説明

塗膜形成方法及び塗装物品

【課題】
各種工業製品、特に自動車の外板に適用可能なハイライト(正反射光近傍)においては金属感、シェード(スカシ方向)においてはCFRP(カーボン繊維強化プラスチック)の素材感を呈する塗膜を形成可能な塗膜形成方法を提供すること。
【解決手段】
本発明は、CFRP表面に、光反射性顔料を含み、硬化塗膜として膜厚15μmとなるように塗装して得られた塗膜の平行光線透過率が30〜80%の範囲内である光反射性塗料組成物を塗装する塗膜形成方法及び光反射性塗料組成物によると撒く上にさらにクリヤー塗料を塗装する塗膜形成方法に関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイライト(正反射光近傍)においては金属感、シェード(スカシ方向)においてはCFRP(カーボン繊維強化プラスチック)の素材感を呈する塗膜を形成可能な塗膜形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
炭素繊維にプラスチック材料を含浸し、硬化させて成形した炭素繊維強化プラスチック(CFRP:Carbon Fiber Reinforced Plastics)は、各種金属と比べて、強度や剛性に対して軽量である特徴から、ゴルフクラブのシャフト、釣り竿、テニスラケット等のスポーツ用品に始まり、航空宇宙分野へとその用途は広がっている。さらに量産によってコストダウンが図られるにつれて、自動車や家電製品等にも展開されつつある素材である。
【0003】
特許文献1は、カーボン繊維強化プラスチックへの塗膜形成方法に関するものであり、CFRPからなる基材表面に目止め処理を行った後、プライマー塗料、ベース塗料およびクリヤー塗料を順次塗装する塗膜形成方法が記載されている。しかし特許文献1の方法は、カーボン繊維強化プラスチックを不透明な塗膜で隠蔽せしめるものであって、カーボン繊維強化プラスチックの素材感を生かした意匠が得られない問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−260014号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、ハイライト(正反射光近傍)においては金属感、シェード(スカシ方向)においてはCFRP(カーボン繊維強化プラスチック)の素材感を呈する塗膜を形成可能な塗膜形成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
1.CFRP表面に、光反射性顔料を含み、硬化塗膜として膜厚15μmとなるように塗装して得られた塗膜の平行光線透過率が30〜80%の範囲内である光反射性塗料組成物を塗装する塗膜形成方法、
2.光反射性塗料組成物による塗膜上にさらにトップクリヤー塗料を塗装する1項に記載の塗膜形成方法、
3.CFRP表面に45度の角度から照射した光を正反射光に対して45度の角度(垂直方向)から受光した反射光の分光反射率から計算されたL*a*b*表色系における明度L*が10〜30の範囲内である1項又は2項に記載の塗膜形成方法、
4.光反射性塗料組成物における光反射性顔料の含有量が、ビヒクル形成成分である樹脂固形分100質量部に対して、固形分として2〜15質量部である1〜3項のいずれか1項に記載の塗膜形成方法、
5.光反射性顔料が、鱗片状金属顔料であって、長手方向の平均粒子径が8〜18μmの範囲内であり、厚さが0.2〜1.0μmの範囲内である3項に記載の複層塗膜形成方法、
6.CFRP表面が、予めクリヤプライマー塗膜が積層させてなるものである1〜5項のいずれか1項に記載の塗膜形成方法
7.1〜6項の塗膜形成方法が適用された塗装物品
に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ハイライト(正反射光近傍)においては金属感、シェード(スカシ方向)においてはCFRP(カーボン繊維強化プラスチック)の素材感を呈する塗膜を形成可能な塗膜形成方法を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
CFRP
本発明の塗膜形成方法においては、CFRP表面に、光反射性塗料組成物を塗装する。CFRPとは、炭素繊維を合成樹脂に含浸せしめた後に、硬化させて成形した複合材料である。炭素繊維としては、ポリアクリロニトリルを焼成して得られるポリアクリロニトリル(PAN)系のものや、石炭・石油化学の残渣として出るピッチを溶融紡糸後に焼成して得られるピッチ系のものを挙げることができる。
【0009】
含浸せしめる合成樹脂としては、熱硬化性のエポキシ樹脂やポリエステル樹脂が挙げられるが、ポリイミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂であってもよい。
【0010】
成形方法としては、特に制限されるものではないが、炭素繊維を一方向に引き揃えたテープや織物にプラスチックを含浸させて作った中間素材(プリプレグ)を何枚も積層して,加圧容器であるオートクレーブに入れ、高温下で加圧・硬化して製造するプリプレグ法や、連続した炭素繊維に樹脂を染み込ませたものを芯金に巻きつけ,筒状に成形するフィラメントワインディング法、RTM:型内に炭素繊維の織物をセットした後,母材となる樹脂を含浸した後に硬化させるレジントランスファー成形法で得られたCFRPを使用することができる。本発明におけるCFRPは、成形されたものにさらに別の樹脂で被覆されたものや、シーラー、パテ等で表面を平滑にしたもの、透明なフィルムを貼り付けたもの等も包含する。
【0011】
