説明

塗膜形成用組成物及び塗膜の形成方法

【課題】艶消しでソフトな触覚及びソフトな視覚の塗膜を形成し得る塗膜形成用組成物及び艶消しでソフトな触覚及びソフトな視覚の塗膜の形成方法を提供すること。
【解決手段】顔料及び樹脂を含む着色樹脂粒子であって平均径が20〜500μmである2色以上の着色樹脂粒子の混合物と、エマルション樹脂形、コロイダルディスパージョン樹脂形又は水溶性樹脂の風乾硬化型水性塗料とからなり、該着色樹脂粒子は該水性塗料には不溶性であり且つ該水性塗料の風乾条件下で形状不変であり、該着色樹脂粒子と該水性塗料中の樹脂成分との質量比が100対20〜80である塗膜形成用組成物、及び塗膜の形成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は塗膜形成用組成物及び塗膜の形成方法に関し、より詳しくは艶消しでソフトな触覚及びソフトな視覚の塗膜を形成することのできる塗膜形成用組成物及び艶消しでソフトな触覚及びソフトな視覚の塗膜の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ソフトな触覚及びソフトな視覚の塗膜を形成することのできる塗膜形成用組成物として種々の組成物が提案されている。例えば、球状の微粒子ビーズを含有する塗膜形成用組成物を利用してスエード調の外観、触覚を付与することが試みられている。含有されるビーズの量、粒径などを調整することで外観上はスエード調になるものの触覚は堅いものとなってしまう傾向がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は上記の問題を解決するものであって、艶消しでソフトな触覚及びソフトな視覚の塗膜を形成することのできる塗膜形成用組成物及び艶消しでソフトな触覚及びソフトな視覚の塗膜の形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、特定の大きさの2色以上の着色樹脂粒子の混合物と、特定の風乾硬化型水性塗料とが特定の質量比で配合されていて該着色樹脂粒子が該水性塗料には不溶性であり且つ該水性塗料の風乾条件下で形状不変である塗膜形成用組成物を用いることにより艶消しでソフトな触覚及びソフトな視覚の塗膜を形成することができることを見出し、本発明を完成した。
【0005】
即ち、本発明の塗膜形成用組成物は、顔料及び樹脂を含む着色樹脂粒子であって平均径が20〜500μmである2色以上の着色樹脂粒子の混合物と、エマルション樹脂形、コロイダルディスパージョン樹脂形又は水溶性樹脂の風乾硬化型水性塗料とからなり、該着色樹脂粒子は該水性塗料には不溶性であり且つ該水性塗料の風乾条件下で形状不変であり、該着色樹脂粒子と該水性塗料中の樹脂成分との質量比が100対20〜80であることを特徴とする。
【0006】
また、本発明の艶消しでソフトな触覚及びソフトな視覚の塗膜の形成方法は、本発明の塗膜形成用組成物を基材の表面に塗布し、風乾硬化させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の塗膜形成用組成物を塗布することにより、塗膜表面が2色以上の着色樹脂粒子からなる多彩色となってソフトな視覚の塗膜となり、水性塗料には不溶性であり且つ該水性塗料の風乾条件下で形状不変である特定の大きさの着色樹脂粒子を用いているので塗膜中に空気が閉じ込められ且つ着色樹脂粒子は断熱性であるのでソフトな触覚となり、塗膜表面は乱反射となって艶消しの塗膜となり、即ち艶消しでソフトな触覚及びソフトな視覚の塗膜を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の塗膜形成用組成物においては、顔料及び樹脂を含む着色樹脂粒子であって平均径(マイクロトラック法)が20〜500μmである2色以上の着色樹脂粒子の混合物を用いる。
【0009】
本発明の塗膜形成用組成物で用いる着色樹脂粒子は、艶消しでソフトな触覚及びソフトな視覚の塗膜を形成するためには、平均径が20〜500μm、好ましくは30〜400μm、より好ましくは30〜200μmであることが望ましい。平均径が20μmよりも小さい場合には、艶消しの程度、触覚および視覚のソフト性が低下する傾向がある。また、平均径が500μmよりも大きい場合には、塗装操作や塗膜の仕上がりに問題が生じる場合がある。
【0010】
