説明

塗膜形成用ウレタン樹脂組成物および木質板

【課題】優れた触感を有するとともに、意匠性、耐汚染性も有する塗膜形成用ウレタン樹脂組成物とそれを用いた木質板を提供する。
【解決手段】木質板に塗膜を形成するための塗膜形成用ウレタン樹脂組成物であって、下記式(1):
【化1】


(式中、nは1〜20の整数を示す。)で表されるジメチルシリコーン基と水酸基とを側鎖に有するアクリル樹脂、イソシアネート樹脂、および球状シリカを含有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗膜形成用ウレタン樹脂組成物とそれを用いた木質板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、床材や階段踏み板等のように汚れや傷がつき易い木質板の表面を保護し、耐汚染性を向上させるために、一般にウレタン樹脂組成物や光硬化性樹脂組成物による塗膜で被覆することが行われている。
【0003】
一方、木質板は、カウンター、手摺、ドア、収納扉等の手が接触する部位や、床材や階段踏み板等の足が接触する部位等に用いられるため、人間の皮膚が直接接触する機会が多い。そのため、近年では耐汚染性に加えて、素材感や風合い感、そして触感(さらっと感、滑り性、ソフト感)に配慮した上質感を有する木質板が求められている。
【0004】
従来、触感に優れた塗膜を得る方法として、弾性を有するポリウレタン樹脂微粉末、吸水性を有する皮革粉末、コラーゲン粉末、キチン粉末、キトサン粉末、ケラチン粉末、シルク粉末等の有機天然物粉末を配合した樹脂組成物を用いることが提案されている(特許文献1参照)。また、バインダー樹脂として軟質でゴム弾性を有するものを用いた樹脂組成物や、アクリル樹脂ビーズを主剤塗料に配合した軟質系ウレタン樹脂組成物が提案されている(特許文献2、3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−199483号公報
【特許文献2】特開2003−212947号公報
【特許文献3】特開平9−253577号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記した従来の方法では、触感に優れた塗膜は得られるものの、耐汚染性が必ずしも十分ではなく、また意匠性と耐汚染性の両方が要求される木質板には適当ではなかった。すなわち、優れた触感を有するとともに、意匠性および木質板に必要なレベルの耐汚染性も有する木質板とすることは困難であった。
【0007】
本発明は、以上の通りの事情に鑑みてなされたものであり、優れた触感を有するとともに、意匠性、耐汚染性も有する塗膜形成用ウレタン樹脂組成物とそれを用いた木質板を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するために、以下のことを特徴としている。
【0009】
第1に、本発明の塗膜形成用ウレタン樹脂組成物は、木質板に塗膜を形成するための塗膜形成用ウレタン樹脂組成物であって、下記式(1):
【0010】
【化1】

【0011】
(式中、nは1〜20の整数を示す。)で表されるジメチルシリコーン基と水酸基とを側鎖に有するアクリル樹脂、イソシアネート樹脂、および球状シリカを含有することを特徴とする。
【0012】
第2に、上記第1の塗膜形成用ウレタン樹脂組成物において、アクリル樹脂中のジメチルシリコーン基の含有率は、0.1〜30質量%であることを特徴とする。
【0013】
第3に、上記第1または第2の塗膜形成用ウレタン樹脂組成物において、アクリル樹脂は、下記式(2)〜(5)から選ばれる少なくとも1種の含フッ素基をアクリル樹脂中2〜60質量%含有することを特徴とする。
【0014】
【化2】