本発明の塗膜形成方法において使用されるCFRPの表面は、炭素繊維による縦目と横目の縞模様が混在する市松模様を呈している。編目の大きさは、繊維の太さ、編目の細かさによって異なるが、約1mm四方より大きなものが多い。この市松模様は、繊維が入射光に対して直角な場合は高明度になり、平行な場合には低明度になる。イメージスキャナを使用して表面を走査すると、sRGB表色系における色差が20〜40の範囲内となるものである。この高明度部と低明度部は、繊維の方向と入射光との関係によるものであるので、90度回転させれば逆転する。CFRPにおいては、この独特な質感が、好ましいものとされている。sRGB表色系における色差とは、各々のsRGB表色系における刺激値の幾何学距離を意味する。
【0012】
本発明の塗膜形成方法において使用するCFRPは、L*a*b*表色系における明度L*が10〜30の範囲内であることが好ましく、特に好ましくは15〜25の範囲内である。L*a*b*表色系とは、1976年に国際照明委員会で規定され、JIS Z 8729にも採用されている表色系であり、L*は明度を表わす数値である。上記数値範囲の下限値以下の場合、複層塗膜において、CFRPの素材感が損なわれる場合があり、上限値を超えると、ハイライトにおける金属感が損なわれる問題点がある。
【0013】
本明細書において、上記L*a*b*表色系における明度L*は、CFRP表面に対して45°の角度から照射した光を正反射光に対して45°の角度から受光して得られた分光反射率から計算した数値として定義するものとする。なお、CFRP表面は、上記のような構造であるために、部位による明度のばらつきが多くなるため、5点以上を計測して得られた数値の平均値とする。具体的には、多角度分光光度計MA−68−II(商品名、x−rite社製)を使用して得られた数値で定義するものとする。
クリヤプライマー塗料
本発明の複層塗膜形成方法においては、前記CFRP表面を、必要に応じてサンドペーパーや各種電動工具を使用して研磨し、さらに各種洗浄や溶剤脱脂した後に後述する光反射性塗料組成物を塗装することができる。または、CFRP表面を、各種洗浄や溶剤脱脂した後に後述する光反射性塗料組成物を塗装することができるが、付着性や平滑性、本願発明の複層塗膜形成方法で得られた物品の耐候性の点から、CFRP表面上に予めクリヤプライマー塗膜を積層せしめ、その上に、後述する光反射性塗料組成物を塗装することができる。
【0014】
クリヤプライマー塗膜は、クリヤプライマー塗料を1回塗装して乾燥、硬化してなる1層の塗膜であることができ、あるいはクリヤプライマー塗料の塗装から乾燥、硬化の工程を複数回繰り返すことによって形成される2層以上の塗膜であってもよい。クリヤプライマー塗膜を2層以上の塗膜として形成せしめることによって、CFRP表面の平滑性が上がり、複層塗膜の仕上がり性や鮮映性を向上させることができる。
【0015】
クリヤプライマー塗膜を2層以上の塗膜として形成せしめる場合、1層目の塗膜を形成せしめた後に、その硬化又は未塗膜の塗膜をサンドペーパー等で研磨し、洗浄後に2層め以降のクリヤプライマー塗料を塗装することができる。
【0016】
本発明の複層塗膜形成方法において使用されるクリヤプライマー塗料は、ビヒクル形成成分として基体樹脂及び架橋剤を含有し、さらに溶剤その他の塗料用添加剤等を適宜配合してなる無色もしくは有色の透明塗膜を形成する液状塗料であり、それ自体既知のものを制限なく使用することができる。該基体樹脂の例としては、例えば、水酸基、カルボキシル基、シラノール基、エポキシ基等の架橋性官能基を含有する、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、フッ素樹脂、ウレタン樹脂、シリコン含有樹脂等が挙げられる。上記架橋剤としては、上記基体樹脂の官能基と反応しうるメラミン樹脂、尿素樹脂、ポリイソシアネート化合物、ブロックポリイソシアネート化合物、エポキシ化合物又は樹脂、カルボキシル基含有化合物又は樹脂、酸無水物、アルコキシシラン基含有化合物又は樹脂等が挙げられる。また、必要に応じて、水や有機溶剤等の溶媒、硬化触媒、消泡剤、レオロジーコントロール剤、酸化防止剤、表面調整剤等の塗料添加剤を適宜配合することができる。
【0017】
本発明の複層塗膜形成方法におけるクリヤプライマー塗料及び後述する光反射性塗料は、ビヒクル形成成分として、低温乾燥性の点から、特に水酸基含有樹脂及びイソシアネート基を有する化合物を含んでなるウレタン化反応により架橋硬化し得る樹脂組成物を含有することができる。
【0018】
上記水酸基含有樹脂としては、例えば、水酸基含有アクリル樹脂、水酸基含有ポリエステル樹脂等が挙げられ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。これらの水酸基含有樹脂は、通常、有機溶剤及び/又は水等の溶媒に溶解または分散して使用される。
【0019】
上記水酸基含有アクリル樹脂は、水酸基含有重合性単量体を必須成分とし、さらに必要に応じてカルボキシル基含有重合性単量体及びアクリル系単量体を含んでなる重合性単量体成分を常法により(共)重合することによって製造されるものを使用することができる。水酸基含有アクリル樹脂としては、一般に1000〜100000、特に5000〜80000の範囲内の数平均分子量、一般に20〜200mgKOH/g、特に50〜150mgKOH/gの範囲内の水酸基価、及び一般に0〜100mgKOH/g、特に0〜70mgKOH/gの範囲内の酸価を有するものが好適である。
【0020】
上記水酸基含有重合性単量体は、1分子中に水酸基及び重合性不飽和結合をそれぞれ少なくとも1個有する化合物であり、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の炭素数2〜20のグリコールと(メタ)アクリル酸とのモノエステル化物等を挙げることができる。
