説明

塗膜形成方法及び塗装物品

【課題】製品のライフサイクルに関わる総二酸化炭素の排出量が少なく環境汚染を低減できると共に、仕上り性、鉛筆硬度、耐擦り傷性、層間付着性、耐候性、耐アルカリ性及び耐溶剤性に優れる複層塗膜を提供する。また、使用する塗料組成物の一部に水性塗料組成物を使用するため有機溶剤の使用量を低減できる複層塗膜を提供する。
【解決手段】被塗物上に澱粉系樹脂並びに着色顔料及び/又は光輝性顔料を含有する澱粉系ベース塗料組成物を塗装してベース塗膜を形成し、次いで、該ベース塗膜上に糖類又はその誘導体のアクリル酸エステルの水分散体及び光重合開始剤を含有する活性エネルギー線硬化型水性塗料組成物を塗装した後、活性エネルギー線照射することを特徴とする塗膜形成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、澱粉を利用した澱粉系ベース塗料組成物によるベース塗膜と、該ベース塗膜上に糖類を利用した活性エネルギー線硬化型水性塗料組成物による塗膜を積層する塗膜形成方法、及び該塗膜形成方法により得られる塗装物品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化に対する影響低減の視点から、世界的レベルでCO排出量の削減が求められており、石油に替わる再生可能な資源であって、地球上の炭酸ガス循環においてCOの放出量を増大させない生体由来成分を積極的に利用することが求められている。
【0003】
そのような再生可能な資源の代表的な材料として、多糖類である澱粉、あるいはアセチル化澱粉などの変性澱粉がある。これら澱粉又は変性澱粉は、従来より、食品工業関連、製紙工業関連で用いられているが、近年は、食品容器、包装材、緩衝材シート、農業用フィルム、使い捨てオムツなどの分野でも用いられるようになっている。
【0004】
澱粉を工業製品原料として利用するために、澱粉の改質とともに、変性澱粉に関する様々な改良が積み重ねられてきた。澱粉の基本構造は、α−D−グルコースが1,4−結合により直鎖状に連結したアミロースと分枝構造を有するアミロペクチンとの混合物であり、構造中に水酸基を持つことを利用して、エステル化、エーテル化等による変性が1960年代になされてきた。
【0005】
特許文献1〜4には、澱粉樹脂とアクリル樹脂とを、ポリイソシアネートを介して間接的にグラフトさせたグラフト澱粉や、澱粉又は変性澱粉に不飽和モノマーをラジカルグラフト重合させたグラフト澱粉に関する発明が開示されている。
【0006】
また、特許文献5〜7には、澱粉と他の植物由来の樹脂を組合せた例として、澱粉又は変性澱粉とセルロース誘導体を組合せたポリマーブレンドを成型材料として用いた発明が開示されている。その他に、澱粉系樹脂を吸水性樹脂として用いた樹脂組成物に関する発明が開示されている。
【0007】
これらの先行特許文献からも明らかなように、種々のポリマーを組み合わせた、又はグラフトさせた澱粉系樹脂自体は公知の技術である。しかしながら、これらの技術は、何れも澱粉系樹脂の用途として、接着剤、構造材料、射出成型材料、シート等を想定したものであり、塗料としての用途が開示されたものはほとんどない。
【0008】
澱粉系樹脂を用いた塗料に関して、特許文献8には、澱粉、及び該澱粉分子中に含まれる少なくとも1個の水酸基と相補的に反応する官能基を有する硬化剤との混合物である硬化型澱粉組成物に関する発明が開示されている。また、酸化重合硬化型、常温硬化型、活性エネルギー線硬化型などの硬化型のタイプが可能であることが開示されている。
【0009】
また、特許文献9には、澱粉、ポリイソシアネート硬化剤、澱粉を除く植物由来の樹脂、金属錯体及びβ−ジケトン類、アセト酢酸エステル類、マロン酸エステル類、β位に水酸基を持つケトン類、β位に水酸基を持つアルデヒド類及びβ位に水酸基を持つエステル類から選ばれるブロック剤を含有してなる硬化型澱粉組成物に関する発明が開示されている。
【0010】
しかし、これらの澱粉系塗料に関して、被塗物上において、仕上り性、鉛筆硬度、耐擦り傷性、付着性、耐候性、耐アルカリ性及び耐溶剤性に優れた塗膜を形成できる塗膜形成方法はなかった。また、使用する塗料全般において有機溶剤系塗料を使用するため溶剤の使用量が多くなるという問題点があった。
【0011】
【特許文献1】特開昭54−120698号公報
【特許文献2】特開昭55−90518号公報
【特許文献3】特開昭56−167746号公報
【特許文献4】特開平8−239402号公報
【特許文献5】特開平6−207047号公報
【特許文献6】特開平8−231762号公報
【特許文献7】特開2002−167520号公報
【特許文献8】特開2004−224887号公報
【特許文献9】特開2006−282960号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、糖類若しくはその誘導体、又は澱粉若しくは変性澱粉を塗料組成物の原料に使用し、かつ仕上り性、鉛筆硬度、耐擦り傷性、層間付着性、耐候性、耐アルカリ性、耐溶剤性に優れ、さらに有機溶剤の使用量を低減することができる複層塗膜を得ることができる塗膜形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、上記従来技術の問題点を解消するために鋭意検討した結果、被塗物上に澱粉系樹脂を含む澱粉系ベース塗料組成物を塗装してベース塗膜を形成し、該ベース塗膜上に糖類又はその誘導体のアクリル酸エステルの水分散体及び光重合開始剤を含有する活性エネルギー線硬化型水性塗料組成物を塗装した後、活性エネルギー線照射する塗膜形成方法によって、かかる課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち本発明は、
1.被塗物上に澱粉系樹脂並びに着色顔料及び/又は光輝性顔料を含有する澱粉系ベース塗料組成物を塗装してベース塗膜を形成し、次いで、該ベース塗膜上に糖類又はその誘導体のアクリル酸エステルの水分散体及び光重合開始剤を含有する活性エネルギー線硬化型水性塗料組成物を塗装した後、活性エネルギー線照射することを特徴とする塗膜形成方法、
2.前記糖類又はその誘導体のアクリル酸エステルが、重量平均分子量が400〜2,000で、かつ1分子あたり平均3.0〜12.0個のアクリロイル基を有する糖類又はその誘導体のアクリル酸エステルである1項に記載の塗膜形成方法、
3.前記糖類又はその誘導体が、非環状のオリゴ糖又はその誘導体である1又は2項に記載の塗膜形成方法、
4.前記非環状のオリゴ糖又はその誘導体が、デキストリン又は変性デキストリンである3項に記載の塗膜形成方法、
5.前記非環状のオリゴ糖又はその誘導体が、スクロース又はトレハロースである3項に記載の塗膜形成方法、
6.1〜5項のいずれか1項に記載の塗膜形成方法により得られる塗装物品、
に関する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の塗膜形成方法は、被塗物上に澱粉又は変性澱粉を原料として使用した澱粉系ベース塗料組成物を塗装してベース塗膜を形成し、該べース塗膜上に糖類又はその誘導体のアクリル酸エステルの水分散体及び光重合開始剤を含有する活性エネルギー線硬化型水性塗料組成物を塗装した後、活性エネルギー線照射することを特徴とする。かかる塗膜形成方法によれば、石油資源の使用量を低減し、製品のライフサイクルに関わる総二酸化炭素の排出量が少なく環境汚染を低減できると共に、仕上り性、鉛筆硬度、耐擦り傷性、層間付着性、耐候性、耐アルカリ性及び耐溶剤性に優れる複層塗膜を得ることができる。また、使用する塗料組成物の一部に水性塗料組成物を使用するため有機溶剤の使用量を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の塗膜形成方法は、被塗物上に澱粉系樹脂並びに着色顔料及び/又は光輝性顔料を含有する澱粉系ベース塗料組成物を塗装してベース塗膜を形成し、次いで、該ベース塗膜上に糖類又はその誘導体のアクリル酸エステルの水分散体及び光重合開始剤を含有する活性エネルギー線硬化型水性塗料組成物を塗装した後、活性エネルギー線照射することを特徴とする。
【0017】
被塗物
本発明の塗膜形成方法に用いる被塗物は、金属、プラスチック、木材等、特に制限はない。金属としては、例えば、冷延鋼板、錫メッキ鋼板、亜鉛メッキ鋼板、合金亜鉛メッキ鋼板(鉄−亜鉛、アルミニウム−亜鉛、ニッケル−亜鉛等の合金亜鉛メッキ鋼板)、クロムメッキ鋼板、アルミニウム板などを挙げることができる。これら金属は、無処理のままで用いることもできるが、リン酸塩処理、ジルコニウム塩処理、クロメート処理などの表面処理を行ったものも用いることができる。プラスチックとしては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂等が挙げられる。また、被塗物には、例えば、プライマー塗料、カチオン電着塗料等を塗装することにより、予めプライマー層や電着塗膜層等が形成されていてもよい。
【0018】
澱粉系ベース塗料組成物
本発明の塗膜形成方法において前記被塗物上に塗装される澱粉系ベース塗料組成物は、澱粉系樹脂並びに着色顔料及び/又は光輝性顔料を含有する。
【0019】
澱粉系樹脂
本明細書において澱粉系樹脂とは、澱粉、変性澱粉、並びに澱粉又は変性澱粉から誘導される構造を有する樹脂を意味する。具体的には例えば、以下の澱粉系樹脂が挙げられる。
(I)澱粉及び/又は変性澱粉(A)[以下、単に「澱粉系樹脂(I)」と略すことがある];
(II)澱粉及び/又は変性澱粉(A)と、ポリイソシアネート化合物(b1)と多価アルコール(b2)とを反応させて得られたイソシアネート基を有する生成物(B)とを反応させて得られる澱粉系樹脂[以下、単に「澱粉系樹脂(II)」と略すことがある];
(III)澱粉及び/又は変性澱粉(A)と、ポリイソシアネート化合物(b1)と多価アルコール(b2)とを反応させて得られたイソシアネート基を有する生成物(B)と、ビニル共重合体樹脂(C)とを反応させて得られる澱粉系樹脂[以下、単に「澱粉系樹脂(III)」と略すことがある];
(IV)澱粉及び/又は変性澱粉(A)にラジカル重合性不飽和単量体をグラフト重合させて得られる澱粉系樹脂[以下、単に「澱粉系樹脂(IV)」と略すことがある];
(V)澱粉及び/又は変性澱粉(A)にラジカル重合性不飽和単量体をグラフト重合させて得られる樹脂(D)と、ポリイソシアネート化合物(b1)と多価アルコール(b2)とを反応させて得られたイソシアネート基を有する生成物(B)とを反応させて得られる澱粉系樹脂[以下、単に「澱粉系樹脂(V)」と略すことがある]。
【0020】
澱粉及び/又は変性澱粉(A)[澱粉系樹脂(I)]
本発明に有用な澱粉としては、コーンスターチ、ハイアミローススターチ、小麦澱粉、米澱粉などの穀類の未変性澱粉、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉などの芋類の未変性澱粉等が挙げられる。
【0021】
本発明に有用な変性澱粉としては、澱粉をエステル化、エーテル化、酸化、酸処理化又はデキストリン化した澱粉置換誘導体などが挙げられる。具体的には例えば、澱粉又は澱粉分解物に、脂肪族飽和炭化水素基、脂肪族不飽和炭化水素基、芳香族炭化水素基などの有機官能基を、エステル結合及び/又はエーテル結合を介して結合させた変性澱粉が挙げられる。ここで、澱粉分解物としては、澱粉に酵素、酸又は酸化剤で低分子量化処理を施したものが挙げられる。
【0022】
澱粉又は澱粉分解物は、数平均分子量が1,000〜2,000,000、さらに好ましくは3,000〜500,000、特に5,000〜100,000の範囲内にあることが、造膜性などの点から好ましい。
【0023】
なお本明細書において、数平均分子量及び重量平均分子量は、JIS K 0124−83に記載の方法に準じ、分離カラムとして「TSK GEL4000HXL」、「TSK G3000HXL」、「TSK G2500HXL」、「TSK G2000HXL」(東ソー株式会社製)の4本を用いて、溶離液としてGPC用テトラヒドロフランを用いて40℃及び流速1.0ml/分において、RI屈折計で得られたクロマトグラムとポリスチレンの検量線から求めた。
