塗装された金属面の塗装状態の定量的な評価方法及びシステム
【解決課題】タンクの塗装状態を客観的、定量的、経済的かつ効率的にモニタリングする方法を提供する。
【解決手段】タンク内に導電性物質を充填し、タンク内に電流を印加するための追加陽極及びタンク内面の電位を測定するための参照電極を挿入して、電流の印加量を変化させ、そのときの電位の変化量を測定するとともに、電流の変化量(δI)に対する電位の変化量(δφ)との比(δφ/δI)をタンク内面の総全面評価抵抗とみなし、総全面評価抵抗から塗装の表面抵抗(R)を求めることによって塗装状態を定量的に評価する。
【解決手段】タンク内に導電性物質を充填し、タンク内に電流を印加するための追加陽極及びタンク内面の電位を測定するための参照電極を挿入して、電流の印加量を変化させ、そのときの電位の変化量を測定するとともに、電流の変化量(δI)に対する電位の変化量(δφ)との比(δφ/δI)をタンク内面の総全面評価抵抗とみなし、総全面評価抵抗から塗装の表面抵抗(R)を求めることによって塗装状態を定量的に評価する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗装された金属面の塗装状態を定量的に評価するための方法及びシステムに関し、特に、評価対象の塗装面の塗装状態を表面抵抗によって評価するための測定方法及びそのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
タンカーなどの船舶におけるバラストタンク内部の塗装状態は現在2〜3年など定期的に検査されている。塗装状態の検査では、表面積におけるペイント欠陥の面積比が目視により調べられる。この検査は、目視から起こる個人差および汚れによる検査値の定量性、暗い高所での検査に関する安全性、数多くのタンク区画の数量による検査日数および費用などが問題になっている。また、目視検査の結果は船の投機的な価値に直接影響する。以上の理由により塗装状態を客観的、定量的、経済的かつ効率的にモニタリングする方法の確立が望まれている。
【0003】
バラストタンクには海水が入るため、腐食しやすい環境下にある。この腐食を避けるためにタンク内部の金属表面にペイントが塗られている。ペイントは経年劣化や、初期不良などの問題があり、このペイント欠陥による腐食を防ぐために、タンク内には通常、複数の犠牲陽極(アノード)が設置されている。タンクに海水が積載されている時には犠牲陽極の作用によりタンク内表面は陰極(カソード)となり防食電位が維持される。
従来ではこの電位を測定することにより防食が維持されているかどうかを評価していた。しかし、測定電位は温度などの影響を受けたり、犠牲陽極の数量と塗装状態で電位が決まるため塗装状態を直接評価できないという問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
塗装状態が悪くなると、塗装による絶縁性が下がり、表面抵抗が下がる。したがって、表面抵抗のモニタリングをすれば、塗装状態を直接評価することができる。
一般に、表面抵抗を求めるためには対象面に直接電流を印加して電位差を測定すればよいが、海水側から電流を印加しようとすると測定対象外の犠牲陽極に流れたり、海水内の電位が分布したりするため、直接、全体的な表面抵抗を求めることができない。
本発明は上述のような事情に鑑み為されたものであり、対象面に直接電流を印加することなく、対象面の全体的な表面抵抗を求める方法を提供することにより、塗装された金属面の塗装状態を定量的に評価することを可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、塗装された金属面の塗装状態を定量的に評価するための方法に関し、本発明の上記目的は、前記塗装された金属面に接触するように導電性物質を配置し、該導電性物質に電流を印加するための電極及び前記塗装された金属面の電位を測定するための参照電極を配置して、前記電流の印加量を変化させ、そのときの前記電位の変化量を測定するとともに、前記電流の変化量(δI)に対する前記電位の変化量(δφ’)との比(δφ’/δI)を前記塗装された金属面の総全面評価抵抗とみなし、該総全面評価抵抗から塗装の表面抵抗(R)を求めることによって塗装状態を定量的に評価することによって達成される。
【0006】
また、本発明の上記目的は、塗装された金属製のタンク内面の塗装状態を定量的に評価するための方法であって、該方法は、前記タンク内に導電性物質を充填し、該タンク内に電流を印加するための追加陽極及び前記タンク内面の電位を測定するための参照電極を挿入して、
前記電流の印加量を変化させ、そのときの前記電位の変化量を測定するとともに、前記電流の変化量(δI)に対する前記電位の変化量(δφ’)との比(δφ’/δI)を前記タンク内面の総全面評価抵抗とみなし、該総全面評価抵抗から塗装の表面抵抗(R)を求めることによって塗装状態を定量的に評価することを特徴とする塗装された金属製のタンク内面の塗装状態を定量的に評価するための方法によって達成される。
