説明

塗膜形成方法及び親水化処理剤溶液

【課題】 表面を研磨した部分の耐汚染性に優れており、耐汚染性が長期にわたり持続する塗膜形成方法を提供すること。
【解決手段】 親水性又は親水化可能な塗膜に、メルカプト基、エポキシ基、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、ハロアルキル基及びアミノ基から選ばれる少なくとも1種の有機官能基を含有するシリコーン化合物(A)及び有機溶剤(B)を含有する親水化処理剤溶液を塗布することを特徴とする塗膜形成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、親水化処理剤を用いる塗膜形成方法に関し、更に詳しくは、親水性又は親水化可能な塗膜に親水化処理剤を塗布する工程を含む塗膜形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用上塗塗料は、自動車車体塗装用塗膜の最外層を構成するものであることから、耐擦り傷性、耐酸性、耐候性、仕上り性等の塗膜性能に優れることが要求されている。また、煤煙や砂塵等の汚染物質が塗膜に付着した場合の汚れの落ちやすさ、即ち、耐汚染性の要求も高まってきている。
【0003】
特許文献1には、耐汚染性に関する問題点を解消することを目的として、酸−エポキシ硬化系の塗料に特定のシリコーン化合物を配合した自動車上塗塗料が開示されている。この技術においては、上記特定のシリコーン化合物が有する有機官能基が、塗料中の有機樹脂との間で反応して化学結合を形成する、極性構造により水素結合を形成する、親和性に基づく相互作用等に寄与することにより、シリコーン化合物の塗膜からの脱離を抑制している。そして、この塗料組成物による塗膜は、塗膜表面近傍に多く存在する上記特定のシリコーン化合物のアルコキシシリル基が容易に加水分解してシラノール基を生成し、このシラノール基に起因する高い親水性により、耐汚染性を発揮するものである。
【0004】
しかしながら、この加水分解反応は降雨の状況により左右され、降雨量が少ないと親水性塗膜となるまでに時間を要する場合があった。また、親水性表面になるまでは、疎水性の汚染物質が付着すると降雨だけでは汚れが落ちにくいという問題がある。
【0005】
また、自動車塗装ラインでは、上塗り塗装後の塗装面にゴミ、ブツ、キズ等が発見された場合には、このゴミ、ブツを除去する工程において、サンドペーパーで研磨して仕上げる場合がある。
【0006】
上記の塗膜を研磨した部分は、塗膜表面近傍に多く存在するシリコーン化合物含有層が削り取られているため、親水性が消失して耐汚染性が低下する。従って、自動車塗膜全体を見ると、研磨した部位の有無により、親水化レベルが異なる部位が発生し、耐汚染性レベルに著しい差ができているために、水に濡れると白黒のまだら模様が発生するという問題がある。
【0007】
特許文献2には、シリコン化合物もしくはその加水分解縮合物(a)、又は成分(a)とシリコン化合物を加水分解しうる触媒及び/もしくは有機溶剤との混合物を上塗り塗膜上に塗布する上塗り塗膜の耐汚れ処理方法が開示されている。しかしながら、この耐汚れ処理方法により表面に形成される親水化塗膜は、降雨等により少しずつ溶解し、消失していくため、親水化塗膜の効果が無くなるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−147743号公報
【特許文献2】特開2000−256619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、上塗り塗膜表面を研磨した部分の耐汚染性に優れており、且つ耐汚染
性が長期にわたり持続する塗膜形成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、鋭意研究を行なった結果、今回、親水性又は親水化可能な塗膜に、特定のシリコーン化合物を含有する親水化処理剤溶液を塗布することによって、上記目的を達成することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
かくして、本発明は、親水性又は親水化可能な塗膜に、メルカプト基、エポキシ基、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、ハロアルキル基及びアミノ基から選ばれる少なくとも1種の有機官能基を含有するシリコーン化合物(A)及び有機溶剤(B)を含有する親水化処理剤溶液を塗布することを特徴とする塗膜形成方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の塗膜形成方法では、表面を研磨した部分にも親水化処理剤が塗布されているため、この研磨部分の耐汚染性にも優れており、耐汚染性が長期にわたり持続する。また、本発明の方法により形成される塗膜は、高い架橋密度を有するために耐候性等の基本性能をも有している。さらに、本発明の方法により形成される塗膜は、長期暴露時には表面の親水化処理剤の塗膜は雨で少しずつ溶解して消失していくが、予め形成されている親水性又は親水化可能な塗膜上に本発明における親水化処理剤が化学的結合、水素結合等を介して親水性を維持するのに十分な程度保持されているため、継続して親水性を維持することができ、優れた耐汚染性を発揮する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の塗膜形成方法(以下、「本方法」ということがある)についてさらに詳細に説明する。
【0014】
本発明の方法において使用される親水化処理剤溶液は、メルカプト基、エポキシ基、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、ハロアルキル基及びアミノ基から選ばれる少なくとも1種の有機官能基を含有するシリコーン化合物(A)及び有機溶剤(B)を含有するものである。
【0015】
シリコーン化合物(A)
シリコーン化合物(A)は、メルカプト基、エポキシ基、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、ハロアルキル基及びアミノ基から選ばれる少なくとも1個の有機官能基を含有するアルコキシシラン化合物(以下、「有機官能基含有アルコキシシラン化合物」と略す)又は有機官能基含有アルコキシシラン化合物を少なくとも1種含有するアルコキシシラン化合物の混合物を少なくとも部分的に加水分解縮合することにより得られる化合物を包含する。
【0016】
シリコーン化合物(A)としては、特に、有機官能基含有アルコキシシラン化合物及びテトラアルコキシシラン化合物の混合物を部分共加水分解縮合させることにより得られるものを好適に使用することができる。
【0017】
有機官能基含有アルコキシシラン化合物は、ケイ素原子に結合する少なくとも1個、好ましくは2又は3個のアルコキシ基と、少なくとも1個、好ましくは1個の有機官能基を有するものであり、さらに場合によりケイ素原子に結合する1個のアルキル基を含有していてもよい。該アルコキシ基としては、炭素数が1〜6、好ましくは1〜4のアルコキシ基が好適である。また、該有機官能基はケイ素原子に直接結合していてよく、或いは炭素数1〜10、好ましくは2〜8の2価の炭化水素基、好ましくはアルキレン基又はフェニレン基を介してケイ素原子に結合していてもよい。かかる有機官能基含有アルコキシシラ
ン化合物としては、それ自体既知のものを使用することができ、具体的には以下のものを例示することができる。
【0018】
メルカプト基含有アルコキシシラン化合物: γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリブトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、β−メルカプトメチルフェニルエチルトリメトキシシラン、メルカプトメチルトリメトキシシラン、6−メルカプトヘキシルトリメトキシシラン、10−メルカプトデシルトリメトキシシラン等。
【0019】
エポキシ基含有アルコキシシラン化合物: γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリブトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリイソプロペノキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジエトキシシラン、5,6−エポキシヘキシルトリメトキシシラン、9,10−エポキシデシルトリメトキシシラン等。
【0020】
(メタ)アクリロイルオキシ基含有アルコキシシラン化合物: γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリブトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシメチルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシメチルトリメトキシシラン等。
【0021】
ビニル基含有アルコキシシラン化合物: ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、5−ヘキセニルトリメトキシシラン、9−デセニルトリメトキシシラン、スチリルトリメトキシシラン等。
【0022】
ハロアルキル基含有アルコキシシラン化合物: γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−ブロモプロピルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、ノナフルオロヘキシルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリブトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン等。
【0023】
アミノ基含有アルコキシシラン化合物:N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリブトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等。
【0024】
これらの有機官能基含有アルコキシシラン化合物は、それぞれ単独で使用してもよく、又は2種以上組合せて使用してもよい。
【0025】
これらの化合物の中、耐汚染性、耐侯性等の塗膜性能が優れることから、メルカプト基
含有アルコキシシラン化合物、エポキシ基含有アルコキシシラン化合物を使用することが好ましい。
【0026】
有機官能基含有アルコキシシラン化合物中の有機官能基は、塗料中の樹脂成分との間に化学反応により化学結合を形成する、極性構造により水素結合を形成する或いは親和性に基づく相互作用等により、シリコーン化合物の塗膜からの脱離を防止するように機能する。