【0015】
第4に、上記第1ないし第3のいずれかの塗膜形成用ウレタン樹脂組成物において、球状シリカの平均粒径は、3〜30μmであることを特徴とする。
【0016】
第5に、上記第1ないし第4のいずれかの塗膜形成用ウレタン樹脂組成物において、球状シリカの含有量は、アクリル樹脂に対する固形分比で5〜40質量%であることを特徴とする。
【0017】
第6に、上記第1ないし第5のいずれかの塗膜形成用ウレタン樹脂組成物において、アクリル樹脂に対するイソシアネート樹脂の含有比率は、アクリル樹脂の水酸基に対するイソシアネート樹脂のイソシアネート基の当量比が0.7〜1.5となる範囲であることを特徴とする。
【0018】
第7に、本発明の木質板は、上記第1ないし第6のいずれかの塗膜形成用ウレタン樹脂組成物で形成された塗膜を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
上記第1の発明によれば、式(1)で表されるジメチルシリコーン基と水酸基とを側鎖に有するアクリル樹脂を用いることで、木質板に耐汚染性とさらっと感を付与することができる。そして球状シリカを用いることで、滑り性を制御し、ソフト感を付与し、さらに意匠性を向上させることができる。このように、優れた触感(さらっと感、滑り性、ソフト感)を有するとともに、意匠性、耐汚染性も有する木質板を得ることができる。
【0020】
上記第2の発明によれば、アクリル樹脂中のジメチルシリコーン基の含有率を上記の特定の範囲内とすることで、上記第1の発明の効果に加え、触感を特に向上させることができる。
【0021】
上記第3の発明によれば、上記の含フッ素基をアクリル樹脂中に特定量含有することで、上記第1および第2の発明の効果に加え、耐汚染性、撥水撥油性を向上させることができる。
【0022】
上記第4の発明によれば、上記の特定の範囲内の平均粒径をもつ球状シリカを用いることで、上記第1ないし第3の発明の効果に加え、意匠性、塗膜形成用ウレタン樹脂組成物のハンドリング性を向上させることができる。
【0023】
上記第5の発明によれば、球状シリカをアクリル樹脂に対する固形分比で上記の特定量含有することで、上記第1ないし第4の発明の効果に加え、触感、意匠性、耐汚染性を特に向上させることができる。
【0024】
上記第6の発明によれば、アクリル樹脂に対するイソシアネート樹脂の含有比率を上記の特定の範囲内とすることで、上記第1ないし第5の発明の効果に加え、常温で、基材に対する密着性を低下させることなく耐汚染性に優れた塗膜を得ることができる。
【0025】
上記第7の発明によれば、上記第1ないし第6の発明の塗膜形成用ウレタン樹脂組成物を用いているので、優れた触感(さらっと感、滑り性、ソフト感)を有するとともに、優れた意匠性、耐汚染性を発現させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0027】
本発明に用いられるジメチルシリコーン基と水酸基とを側鎖に有するアクリル樹脂は、木質板に耐汚染性とさらっと感(べたつかない)を付与し、さらに撥水撥油性も付与することができる。
【0028】
ジメチルシリコーン基と水酸基とを側鎖に有するアクリル樹脂は、ブロック共重合体、グラフト共重合体、およびブロック・グラフト共重合体のいずれであってもよい。
【0029】
ジメチルシリコーン基と水酸基とを側鎖に有するアクリル樹脂の分子量(Mw)は、好ましくは50,000〜500,000である。分子量が小さ過ぎると、塗膜形成用ウレタン樹脂組成物による塗膜の耐汚染性が低下する場合がある。分子量が大き過ぎると、塗膜形成用ウレタン樹脂組成物の粘度が高くなり過ぎ、ハンドリング性が低下する場合がある。
【0030】
ジメチルシリコーン基と水酸基とを側鎖に有するアクリル樹脂は、下記式(1)で表されるジメチルシリコーン基を側鎖に導入することができるモノマーを原料モノマーに所定割合で混合し、共重合させることにより得ることができる。
【0031】
【化3】

【0032】
(式中、nは1〜20の整数を示す。)
ジメチルシリコーン基は、主鎖が長いほどソフト感が良好な塗膜を形成することができるが、主鎖が長過ぎると塗膜が過剰に柔らかくなる場合がある。一方、ジメチルシリコーン基の主鎖が短くなると、塗膜の硬度は高くなる傾向がある。
【0033】
アクリル樹脂中のジメチルシリコーン基の含有率は、0.1〜30質量%である。ジメチルシリコーン基の含有率が高過ぎると、さらっと感およびソフト感が良好な塗膜を形成することができるが、塗膜が柔らかくなる傾向があると共に、滑り易くなり、滑り性の制御が難しくなる。ジメチルシリコーン基の含有率が低過ぎると、塗膜の硬度は高くなるが、さらっと感およびソフト感が低下する場合がある。
【0034】
本発明における好ましい態様では、ジメチルシリコーン基と水酸基とを側鎖に有するアクリル樹脂は、下記式(2)〜(5)から選ばれる少なくとも1種の含フッ素基を主鎖に導入することができるモノマーを原料モノマーに所定割合で混合し、共重合させることにより合成される。
【0035】
【化4】

