗料組成物が知られている(特許文献5参照)。しかしながら、干渉光輝性顔料に着色顔料を加えることにより、形成される塗膜は、フェイスアングルにおける色は光輝性顔料よりも着色力の高い着色顔料の色相に大きく影響されて有彩色となり、フェイスアングルにおいては無彩色でグレイジングアングルにおいては有彩色となるような効果は得られなかった。
【0008】
また、顔料の補色関係を利用した意匠性メタリック塗料として、(A)皮膜形成バインダー100重量部に対し、(B)メタリック粉末0.1〜15重量部、(C)フタロシアニン系、ペリレン系、インダンスロン系、アゾメチン系、ベンズイミダゾロン系、キナクリドン系、アンスラキノン系、ジケトピロロピロール系及びジオキサジン系から選ばれる一次粒径0.01〜0.2μmの第1の着色顔料0.1〜10重量部、並びに(D)ジケトピロロピロール系、キナクリドン系、ピラゾロン系、ナフトールAS系、酸化鉄系及び複合金属酸化物系から選ばれる一次粒径0.1〜2μmの第2の着色顔料0.5〜50重量部を含有し、顔料(C)の一次粒径は顔料(D)より相対的に小さく、かつ顔料(C)と顔料(D)が補色の関係にある塗料組成物が知られている(特許文献6参照)。しかし、この塗料組成物から形成される塗膜は、フェイスアングルにおいては無彩色でグレイジングアングルにおいては有彩色となるような効果は得られなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000−086943号公報
【特許文献2】特開2003−073620号公報
【特許文献3】特開2005−126467号公報
【特許文献4】特開2001−327915号公報
【特許文献5】特開2002−121494号公報
【特許文献6】特開平9−235492号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】RaimundSchmid et.al “European Coatings Journal” (7-8) P 702-705 (1997)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
光輝性顔料の組合せによる相乗効果によって、角度依存性があり、かつ、高い彩度を有する塗膜を形成できる塗料組成物は知られていたが、塗膜の観察角度をフェイスアングルからグレイジングアングルへと変化させることにより連続的に色相が変化し、かつフェイスアングルにおいては無彩色でグレイジングアングルにおいては有彩色となるような塗膜を形成することができる塗料組成物は得られていなかった。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を解決するべく、鋭意研究を重ねた結果、(A)角度依存性の干渉効果を有する光輝材と(B)金属酸化物被覆マイカ及び/又は金属酸化物被覆アルミナフレークを特定割合で含有させ、塗膜のフェイスアングルにおける(A)成分の干渉色と(B)成分の干渉色を補色関係にすることにより、課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明は、(A)角度依存性の干渉効果を有する光輝材、及び(B)金属酸化物被覆マイカ及び/又は金属酸化物被覆アルミナフレークを、(A)成分の(B)成分に対する含有比率((A)/(B))が、固形分質量比で2.5/1〜1/6である割合で含有しており、塗膜のフェイスアングルにおける(A)成分の干渉色と(B)成分の干渉色が補色関係にある塗料組成物を塗装し、得られる塗膜の観察角度をフェイスアングルからグレイジングアングルへと変化させたときに該塗膜の色を無彩色から有彩色に変化させることを特徴とする塗膜の色の変化方法(ここで、フェイスアングルとは、光源の入射角度が0度から約25度の範囲にあり、受光角が入射角の正反射近傍(正反射角±10度の範囲)である観察角度のことを指し、グレイジングアングルとは入射角度が約65度から90度の範囲にあり、受光角が入射角の正反射近傍である観察角度のことを指す。)を提供する。
また、本発明は、(A)角度依存性の干渉効果を有する光輝材、及び(B)金属酸化物被覆マイカ及び/又は金属酸化物被覆アルミナフレークを、(A)成分の(B)成分に対する含有比率((A)/(B))が、固形分質量比で2.5/1〜1/6である割合で含有する塗料組成物であって、塗膜のフェイスアングルにおける(A)成分の干渉色と(B)成分の干渉色が補色関係にあり、該塗料組成物を塗装して得られる塗膜の観察角度をフェイスアングルからグレイジングアングルへと変化させたときに該塗膜の色が無彩色から有彩色に変化することを特徴とする塗料組成物(ここで、フェイスアングルとは、光源の入射角度が0度から約25度の範囲にあり、受光角が入射角の正反射近傍(正反射角±10度の範囲)である観察角度のことを指し、グレイジングアングルとは入射角度が約65度から90度の範囲にあり、受光角が入射角の正反射近傍である観察角度のことを指す。)を提供する。