【0007】
さらに、本発明は、塗装された金属面の塗装状態を定量的に評価するためのシステムに関し、本発明の上記目的は、前記塗装された金属面に接触するように配置された導電性物質と、該導電性物質に電流を供給するための電極と、前記電流を供給するための電流源と、前記電流の供給量を変化させる電流調整手段と、前記充填される導電性物質内の電位を検出すための参照電極と、該参照電極の電位を計測する電圧計測手段と、前記電流の変化量(δI)に対する前記電位の変化量(δφ’)との比(δφ’/δI)を算出する手段とを備え、前記算出された比を塗装された金属面の総全面評価抵抗とみなし、該総全面評価抵抗から塗装の表面抵抗(R)を求めることによって塗装状態を定量的に評価することによって達成される。
【0008】
またさらに、本発明の上記目的は、塗装された金属製のタンク内面の塗装状態を評価するためのシステムであって、該システムは、前記タンク内に充填される導電性物質と、該タンク内に電流を供給するための追加陽極と、前記電流を供給するための電流源と、前記電流の供給量を変化させる電流調整手段と、前記タンク内面の電位を検出するための参照電極と、該参照電極の電位を計測する電圧計測手段と、前記電流の変化量(δI)に対する前記電位の変化量(δφ’)との比(δφ’/δI)を算出する手段とを備え、前記算出された比をタンク内面の総全面評価抵抗とみなし、該総全面評価抵抗から塗装の表面抵抗(R)を求めることによって塗装状態を定量的に評価することを特徴とする塗装された金属製のタンク内面の塗装状態を定量的に評価するためのシステムによって達成される。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る塗装された金属面の塗装状態の定量的な評価方法又はシステムによれば、環境温度や犠牲陽極(アノード)の個数によって変化する電位ではなく、塗装状態を直接評価できるという効果がある。また、暗く視覚的に難しい場所でも対象面の塗装状態を直接的かつ定量的に評価できるという優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、タンク内に電流を印加した時に生ずる電位変化から逆問題的なアプローチでタンク区画の全体的な表面抵抗を同定することによって、タンク内の塗装状態を定量的に評価しようとするものである。逆解析に必要な観測方程式はタンク内の電位をラプラス場の境界値問題としてモデル化することにより導かれる。
塗装状態を表す表面抵抗を求めるために、差分の測定および解析を行う。実施例では、実船におけるバラストタンクでの電位測定および定量的な評価を実施した。
また、本発明に係る解析方法の有効性を検証するために、表面抵抗を電位分布測定から解析により求める逆問題での解の収束性についても検討した。
【0011】
<1.塗装状態と表面抵抗>
金属表面近傍の電解液の電位φ[V]および電流密度i[A/m2]の関係は分極曲線と呼ばれる以下の式(1)の関数で表される。
φ=−fm(R・i)・・・・・・(1)
この関数は一般的に非線形であり、実験により求められる。なお、通常、分極曲線の実験では、ある参照電極に対する金属の電位Eを用いるが、解析では金属に対する電解液の電位を問題とするので、Eの符号を逆転させた量を電位φとして用いる。
【0012】
以下では、R[Ωm2]を表面抵抗と呼ぶ。表面抵抗Rが電位と電流密度それぞれの変化量を関係付け、値が大きいと絶縁性が高くなることを示すので、塗装状態を求めることは表面抵抗Rを求めることにつながる。特にペイント欠陥の面積比αは無塗装状態の表面抵抗をR0として、以下の式(2)で示すことができる。
α=R0/R・・・・・・(2)
【実施例】
【0013】
<2.本発明に係る方法の概要および手順>
図1はバラストタンク内における簡単な測定モデルを示す図である。図1について考える。すなわち、海水が満たされたバラストタンク1に追加アノード4と電位測定用の銀/塩化銀(Ag/AgCl)参照電極3を外部からタンク内部に入れる。タンクの内壁1には犠牲陽極(アノード)2が接続されている。追加アノード4を接地して電流を流した場合(スイッチSWがON)および追加アノード4の接地を切った場合(スイッチSWがOFF)の2つについて、参照電極3の位置を変えずにそれぞれの場合の電位φ’ONおよびφ’OFFを測定する。得られた2つの電位について差分δφ’(=φ’ON‐φ’OFF)を求める。
表面抵抗Rがタンク内で一定とする数理モデルを用いて、数値計算により予め仮定したRに対して、電解液中の任意の場所の電位を求めることができる。測定した電位の差δφ’に対して、数値解析より得られる同じ場所のδφ(R)の残差式(3)を考える。
【数1】