【0027】
有機官能基含有アルコキシシラン化合物と併用し得るテトラアルコキシシラン化合物としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等を挙げることができる。これらの化合物は1種もしくは2種以上を組合せて使用することができる。これらの中、アルコキシシラン基が容易に加水分解してシラノール基を生成し、耐汚染性に優れた塗膜を形成することから、テトラメトキシシラン及びテトラエトキシシランを使用することが特に好ましい。
【0028】
併用する場合の有機官能基含有アルコキシシラン化合物に対するテトラアルコキシシラン化合物の配合割合は、厳密に制限されるものではなく、広い範囲にわたって変えることができるが、一般には、有機官能基含有アルコキシシラン化合物100重量部に対して、テトラアルコキシシラン化合物は20〜2,000重量部、特に35〜1,500重量部、さらに特に50〜1,000重量部の範囲内で使用することが好ましい。該配合割合が20重量部未満では、有機官能基含有アルコキシシラン化合物及びテトラアルコキシシラン化合物の共加水分解縮合物の親水性が低下する結果、目的とする塗膜の耐汚染性、耐酸性等が劣り好ましくない。また、該配合割合が2,000重量部を超えると、シリコーン化合物(A)と樹脂成分との親和性、反応性が乏しくなり、塗膜中にシリコーン化合物(A)を固定する能力が不足し、加水分解後塗膜から脱離しやすくなるため好ましくない。
【0029】
シリコーン化合物(A)は、一般に3〜100、特に5〜80、さらに特に8〜60の範囲内の平均重合度を有することが好ましい。シリコーン化合物(A)の重合度が3未満であると、揮発したり、塗膜表面に十分な親水性を付与できなかったり、或いは塗膜中から溶出しやすくなる場合がある。逆に、シリコーン化合物(A)の重合度が100を超えると、均一な塗膜の形成が難しくなる場合がある。
【0030】
シリコーン化合物(A)は、それ自体既知の方法に従い、例えば、加水分解(縮合)触媒の存在下に、上記有機官能基含有アルコキシシラン化合物又は有機官能基含有アルコキシシラン化合物を少なくとも1種含有するアルコキシシラン化合物に水を加え加水分解縮合反応を行うことにより製造することができる。
【0031】
加水分解縮合において、加水分解の程度は、例えば、全く加水分解されない場合は平均重合度が0であり、反対に100%加水分解された場合には重合度が上がりすぎてゲル化するように、その重合度と密接な関係があり、本発明で使用するシリコーン化合物(A)においては、平均重合度は前述したように、一般に3〜100、特に5〜80、さらに特に8〜60の範囲内に調整することが好ましい。
【0032】
上記加水分解縮合触媒としては、それ自体既知の種々のものを使用することができ、具体例には、例えば、酢酸、酪酸、マレイン酸、クエン酸等の有機酸類;塩酸、硝酸、リン酸、硫酸等の無機酸類;トリエチルアミン等の塩基性化合物類;テトラブチルチタネート、ジブチル錫ジラウレート等の有機金属塩類;フッ化カリウム、フッ化アンモニウム等の含フッ素化合物類等を挙げることができる。これらの触媒の中でも、含フッ素化合物は、反応活性に富むシラノール基の縮合を促進する機能に優れているため、シラノール基を少量しか含有しない化合物を合成するのに適しており、これにより塗料貯蔵安定性が良好と
なることから特に好ましい。上記触媒はそれぞれ単独で使用してもよく又は2種以上を併用してもよい。触媒の使用量は、有機官能基含有アルコキシシラン化合物又は有機官能基含有アルコキシシラン化合物とアルコキシシラン化合物の混合物に対し、通常0.0001〜1モル%の範囲内が好ましい。
【0033】
加水分解縮合反応を実施するに際して、必要に応じて有機溶剤を使用することができる。使用可能な有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、t−ブタノール等のアルコール類;アセトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;ジブチルエーテル等のエーテル類;酢酸エチル等のエステル類;トルエン等の芳香族類等を例示することができる。特に、メタノール、エタノール、アセトン等が好ましい。
【0034】
加水分解縮合反応に使用する水の量は、希望する重合度により決定することができる。過剰に添加すると、アルコキシ基が破壊され、最終的にゲル化に至るため、厳密に決定する必要がある。特に、触媒に含フッ素化合物を使用する場合、含フッ素化合物が完全に加水分解縮合を進行させる能力があり、添加する水量により重合度を決定することができ、任意の分子量の設定が可能となるので好ましい。即ち、平均重合度Mの目的物を調製する場合には、有機官能基含有アルコキシシラン化合物及びアルコキシシラン化合物中のアルコキシ基の合計Mモルに対して(M−1)モルの水を使用すればよい。その他の触媒の場合、これより若干増量する必要がある。
【0035】
加水分解縮合反応は、室温ないし150℃の範囲内の温度で行うことができる。室温未満では反応の進行が遅くなり実用的でなく、また、150℃を超えるとエポキシ基等の有機官能基の熱分解が起こるため好ましくない。
【0036】
有機溶剤(B)
有機溶剤(B)としては、例えば、ヘプタン、トルエン、キシレン、オクタン、ミネラルスピリット等の炭化水素系溶剤;酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のエステル系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、イソブタノール等のアルコール系溶剤;n−ブチルエーテル、ジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等のエーテル系溶剤;コスモ石油社製のスワゾール310、スワゾール1000、スワゾール1500(以上、商品名)等の芳香族石油系溶剤等を挙げることができる。これらの有機溶剤はそれぞれ単独で又は2種以上を組合せて使用することができる。
【0037】
上記のうち、シリコーン化合物(A)の溶解性及び親水化処理剤溶液塗布時の塗りムラ等の観点から、炭化水素系溶剤が好ましい。炭化水素系溶剤のなかでも、特に、トルエン、キシレンが好ましい。
【0038】
有機溶剤(B)は、親水化処理剤溶液を例えばワイプ塗装する場合の塗装作業性(親水化処理剤溶液が塗膜表面に濡れ広がりすぎると塗装作業を行ないにくくなる)等の観点から、一般に27dyne/cm以上、特に28dyne/cm以上の表面張力を有することが好ましい。
【0039】
有機溶剤(B)は、親水化処理剤溶液塗布時の塗りムラ等の観点から、一般に1.0g/100g以下、特に0.1g/100g以下、さらに特に0.05/100g以下の水溶解度を有することが好ましい。
【0040】
有機溶剤(B)は、また、親水化処理剤溶液塗布時の塗りムラ等の観点から、一般に10.0以下、特に9.0以下の溶解性パラメータ値(SP値)を有することが好ましい。
【0041】
有機溶剤(B)は、塗装作業性等の観点から、一般に180〜900、特に200〜850、さらに特に220〜800の範囲内の蒸発速度を有することが好ましい。ここで蒸発速度とは、試験試料溶剤の全量のうち90質量%が揮発するのに要する秒数で表わされる値である。試験方法は、例えば、ASTM D3359に定められている。
【0042】
親水化処理剤溶液
親水化処理剤溶液は、シリコーン化合物(A)及び有機溶剤(B)を混合することにより調製することができる。
【0043】
親水化処理剤溶液において、塗装作業性等の観点から、シリコーン化合物(A)の濃度は、シリコーン化合物(A)及び有機溶剤(B)の総量に対して、一般に1〜10質量%、特に2〜8質量%、さらに特に3〜7質量%の範囲内であるのが好ましい。
【0044】
親水化処理剤溶液の塗布方法は、特に限定されるものではなく、例えば、スプレー塗装、ロールコーター法、刷毛塗り、浸漬塗装、ワイプ塗装等を挙げることができる。これらのうち、塗布が簡便に行なえる等の観点から、ワイプ塗装が好ましい。ワイプ塗装は、例えば、ネル等のクロスを用いて、親水化処理剤溶液を適量塗りこみ、均一な塗膜となるように拭き取ることにより行なうことができる。
【0045】
塗布した後の塗膜は、室温で乾燥するまで放置してもよく、或いは約40〜約100℃の温度で1〜30分間程度加熱して乾燥することができる。
【0046】
塗膜は、乾燥膜厚で通常約0.01〜約10μm、特に約0.5〜約1μmの範囲内の厚さを有することが好ましい。膜厚が0.01μm未満であると、長期にわたり耐汚染性を維持することができない場合があり、反対に、10μmを超えると、仕上がり外観が低下したり、ワレ等が生じたりする場合がある。
【0047】
親水性又は親水化可能な塗膜
本発明において、上記親水化処理剤溶液は、親水性又は親水化可能な塗膜に塗布される。上記親水性の塗膜とは、水接触角が40°以下、好ましくは35°以下である塗膜を意味し、また、親水化可能な塗膜とは、JIS K 5400 9.9に準拠して6カ月間屋外曝露試験を行った場合の塗膜の水接触角が40°以下、好ましくは35°以下である塗膜を意味する。塗膜表面の水接触角が40°以下であれば、40°を超える場合に比較して、汚染されにくく、汚染された場合であっても水や降雨のみで容易に汚染が除去できる等耐汚染性に優れている。
【0048】
上記親水性又は親水化可能な塗膜は、通常、被塗物上に形成される。被塗物としては、自動車、二輪車等の車体又はその部品等;これら車体等を形成する冷延鋼板、亜鉛メッキ鋼板、亜鉛合金メッキ鋼板、ステンレス鋼板、錫メッキ鋼板等の鋼板;アルミニウム板、アルミニウム合金板等の金属基材;各種プラスチック基材;各種ガラス基材;各種ミラー部材等が挙げられる。
【0049】
また、被塗物としては、上記車体、部品、金属基材の金属表面に、リン酸塩処理、クロメート処理、複合酸化物処理等の化成処理が施されたものであってもよく、さらに、上記車体、金属基材等に、各種電着塗料等の下塗り塗膜及び/又は中塗り塗膜が形成されたものであってもよい。
【0050】
上記親水性又は親水化可能な塗膜は、通常、上記被塗物の最上層として塗布される上塗塗料により形成される塗膜であることができる。この上塗塗料は、特に限定されるものではなく、着色上塗塗料、上塗クリヤ塗料等が挙げられる。
【0051】
上記上塗塗料は親水性又は親水化可能な塗膜を形成させるものであることから、通常、親水性を発現させる成分(アルコキシシリル基及び/又はシラノール基を有する成分等)を含有するものであることができ、親水性を発現させる成分としては、親水化処理剤溶液について前述したシリコーン化合物(A)であることが好ましい。
【0052】
上塗クリヤ塗料としては、塗料中に、メタリック系顔料(例えば、リン片状アルミニウム粉末、銅粉末、ニッケル粉末、ステンレス粉末、着色マイカ粉末等)やその他の着色顔料を全く配合しないかもしくは形成塗膜が下地を完全に隠蔽しない程度に配合してなるものを挙げることができる。