また、本発明は、上記塗料組成物において、(A)角度依存性の干渉効果を有する光輝材が、金属酸化物被覆シリカフレーク、及び/又は干渉アルミニウムである塗料組成物を提供する。
また、本発明は、上記塗料組成物において、前記塗料組成物が、さらに(C)黒色顔料を含有する塗料組成物を提供する。
【0014】
また、本発明は、(A)角度依存性の干渉効果を有する光輝材、及び(B)金属酸化物被覆マイカ及び/又は金属酸化物被覆アルミナフレークを、(A)成分の(B)成分に対する含有比率((A)/(B))が、固形分質量比で2.5/1〜1/6である割合で含有する塗料組成物を塗装して塗膜を形成する方法において、塗膜のフェイスアングルにおける(A)成分の干渉色と(B)成分の干渉色を補色関係にすることにより、該塗料組成物を塗装して得られる塗膜の観察角度をフェイスアングルからグレイジングアングルへと変化させたときに該塗膜の色が無彩色から有彩色に変化する塗膜を形成することを特徴とする塗膜形成方法(ここで、フェイスアングルとは、光源の入射角度が0度から約25度の範囲にあり、受光角が入射角の正反射近傍(正反射角±10度の範囲)である観察角度のことを指し、グレイジングアングルとは入射角度が約65度から90度の範囲にあり、受光角が入射角の正反射近傍である観察角度のことを指す。)を提供する。
また、本発明は、上記塗料組成物をベースコート塗料として塗装してベースコート塗膜を形成し、該ベースコート塗膜の上にクリヤー塗料を塗装してクリヤー塗膜を形成することを特徴とする塗膜形成方法を提供する。
また、本発明は、第1ベースコート塗料を塗装して第1ベースコート塗膜を形成し、該第1ベースコート塗膜の上に、上記塗料組成物を第2ベースコート塗料として塗装して第2ベースコート塗膜を形成し、さらに、該第2ベースコート塗膜の上に、クリヤー塗料を塗装してクリヤーコート塗膜を形成することを特徴とする塗膜形成方法を提供する。
また、本発明は、上記塗膜形成方法により得られる塗膜を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の塗料組成物は、塗膜の観察角度をフェイスアングルからグレイジングアングルへと変化させることにより連続的に色相が変化し、かつフェイスアングルにおいては無彩色でグレイジングアングルにおいては有彩色となるという優れた意匠性を有する塗膜を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1はフェイスアングル、グレイジングアングルを示した説明図である。
【図2】図2は本発明の実施例と比較例の「ab色度図」を示した説明図である。
【図3】図3はマンセル表色系の色相環を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
最初に、本発明に用いる用語の定義について説明する。
正反射角とは、測定塗膜の法線に対して入射光と対称な角度で正反射したときの角度をいう。
補色関係とは、マンセル表色系の色相環において相対する関係にある色相をいう。
より具体的には、色相環100に対して、(A)成分の干渉色をマンセル表示系における色相0とし、この色相に対して、左廻り+50、右廻り−50で表示した際に、(B)成分の干渉色が、+30〜+50、または−30〜−50の色相範囲にあることを補色関係という。図3にマンセル表色系の色相環を示す。
また、本発明に用いられる角度依存性の干渉効果を有する光輝材、金属酸化物被覆マイカ、金属酸化物被覆アルミナフレーク等の単独の色相は、「標準色票(JIS Z8721準拠、財団法人日本規格協会 1981年発行)」との比較により、最も近い色票を選び、その色相(マンセル表記)とした。
【0018】
フェイスアングルとは、入射角度が0度から約25度の範囲にあり、受光角が入射角の正反射近傍(正反射角±10度の範囲)である観察角度のことを指し、グレイジングアングルとは入射角度が約65度から90度の範囲にあり、受光角が入射角の正反射近傍(正反射±10度の範囲)である観察角度のことを指す。理解をしやすいように、「図1」にて、これらを示す。なお、( a )は、塗膜面の法線である。
また、フェイスアングル、グレイジングアングルについては、Raimund Schmid らの「ヨーロピアン・コーティング・ジャーナル 1997年7〜8月号 702〜705頁」(非特許文献1参照)に説明がある。
【0019】
干渉色の彩度とは、変角分光測色計において、入射角の正反射付近の受光角において測定される彩度の値をいう。
角度依存性の干渉効果を有するとは、塗膜に対し、複数の入射角に対する各々の正反射角付近での受光角における色相が異なっていることをいう。