【0036】
アクリル樹脂中における上記の含フッ素基の含有量は、好ましくは2〜60質量%、より好ましくは5〜50質量%である。ここで、含フッ素基の含有量は、燃焼法により測定することができる。当該含有量が少な過ぎると、耐汚染性、撥水撥油性が得られない場合がある。当該含有量が多過ぎると、溶剤や他の樹脂への相溶性が低下し過ぎて、耐汚染性が低下する場合がある。
【0037】
ジメチルシリコーン基と水酸基とを側鎖に有するアクリル樹脂は、上記式(1)〜(5)で表される構造単位の他に、原料として共重合可能なモノマーから導入される他の構造単位を本発明の目的を損なわない範囲で有していてもよい。このような構造単位を導入可能なモノマーの具体例としては、アルキルビニルエーテル、アルキルアリルエーテル、アリル酸エステル、メタクリル酸エステル、エチレン、プロピレン、酢酸ビニル等が挙げられる。
【0038】
ジメチルシリコーン基と水酸基とを側鎖に有するアクリル樹脂の水酸基価は、好ましくは40〜200、より好ましくは60〜150である。水酸基価が低過ぎると、塗膜の架橋密度が低下し、塗膜強度が不十分となる場合がある。水酸基価が高過ぎると、硬質の塗膜が得られるが、溶剤との相溶性が低下し、塗膜形成用ウレタン樹脂組成物の安定性が低下する場合がある。
【0039】
本発明に用いられるイソシアネート樹脂は、ジメチルシリコーン基と水酸基とを側鎖に有するアクリル樹脂の架橋剤として作用する。イソシアネート樹脂は、ジメチルシリコーン基と水酸基とを側鎖に有するアクリル樹脂と低温で重合して硬化することができ、また塗膜の耐薬品性、耐水性も優れたものとすることができる。
【0040】
イソシアネート樹脂の具体例としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4−ジイソシアネート、ビス(4−イソシアネートシクロヘキシル)メタン、イソホロンジイソシアネート、リジントリイソシアネート等のモノマーをプレポリマー化したものを挙げることができ、イソシアヌレート、アダクト、ビウレット等の形態のものを用いることができる。
【0041】
アクリル樹脂に対するイソシアネート樹脂の含有比率は、アクリル樹脂の水酸基に対するイソシアネート樹脂のイソシアネート基の当量比が0.7〜1.5となる範囲である。当該当量比が小さ過ぎると、反応性が乏しくなり、耐汚染性が低下する場合がある。当該当量比が大き過ぎると、撥水撥油性や耐汚染性が低下する場合がある。
【0042】
本発明に用いられる球状シリカとしては、特に制限はなく、例えば公知のものを用いることができるが、中でも、真球度が高くシャープな粒度分布を有する球状シリカが好ましい。真球度が高いことで、滑り性(ノンスリップ性)の制御が容易になる。また、シャープな粒度分布を有することで、ソフト感を向上させることができ、さらに塗膜の艶消しに寄与しない粒子の量が少なくなることで透明感が向上し意匠性を向上させることができる。
【0043】
球状シリカの平均粒径(体積平均粒径)は、好ましくは3〜50μm、より好ましくは5〜30μmである。平均粒径が小さ過ぎると、塗膜の艶消しに寄与しない粒子の量が増大し、単位配合量当たりの艶消し効果が低下するため、艶消し効果を得るためには多量に配合しなければならなくなり意匠性が低下する場合がある。また、塗膜形成用ウレタン樹脂組成物中で凝集し易くなるため、分散が困難になり塗膜形成用ウレタン樹脂組成物の粘度が上昇してしまう場合がある。一方、平均粒径が大き過ぎると、塗膜外観が粗くなる場合がある。また、塗膜形成用ウレタン樹脂組成物中で沈降し易くなるためハンドリング性が低下する場合がある。
【0044】
塗膜形成用ウレタン樹脂組成物における球状シリカの含有量は、アクリル樹脂に対する固形分比で好ましくは5〜40質量%、より好ましくは10〜40質量%である。当該含有量が少な過ぎると、触感、意匠性、耐汚染性が低下する場合がある。当該含有量が多過ぎると、塗膜形成用ウレタン樹脂組成物による塗膜の耐汚染性が低下する。
【0045】
本発明の塗膜形成用ウレタン樹脂組成物には、上記の必須成分であるジメチルシリコーン基と水酸基とを側鎖に有するアクリル樹脂、イソシアネート樹脂、および球状シリカに加えて、本発明の効果を損なわない範囲内において、微粉末ワックス、樹脂ビーズ、ポリオール樹脂、およびその他の添加剤を配合することができる。
【0046】
樹脂ビーズの具体例としては、ウレタン樹脂系、アクリル樹脂系、ポリスチレン樹脂系、シリコン樹脂系の樹脂ビーズ等が挙げられる。中でも、安価で耐汚染性が高いアクリル樹脂系や触感が優れるウレタン樹脂系の樹脂ビーズが好ましい。
【0047】
ポリオール樹脂は、塗膜形成用ウレタン樹脂組成物の耐摺動性、耐引っ掻き性等の塗膜強度を向上する目的で配合することができる。ポリオール樹脂の具体例としては、ポリエステルポリオール樹脂、アクリルポリオール樹脂等が挙げられる。ポリエステルポリオール樹脂の具体例としては、ユリアーノ2003(荒川化学工業(株)製)、ユリアーノ2377(荒川化学工業(株)製)、ポリウレ2593(荒川化学工業(株)製)、KL−540B(荒川化学工業(株)製)等が挙げられる。アクリルポリオール樹脂の具体例としては、ヒタロイド2525(日立化成工業(株)製)、ヒタロイド2520(日立化成工業(株)製)等が挙げられる。ポリオール樹脂の水酸基価は、塗膜強度を向上させる点等から、好ましくは50〜200KOHmg/gである。
【0048】
本発明の塗膜形成用ウレタン樹脂組成物に配合することができるその他の添加剤としては、消泡剤、レベリング剤、分散剤、沈降防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤等が挙げられる。また、適量の有機溶剤を配合することもできるが、作業性、安全性、環境汚染等を考慮した場合、いわゆるTXフリーの溶剤を用いることが望ましい。
【0049】
本発明の塗膜形成用ウレタン樹脂組成物を木質基材に塗工し、次いで塗膜を硬化することで、木質板を得ることができる。木質板の具体例としては、床材、階段踏み板、カウンター、手摺、ドア、収納扉、框、造作、建具枠等が挙げられる。
【0050】