ここで、添字jは測定回数や、電極や測定の位置を変えたなどの種類を表す。電極の位置を変えて電位の差を求めると、異なる条件で有益な情報が増える場合があるため、必要に応じて複数の情報を得るようにする。追加アノードから出る電流をδIとして、式(3)においてδφ’jおよびδφj(R)の代わりに測定値および計算値に関する総全面評価抵抗δφ’j/δIおよびδφj(R)/δIを用いても良い。ここではδIが測定で得られる一定値のため、総全面評価抵抗の代わりにδφ’jおよびδφj(R)を用いてある。
表面抵抗Rを求めるとは二乗残差を示す式(3)を最小化するRを探し出すことである。Rの探索には適当な最適化手法(例えば、準ニュートン法又はGA法等。)を用いれば良い。なお印加する電流の向きはプラスでもマイナス方向でも良い、ただしマイナス方向の場合はδIは負として解析を行う。
【0014】
<3.差分による解析方法>
表面抵抗Rが決められた時に電解液中の電位φ(R)または電位の差分δφ(R)を求める方法について述べる。
海水などの電解液で満たされた領域Dについて、電位の指定された境界Γd、境界を通してD内に流れ込む電流の密度iが指定された領域Γnおよび分極曲線が指定された金属表面Γmで囲まれているとする。電解液内でイオンの蓄積または損失が無視できると仮定し、電解液の電気伝導度κを一定と仮定すると、D内の電位φは次のラプラス方程式(4)を満足する。
∇2φ=0 in D・・・・・・(4)
境界条件は次式で与えられる。
【数2】
式(7)は式(1)と同じものである。
ここで、φ0およびi0はそれぞれ指定された電位φおよび電流密度iの値、∂/∂nは外向き法線方向の微分である。
【0015】
追加アノードがある時(SWがON)とない時(SWがOFF)の電位をそれぞれφON、φOFFとおき、次式(8)を考える。
δφ=φON‐φOFF・・・・・・(8)
ここで、2つの電位φONおよびφOFFもラプラス方程式を満たすので、式(8)もラプラス方程式を満たす。従って、式(4)により次の式(9)が成り立つ。
∇2(δφ)=0 in D・・・・・・(9)
式(9)により1つのモデルに対して2種類の境界条件がある場合、その境界条件の差分を境界条件として、上記境界条件の式(5)〜(7)の代わりに次の3つの式が適用できる。
【数3】
式(12)でδiが小さい場合には、Taylor展開の点で式(12)の線形性が良くなる。さらに、式(1)に含まれる自然電位を表す定数項もなくなり、表面抵抗dfm/di=Rにのみ依存する。式(1)は式(13)のようになる。式(13)は金属表面近傍の電解液について成り立つ。
δφ=‐R・δi・・・・・・(13)
式(1)に含まれる自然電位を表す定数項は温度変化や参照電極の違いで変わるが、短時間で同一の参照電極を使う測定の場合には、式(13)で温度依存性や参照電極の違いなどを考慮しなくてもよくなることに大きな利点がある。この定式化により自然電位や参照電極のオフセットの影響を容易に排除できる。もし、電位または電流密度が2つの境界条件で一定の場合には、その差分の境界条件の値は式(10)または式(11)にしたがってゼロになる。
式(9)から式(12)の差分を用いる方法で解析手法としては境界要素法を使った。式の形が変わらないため境界要素法の定式化は式(4)から式(7)に関する通常の定式化と変わらずに定式化できる。この境界要素法の解析の代わりに有限要素法や差分法も適用できる。
また解析領域の形状が直方体や円柱の場合には解析的な式で電解液の電位の差分δφ(R)を表すこともできる場合がある。
【0016】
<3.1 差分電位を用いない方法>
差分を用いる方法の有効性を確かめるため、まずは、差分を使わない方法について検討した。
(1)手順
図2について考える。すなわち、図1と違い、追加アノード4の接地を切った場合(SWがOFF)であり、外部から入れた参照電極3により、電解液中のある場所での電位φ’OFFを測定する。
表面抵抗Rがタンク内で一定とする数理モデルを用いて、数値計算により予め仮定したRに対する任意の場所の電位を求めることができる。j回目の深さ7mの電位測定φ’jに対して、数値解析により得られる同じ場所の電位φ(RSS)について次式の二乗残差を最小にするようなRSSを総あたり法で求める。
【数4】
【0017】
(2)実験概要
図3は電位測定の実験に使用したバラストタンクを搭載したLNG船の外観写真である。この船は就航して23年目、全長約280mのLNG船であり、このバラストタンクで電位測定を実施した。
このLNG船は10個のバラストタンクを持ち、それぞれのバラストタンクは縦横10個ほどの区画に区切られている。測定に使用したのはそのうちの1つの区画である。この区画はペイントの修復が測定の5年前に行われている。測定した区画は直方体(L3.75m×W4m×H12.8m)で高さ7.6m分の海水を入れた(図4参照)。