例えば、金属酸化物被覆マイカの場合、干渉効果はあるが、角度による色相の変化はなく、赤色系のマイカはどの角度でも赤色であり、緑色系のマイカはどの角度でも緑色であることから、角度依存性の干渉効果を有する光輝材には該当しない。
【0020】
無彩色から有彩色へと彩度が変化するとは、変角分光測色計による塗膜の測色において、入射角が65〜75の場合には正反射角が高い彩度(C値で表記する場合、数値が大きいほど高い彩度を示す)でありながら、入射角が0度の場合には正反射角が低い彩度(C値が10以下)になることをいう。
なお、本発明において用いた変角分光測色計は、株式会社村上色彩技術研究所製「変角高速分光光度計GSP−2型(変角分光測色システムGCMS−4)」である。
【0021】
また、色相の連続的な変化とは、塗膜面の法線に対して、入射角と反射角とが「0度と―10度(マイナス10度)」「25度と15度」「45度と35度」「65度と55度」「75度と65度」の条件で測色した「ab色度図」の(a,b)5つの値をab座標軸にプロットしたとき、座標上の5つの測色値が、弧を描くように連続的に変化することをいう。
【0022】
以下、本発明の詳細な説明を行う。
本発明の塗料組成物に用いられる(A)成分である角度依存性の干渉効果を有する光輝材とは、塗膜になった場合、複数の入射角に対する各々の正反射角付近での受光角における色相が異なっている材料をいう。具体的には、金属酸化物被覆シリカフレーク、及び干渉アルミニウムなどが該当し、単独又は併用することができる。
【0023】
金属酸化物被覆シリカフレークは、例えば、特開2000−086943号公報(特許文献1)に開示されているものが挙げられ、その具体例としては、例えば、酸化鉄(一酸化鉄、又は三酸化二鉄)又は二酸化チタンで被覆された二酸化珪素フレークなどが挙げられる。
酸化鉄被覆シリカフレーク、及び、二酸化チタン被覆シリカフレークの市販品としては、例えば、メルク社製の製品名「カラーストリーム」シリーズなどが挙げられる。
【0024】
また、干渉アルミニウムは、アルミニウムフレークを基材として、シリカ層、金属粒子層、保護層などにより表面処理されたものなどが挙げられ、市販品としては、例えば、東洋アルミニウム社製の製品名「クロマシャイン」などが挙げられる。
【0025】
本発明において、(B)成分である金属酸化物被覆マイカ及び金属酸化物被覆アルミナフレークは、例えば、光輝性塗料用の光輝材として使用されるものが挙げられる。
金属酸化物被覆マイカとしては、薄片状マイカ粒子の表面に金属酸化物被覆を形成したものが挙げられ、天然の白雲母や合成雲母の表面に二酸化チタン、酸化鉄やその他にクロム、コバルト、錫、ジルコニウム等の金属酸化物の薄膜をコーティングした干渉マイカ顔料などが挙げられる。
【0026】
金属酸化物被覆アルミナフレ−クとしては、薄片状の酸化アルミニウム(Al2 O3 )、好ましくは酸化チタンを含有する薄片状酸化アルミニウムを二酸化チタン、酸化鉄等の屈折率の大きい金属酸化物により被覆したものが挙げられ、市販品としては、例えば、メルク社製の製品名「シラリック
」などが挙げられる。
【0027】
本発明は、観察角度をフェイスアングルからグレイジングアングルへと変化させたときに連続的に色相が変化し、フェイスアングルにおいては無彩色でグレイジングアングルにおいては有彩色となることを特徴とするものであるが、その必須要件として、(A)成分のフェイスアングルにおける干渉色と(B)成分のフェイスアングルにおける干渉色とが補色関係となっていることである。
彩度の変化については、入射角度が75度のときの変角高速分光光度計で測定される彩度の数値が、0度のときの数値に比べ10以上となることが好ましく、15以上となることがより好ましい。
【0028】
前記したように、正反射角とは、測定塗膜の法線に対して入射光と対称な角度で正反射したときの角度をいい、補色関係とは、マンセル表色系の色相環において相対する関係にある色相のことである。より具体的には、色相環100に対して、(A)成分の干渉色をマンセル表示系における色相0とし、この色相に対して、左廻り+50、右廻り−50で表示した際に、(B)成分の干渉色が、+30〜+50、または−30〜−50の色相範囲にあることを補色関係という。
より好ましくは、(B)成分の干渉色が+35〜+50、または−35〜−50の色相範囲に、特に好ましくは、+40〜+50、または−40〜−50の色相範囲にある場合、無彩色から有彩色への彩度の劇的な変化がより一層顕著である。
(A)成分の色相に対して、(B)成分の干渉色が、+30〜+50、または−30〜−50の色相範囲にない場合、無彩色から有彩色への彩度の変化はみられない。
【0029】