【0021】
上記カルボキシル基含有重合性単量体は、1分子中にカルボキシル基及び重合性不飽和結合をそれぞれ少なくとも1個有する化合物であり、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、メサコン酸等及びこれらの酸の無水物やハーフエステル化物等を挙げることができる。
【0022】
上記アクリル系単量体には、(メタ)アクリル酸と炭素数1〜22の1価アルコールとのモノエステル化物が包含され、具体的には、例えば、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、ヘキシルアクリレート、ヘキシルメタクリレート、オクチルアクリレート、オクチルメタクリレート、ラウリルアクリレート、ラウリルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート等を挙げることができる。
【0023】
なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」はアクリレート又はメタアクリレートを、そして「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸又はメタクリル酸を意味する。
【0024】
水酸基含有アクリル樹脂の製造にあたり、上記の水酸基含有重合性単量体、カルボキシル基含有重合性単量体及びアクリル系単量体に加えて、その他の重合性単量体を併用することもできる。
【0025】
その他の重合性単量体としては、例えば、メトキシブチルアクリレート、メトキシブチルメタクリレート、メトキシエチルアクリレート、メトキシエチルメタクリレート等の(メタ)アクリル酸と炭素数2〜18のアルコキシエステル;N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート、N−t−ブチルアミノエチルアクリレート、N−t−ブチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリレート等のアミノアクリル系単量体;アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、N−ブチルアクリルアミド、N−ブチルメタクリルアミド、N−ジメチルアクリルアミド、N−ジメチルメタクリルアミド等のアクリルアミド系単量体;グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等のグリシジル基含有単量体;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、アクリロニトリル、酢酸ビニル、塩化ビニル等を挙げることができる。
【0026】
上記水酸基含有ポリエステル樹脂としては、通常、多塩基酸と多価アルコールとをエステル化反応させることによって製造されるものを使用することができる。
【0027】
上記多塩基酸は、1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する化合物であり、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、ヘット酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸及びこれらの無水物等を挙げることができ、また、上記多価アルコールは、1分子中に2個以上の水酸基を有する化合物であり、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、水素化ビスフェノールA、トリエチレングリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等を挙げることができる。
【0028】
また、ポリエステル樹脂として、あまに油脂肪酸、やし油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸、大豆油脂肪酸、ゴマ油脂肪酸、エノ油脂肪酸、麻油脂肪酸、トール油脂肪酸、脱水ヒマシ油脂肪酸等の(半)乾性油脂肪酸等で変性した脂肪酸変性ポリエステル樹脂を使用することもできる。これらの脂肪酸による変性量は、油長で一般に30質量%以下であることが好ましい。また、安息香酸等の一塩基酸を一部反応させたものであってもよい。
【0029】
ポリエステル樹脂としては、一般に1000〜50000、特に2000〜20000の範囲内の数平均分子量、一般に20〜200mgKOH/g、特に50〜150mgKOH/gの範囲内の水酸基価、及び一般に0〜100mgKOH/g、特に0〜70mgKOH/gの範囲内の酸価を有するものが好適である。
【0030】
上記イソシアネート化合物には、1分子中に少なくとも2個の遊離のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物が包含され、該ポリイソシアネート化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート類、これらのポリイソシアネートのビューレットタイプ付加物及びイソシアヌレート環付加物;イソホロンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチルシクロヘキサン−2,4−(もしくは−2,6−)ジイソシアネート、1,3−(もしくは1,4−)ジ(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,2−シクロヘキサンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート類、これらのポリイソシアネートのビューレットタイプ付加物及びイソシアヌレ−ト環付加物;キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネ−ト、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート、1,4−ナフタレンジイソシアネート、4,4’−トルイジンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、(m−もしくはp−)フェニレンジイソシアネート、4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、ビス(4−イソシアナトフェニル)スルホン、イソプロピリデンビス(4−フェニルイソシアネート)等の芳香族ジイソシアネート化合物、これらのポリイソシアネートのビューレットタイプ付加物及びイソシアヌレート環付加物;水添MDI及び水添MDIの誘導体;トリフェニルメタン−4,4’,4’’−トリイソシアネート、1,3,5−トリイソシアナトベンゼン、2,4,6−トリイソシアナトトルエン、4,4’−ジメチルジフェニルメタン−2,2’,5,5’−テトライソシアネート等の1分子中に少なくとも3個のイソシアネート基を有するポリイソシアネート類、これらのポリイソシアネートのビューレットタイプ付加物及びイソシアヌレート環付加物;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、ジメチロールプロピオン酸、ポリアルキレングリコール、トリメチロールプロパン 、ヘキサントリオール等のポリオールの水酸基にイソシアネート基が過剰量となる比率でポリイソシアネート化合物を反応させてなるウレタン化付加物、これらのポリイソシアネートのビューレットタイプ付加物及びイソシアヌレート環付加物等を挙げることができる。
【0031】
本発明のクリヤプライマー塗料における上記水酸基含有樹脂及びイソシアネート化合物の配合割合は、水酸基含有樹脂中の水酸基1当量に対し、イソシアネート化合物中のイソシアネート基が一般に0.5〜2.0当量、特に0.8〜1.2当量の範囲内となるようにすることが好ましい。イソシアネート化合物中のイソシアネート基の割合が0.5当量未満であると、形成される塗膜の架橋密度が低く塗膜物性が不十分となり、反対に2当量を越えると、形成される塗膜の性能は良好であるが、塗膜の乾燥性が低下し、実用性に問題がある。
【0032】
本発明のクリヤプライマー塗料は、以上に述べたビヒクル形成成分や水又は有機溶剤等の溶媒、顔料分散剤、沈降防止剤、硬化触媒、消泡剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の各種添加剤、体質顔料等を同一容器に梱包せしめた1液型塗料であってもよいが、イソシアネート化合物及び必要に応じて配合される水や有機溶媒等を別の容器に梱包し、塗装前に混合する2液型塗料であってもよい。
【0033】
クリヤプライマー塗料は、水や有機溶媒等を加えて、塗装に適正な粘度に調整した後に、回転霧化塗装、エアスプレー、エアレススプレー等のそれ自体既知の方法で塗装することができ、その膜厚は、基材の隠蔽性、塗膜の平滑性等の観点から、硬化塗膜に基づいて通常10〜150μm、好ましくは15〜100μmの範囲内とすることができる。本発明のクリヤプライマー塗料による塗膜は、通常、常温〜約120℃の範囲内の温度で架橋硬化させることができ、それによってクリヤプライマー塗膜を形成せしめることができる。
【0034】
本発明の複層塗膜形成方法において、CFRP表面に、予めクリヤプライマー塗膜を形成せしめた場合、サンドペーパーを用いて水研して、後述する光反射性塗膜との付着性を向上させることができる。さらに、溶剤脱脂や水洗によって、表面の異物を除去した後に光反射性塗膜を形成してもよい。
光反射性塗料組成物
本発明の複層塗膜形成方法においては、前記、必要に応じてクリヤプライマー塗膜が形成されたCFRP表面上に、まず、光反射性塗膜が形成せしめられる。
【0035】
光反射性塗膜は、最終的に形成される複層塗膜のハイライトにおいて金属感を付与するために、光反射性顔料を含む光反射性塗装し、乾燥、硬化せしめて形成される。
【0036】
本明細書において、光反射性顔料は、具体的には、反射率が高い鱗片状の金属顔料を意味し、具体的には、鱗片状アルミニウム顔料を用いることができる。
【0037】
鱗片状アルミニウム顔料は、一般にアルミニウムをボールミルやアトライターミル中で粉砕媒液の存在下、粉砕助剤を用いて粉砕、摩砕して製造される。粉砕助剤としては、オレイン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸等の高級脂肪酸のほか、脂肪族アミン、脂肪族アミド、脂肪族アルコールが使用される。粉砕媒液としてはミネラルスピリットなどの脂肪族系炭化水素が使用される。
【0038】
鱗片状アルミニウム顔料は、粉砕助剤の種類によって、リーフィングタイプとノンリーフィングタイプに大別することができる。リーフィングタイプは、塗料組成物に配合すると塗装して得られた塗膜の表面に配列(リーフィング)し、金属感の強い仕上がりが得られ、熱反射作用を有し、防錆力を発揮するものであるため、タンク・ダクト・配管類および屋上ルーフィングをはじめ各種建築材料などに利用されることが多い。本発明において、リーフィングタイプの鱗片状アルミニウム顔料を使用可能であるが、このタイプの鱗片状アルミニウム顔料を使用した場合には、その配合量にもよるが、塗膜形成過程において、粉砕助剤の表面張力の効果によって、表面を完全に隠蔽してしまい、前述したCFRPの素材感が生かせなくなる可能性があるので注意が必要である。この点から、ノンリーフィングタイプの鱗片状アルミニウム顔料を使用することが好ましい。