【0024】
変性澱粉の変性方法としては、例えば、エステル化変性が挙げられ、好ましい変性基としては炭素数2〜18のアシル基が挙げられる。変性は炭素数2〜18の有機酸を単独で又は2種以上組み合わせて用いることにより行うことができる。
【0025】
変性澱粉の変性程度は、置換度で0.1〜2.8の範囲内が好ましく、特に1.0〜2.5の範囲内が好ましい。置換度が2.8を超えると、生分解性が低下することがある。
【0026】
また、変性澱粉は、澱粉の分解温度(約350℃)以下にガラス転移点を有し、熱可塑性を有しかつ生分解性も有しているように変性の程度が調節されていることが望ましい。したがって変性に使用する置換基の炭素数が多い場合には低変性レベルに、例えば、置換基が炭素数18のステアロイル基である場合にはエステル置換度が0.1〜1.8の範囲内にあることが好ましく、また置換基の炭素数が少ない場合には高変性レベルに、例えば、置換基が炭素数2のアセチル基である場合にはエステル置換度が1.5〜2.8の範囲内にあることが好ましい。
【0027】
なお、置換度は、澱粉を構成する単糖単位1個あたりの変性剤により置換された水酸基の平均個数であり、例えば、置換度3は、澱粉を構成する単糖単位1個中に存在する3個の水酸基が全て変性剤により置換されていることを意味し、置換度1は澱粉を構成する単糖単位1個中に存在する3個の水酸基のうちの1個だけが変性剤により置換されていることを意味する。
【0028】
変性澱粉の例としては、50%以上のアミロース含量をもつ無水の澱粉を非プロトン性溶媒中でエステル化試薬と混合して澱粉とエステル化試薬の間で反応させることにより得られる疎水性の生分解性澱粉エステル生成物(特表平8−502552号公報参照)、ビニルエステルをエステル化試薬として用いて変性された澱粉エステルであって、該ビニルエステルとしてエステル基の炭素数が2〜18のものを用い、非水有機溶媒中でエステル化触媒を使用して澱粉と反応させて得られる澱粉エステル(特開平8−188601号公報参照)、エステル化とともにポリビニルエステルのグラフト化がされている澱粉(特開平8−239402号公報及び特開平8−301994号公報参照)、ポリエステルグラフト鎖を澱粉分子上に有し、該グラフト鎖末端及び澱粉直結の水酸基の一部又は全てがエステル基により封鎖されているポリエステルグラフト重合澱粉と、該ポリエステルグラフト鎖と同一の構成成分を有し、末端水酸基の一部又は全部がエステル基により封鎖されている独立ポリエステルとが均一混合されてなるポリエステルグラフト重合澱粉アロイ(特開平9−31308号公報参照)等を挙げることができる。
【0029】
さらには、同一澱粉分子の反応性水酸基の水素を炭素数2〜4の短鎖アシル基及び炭素数6〜18の長鎖アシル基で置換した短鎖−長鎖混合澱粉エステル(特開2000−159801号公報参照)、同一澱粉分子の反応性水酸基を炭素数2〜4の短鎖炭化水素含有基及び炭素数6〜24の長鎖炭化水素含有基で置換した短鎖−長鎖混合澱粉置換誘導体(特開2000−159802号公報参照)等が挙げられる。これらの変性澱粉は、澱粉を母体としているため生分解性であり、特に溶剤への溶解性や相溶性に優れる。
【0030】
これら澱粉及び/又は変性澱粉は、単独で又は複数を併用して使用できる。
【0031】
澱粉系樹脂(II)
澱粉系樹脂(II)は、澱粉及び/又は変性澱粉(A)と、ポリイソシアネート化合物(b1)と多価アルコール(b2)とを反応させて得られたイソシアネート基を有する生成物(B)とを反応させて得られる。
【0032】
イソシアネート基を有する生成物(B)
イソシアネート基を有する生成物(B)は、ポリイソシアネート化合物(b1)と多価アルコール(b2)とを反応させて得ることができる。
【0033】
ポリイソシアネート化合物(b1)は、例えば、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス(フェニルイソシアネート)チオホスフェート、フェニレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソプロピリデンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、3−(2’−イソシアナトシクロヘキシル)プロピルイソシアネート、ジアニシジンジイソシアネート、ジフェニルエーテルジイソシアネート等が挙げられる。なかでも、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートを用いることが、硬度、付着性、耐衝撃性の面から特に好ましい。
【0034】
ポリイソシアネート化合物(b1)の市販品の例としては、「バーノックD−750、D−800、DN−950、DN−970又は15−455」(以上、大日本インキ化学工業(株)製品)、「デスモジュールL、N、HL又はN3390」(ドイツ国バイエル社製品)、「タケネートD−102、D−170HN、D−202、D−110又はD−123N」(三井化学ポリウレタン(株)製品)、「コロネートEH、L、HL又は203」(日本ポリウレタン工業(株)製品)又は「デュラネート24A−90CX」(旭化成ケミカルズ(株)製品)等が挙げられる。
【0035】
多価アルコール(b2)としては、アルキレンジオール、3価以上のアルカンポリオール、エーテルポリオール、ポリエステルポリオール及びその他のポリオールを挙げることができる。
【0036】
アルキレンジオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサン−1,4−ジメチロール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、水素化ビスフェノールAなどのジオール類が挙げられる。
【0037】
3価以上のアルカンポリオールとしては、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパンなどのトリオール類;ペンタエリスリトール、α−メチルグリコシド、ソルビトール等の4価以上のアルカンポリオール類が挙げられる。
【0038】
エーテルポリオールとしては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、テトラヒドロフランなどのアルキレンオキサイドの開環付加反応によって製造されるもの、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリ(オキシエチレン/オキシプロピレン)グリコール、ビスフェノールAポリエチレングリコールエーテル、ビスフェノールAポリプロピレングリコールエーテル、スクロース、ジペンタエリスリトールなどが挙げられる。
【0039】
ポリエステルポリオールとしては、例えば、有機ジカルボン酸又はその無水物と有機ジオール成分との、有機ジオール過剰の条件下での重縮合反応によって得られるものが挙げられる。具体的には、アジピン酸とエチレングリコールの縮合物、アジピン酸とネオペンチルグリコールの縮合物であるポリエステルポリオールが挙げられる。
【0040】
ここで使用される有機ジカルボン酸としては、炭素数が2〜44、特に4〜36の脂肪族系、脂環式又は芳香族系ジカルボン酸、例えば、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、グルタル酸、ヘキサクロロヘプタンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、o−フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、テトラクロロフタル酸などが挙げられる。また、これらのジカルボン酸に加えて、3個以上のカルボキシル基を有するポリカルボン酸の無水物や不飽和脂肪酸の付加物などを少量併用することができる。また、有機ジオール成分としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールなどのアルキレングリコールや、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオールなどが挙げられ、これらは場合によりトリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトールなどの3価以上のポリオールの少量と併用されてもよい。
【0041】
以上に述べた多価アルコール(b2)のうちでは、特に、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、水素化ビスフェノールA、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリ(オキシエチレン/オキシプロピレン)グリコール、ビスフェノールAエチレングリコールエーテル、ビスフェノールAポリプロピレングリコールエーテルよりなる群から選ばれるものが、耐衝撃性及び耐屈曲性の観点からも好適である。
【0042】
前記ポリイソシアネート化合物(b1)と多価アルコール(b2)との反応は、有機溶剤、例えば、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n−ヘキサンなどの炭化水素系溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトンなどのケトン系溶剤;あるいはこれらの混合物等中で行うことができる。ここで、ポリイソシアネート化合物(b1)と多価アルコール(b2)の反応割合としては、フリーのイソシアネートを残存させるような反応割合であれば特に限定されるものではない。反応割合としては、例えば、ポリイソシアネート化合物(b1)に基づくNCO基のモル数に対する多価アルコール(b2)に基づくOH基のモル数がOH基/NCO基=0.4/1.0〜0.95/1.0、好ましくは0.5/1.0〜0.9/1.0である。前記反応においては、適宜に、例えば、モノブチル錫オキサイド、ジブチル錫オキサイド等の触媒を用いることができる。前記反応の温度、時間は、特に限定されるものではないが、例えば、50℃〜200℃、好ましくは60〜150℃の温度で、30分間〜10時間、好ましくは1〜5時間である。前記反応で得られるイソシアネート基を有する生成物(B)のNCO価は、5〜250mgNCO/g、特に7〜200mgNCO/gの範囲であることが好ましい。
【0043】
澱粉及び/又は変性澱粉(A)とイソシアネート基を有する生成物(B)との反応は、有機溶剤、例えば、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n−ヘキサンなどの炭化水素系溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトンなどのケトン系溶剤;あるいはこれらの混合物等中で行うことができる。澱粉及び/又は変性澱粉(A)とイソシアネート基を有する生成物(B)の配合割合は、要求される塗膜性能に応じて適宜調整することができる。例えば、配合割合は、澱粉及び/又は変性澱粉(A)とイソシアネート基を有する生成物(B)の合計不揮発分質量を基準にして、澱粉及び/又は変性澱粉(A)が50〜99質量%、好ましくは60〜98質量%の範囲の量であり、イソシアネート基を有する生成物(B)が1〜50質量%、好ましくは2〜40質量%の範囲の量である。前記反応においては、適宜に、モノブチル錫オキサイド、ジブチル錫オキサイド等の触媒を用いることができる。前記反応の温度、時間は、特に限定されるものではないが、例えば、50℃〜200℃、好ましくは60〜150℃の温度で、30分間〜10時間、好ましくは1〜5時間である。前記反応で得られる澱粉系樹脂(II)の数平均分子量は、好ましくは3,000〜200,000の範囲、より好ましくは5,000〜100,000の範囲である。このようにして製造される澱粉系樹脂(II)は、有機溶剤系溶媒に溶解又は分散させてなる澱粉系ベース塗料組成物のバインダーとして好適に使用できる。ここで、澱粉及び/又は変性澱粉(A)の量が50質量%未満であると生体由来成分が少なくなり、一方99質量%を超えると塗膜の耐薬品性が低下することがある。
【0044】
澱粉系樹脂(III)
澱粉系樹脂(III)は、澱粉及び/又は変性澱粉(A)と、ポリイソシアネート化合物(b1)と多価アルコール(b2)とを反応させて得られたイソシアネート基を有する生成物(B)と、ビニル共重合体樹脂(C)とを反応させて得られる。
【0045】
ビニル共重合体樹脂(C)
ビニル共重合体樹脂(C)は、ラジカル重合性不飽和単量体の混合物を、有機溶剤及び重合開始剤の存在下にラジカル重合反応させて得ることができる。
【0046】
ラジカル重合性不飽和単量体の混合物が、該混合物の合計質量に対して、芳香族系ラジカル重合性不飽和単量体1〜90質量%、好ましくは5〜80質量%、さらに好ましくは10〜85質量%、水酸基含有ラジカル重合性不飽和単量体1〜50質量%、好ましくは2〜40質量%、さらに好ましくは5〜30質量%及びその他のラジカル重合性不飽和単量体0〜98質量%、好ましくは2〜93質量%、さらに好ましくは5〜85質量%からなるラジカル重合性不飽和単量体の混合物である場合に、仕上り性、付着性、耐溶剤性、耐アルカリ性、耐衝撃性及び耐屈曲性に優れた塗膜を形成することができる。
【0047】
芳香族系ラジカル重合性不飽和単量体としては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、2−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、クロルスチレン、ビニルナフタレン等が挙げられる。
【0048】
水酸基含有ラジカル重合性不飽和単量体としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどの、アルキル基の炭素数が2〜8のアクリル酸又はメタクリル酸のヒドロキシアルキルエステル;(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルラクトン変性物(例えば、ダイセル化学(株)製、商品名「プラクセルF」シリーズ)などが挙げられる。なかでも、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタアクリレート及び4−ヒドロキシブチルアクリレートから選ばれる少なくとも1種が、澱粉及び/又は変性澱粉(A)やイソシアネート基を有する生成物(B)との相溶性を向上させて、塗料安定性を確保する観点から、特に好ましい。
【0049】
その他のラジカル重合性不飽和単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸等のカルボキシル基含有ラジカル重合性不飽和単量体;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−、i−又はt−ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等のアクリル酸又はメタクリル酸の炭素数1〜18のアルキルエステル又はシクロアルキルエステル;N−メチロールアクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−ブトキシメチルメタクリルアミドなどのN−置換アクリルアミド系又はN−置換メタクリルアミド系単量体を挙げることができる。
【0050】
また、その他のラジカル重合性不飽和単量体の他の例としては、脂肪酸変性ラジカル重合性不飽和単量体が挙げられる。
【0051】
脂肪酸変性ラジカル重合性不飽和単量体には、脂肪酸由来の炭化水素鎖の末端にラジカル重合性不飽和基を有するラジカル重合性不飽和単量体が含まれる。脂肪酸変性ラジカル重合性不飽和単量体としては、例えば、脂肪酸をエポキシ基含有ラジカル重合性不飽和単量体又は水酸基含有ラジカル重合性不飽和単量体と反応させることにより得られるものを挙げることができる。
【0052】
脂肪酸としては、乾性油脂肪酸、半乾性油脂肪酸及び不乾性油脂肪酸が挙げられる。乾性油脂肪酸及び半乾性油脂肪酸としては、例えば、魚油脂肪酸、脱水ヒマシ油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸、亜麻仁油脂肪酸、大豆油脂肪酸、ゴマ油脂肪酸、ケシ油脂肪酸、エノ油脂肪酸、麻実油脂肪酸、ブドウ核油脂肪酸、トウモロコシ油脂肪酸、トール油脂肪酸、ヒマワリ油脂肪酸、綿実油脂肪酸、クルミ油脂肪酸、ゴム種油脂肪酸、ハイジエン酸脂肪酸等が挙げられる。不乾性油脂肪酸としては、例えば、ヤシ油脂肪酸、水添ヤシ油脂肪酸、パーム油脂肪酸等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。さらに、これらの脂肪酸は、カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等と併用することもできる。
【0053】
脂肪酸変性ラジカル重合性不飽和単量体を製造するために前記脂肪酸と反応させることのできる単量体としてはエポキシ基を含有するラジカル重合性不飽和単量体が好適であり、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、β−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルプロピル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0054】
ビニル共重合体樹脂(C)は、例えば、前記したラジカル重合性不飽和単量体の混合物を重合開始剤の存在下に、有機溶剤中で、ラジカル重合反応させることにより簡易に調整することができる。前記反応においては、例えば、ラジカル重合性不飽和単量体の混合物と重合開始剤の混合物を均一に滴下して、60〜200℃、好ましくは80〜180℃の反応温度にて30分〜6時間、好ましくは1〜5時間反応させることができる。
【0055】
前記の有機溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n−ヘキサンなどの炭化水素系溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトンなどのケトン系溶剤;あるいはそれらの混合物等が挙げられる。
【0056】
ビニル共重合体樹脂(C)は、水酸基価が5〜400mgKOH/g、重量平均分子量が3,000〜100,000、特に5,000〜20,000の範囲内にあるのが好ましい。
【0057】
澱粉及び/又は変性澱粉(A)とイソシアネート基を有する生成物(B)との反応は、澱粉系樹脂(II)の製造において記載したものと同様の有機溶剤中で行うことができる。澱粉及び/又は変性澱粉(A)と、イソシアネート基を有する生成物(B)と、ビニル共重合体樹脂(C)との配合割合は、要求される塗膜性能に応じて適宜調整することができる。例えば、配合割合は、澱粉及び/又は変性澱粉(A)、イソシアネート基を有する生成物(B)及びビニル共重合体樹脂(C)の合計不揮発分質量を基準にして、澱粉及び/又は変性澱粉(A)が50〜98質量%、好ましくは65〜95質量%の範囲の量であり、イソシアネート基を有する生成物(B)が1〜49質量%、好ましくは2〜33質量%の範囲の量であり、ビニル共重合体樹脂(C)が1〜49質量%、好ましくは2〜33質量%の範囲の量である。前記反応においては、適宜に、モノブチル錫オキサイド、ジブチル錫オキサイド等の錫触媒を用いることができる。前記反応の温度、時間は、特に限定されるものではないが、例えば、50℃〜200℃、好ましくは60〜150℃の温度で、30分間〜10時間、好ましくは1〜5時間である。
【0058】
前記反応で得られる澱粉系樹脂(III)の数平均分子量は、好ましくは3,000〜200,000の範囲、より好ましくは5,000〜100,000の範囲である。このようにして製造される澱粉系樹脂(III)は、有機溶剤系溶媒に溶解又は分散させてなる澱粉系ベース塗料組成物のバインダーとして好適に使用できる。ここで、澱粉及び/又は変性澱粉(A)の量が50質量%未満であると生体由来成分が少なくなり、一方98質量%を超えると塗膜の耐薬品性、付着性が低下することがある。イソシアネート基を有する生成物(B)の量が1質量%未満であるとワニスの貯蔵安定性、塗膜の耐薬品性が劣ることがあり、一方49質量%を超えると生体由来成分が少なくなり、かつ樹脂の溶剤溶解性が低下することがある。また、ビニル共重合体樹脂(C)の量が1質量%未満であると塗膜の付着性、耐薬品性が低下することがあり、一方49質量%を超えると生体由来成分が少なくなる。
【0059】
澱粉系樹脂(IV)
澱粉系樹脂(IV)は、澱粉及び/又は変性澱粉(A)にラジカル重合性不飽和単量体をグラフト重合させて得られる。
【0060】
例えば、米国特許第3425971号明細書、同第3981100号明細書や特開昭56−167746号公報には、水分散又はスラリー状の澱粉又は変性澱粉にセリウム塩をラジカル重合開始触媒として用いるビニルモノマーのグラフト重合が開示されている。また、特開昭54−120698号公報及び同昭55−90518号公報には不飽和基を含有する化合物であるマレイン酸で変性した澱粉に対するスチレン及びアクリルモノマーのグラフト重合が開示されている。特開平8−239402号公報には有機溶剤中での(ビニル)エステル化澱粉とビニルモノマーのグラフト重合が開示されている。また、特開昭55−133472号公報、同昭56−157463号公報にはラジカル開始剤を用いての溶液中でのセルロースアセテートブチレートへのビニル系モノマーのグラフト重合が開示されている。ニトロセルロースアセテートを澱粉及び/又は変性澱粉に置き換えれば、澱粉及び/又は変性澱粉にビニル系モノマーをグラフト重合させることは容易である。
【0061】
以上、グラフト重合に関して幾つかの公知例を述べたが、目的とする澱粉系樹脂(IV)はこれらの公知の方法によって製造することができる。あるいは、これら以外の公知の方法によっても製造することができる。
【0062】
澱粉及び/又は変性澱粉(A)とラジカル重合性不飽和単量体の比率には特に限定は無い。ラジカル重合性不飽和単量体としては性質の異なった単量体の混合物を用いることが好ましい。前記ラジカル重合性不飽和単量体の混合物は、例えば、仕上り性、付着性、耐溶剤性、耐アルカリ性、耐衝撃性および耐屈曲性に優れた塗膜を形成する観点から、ラジカル重合性不飽和単量体の混合物の合計質量に対して、芳香族系ラジカル重合性不飽和単量体1〜90質量%、好ましくは5〜80質量%、水酸基含有ラジカル重合性不飽和単量体1〜50質量%、好ましくは2〜40質量%およびその他のラジカル重合性不飽和単量体0〜98質量%、好ましくは18〜93質量%からなるラジカル重合性不飽和単量体の混合物であることが望ましい。
【0063】
芳香族系ラジカル重合性不飽和単量体としては、例えば、前記ビニル共重合体樹脂(C)の説明において例示した芳香族系ラジカル重合性不飽和単量体が挙げられる。
【0064】
水酸基含有ラジカル重合性不飽和単量体としては、例えば、前記ビニル共重合体樹脂(C)の説明において例示した水酸基含有ラジカル重合性不飽和単量体が挙げられる。
【0065】
その他のラジカル重合性不飽和単量体としては、例えば、前記ビニル共重合体樹脂(C)の説明において例示したその他のラジカル重合性不飽和単量体が挙げられる。
【0066】
澱粉及び/又は変性澱粉にラジカル重合性不飽和単量体をグラフト重合させる方法としては、具体的には例えば、ラジカル重合性不飽和単量体の混合物と重合開始剤を澱粉及び/又は変性澱粉(A)の有機溶剤溶液中に滴下し、ラジカル重合反応させる方法が簡便な方法である。前記反応は、例えば、ラジカル重合性不飽和単量体の混合物と重合開始剤の混合物を均一に滴下して、60〜200℃、好ましくは80〜180℃の反応温度にて30分間〜6時間、好ましくは1〜5時間行う。
【0067】
