説明

塗膜形成方法

【課題】 塗膜外観、塗膜性能に優れた複合塗膜を提供する。
【解決手段】 金属素材にカチオン型電着塗装を行った後、粉体樹脂組成物を水溶媒中に分散させてなる体積平均粒径が20μm以下、最大体積粒径が40μm以下の粉体スラリー樹脂組成物を塗装することを特徴とする塗膜形成方法。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は塗膜外観,貯蔵性,塗膜性能に優れた塗膜形成方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、有機溶剤削減、安全性等の面から、水溶性樹脂を塗料中の主ビヒクルとした水性塗料が、有機溶剤系塗料に置換わる動きが高まっている。しかしながら、これらの水性塗料は樹脂を水媒体中に溶解させる為に、多くの親水基を持たせるなどにより、その塗膜は耐水性などの性能面で劣るし、高揮発分濃度に調整することも難しいことから、塗装時にタレやすく作業性面に問題があるし、また、貯蔵劣化も起こしやすい。
【0003】一方、溶液成分を含まない粉体塗料は環境対応型塗料として近年特に脚光を浴びているが、溶融粘度が高いことから溶液型塗料塗膜と比較して塗膜外観が劣るといった問題がある。そこで、粉体塗料の粒径を細かくすることにより、塗膜外観を向上させる方法が見出されているが、塗装作業性等に問題がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は塗膜外観,貯蔵性,塗膜性能に優れた低公害型塗膜を提供することを課題としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者は、電着塗膜表面に粉体スラリー樹脂組成物を塗装した塗膜形成方法が、塗膜外観,貯蔵性,塗膜性能に優れた低公害型塗膜を提供できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】即ち、本発明は、金属素材にカチオン型電着塗装を行った後、粉体樹脂組成物を水溶媒中に分散させてなる体積平均粒径が20μm以下、最大体積粒径が40μm以下の粉体スラリー樹脂組成物を塗装することを特徴とする塗膜形成方法に関する。
【0007】
【発明の実施の形態】以下、本発明について詳細に説明する。本発明で使用するカチオン型電着塗装は従来から公知のカチオン電着塗料組成物を従来から公知のカチオン電着塗装方法により塗膜を形成することができる。
【0008】カチオン電着塗料組成物としては、特に制限なく使用することができる。カチオン電着塗料組成物の基体樹脂として例えば、エポキシ樹脂を主成分とする電着塗料組成物、ビニル共重合体を主成分とするカチオン電着塗料組成物等を挙げることができる。ビニル系共重合体を主成分とする電着塗料組成物には、他の電着用樹脂として従来公知のアミン付加エポキシ樹脂を、少量併用することが防食性の点から望ましい。
【0009】エポキシ樹脂を主成分とするカチオン電着塗料組成物は、エポキシ樹脂としては、アミン付加エポキシ樹脂が挙げられ、該アミン付加エポキシ樹脂は、電着塗料組成物において通常使用されているポリアミン樹脂、例えば、(i)ポリエポキシド化合物と1級モノ−及びポリアミン、2級モノ−及びポリアミン又は1、2級混合ポリアミンとの付加物(例えば米国特許第3,984,299号明細書参照);(ii)ポリエポキシド化合物とケチミン化された1級アミノ基を有する2級モノ−及びポリアミンとの付加物(例えば米国特許第4,017,438号明細書参照);(iii) ポリエポキシド化合物とケチミン化された1級アミノ基を有するヒドロキシ化合物とのエーテル化により得られる反応物(例えば特開昭59−43013号公報参照)などがある。