本発明の塗料組成物における(A)成分の(B)成分に対する含有比率((A)/(B))は、固形分質量比で2.5/1〜1/6であり、好ましくは2/1〜1/5であり、より好ましくは1.5/1〜1/4.5である。
(A)成分の含有比率が(B)成分に対して、2.5倍よりも多い場合や、(B)成分の1/6より少ない場合は、観察角度をフェイスアングルからグレイジングアングルへと変化させることにより連続的に色相が変化し、かつフェイスアングルにおいては無彩色でグレイジングアングルにおいては有彩色となるという効果が見られなくなる。
【0030】
また、(A)成分と(B)成分との総含有量は、塗料全固形分中0.5〜40質量%が好ましく、1.0〜30質量%がより好ましく、特に好ましくは2.0〜25質量%である。
(A)成分と(B)成分との総含有量が塗料全固形分中0.5質量%未満の場合、観察角度をフェイスアングルからグレイジングアングルへと変化させることにより連続的に色相が変化し、かつフェイスアングルにおいては無彩色でグレイジングアングルにおいては有彩色となる効果が低下する。40質量%を超えると塗膜の外観性が低下する。
【0031】
本発明の塗料組成物には、さらに(C)成分として、黒色顔料を含有させることができる。黒色顔料を含有させることにより(A)成分及び(B)成分の干渉効果が強まる効果がある。
黒色顔料としては、カーボンブラック、黒色酸化鉄などの無機顔料や、または有機顔料を用いることができるが、カーボンブラックが特に好ましい。
また、本発明に用いられる(C)成分は、(A)成分と(B)成分との総含有量に対して、0.1〜200質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜150質量%であり、特に好ましくは1.0〜130質量%である。
【0032】
(C)成分の含有量が(A)成分と(B)成分の総含有量に対して0.1%未満では、塗料の隠蔽性能が低下し、200質量%を超える場合は、(A)成分及び(B)成分の干渉効果が弱まり、全ての角度において干渉色の彩度が低下してしまう。
本発明の塗料組成物において使用する塗膜形成樹脂としては、通常、塗料用の塗膜形成樹脂として使用されている樹脂を制限なく使用できる。その具体例としては、例えばアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ポリオレフィン樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、フッ素樹脂、シリコン樹脂等の1種単独又は2種以上の組み合わせが挙げられる。
【0033】
本発明の塗料組成物は、前記1種単独又は2種以上の塗膜形成樹脂を含有する非架橋のラッカータイプ塗料組成物とすることもでき、又は、前記1種単独又は2種以上の塗膜形成樹脂と、例えば、アミノ樹脂、(ブロック)ポリイソシアネ−ト化合物、エポキシ化合物等の1種単独又は2種以上の組み合わせからなる架橋形成樹脂と組み合わせて架橋硬化型塗料組成物とすることもできる。
【0034】
本発明の塗料組成物には、必要に応じてその他の着色顔料および各種添加剤などを配合することができる。着色顔料としては従来から塗料用に常用されているものが用いられ、例えば有機系としてはアゾレ−キ系顔料、フタロシアニン顔料、インジゴ系顔料、ペリノン系顔料、ペリレン系顔料、キノフタロン系顔料、ジオキサジン系顔料、キナクリドン系顔料等を挙げる事ができ、無機系としては黄色酸化鉄、ベンガラ、二酸化チタン等が挙げられる。
【0035】
また、添加剤としてはベンゾトリアゾール、蓚酸アニリド系等の紫外線吸収剤、ベンゾフェノ−ル系等の酸化防止剤、シリコ−ン系等のレベリング剤、ワックス、有機ベントナイト等の粘性制御剤、硬化触媒等が挙げられる。
本発明の塗料組成物は、有機溶剤に溶解して使用することができる。有機溶剤としては、芳香族炭化水素系溶剤、エステル系溶剤、ケトン系溶剤、アルコ−ル系溶剤、エ−テル系溶剤等が使用できる。
【0036】
本発明の塗料組成物の塗装は、通常の塗装方法、例えば、エアースプレー、静電エアースプレー、エアレススプレーなどのスプレー塗装方法、ロールコーター、フローコーター、ディッピング形式による塗装機等の通常使用される塗装機を用いる塗装方法、又は刷毛、バーコーター、アプリケーターなどを用いる塗装方法が挙げられる。これらのうちスプレー塗装方法が好ましい。
【0037】
本発明の塗料組成物が塗装される基材としては、鉄、アルミニウム、マグネシウムもしくはこれらの合金を含む金属類、ガラス、コンクリ−ト等の無機材料の成形品、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリアミド、ポリアクリル、ポリエステル、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリカーボネート、ポリウレタン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体等の樹脂の成形品および各種FRPなどのプラスチック材料の成形品、木材、紙などが挙げられる。なお、これらの基材に予め電着塗料や中塗り塗料を塗装することは任意である。