測定のために亜鉛(Zn)追加アノード(φ15mm×L150mm)を入れたが、接地を切った場合(OFF)と接地した場合(ON)の両方について測定した。電位測定は銀/塩化銀(Ag/AgCl)参照電極を使い、中心線にしたがって海水表面から底面まで0.2m間隔で往復して測定した。追加アノード4の電流量も測定した。図2における電位と電流の測定にはデータロガー(日置電機製HIOKI 8422-50)とディジタルマルチメータ(日置電機製HIOKI 3257-50)をそれぞれ使用した。
【0018】
(3)測定結果
図5は、追加アノード4が海水表面から1.6mの深さにある場合において、バラストタンク内において測定した電位分布を示す図である。これからも分かるように、4回の測定結果はほぼ一致した。図5中の横軸の「深さ」は実際には天井からのケーブル長さを示し、12.8mを超えたところは電位を測定する参照電極3が底面に着いたことを示す。これによると参照電極3の位置による電位分布の違いはほとんど見られないことが分かる。
【0019】
(4)解析による同定
SWがOFFの場合についてRSSを同定した。解析は通常の境界要素法を使った。全ての解析で海水の電気伝導度をκ=4.6[S/m]とした。境界条件は、下記の表1で与えられる境界条件を使った。
【表1】
境界要素分割は図6で示す三角形一定要素による分割を用いた。要素と節点の数はそれぞれ5670と3619であった。解析に用いた条件として解析は追加アノードの総電流量が0[A]になるようにして、下部の区画へのアクセスホールの電位を図5から読み取り、φ=0.883[V]とした。アノード(Zn)の表面抵抗を0.16[Ωm2]とした。
【0020】
図5に示す実験結果と、同定したRSSを用いた境界要素法の内点計算の結果を合わせたものを図7に示す。バラストタンク壁面(SS鋼)の表面抵抗が35[Ωm2]の時に式(14)が最小となり、深さ7m付近の電位分布が実験結果と近くなった。しかしながら、底面付近では実験と解析が一致していない。この不一致はアクセスホールに関する不適切な境界条件、または金属の分極曲線の自然電位の項に関する不適切な境界条件が原因と考えられる。さらに参照電極のオフセット電位もこの不一致に影響を与えていると考えられる。
【0021】
<3.2 差分手法による比較>
次に、追加アノードがある場合(ON)と追加アノードがない場合(OFF)の差分の実験結果と解析による同定結果について説明する。図8は海水を充填したバラストタンクの一区画を示す図である。これに対する境界条件は、表2で与えられるものを使った。
【表2】
すなわち、犠牲陽極(Zn)の表面抵抗は0.16[Ωm2]で一定とした。また、追加アノードの総電流量は30mAとし、下部の区画へのアクセスホールの境界条件を実験値からδφ=0.005[V]とした。バラストタンクの表面抵抗(RSS)が変化した時の傾向を見るために、この値について表2の9種類の値を使った。
【0022】
表面抵抗RSSを変えたときの電位分布の変化の解析結果を図9に示す。これによれば表面抵抗が大きくなればなるほど、全体的な電位が上がりカソード防食が良くなることが分かる。この条件での追加アノードのサイドローブ(追加アノードの近傍部分)の最大電圧は0.005[V]程度であった。
実験値と比較するために、評価関数を下記の式(15)として、評価関数を最小にするような表面抵抗RSSを総あたり法で求めた。最初の3セット(j=1→3)は測定位置を海水面から深さ7mのところとし、4セット目(j=4)は8.2mとして、それぞれ別に表面抵抗RSSを求めた。
【数5】
最初の3セットおよび4セット目についてRSS=500[Ωm2]の時、式(15)が最小となった。その時の差分の実験結果と解析による同定結果の比較を図10(追加アノード位置1.6m)および図11(追加アノード位置3.6m)に示す。両者とも式(15)で用いた測定点以外でも実験結果と解析結果が良く一致した。自然電位、分極曲線の線形化および参照電極のオフセットを補償する点でこの差分の境界条件を使った境界要素法が有効であることが検証された。
【0023】
無塗装状態のSS鋼の表面抵抗は約1[Ωm2]である。表面抵抗RSSが500[Ωm2]であったということは、タンク壁面が平らであったとして、式(2)より0.2%(=1/500)のペイント欠陥があったことに相当する。実際にはSS鋼でできた強化用部材もあり総面積は増えるため、0.2%よりも良かったと考えられる。事前に区画内部を目視した際にも、ほとんどペイント欠陥は見られなかった。なおこの例では4セットの計測値から表面抵抗をもとめたが計測値が1セットの場合でも実施できる。計測値がセットの場合は式(15)を最小化する方法以外にδφ(R)を数表にしておき計測値δφ’に対応するRを数表から逆に読むことでRを求めることができる。以上の手順のフローを図12に示す。
【0024】
<4.逆問題の解の収束性>