本発明の塗膜形成用組成物で用いる着色樹脂粒子の樹脂成分として、アルキド樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ブロックイソシアネ−ト樹脂、フッ素樹脂、シリコン樹脂、アミド樹脂、ABS樹脂、ノボラック樹脂、ケトン樹脂、ブチラ−ル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリオレフィン樹脂等を使用することができ、これらの樹脂は1種単独で用いても、複数種を任意の配合比率で併用してもかまわない。
【0011】
上記の樹脂成分及びその他の成分の具体例を例示すると次の通りである。
【0012】
<アクリル樹脂>
アクリル樹脂の製造に用いることのできるアクリル系モノマーとして、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、i−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、i−ブチルアクリレート、sec−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ラウリルアクリレート、トリデシルアクリレート、ステアリルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ベンジルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、2−ブトキシエチルアクリレート、2−フェノキシエチルアクリレート、エチルカルビトールアクリレート、アリルアクリレート、グリシジルアクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、アクリル酸、アクリル酸ソーダ、トリメチロールプロパンアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート等のアクリル酸及びアクリル酸エステルモノマーを挙げることができる。
【0013】
更に、アクリル樹脂の製造に用いることのできるアクリル系モノマーとして、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、トリデシルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、sec−ブチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、アリルメタクリレート、エチレングリコールメタクリレート、トリエチレングリコールメタクリレート、テトラエチレングリコールメタクリレート、1,3−ブチレングリコールメタクリレート、トリメチロールプロパンメタクリレート、2−エトキシエチルメタクリレート、2−メトキシエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメチルクロライド塩メタクリレート、メタクリル酸、メタクリル酸ソーダ等のメタクリル酸及びメタクリル酸エステルモノマーを挙げることができる。
【0014】
また、上記したアクリル系モノマー成分に加えて、共重合成分として、アクリルアミド、アクリロニトリル、酢酸ビニル、エチレン、プロピレン、イソブチレン、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等のビニルモノマー、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有エチレン性不飽和モノマー、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸等のカルボキシル基含有エチレン性不飽和モノマー、ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等の水酸基含有エチレン性不飽和モノマー等を用いることができる。
【0015】
アクリル樹脂の製造方法としては、通常の溶液重合法により高分子量の樹脂を合成した後、薄膜加熱減圧法等によって溶媒を除去して固形樹脂を製造する方法や、懸濁重合法により樹脂を合成した後、スプレードライ法等により水分を除去して固形樹脂を製造する方法がある。
【0016】
上記のようなアクリル樹脂のための架橋剤としては、アクリル樹脂中の反応極性基がグリシジル基の場合には、セバチン酸、ドデカンジカルボン酸等の多官能カルボキシル基含有化合物や、多官能酸無水物等を用いることができ、また、アクリル樹脂中の反応極性基が水酸基であるか、水酸基とカルボキシル基の両方である場合には、ブロックイソシアネ−ト樹脂、メラミン樹脂等を用いることができる。