ここで、重合開始剤としては、公知のラジカル重合開始剤を用いることができるが、澱粉及び/又は変性澱粉(A)の有機溶剤溶液中にラジカル重合性不飽和単量体混合物及び重合開始剤を滴下し、グラフト重合させる方法を採用する場合には、過酸化物系の開始剤を用いることが好ましい。そのような過酸化物系の開始剤の例としては、t−ブチルハイドロパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類;t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシデカノエート等のパーオキシエステル類;1,5−ジ−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン等のパーオキシケタール類;アセト酢酸エチルパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類;過酸化ベンゾイル等のジアシルパーオキサイド類が挙げられる。
【0068】
前記の有機溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n−ヘキサンなどの炭化水素系溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトンなどのケトン系溶剤;あるいはこれらの混合物等が挙げられる。
【0069】
前記反応で得られる澱粉系樹脂(IV)の数平均分子量は、造膜性などの点から、好ましくは3,000〜200,000の範囲、より好ましくは5,000〜100,000の範囲である。
【0070】
澱粉系樹脂(V)
澱粉系樹脂(V)は、澱粉及び/又は変性澱粉(A)にラジカル重合性不飽和単量体をグラフト重合させて得られる樹脂(D)と、ポリイソシアネート化合物(b1)と多価アルコール(b2)とを反応させて得られたイソシアネート基を有する生成物(B)とを反応させて得られる。
【0071】
澱粉及び/又は変性澱粉(A)にラジカル重合性不飽和単量体をグラフト重合させて得られる樹脂(D)は、前記澱粉系樹脂(IV)と同じものであることができる。該樹脂(D)を得る具体的方法としては、前記澱粉系樹脂(IV)の製造において記載した澱粉系樹脂(IV)を得る方法と同じ方法が挙げられる。
【0072】
前記樹脂(D)とイソシアネート基を有する生成物(B)との反応は、有機溶剤中で行うことができる。有機溶剤としては、例えば、前記澱粉系樹脂(II)の製造において記載したものと同様の有機溶剤が挙げられる。前記樹脂(D)とイソシアネート基を有する生成物(B)との配合割合は、要求される塗膜性能に応じて適宜調整することができる。例えば、配合割合は、前記樹脂(D)とイソシアネート基を有する生成物(B)の合計不揮発分質量を基準にして、前記樹脂(D)が50〜99質量%、好ましくは60〜98質量%の範囲の量であり、イソシアネート基を有する生成物(B)が1〜50質量%、好ましくは2〜40質量%の範囲の量である。前記反応においては、適宜に、モノブチル錫オキサイド、ジブチル錫オキサイド等の触媒を用いることができる。前記反応の温度、時間は、特に限定されるものではないが、例えば、50℃〜200℃、好ましくは60〜150℃の温度で、30分間〜10時間、好ましくは1〜5時間である。
【0073】
前記反応で得られる澱粉系樹脂(V)の数平均分子量は、造膜性などの点から、好ましくは3,000〜200,000の範囲、より好ましくは5,000〜100,000の範囲である。
【0074】
着色顔料及び/又は光輝性顔料
着色顔料としては、酸化チタン、亜鉛華、鉛白、塩基性硫酸鉛、硫酸鉛、リトポン、硫化亜鉛、アンチモン白等の白色顔料;カーボンブラック、アセチレンブラック、ランプブラック、ボーンブラック、黒鉛、鉄黒、アニリンブラック等の黒色顔料;ナフトールエローS、ハンザエロー、ピグメントエローL、ベンジジンエロー、パーマネントエロー等の黄色顔料;クロムオレンジ、クロムバーミリオン、パーマネントオレンジ等の橙色顔料;酸化鉄、アンバー等の褐色顔料;ベンガラ、鉛丹、パーマネントレッド、キナクリドン系赤顔料等の赤色顔料;コバルト紫、ファストバイオレット、メチルバイオレットレーキ等の紫色顔料、群青、紺青、コバルトブルー、フタロシアニンブルー、インジゴ等の青色顔料;クロムグリーン、ピグメントグリーンB、フタロシアニングリーン等の緑色顔料等が挙げられる。
【0075】
光輝性顔料としては、アルミニウム粉、ブロンズ粉、銅粉、錫粉、鉛粉、亜鉛末、リン化鉄、パール状金属コーティング雲母粉、マイカ状酸化鉄等が挙げられる。
【0076】
着色顔料及び/又は光輝性顔料の配合割合は、使用される用途や要求される性能に応じて適宜決定すればよいが、通常、澱粉系樹脂100質量部当たり、0.001〜400質量部、好ましくは0.01〜200質量部の範囲である。
【0077】
本発明の澱粉系ベース塗料組成物には、必要に応じて、その他の植物由来樹脂が配合されてもよい。澱粉系樹脂以外の植物由来樹脂の例としては、植物性繊維又はセルロース樹脂や、ポリ乳酸に代表されるポリヒドロキシカルボン酸、ポリカプロラクタム、変性ポリビニルアルコールなどが挙げられる。
【0078】
本発明の澱粉系ベース塗料組成物には、必要に応じて、架橋剤を含有することができる。架橋剤としては、具体的には、ポリイソシアネート化合物が挙げられる。ポリイソシアネート化合物としては、具体的には例えば、前記ポリイソシアネート化合物(B)の説明において例示したポリイソシアネート化合物が挙げられる。
【0079】
本発明に用いる澱粉系ベース塗料組成物には、必要に応じて従来から公知の可塑剤、紫外線安定剤、金属ドライヤー、流動性調整剤、ハジキ防止剤、垂れ止め防止剤、酸化防止剤、艶消し剤、艶出し剤、防腐剤、硬化促進剤、擦り傷防止剤、消泡剤等を添加することができる。
【0080】
本発明に用いる澱粉系ベース塗料組成物は、水性塗料、有機溶剤型塗料などの従来から公知の液状塗料系で用いることができる。これらのなかでも、有機溶剤型塗料として、例えば、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n−ヘキサンなどの炭化水素系有機溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系有機溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトンなどのケトン系有機溶剤を単独で又は2種以上組合せて希釈溶剤として使用したものは、ラッカーとして塗装のし易さ、乾燥の早さにすぐれた非常に使い易い塗料とすることができる。
【0081】
ベース塗膜の形成
本発明のベース塗膜は、被塗物上に前記澱粉系ベース塗料組成物を塗装して形成される。ベース塗膜を形成する際の塗装方法は、従来公知の塗装方法が適用できる。例えば、ローラー塗装、刷毛塗装、浸漬塗装、スプレー塗装(非静電塗装、静電塗装など)、カーテンフロー塗装、スクリーン印刷、凸版印刷などが挙げられる。なかでも、スプレー塗装が好ましい。
【0082】
塗装後には、乾燥又はセッティングを行う。乾燥条件は特に限定されるものではないが、通常、乾燥は、100℃未満、好ましくは40℃以上90℃以下の温度で、1〜40分間行う。または、40℃未満の温度で10分間以上放置(セッティング)することにより行うことができる。
【0083】
ベース塗膜の膜厚は、特に制限されるものではないが、乾燥膜厚として、一般には、0.1〜30μm、好ましくは0.5〜20μm、より好ましくは1〜10μmである。
【0084】
活性エネルギー線硬化型水性塗料組成物
本発明において前記ベース塗膜上に塗装される活性エネルギー線硬化型水性塗料組成物は、糖類又はその誘導体のアクリル酸エステルの水分散体及び光重合開始剤を含有する。
【0085】
糖類又はその誘導体のアクリル酸エステルの水分散体
糖類又はその誘導体のアクリル酸エステルの水分散体は、糖類又はその誘導体に、アクリル酸、メチルアクリレート等のアクリル酸エステル、又はアクリル酸クロライド等のアクリル酸ハライド等を反応させてアクリル酸エステルとし、さらに該アクリル酸エステルを水分散化し水分散体としたものである。
【0086】
糖類又はその誘導体としては、単糖、糖アルコール、環状アルコール、オリゴ糖、多糖及びその誘導体が挙げられる。糖アルコールとしては、具体的には例えば、ソルビトール、ダルシトール、キシリトール等が挙げられる。環状アルコールとしては、具体的には例えば、イノシトールが挙げられる。本明細書において、オリゴ糖とは二糖から十糖の糖類を意味する。オリゴ糖としては、環状のオリゴ糖、非環状のオリゴ糖が挙げられる。本明細書において、環状のオリゴ糖とは、複数の単糖がグリコシド結合によって環状に結合した構造のオリゴ糖を意味する。また非環状のオリゴ糖とは、前記環状のオリゴ糖と異なり、複数の単糖がグリコシド結合によって鎖状かつ非環状に結合した構造のオリゴ糖を意味する。環状のオリゴ糖としては、具体的にはシクロデキストリンが挙げられる。非環状のオリゴ糖としては、具体的には、還元性二糖(マルトース、セロビオース、ラクトースなど)、非還元性二糖(スクロース、トレハロースなど)などの二糖;ラフィノース、パトース、スタキオース、デキストリンなどの三糖以上のオリゴ糖などを挙げることができる。これらの中でも、デンプンを加水分解することで任意の分子量のものが得られる点からデキストリンが好ましく、還元性のないスクロースやトレハロースが、メイラード反応(褐変反応)による褐色化が起こらないので、塗膜の耐久性の面から好ましい。本明細書において、多糖とは、単糖がグリコシド結合によって多数結合した糖であって、結合する単糖の数がオリゴ糖よりも多い糖を意味する。多糖としては、具体的には、セルロース、キチン、澱粉、グリコーゲン、アガロース、ペクチン等が挙げられる。
【0087】
糖類の誘導体としては、例えば、糖類における水酸基の一部が、炭素数2〜22個の飽和カルボン酸類(飽和カルボン酸、飽和カルボン酸エステル、飽和カルボン酸ハライド)から選ばれる少なくとも1種によって、カルボン酸エステル化されたものが好適に使用できる。具体的には例えば、酢酸エステル、ラウリン酸エステルなどが挙げられる。
【0088】
糖類又はその誘導体のアクリル酸エステルの製造は、常法に従って行うことができ、特に限定されるものではない。例えば、糖類又はその誘導体のアクリル酸エステルは、糖類又はその誘導体と、アクリル酸又はメチルアクリレート等のアクリル酸エステルを反応させることにより得ることができる。具体的には例えば、糖類又はその誘導体を有機溶剤に溶解した後、糖類又はその誘導体及びアクリル酸又はメチルアクリレート等のアクリル酸エステルの合計質量を基準にして、糖類又はその誘導体を50〜99質量%、好ましくは60〜98質量%、及びアクリル酸又はメチルアクリレート等のアクリル酸エステルを1〜50質量%、好ましくは2〜40質量%の範囲となる量でエステル化又はエステル交換反応させる。この反応は、有機溶剤、例えば、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n−ヘキサンなどの炭化水素系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトンなどのケトン系溶剤;あるいはこれらの混合物等中で混合して行うことができる。前記反応においては、適宜に、塩基性化合物を用いることができる。前記反応の温度、時間は、特に限定されるものではないが、例えば、60℃〜100℃、好ましくは70〜90℃の温度で、30分間〜10時間、好ましくは1時間〜5時間である。
【0089】
糖類又はその誘導体のアクリル酸エステルの製造において導入されるアクリロイル基の量は、製造の際の反応温度、反応時間により調節することができる。また、製造された糖類又はその誘導体のアクリル酸エステルの1分子あたりのアクリロイル基の平均個数は、例えばエステル交換反応による製造の場合、生成するアルコールをガスクロマトグラフィ等で定量することにより求めることができる。
【0090】
また、糖類又はその誘導体のアクリル酸エステルは、糖類又はその誘導体を有機溶剤に溶解し、アクリル酸ハライド(例えば、アクリル酸クロライド)を加えて、生成する酸を中和して水洗することによっても得ることができる(脱塩酸法)。
【0091】
このようにして得られる糖類又はその誘導体のアクリル酸エステルの重量平均分子量は、400〜2,000、好ましくは500〜1,800を有することが、製造が容易となる点、塗料粘度、及び仕上り性の点から好ましい。