上記においてはバラストタンク壁面の表面抵抗が未知、アノード(Zn)の表面抵抗が既知の問題を同定したが、ここでは両者が未知の場合を考える。バラストタンク壁面の表面抵抗をRSS、アノードの表面抵抗をRZnとおき、実験で得られる電位差をδφ’j、計算で得られる電位差をδφj(RSS,RZn)とおく。以下の式(16)を最小化するRSSおよびRZnを求める。
【数6】
【0025】
図13に追加アノードと測定点に関する2つの組合せの配置を示す。Case1は追加アノードを中央に、測定点をその上方に配置した場合で、Case2は追加アノードを元からあるアノードの傍らに配置し、測定点をその横方向に配置した場合である。Case1およびCase2についてSSおよびZnのそれぞれの表面抵抗RSS、RZnを変えた時の測定電位のON時とOFF時の差分の等高線を図14および図15に示す。図14および図15は相似形ではなく、2つの測定点から異なる情報を得る測定ができていることが分かる。
RSS=20およびRZn=0.16に解がある時に式(16)を用いて図14および図15の測定位置の電位差から図16が得られる。解は単峰性で収束性が良いことが分かる。また図14および図15よりRZnが既知の場合には測定点が1つでもRSSは簡単に求まる。従って、測定場所が2点では2つの表面抵抗が求められること、測定場所が1点で1つの表面抵抗が求められることが分かる。
【0026】
以上、本発明に係る塗装された金属面の塗装状態の定量的な評価方法について、バラストタンクのような閉じた空間における電位差測定に基づいて説明したが、対象となる塗装面の面積があまり広くなければ、オープンな領域においても本発明に係る方法を用いて塗装状態の評価を行なうことが可能である。対象があまりに広くなり電流が分散してしまう場合には平均的な表面抵抗値が意味をなさなくなるからである。たとえば、小さな船の船体表面や海中杭、ポンプ、パイプ、岸壁の鋼鉄製矢板などの壁面の表面などが適用可能なオープン領域の例になる。この場合の様子を図17に示す。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】バラストタンク内における簡単な測定モデルを示す図である。
【図2】差分電位を用いない場合におけるバラストタンク内の簡単な測定モデルを示す図である。
【図3】電位測定の実験に使用したバラストタンクを搭載したLNG船の外観写真である。
【図4】海水を充填したバラストタンクの一区画を示す図である。
【図5】バラストタンク内において測定した電位分布を示す図である(追加アノードが海水表面から1.6mの深さにある場合である。)。
【図6】バラストタンクの一区画を三角形一定要素によってメッシュ分割したものを示す図である。
【図7】実験結果と、同定したRSSを用いた境界要素法の内点計算の結果をあわせて表示した図である。
【図8】海水を充填したバラストタンクの一区画を示す図である。
【図9】表面抵抗を変えたときの電位分布の変化の解析結果を示す図である。
【図10】RSS=500[Ωm2]の時の電位分布の差分の実験結果と解析による同定結果の比較を示す図である(追加アノードの位置=1.6m)。
【図11】RSS=500[Ωm2]の時の電位分布の差分の実験結果と解析による同定結果の比較を示す図である(追加アノードの位置=3.6m)。
【図12】異なるタンクや計測位置に対しても統一的に評価できる指標である表面抵抗Rを求めるためのフローを示す図である。
【図13】追加アノードと測定点の配置に関する2つの組合せを示す図である。
【図14】表面抵抗RSS、RZnを変えた時の測定電位のON時とOFF時の差分の等高線を示す図である(case1)。
【図15】表面抵抗RSS、RZnを変えた時の測定電位のON時とOFF時の差分の等高線を示す図である(case2)。
【図16】RSS=20およびRZn=0.16に解がある時に、図13および図14の測定位置の電位差から式(16)を用いて得られる電位差の等高線を示す図である。
【図17】オープンな導電性物質に浸された構造物に対する適用例を示す図である。
【符号の説明】
【0028】
1 隔壁(SS鋼)
2 犠牲陽極(アノード)
3 参照電極
4 追加アノード
SW スイッチ
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗装された金属面の塗装状態を定量的に評価するための方法及びシステムに関し、特に、評価対象の塗装面の塗装状態を表面抵抗によって評価するための測定方法及びそのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