【0017】
架橋剤として使用できるブロックイソシアネート樹脂としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添キシレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート等のイソシアネートモノマーとトリメチロールプロパンとを付加反応させて樹脂化したイソシアネート樹脂や、多官能化したイソシアネート樹脂、水添し多官能化したイソシアネート樹脂等を、カプロラクトンやオキシム類でブロックしたブロックイソシアネート樹脂を挙げることができる。
【0018】
これらのブロックイソシアネート樹脂を架橋剤として使用する場合には、着色樹脂粒子の安定性を確保する必要性の点でブロックイソシアネート樹脂単体でも固形になる樹脂が好ましく、イソホロンジイソシアネートからの樹脂をε−カプロラクタムでブロックしたブロックイソシアネート樹脂等が好ましい。しかし、液状のブロックイソシアネート樹脂でも、添加配合量、顔料の配合量等を調整することにより、あるいは、ガラス転移温度の高いアクリル樹脂、ポリエステル樹脂等との組み合わせで使用することができる。
【0019】
<ポリエステル樹脂>
ポリエステル樹脂の製造に用いることのできるカルボン酸成分として、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバチン酸、1,9−ノナンジカルボン酸、1,10−デカンジカルボン酸、1、12−ドデカンジカルボン酸、1,2−オクタデカンジカルボン酸、アイサコサンジカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の多価カルボン酸、これらの多価カルボン酸の低級アルキルエステル及び無水物、あるいはリンゴ酸、酒石酸、1,2−ヒドロキシステアリン酸、パラオキシ安息香酸等のヒドロキシカルボン酸等を挙げることができる。
【0020】
また、ポリエステル樹脂の製造に用いることのできるアルコ−ル成分として、例えば、エチレングリコ−ル、ジエチレングリコ−ル、トリエチレングリコ−ル、1,2−プロパンジオ−ル、1,3−プロパンジオ−ル、、1,3−ブタンジオ−ル、1,4−ブタンジオ−ル、1,5−ペンタンジオ−ル、1,6−ヘキサンジオ−ル、1,9−ノナンジオ−ル、1,10−デカンジオ−ル、ネオペンチルグリコ−ル、スピログリコ−ル、1,10−デカンジオ−ル、1,4−シクロヘキサンジメタノ−ル、2,2,4−トリメチルペンタン−1,3−ジオ−ル、トリメチロ−ルエタン、トリメチロ−ルプロパン、グリセリン、ペンタエリスリト−ル等を挙げることができる。
【0021】
ポリエステル樹脂は、上記の酸成分とアルコ−ル成分とを原料とし、粉体塗料用ポリエステル樹脂製造の常法によって製造することができる。例えば、上記の諸原料を適当な組み合わせ、配合比で用い、常法に従って200〜280℃の温度でエステル化またはエステル交換反応を行った後、500pa以下に減圧し、触媒の存在下に230〜290℃で重縮合反応を行って高重合度の樹脂にし、その後、アルコ−ル成分で解重合反応を行ってポリエステル樹脂とすることができる。
【0022】
これらポリエステル樹脂の架橋硬化には、前記したブロックイソシアネ−ト樹脂を使用することが好ましく、その場合には、反応に寄与するブロックイソシアネ−ト樹脂の潜在的イソシアネ−ト基とポリエステル樹脂の水酸基との比率は、NCO/OH比で0.6〜1.2であることが好ましく、0.8〜1.0であることが更に好ましい。
【0023】
着色樹脂粒子を構成する前記した種々の樹脂成分と共に用いるとのできる架橋剤として、それぞれの樹脂成分に応じて、一般的には、多塩基酸、酸無水物、アミノ化合物、グリシジル基含有化合物、アミノブラスト樹脂、ジシアンジアミド、ブロックイソシアネ−ト樹脂、ヒドラジド等を挙げることができ、樹脂の種類に応じて適宜選択して使用する。
【0024】
また、本発明の塗膜形成用組成物で用いる着色樹脂粒子は顔料を含有する。そのような顔料として、黄色酸化鉄、チタン黄、ベンガラ、酸化チタン、亜鉛華、リトポン、鉛白、硫化亜鉛、酸化アンチモン等の無機系顔料や、ハンザイエロー5G、パーマネントエローFGL、フタロシアニンブルー、インダンスレンブルーRS、パーマネントレッドF5RK、ブリリアントファーストスカーレットG、パリオゲンレッド3910等の有機顔料等を挙げることができる。
【0025】