【0092】
糖類又はその誘導体のアクリル酸エステルは、好ましくは1分子あたり平均3.0〜12.0個、より好ましくは平均4.0〜9.0個のアクリロイル基を有する。このことにより、活性エネルギー線照射時の反応性を高めて、得られた塗膜の耐擦り傷性や付着性を向上させることができる。
【0093】
糖類又はその誘導体のアクリル酸エステルを水分散化し水分散体とする方法は特に限定されるものではない。水分散化する方法としては、具体的には例えば、乳化剤を用いて強制乳化する方法が挙げられる。
【0094】
乳化剤を用いて強制乳化する方法としては、具体的には例えば、糖類又はその誘導体のアクリル酸エステル又はその有機溶剤溶液と乳化剤を混合した後、攪拌しながら徐々に水を加えることによって水分散化する方法が挙げられる。糖類又はその誘導体のアクリル酸エステル又はその有機溶剤溶液と乳化剤を混合する際には、後述する光重合開始剤をさらに混合しても良い。水分散化して得られる水分散体の粒子径を小さくしたい場合には、前記方法で得られた水分散体をさらにホモジナイザー、高圧乳化装置などで処理すればよい。また、糖類又はその誘導体のアクリル酸エステルの有機溶剤溶液を用いる場合には、有機溶剤を全部又は一部を除去してから水分散化してもよいし、水分散体を得てから有機溶剤を全部又は一部を除去してもよい。このことにより水分散体中の有機溶剤量を減らすことができる。
【0095】
前記乳化剤は、特に限定されるものではない。乳化剤としては、例えば、反応性乳化剤、非反応性乳化剤等が挙げられる。反応性乳化剤としては、例えば、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルアクリレート等のノニオン性反応性乳化剤;アクアロン HS-10(商品名、第一工業製薬社製)、ニューフロンティアA-229E(商品名、第一工業製薬社製)、アデカリアソープ SE-10N(商品名、旭電化工業社製)、スルホエチルメタクリレートナトリウム塩等のアニオン性基及びα,β−エチレン性二重結合を有するアニオン性反応性乳化剤;ポリオキシエチレン−1−(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩、α−スルホ−ω−(1−(アルコキシ)メチル−2−(2−プロペニルオキシ)エトキシ)−ポリ(オキシ−1、2−エタンジイル)のアンモニウム塩などのアニオン・ノニオン性反応性乳化剤;第4級アンモニウム塩基及びα,β−エチレン性二重結合を有するカチオン性反応性乳化剤;反応性高分子乳化剤等が挙げられる。
【0096】
反応性高分子乳化剤としては、例えば、硫酸エステル、燐酸エステル、カルボン酸、アミノ基、ポリエチレングリコール鎖等の親水性基を有する単官能アクリルモノマーと、その他の共重合可能なモノマーとを共重合した後、末端あるいは側鎖に二重結合を導入した反応性高分子乳化剤等が挙げられる。具体的には例えば、エポキシ基含有不飽和単量体、水酸基含有不飽和単量体及び疎水性の不飽和単量体を含有する単量体混合液を重合しアクリル重合体を得た後、該アクリル重合体存在下でカルボキシル基含有不飽和単量体、水酸基含有不飽和単量体及び親水性の不飽和単量体を含有する単量体混合液を重合することによりグラフトアクリル重合体を得て、さらに該グラフトアクリル重合体の水酸基にイソシアネート基を有する不飽和単量体を付加させてなる反応性高分子乳化剤等が挙げられる。
【0097】
非反応性乳化剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸ソーダ、ラウリル硫酸ソーダ、ナトリウムジオクチルスルホサクシネート、アルキルフェニルポリオキシエチレンサルフェートソーダ塩又はアンモニウム塩などのアニオン性乳化剤、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンーポリオキシプロピレンブロック共重合体等が挙げられる。
【0098】
これら乳化剤の中でも反応性乳化剤を用いることが、耐水性の点から好ましい。
【0099】
乳化剤量は、特に限定されるものではない。好ましくは、糖類又はその誘導体のアクリル酸エステル100質量部に対して0.2〜20質量部であり、より好ましくは、2〜15質量部である。これら範囲の下限値は、安定な水分散体を得ることができる点で意義がある。これら範囲の上限値は、耐水性の点で意義がある。
【0100】
光重合開始剤
光重合開始剤は、活性エネルギー線の光エネルギーで励起されることでラジカルを発生し、本発明のアクリル酸エステルが有するラジカル重合性不飽和基(具体的にはアクリロイル基)のラジカル重合反応を開始するものである。
【0101】
光重合開始剤の具体例としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン、2−メチル−2−モルフォリノ(4−チオメチルフェニル)プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルエトキシフォスフィンオキサイド、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、ヒドロキシベンゾフェノン、2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−S−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロ)−S−トリアジン、2−(4−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−S−トリアジンなどが挙げられる。これらの光重合開始剤は、単独で又は2種類以上を組合せて使用できる。光重合開始剤は、イルガキュア500[商品名、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、1−ヒドロキシ-シクロヘキシル−フェニル-ケトンとベンゾフェノンの1:1(質量比)混合物]、ダロキュア1173(商品名、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン)等の常温で液状の光重合開始剤を用いることが混合安定性の点から好ましい。該光重合開始剤の含有量は、糖類又はその誘導体のアクリル酸エステル及び後述する活性エネルギー線硬化性化合物の総量100質量部に対して、0.1〜10質量部、好ましくは0.2〜5質量部の範囲内である。
【0102】
本発明の活性エネルギー線硬化型水性塗料組成物には、活性エネルギー線の照射によるラジカル重合反応を促進させるために、光重合開始剤に加えて、ラジカル発生の感度向上や波長領域拡張を目的として光増感剤を併用してもよい。
【0103】
併用し得る光増感剤としては、例えば、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸メチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、安息香酸(2−ジメチルアミノ)エチル、ミヒラーケトン、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン等の3級アミン系、トリフェニルホスフィン等のアルキルフォスフィン系、β−チオジグリコール等のチオエーテル系などが挙げられる。これらの光増感剤は、糖類又はその誘導体のアクリル酸エステル及び後述する活性エネルギー線硬化性化合物の総量100質量部に対して、0.1〜5質量部の範囲が好ましい。
【0104】
活性エネルギー線硬化性化合物
本発明の活性エネルギー線硬化型水性塗料組成物には、必要に応じて前記糖類又はその誘導体のアクリル酸エステル以外の活性エネルギー線硬化性化合物を配合することができる。配合する活性エネルギー線硬化性化合物は、糖類又はその誘導体のアクリル酸エステル以外の、ラジカル重合性不飽和モノマー、ラジカル重合性不飽和基含有樹脂、並びにラジカル重合性不飽和基及び熱硬化性官能基含有樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマー及び/又は樹脂であることが好ましい。なお、ラジカル重合性不飽和モノマーとしては、1官能重合性モノマー、2官能重合性モノマー、3官能以上の重合性モノマー等が挙げられる。
【0105】
1官能重合性モノマーとしては、スチレン、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキセニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ε−カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ε−カプロラクトン変性ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−ブトキシプロピル(メタ)アクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、パラクミルフェノールエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミドブチルエーテル、アクリロイルモルホリン、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−ビニル−2−ピロリドンなどが挙げられる。
【0106】
2官能重合性モノマーとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAエチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAプロピレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−1−アクリロキシ−3−メタクリロキシプロパン、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドフォスフェート等が挙げられる。また、2官能重合性モノマーとしては、「カヤラッドHX−220」、「カヤラッド620」、「カヤラッドR−604」、「MANDA」等の商品名で日本化薬(株)から市販されているモノマーも使用できる。
【0107】
3官能以上の重合性モノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンプロピレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、グリセリンエチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、グリセリンプロピレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性トリアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0108】
好ましいラジカル重合性不飽和モノマーとしては、光硬化性、付着性、耐擦り傷性等から2官能重合性モノマー及び/又は3官能以上の重合性モノマーである。
【0109】
ラジカル重合性不飽和基含有樹脂としては、例えば、不飽和アクリル樹脂、不飽和ウレタン樹脂、不飽和エポキシ樹脂、ポリエステル(メタ)アクリレート、不飽和シリコーン樹脂などが挙げられ、これらから選ばれた一種又は二種以上を使用することができる。この中でも1分子中にラジカル重合性不飽和基と熱硬化性官能基とを各1個以上有する樹脂を用いることができ、塗膜の硬化性の点から、該不飽和基と該熱硬化性官能基を複数個有する樹脂を用いることが好ましい。
【0110】
前記熱硬化官性能基としては、例えは、水酸基、酸基、エポキシ基、イソシアネート基等の官能基が挙げられる。該酸基としては、カルボキシル基、リン酸基等が挙げられる。
【0111】
ここで述べる1分子中にラジカル重合性不飽和基と熱硬化性官能基とを各1個以上有する樹脂の具体例としては、例えば、ラジカル重合性不飽和基及びエポキシ基含有アクリル樹脂、ラジカル重合性不飽和基及びイソシアネート基含有アクリル樹脂等が挙げられる。
【0112】
