説明

塗膜の遮熱性能比較展示装置

【課題】熱効率が良好で、複数の塗装板の遮熱性能を容易に均等な条件で比較して展示することが可能で、構成が簡単な装置を提供する。
【解決手段】水平断面形状が正方形の筐体2は、側面部21、底面部22及び頂面部23を有する。側面部21に沿って設けられた4つの塗装板支持部10は、筐体2に形成されたスリット24を介して塗装板Pを挿入し、筐体2の上下方向中心軸Xに関して4回回転対称な位置に塗装板Pを配置する。熱源4は、筐体2の頂面部23により支持され筐体2内にて上下方向中心軸X上に配置される。温度センサー6は、各塗装板Pの外側に配置される。筐体2の側面部21には塗装板支持部10に対応して窓25が形成されており、塗装板支持部10により支持された塗装板Pは窓25を介して外側から視認可能である。筐体の頂面部23には通気口26が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗膜の遮熱性能を比較展示する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、エネルギーの有効利用の観点から、冷暖房効率の向上が要請されている。そのためには、建物を構成する床や内外壁や天井や屋根等の塗装に遮熱性の高い塗料(遮熱塗料)を使用することが好ましい。このようなエネルギー利用の効率化を推進することは、ひいては地球温暖化をもたらすといわれている二酸化炭素の発生量を抑制することに繋がる。
【0003】
しかるに、このような遮熱塗装の使用の推進のためには、その意義につき建物施工主の理解を得ることが肝要である。熱的性能を示す科学的データたとえばカタログ値などに基づく建物施工主に対する説明は、遮熱性能を十分に実感することができないことから、説得力に乏しい。遮熱塗装の場合とそうでない一般塗装の場合とでの冷暖房コストの比較のためにも、建物施工主に遮熱性能を実感させることの意義は大きい。
【0004】
そこで、遮熱性能を実感させることの可能な装置として、特開2005−24252号公報(特許文献1)には、持ち運び可能な箱型ケースの中身部と蓋部を略90度に開き、蓋部最上部から水平に伸びる腕部により光源を保持することにより、中身部上部に水平に載置した遮熱塗膜塗装板を照射し、塗装板の裏側に取り付けた温度センサーと、これに接続した温度表示装置により温度の上昇及び飽和温度を測定することを特徴とする遮熱塗膜の評価装置、が提案されている。
【特許文献1】特開2005−24252号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかして、特許文献1に記載の装置では、光源を開放状態にて維持し、該光源から離れた位置に遮熱塗膜塗装板を配置し、該塗装板の背後に配置した温度センサーにより温度を検知し表示するようにしている。従って、光源から発せられる熱の大部分は周囲環境へと散逸し、光源の発熱量のうちで実際に塗装板を加熱するのに利用される熱量の比率はかなり低い。また、一般塗膜塗装板と比較して遮熱塗膜塗装板の遮熱性能を実感させることが極めて好ましく、そのためには同時に同等の条件下で一般塗膜塗装板と遮熱塗膜塗装板との遮熱性能を比較展示することが求められるが、特許文献1の装置は、一般塗膜塗装板と遮熱塗膜塗装板とを光源に対して同等の光照射条件下に置くための構成を備えてはいない。
【0006】
そこで、本発明は、熱効率が良好で、複数の塗装板の遮熱性能を容易に均等な条件で比較して展示することが可能で、構成が簡単な装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、以上の如き目的を達成するものとして、
筐体と、熱源と、温度センサーと、該温度センサーにより検知される温度を表示する表示器とを備えており、
前記筐体は、側面部、底面部及び頂面部を有し、前記側面部に沿って塗装板を支持するための複数の塗装板支持部が設けられており、
該複数の塗装板支持部は、前記筐体の上下方向中心軸に関して3回以上の回転対称な位置のうちの少なくとも2つに前記塗装板を配置するものであり、
前記熱源は、前記筐体の底面部または頂面部により支持されて前記筐体内にて前記上下方向中心軸上に配置され、
前記温度センサーは、前記塗装板支持部により支持された各塗装板の外側に配置されることを特徴とする、塗膜の遮熱性能比較展示装置、
が提供される。
【0008】
本発明の一態様においては、前記筐体は、水平断面の形状が正方形であり、該正方形の各辺に対応して前記塗装板支持部が配置されている。本発明の一態様においては、前記塗装板支持部は、前記筐体に形成されたスリットを介して前記塗装板を挿入するものである。本発明の一態様においては、前記筐体の側面部には前記塗装板支持部に対応して窓が形成されており、前記塗装板支持部により支持された前記塗装板は前記窓を介して外側から視認可能である。本発明の一態様においては、前記筐体の頂面部には通気口が形成されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明による塗膜の遮熱性能比較展示装置によれば、筐体の側面部に沿って塗装板を支持するための複数の塗装板支持部を設け、該複数の塗装板支持部により、前記筐体の上下方向中心軸に関して3回以上の回転対称な位置のうちの少なくとも2つに前記塗装板を配置し、前記熱源を前記筐体の底面部または頂面部により支持して前記筐体内にて前記上下方向中心軸上に配置し、前記温度センサーを前記塗装板支持部により支持された各塗装板の外側に配置するようにしたので、熱効率が良好で、複数の塗装板の遮熱性能を容易に均等な条件で比較して展示することが可能で、構成が簡単である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0011】
図1は、本発明による塗膜の遮熱性能比較展示装置の一実施形態を示す模式的斜視図であり、図2はその模式的縦断面図である。
【0012】
本実施形態の遮熱性能比較展示装置は、筐体2と、熱源4と、温度センサー6と、該温度センサーにより検知される温度を表示する温度表示器8とを備えている。
【0013】