【0010】上記、ポリアミン樹脂の製造に使用されるポリエポキシド化合物は、エポキシ基を1分子中に2個以上有する化合物であり、一般に少なくとも200、好ましくは400〜4,000、さらに好ましくは800〜2,000の範囲内の数平均分子量を有するものが適しており、特にポリフェノール化合物とエピクロルヒドリンとの反応によって得られるものが好ましい。該ポリエポキシド化合物の形成のために用いうるポリフェノール化合物としては、例えばビス(4−ヒドロキシフェニル)−2,2−プロパン、4,4′−ジヒドロキシベンゾフェノン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−エタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−イソブタン、ビス(4−ヒドロキシ−tert−ブチル−フェニル)−2,2−プロパン、ビス(2−ヒドロキシナブチル)メタン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、ビス(2,4−ジヒドロキシフェニル)メタン、テトラ(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,2,2−エタン、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン、フェノールノボラック、クレゾールノボラック等が挙げられる。
【0011】該、ポリエポキシド化合物はポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリアシドアミン、ポリカルボン酸、ポリイソシアネート化合物などと一部反応させたものであってもよく、さらにまた、ε−カプロラクトン、アクリルモノマーなどをグラフト重合させたものであってもよい。
【0012】例えば、ビニル系共重合体を主成分とするカチオン電着塗料組成物において、ビニル系共重合体としては、従来公知のものが使用でき、例えばアミノ基含有モノマーと水酸基含有モノマー、及びその他のビニルモノマーとを共重合してなるものが挙げられる。
【0013】アミノ基含有モノマーとしては、アミノ基含有アクリル系モノマーが好ましく、例えばアミノエチル(メタ)アクリレート、N−tert−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノブチル(メタ)アクリレートなどのアミノアルキルアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステル類;N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドなどのアミノアルキルアクリルアミド又はメタクリルアミド類が挙げられる。これらはそれぞれ単独で又は2種以上組合せて使用することができる。かかるアミノ基含有モノマーは全モノマー量の3〜20重量%、好ましくは5〜18重量%の範囲で使用されるのが適当である。
【0014】上記、水酸基含有モノマーとしては、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどのアクリル酸又はメタクリル酸のC1 〜C8 のヒドロキシアルキルエステルが好ましく使用できる。
【0015】上記、その他のビニルモノマーとしては、アミノ基含有モノマーや水酸基含有モノマーと共重合可能なモノマーであれば特に制限はなく、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、 iso−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートなどのアクリル酸又はメタクリル酸のC1 〜C24のアルキル又はシクロアルキルエステル;スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル、(メタ)アクリロニトリル、ビニルプロピオネート、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、ベオバモノマー(シェル化学製品)などのビニルモノマーが挙げられ、それぞれ単独で又は2種以上組合せて使用することができる。これらのモノマーは目的とするカチオン電着塗料組成物の性状、及びそれにより形成される塗膜の要求性能に応じて適宜選択できる。以上のようなモノマー類からなる共重合体の製造は、従来公知の方法で行うことができ、一般には溶液重合法に従って行われる。
【0016】また、ビニル系共重合体を主成分とするカチオン電着塗料組成物としては、グリシジル基含有モノマーと水酸基含有モノマー、及びこれらと共重合可能でグリシジル基と反応しないその他のビニルモノマーとの共重合体にアミンを付加してなるものも挙げられる。