また、活性エネルギー線硬化性化合物が熱硬化性官能基を有する場合には、例えば、アミノ樹脂、ポリイソシアネート化合物、エポキシ基含有化合物等を併用することが塗膜硬度向上の点から好ましい。前記アミノ樹脂としては、例えば、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、尿素樹脂などを用いることができる。
【0113】
糖類又はその誘導体のアクリル酸エステルに対する活性エネルギー線硬化性化合物の配合割合としては、糖類又はその誘導体のアクリル酸エステル100質量部に対して、活性エネルギー線硬化性化合物は0〜900質量部、好ましくは30〜400質量部であることが、仕上り性、耐擦り傷性の点から好ましい。
【0114】
さらに、本発明の活性エネルギー線硬化型水性塗料組成物には、必要に応じて、艶消し剤、表面調整剤、紫外線吸収剤、光安定剤、消泡剤、有機着色剤、天然色素及び無機顔料などを使用することができる。
【0115】
本発明の活性エネルギー線硬化型水性塗料組成物を製造する際の水性化する方法としては、特に限定されるものではない。水性化する方法としては、例えば、糖類又はその誘導体のアクリル酸エステル又はその有機溶剤溶液、光重合開始剤及び乳化剤を混合した後、攪拌しながら徐々に水を加えることによって水分散化させ水性化する方法が挙げられる。また他の方法としては、糖類又はその誘導体のアクリル酸エステルを水分散化させて得た水分散体と、光重合開始剤等の他の成分を水性媒体中で常法に従い混合して水性化する方法が挙げられる。活性エネルギー線硬化性化合物を使用する場合、該化合物をあらかじめ水分散化して得た水分散体を使用することが混合安定性の点から好ましい。活性エネルギー線硬化性化合物の水分散化の方法は糖類又はその誘導体のアクリル酸エステルの水分散化と同様の方法を採ることができる。また、光重合開始剤が水に対する溶解性の小さい固体の光重合開始剤である場合、活性エネルギー線硬化性化合物に添加して溶解することが、均一な光硬化が可能な点、仕上り性、及び耐擦り傷性の点で好ましい。
【0116】
活性エネルギー線硬化型水性塗料組成物を塗装した後、活性エネルギー線照射する工程
活性エネルギー線硬化型水性塗料組成物を塗装する際の塗装方法は、従来公知の塗装方法が適用できる。例えば、ローラー塗装、刷毛塗装、浸漬塗装、スプレー塗装(非静電塗装、静電塗装など)、カーテンフロー塗装、スクリーン印刷、凸版印刷などが挙げられる。なかでも、スプレー塗装が好ましい。
【0117】
前記塗装により形成される塗膜の膜厚は、特に制限されるものではないが、乾燥膜厚として、0.1〜30μm、好ましくは1〜25μm、より好ましくは5〜20μmである。
【0118】
活性エネルギー線硬化型水性塗料組成物の不揮発分濃度は、塗装可能な範囲であれば特に制限されるものではないが、スプレー塗装を行う場合は、好ましくは10〜50質量%の範囲である。
【0119】
活性エネルギー線硬化型水性塗料組成物を塗装した後には、加熱又はセッティングすることによって、水などの溶剤を揮発させてから活性エネルギー線を照射することが望ましい。加熱する場合の手段としては、特に限定されるものではなく、例えば、熱風炉、電気炉、赤外線誘導加熱などの乾燥設備を適用できる。加熱温度は、特に制限されるものではないが、通常、35〜100℃、好ましくは40〜90℃の範囲である。加熱時間は、特に制限されるものではないが、通常、1〜30分の範囲が好適である。
【0120】
照射する活性エネルギー線は、特に制限はなく、電子線、紫外線、可視光、赤外線のいずれであってもよい。波長200〜600nm、好ましくは波長300〜450nmの活性エネルギー線が、仕上り性などの点から好ましい。
【0121】
活性エネルギー線の照射源としては、光重合開始剤の種類に応じて、感度の高い波長を有する照射源を適宜選択して使用することができる。該活性エネルギー線の照射源としては、例えば、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ、カーボンアーク、メタルハライドランプ、太陽光などを挙げることができる。
【0122】
活性エネルギー線を照射する条件は、通常、積算光量が1,000〜20,000J/m、好ましくは2,000〜15,000J/mとなる範囲が適している。照射時間としては、1秒間〜5分程度で塗膜を硬化することができる。前記範囲であることが、塗膜の光硬化性、耐黄変性などの点から好ましい。
【0123】
また、前記活性エネルギー線硬化型水性塗料組成物は、活性エネルギー線を照射した後又は同時に補助的な架橋手段として加熱を施すこともできる。
【0124】
本発明の塗膜形成方法により得られた塗装物品は、例えば、電気部品、携帯電話、照明、電気素子、半導体、自動販売機等の材料や部品として使用することができる。
【実施例】
【0125】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。なお、実施例中の「部」及び「%」は、特にことわらない限り、「質量部」及び「質量%」である。
【0126】
変性澱粉(A)[澱粉系樹脂(I)]の製造
<製造例1> 変性澱粉(A−1)[澱粉系樹脂(I−1)]
ハイアミロースコーンスターチ(日本コーンスターチ社製、水酸基価500mgKOH/g)25部をジメチルスルホキシド(DMSO)200部に懸濁させ、攪拌しながら90℃まで昇温し、20分間その温度に保持して糊化させた。この溶液に重炭酸ナトリウム20部を触媒として添加し、90℃を維持してラウリン酸ビニル17部を添加し、その温度で1時間反応させた。次に、さらに酢酸ビニル37部を添加して、同じく80℃で1時間反応させた。その後、反応液を水道水中に流し込み、高速で攪拌して粉砕を行い、濾過し、脱水乾燥して、変性澱粉(A−1)[澱粉系樹脂(I−1)]を調製した。
【0127】
イソシアネート基を有する生成物(B)の製造
<製造例2> イソシアネート基を有する生成物(B−1)
温度計、サーモスタット、攪拌機、冷却管および滴下装置を備えた容量1Lの反応容器にトルエン125部、イソホロンジイソシアネート377部を仕込み、窒素雰囲気下で攪拌混合しながら80℃まで昇温した。次いで、1,4−ブタンジオール123部を3時間かけて滴下し、滴下終了後80℃で30分間熟成して、不揮発分80%のイソシアネート基を有する生成物(B−1)溶液を調製した。得られたイソシアネート基を有する生成物(B−1)のNCO価は、55mgNCO/gであった。
【0128】
<製造例3> イソシアネート基を有する生成物(B−2)
温度計、サーモスタット、攪拌機、冷却管および滴下装置を備えた容量1Lの反応容器にトルエン125部、イソホロンジイソシアネート325部を仕込み、窒素雰囲気下で攪拌混合しながら80℃まで昇温した。次いで、トリエチレングリコール117部を3時間かけて滴下し、滴下終了後80℃で30分間熟成して、不揮発分80%のイソシアネート基を有する生成物(B−2)溶液を調製した。得られたイソシアネート基を有する生成物(B−2)のNCO価は、57mgNCO/gであった。
【0129】
ビニル共重合体樹脂(C)の製造
<製造例4> ビニル共重合体樹脂(C−1)
温度計、サーモスタット、攪拌機、冷却管および滴下装置を備えた容量1Lの反応容器にトルエン333部を仕込み、窒素雰囲気下で攪拌混合しながら100℃まで昇温した。次いで、下記組成の「混合物1」を4時間かけて滴下し、滴下終了後100℃で1時間熟成して、不揮発分60%のビニル共重合体樹脂(C−1)溶液を得た。得られたビニル共重合体樹脂(C−1)の水酸基価は、86mgKOH/gであった。
【0130】
「混合物1」
スチレン 200部
メタクリル酸メチル 150部
アクリル酸n−ブチル 50部
メタクリル酸2−ヒドロキシエチル 100部
2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル) 25部
【0131】
澱粉系樹脂(II)の製造
<製造例5> 澱粉系樹脂(II−1)
温度計、サーモスタット、攪拌機および冷却管を備えた容量1Lの反応容器に酢酸ブチル595.0部を仕込み、窒素雰囲気下で攪拌しながら50℃まで昇温した。次いで、50℃を保持して製造例1で得た変性澱粉(A−1)180部を反応容器中に仕込み、その後100℃に昇温して、仕込んだ変性澱粉(A−1)の全てが溶解するまで攪拌した。次に、製造例2で得た不揮発分80%のイソシアネート基を有する生成物(B−1)溶液を25部仕込み、均一になるまで攪拌した後、触媒としてジブチル錫ジラウレート0.02部を添加し、窒素雰囲気下で攪拌しながら100℃で6時間反応を行って、不揮発分25%の澱粉系樹脂(II−1)溶液を得た。得られた澱粉系樹脂(II−1)のNCO価は、0.4mgNCO/gであった。
【0132】
<製造例6〜8> 澱粉系樹脂(II−2)〜(II−4)
表1に示す配合組成とした以外は製造例5と同様にして、澱粉系樹脂(II−2)〜(II−4)溶液を得た。得られた樹脂のNCO価を併せて表1に示す。
【0133】
澱粉系樹脂(III)の製造
<製造例9> 澱粉系樹脂(III−1)
温度計、サーモスタット、攪拌機および冷却管を備えた容量1Lの反応容器に、酢酸ブチル581.6部、製造例4で得た不揮発分60%のビニル共重合体樹脂(C−1)溶液を33.4部仕込み、窒素雰囲気下で攪拌しながら50℃まで昇温した。次いで、50℃を保持して製造例1で得た変性澱粉(A−1)160部を攪拌下に反応容器中に仕込み、その後100℃に昇温して、仕込んだ変性澱粉(A−1)の全てを溶解させた。次に、製造例2で得た不揮発分80%のイソシアネート基を有する生成物(B−1)溶液を25部仕込み、均一になるまで攪拌した後、触媒としてジブチル錫ジラウレート0.02部を添加し、窒素雰囲気下で攪拌しながら100℃で6時間反応させて、不揮発分25%の澱粉系樹脂(III−1)溶液を得た。得られた澱粉系樹脂(III−1)のNCO価は、0.4mgNCO/gであった。
【0134】
<製造例10〜12> 澱粉系樹脂(III−2)〜(III−4)
表1に示す配合組成とした以外は製造例9と同様にして、澱粉系樹脂(III−2)〜(III−4)溶液を得た。得られた樹脂のNCO価を併せて表1に示す。
【0135】
【表1】

【0136】
澱粉系樹脂(IV)の製造
<製造例13> 澱粉系樹脂(IV−1)
温度計、サーモスタット、攪拌機、冷却管および滴下装置を備えた容量1Lの反応容器に、酢酸ブチル466部を仕込み、窒素雰囲気下で攪拌しながら50℃まで昇温した。次いで、50℃に保持して製造例1で得た変性澱粉(A−1)を160部反応容器中に仕込み、その後100℃に昇温して、仕込んだ変性澱粉(A−1)が完全に溶解するまで攪拌した。次いで、下記組成の「混合物2」を1時間かけて滴下し、滴下終了後、100℃で1時間熟成して、不揮発分30%の澱粉系樹脂(IV−1)溶液を得た。
【0137】
「混合物2」
スチレン 32部
メタクリル酸メチル 4部
アクリル酸n−ブチル 4部
パーカドックスCH−50L(注1) 4部
(注1)重合開始剤、ジアシルパーオキサイド50%含有:化薬アクゾ株式会社製
【0138】
<製造例14> 澱粉系樹脂(IV−2)
「混合物2」の代わりに下記組成の「混合物3」を用いた以外は製造例13と同様にして、不揮発分30%の澱粉系樹脂(IV−2)溶液を得た。
【0139】
「混合物3」
スチレン 28部
メタクリル酸メチル 4部
アクリル酸n−ブチル 4部
メタクリル酸2−ヒドロキシエチル 4部
パーカドックスCH−50L 4部
【0140】
<製造例15> 澱粉系樹脂(IV−3)
「混合物2」の代わりに下記組成の「混合物4」を用いた以外は製造例13と同様にして、不揮発分30%の澱粉系樹脂(IV−3)溶液を得た。
【0141】
「混合物4」
スチレン 16部
メタクリル酸メチル 16部
アクリル酸n−ブチル 4部
メタクリル酸2−ヒドロキシエチル 4部
パーカドックスCH−50L 4部
【0142】
<製造例16> 澱粉系樹脂(IV−4)
変性澱粉(A−1)の仕込み量を180部とし、「混合物2」の代わりに下記組成の「混合物5」を用いた以外は製造例13と同様にして、不揮発分30%の澱粉系樹脂(IV−4)溶液を得た。
【0143】