【0039】
上記鱗片状アルミニウム顔料の大きさは、平均粒径が8〜18μmの範囲内のものを使用することが、塗装された塗膜の仕上がり性やハイライトの明度の点から好ましく、より好ましくは粒径が9〜15μmの範囲内のものである。厚さは0.2〜1.0μmの範囲内のものを使用することが好ましい。ここでいう粒径及び厚さは、マイクロトラック粒度分布測定装置 MT3300(商品名、日機装社製)を用いてレーザー回折散乱法によって測定した体積基準粒度分布のメジアン径を意味する。
【0040】
平均粒径が、前記上限値を越えると、複層塗膜において、光反射性顔料による粒子感が過剰になって意匠的に好ましくない場合があり、下限値未満では、金属感が不十分になる場合がある。
【0041】
また、鱗片状アルミニウム顔料の含有量は、塗装して得られる塗膜の仕上がり性や、ハイライトにおける金属感、シェードにおけるCFRPの素材感の点から、塗料中の樹脂固形分100質量部に対して、合計で1〜25質量部の範囲内が好ましく、より好ましくは3〜20質量部の範囲内、特に好ましくは5〜18質量部の範囲内である。
【0042】
光反射性塗料には、複層塗膜の色相や明度を微調整することを目的として、着色顔料を配合することができる。該着色顔料としては、特に制限されるものではないが、具体的には、例えば、透明性酸化鉄顔料、チタンイエロー等の複合酸化物顔料、微粒子酸化チタン顔料等の無機顔料;アゾ系顔料、キナクリドン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、ベンズイミダゾロン系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、金属キレートアゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、インダンスロン系顔料、ジオキサジン系顔料、スレン系顔料、インジゴ系顔料等の有機顔料;カーボンブラック顔料等が挙げられ、これらはそれぞれ単独で又は2種もしくはそれ以上を組み合わせて使用することができる。
【0043】
本発明においては、CFRPの素材感を生かす点において、一次粒子径が200nm以下の透明性の顔料を使用することが好ましい。
【0044】
該着色顔料は、粉体として塗料中に配合することができるが、着色顔料を樹脂組成物の一部と混合分散して予め顔料分散体を調製し、これを残りの樹脂成分や他の成分と共に混合することにより塗料化することもできる。顔料分散体の調製にあたっては、必要に応じて、消泡剤、分散剤、表面調整剤等の慣用の塗料添加剤を使用することができる。
【0045】
本発明において、光反射性塗料組成物に着色顔料を配合せしめる場合、その配合量は、複層塗膜の明度等の観点から、樹脂組成物(固形分)100質量部に、通常0.01〜3質量部、特に0.05〜1質量部の範囲内であることが好ましい。
【0046】
本発明において、上記光反射性塗料における光反射性顔料や、必要に応じて配合される着色顔料の種類や量は、光反射性塗料を硬化塗膜として膜厚15μmとなるように塗装して得られた塗膜の平行光線透過率が30〜80%の範囲内、好ましくは40〜75%とするように調整せしめるものとする。
【0047】
本発明において、上記平行光線透過率の測定方法は、硬化塗膜厚が15μmとなるように透明なフィルムに塗装し、硬化した塗膜を濁度計COH−300A(商品名、日本電色工業社製)にて測定した数値として定義するものとする。なお、全光線透過率(TT)、拡散光線透過率(DF)、平行光線透過率(PT)はJIS K7136に規定された積分球を備えた測定装置に試料フィルムを装着し、前方から光を当て、フィルムを透過した光を積分球で捕捉して測定することができる数値である(透明なフィルムに塗膜を積層させた場合、フィルムの光線透過率は無視するものとする)。
【0048】
ここで、全光線透過率(TT):入射した光量に対するフィルムを透過した光を全て捕捉した光量の割合、拡散光線透過率(DF):全光線透過率(TT)の中でフィルムを透過した光のうち前方散乱によって、入射光から2.5度以上それた光の割合、つまり拡散した光の割合、平行光線透過率(PT):全光線透過率(TT)と拡散光線透過率(DF)との差分、つまり、フィルムに対して2.5度以内の平行光の割合を意味する。
【0049】
本発明においては、光反射性塗料を硬化塗膜として膜厚15μmとなるように塗装して得られた塗膜のミクロ光輝感測定器による粒子感の測定値(HG値)が、20〜80の範囲内、好ましくは30〜70の範囲内とすることが、複層塗膜において、CFRPの素材感を生かす点から好ましい。HGは、High−light Graininessの略であり、HG値は、ミクロ光輝感測定器を使用して得られるハイライトの粒子感測定値である。「ミクロ光輝感」は、光輝性顔料を含む塗色に発現する固有の光輝性の質感を意味し、例えば鱗片状顔料等の大きさやギラギラ、キラキラした輝き、ザラザラした質感が該当する。ミクロ光輝感測定器は、光源、CCDカメラ及び画像解析装置を備えていれば特に制限はないが、例えば特開2001−221690号公報に開示のものが適用でき、具体的には先端に集光レンズを取り付けた光ファイバー式のハロゲンライトを光源として測定面に対して垂線上に設置し、コニカミノルタ製「RD−175」にAFマクロ100mmF2.8レンズを取り付けたCCDカメラにて塗膜面の撮影を照射光が入射しない角度にて行ない、撮影した画像はコンピュータ上で原画像データが512×512画素のモノクロ256階調のデジタル画像データに切り出したうえで、画像解析ソフトにてデジタル処理できるものである。HG値は、光照射された塗膜面をCCDカメラで撮影した2次元画像を2次元フーリエ変換してなる空間周波数スペクトルから低空間周波数成分のパワーを積分及び直流成分で正規化して得られる2次元パワースペクトル積分値を下記式(数1)から得て、この2次元パワースペクトル積分値(IPSL値)をもとに次記の一次式により計算したMGRの値として算出することができる。即ちIPSLの値が、0.32以上の場合は、MGR=[(IPSL×1000)−285]/2とし、IPSLの値が、0.15<IPSL<0.32の範囲内にある場合は、MGR=[IPSL×(35/0.17)−(525/17)]/2とし、IPSLの値が、0.15以下の場合は、MGR=0とする。MGRの値は、光輝性顔料の粒子感のないもは0とし、最も光輝性顔料の粒子感のあるものはほぼ100とした値であって、「粒子感」の少ない緻密なものほど小さい数値を示す。