【0038】
本発明の塗料組成物は、自動車用途や工業用途におけるベースコートとして用いることが適している。それ故、基材に、本発明の塗料組成物を塗装し、次にクリヤー塗料を塗装する2コート1ベーク又は2コート2ベーク塗装方法による塗膜形成方法や、本発明の塗料の下塗りとして、第1ベースコート塗料を塗装し、次に本発明の塗料組成物を第2ベースコートとして塗装し、次にクリヤー塗料を塗装する3コート1ベーク、3コート2ベーク、3コート3ベーク塗装方法による塗膜形成方法が用いられる。
特に、第1ベースコートに、白色又は淡彩色のベースコートを用いたり、濃彩色のベースコートを用いたりすることで、3層からなる塗膜の明度を調整することができ、意匠性のバリエーションを広げることができる。
【0039】
本発明における明度とは、色彩色差計CR−400(コニカミノルタ社製)のL値をいい、20〜80が好ましく、35〜70がより好ましい。
本発明の塗料組成物を用いた塗膜形成方法におけるクリヤーコートには公知のものを使用することができる。
また、本発明の塗料組成物を用いた塗膜形成方法における第1ベースコートには、通常、着色ベースコート又はカラーベースコートとして公知のものが用いられ、例えば、特開2007−216220号公報に開示されているものなどが挙げられる。
【0040】
本発明の塗料組成物を用いた塗膜形成方法において、第1ベースコートを用いる場合、その乾燥塗膜厚は2〜40μmが好ましく、より好ましくは5〜30μmである。また、本発明の塗料組成物の乾燥塗膜厚は1〜30μmが好ましく、より好ましくは3〜25μmであり、特に好ましくは、5〜20μmである。さらに、クリヤー塗料の乾燥塗膜厚は、10〜70μmが好ましく、より好ましくは20〜50μmである。
本発明の塗料組成物の乾燥塗膜厚が1μm未満では、下地が隠蔽できないおそれがあり、30μmを超えた場合、塗装時にワキ・タレ等の不具合が起こることがあり好ましくない。
【0041】
本発明の塗膜形成方法においては、クリヤーコート塗料を、ベースコート塗膜上に塗装し、クリヤーコート塗膜層を形成し、そのクリヤーコート塗膜層を焼付け硬化させるが、クリヤーコート塗膜層の焼付け温度は、通常120〜180℃の範囲で適宜選定すればよく、焼付け時間は、通常10〜60分間の範囲で適宜選定すればよい。

第1ベースコート、本発明の第2ベースコート、クリヤーコートからなる3コートの場合も、各ベースコートを焼付けることなく、ウェットオンウェットにて塗り重ね、クリヤー塗料を塗装後に、1度に焼付ける3コート1ベーク方式が、省エネルギーの点からも好ましい。
【実施例】
【0042】
以下に、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例によってなんら制限されるものではない。
【0043】
<製造例1>
ベースコート塗料組成物B−1の調製
ビーカーに、(A)角度依存性の干渉効果を有する光輝材として二酸化チタン被覆シリカフレーク(メルク社製、商品名「カラーストリーム(Colorstream) T20−04WNT」、フェイスアングルにおける色相:イエローグリーン系統色)5質量部及び、(B)金属酸化物被覆マイカ(メルク社製、商品名「イリオジン223WNT」、フェイスアングルにおける色相:バイオレット系統色、カラーストリーム T20−04WNTとフェイスアングルにおける補色関係にある)5質量部を、混合有機溶剤(トルエン/キシレン/酢酸ブチル/ブタノールの質量比=30/40/20/10)10質量部に混合してウェットさせ、次に、別の容器に、アクリル樹脂ワニス(BASFコーティングスジャパン(株)製、商品名「LB−7800」、加熱残分50質量%、水酸基価46mgKOH/g、酸価7mgKOH/g、数平均分子量20,000)120質量部とブチル化メラミン樹脂ワニス(三井化学社(株)製、商品名「ユーバン20SE」、加熱残分60質量%)50質量部と上記混合溶剤30質量部とを混合撹拌させ、その混合ワニス溶液中に、ウェットさせた(A)と(B)の混合物を撹拌しながら徐々に加え、均一になるように十分に撹拌し、ベース塗料組成物B−1を得た。
【0044】
<製造例2>
ベースコート塗料組成物B−2の調製
分散容器に、アクリル樹脂ワニス「LB−7800」15質量部とカーボンブラック(デグサ社製、商品名「ピグメントブラックFW200」)1.5質量部とキシレン13.5質量部とを、サンドミルにて、粒度が10μm以下になるまで分散して、カーボンブラック塗料組成物を調製した。
【0045】