「混合物5」
スチレン 14部
メタクリル酸メチル 2部
アクリル酸n−ブチル 2部
メタクリル酸2−ヒドロキシエチル 2部
パーカドックスCH−50L 2部
【0144】
<製造例17> 澱粉系樹脂(IV−5)
「混合物2」の代わりに下記組成の「混合物6」を用いた以外は製造例13と同様にして、不揮発分30%の澱粉系樹脂(IV−5)溶液を得た。
【0145】
「混合物6」
メタクリル酸メチル 32部
アクリル酸n−ブチル 4部
パーカドックスCH−50L 4部
【0146】
澱粉系樹脂(V)の製造
<製造例18> 澱粉系樹脂(V−1)
イソシアネート基を有する生成物(B−3)の製造
温度計、サーモスタット、攪拌機、冷却管および滴下装置を備えた1Lの反応容器にトルエン125部、ヘキサメチレンジイソシアネート292部を仕込み、窒素雰囲気下で攪拌混合しながら80℃まで昇温した。次いで、トリエチレングリコール208部を3時間かけて滴下し、滴下終了後、80℃で30分間熟成して、不揮発分80%のイソシアネート基を有する生成物(B−3)溶液を得た。得られたイソシアネート基を有する生成物(B−3)のNCO価は、58mgNCO/gであった。
【0147】
澱粉系樹脂(V−1)の製造
温度計、サーモスタット、攪拌機および冷却管を備えた1Lの反応容器に、酢酸ブチル41部、製造例14で得た不揮発分30%の澱粉系樹脂(IV−2)溶液を600部仕込み、窒素雰囲気下で攪拌しながら100℃まで昇温した。次に、前記で得た不揮発分80%のイソシアネート基を有する生成物(B−3)溶液を25部仕込み、均一になるまで攪拌した後、触媒としてジブチル錫ジラウレート0.04部を添加し、窒素雰囲気で攪拌しながら100℃で6時間反応させて、不揮発分30%の澱粉系樹脂(V−1)溶液を得た。得られた澱粉系樹脂(V−1)のNCO価は、0.4mgNCO/gであった。
【0148】
<製造例19> 澱粉系樹脂(V−2)
イソシアネート基を有する生成物(B−4)の製造
温度計、サーモスタット、攪拌機、冷却管および滴下装置を備えた1Lの反応容器にトルエン125部、イソホロンジイソシアネート378部を仕込み、窒素雰囲気下で攪拌混合しながら80℃まで昇温した。次いで、1,4−ブタンジオール122部を3時間かけて滴下し、滴下終了後、80℃で30分間熟成して、不揮発分80%のイソシアネート基を有する生成物(B−4)溶液を得た。得られたイソシアネート基を有する生成物(B−4)のNCO価は、57mgNCO/gであった。
【0149】
澱粉系樹脂(V−2)の製造
温度計、サーモスタット、攪拌機および冷却管を備えた1Lの反応容器に、酢酸ブチル41部、製造例17で得た不揮発分30%の澱粉系樹脂(IV−5)溶液を600部仕込み、窒素雰囲気下で攪拌しながら100℃まで昇温した。次に、前記で得た不揮発分80%のイソシアネート基を有する生成物(B−4)溶液を25部仕込み、均一になるまで攪拌した後、触媒としてジブチル錫ジラウレート0.04部を添加し、窒素雰囲気で攪拌しながら100℃で6時間反応させて、不揮発分30%の澱粉系樹脂(V−2)溶液を得た。得られた澱粉系樹脂(V−2)のNCO価は、0.4mgNCO/gであった。
【0150】
澱粉系ベース塗料組成物の製造
<製造例20> 澱粉系ベース塗料組成物No.1
製造例1で得た澱粉系樹脂(I−1)を100部(不揮発分100部)、アルミニウムペーストF.X1440(注2)41.8部(不揮発分23部)、ハイコンク黒(注3)3部、及びメチルエチルケトン359.2部を加え、攪拌機により十分に混合して、不揮発分25%の澱粉系ベース塗料組成物No.1を得た。
【0151】
<製造例21〜39> 澱粉系ベース塗料組成物No.2〜No.20
表2に示す配合組成とした以外は製造例20と同様にして、不揮発分25%の澱粉系ベース塗料組成物No.2〜No.20を得た。
【0152】
【表2】

【0153】
【表3】

【0154】
(注2)アルミニウムペーストF.X1440:商品名、東洋アルミニウム社製、アルミニウムペースト
(注3)ハイコンク黒:商品名、横浜化成社製、溶剤型塗料用黒色着色剤
(注4)工業用硝化綿BNC−HIG−2:商品名、フランスベルジュラックNC社製、ニトロセルロースのプロパノール湿潤物を酢酸エチルに溶解したもの
(注5)CAB551−0.2:商品名、イーストマンケミカルプロダクツ社製、セルロースアセテートブチラートを酢酸エチルに溶解したもの
(注6)タケネートD−170HN:商品名、三井化学ポリウレタン社製、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体
【0155】
ベース塗料組成物の製造(比較例用)
<製造例40> ベース塗料組成物No.21
アクリル樹脂溶液の製造
温度計、サーモスタット、攪拌機、冷却管および滴下装置を備えた1Lの反応容器にトルエン333部を仕込み、窒素雰囲気下で攪拌混合しながら100℃まで昇温した。次いで、下記組成の「混合物6」を4時間かけて滴下し、滴下終了後100℃で1時間熟成して、不揮発分60%のアクリル樹脂溶液を得た。得られたアクリル樹脂溶液の水酸基価は、86mgKOH/gであった。
【0156】
「混合物6」
メタクリル酸メチル 350部
アクリル酸n−ブチル 50部
メタクリル酸2−ヒドロキシエチル 100部
2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル) 25部
【0157】
ベース塗料組成物No.21の製造
前記で得たアクリル樹脂溶液を167部(不揮発分100部)、アルミニウムペーストF.X1440 41.8部(不揮発分23部)、ハイコンク黒 3部(不揮発分3部)、及びメチルエチルケトン292.2部を加え、攪拌機にて十分に混合し、不揮発分25%のベース塗料組成物No.21を得た。
【0158】
糖類又はその誘導体のアクリル酸エステルの製造
<製造例41> 糖類又はその誘導体のアクリル酸エステルNo.1
蒸留装置、温度計、および攪拌機を備えた反応容器にデキストリン(I)(平均重合数4のグルコース重合体、1分子あたり平均14個の水酸基を有する)80部、メチルイソブチルケトン100部、メチルヒドロキノン0.16部、水酸化リチウム1水和物5.9部およびメチルアクリレート506.2部を仕込んだ。次いで、この溶液中に窒素を吹き込みながら90℃に加熱攪拌し、メチルアクリレート、メタノール、メチルイソブチルケトンを少しづつ系外へ留去した。留去に伴い減少するメチルアクリレートとメチルイソブチルケトンは、減少分を反応容器内へ添加した。次いで、反応容器中のメタノール及び留去したメタノールをガスクロマトグラフィの測定によって定量することで反応を追跡し、前記デキストリン(I)の1分子あたり平均6.0個の水酸基がアクリル酸エステル化されたところで冷却した。さらに、反応液を減圧下で濃縮し、残留物に酢酸エチルを添加して不揮発分25%、重量平均分子量1,100かつ1分子あたり平均6.0個のアクリロイル基を有するアクリル酸エステルNo.1溶液を得た。
【0159】
<製造例42> 糖類又はその誘導体のアクリル酸エステルNo.2
製造例41において、デキストリン(I)が有する1分子あたり平均14個の水酸基のうち平均10.0個の水酸基がアクリル酸エステル化されるまで、反応容器中のメタノール及び留去したメタノールをガスクロマトグラフィの測定によって定量することで反応を追跡し、反応時間を延長した以外は、製造例41と同様にして、重量平均分子量1,400かつ1分子あたり平均10.0個のアクリロイル基を有するアクリル酸エステルNo.2溶液を得た。
【0160】
<製造例43> 糖類又はその誘導体のアクリル酸エステルNo.3
製造例41において、平均重合数3のグルコース重合体であり、かつ1分子あたり平均11個の水酸基を有するデキストリン(II)を用いる以外は、製造例41と同様にして、該デキストリン(II)が有する1分子あたり平均11個の水酸基のうち平均6.0個の水酸基がアクリル酸エステル化されるまで、反応容器中のメタノール及び留去したメタノールをガスクロマトグラフィの測定によって定量することで反応を追跡し、重量平均分子量950かつ1分子あたり平均6.0個のアクリロイル基を有するアクリル酸エステルNo.3溶液を得た。
【0161】
<製造例44> 糖類又はその誘導体のアクリル酸エステルNo.4
製造例41において、平均重合数6のグルコース重合体であり、かつ1分子あたり平均20個の水酸基を有するデキストリン(III)を用いる以外は製造例41と同様にして、該デキストリン(III)が有する1分子あたり平均20個の水酸基のうち平均6.0個の水酸基がアクリル酸エステル化されるまで、反応容器中のメタノール及び留去したメタノールをガスクロマトグラフィの測定によって定量することで反応を追跡し、重量平均分子量1,500かつ1分子あたり平均6.0個のアクリロイル基を有するアクリル酸エステルNo.4溶液を得た。
【0162】
<製造例45> 糖類又はその誘導体のアクリル酸エステルNo.5
製造例41において、デキストリン(I)の代わりにトレハロースを用い、反応容器中のメタノール及び留去したメタノールをガスクロマトグラフィの測定によって定量することで反応を追跡し、前記トレハロースの1分子あたり平均6.0個の水酸基がアクリル酸エステル化されたところで冷却する以外は、製造例41と同様にして、重量平均分子量780かつ1分子あたり平均6.0個のアクリロイル基を有するアクリル酸エステルNo.5溶液を得た。
【0163】
<製造例46> 糖類又はその誘導体のアクリル酸エステルNo.6
製造例41において、デキストリン(I)の代わりにスクロースを用い、反応容器中のメタノール及び留去したメタノールをガスクロマトグラフィの測定によって定量することで反応を追跡し、前記スクロースの1分子あたり平均6.0個の水酸基がアクリル酸エステル化されたところで冷却する以外は、製造例41と同様にして、重量平均分子量780かつ1分子あたり平均6.0個のアクリロイル基を有するアクリル酸エステルNo.6溶液を得た。
【0164】
<製造例47> 活性エネルギー線硬化性化合物No.1
温度計、サーモスタット、撹拌機、還流冷却器及び空気吹込装置を備え付けた反応容器に、イソホロンジイソシアネート888部、2−ヒドロキシエチルアクリレート464部及びハイドロキノンモノメチルエーテル0.7部を仕込み、反応容器内に空気を吹き込みながら、80℃に昇温してその温度に5時間保ち、加えた2−ヒドロキシエチルアクリレートの水酸基が実質的に全て反応したのを確認した後、ペンタエリスリトール136部、酢酸ブチル372部及びジブチル錫ジラウレート0.2部を添加してさらに80℃に保持し、イソホロンジイソシアネートのイソシアネート基が実質的に全て反応したのを確認した後冷却し、不揮発分80%の活性エネルギー線硬化性化合物No.1を得た。この樹脂の数平均分子量は約1,500であった。
【0165】
<製造例48> 反応性高分子乳化剤No.1
攪拌機、還流冷却器、温度計、滴下漏斗及び窒素導入口を備えた4つ口フラスコにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート1,000部を加え、窒素ガスを導入しつつかき混ぜながら、120℃に加熱した。次にスチレン130部、n−ブチルメタクリレート590部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート85部、グリシジルメタクリレート5部、メチルメタクリレート40部、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル20部の混合物を滴下槽から3時間にわたって滴下した。滴下終了後、同温で0.5時間保持して共重合体を得た後、この中に、スチレン20部、n−ブチルメタクリレート45部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート15部、アクリル酸60部、メチルメタクリレート10部、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート10部の混合物を滴下槽から1時間にわたって滴下した。滴下終了後、同温で0.5時間保持した後、さらにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート40部にt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート10部を溶解した溶液50部を30分かけて滴下した。ついで1時間熟成した。80℃まで冷却した後、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート50部とネオスタンU−100(錫系触媒)0.1部を加えて2時間攪拌した。不揮発分70%になるまで溶剤を留去して反応性高分子乳化剤No.1溶液を得た。