【0053】
上塗クリヤ塗料の塗装例としては、例えば、各種電着塗料等の下塗り塗膜及び/又は中塗り塗膜が形成された塗膜表面に、従来から自動車の分野で使用されているそれ自体既知の有機溶剤型もしくは水性の上塗ベース塗料を塗装した後、上塗クリヤ塗料を塗装するものを挙げることができる。
【0054】
上記上塗クリヤ塗料としては、例えば、従来から自動車塗装の分野で使用されているそれ自体既知のクリヤ塗料(例えば、アクリル樹脂/メラミン樹脂系等のメラミン硬化型クリヤ塗料、アクリル樹脂/ポリイソシアネート化合物系等のウレタン硬化型クリヤ塗料等)に、シリコーン化合物(A)を含有させてなるものを挙げることができるが、特に好適なクリヤ塗料としては、カルボキシル基含有重合体(C)、エポキシ基含有アクリル樹脂(D)及びシリコーン化合物(A)を含有する塗料組成物(以下、「上塗クリヤ塗料1」と称することがある)を挙げることができる。
【0055】
しかして、親水性又は親水化可能な塗膜を形成させるための上塗クリヤ塗料として好ましい上塗クリヤ塗料1は、カルボキシル基含有重合体(C)、エポキシ基含有アクリル樹脂(D)及びシリコーン化合物(A)を含有してなる塗料組成物である。
【0056】
カルボキシル基含有重合体(C)
カルボキシル基含有重合体(C)には、それ自体既知のカルボキシル基含有重合体が包含され、好ましいカルボキシル基含有重合体(C)としては、例えば、酸無水基をハーフエステル化してなる基を有するビニル系重合体(C−1)及びカルボキシル基含有ポリエステル系重合体(C−2)を挙げることができる。
【0057】
酸無水基をハーフエステル化してなる基を有するビニル系重合体(C−1)
酸無水基をハーフエステル化してなる基とは、酸無水基に脂肪族モノアルコールを付加し、開環して(即ちハーフエステル化して)得られるカルボキシル基とカルボン酸エステル基とからなる基を意味する。以下、この基を単にハーフエステル基ということがある。
【0058】
重合体(C−1)は、例えば、ハーフエステル基を有するビニルモノマー及びその他のビニルモノマーを、常法により共重合させることによって容易に得ることができる。また、フエステル基を有するビニルモノマーに代えて、酸無水基を有するビニルモノマーを用いて、同様に共重合した後、該酸無水基をハーフエステル化することによっても容易に得ることができる。さらに、フエステル基を有するビニルモノマーに代えて、水酸基を有するビニルモノマーを用いて、同様に共重合した後、該水酸基をハーフエステル化することによっても得ることができる。
【0059】
ハーフエステル基を有するビニルモノマーとしては、酸無水基を有するビニルモノマーの酸無水基をハーフエステル化することにより得られる化合物、水酸基含有ビニルモノマーに酸無水物をハーフエステル化により付加することにより得られる化合物等が挙げられる。
【0060】
酸無水基を有するビニルモノマーの酸無水基をハーフエステル化することにより得られる化合物としては、具体的には、例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水基を有するビニルモノマーと脂肪族モノアルコールとのモノエステル化物等を挙げることができる。
【0061】
水酸基含有ビニルモノマーに酸無水物をハーフエステル化することにより得られる化合物としては、具体的には、例えば、後記でその他のビニルモノマーとして例示する水酸基含有ビニルモノマーに無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸等の酸無水物をハーフエステル化により付加することにより得られる化合物等を挙げることができる。
【0062】
ハーフエステル化は、上記のとおり、共重合反応の前後のいずれにおいても行なうことができる。ハーフエステル化に使用される脂肪族モノアルコールとしては、低分子量のモノアルコール類、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、tert−ブタノール、イソブタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等が挙げられる。ハーフエステル化反応は、通常の方法に従い、例えば、室温ないし約80℃の温度で、必要に応じて3級アミン等の塩基性触媒の存在下に行なうことができる。
【0063】
前記その他のビニルモノマーとしては、例えば、水酸基含有ビニルモノマー;(メタ)アクリル酸エステル;ビニルエーテル及びアリルエーテル;オレフィン系化合物及びジエン系化合物;含窒素不飽和単量体;ビニル芳香族化合物、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等を挙げることができる。
【0064】
水酸基含有ビニルモノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸の炭素数2〜8のヒドロキシアルキルエステル;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等のポリエーテルポリオールと(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸とのモノエステル;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等のポリエーテルポリオールと2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有不飽和モノマーとのモノエーテル;無水マレイン酸や無水イタコン酸のような酸無水基含有不飽和化合物と、エチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等のグリコール類とのジエステル化物;ヒドロキシエチルビニルエーテルのようなヒドロキシアルキルビニルエーテル類;アリルアルコール;2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート;α,β−不飽和カルボン酸と、「カージュラE10」(商品名、シェル石油化学(株)製)やα−オレフィンエポキシドのようなモノエポキシ化合物との付加物;グリシジル(メタ)アクリレートと、酢酸、プロピオン酸、p−tert−ブチル安息香酸、脂肪酸類のような一塩基酸との付加物;上記水酸基含有モノマーとラクトン類(例えば、ε−カプロラクトン、γ−バレロラクトン)との付加物等を挙げることができる。
【0065】
本明細書において、「(メタ)アクリレート」はアクリレート又はメタクリレートを意味し、「(メタ)アクリル酸」はアクリル酸又はメタクリル酸を意味する。また、「(メタ)アクリルアミド」はアクリルアミド又はメタクリルアミドを意味する。
【0066】
(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル
、アクリル酸プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸tert−ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸デシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ステアリル等のアクリル酸又はメタクリル酸の炭素数1〜24のアルキルエステル又はシクロアルキルエステル;アクリル酸メトキシブチル、メタクリル酸メトキシブチル、アクリル酸メトキシエチル、メタクリル酸メトキシエチル、アクリル酸エトキシブチル、メタクリル酸エトキシブチル等のアクリル酸又はメタクリル酸の炭素数2〜18のアルコキシアルキルエステル等が挙げられる。
【0067】
ビニルエーテル及びアリルエーテルとしては、例えば、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、tert−ブチルビニルエーテル、ペンチルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル等の直鎖状又は分枝状アルキルビニルエーテル類;シクロペンチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル等のシクロアルキルビニルエーテル類;フェニルビニルエーテル、トリビニルエーテル等のアリルビニルエーテル類;ベンジルビニルエーテル、フェネチルビニルエーテル等のアラルキルビニルエーテル類;アリルグリシジルエーテル、アリルエチルエーテル等のアリルエーテル類等が挙げられる。
【0068】
オレフィン系化合物及びジエン化合物としては、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン、塩化ビニル、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等が挙げられる。
【0069】
含窒素不飽和単量体としては、例えば、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−tert−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の含窒素アルキル(メタ)アクリレート;アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド等の重合性アミド類;2−ビニルピリジン、1−ビニル−2−ピロリドン、4−ビニルピリジン等の芳香族含窒素モノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の重合性ニトリル;アリルアミン等が挙げられる。
【0070】
上記各種モノマー混合物の共重合は、一般的なビニルモノマーの重合法を用いて行うことができるが、汎用性やコスト等を考慮して、有機溶剤中における溶液型ラジカル重合法が好適である。溶液型ラジカル重合法によれば、有機溶剤中で、重合開始剤の存在下に、約60〜約165℃の範囲内の温度でモノマー混合物の共重合反応を行なうことによって、容易に目的の共重合体を得ることができる。該有機溶剤としては、例えば、キシレン、トルエン等の芳香族溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、3−メトキシブチルアセテート等のエステル系溶剤;n−ブタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール系溶剤等を挙げることができる。また、重合開始剤としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキサイド等を挙げることができる。
【0071】
ハーフエステル基又は酸無水基を有するビニルモノマーとその他のビニルモノマーとの共重合割合は、通常、全モノマーの合計質量を基準にして、次のような割合とするのが適当である。即ち、ハーフエステル基又は酸無水基を有するビニルモノマーは、得られる共重合体の硬化反応性と貯蔵安定性とのバランス等の観点から、一般に5〜40質量%、特