タンカーなどの船舶におけるバラストタンク内部の塗装状態は現在2〜3年など定期的に検査されている。塗装状態の検査では、表面積におけるペイント欠陥の面積比が目視により調べられる。この検査は、目視から起こる個人差および汚れによる検査値の定量性、暗い高所での検査に関する安全性、数多くのタンク区画の数量による検査日数および費用などが問題になっている。また、目視検査の結果は船の投機的な価値に直接影響する。以上の理由により塗装状態を客観的、定量的、経済的かつ効率的にモニタリングする方法の確立が望まれている。
【0003】
バラストタンクには海水が入るため、腐食しやすい環境下にある。この腐食を避けるためにタンク内部の金属表面にペイントが塗られている。ペイントは経年劣化や、初期不良などの問題があり、このペイント欠陥による腐食を防ぐために、タンク内には通常、複数の犠牲陽極(アノード)が設置されている。タンクに海水が積載されている時には犠牲陽極の作用によりタンク内表面は陰極(カソード)となり防食電位が維持される。
従来ではこの電位を測定することにより防食が維持されているかどうかを評価していた。しかし、測定電位は温度などの影響を受けたり、犠牲陽極の数量と塗装状態で電位が決まるため塗装状態を直接評価できないという問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
塗装状態が悪くなると、塗装による絶縁性が下がり、表面抵抗が下がる。したがって、表面抵抗のモニタリングをすれば、塗装状態を直接評価することができる。
一般に、表面抵抗を求めるためには対象面に直接電流を印加して電位差を測定すればよいが、海水側から電流を印加しようとすると測定対象外の犠牲陽極に流れたり、海水内の電位が分布したりするため、直接、全体的な表面抵抗を求めることができない。
本発明は上述のような事情に鑑み為されたものであり、対象面に直接電流を印加することなく、対象面の全体的な表面抵抗を求める方法を提供することにより、塗装された金属面の塗装状態を定量的に評価することを可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、塗装された金属面の塗装状態を定量的に評価するための方法に関し、本発明の上記目的は、前記塗装された金属面に接触するように導電性物質を配置し、該導電性物質に電流を印加するための電極及び前記塗装された金属面の電位を測定するための参照電極を配置して、前記電流の印加量を変化させ、そのときの前記電位の変化量を測定するとともに、前記電流の変化量(δI)に対する前記電位の変化量(δφ’)との比(δφ’/δI)を前記塗装された金属面の総全面評価抵抗とみなし、該総全面評価抵抗から塗装の表面抵抗(R)を求めることによって塗装状態を定量的に評価することによって達成される。
【0006】
また、本発明の上記目的は、塗装された金属製のタンク内面の塗装状態を定量的に評価するための方法であって、該方法は、前記タンク内に導電性物質を充填し、該タンク内に電流を印加するための追加陽極及び前記タンク内面の電位を測定するための参照電極を挿入して、
前記電流の印加量を変化させ、そのときの前記電位の変化量を測定するとともに、前記電流の変化量(δI)に対する前記電位の変化量(δφ’)との比(δφ’/δI)を前記タンク内面の総全面評価抵抗とみなし、該総全面評価抵抗から塗装の表面抵抗(R)を求めることによって塗装状態を定量的に評価することを特徴とする塗装された金属製のタンク内面の塗装状態を定量的に評価するための方法によって達成される。
【0007】
さらに、本発明は、塗装された金属面の塗装状態を定量的に評価するためのシステムに関し、本発明の上記目的は、前記塗装された金属面に接触するように配置された導電性物質と、該導電性物質に電流を供給するための電極と、前記電流を供給するための電流源と、前記電流の供給量を変化させる電流調整手段と、前記充填される導電性物質内の電位を検出すための参照電極と、該参照電極の電位を計測する電圧計測手段と、前記電流の変化量(δI)に対する前記電位の変化量(δφ’)との比(δφ’/δI)を算出する手段とを備え、前記算出された比を塗装された金属面の総全面評価抵抗とみなし、該総全面評価抵抗から塗装の表面抵抗(R)を求めることによって塗装状態を定量的に評価することによって達成される。
【0008】
またさらに、本発明の上記目的は、塗装された金属製のタンク内面の塗装状態を評価するためのシステムであって、該システムは、前記タンク内に充填される導電性物質と、該タンク内に電流を供給するための追加陽極と、前記電流を供給するための電流源と、前記電流の供給量を変化させる電流調整手段と、前記タンク内面の電位を検出するための参照電極と、該参照電極の電位を計測する電圧計測手段と、前記電流の変化量(δI)に対する前記電位の変化量(δφ’)との比(δφ’/δI)を算出する手段とを備え、前記算出された比をタンク内面の総全面評価抵抗とみなし、該総全面評価抵抗から塗装の表面抵抗(R)を求めることによって塗装状態を定量的に評価することを特徴とする塗装された金属製のタンク内面の塗装状態を定量的に評価するためのシステムによって達成される。