本発明の塗膜形成用組成物で用いる着色樹脂粒子は、所望により、揮発性化合物等を吸着し得る顔料(フライポンタイト等)、塗膜堅さの調節、塗膜強度等の付与の為の体質顔料(カオリン、タルク、珪藻土、炭酸カルシウム等)、艶消しの為の艶消し顔料、磁性付与の為の磁性顔料、導電性付与の為の導電性顔料、中空顔料、蛍光顔料、蓄光顔料、防錆顔料、流展性付与の為の流動性付与剤、表面調整剤、硬化促進剤、紫外線吸収剤、増粘剤、消泡剤、造膜助剤、凍結防止剤、抗菌剤等のその他の機能を与えるための添加剤等を含有することができる。
【0026】
<着色樹脂粒子の製造>
本発明の塗膜形成用組成物で用いる着色樹脂粒子は、例えば、通常の粉体塗料の調製方法に従って、即ち、前記した樹脂、顔料、添加剤等からなる粉体塗料用原料を均一に配合し、溶融練合機で均一に練合分散させ、圧延し、冷却し、粉砕し、分級して製造することができる。
【0027】
前記の諸原料を混合して配合物を得る工程においては、固形の樹脂原料を中心に着色顔料、架橋剤、添加剤、更に必要によっては少量の液状原料をできるだけ均質に混合する。このための装置としては、原料を混合する通常の装置であるフラッシュミキサー、スクリューミキサー、コニカルブレンダ、Vミキサー、タンブリングミキサー、ジェットミキサー、ニーダー、リボンミキサー等が使用できる。
【0028】
次に、溶融練合に用いる装置としては、ロールミル、スクリューニーダー、マーラー、ニーダー等がある。装置としては、樹脂の結晶化や樹脂内部での架橋反応を防止するために、溶融練合後、練合物を速やかに装置より排出して冷却することができる装置が好ましい。特に、粉体塗料着色樹脂粒子中に架橋剤が含まれる場合には、溶融練合工程で樹脂成分と架橋剤等とを均質に混合する時に、樹脂成分の軟化温度以上に加熱されるので、溶融練合する時の滞留時間が長くなると樹脂成分の一部が架橋剤と反応してしまい、結果として平滑に連続した塗膜を形成することが困難になったり、光沢不足の欠陥が生じたりする傾向がある。従って、一方から供給し、他方から連続的に排出する形式の装置を用いることが好適である。
【0029】
この排出された溶融混合物を、必要により圧延し、冷却し、粉砕し、分級機で平均径が20〜500μmである着色樹脂粒子を得る。
【0030】
本発明の塗膜形成用組成物においては、色の異なる2種以上の上記の着色樹脂粒子を混合して用いる。本発明の塗膜形成用組成物で用いる2色以上の着色樹脂粒子の混合物の1成分として透明樹脂粒子を用いることもできる。
【0031】
本発明の塗膜形成用組成物においては、当該技術分野で周知のアクリルエマルション等のエマルション樹脂形、コロイダルディスパージョン樹脂形又は水溶性樹脂の風乾硬化型水性塗料を用いることができる。
【0032】
本発明の塗膜形成用組成物は上記した着色樹脂粒子の混合物と上記した風乾硬化型水性塗料とからなるものであるが、該着色樹脂粒子は該水性塗料には不溶性であり且つ該水性塗料の風乾条件下で形状不変であり、該着色樹脂粒子と該水性塗料中の樹脂成分との質量比が100対20〜80、好ましくは100対30〜70であることが望ましい。
【0033】
着色樹脂粒子が水性塗料に溶解したり水性塗料の風乾条件下で形状が変化する場合には本発明で目的としている艶消しでソフトな触覚及びソフトな視覚の塗膜を形成することができなくなる。更に、着色樹脂粒子100質量部に対して水性塗料中の樹脂成分の量が20質量部未満の場合には塗膜の強度が低下する傾向があるので好ましくない。また、着色樹脂粒子100質量部に対して水性塗料中の樹脂成分の量が80質量部を超える場合には艶消しの程度、触覚および視覚のソフト性が低下する傾向があるので好ましくない。
【0034】
本発明の塗膜の形成方法としては、吹付け塗り、刷毛塗り、ローラー刷毛塗り、ロールコーター塗り、タンポずり、へらつけ等が可能であり、刷毛塗り、ローラー刷毛塗りが好ましい。これらの方法で上記のような塗膜形成用組成物を基材の表面に塗布し、風乾硬化させる。このような方法により塗膜表面が2色以上の着色樹脂粒子からなる多彩色となってソフトな視覚の塗膜となり、特定の大きさの着色樹脂粒子を用いているので塗膜中に空気が閉じ込められ且つ着色樹脂粒子は断熱性であるのでソフトな触覚となり、塗膜表面は乱反射となって艶消しの塗膜となり、即ち艶消しでソフトな触覚及びソフトな視覚の塗膜を形成することができる。
【0035】
以下、本発明について製造例、実施例により詳細に説明する。尚、製造例、実施例中の「部」は質量部である。
【0036】