ビーカーに、(A)角度依存性の干渉効果を有する光輝材として二酸化チタン被覆シリカフレーク(メルク社製、商品名「カラーストリーム(Colorstream) T20−04WNT」、フェイスアングルにおける色相:イエローグリーン系統色)5質量部及び、(B)金属酸化物被覆マイカ(メルク社製、商品名「イリオジン223WNT」、フェイスアングルにおける色相:バイオレット系統色、カラーストリーム T20−04WNTとフェイスアングルにおける補色関係にある)5質量部を、混合有機溶剤(トルエン/キシレン/酢酸ブチル/ブタノールの質量比=30/40/20/10)10質量部に混合してウェットさせ、次に、別の容器に、アクリル樹脂ワニス「LB−7800」120質量部とブチル化メラミン樹脂ワニス「ユーバン20SE」50質量部と上記混合溶剤30質量部とを混合撹拌させ、その混合ワニス溶液中に、ウェットさせた(A)と(B)の混合物を撹拌しながら徐々に加え、十分撹拌した。次に、上記のカーボンブラック塗料組成物全量を加え、均一になるように十分に撹拌を行い、ベース塗料組成物B−2を得た
【0046】
<製造例3〜15>
ベースコート塗料組成物B−3〜15の調製
製造例2と同様にして、表1及び表2に示した原料を用いて、ベースコート塗料組成物B−3〜B−15を得た。
【0047】
<製造例16>
ベースコート塗料組成物B−16の調製
分散容器に、アクリル樹脂ワニスアクリル樹脂ワニス「LB−7800」15質量部、紫色系有機顔料(クラリアント社(株)製、商品名「ホスタパームバイオレットBL」)1.5質量部とキシレン13.5質量部とを、サンドミルにて、粒度が10μm以下になるまで分散して、着色顔料塗料組成物を調製した。
【0048】
ビーカーに、(A)角度依存性の干渉効果を有する光輝材として二酸化チタン被覆シリカフレーク(メルク社製、商品名「カラーストリーム(Colorstream)T20−04WNT」、フェイスアングルにおける色相:イエローグリーン系統色)5質量部を、混合有機溶剤(トルエン/キシレン/酢酸ブチル/ブタノールの質量比=30/40/20/10)10質量部でウェットさせ、次に、別の容器に、アクリル樹脂ワニス「LB−7800」120質量部とブチル化メラミン樹脂ワニス「ユーバン20SE」50質量部と上記混合溶剤30質量部とを混合撹拌させ、その混合ワニス溶液中に、ウェットさせた(A)を撹拌しながら徐々に加え、十分撹拌した。
次に、上記の着色顔料塗料組成物全量と、製造例2と同じ方法で製造したカーボンブラック塗料組成物全量とを加え、均一になるように十分に撹拌を行い、ベース塗料組成物B−16を得た。
【0049】
【表1】

【0050】
【表2】

【0051】
なお、表1及び表2中の原料の(A)〜(D)成分について、下記に詳しく説明する。
(A1)カラーストリーム(Colorstream) T20−04WNT:メルク社製、二酸化チタン被覆シリカフレーク、フェイスアングルにおける色相10GY(イエローグリーン系統色)
(A2)カラーストリームT20−03WNT:メルク社製、二酸化チタン被覆シリカフレーク、フェイスアングルにおける色相5GY(グリーン系統色)
(A3)カラーストリームT20−01WNT:メルク社製、二酸化チタン被覆シリカフレーク、フェイスアングルにおける色相10P(レッド系統色)
【0052】
(A4)クロマシャイン(Chromashine)GR20R:東洋アルミニウム社製、干渉アルミニウムフレーク、フェイスアングルにおける色相7.5GY(イエローグリーン系統色)
(B1)イリオジン 223WNT:メルク社製、金属酸化物被覆マイカ、フェイスアングルにおける色相7.5P(バイオレット系統色)、カラーストリーム T20−04WNT、T20−03WNT、及びクロマシャイン GR20Rとフェイスアングルにおける補色関係にある(色相環100に対して、カラーストリーム T20−04WNTの干渉色をマンセル表示系における色相0とし、この色相に対して、左廻り+50、右廻り−50で表示した際に、イリオジン 223WNTの干渉色が、右廻り−47.5であり、また、色相環100に対して、カラーストリーム T20−03WNT、及びクロマシャイン GR20Rの干渉色をマンセル表示系における色相0とし、この色相に対して、左廻り+50、右廻り−50で表示した際に、イリオジン 223WNTの干渉色が、それぞれ左廻り+47.5、左廻り+50.0である)
【0053】
(B2)イリオジン ウルトラ7235WNT:メルク社製、金属酸化物被覆マイカ、フェイスアングルにおける色相が10GY(グリーン系統色)、カラーストリーム T20−01WNTとフェイスアングルにおける補色関係にある(色相環100に対して、カラーストリーム T20−01WNTの干渉色をマンセル表示系における色相0とし、この色相に対して、左廻り+50、右廻り−50で表示した際に、イリオジン ウルトラ7235WNTの干渉色が、左廻り+50.0である)