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る塗装された金属面の塗装状態の定量的な評価方法又はシステムによれば、環境温度や犠牲陽極(アノード)の個数によって変化する電位ではなく、塗装状態を直接評価できるという効果がある。また、暗く視覚的に難しい場所でも対象面の塗装状態を直接的かつ定量的に評価できるという優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、タンク内に電流を印加した時に生ずる電位変化から逆問題的なアプローチでタンク区画の全体的な表面抵抗を同定することによって、タンク内の塗装状態を定量的に評価しようとするものである。逆解析に必要な観測方程式はタンク内の電位をラプラス場の境界値問題としてモデル化することにより導かれる。
塗装状態を表す表面抵抗を求めるために、差分の測定および解析を行う。実施例では、実船におけるバラストタンクでの電位測定および定量的な評価を実施した。
また、本発明に係る解析方法の有効性を検証するために、表面抵抗を電位分布測定から解析により求める逆問題での解の収束性についても検討した。
【0011】
<1.塗装状態と表面抵抗>
金属表面近傍の電解液の電位φ[V]および電流密度i[A/m2]の関係は分極曲線と呼ばれる以下の式(1)の関数で表される。
φ=−fm(R・i)・・・・・・(1)
この関数は一般的に非線形であり、実験により求められる。なお、通常、分極曲線の実験では、ある参照電極に対する金属の電位Eを用いるが、解析では金属に対する電解液の電位を問題とするので、Eの符号を逆転させた量を電位φとして用いる。
【0012】
以下では、R[Ωm2]を表面抵抗と呼ぶ。表面抵抗Rが電位と電流密度それぞれの変化量を関係付け、値が大きいと絶縁性が高くなることを示すので、塗装状態を求めることは表面抵抗Rを求めることにつながる。特にペイント欠陥の面積比αは無塗装状態の表面抵抗をR0として、以下の式(2)で示すことができる。
α=R0/R・・・・・・(2)
【実施例】
【0013】
<2.本発明に係る方法の概要および手順>
図1はバラストタンク内における簡単な測定モデルを示す図である。図1について考える。すなわち、海水が満たされたバラストタンク1に追加アノード4と電位測定用の銀/塩化銀(Ag/AgCl)参照電極3を外部からタンク内部に入れる。タンクの内壁1には犠牲陽極(アノード)2が接続されている。追加アノード4を接地して電流を流した場合(スイッチSWがON)および追加アノード4の接地を切った場合(スイッチSWがOFF)の2つについて、参照電極3の位置を変えずにそれぞれの場合の電位φ’ONおよびφ’OFFを測定する。得られた2つの電位について差分δφ’(=φ’ON‐φ’OFF)を求める。
表面抵抗Rがタンク内で一定とする数理モデルを用いて、数値計算により予め仮定したRに対して、電解液中の任意の場所の電位を求めることができる。測定した電位の差δφ’に対して、数値解析より得られる同じ場所のδφ(R)の残差式(3)を考える。
【数1】
ここで、添字jは測定回数や、電極や測定の位置を変えたなどの種類を表す。電極の位置を変えて電位の差を求めると、異なる条件で有益な情報が増える場合があるため、必要に応じて複数の情報を得るようにする。追加アノードから出る電流をδIとして、式(3)においてδφ’jおよびδφj(R)の代わりに測定値および計算値に関する総全面評価抵抗δφ’j/δIおよびδφj(R)/δIを用いても良い。ここではδIが測定で得られる一定値のため、総全面評価抵抗の代わりにδφ’jおよびδφj(R)を用いてある。
表面抵抗Rを求めるとは二乗残差を示す式(3)を最小化するRを探し出すことである。Rの探索には適当な最適化手法(例えば、準ニュートン法又はGA法等。)を用いれば良い。なお印加する電流の向きはプラスでもマイナス方向でも良い、ただしマイナス方向の場合はδIは負として解析を行う。
【0014】
<3.差分による解析方法>
表面抵抗Rが決められた時に電解液中の電位φ(R)または電位の差分δφ(R)を求める方法について述べる。
海水などの電解液で満たされた領域Dについて、電位の指定された境界Γd、境界を通してD内に流れ込む電流の密度iが指定された領域Γnおよび分極曲線が指定された金属表面Γmで囲まれているとする。電解液内でイオンの蓄積または損失が無視できると仮定し、電解液の電気伝導度κを一定と仮定すると、D内の電位φは次のラプラス方程式(4)を満足する。
∇2φ=0 in D・・・・・・(4)
境界条件は次式で与えられる。
【数2】
式(7)は式(1)と同じものである。
ここで、φ0およびi0はそれぞれ指定された電位φおよび電流密度iの値、∂/∂nは外向き法線方向の微分である。
【0015】
追加アノードがある時(SWがON)とない時(SWがOFF)の電位をそれぞれφON、φOFFとおき、次式(8)を考える。