【0017】上記、グリシジル基含有モノマーとしては、グリシジル(メタ)アクリレート、ビニルシクロヘキセンモノエポキシド、N−グリシジルアクリルアミド、アリルグリシジルエーテルなどが挙げられる。かかるグリシジル基含有モノマーは、全モノマー量の5〜50重量%、好ましくは10〜40重量%の範囲で使用されるのが適当である。水酸基含有モノマー及びこれらと共重合可能でグリシジル基と反応しないその他のビニルモノマーは、前述のものが同様に使用できる。またかかるモノマー類からなる共重合体の製造も、従来公知の方法で行うことができる。
【0018】上記のようにして得られるグリシジル基含有共重合体とアミンとの付加反応は、従来公知の方法に従って行うことができ、例えば該共重合体溶液に第2級アミンを加え約50〜120℃の温度で約1〜20時間反応せしめる方法などが挙げられる。使用されるアミンとしては、プロピルアミン、ブチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミンなどのアルキルアミン類;ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、N−メチルエタノールアミンなどのアルカノールアミン類;ピペリジン、モルホリン、N−メチルピペラジンなどが挙げられる。かかるアミンの使用量は通常グリシジル基1モル当たり約0.1〜1モルの範囲が適当である。
【0019】以上の如くして得られるカチオン電着性ビニル系共重合体の水酸基価は、特に制限されるものではないが、通常30〜200mgKOH/g、好ましくは50〜150mgKOH/gの範囲が適当である。該水酸基価が30未満では得られる塗膜の硬化性が劣りやすく、また200mgKOH/gを越えると耐候性や防食性が劣る傾向がみられる。また該カチオン電着性ビニル系共重合体の分子量は、通常約5,000〜100,000、好ましくは10,000〜50,000の範囲が適当である。
【0020】次に硬化剤として用いるブロック化ポリイソシアネート化合物は、脂肪族及び/又は脂環式のポリイソシアネート化合物をブロック剤でブロックした化合物である。ポリイソシアネート化合物が脂肪族及び/又は脂環式以外のポリイソシアネート化合物、例えば芳香族ポリイソシアネート化合物の場合には塗膜の耐候性の劣化等を招くので好ましくない。脂肪族及び/又は脂環式のポリイソシアネート化合物としては、例えば、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート等の脂肪族、脂環族のジイソシアネート化合物、またはそれらの2量体、3量体、及びこれらのイソシアネート化合物の過剰量にエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、ヒマシ油等の低分子活性水素含有化合物を反応させて得られる末端イソシアネート含有化合物が挙げられる。
【0021】ブロック化剤はポリイソシアネート化合物のイソシアネート基に付加してブロックするものであり、そして付加によって生成するブロックポリイソシアネート化合物は常温において安定で且つ約100〜200℃、好ましくは120〜150℃に加熱した際、ブロック剤を解離して遊離のイソシアネート基を再生しうるものであることが望ましい。
【0022】そのようなブロック化剤として、例えば、ε−カプロラクタム、γ−ブチロラクタムなどのラクタム系化合物;メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシムなどのオキシム系化合物;フェノール、パラ−t−ブチルフェノール、クレゾールなどのフェノール系化合物;n−ブタノール、2−エチルヘキサノールなどの脂肪族アルコール類;フェニルカルビノール、メチルフェニルカルビノールなどの芳香族アルキルアルコール類;エチレングリコールモノブチルエーテルなどのエーテルアルコール系化合物等を挙げることができる。
【0023】このブロック剤の配合量としては、イソシアネートのNCO基に対して1:1〜1:1.3で反応させることが好ましい。比率が1.3を越えるとブロック剤が残存して塗膜の防食性を低下させ、1.0未満ではNCO基が残存して塗料組成物の安定性を損なうので好ましくない。