筐体2は、大略直方体形状をなしており、側面部21、底面部22及び頂面部23を有する。Xは、筐体2の上下方向中心軸を示す。筐体2には、側面部21に沿って塗装板Pを支持するための塗装板支持部10が設けられている。該塗装板支持部10は、筐体2の上下方向中心軸Xに関して4回回転対称な位置のうちの4つに塗装板Pを配置するものである。各塗装板支持部10は、筐体2に形成されたスリット24を介して上方から塗装板Pを挿入するものである。筐体2は、水平断面の形状が正方形であり、該正方形の各辺に対応して塗装板支持部10が配置されている。筐体2の側面部21には各塗装板支持部10に対応して窓25が形成されている。かくして、塗装板支持部10により支持された塗装板Pは窓25を介して外側から視認可能である。筐体2の頂面部23には、通気口26が形成されている。
【0014】
熱源4は、たとえば電灯からなり、筐体2の頂面部23により支持されていて、筐体2内にて上下方向中心軸X上に配置されている。41は、熱源のための電源コードである。
【0015】
温度センサー6は、塗装板支持部10により支持された各塗装板Pの外側に配置され、たとえば粘着テープ61により塗装板Pの外側面に取り付けられる。温度センサー6と温度表示器8とは配線81により接続されている。
【0016】
以上のように、本実施形態の遮熱性能比較展示装置は、構成が簡単である。
【0017】
本実施形態の遮熱性能比較展示装置の使用に際しては、先ず、遮熱性能の互いに異なる幾つかの塗料を塗布してなる塗装板(サンプル)Pを用意する。尚、塗装板Pと同等な形状及び寸法のダミー板を用意してもよい。
【0018】
筐体2の頂面部23に形成された4つのスリット24のそれぞれを介して、上方から塗装板支持部10に、4つの塗装板Pを挿入する。そのうちの1つを比較のための一般塗料塗装板とすることができ、残りを遮熱塗料塗装板とする。また、遮熱塗料塗装板のうちの1つ又は2つの代わりに、単に窓25を閉じるためのダミー板を挿入してもよい。これにより、全ての窓25が閉じられる。
【0019】
次に、塗装板Pの外側(熱源4の方を向いた側とは反対の側)の面の中央部に、温度センサー6を配置し粘着テープ61で取り付ける。塗装板Pの外側面は窓25から露出しているので、温度センサー6の固定作業は容易である。
【0020】
次に、不図示の電源により電源コード41を介して熱源4を駆動し、該熱源4を発熱させる。筐体2は、通気口26を除いて密閉されているので、熱源4から発せられた熱は、効率よく塗装板Pの加熱に利用される。
【0021】
これにより、複数の塗装板Pにつき、温度センサー6で測定される温度を温度表示器8で表示することで、遮熱性能の比較展示がなされる。塗装板Pの外側面は窓25から露出しているので、ここに塗装板Pの名称などを記載しておけば、容易に視認できる。ここで、熱源4は上下方向中心軸X上に配置されており、且つ複数の塗装板Pは上下方向中心軸X上に関して回転対称な位置にあるので、複数の塗装板Pにつき容易に均等な条件で遮熱性能を比較して展示することができる。
【0022】
以上の実施形態では、筐体4の水平断面の形状が正方形であり、該正方形の各辺に対応して塗装板支持部10が配置されているが、本発明はこれに限定されない。すなわち、本発明では、筐体の水平断面の形状が正三角形、正五角形、正六角形などの正多角形であって、該正多角形の少なくとも2つの辺に対応して塗装板支持部が配置されているものであってもよい。すなわち、本発明では、複数の塗装板支持部は、筐体の上下方向中心軸に関して3回以上の回転対称な位置のうちの少なくとも2つに塗装板を配置するものであればよい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明による塗膜の遮熱性能比較展示装置の一実施形態を示す模式的斜視図である。
【図2】図1の遮熱性能比較展示装置の模式的縦断面図である。
【符号の説明】
【0024】
2 筐体
21 側面部
22 底面部
23 頂面部
24 スリット
25 窓
26 通気口
4 熱源
41 電源コード
6 温度センサー
61 粘着テープ
8 温度表示器
81 配線
10 塗装板支持部
X 上下方向中心軸
P 塗装板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、熱源と、温度センサーと、該温度センサーにより検知される温度を表示する表示器とを備えており、
前記筐体は、側面部、底面部及び頂面部を有し、前記側面部に沿って塗装板を支持するための複数の塗装板支持部が設けられており、
該複数の塗装板支持部は、前記筐体の上下方向中心軸に関して3回以上の回転対称な位置のうちの少なくとも2つに前記塗装板を配置するものであり、
前記熱源は、前記筐体の底面部または頂面部により支持されて前記筐体内にて前記上下方向中心軸上に配置され、
前記温度センサーは、前記塗装板支持部により支持された各塗装板の外側に配置されることを特徴とする、塗膜の遮熱性能比較展示装置。
【請求項2】
前記筐体は、水平断面の形状が正方形であり、該正方形の各辺に対応して前記塗装板支持部が配置されていることを特徴とする、請求項1に記載の塗膜の遮熱性能比較展示装置。
【請求項3】
前記塗装板支持部は、前記筐体に形成されたスリットを介して前記塗装板を挿入するものであることを特徴とする、請求項1〜2のいずれか一項に記載の塗膜の遮熱性能比較展示装置。
【請求項4】
前記筐体の側面部には前記塗装板支持部に対応して窓が形成されており、前記塗装板支持部により支持された前記塗装板は前記窓を介して外側から視認可能であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の塗膜の遮熱性能比較展示装置。
【請求項5】
前記筐体の頂面部には通気口が形成されていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の塗膜の遮熱性能比較展示装置。

【図1】
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【図2】
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