【0054】
(B3)シラリック(Xirallic)T60−22WNT:メルク社製、金属酸化物被覆アルミナフレーク、フェイスアングルにおける色相が7.5P(バイオレット系統色)、カラーストリーム T20−04WNTとフェイスアングルにおける補色関係にある(色相環100に対して、カラーストリーム T20−04WNTの干渉色をマンセル表示系における色相0とし、この色相に対して、左廻り+50、右廻り−50で表示した際に、シラリック(Xirallic)T60−22WNTの干渉色が、右廻り−47.5である)
【0055】
(B4)イリオジン 231WNT:メルク社製、金属酸化物被覆マイカ、フェイスアングルにおける色相が7.5GY(グリーン系統色)、カラーストリーム T20−04WNTと同系色(補色関係ではない、色相環100に対して、カラーストリーム T20−04WNTの干渉色をマンセル表示系における色相0とし、この色相に対して、左廻り+50、右廻り−50で表示した際に、イリオジン 231WNTの干渉色が、左廻り+2.5である)
【0056】
(C1)ピグメントブラックFW200:デグサ社製、カーボンブラック顔料
(D1)アルペースト TCR2060:東洋アルミニウム社製、アルミニウムフレーク、加熱残分75質量%
(D2)ホスタパームバイオレットBL:クラリアントジャパン社製、紫系有機顔料、フェイスアングルにおける色相が2.5RP(バイオレット系統色)、カラーストリーム T20−04WNTとフェイスアングルにおける補色関係にある(色相環100に対して、カラーストリーム T20−04WNTの干渉色をマンセル表示系における色相0とし、この色相に対して、左廻り+50、右廻り−50で表示した際に、ホスタパームバイオレットBLの干渉色が、左廻り+47.5である)
【0057】
<実施例1〜10、比較例1〜6>
2C1B塗装システムにおける評価用試験片の作成
リン酸亜鉛処理軟鋼板にカチオン電着塗料(BASFコーティングスジャパン(株)製、商品名「アクアNo.4200」)を乾燥膜厚20μmとなるよう電着塗装して175℃で25分間焼き付け、さらに中塗り塗料(BASFコーティングスジャパン(株)製、商品名「アクアGXシーラー」)を乾燥膜厚30μmとなるようエアースプレー塗装し、140℃で30分間焼き付けた。次に、ベースコート塗料として、上記のベースコート塗料組成物B−1をスプレー塗装粘度12〜13秒(20℃、フォードカップ#4)になるように、上記混合有機溶剤にて希釈して、乾燥膜厚15μmとなるようエアースプレー塗装し、室温にて10分間セッティングした後、アクリル・メラミン樹脂系クリヤー塗料(BASFコーティングスジャパン株式会社製、商品名「ベルコートNo.6200クリヤー」)を芳香族石油ナフサ(エッソ(株)製、商品名「ソルベッソ100」)で塗装粘度(フォードカップ#4、20℃で25秒)に希釈したものをウェット・オン・ウェット方式で乾燥膜厚30μmとなるようエアースプレー塗装し、140℃で30分間焼き付けて試験片を作成した。
実施例2〜10、比較例1〜6の場合も同様にして試験片を作成した。
【0058】
<実施例11>
3C1B塗装システムにおける評価用試験片の作成
リン酸亜鉛処理軟鋼板にカチオン電着塗料(BASFコーティングスジャパン(株)製、商品名「アクアNo.4200」)を乾燥膜厚20μmとなるよう電着塗装して175℃で25分間焼き付け、さらに中塗り塗料(BASFコーティングスジャパン(株)製、商品名「アクアGXシーラー」)を乾燥膜厚30μmとなるようエアースプレー塗装し、140℃で30分間焼き付けた。次に、ダークグレー色の第1ベースコート塗料(BASFコーティングス社製、商品名「ベルコートNo.6000ダークグレー」)を乾燥膜厚10μmとなるようエアースプレー塗装し、室温にて10分間セッティングした後、次に、第2ベースコート塗料として、上記のベースコート塗料組成物B−2を乾燥膜厚8μmとなるようエアースプレー塗装し、室温にて10分間セッティングした後アクリル・メラミン樹脂系クリヤー塗料(BASFコーティングスジャパン株式会社製、商品名「ベルコートNo.6200クリヤー」)を芳香族石油ナフサ(エクソンモービル製、商品名「ソルベッソ100」)で塗装粘度(フォードカップ#4、20℃で25秒)に希釈したものをウェット・オン・ウェット方式で乾燥膜厚30μmとなるようエアースプレー塗装し、140℃で30分間焼き付けて試験片を作成した。
【0059】
<実施例12>
3C1B塗装システムにおける評価用試験片の作成
ライトグレー色の第1ベースコート塗料を(BASFコーティングス社製、商品名「ベルコートNo.6000ライトグレー」)に替えた以外は、実施例11と同じようにして、試験片を作成した。
【0060】