に7.5〜35質量%、さらに特に10〜30質量%の範囲内が好適である。また、その他のビニルモノマーは、一般に60〜95質量%、特に65〜92.5質量%、さらに特に70〜90質量%の範囲内が好適である。なお、酸無水基を有するビニルモノマーを使用する場合は、共重合反応後に、前記のとおり、ハーフエステル化反応を行なう。
【0072】
また、重合体(C−1)は、エポキシ基含有アクリル樹脂(D)及びシリコーン化合物(A)との相溶性、得られる塗料組成物の塗膜の光沢、耐酸性等に優れる等の観点から、一般に約1,000〜約10,000、特に約1,100〜約8,500、さらに特に約1,200〜約7,000の範囲内の数平均分子量及び一般に50〜250mgKOH/g程度、特に75〜225mgKOH/g、さらに特に100〜200mgKOH/gの範囲内の酸価を有するアクリル系重合体であることが好ましい。
【0073】
本明細書において、樹脂の数平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフ)により、標準ポリスチレンを基準として測定したものである。後記製造例等における数平均分子量の測定は、GPC装置として、「HLC8120GPC」(商品名、東ソー(株)製)、カラムとして、「TSKgel G−4000HXL」、「TSKgel
G−3000HXL」、「TSKgel G−2500HXL」及び「TSKgel G−2000HXL」(いずれも東ソー(株)製、商品名)の4本を用いて、移動相:テトラヒドロフラン、測定温度:40℃、流速:1cc/分、検出器:RIの条件で行なった。
【0074】
カルボキシル基含有ポリエステル系重合体(C−2)
カルボキシル基含有ポリエステル系重合体(C−2)は、通常、多価アルコールと多価カルボン酸との縮合反応によって容易に得ることができる。例えば、多価カルボン酸のカルボキシル基が過剰となる配合条件下で1段階の反応により、カルボキシル基含有ポリエステル系重合体が得られる。また、逆に多価アルコールの水酸基が過剰となる配合条件下でまず水酸基末端のポリエステル系重合体を合成した後、酸無水基含有化合物を後付加させることによってもカルボキシル基含有ポリエステル系重合体を得ることができる。
【0075】
上記多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ブチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等を挙げることができる。また、多価カルボン酸としては、例えば、アジピン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸等を挙げることができる。酸無水基含有化合物としては、例えば、無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水コハク酸等を挙げることができる。
【0076】
カルボキシル基含有ポリエステル系重合体(C−2)の分子量は、特に限定されないが、該重合体を含有する塗料組成物から形成される塗膜は光沢、耐酸性等に優れるという観点から、通常約500〜約10,000、特に約650〜約7,500、さらに特に約800〜約5,000の範囲内の数平均分子量を有することが好ましい。
【0077】
また、カルボキシル基含有ポリエステル系重合体(C−2)には、エポキシ基含有アクリル樹脂(D)及びシリコーン化合物(A)との相溶性の向上及びこれを含有する塗料組成物の塗膜の付着性向上を目的として、該重合体の水酸基価が約100mgKOH/g以下、好ましくは約10〜約100mgKOH/gの範囲内となるような量で水酸基を導入することもできる。水酸基の導入は、例えば、前述したカルボキシル基過剰の配合条件においては、縮合反応を途中で停止することによって行なうことができ、また、逆に水酸基過剰の配合条件においては、水酸基末端のポリエステル重合体を合成した後、後付加する酸無水基含有化合物を酸基が水酸基より少なくなるよう配合することにより容易に行なう
ことができる。
【0078】
カルボキシル基含有ポリエステル系重合体(C−2)のうち、特に好ましいものとして、以下に述べるカルボキシル基含有高酸価ポリエステルを挙げることができる。ここで、高酸価重合体とは、通常、酸価が70mgKOH/gを超える重合体を意味する。
【0079】
カルボキシル基含有高酸価ポリエステルは、例えば、多価アルコールと多価カルボン酸又はその低級アルキルエステル化物とを、水酸基量がカルボキシル基量より相対的に過剰となる配合条件下でエステル化反応を行ってポリエステルポリオールを得、次いでこのポリエステルポリオールを酸無水基含有化合物とハーフエステル化反応させることによって容易に得ることができる。ここで、カルボキシル基には、酸無水基が含まれ、酸無水基1モルはカルボキシル基2モルとして、カルボキシル基量を計算する。また、エステル化反応は、縮合反応及びエステル交換反応のいずれであってもよい。
【0080】
上記ポリエステルポリオールは、通常のエステル化反応条件によって得ることができる。このポリエステルポリオールは、一般に約350〜約4,700、特に約400〜約3,000の範囲内の数平均分子量及び一般に約70〜約400mgKOH/g、特に約150〜約350mgKOH/gの範囲内の水酸基価を有することが好ましい。このポリエステルポリオールのハーフエステル化反応は、通常の方法に従い、例えば、室温ないし約80℃の温度で、必要に応じて3級アミン等の塩基性触媒の存在下に行なうことができる。
【0081】
上記多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ブチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等を挙げることができ、多価カルボン酸としては、例えば、アジピン酸、セバチン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水トリメリット酸等を挙げることができる。酸無水基含有化合物としては、例えば、無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水コハク酸、無水トリメリット酸等を挙げることができる。
【0082】
このカルボキシル基含有高酸価ポリエステルは、一般に約800〜約5,000、特に約850〜約4,500、さらに特に約900〜約4,000の範囲内の数平均分子量及び一般に約50〜約300mgKOH/g、特に約75〜約275mgKOH/g、さらに特に約100〜約250mgKOH/gの範囲内の酸価を有することが好ましい。
【0083】
エポキシ基含有アクリル樹脂(D)
エポキシ基含有アクリル樹脂(D)は、カルボキシル基含有重合体(C)に対する架橋硬化剤として機能する。
【0084】
エポキシ基含有アクリル樹脂(D)は、エポキシ基に加えて、アルコキシシリル基を含有していてもよい。アルコキシシリル基を含有することにより、アクリル樹脂(D)を含有する組成物から形成される塗膜の架橋密度がより大きくなつて、塗膜の耐擦り傷性及び耐汚染性がより向上するという利点が得られる。
【0085】
該アクリル樹脂(D)は、例えば、エポキシ基を有するビニルモノマー及びその他のビニルモノマー、又はエポキシ基を有するビニルモノマー、アルコキシシリル基を有するビニルモノマー及びその他のビニルモノマーを共重合することによって合成することができる。
【0086】
エポキシ基を有するビニルモノマーとしては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリ
レート等を挙げることができる。
【0087】
アルコキシシリル基を有するビニルモノマーとしては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、β−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン等を挙げることができる。これらの内、低温硬化性及び貯蔵安定性に優れる等の観点から、アルコキシシリル基がエトキシシリル基であるビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン等が好適である。
【0088】
その他のビニルモノマーとしては、前記重合体(C−1)の製造に際して例示したものを同様に使用することができる。
【0089】
エポキシ基含有アクリル樹脂(D)は、重合体(C−1)の製造に関して前述した共重合方法と同様の方法を用いて製造することができる。
【0090】
エポキシ基含有アクリル樹脂(D)は、カルボキシル基含有重合体(C)及びシリコーン化合物(A)との相溶性の向上、該樹脂(D)を含有する塗料組成物から形成される塗膜の付着性向上等を目的として、該樹脂の水酸基価が約150mgKOH/g以下、好ましくは約10〜約150mgKOH/gの範囲内となるような量で水酸基を導入することもできる。
【0091】
水酸基の導入は、水酸基含有ビニルモノマーをコモノマー成分として用いて共重合することにより行なうことができる。水酸基含有ビニルモノマーとしては、重合体(C−1)の製造に際して例示したものと同様のものを使用することができる。
【0092】
エポキシ基を有するビニルモノマー及びその他のビニルモノマーを共重合する場合、エポキシ基含有ビニルモノマーは、得られる共重合体の硬化反応性と貯蔵安定性とのバランス等の観点から、全モノマーの合計質量を基準にして、一般に5〜80質量%、特に10〜65質量%の範囲内で使用することが好ましい。また、その他のビニルモノマーは、全モノマーの合計質量を基準にして、一般に20〜95質量%、特に35〜90質量%の範囲内で使用することが好ましい。
【0093】
エポキシ基を有するビニルモノマー、アルコキシシリル基を有するビニルモノマー及びその他のビニルモノマーを共重合する場合、全モノマーの合計質量を基準にして、以下のような共重合比率とするのが好ましい。エポキシ基を有するビニルモノマーは、得られる共重合体の硬化反応性と貯蔵安定性とのバランス等の観点から、一般に5〜60質量%、特に10〜40質量%の範囲内が好ましい。アルコキシシリル基を有するビニルモノマーは、得られる共重合体の硬化反応性と該共重合体を含有する組成物から形成される塗膜の耐擦り傷性に優れるなどの観点から、一般に3〜40質量%、特に5〜30質量%の範囲内が好ましい。また、その他のビニルモノマーは、一般に10〜80質量%、特に20〜50質量%の範囲内が好ましい。
【0094】
アクリル樹脂(D)のエポキシ基含有量は、カルボキシル基含有重合体(C)及びシリコーン化合物(A)との相溶性、塗料組成物としたときの硬化性、得られる塗膜の耐酸性、耐擦り傷性等に優れるという観点から、一般に0.5〜5.5ミリモル/g、特に0.