製造例1
軟化温度120℃、酸価45のポリエステル樹脂32部、エポキシ当量910のビスフェノールAタイプのエポキシ樹脂32部、酸化チタン顔料20部、タルク10部、アクリルオリゴマー(表面調整剤)5部及びベンゾトリアゾール系架橋促進剤1部をスクリューミキサー中で配合し、さらにフラッシュミキサーで均一に混合した。
【0037】
溶融練合機として、2軸スクリューニーダーを115℃に加温し、溶融練合機の先端に2本ロール冷却機を設けて圧延冷却できるようにし、その先にハンマクラッシャを設置して、練合と粗砕の準備をした。
【0038】
フラッシュミキサーで混合した配合物を2軸スクリューニーダーのフィーダーより供給し、約20秒間滞留させて、溶融・練合・分散させた後、約120℃の粘性液体として2軸スクリューニーダーの先端から2本ロール冷却機の圧延ロールに落下させ、圧延し、約10秒で常温近くまで冷却させた。この板状の樹脂をハンマクラッシャで粉砕して平均径が約45μmである着色樹脂粒子を得た。
【0039】
製造例2
酸化チタン顔料20部の代わりにチタン黄顔料20部を用いた以外は製造例1と同様にして平均径が約40μmである着色樹脂粒子を得た。
【0040】
製造例3
酸化チタン顔料20部の代わりにベンガラ顔料20部を用いた以外は製造例1と同様にして平均径が約50μmである着色樹脂粒子を得た。
【0041】
製造例4
下記の成分を下記の量で混合して風乾硬化型水性塗料を得た。
【0042】
アクリルエマルション(固形分50%) 90.0質量%
分散剤 1.5質量%
防腐剤 0.1質量%
消泡剤 0.4質量%
水 8.0質量%
【0043】
実施例1
製造例1で得た着色樹脂粒子100部と、製造例2で得た着色樹脂粒子100部と、製造例3で得た着色樹脂粒子200部と、製造例4で得た風乾硬化型水性塗料500部とを混合して本発明の塗膜形成用組成物を調製した。この塗膜形成用組成物を石膏ボード板の表面に塗布し、風乾させた。
【0044】
得られた塗膜は目視観察で艶消しでソフトな視覚のものであった。また、この塗膜を有する板を温度25℃、湿度60%の条件で24時間放置した後、官能試験官5人が右手人差し指で塗膜表面を数回撫でて評価を行った。5人とも良好な触覚であることを認めた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料及び樹脂を含む着色樹脂粒子であって平均径が20〜500μmである2色以上の着色樹脂粒子の混合物と、エマルション樹脂形、コロイダルディスパージョン樹脂形又は水溶性樹脂の風乾硬化型水性塗料とからなり、該着色樹脂粒子は該水性塗料には不溶性であり且つ該水性塗料の風乾条件下で形状不変であり、該着色樹脂粒子と該水性塗料中の樹脂成分との質量比が100対20〜80であることを特徴とする塗膜形成用組成物。
【請求項2】
着色樹脂粒子が顔料、樹脂及び粉体塗料用添加剤を含むことを特徴とする請求項1記載の塗膜形成用組成物。
【請求項3】
着色樹脂粒子の平均径が30〜400μmであることを特徴とする請求項1又は2記載の塗膜形成用組成物。
【請求項4】
着色樹脂粒子が、原料の均一配合、溶融練合機での均一な練合分散、圧延、冷却、粗粉砕、粉砕、分級によって製造された粒子であることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の塗膜形成用組成物。
【請求項5】
水性塗料がエマルション樹脂形の水性塗料であることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の塗膜形成用組成物。
【請求項6】
着色樹脂粒子と水性塗料中の樹脂成分との質量比が100対30〜70であることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の塗膜形成用組成物。
【請求項7】
請求項1〜6の何れかに記載の塗膜形成用組成物を基材の表面に塗布し、風乾硬化させることを特徴とする艶消しでソフトな触覚及びソフトな視覚の塗膜の形成方法。

【公開番号】特開2009−197202(P2009−197202A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−43535(P2008−43535)
【出願日】平成20年2月25日(2008.2.25)
【出願人】(000003322)大日本塗料株式会社 (275)
【出願人】(397056857)サンデーペイント株式会社 (3)
【Fターム(参考)】