【0050】
【数1】

【0051】
(式中、νは空間周波数、θは角度、Pはパワースペクトル、0〜Lは抽出した低空間周波数領域であり、Lは抽出した周波数の上限を意味する)
本発明においては、光反射性塗料を硬化塗膜として膜厚15μmとなるように塗装して得られた塗膜のハイライト(正反射方向)及びシェード(すかし方向)の隠蔽力が、以下の要件となるように、光反射性顔料や着色顔料の配合量を決定することができる。
【0052】
ハイライトの色差:JIS K5600−04に規定された隠蔽率試験紙に試料を塗装し、得られた塗膜の白素地部分と黒素地部分とのL*a*b*表色系における色差ΔE*をハイライトの色差とする。各々のL*a*b*値は、塗膜に対して45度の角度から照射した光を、正反射光に対して15度の角度で受光したときの分光反射率から計算した数値を使用する。
【0053】
シェードの色差:ハイライトの色差と同様にして、塗膜に対して45度の角度から照射した光を、正反射光に対して110度の角度で受光したときの分光反射率から計算した各々のL*a*b*値からL*a*b*表色系における色差ΔE*を使用する。
【0054】
ハイライトの色差は、5〜20の範囲内とすることが、金属感の点から好ましく、シェードの色差は30〜60の範囲内とすることが、CFRPの素材感を知覚できる点から好ましい。また、ハイライトの色差がシェードの色差よりも小さいことが、ハイライトにおける金属感とシェードにおけるCFRPの素材感の点から好ましい。
【0055】
本発明の光反射性塗料組成物には、ビヒクル形成成分として、上記クリヤプライマー塗料の説明において樹脂成分として記載したものを同様に用いることができる。
【0056】
さらに、光反射性塗料組成物には、必要に応じて、水あるいは有機溶剤等の溶媒、顔料分散剤、沈降防止剤、硬化触媒、消泡剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の各種塗料添加剤、体質顔料等を適宜配合することができる。体質顔料は、上記着色顔料と同様に、予め顔料分散体を調製し、これを残りの樹脂成分や他の成分と共に混合することにより塗料化することもできる。顔料分散体の調製にあたっては、必要に応じて、消泡剤、分散剤、表面調整剤等の慣用の塗料添加剤を使用することができる。
【0057】
光反射性塗料組成物は、クリヤプライマー塗料と同様に、1液型であってもよいし、2液型であってもよい。
【0058】
光反射性塗料組成物は、水や有機溶媒等を加えて、塗装に適正な粘度に調整した後に、回転霧化塗装、エアスプレー、エアレススプレー等公知の方法で塗装することができ、その膜厚は、塗膜の平滑性等の観点から、硬化塗膜に基づいて通常5〜100μm、好ましくは15〜50μmの範囲内であることができる。光反射性塗膜は、用いるイソシアネート化合物の種類等に応じて、通常、常温〜約150℃の範囲内の温度で架橋硬化させることができ、それによって光反射性塗膜を形成せしめることができる。
トップクリヤー塗料
本発明の塗膜形成方法においては、上記硬化又は未硬化の光反射性塗膜上に、トップクリヤー塗料を塗装して、トップクリヤー塗膜を形成してもよい。
【0059】
トップクリヤー塗膜は、トップクリヤー塗料を1回塗装して乾燥、硬化してなる1層の塗膜であることができ、あるいはトップクリヤー塗料の塗装から乾燥、硬化の工程を複数回繰り返すことによって形成される2層以上の塗膜であってもよい。トップクリヤー塗膜を2層以上の塗膜として形成せしめることによって、複層塗膜の仕上がり性や鮮映性を向上させることができる。
【0060】
トップクリヤー塗膜を2層以上の塗膜とする場合、1層目のトップクリヤー塗膜と、2層目以降のトップクリヤー塗膜とは、同一の材質のものであってもよく、あるいは異なる材質であってもよい。
【0061】
本発明の塗膜形成方法において使用されるトップクリヤー塗料は、ビヒクル形成成分として基体樹脂及び架橋剤を含有し、さらに溶剤その他の塗料用添加剤等を適宜配合してなる無色もしくは有色の透明塗膜を形成する液状塗料であり、それ自体既知のものを制限なく使用することができる。該基体樹脂の例としては、例えば、水酸基、カルボキシル基、シラノール基、エポキシ基等の架橋性官能基を含有する、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、フッ素樹脂、ウレタン樹脂、シリコン含有樹脂等が挙げられる。上記架橋剤としては、上記基体樹脂の官能基と反応しうるメラミン樹脂、尿素樹脂、ポリイソシアネート化合物、ブロックポリイソシアネート化合物、エポキシ化合物又は樹脂、カルボキシル基含有化合物又は樹脂、酸無水物、アルコキシシラン基含有化合物又は樹脂等が挙げられる。また、必要に応じて、水や有機溶剤等の溶媒、硬化触媒、消泡剤、レオロジーコントロール剤、酸化防止剤、表面調整剤等の塗料添加剤を適宜配合することができる。
【0062】