【0166】
活性エネルギー線硬化型水性塗料組成物No.1の製造
<製造例49> 活性エネルギー線硬化型水性塗料組成物No.1
製造例41で得られたアクリル酸エステルNo.1溶液から溶剤を留去して不揮発分70%の溶液を得た。この溶液142.9部(不揮発分100部)に、ダロキュア1173(商品名、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、光重合開始剤)3部、及びRMA−506(商品名、日本乳化剤社製、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルアクリレート、ノニオン性反応性乳化剤)6部を加え、攪拌しながら脱イオン水210.4部を徐々に加えて水分散化した。さらにBYK−348(商品名、ビックケミー社製、表面調整剤)を1部加えて不揮発分30%の活性エネルギー線硬化型水性塗料組成物No.1を得た。
【0167】
<製造例50〜54> 活性エネルギー線硬化型水性塗料組成物No.2〜No.6
アクリル酸エステルNo.1溶液をアクリル酸エステルNo.2〜No.6溶液へと変更した以外は、表3の配合に従い製造例49と同様にして、不揮発分30%の活性エネルギー線硬化型水性塗料組成物No.2〜No.6を得た。
【0168】
【表4】

【0169】
<製造例55> 活性エネルギー線硬化型水性塗料組成物No.7
製造例41で得られたアクリル酸エステルNo.1溶液から溶剤を留去して不揮発分70%の溶液を得た。この溶液142.9部(不揮発分100部)に、ダロキュア1173 3部、及び製造例48で得た反応性高分子乳化剤No.1 14.3部(不揮発分10部)を加え、攪拌しながら脱イオン水218.8部を徐々に加えて水分散化した。さらにBYK−348を1部加えて不揮発分30%の活性エネルギー線硬化型水性塗料組成物No.7を得た。
【0170】
<製造例56> 活性エネルギー線硬化型水性塗料組成物No.8
製造例47で得られた活性エネルギー線硬化性化合物No.1に酢酸ブチルを加えて不揮発分70%の溶液を得た。この溶液142.9部(不揮発分100部)に、ダロキュア1173 3部、RMA−506 6部を加え、攪拌しながら脱イオン水210.4部を徐々に加えて水分散体を得た。さらにBYK−348を1部加えて不揮発分30%の組成物を得た。この組成物30部及び製造例49で得た不揮発分30%の活性エネルギー線硬化型水性塗料組成物No.1 70部を混合攪拌して、不揮発分30%の活性エネルギー線硬化型水性塗料組成物No.8を得た。
【0171】
<製造例57> 活性エネルギー線硬化型塗料組成物No.9(比較例用)
製造例47で得られた活性エネルギー線硬化性化合物No.1 125部(不揮発分100部)に、イルガキュア184(商品名、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、光重合開始剤)3部を加えて溶解させた後、酢酸ブチルで不揮発分30%に希釈して、活性エネルギー線硬化型塗料組成物No.9を得た。
【0172】
<製造例58> 活性エネルギー線硬化型水性塗料組成物No.10(比較例用)
製造例47で得られた活性エネルギー線硬化性化合物No.1に酢酸ブチルを加えて不揮発分70%の溶液を得た。この溶液142.9部(不揮発分100部)に、ダロキュア1173 3部、RMA−506 6部を加え、攪拌しながら脱イオン水210.4部を徐々に加えて水分散体を得た。さらにBYK−348を1部加えて不揮発分30%の活性エネルギー線硬化型水性塗料組成物No.10を得た。
【0173】
<実施例1>
塗膜の形成
以下の工程により複層塗膜No.1を作成した。
工程1:被塗物としてポリカーボネート樹脂板(商品名、ダイヤライトP、三菱レイヨン社製、70mm×150mm×2mm)を用いた。イソプロパノールで脱脂した該被塗物上に製造例20で得られた澱粉系ベース塗料組成物No.1をエアスプレーで乾燥塗膜が8μmになるように塗装し、60℃で15分間加熱乾燥させ、ベース塗膜を作成した。
工程2:工程1で作成したベース塗膜上に製造例49で得られた活性エネルギー線硬化型水性塗料組成物No.1をエアスプレーで乾燥塗膜が12μmになるように塗装して、60℃で5分間加熱乾燥させた。
工程3:工程2で乾燥させた塗膜に、高圧水銀ランプにより6,000J/mの紫外線を照射して、複層塗膜No.1を作成した。
【0174】
得られた複層塗膜を有する塗装板について、下記試験に供した。試験結果を表4に示した。
【0175】
<実施例2〜29>
表4に示す各澱粉系ベース塗料組成物、各活性エネルギー線硬化型水性塗料組成物を使用する以外は実施例1と同様の工程により複層塗膜No.2〜29を作成した。得られた複層塗膜を有する塗装板について、下記試験に供した。試験結果を表4に示した。
【0176】
【表5】

【0177】
【表6】

【0178】
<比較例1〜4>
表5に示す(澱粉系)ベース塗料組成物物、活性エネルギー線硬化型(水性)塗料組成物を使用する以外は実施例1と同様の工程により複層塗膜No.30〜33を作成した。得られた複層塗膜を有する塗装板について、下記試験に供した。試験結果を表5に示した。
【0179】
【表7】

【0180】
試験方法:
(注7)生体由来成分配合:
各々の(澱粉系)ベース塗料組成物及び活性エネルギー線硬化型(水性)塗料組成物について、下記の基準で生体由来成分の配合の有無を評価した。
○:澱粉系樹脂、又は糖類若しくはその誘導体のアクリル酸エステル(生体由来成分)が塗料中に配合されているもの
×:澱粉系樹脂、又は糖類若しくはその誘導体のアクリル酸エステル(生体由来成分)が塗料中に配合されていないもの
【0181】
(注8)仕上り性:
各複層塗膜の塗面外観を目視で評価した。
◎:うねり、ツヤビケ、チリ肌がなく良好な仕上り性である。
○:うねり、ツヤビケ、チリ肌の少なくとも1つがごくわずかにあるが良好な仕上り性で、製品とした場合に問題のないレベル。
△:うねり、ツヤビケ、チリ肌の少なくとも1つが見られる。
×:うねり、ツヤビケ、チリ肌の少なくとも1つが著しく見られ仕上り性不良。
【0182】
(注9)鉛筆硬度:
JIS K 5600−5−4(1999)に準じて、各複層塗膜面に対し約45°の角度に鉛筆の芯を当て、芯が折れない程度に強く試験塗板面に押し付けながら前方に均一な速さで約10mm動かした。この操作を試験箇所を変えて5回繰り返して塗膜が破れなかった場合のもっとも硬い鉛筆の硬度記号を鉛筆硬度とした。
【0183】
(注10)耐擦り傷性(1):
各複層塗膜面に、市販の名刺を塗膜に押し当てて20往復こすった後、どの程度傷がつくかにより判定した。
◎:全く傷がつかない。
○:ほどんど傷がつかず、近づかないと(5cmくらい)傷がわからず、製品とした場合に問題のないレベル。
△:うすく擦り傷がついており、製品として不良。
×:擦り傷の程度がひどく、製品として不良。
【0184】
(注11)耐擦り傷性(2):
各試験用塗装板について、ASTM D1044に準じて、テーバー磨耗性試験(磨耗輪CF−10P、荷重500g、100回転)を行なった。試験前後の塗膜について、JIS K 5600−4−7(1999)の鏡面光沢度(60度)に準じて、各塗面の光沢度を測定した。試験前の光沢度に対する試験後の光沢度を光沢保持率(%)としてを求め、下記基準により評価した。
◎:光沢保持率90%以上
○:光沢保持率80%以上90%未満
△:光沢保持率60%以上80%未満
×:光沢保持率60%未満
【0185】
(注12)基材付着性、層間付着性:
JIS K 5600−5−6(1990)に準じて各複層塗膜に1mm×1mmのゴバン目100個を作り、その面に粘着テープを貼着し、急激に剥した後に、残ったゴバン目塗膜の数を評価した。剥離個所が被塗物とベース塗膜の層間であるものは、基材付着性において残存しなかったとして評価した。剥離個所が複層塗膜の層間であるものは、基材付着性において残存したが層間付着性において残存しなかったとして評価した。
○:残存個数/全体個数=100個/100個
△:残存個数/全体個数=90個〜99個/100個
×:残存個数/全体個数=89個以下/100個
【0186】
(注13)耐候性:
各試験板について、JIS K 5600−7−8(1999)に準拠して、サンシャインウェザオメーターを用いて500時間の耐候性試験を行った。
◎:塗膜表面に異常が全く認められず、初期と試験後における試験板において、JIS Z 8730に準拠する色差ΔEが0.3未満である。
○:僅かな黄変が認められ、初期と試験後における試験板において、JIS Z 8730に準拠する色差ΔEが0.3以上〜0.5未満であり、製品とした場合に問題がないレベル。
△:塗膜に黄変が認められ、初期と試験後における試験板において、JIS Z 8730に準拠する色差ΔEが0.5以上〜0.8未満である。
×:塗膜の黄変が著しく、初期と試験後における試験板において、JIS Z 8730に準拠する色差ΔEが0.8以上である。
【0187】
(注14)耐アルカリ性:
各複層塗膜面に、1%水酸化ナトリウム水溶液を0.5mL滴下して、温度20℃、相対湿度65%の雰囲気下に24時間放置した後に、塗面をガーゼで拭き取り、外観を目視評価した。
○:塗膜表面の全く異常がない。
△:塗膜表面の変色(白化)が認められる。
×:塗膜表面の変色(白化)が著しい。
【0188】
(注15)耐溶剤性:
各塗膜面に、ろ紙を2枚並べて置き、各ろ紙上にスポイトで78%エタノールと2%ホルマリンをそれぞれ滴下し、ろ紙を湿らした。このスポイトによる滴下を1時間間隔で5回行い、その後2時間経過後にろ紙を除いた塗膜表面を目視で評価した。
○:フクレやハガレなどの異常が全くない。
△:少なくとも一方の塗膜に目視で軽度なフクレやハガレなどの異常が見つかる。
×:少なくとも一方の塗膜が溶けてしまう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被塗物上に澱粉系樹脂並びに着色顔料及び/又は光輝性顔料を含有する澱粉系ベース塗料組成物を塗装してベース塗膜を形成し、次いで、該ベース塗膜上に糖類又はその誘導体のアクリル酸エステルの水分散体及び光重合開始剤を含有する活性エネルギー線硬化型水性塗料組成物を塗装した後、活性エネルギー線照射することを特徴とする塗膜形成方法。
【請求項2】
前記糖類又はその誘導体のアクリル酸エステルが、重量平均分子量が400〜2,000で、かつ1分子あたり平均3.0〜12.0個のアクリロイル基を有する糖類又はその誘導体のアクリル酸エステルである請求項1に記載の塗膜形成方法。
【請求項3】
前記糖類又はその誘導体が、非環状のオリゴ糖又はその誘導体である請求項1又は2に記載の塗膜形成方法。
【請求項4】
前記非環状のオリゴ糖又はその誘導体が、デキストリン又は変性デキストリンである請求項3に記載の塗膜形成方法。
【請求項5】
前記非環状のオリゴ糖又はその誘導体が、スクロース又はトレハロースである請求項3に記載の塗膜形成方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の塗膜形成方法により得られる塗装物品。

【公開番号】特開2010−131471(P2010−131471A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−306948(P2008−306948)
【出願日】平成20年12月2日(2008.12.2)
【出願人】(000001409)関西ペイント株式会社 (815)
【Fターム(参考)】