8〜4.5ミリモル/gの範囲内であることが好ましい。
【0095】
アクリル樹脂(D)がアルコキシシリル基を有する場合、その含有量は、塗料組成物としたときの貯蔵安定性及び形成される塗膜の耐酸性、耐擦り傷性等に優れるという観点から、一般に0.05〜2.5ミリモル/g、特に0.15〜1.75ミリモル/gの範囲内であることが好ましい。
【0096】
アクリル樹脂(D)は、カルボキシル基含有重合体(C)及びシリコーン化合物(A)との相溶性及び形成される塗膜の耐酸性、耐擦り傷性等に優れるなどの観点から、一般に1,000〜10,000、特に1,100〜8,500、さらに特に1,200〜7,000の範囲内の数平均分子量を有することが好ましい。
【0097】
カルボキシル基含有重合体(C)及びエポキシ基含有アクリル樹脂(D)の配合割合は、硬化性の観点から、(C)成分中のカルボキシル基対(D)成分中のエポキシ基との当量比が、一般に1:0.5〜0.5:1、特に1:0.6〜0.6:1の範囲内となるような割合であることが好ましい。
【0098】
シリコーン化合物(A)
シリコーン化合物(A)としては、前記親水化処理剤溶液について例示したものを同様に使用することができる。
【0099】
シリコーン化合物(A)としては、親水化処理剤溶液と同様に、有機官能基含有アルコキシシラン化合物及びテトラアルコキシシラン化合物の混合物を部分共加水分解縮合させることにより得られるものが特に好適に使用することができる。
【0100】
上記のうち、耐汚染性、耐侯性等の塗膜性能及びカルボキシル基含有重合体(C)、エポキシ基含有アクリル樹脂(D)との相溶性に優れることから、メルカプト基含有アルコキシシラン化合物及び/又はエポキシ基含有アルコキシシラン化合物を有機官能基含有アルコキシシラン化合物として使用して得られるシリコーン化合物が好ましい。
【0101】
また、上記のうち、耐汚染性に優れた塗膜を形成することができるという観点から、テトラアルコキシシラン化合物として、テトラメトキシシラン及びテトラエトキシシランを使用して得られるシリコーン化合物が好ましい。
【0102】
さらに、耐汚染性及び耐汚染性の維持性ならびに耐酸性等の塗膜性能の観点から、有機官能基を含有するアルコキシシラン化合物100重量部に対して、テトラアルコキシシラン化合物を20〜2,000重量部、特に35〜1,500重量部、さらに特に50〜1,000重量部の範囲内で使用して部分共加水分解縮合させることにより得られるシリコーン化合物を好適に使用することができる。
【0103】
シリコーン化合物(A)は、カルボキシル基含有重合体(C)及びエポキシ基含有アクリル樹脂(D)との相溶性に優れ、形成される塗膜の耐汚染性、耐候性等の塗膜性能に優れるなどの観点から、一般に500〜5000、特に750〜4000、さらに特に1000〜3000の範囲内の数平均分子量を有することが好ましい。
【0104】
上塗クリヤ塗料1におけるカルボキシル基含有重合体(C)、エポキシ基含有アクリル樹脂(D)及びシリコーン化合物(A)の配合割合は、塗膜の耐汚染性、耐侯性、硬度等に優れるという観点から、(C)成分及び(D)成分の合計固形分100質量部を基準にして、(C)成分は、一般に20〜80質量部、好ましくは30〜75質量部、さらに好ましくは35〜65質量部の範囲内、(D)成分は、一般に80〜20質量部、好ましく
は70〜25質量部、さらに好ましくは65〜35質量部の範囲内、そして(A)成分は、一般に1〜20質量部、好ましくは2〜17.5質量部、さらに好ましくは3〜15質量部の範囲内とすることができる。
【0105】
その他の成分
上塗クリヤ塗料1には、必要に応じて、硬化触媒を配合することができる。硬化触媒としては、カルボキシル基とエポキシ基との架橋反応に有効な触媒として、例えば、テトラエチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムブロマイド、テトラエチルアンモニウムクロライド、テトラブチルフォスフォニウムブロマイド、トリフェニルベンジルフォスフォニウムクロライド等の4級塩触媒;トリエチルアミン、トリブチルアミン等のアミン類等を挙げることができる。これらのうち4級塩触媒が好適である。さらに、該4級塩に該4級塩とほぼ当量のモノブチルリン酸、ジブチルリン酸等のリン酸化合物を配合したものは、上記触媒作用を損なうことなく塗料の貯蔵安定性を向上させ且つ塗料の電気抵抗値の低下によるスプレー塗装適性の低下を防ぐことができるという点で好適である。
【0106】
また、上塗クリヤ塗料1には、必要に応じて、塗料中や空気中に存在する水分による塗料の劣化を抑制するために、オルト酢酸トリメチル等の脱水剤を配合してもよい。
【0107】
上塗クリヤ塗料1には、さらに必要に応じて、着色顔料、体質顔料、光輝性顔料、防錆顔料等のそれ自体既知の顔料を配合することができる。
【0108】
着色顔料としては、例えば、酸化チタン、亜鉛華、カーボンブラック、カドミウムレッド、モリブデンレッド、クロムエロー、酸化クロム、プルシアンブルー、コバルトブルー、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリン顔料、スレン系顔料、ペリレン顔料等を挙げることができ、体質顔料としては、例えば、タルク、クレー、カオリン、バリタ、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、シリカ、アルミナホワイト等を挙げることができ、光輝性顔料としては、例えば、アルミニウム粉末、雲母粉末、酸化チタンで被覆した雲母粉末などを挙げることができる。
【0109】
上塗クリヤ塗料1には、必要に応じて、上記カルボキシル基含有重合体(C)、エポキシ基含有アクリル樹脂(D)以外の、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、フッ素樹脂等の各種樹脂を添加することも可能である。また、硬化性を向上させるために、メラミン樹脂、ブロックポリイソシアネート化合物等の架橋剤を併用することも可能である。更に、必要に応じて、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、表面調整剤、消泡剤等の一般的な塗料用添加剤を配合することも可能である。
【0110】
紫外線吸収剤としては、それ自体既知のものを使用することができ、例えば、ベンゾトリアゾール系吸収剤、トリアジン系吸収剤、サリチル酸誘導体系吸収剤、ベンゾフェノン系吸収剤等の紫外線吸収剤を挙げることができる。紫外線吸収剤を配合することによって、塗膜の耐候性、耐黄変性等を向上させることができる。
【0111】
紫外線吸収剤の含有量としては、通常、塗料中の樹脂固形分総合計量100質量部に対して通常0〜10質量部、好ましくは0.2〜5質量部、さらに好ましくは0.3〜2質量部の範囲内とすることができる。
【0112】
光安定剤としては、それ自体既知のものを使用することができ、例えば、ヒンダードアミン系光安定剤を挙げることができる。光安定剤を配合することによって、塗膜の耐候性、耐黄変性等を向上させることができる。
【0113】
光安定剤の含有量としては、通常、塗料中の樹脂固形分総合計量100質量部に対して通常0〜10質量部、0.2〜5質量部、さらに好ましくは0.3〜2質量部の範囲内とすることができる。
【0114】
上塗クリヤ塗料1の形態は、特に制限されるものではないが、通常、有機溶剤型の塗料組成物として使用することが好ましい。この場合に使用する有機溶剤としては、各種の塗料用有機溶剤、例えば、芳香族又は脂肪族炭化水素系溶剤;アルコール系溶剤;エステル系溶剤;ケトン系溶剤;エーテル系溶剤等が挙げられる。使用する有機溶剤は、(C)成分、(D)成分、(A)成分等の調製時に用いたものをそのまま用いてもよく、また、適宜加えてもよい。
【0115】
上塗クリヤ塗料1の調製
上塗クリヤ塗料1は、カルボキシル基含有重合体(C)、エポキシ基含有アクリル樹脂(D)、シリケート化合物(A)及び必要に応じて使用される硬化触媒、顔料、各種樹脂、紫外線吸収剤、光安定剤、有機溶剤等を、それ自体既知の方法により、混合することによって調製することができる。上塗クリヤ塗料1の固形分濃度は、一般に30〜70質量%、特に40〜60質量%の範囲内であることが好ましい。
【0116】
上塗ベース塗料
上塗ベース塗料及び上塗クリヤ塗料を併用する場合、上塗ベース塗料としては、特に制限されるものではなく、例えば、塗膜形成性樹脂、硬化剤、顔料及びその他の添加剤からなるものを使用することができる。