<試験板の評価方法>
得られた試験板上の塗膜の彩度(C値)を株式会社村上色彩技術研究所製「変角高速分光光度計GSP−2型(変角分光測色システムGCMS−4)」を用いて光源からの入射角度及び受光角度をそれぞれ変化させて測定し、結果を表3〜表5にまとめた。
【0061】
(1)彩度上昇値
入射角75度におけるC値から入射角0度におけるC値を引いた値。フェイスアングルからグレイジングアングルに変化させることによりどれだけ彩度が上昇するかを示し、値が正方向に大きいほどフェイスアングルからグレイジングアングルへの彩度の上昇幅が大きいことを示し、また値が負となる場合はフェイスアングルからグレイジングアングルに変化させることにより彩度が下がることを示す。
【0062】
(2)無彩色から有彩色への変化度
観察角度をフェイスアングルからグレイジングアングルへと変化させることにより連続的に色相が変化し、かつフェイスアングルにおいては無彩色でグレイジングアングルにおいては有彩色となる効果が目立って大きいものからあまり効果が確認できないものまでを段階的に◎、○、△、×で目視評価した。
【0063】
◎:塗膜をフェイスアングルから観察したときの色が無彩色であり、観察角度をグレイジングアングルへと変化させたときのフェイスアングルからの彩度アップが目立って大きい。
○:塗膜をフェイスアングルから観察したときの色が無彩色であり、観察角度をグレイジングアングルへと変化させたときのフェイスアングルからの彩度アップを目視ではっきりと確認できる。
△:塗膜をフェイスアングルから観察したときの色が無彩色であり、観察角度をグレイジングアングルへと変化させたときのフェイスアングルからの彩度アップを目視で確認することが可能である。
×:塗膜をフェイスアングルから観察したときの色が有彩色であるか、または無彩色であっても観察角度をグレイジングアングルへと変化させたときのフェイスアングルからの彩度アップを目視で確認することが出来ない。
【0064】
(3)隠蔽性能
○:作成した評価用試験片において、目視により下地が完全に隠蔽されていると確認できる。
△:作成した評価用試験片において、目視により下地が若干透けて見える
【0065】
(4)仕上がり外観:完成塗膜の鮮映性の有無を目視評価した。
○:鮮映性あり
△:鮮映性劣る
×:ツヤビケがある
【0066】
【表3】

【0067】
【表4】

【0068】
【表5】

【0069】
本発明の実施例2と比較例1との「ab色度図」と「彩度」の測色結果を対比して説明するために、それらの結果を図2及び表6に示す。図2において、▲が実施例2で、■が比較例1である。
【0070】
【表6】

【0071】
図2において、彩度は、測定値から原点(0点)までの距離と考えることができ、数値が小さいほど無彩色で、数値が大きいほど鮮やかな有彩色である。図2に示された例の場合、実施例2、比較例1共に、入射角度0度の場合の数値を基準に考えると、入射角度を大きくするにつれて、左回りに「ab色度図」上を動いている。実施例2の場合、入射角度が大きくなるにつれて、無彩色から有彩色に変化し、比較例1の場合、入射角度とは無関係に、常に有彩色であることが示される。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)角度依存性の干渉効果を有する光輝材、及び(B)金属酸化物被覆マイカ及び/又は金属酸化物被覆アルミナフレークを、(A)成分の(B)成分に対する含有比率((A)/(B))が、固形分質量比で2.5/1〜1/6である割合で含有しており、塗膜のフェイスアングルにおける(A)成分の干渉色と(B)成分の干渉色が補色関係にある塗料組成物を塗装し、得られる塗膜の観察角度をフェイスアングルからグレイジングアングルへと変化させたときに該塗膜の色を無彩色から有彩色に変化させることを特徴とする塗膜の色の変化方法(ここで、フェイスアングルとは、光源の入射角度が0度から約25度の範囲にあり、受光角が入射角の正反射近傍(正反射角±10度の範囲)である観察角度のことを指し、グレイジングアングルとは入射角度が約65度から90度の範囲にあり、受光角が入射角の正反射近傍である観察角度のことを指す。)。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2011−137185(P2011−137185A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−91580(P2011−91580)
【出願日】平成23年4月15日(2011.4.15)
【分割の表示】特願2009−54754(P2009−54754)の分割
【原出願日】平成21年3月9日(2009.3.9)
【出願人】(599076424)BASFコーティングスジャパン株式会社 (59)
【Fターム(参考)】