塗膜形成用ウレタン樹脂組成物を塗工する木質基材は、突き板貼りであってもよく、印刷シート貼りであってもよく、無垢材であってもよい。また、木質基材は、素材感や風合い感(外観、肌触り感)を損なわない範囲内で、必要に応じて従来公知の目止処理、着色処理等を予め表面に施すことができる。また、下塗り塗料、さらには中塗り塗料を塗工することもできる。
【0051】
下塗り塗料および中塗り塗料は、一般に塗料を塗工する際に適用されている手段、例えば、エアスプレー、エアレススプレー、静電塗装、ロールコーター、およびフローコーター等により塗布することができる。
【0052】
下塗り塗料および中塗り塗料の具体例としては、水系塗料、アクリルラッカー、ポリウレタン塗料、ポリエステル塗料、紫外線硬化型のエポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート等を挙げることができる。
【0053】
下塗り塗料および中塗り塗料の塗工量は、木質基材の種類およびその処理方法により適宜に調節されるが、素材感や風合い感(外観、肌触り感)を損なわない点からは、固形分換算で好ましくは合計20〜80g/m2、より好ましくは30〜60g/m2である。当該塗工量が少な過ぎると、製造した木質板の耐久性が低下する場合がある。一方、当該塗工量が多過ぎると、導管が埋まり素材感や風合い感を損ねてしまう場合がある。
【0054】
本発明の塗膜形成用ウレタン樹脂組成物は、一般に塗料を塗工する際に適用されている手段、例えば、エアスプレー、エアレススプレー、静電塗装、ロールコーター、およびフローコーター等により木質基材に塗工することができる。中でも、木質基材の形状への追従性や塗工処理速度の点からは、エアスプレーが好適に用いられる。
【0055】
なお、塗工直前の木質基材の表面を20〜50℃に予熱しておくことが、良好な塗膜を形成する上で有効である。
【0056】
木質基材への塗膜形成用ウレタン樹脂組成物の塗工量は、固形分換算で好ましくは1〜50g/m2、より好ましくは3〜20g/m2である。塗工量が少な過ぎると、木質板の耐汚染性が低下する場合がある。一方、塗工量が多過ぎると、木質基材の素材感や風合い感等の意匠性を損ねてしまう場合がある。
【0057】
塗膜形成用ウレタン樹脂組成物を木質基材に塗工した後、塗膜形成用ウレタン樹脂組成物の種類に応じて、例えば、常温乾燥、強制乾燥、焼き付け乾燥、活性エネルギー線照射等により塗膜を硬化することができる。
【実施例】
【0058】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
1.塗膜形成用ウレタン樹脂組成物の調製
実施例、比較例、および参考例で用いた各成分は以下の通りである。
・上記式(1)で表されるジメチルシリコーン基と水酸基とを側鎖に有するアクリル樹脂
KD−270R、関東電化工業(株)製、水酸基価 107.5、固形分30%
ZX−022H、富士化成工業(株)製、水酸基価 120.0、固形分45%
モディパーFS−700、日油(株)製、水酸基価 60.0、固形分100%
・イソシアネート樹脂
タケネートD−170HN、武田薬品工業(株)製、NCO% 22.7%、固形分100%
・球状シリカ
サイロスフィアC−1510、富士シリシア化学(株)製、平均粒径 10μm
・異形状シリカ
P−510、水澤化学工業(株)製、平均粒径 10μm
・アクリルポリオール樹脂
ACRYDIC52−666BA、DIC(株)製、水酸基価147、固形分50%
上記各成分を表1の配合量(質量部)で配合し、均一に混合することにより塗膜形成用ウレタン樹脂組成物を調製した。
2.木質板の製造
木質基材として厚さ12mmのラワン合板の表面に厚さ0.3mmのナラ材の突き板を貼着した突き板張り合板を用い、この突き板表面に着色ステインをロールコーターで塗工し、80℃で1分乾燥後、下塗り塗料および中塗り塗料を固形分換算で合計70g/m2塗工して80℃で1分乾燥させた。
【0059】
次いで、上塗り塗料として、上記のようにして得られた塗膜形成用ウレタン樹脂組成物をエアスプレーにて固形分換算で10g/m2塗工し、常温で1週間保持して硬化させ、木質基材に塗膜形成用ウレタン樹脂組成物による塗膜が形成された木質板を得た。
【0060】
上記のようにして得られた木質板について、下記の評価を行った。
[意匠性(外観)]
GM−60(コニカミノルタ製)により光沢値の測定を行った。なお、測定条件は、入射角60度、反射角60度とした。
[耐汚染性]
(耐カレー染色性試験)
木質板の塗膜にカレー粉(ヱスビー食品(株)製)を湯で溶いたもの(濃度10%)を滴下し、水分が蒸発しないように時計皿を被せて24時間保持した。24時間後、水洗いし、色差計(CM2600:コニカミノルタセンシング(株)製)を用いて、試験前後の表面のLab値を測定し、色差ΔEを算出した。そして下記の基準により評価した。
○: ΔE≦3.0
△: 3.0<ΔE≦5.0
×: 5.0<ΔE
(耐アルカリ性試験)
木質板の塗膜に5%水酸化ナトリウム水溶液を滴下し、水分が蒸発しないように時計皿を被せて24時間保持した。24時間後、水洗いし、外観状態より下記の基準により評価した。
○: 外観異常なし
△: 塗膜にやや白化あり
×: 塗膜に白化あり
(耐酸性試験)
木質板の塗膜に1%塩酸%水溶液を滴下し、水分が蒸発しないように時計皿を被せて24時間保持した。24時間後、水洗いし、外観状態より下記の基準により評価した。
○: 外観異常なし
△: 塗膜にやや白化あり
×: 塗膜に白化あり
[触感]
(滑り性)
JIS A5705付属書に定める「床材の滑り試験方法(斜め引張型)」に従い、素足で歩行した場合の「滑り抵抗係数(C.S.R)」を用いて下記の基準により評価した。
○: 滑り抵抗係数が0.45〜0.9の範囲内
×: 滑り抵抗係数が0.45未満または0.9超
(さらっと感)
木質板の塗膜形成面を素足で歩行したときの触感を下記の基準により評価した。
○: 歩行時、程好いさらっと感を感じた。
△: 歩行時、ややべとつき感を感じた
×: 歩行時、べとつき感を感じた。
(ソフト感)
木質板の塗膜形成面を素足で歩行したときの触感を下記の基準により評価した。
○: 歩行時、程好いソフト感を感じた。
△: 歩行時、ややざらつき感や硬さを感じた
×: 歩行時、ざらつき感や硬さを感じた。
【0061】
評価結果を表1に示す。
【0062】
【表1】