【0024】また、上記架橋剤を使用しなくても硬化させることが可能な自己架橋タイプのアミン付加エポキシ樹脂を使用することができ、例えばポリエポキシ物質にβ−ヒドロキシアルキルカルバメート基を導入した樹脂(例えば、特開昭59−155470号);エステル交換反応によって硬化しうるタイプの樹脂(例えば、特開昭55−80436号);基体樹脂中に(ブロック化)イソシアネート基を導入した樹脂などを用いることもできる。
【0025】基体樹脂の中和、水分散化は通常、硬化剤、界面活性剤、表面調整剤(アクリル樹脂、フッ素樹脂、シリコン樹脂など)、硬化触媒(例えば、錫、亜鉛、鉛、ビスマスなどの金属の塩)やその他の添加剤などを加えた後、該基体樹脂を脂肪族カルボン酸、例えば、グリコール酸、グリセリン酸、乳酸、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロール酪酸、ジメチロール吉草酸、酒石酸、リンゴ酸、ヒドロキシマロン酸、ジヒドロキシコハク酸、トリヒドロキシコハク酸、メチルマロン酸、酢酸、ギ酸などの水溶性有機酸によって行われる。また中和剤としてギ酸を用いると、つきまわり性に優れるので好ましい。
【0026】上記、カチオン電着塗料組成物は、適宜脱イオン水で希釈して固形分濃度が約5〜25重量%、pHが5.5〜8の範囲内になるように調整する。カチオン電着塗料組成物(1)を用いて被塗物に電着塗装を行う方法及び装置としては、従来から電着塗装において使用されている、既知の方法及び装置を使用することができる。
【0027】その際、電着塗装条件は特に制限されるものではないが、一般的には、浴温は、15〜35℃(好ましくは20〜30℃)、電圧:100〜400V(好ましくは200〜300V)、通電時間30秒〜10分が望ましい。
【0028】カチオン電着塗料組成物による電着塗膜の膜厚は目的とする性能に応じて適宜選定すればよいが、5〜60μm 、好ましくは10〜40μm の範囲であることがよい。カチオン電着塗料組成物として、基体樹脂にエポキシ樹脂を主成分とするカチオン電着塗料組成物を使用することによって防食性の良好な塗膜を得ることができる。
【0029】本発明において、上記カチオン電着塗装後に粉体スラリー樹脂組成物が塗装されるが、その塗装方法は、■カチオン電着塗装後、水洗もしくは未水洗後、電着塗膜の表面を乾燥させて未硬化電着塗膜を形成させた後、次いで粉体スラリー樹脂組成物をスプレーなどの塗装手段により塗装し、次いで両塗膜が硬化するように加熱を行うことにより塗膜を形成させる、すなわち2コート1ベーク方式で塗膜を形成させる方法、■カチオン電着塗装後、水洗もしくは未水洗後、電着塗膜を加熱硬化させた後、次いで粉体スラリー樹脂組成物をスプレーなどの塗装手段により塗装し、次いで粉体スラリ塗膜が硬化するように加熱を行うことにより塗膜を形成させる、すなわち2コート2ベーク方式で塗膜を形成させる方法が好ましい。
【0030】本発明で使用する粉体スラリー樹脂組成物は、粉体樹脂塗料組成物を水溶媒中に分散させたものでその体積平均粒径が0.1μm〜30μmでかつ最大体積粒径が50μm以下で、好ましくは3μm〜20μmの間に平均体積粒径があるのが望ましい。0.1μm未満では貯蔵中に凝集を起こし易く、30μmを超えると沈降しハードケークを生じ易い。
【0031】また、前記組成物の粘度が300mPa・s〜3500mPa・s、好ましくは500mPa・s〜2500mPa・sの間に有ることが望ましい。粘度が300mPa・sより低くなると粉体スラリー粒子の沈降が起こりやすく、3500mPa・sより高くなるとスラリーの流動性が無くなり扱い難くなる。さらに、該スラリーの粉体含有量が30〜70重量%で、好ましくは45〜60重量%ある。45重量%未満になると水媒体中での湿式粉砕の効率が悪く細かく水分散ができ難いし、60重量%を超えるると分散剤とのヌレが低下し、これも水分散がし難くなる。この時、分散剤を増量させることも可能であるが、塗膜の耐水性能を低下させる。