上記トップクリヤー塗料には、透明性を損なわない範囲内において、着色顔料を適宜配合することができる。着色顔料としては、インク用、塗料用としてそれ自体既知の顔料をそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて配合することができる。その添加量は、塗膜の透明性を実質的に害さない範囲において適宜決定することができ、顔料を配合する場合、具体的には、トップクリヤー塗料中の基体樹脂と架橋剤の合計固形分100質量部に対して、通常30質量部以下、好ましくは0.01〜5質量部の範囲内とすることができる。
【0063】
上記トップクリヤー塗料は、水や有機溶媒等を加えて、塗装に適した粘度に調整した後、回転霧化塗装、エアスプレー、エアレススプレー等のそれ自体既知の方法で塗装することができ、その膜厚は、硬化塗膜に基づいて通常5〜40μm、特に20〜35μmの範囲内とするのが好ましい。トップクリヤー塗料の塗膜それ自体は常温〜約150℃の範囲内の温度で架橋硬化させることができる。
【0064】
トップクリヤー塗膜を2層以上の塗膜として形成せしめる場合、1層目のトップクリヤー塗膜を乾燥、硬化せしめた塗膜上に2層目以降のトップクリヤー塗膜を形成せしめることができるが、1層目のトップクリヤー塗料を塗装後、その未硬化の塗膜上に2層目のクリヤー塗膜を形成せしめてもよい。
【実施例】
【0065】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、「部」及び「%」はいずれも質量基準によるものである。また、水酸基含有アクリル樹脂の数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって標準ポリスチレンの検量線を用いて測定したものである。
実施例1〜3、比較例1〜4
製造例1:水酸基含有アクリル樹脂(1)の製造
温度計、サーモスタット、撹拌器、還流冷却器及び滴下装置を備えた反応容器にキシレン42部及び酢酸ブチル10部を仕込み、撹拌混合し、110℃に昇温した。次いで同温度に保持した反応容器内に、下記のモノマー/重合開始剤の混合物(1)を3時間かけて滴下し、滴下終了後1時間熟成を行なった。その後、酢酸ブチル7部及び2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)0.5部からなる混合物を同温度に保持しつつ1時間かけて滴下し、さらに1時間熟成して、水酸基価60mgKOH/g、数平均分子量20,000、樹脂固形分55%の水酸基含有アクリル樹脂(1)を得た。
モノマー/重合開始剤の混合物(1):
スチレン10部、メチルメタクリレート10部、n−ブチルメタクリレート5部、i−ブチルメタクリレート60部、メタクリル酸1部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート14部及びアゾビスイソブチロニトリル2.3部からなる単量体及び重合開始剤の混合物。
製造例2:水酸基含有アクリル樹脂(2)の製造
温度計、サーモスタット、撹拌器、還流冷却器及び滴下装置を備えた反応容器にキシレン50部及び酢酸ブチル22部を仕込み、撹拌混合し、120℃に昇温した。次いで同温度に保持した反応容器内に、下記のモノマー/重合開始剤の混合物(2)を3時間かけて滴下し、滴下終了後1時間熟成を行なった。その後、キシレン10部及び2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)0.6部からなる混合物を同温度に保持しつつ1時間30分かけて滴下し、さらに2時間熟成して、水酸基価82mgKOH/g、数平均分子量20,000、樹脂固形分55%の水酸基含有アクリル樹脂(2)を得た。
モノマー/重合開始剤の混合物(2):
メチルメタクリレ−ト27部、エチルアクリレート17部、n−ブチルアクリレート23部、ヒドロキシエチルメタクリレート19部、スチレン30部、アクリル酸1部及び2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)2.5部からなる混合物。
製造例2:クリヤプライマー塗料の調製
製造例1で得られた水酸基含有アクリル樹脂(1)100部(固形分)、Tinuvin400(商品名、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤、チバスペシャリティケミカルズ社製)3部、Tinuvin292(商品名、光安定剤吸収剤、チバスペシャリティケミカルズ社製)1部、ディスパロンA630−20XN(商品名、楠本化成社製、脂肪酸アマイドワックス)2.5部及びモダフロー(商品名、表面調整剤、モンサント社製)0.1部を攪拌混合した後、スミジュールN3300(商品名、HDIイソシアヌレート3量体、住化バイエルウレタン社製)27部を配合して攪拌混合し、塗装に適した粘度に希釈してクリヤプライマー塗料を調製した。
製造例3〜9:ベース塗料1〜7の調製
製造例2で得られた水酸基含有アクリル樹脂(2)100部(固形分)あたり、着色顔料及び又は光反射性顔料を下記表1に示す比率で配合して攪拌混合し、スミジュールN3300(商品名、HDIイソシアヌレート3量体、住化バイエルウレタン社製)27部を加え、塗装に適正な粘度に希釈して、固形分約50%の有機溶剤型塗料を調製し、実施例及び比較例に使用するベース塗料1〜7を調製した(水酸基含有アクリル樹脂中の水酸基1当量に対するイソシアネート化合物中のイソシアネート基の割合は1当量である)。
【0066】
【表1】

【0067】
製造例10:トップクリヤー塗料の調製