【0117】
塗膜形成性樹脂としては、特に限定されず、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等を挙げることができ、また、上記硬化剤としては、例えば、アミノ樹脂、ブロックポリイソシアネート化合物、ポリカルボン酸化合物、シラン化合物等を挙げることができる。
【0118】
上記顔料としては、着色顔料、体質顔料及び/又は光輝性顔料をそれぞれ単独で又は2種以上を併用することができる。
【0119】
上記着色顔料および体質顔料としては、上記上塗クリヤ塗料1について例示したものを挙げることができ、これらはそれぞれ単独で用いてもよく又は2種以上を併用してもよい。
【0120】
上記光輝性顔料としては、例えば、アルミニウム粉、銅粉、ニッケル粉、ステンレス粉、マイカ粉、干渉マイカ粉、着色マイカ粉、アルミナフレーク、グラファイトフレーク等が挙げられ、これらはそれぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0121】
上記上塗ベース塗料の固形分含有量は通常60質量%以下とすることができ、また、塗布時における固形分含有量は通常10〜50質量%とすることができる。
【0122】
上塗ベース塗料に添加することができる添加剤としては、上記上塗クリヤ塗料1について例示したものを使用することができる。
【0123】
塗膜形成方法
本発明によれば、以上に述べた如くして形成される親水性又は親水化可能な塗膜に、親水化処理剤溶液が塗布される。
【0124】
上記親水性又は親水化可能な塗膜は、通常、前述した如き被塗物の最上層に上塗塗料が
塗布され、該上塗塗料により形成されている塗膜であり、上記の着色上塗塗料、上塗クリヤ塗料等を挙げることができる。
【0125】
本発明の方法は、親水性又は親水化可能な塗膜に親水化処理剤溶液が塗布する工程を包含する限り、更に他の工程を含むこともできる。
【0126】
上塗クリヤ塗料を使用する塗装工程としては、例えば、自動車の分野でそれ自体既知の以下の工程を挙げることができる。
【0127】
工程A;2コート1ベーク方式(上塗ベース塗料/上塗クリヤ塗料/焼付け)、2コート2ベーク方式(上塗ベース塗料/焼付け/上塗クリヤ塗料/焼付け)。
【0128】
工程B;3コート1ベーク方式(上塗ベース塗料/第1上塗クリヤ塗料/第2上塗クリヤ塗料/焼付け)、3コート2ベーク方式(上塗ベース塗料/第1上塗クリヤ塗料/焼付け/第2上塗クリヤ塗料/焼付け)、3コート3ベーク方式(上塗ベース塗料/焼付け/第1上塗クリヤ塗料/焼付け/第2上塗クリヤ塗料/焼付け)。
【0129】
工程C;3コート1ベーク方式(第1上塗ベース塗料/第2上塗ベース塗料/上塗クリヤ塗料/焼付け)、3コート2ベーク方式(第1上塗ベース塗料/第2上塗ベース塗料/焼付け/上塗クリヤ塗料/焼付け)、3コート3ベーク方式(第1上塗ベース塗料/焼付け/第2上塗ベース塗料/焼付け/上塗クリヤ塗料/焼付け)。
【0130】
また、省工程の観点から、前記中塗り塗膜と上塗り塗膜の硬化を一緒に行なう以下の工程Dを挙げることもできる。
【0131】
工程D;3コート1ベーク方式(中塗塗料/上塗ベース塗料/上塗クリヤ塗料/焼付け)。
【0132】
工程A〜Dにおいて、使用される中塗塗料及び上塗ベース塗料は、溶剤型塗料又は水性塗料のいずれであってもよい。
【0133】
上記上塗ベース塗料及び上塗クリヤ塗料は、例えば、エアスプレー塗装、エアレススプレー塗装、回転霧化塗装、カーテンコート塗装等により塗装することができる。エアスプレー塗装、エアレススプレー塗装及び回転霧化塗装においては、必要に応じて、静電印加していてもよい。これらの内、エアスプレー塗装及び回転霧化塗装が特に好ましい。
【0134】
ウエット塗膜の硬化は、通常、加熱(焼付け)することによって行なわれる。加熱は、それ自体既知の加熱手段により行なうことができる。例えば、熱風炉、電気炉、赤外線誘導加熱炉等の乾燥炉を適用できる。
【0135】
硬化温度(焼付け温度)は、通常約100〜約180℃、好ましくは約120〜約160℃の範囲内とすることができる。硬化時間は、硬化温度等に依存して変えることができるが、通常120〜160℃で10〜40分間程度の範囲内であるのが適当である。
【0136】
上記上塗ベース塗料によるベース塗膜の乾燥膜厚は、一般に5〜40μm程度、特に10〜30μm程度が好適である。乾燥膜厚が5μm未満であると、下地の隠蔽が不十分となる場合があり、40μmを超えると、ワキ、タレ等の塗装作業上の不具合が起こる場合がある。
【0137】
上記上塗クリヤ塗料によるクリヤ塗膜の乾燥膜厚は、一般に10〜80μm程度、特に
15〜60μm程度が好適である。乾燥膜厚が10μm未満であると、塗膜の耐侯性が不十分となる場合があり、60μmを超えると、ワキ、タレ等の塗装作業上の不具合が起こる場合がある。
【0138】
工程Aにおいて、被塗物上に、上塗ベース塗料を、硬化膜厚で約10〜50μmとなるように塗装する。塗装された上塗ベース塗料は、約100〜約180℃、好ましくは約120〜約160℃で約10〜約40分間加熱して硬化させるか、又は塗装後硬化することなく室温で数分間放置もしくは約40〜約100℃で約1〜約20分間プレヒートする。
【0139】
次いで、上塗クリヤ塗料を、膜厚が硬化膜厚で約10〜約70μmになるように塗装し、加熱することによって、硬化された複層塗膜を形成することができる。加熱は通常約100〜約180℃、特に約120〜約160℃で約10〜約40分間行うことが好ましい。
【0140】
上記工程Aにおいて、上塗ベース塗料を塗装し加熱硬化することなく、上塗クリヤ塗料を塗装し、これらの二層塗膜を同時に硬化する場合が2コート1ベーク方式であり、また、上塗ベース塗料を塗装し加熱硬化(焼付け)後、上塗クリヤ塗料を塗装し、クリヤ塗膜を硬化する場合が2コート2ベーク方式である。
【0141】
上記工程Bにおける上塗ベース塗料としては、工程Aと同様、上記上塗ベース塗料と同様のものを使用することができる。また、第1上塗クリヤ塗料としては、透明塗膜形成用塗料であればよく、例えば、上記上塗ベース塗料において顔料の殆ど又はすべてを含有していない塗料を使用することができる。そして、最上層塗膜を形成する第2上塗クリヤ塗料として、親水性又は親水化可能な塗膜を形成させることができるクリヤ塗料、例えば、上記上塗クリヤ塗料1を使用することができる。
【0142】
上記工程Bにおいては、工程Aと同様にして、被塗物上に、上塗ベース塗料を塗装し加熱硬化させてから、又は硬化させずに室温で数分間放置もしくはプレヒートしてから、上塗ベース塗膜上に、第1上塗クリヤ塗料を、膜厚が硬化膜厚で約10〜約50μmになるように塗装し、約100〜約180℃、好ましくは約120〜約160℃で約10〜約40分間加熱して硬化させるか又は硬化させずに室温で数分間放置もしくはプレヒートを行う。
【0143】
次に、第2上塗クリヤ塗料を膜厚が硬化膜厚で約10〜約50μmになるように塗装し、加熱することによって、硬化された複層塗膜を形成することができる。加熱条件は、工程Aの場合と同様とすることができる。
【0144】
上塗ベース塗料を塗装し加熱硬化することなく、第1上塗クリヤ塗料を塗装し、これを硬化することなく、第2上塗クリヤ塗料を塗装し、これらの三層塗膜を同時に硬化する場合が3コート1ベーク方式であり、上塗ベース塗料を塗装し加熱硬化することなく、第1上塗クリヤ塗料を塗装し、これらの塗膜を同時に加熱硬化し、第2上塗クリヤ塗料を塗装し、これを硬化する場合が3コート2ベーク方式であり、また、上塗ベース塗料を塗装し加熱硬化し、第1上塗クリヤ塗料を塗装し、これを硬化し、第2上塗クリヤ塗料を塗装し、これを硬化する場合が3コート3ベーク方式である。
【0145】
上記工程Cにおいて、第1上塗べース塗料としては、上記上塗ベース塗料と同様のものを使用することができる。
【0146】
工程Cにおいては、工程Aと同様にして、被塗物上に、第1上塗ベース塗料を塗装し加熱硬化させるか、又は硬化させずに室温で数分間放置もしくはプレヒートしてから、第1
上塗ベース塗膜上に、第2上塗ベース塗料を、膜厚が硬化膜厚で約10〜約50μmになるように塗装し、約100〜約180℃、好ましくは約120〜約160℃で約10〜約40分間加熱して硬化させるか、又は硬化させずに室温で数分間放置もしくはプレヒートを行う。
【0147】
次に、最上層塗膜を形成する上塗クリヤ塗料を塗装する。上塗クリヤ塗料としては親水性又は親水化可能な塗膜を形成させることができるクリヤ塗料、例えば、上記上塗クリヤ塗料1を使用することができる。