【0032】本発明で用いる粉体スラリー樹脂組成物の樹脂成分としては、アルキド樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ウレタン樹脂、ブロックイソシアネート樹脂、フッ素樹脂、シリコン樹脂、アミド樹脂を単独で又はそれらを混合して、或いはアロイ化して使用することができる。また、これらの樹脂を基体樹脂とし、このものに架橋剤となるメラミン樹脂、ブロックポリイソシアネート、プリミド化合物、ポリカルボン酸、酸無水物、ポリエポキシド、ポリアミド等とを組み合わせて使用することにより、塗膜を硬化させて耐久性を向上させることができる。
【0033】上記樹脂必要に応じて着色顔料を添加することができる。着色顔料としては、有機顔料、無機顔料等が挙げられる。有機顔料としては、例えばアゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、縮合多環系顔料、ニトロソ系顔料等が挙げられ、無機顔料としては、例えば酸化物系顔料、フタロシアニン化物、クロム酸塩系顔料、炭素系顔料、マイカ系顔料、金属粉末顔料等が挙げられる。これらの顔料は、顔料分散剤によって被覆されてもよい。
【0034】その他、添加剤として、必要に応じて充填剤、防錆剤、紫外線安定剤、紫外線吸収剤、流動調整剤、ハジキ防止剤等が配合される。
【0035】スラリー樹脂組成物の製造は樹脂粒子を水媒体に分散させることで容易に達成され、その大まかな手法は次の通りである。樹脂粒子を水媒体に湿潤、分散させ且つ塗料として安定に存在させるために、必要量の界面活性剤と増粘安定剤を予め水媒体に均一に溶解させる。その後、一次粉砕した樹脂粒子を加え、攪拌して均一にする。この時、樹脂粒子と共に水媒体中に混入した気泡を除去することにより、次の二次分散、粉砕においてスラリー塗料の粘度を容易にアップさせることができ、またスラリー塗料化終了後の気泡の除去の操作が容易になる。
【0036】上記の界面活性剤としては、通常のアニオン型界面活性剤や、カチオン型界面活性剤、あるいはノニオン型界面活性剤を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。しかし添加量については、塗膜の耐水性等への悪影響が無いように3%以下の添加量が好ましい。
【0037】増粘安定剤を添加する目的は、スラリー樹脂組成物中での樹脂粒子の安定性が保たれるようにすること、塗布した時にスラリー樹脂組成物が被塗装物表面にある程度の厚さまで流れ落ちないようにすること、塗装作業時にスラリー樹脂組成物が塗装機にスムースに供給されるようにすることである。使用しうる増粘安定剤は、水媒体中で上記の目的を達成し得る機能を発揮する物で有ればいかなるものでもよく、例えば、セルロース誘導体、ポリカルボン酸の中和樹脂、ノニオン系ポリエーテル高分子化合物、ベントナイト鉱物粉等が使用しうる。これら増粘安定剤の添加量については、塗膜の機能に及ぼす影響の少ないことが好ましく、通常は10重量%以下、好ましくは5重量%以下の量で使用される。
【0038】界面活性剤の添加方法としては、通常、最初に全量を水媒体中に添加した後、樹脂粒子を加える方法が好ましい。また、増粘安定剤の添加方法としては樹脂粒子を二次分散、粉砕した後に、更には、気泡を除去した後に加えることが好ましい。これは、原色スラリー塗料の作製手順として、スラリー塗料の粘度が低い状態で分散から気泡除去の操作までの一連の作業を実施し、最後の調整時に増粘安定剤を加えて安定化する方法が、作業も実施し易いし、塗料も安定である。
【0039】スラリー樹脂組成物の製造は、水媒体中で直接湿式粉砕して塗料化するので、また、必要によっては、塗膜構成成分となる諸原料中に予め水中分散用の水系界面活性剤や水系増粘剤の一部または全部が添加されているので、塗料樹脂粒子が容易に水媒体中に湿潤し、分散、安定化されることにある。この結果、従来の相転換法で作成されるスラリー塗料や、粉体塗料を更に微粉砕して得られる微粒子を水性媒体中に湿潤させて得られる水性分散塗料に比べ、水性湿潤剤の必要量が少なく、かつ粒子径の小さい塗料樹脂粒子の水性分散塗料が容易に調製できる。
【0040】スラリー樹脂組成物の塗装方法については、通常の液体塗料による塗装に採用されている通常の塗装方法、例えばエアースプレー塗装、静電塗装、ディップ塗装、刷毛塗り塗装が採用できる。