製造例2で得られた水酸基含有アクリル樹脂(2)100部(固形分)、Tinuvin400(商品名、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤、チバスペシャリティケミカルズ社製)3部、Tinuvin292(商品名、光安定剤吸収剤、チバスペシャリティケミカルズ社製)1部及びモダフロー(商品名、表面調整剤、モンサント社製)0.1部を攪拌混合した後、スミジュールN3300(商品名、HDIイソシアヌレート3量体、住化バイエルウレタン社製)27部を配合して攪拌混合し、塗装に適した粘度に希釈してトップクリヤー塗料を調製した。
測色用試料の調製
透明なポリエチレンシート(3M社製、OHPフィルムPP2500)の表面を溶剤脱脂後、製造例3〜9で得られたベース塗料1〜7を硬化塗膜に基づいて、15μmとなるようにエアスプレーを用いて塗装し、塗装後室温約20℃の実験室に5分間静置し、製造例10で得られたトップクリヤー塗料を硬化塗膜に基づいて、30μmとなるようにエアスプレーを用いて塗装し、塗装後室温約20℃の実験室に10分間静置した後に、温風乾燥機を用いて80℃30分間乾燥せしめて、測色用の試料を得た。
平行光線透過率の測定
測色用の試料について、濁度計COH−300A(商品名、日本電色工業社製)を使用して、平行光線透過率を測定し、結果を表1に示した。
色差の測定
隠蔽率試験紙(日本テストパネル社製)にポリエチレングリコール数滴を滴下し、その上に測定用の試料を置いて測定した。ハイライトの色差(塗膜に対して45度の角度から照射した光を、正反射光に対して15度の角度で受光したときの分光反射率から計算した数値を使用)、シェードの色差(塗膜に対して45度の角度から照射した光を、正反射光に対して110度の角度で受光したときの分光反射率から計算した数値を使用)を表2に示した。測定には多角度分光光度計(MA−68II、商品名、x−rite社製)を使用した。結果を表1に示した
ミクロ光輝感の測定
測色用の試料について、関西ペイント社製ミクロ光輝感測定器を使用して、HGを求め、結果を表1に示した。
目視評価用試験板の作成
CFRPパネル(東レ社製、編目:1.5mm四方、5ヶ所の平均明度L*22.5)の表面を、アセトンとイオン交換水の1:1混合液を使用して脱脂した。乾燥後、クリヤプライマー塗料を稀釈せずに塗布した。室温約20℃の実験室で15分静置し、温風乾燥機を使用して80℃30分間乾燥せしめた。#240の耐水サンドペーパーで表面を平滑にし、さらに#1000の耐水サンドペーパーで仕上げを行った。水洗乾燥後、クリヤプライマー塗料を塗装に適正な粘度まで稀釈し、エアスプレーを使用して、硬化塗膜として20μmとなるように塗装し、室温約20℃の実験室で15分静置し、温風乾燥機を使用して80℃30分間乾燥せしめて平滑な基材を得た。
【0068】
表2に示す構成となるように、ベース塗料1〜7をエアスプレーを使用して、硬化塗膜として15μmとなるように塗装し、塗装後室温約20℃の実験室に5分間静置し、製造例10で得られたトップクリヤー塗料を硬化塗膜に基づいて、30μmとなるようにエアスプレーを用いて塗装し、塗装後室温約20℃の実験室に10分間静置した後に、温風乾燥機を用いて80℃30分間乾燥せしめて目視評価用の試験板を得た。
目視評価
冬の午後(あまり強くない直射日光が当たる条件:具体的には2011年2月10日の午後3時)に、3名の自動車の塗色設計に5年以上従事したデザイナーが、観察角度を買えて試験板を目視評価した。
3:ハイライトで金属感が強く、シェードでCFRPの編目がはっきり認識できる。
2:ハイライトで金属感があり、シェードでCFRPの編目が認識できる。
1:ハイライトで金属感がなく、シェードでCFRPの編目が認識できない。
【0069】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明の塗膜形成方法は、各種工業製品、特に自動車外板の塗装に適用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
CFRP表面に、光反射性顔料を含み、硬化塗膜として膜厚15μmとなるように塗装して得られた塗膜の平行光線透過率が30〜80%の範囲内である光反射性塗料組成物を塗装する塗膜形成方法。
【請求項2】
光反射性塗料組成物による塗膜上にさらにトップクリヤー塗料を塗装する請求項1に記載の塗膜形成方法。
【請求項3】
CFRP表面に45度の角度から照射した光を正反射光に対して45度の角度(垂直方向)から受光した反射光の分光反射率から計算されたL*a*b*表色系における明度L*が10〜30の範囲内である請求項1又は2に記載の塗膜形成方法。
【請求項4】
光反射性塗料組成物が、ビヒクル形成成分である樹脂固形分100質量部に対して、固形分として2〜15質量部の光反射性顔料を含むものであるのいずれか1項に記載の塗膜形成方法。
【請求項5】
光反射性顔料が、鱗片状金属顔料であって、長手方向の平均粒子径が8〜18μmの範囲内であり、厚さが0.2〜1.0μmの範囲内である請求項1〜4のいずれか1項に記載の複層塗膜形成方法。
【請求項6】
CFRP表面が、予めクリヤプライマー塗膜が積層したものである請求項1〜5のいずれか1項に記載の塗膜形成方法。
【請求項7】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の塗膜形成方法が適用された塗装物品。

【公開番号】特開2012−200681(P2012−200681A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−68362(P2011−68362)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000001409)関西ペイント株式会社 (815)
【Fターム(参考)】