【0148】
上塗クリヤ塗料を、膜厚が硬化膜厚で約10〜約50μmになるように塗装し、加熱することによって、硬化された複層塗膜を形成することができる。加熱条件は、工程Aの場合と同様とすることができる。
【0149】
第1上塗ベース塗料を塗装し加熱硬化することなく、第2上塗ベース塗料を塗装し、これを硬化することなく、上塗クリヤ塗料を塗装し、これらの三層塗膜を同時に硬化する場合が3コート1ベーク方式であり、第1上塗ベース塗料を塗装し加熱硬化し、第2上塗ベース塗料を塗装し、これを硬化することなく、上塗クリヤ塗料を塗装し、これらの塗膜を同時に硬化する場合が3コート2ベーク方式であり、また、第1上塗ベース塗料を塗装し加熱硬化し、第2上塗ベース塗料を塗装し、これを硬化し、上塗クリヤ塗料を塗装し、これを硬化する場合が3コート3ベーク方式である。
【0150】
以下、製造例、実施例及び比較例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明する。なお、これら製造例、実施例及び比較例は単なる例示であり、本発明の範囲を限定するためのものではない。製造例、実施例及び比較例において、「部」及び「%」は、特記しない限り、質量基準による。また、塗膜の膜厚は硬化塗膜に基づくものである。
【実施例】
【0151】
シリコーン化合物(A)の製造
製造例1:メルカプト官能基及びアルコキシ基含有シリコーン化合物の製造(シリコーン化合物A1の製造例)
温度計、窒素導入管及び滴下ロートを備えた1000mlの反応容器に、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン196部(1モル)、テトラメトキシシラン152部(1モル)、メタノール320部(10モル)及びフッ化カリウム0.06部(0.001モル)を仕込み、撹拌下、室温で水28.8部(1.6モル)をゆっくり滴下した。滴下終了後、室温で3時間撹拌した後、メタノール還流下で2時間加熱撹拌した。この後、低沸分成分を減圧留去し、濾過することにより無色透明液体231部を得た。
【0152】
この無色透明液体をGPC測定した結果、平均重合度は5.4(設定重合度5.0)であり、ほぼ設定通りであった。
【0153】
アルコキシ基量をアルカリクラッキング法で定量したところ、42.0質量%(設定値42.9質量%)であり、アルコキシ基は設定通りに残存していることが確認された。
【0154】
また、メチルグリニャール試薬による活性水素を定量したところ、3.51×10−3モル/g(メルカプト基由来の活性水素量(設定値):3.64×10−3モル/g)であり、メルカプト基もほぼ設定通り導入されていると確認された。
【0155】
このようにして得たシリコーン化合物をシリコーン化合物A1とする。
【0156】
製造例2:エポキシ官能基及びアルコキシ基含有シリコーン化合物の製造(シリコーン化
合物A2の製造例)
温度計、窒素導入管及び滴下ロートを備えた2000mlの反応容器に、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン236部(1モル)、テトラメトキシシラン152部(1モル)、メタノール320g(10モル)及びフッ化カリウム0.06部(0.001モル)を仕込み、撹拌下、室温で水28.8部(1.6モル)をゆっくり滴下した。滴下終了後室温で3時間撹拌した後、メタノール還流下で2時間加熱撹拌した。この後、低沸分成分を減圧留去、濾過することにより無色透明液体266部を得た。
【0157】
この無色透明液体をGPC測定した結果、平均重合度は5.3(設定重合度5.0)であり、ほぼ設定通りであった。
【0158】
アルコキシ基量をアルカリクラッキング法で定量したところ、36.8質量%(設定値37.4質量%)であり、アルコキシ基も設定通りに残存していることが確認された。
【0159】
また、塩酸によるエポキシ開環法でエポキシ当量を測定したところ、319g/モル(設定値314g/モル)であり、エポキシ基は所定量導入されているのが確認された。
【0160】
このようにして得たシリコーン化合物をシリコーン化合物A2とする。
【0161】
親水化処理剤溶液の製造例
実施例1
製造例1で製造したシリコーン化合物A1(固形分100%)5部と、有機溶剤として、トルエン95部を均一になるように撹拌して混合し、親水化処理剤溶液1(質量固形分濃度;5%)を得た。
【0162】
実施例2〜9及び比較例1
実施例1において、シリコーン化合物及び有機溶剤を下記表1に示す種類及び量とする以外は実施例1と同様にして、親水化処理剤溶液1〜10を得た。なお、親水化処理剤溶液10は比較例である。
【0163】
【表1】

【0164】
なお、表中のMKCシリケートMS51は、メチルシリケートの縮合物(三菱化学社製
、商品名)であり、メルカプト基、エポキシ基、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、ハロアルキル基及びアミノ基から選ばれる少なくとも1種の有機官能基を含有しないシリコーン化合物である。
【0165】
また、表1の各有機溶剤の表面張力、水溶解度、蒸発速度及び溶解性パラメータ値(SP値)の特数値を下記表2に示す。
【0166】
【表2】

【0167】
表2において、水溶解度は20℃において水100gに溶解する量の最大量である。蒸発速度(90%)は、ASTM D3359に規定されている試験方法により測定される値であり、溶剤の全体の90%量が蒸発するのに要する時間である。数値が小さいほど蒸発しやすいことを示す。
【0168】
カルボキシル基含有重合体(C)の製造
製造例3
撹拌装置、温度計、冷却管及び窒素ガス導入口を備えた四つ口フラスコに、「スワゾール1000」(商品名、コスモ石油(株)製、炭化水素系有機溶剤)680部を仕込み、窒素ガス通気下で125℃に昇温した。125℃に達した後、窒素ガスの通気を止め、モノマー、溶剤及び重合開始剤(p−tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート)からなる組成の下記モノマー混合物Iを、4時間かけて滴下した。
モノマー混合物I
スチレン 500部
シクロヘキシルメタクリレート 400部
イソブチルメタクリレート 500部
無水マレイン酸 600部
プロピオン酸2−エトキシエチル 1,000部
p−tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート 100部
【0169】
次いで、125℃で窒素ガスを通気しながら30分間熟成させた後、更に、p−tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート10部及び「スワゾール1000」80部との混合物を1時間かけて滴下した。その後、60℃に冷却し、メタノール490部とトリエチルアミン4部を加え、4時間加熱還流下、ハーフエステル化反応を行なった。
【0170】
その後、残存しているメタノールを減圧下で除去し、カルボキシル基含有重合体(C−1)の溶液を得た。
【0171】
得られた重合体溶液の固形分は55質量%、また、この重合体の数平均分子量は約3,500、半酸価は160mgKOH/gであった。
【0172】
エポキシ基含有アクリル樹脂(D)の製造
製造例4
撹拌機、温度計、冷却管及び窒素ガス導入口を装備した四つ口フラスコに、キシレン410部及びn−ブタノール77部を仕込み、窒素ガス通気下で125℃に昇温した。125℃に達した後、窒素ガスの通気を止め、モノマー及び重合開始剤(2,2’−アゾビスイソブチロニトリル)からなる組成の下記モノマー混合物IIを、4時間かけて滴下した。
モノマー混合物II
グリシジルメタクリレート 432部
n−ブチルアクリレート 720部
スチレン 288部
2,2’−アゾビスイソブチロニトリル 72部
【0173】
次いで、125℃で窒素ガスを通気しながら30分間熟成したあと、更にキシレン90部、n−ブタノール40部及び2,2’−アゾビスイソブチロニトリル14.4部の混合物を2時間かけて滴下して、その後2時間熟成して、エポキシ基含有アクリル樹脂(D−1)の溶液を得た。得られたエポキシ基含有アクリル樹脂溶液の質量固形分濃度は70%、エポキシ基含有アクリル樹脂のエポキシ基含有量は2.11ミリモル/g、数平均分子量は2000であった。
【0174】
上塗クリヤ塗料の製造
製造例5
下記に示す配合(配合量は樹脂固形分を表わす)で各成分を仕込み、回転翼式攪拌機を用いて均一となるように撹拌して混合することにより上塗クリヤ塗料1を得た。