【0041】スラリー樹脂組成物の塗装膜厚は、目的とする性能に応じて適宜選定すればよいが、30〜200μm 、好ましくは50〜150μm の範囲が好ましい。
【0042】
【実施例】以下本発明の実施例を示すが、本発明はこれらの実施例によって制限されるものではない。また実施例中の部、%はすべて重量基準によるものとする。以下、本発明について実施例により詳細に説明する。
【0043】粉体スラリー樹脂組成物の製造例軟化温度110℃、水酸基価30のポリエステル樹脂60部、NCO=15%のε−カプロラクタムブロックイソホロンジイソシアネ−ト化合物9部、チタン顔料30部、表面調整剤0.9部、硬化促進剤0.1部を上記配合物をドライブレンド(ヘンシェルミキサ−)、溶融混合分散(2軸エクストル−ダ−混練機)、冷却、粗粉砕、微粉砕(アトマイザ−)、濾過を行って熱硬化性ポリエステル粉体塗料を製造した。他方、ステンレス製塗料タンクに水100部を取り、HLB=12のノニオン系界面活性剤0.2部、消泡剤0.5部、防腐剤0.2を添加し、溶解して水媒体を準備した。ここに上記粉体塗料100部を攪拌しながら添加した。これにガラスビーズメジアを加え、これをバッチ式サンドミルで30℃に保ちながら、体積平均粒径が5μmとなるまで湿式分散を行ない、ろ過を経て粉体スラリー樹脂組成物を得た。この粉体スラリー組成物100部に、増粘剤を1部添加し、該粉体スラリー樹脂組成物を得た。この得られた粉体スラリーの体積平均粒径は7.3μm最大粒径は22.3μmであった。また、20℃にて粘度を測定(B型粘度計:60rpm)したところ1980mPa・sであった。
【0044】カチオン型電着塗料の製造例顔料ペーストAの製造例固形分85%の3級アミン酸中和型分散樹脂5.88部(固形分5部)、10%酢酸1.4部を配合した後、さらに脱イオン水を加え混合攪拌した。ついでこの中に、チタン白14部、カーボンブラック0.3部、精製クレー8部、ケイ酸鉛2部、ジオクチルスズオキサイド3部を配合し、ボールミルにて40時間分散を行い50%の顔料ペーストAを得た。
アミン付加エポキシ樹脂(a)の製造例エピコート828EL(油化シェル社製、商品名、エポキシ樹脂)1010g、ビスフェノールA390g、ジメチルベンジルアミノ0.2gを加え、130℃でエポキシ当量800になるまで反応させた。次にε−カプロラクトン260g、テトラブトキシチタン0.03gを加え、170℃に昇温し、この温度を保ちながら経時でサンプリングを行い、赤外吸収スペクトル測定において未反応のε−カプロラクトン量を追跡し、反応率が98%以上になった時点で120℃に温度を下げた。次にジエタノールアミン160g、ジエチレントリアミンのメチルイソブチルジケチミン化物65gを加え、120℃で4時間反応させ、ブチルセロソルブ420gを加え、アミン価58、樹脂固形分80%のアミン付加エポキシ樹脂(a)を得た。
【0045】ブロック化ポリイソシアネート化合物(b)の製造例ジフェニルメタンジイソシアネート250g、メチルイソブチルケトン44gを加え70℃に昇温した。メチルアセトアミド146gをゆっくり加えた後、90℃に昇温した。この温度を保ちながら、経時でサンプリングし赤外吸収スペクトル測定にて未反応のイソシアネートの吸収がなくなったことを確認することにより、固形分90%のブロック化ポリイソシアネート化合物を得た。
クリアーエマルションIの製造例上記、アミン付加エポキシ樹脂(a)を87.5部、ブロック化ポリイソシアネート化合物b(フェニレンジイソシアネートのアルコールブロック化物)を33.3部、LSN−105(三共有機合成社製、商品名、ジブチル錫ジベンゾエート、固形分40%)2.5部、10%ギ酸8.2部を配合し、均一に攪拌した後、脱イオン水184.1部を強く攪拌しながら約15分かけて滴下し、固形分32.0%のカチオン電着用クリアーエマルションIを得た。
【0046】カチオン電着塗料1の製造作成した32%クリアーエマルションI 318.5部、50%の顔料ペーストA 70部及び純水296部を加え、固形分20%のカチオン電着塗料1を得た。