【0063】
表1より、ジメチルシリコーン基と水酸基とを側鎖に有するアクリル樹脂、イソシアネート樹脂、および球状シリカを含有する塗膜形成用ウレタン樹脂組成物を用いて木質基材に塗膜を形成した実施例1〜5では、優れた触感(さらっと感、滑り性、ソフト感)を有するとともに、意匠性、耐汚染性も有していた。
【0064】
一方、球状シリカを配合せずに異形状シリカを配合した比較例1では、触感のうち滑り性、ソフト感が低下した。
【0065】
ジメチルシリコーン基と水酸基とを側鎖に有するアクリル樹脂を配合しなかった比較例2では、触感のうちさらっと感、ソフト感が低下した。
【0066】
球状シリカを配合しなかった比較例3では、触感のうち滑り性、ソフト感が低下し、意匠性も大きく低下した。
【0067】
また、参考例1、2にも示されるように、球状シリカの配合量がジメチルシリコーン基と水酸基とを側鎖に有するアクリル樹脂に対する固形分比で過剰もしくは過少であると、耐汚染性、さらには触感、意匠性も低下する傾向があった。このような点から、球状シリカの好ましい含有量は、ジメチルシリコーン基と水酸基とを側鎖に有するアクリル樹脂に対する固形分比で5〜40質量%である。
【0068】
また、参考例3にも示されるように、ジメチルシリコーン基と水酸基とを側鎖に有するアクリル樹脂の水酸基に対するイソシアネート樹脂のイソシアネート基の当量比が過剰もしくは過少であると、耐汚染性が低下する傾向があった。このような点から、アクリル樹脂に対するイソシアネート樹脂の好ましい含有比率は、アクリル樹脂の水酸基に対するイソシアネート樹脂のイソシアネート基の当量比が0.7〜1.5となる範囲である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木質板に塗膜を形成するための塗膜形成用ウレタン樹脂組成物であって、下記式(1):
【化1】