カルボキシル基含有重合体(C−1) (製造例3のもの) 50部
エポキシ基含有アクリル樹脂(D−1)(製造例4のもの) 50部
シリコーン化合物A1 (製造例1のもの) 5部
触媒(*1) 2部
UV1164(*2) 2部
HALS292(*3) 2部
BYK−300(*4) 0.2部
上記における注(*1)〜(*4)は次の意味を有する。
(*1)触媒: テトラブチルアンモニウムブロマイドとモノブチルリン酸の当量配合物。
(*2)UV1164: 商品名、チバガイギー(株)製、紫外線吸収剤、2,4−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−6−(2−ヒドロキシ−4−イソオクチルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン)。
(*3)HALS292: 商品名、チバガイギー(株)製、光安定剤、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケートとメチル(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケートとの混合物)。
(*4)BYK−300: 商品名、ビックケミー(株)製、表面調整剤、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン)。
【0175】
塗膜形成方法
実施例10〜18及び比較例2〜3
(1) 製造例5で得られた上塗クリヤ塗料1に、「スワゾール1000」を加えて、フ
ォードカップNo.#4を用いて測定して、20℃で25秒の粘度に調整した。
(2) リン酸亜鉛化成処理を施した厚さ0.8mmのダル鋼板上に、熱硬化性エポキシ樹脂系カチオン電着塗料(商品名「エレクロンGT−10」、関西ペイント(株)製)を膜厚20μmとなるように電着塗装し、170℃で30分間加熱して硬化させた。次に、該電着塗膜上に、ポリエステル樹脂・メラミン樹脂系自動車用中塗塗料(商品名「アミラックTP−65−2」、白塗色、関西ペイント(株)製)を膜厚35μmとなるようにエアスプレー塗装し、140℃で30分間加熱硬化させた。この電着塗膜及び中塗り塗膜が形成された鋼板を被塗物として用いた。
(3) 上記(2)で得た被塗物上に、アクリル樹脂・メラミン樹脂系自動車用上塗ベース塗料(商品名「水性メタリックベースコートWBC713T#040」、白塗色、関西ペイント(株)製)を膜厚15μmとなるようにエアスプレー塗装し、室温で5分間放置してから、80℃で10分間プレヒートを行った後、この未硬化塗膜層上に、上記(1)で粘度調整した上塗クリヤ塗料1を膜厚35μmとなるように回転霧化塗装し、室温で10分間放置してから、140℃で20分間加熱してこの二層塗膜を一緒に硬化させた。かくして、被塗物上に、2コート1ベーク方式により、ベースコート及びクリヤコートからなる複層上塗塗膜を形成させた塗装試験板をそれぞれ作製した。
(4) 次に、クリヤコート塗面の一部を3M社製5989ウルトラフィニッシュ(商品名、超微粒子コンパウンド、研磨剤)を用い、サンダーでミガキ補修を行った。研磨範囲は直径約100mmの円状で、研磨は、ゴミ付着部に対し集中的に20秒間行った。さらに、この研磨部分を水道水で軽く洗い流し、仕上げに純水で洗浄を行った。
(5) 続いて、この研磨部分に実施例1〜9及び比較例1で得られた親水化処理剤溶液1〜10及びトヨタ純正カルナバオール(商品名、トヨタ自動車(株)、カルナバワックス)(注:比較例3)を研磨部分にネルを用いて、適量塗りこみ、均一な塗膜となるように拭き取ることによりワイプ塗装を行なった。この塗装はクリヤコート塗膜が研磨により除去された部分を充填するように行い、研磨部分よりも一回りほど広い面積に塗装することが望ましい。上記ワイプ塗装後、そのまま常温で放置し、自然乾燥させた。
【0176】
以上のようにして調製された各塗装試験板を、以下に示す評価方法により評価した。その結果を下記表3に示す。
【0177】
【表3】

【0178】
評価方法
塗装作業性: 親水化処理剤溶液のワイプ塗装における作業性を以下の基準により評価した。
◎:拭き取り作業が行ないやすくきわめて良好。
○:ほぼ問題なく良好。
塗りムラ: 親水化処理剤溶液のワイプ塗装部の塗りムラを以下の基準により評価した。
◎:ムラの発生がなくきわめて良好。
○:ほぼ問題なく良好。
塗面平滑性: 親水化処理剤溶液ワイプ塗装部を目視で観察し、以下の基準により評価した。
○:ユズ肌、凸凹等がなく平滑性が良好。
×:ユズ肌、凸凹等が認められ平滑性が劣る。
20°光沢: 親水化処理剤溶液ワイプ塗装部の20度鏡面反射率(20°光沢値)を、ハンディ光沢計(商品名「HG−268」、スガ試験機(株)製)を用いて測定した。
以下の評価については、関西ペイント(株)開発センター(神奈川県平塚市)に南面向で、地面に対し30度の角度に塗装試験板を2ヶ月間設置し、屋外暴露試験を行ない、水洗い等の洗浄を行なうことなく評価を行なった。
外観(汚れ): 親水化処理剤溶液のワイプ塗装部の汚れを初期塗膜との明度差(ΔL)により評価した。ΔLは下記式で求めた。
ΔL=(初期塗膜のL値)−(屋外暴露試験後のL値)
L値の測定は、三刺激値直読式色彩計(商品名「CR400」、コニカミノルタ(株)製)を用いて、光源D65、視野2°、拡散照明垂直受光(d/0)の条件下で行なった。このL値は、CIE 1976 L表色系に基づく値である。
塗膜の汚染度の評価基準は次の通りである。ΔL値が小さいほど外観(汚れ)は良好である。
○:ΔL<1、
△:1≦ΔL<2、
×:2≦ΔL。
水接触角(度): 親水化処理剤溶液のワイプ塗装部の水接触角を測定した。
外観(汚れ)差: 親水化処理剤溶液のワイプ塗装部(研磨部)と未研磨部の外観差(汚れ具合の差)を目視により、以下の基準で評価した。
○:両部の汚れ具合に差は認められず、良好である。
△:研磨部の汚れが未研磨部に比して進んでおり、両部の汚れ具合に差が認められ
る。
×:研磨部の汚れが未研磨部に比して非常に進んでおり、両部の汚れ具合に著しい
差が認められる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
親水性又は親水化可能な塗膜に、メルカプト基、エポキシ基、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、ハロアルキル基及びアミノ基から選ばれる少なくとも1種の有機官能基を含有するシリコーン化合物(A)及び有機溶剤(B)を含有する親水化処理剤溶液を塗布することを特徴とする塗膜形成方法。
【請求項2】
シリコーン化合物(A)が、メルカプト基、エポキシ基、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、ハロアルキル基及びアミノ基から選ばれる少なくとも1種の有機官能基を含有するアルコキシシラン化合物(a)100重量部、及び(2)テトラアルコキシシラン化合物(b)20〜2,000重量部の混合物の部分共加水分解縮合物である請求項1に記載の塗膜形成方法。
【請求項3】
親水性又は親水化可能な塗膜がシリコーン化合物(A)を含有する塗料組成物から形成される塗膜である請求項1又は2に記載の塗膜形成方法。
【請求項4】
親水性又は親水化可能な塗膜がカルボキシル基含有重合体(C)、エポキシ基含有アクリル樹脂(D)及びシリコーン化合物(A)を含有する塗料組成物から形成される塗膜である請求項1〜3のいずれか1項に記載の塗膜形成方法。
【請求項5】
メルカプト基、エポキシ基、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、ハロアルキル基及びアミノ基から選ばれる少なくとも1種の有機官能基を含有するシリコーン化合物(A)及び有機溶剤(B)を含有する、親水性又は親水化可能な塗膜上に塗布して該塗膜上に親水化処理塗膜を形成するための親水化処理剤溶液。

【公開番号】特開2011−212568(P2011−212568A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−82244(P2010−82244)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000001409)関西ペイント株式会社 (815)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】