【0047】実施例1化成処理パルボンド#3020(日本パーカーライジング社製、商品名、りん酸亜鉛化成処理剤)にて処理した冷延鋼板を被塗物とし、カチオン電着塗料1を浴温28℃、塗装電圧250Vで膜厚10μmになるように塗装した。次いで、上記で得られた電着塗膜を有する被塗物を水洗し、余分に付着したカチオン電着塗料1を除去した。更に得られた電着塗膜を有する被塗物に、粉体スラリー塗料組成物1を用いスプレーにて塗装した。セッティング後、180℃−20分間電気熱風乾燥機にて硬化乾燥し、上塗り塗装膜厚35μmを得た。塗膜光沢は98(鏡面反射率60°測定)、平滑性良好であった。また、上記のようにして作成した、塗装板を40℃の高温水槽中に240時間の浸漬試験、沸騰水に4時間浸漬の浸漬試験を行なった後、1mm碁盤目試験を行ない、セロテープ(登録商標)ではくり試験を行なったところ、良好な密着性を示した。また、耐塩水噴霧試験(JIS Z−2371に従って試験し、カット(線状切きず)部からのクリープ巾片側2.0mm以内及びカット部以外の塗膜のフクレが8F(ASTM)以下のとき合格とする。)も良好な結果を示した。
【0048】実施例2実施例1に記載の電着塗膜を有する被塗物を水洗し、余分に付着したカチオン電着塗料1を除去し、得られた電着塗膜を有する被塗物に、粉体スラリー塗料組成物1を用いスプレーにて塗装させた方法において、余分に付着したカチオン電着塗料1を除去し、次いでが塗膜を140℃で20分間加熱硬化させた後に粉体スラリー塗料組成物1を用いスプレーにて塗装させた方法に代えた以外は実施例1と同様にして塗膜を作成した。塗膜光沢は95(鏡面反射率60°測定)、平滑性良好であった。また、上記のようにして作成した、塗膜を上記と同様にして塗膜試験を行った結果、40℃の高温水槽中に240時間の浸漬試験、沸騰水に4時間浸漬の浸漬試験を行なった後、1mm碁盤目試験を行ない、セロテープではくり試験を行なったところ、密着性は良好で、耐塩水噴霧試験は合格あった。
【0049】比較例1実施例1で示した、粉体塗料を前記と同様に、水媒体中で湿式粉砕・分散を行ない、体積平均粒径23μmの同組成の粉体スラリー樹脂組成物を得た。次いで実施例1と同様にして塗膜を作成した。塗膜光沢は80(鏡面反射率60°測定)で劣り、また平滑性も劣っていた。また、上記のようにして作成した、塗膜を上記と同様にして塗膜試験を行った結果、40℃の高温水槽中に240時間の浸漬試験、沸騰水に4時間浸漬の浸漬試験を行なった後、1mm碁盤目試験を行ない、セロテープではくり試験を行なったところ、密着性は少し劣っていた、また耐塩水噴霧試験は不合格あった。
【0050】
【発明の効果】本発明は上記した構成を有する水性複合塗料であることから低公害であり、かつ形成される複合塗膜は有機溶剤と同様の塗膜外観,塗膜性能に優れた低公害型焼付塗膜を得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】金属素材にカチオン型電着塗装を行った後、粉体樹脂組成物を水溶媒中に分散させてなる体積平均粒径が20μm以下、最大体積粒径が40μm以下の粉体スラリー樹脂組成物を塗装することを特徴とする塗膜形成方法。
【請求項2】粉体スラリー樹脂組成物が、粘度300mPa・s〜3500mPa・sの範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の塗膜形成方法。
【請求項3】粉体スラリー樹脂組成物が、固形分30重量%〜70重量%であることを特徴とする請求項1又は2に記載の塗膜形成方法。
【請求項4】粉体樹脂組成物において、該粉体樹脂組成物を構成する樹脂成分がアルキド樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ウレタン樹脂、ブロックイソシアネート樹脂、フッ素樹脂、シリコン樹脂、アミド樹脂から選ばれる少なくとも1種の樹脂である請求項1に記載の塗膜形成方法。

【公開番号】特開2002−282772(P2002−282772A)
【公開日】平成14年10月2日(2002.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−90945(P2001−90945)
【出願日】平成13年3月27日(2001.3.27)
【出願人】(000001409)関西ペイント株式会社 (815)
【Fターム(参考)】