(式中、nは1〜20の整数を示す。)で表されるジメチルシリコーン基と水酸基とを側鎖に有するアクリル樹脂、イソシアネート樹脂、および球状シリカを含有することを特徴とする塗膜形成用ウレタン樹脂組成物。
【請求項2】
アクリル樹脂中のジメチルシリコーン基の含有率は、0.1〜30質量%であることを特徴とする請求項1に記載の塗膜形成用ウレタン樹脂組成物。
【請求項3】
アクリル樹脂は、下記式(2)〜(5)から選ばれる少なくとも1種の含フッ素基をアクリル樹脂中2〜60質量%含有することを特徴とする請求項1または2に記載の塗膜形成用ウレタン樹脂組成物。
【化2】

【請求項4】
球状シリカの平均粒径は、3〜30μmであることを特徴とする請求項1ないし3いずれか一項に記載の塗膜形成用ウレタン樹脂組成物。
【請求項5】
球状シリカの含有量は、アクリル樹脂に対する固形分比で5〜40質量%であることを特徴とする請求項1ないし4いずれか一項に記載の塗膜形成用ウレタン樹脂組成物。
【請求項6】
アクリル樹脂に対するイソシアネート樹脂の含有比率は、アクリル樹脂の水酸基に対するイソシアネート樹脂のイソシアネート基の当量比が0.7〜1.5となる範囲であることを特徴とする請求項1ないし5いずれか一項に記載の塗膜形成用ウレタン樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1ないし6いずれか一項に記載の塗膜形成用ウレタン樹脂組成物で形成された塗膜を有することを特徴とする木質板。

【公開番号】特開2010−174076(P2010−174076A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−15936(P2009−15936)
【出願日】平成21年1月27日(2009.1.27)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】