δφ=φON‐φOFF・・・・・・(8)
ここで、2つの電位φONおよびφOFFもラプラス方程式を満たすので、式(8)もラプラス方程式を満たす。従って、式(4)により次の式(9)が成り立つ。
∇2(δφ)=0 in D・・・・・・(9)
式(9)により1つのモデルに対して2種類の境界条件がある場合、その境界条件の差分を境界条件として、上記境界条件の式(5)〜(7)の代わりに次の3つの式が適用できる。
【数3】
式(12)でδiが小さい場合には、Taylor展開の点で式(12)の線形性が良くなる。さらに、式(1)に含まれる自然電位を表す定数項もなくなり、表面抵抗dfm/di=Rにのみ依存する。式(1)は式(13)のようになる。式(13)は金属表面近傍の電解液について成り立つ。
δφ=‐R・δi・・・・・・(13)
式(1)に含まれる自然電位を表す定数項は温度変化や参照電極の違いで変わるが、短時間で同一の参照電極を使う測定の場合には、式(13)で温度依存性や参照電極の違いなどを考慮しなくてもよくなることに大きな利点がある。この定式化により自然電位や参照電極のオフセットの影響を容易に排除できる。もし、電位または電流密度が2つの境界条件で一定の場合には、その差分の境界条件の値は式(10)または式(11)にしたがってゼロになる。
式(9)から式(12)の差分を用いる方法で解析手法としては境界要素法を使った。式の形が変わらないため境界要素法の定式化は式(4)から式(7)に関する通常の定式化と変わらずに定式化できる。この境界要素法の解析の代わりに有限要素法や差分法も適用できる。
また解析領域の形状が直方体や円柱の場合には解析的な式で電解液の電位の差分δφ(R)を表すこともできる場合がある。
【0016】
<3.1 差分電位を用いない方法>
差分を用いる方法の有効性を確かめるため、まずは、差分を使わない方法について検討した。
(1)手順
図2について考える。すなわち、図1と違い、追加アノード4の接地を切った場合(SWがOFF)であり、外部から入れた参照電極3により、電解液中のある場所での電位φ’OFFを測定する。
表面抵抗Rがタンク内で一定とする数理モデルを用いて、数値計算により予め仮定したRに対する任意の場所の電位を求めることができる。j回目の深さ7mの電位測定φ’jに対して、数値解析により得られる同じ場所の電位φ(RSS)について次式の二乗残差を最小にするようなRSSを総あたり法で求める。
【数4】
【0017】
(2)実験概要
図3は電位測定の実験に使用したバラストタンクを搭載したLNG船の外観写真である。この船は就航して23年目、全長約280mのLNG船であり、このバラストタンクで電位測定を実施した。
このLNG船は10個のバラストタンクを持ち、それぞれのバラストタンクは縦横10個ほどの区画に区切られている。測定に使用したのはそのうちの1つの区画である。この区画はペイントの修復が測定の5年前に行われている。測定した区画は直方体(L3.75m×W4m×H12.8m)で高さ7.6m分の海水を入れた(図4参照)。
測定のために亜鉛(Zn)追加アノード(φ15mm×L150mm)を入れたが、接地を切った場合(OFF)と接地した場合(ON)の両方について測定した。電位測定は銀/塩化銀(Ag/AgCl)参照電極を使い、中心線にしたがって海水表面から底面まで0.2m間隔で往復して測定した。追加アノード4の電流量も測定した。図2における電位と電流の測定にはデータロガー(日置電機製HIOKI 8422-50)とディジタルマルチメータ(日置電機製HIOKI 3257-50)をそれぞれ使用した。
【0018】
(3)測定結果
図5は、追加アノード4が海水表面から1.6mの深さにある場合において、バラストタンク内において測定した電位分布を示す図である。これからも分かるように、4回の測定結果はほぼ一致した。図5中の横軸の「深さ」は実際には天井からのケーブル長さを示し、12.8mを超えたところは電位を測定する参照電極3が底面に着いたことを示す。これによると参照電極3の位置による電位分布の違いはほとんど見られないことが分かる。
【0019】
(4)解析による同定
SWがOFFの場合についてRSSを同定した。解析は通常の境界要素法を使った。全ての解析で海水の電気伝導度をκ=4.6[S/m]とした。境界条件は、下記の表1で与えられる境界条件を使った。
【表1】
境界要素分割は図6で示す三角形一定要素による分割を用いた。要素と節点の数はそれぞれ5670と3619であった。解析に用いた条件として解析は追加アノードの総電流量が0[A]になるようにして、下部の区画へのアクセスホールの電位を図5から読み取り、φ=0.883[V]とした。アノード(Zn)の表面抵抗を0.16[Ωm2]とした。
【0020】
図5に示す実験結果と、同定したRSSを用いた境界要素法の内点計算の結果を合わせたものを図7に示す。バラストタンク壁面(SS鋼)の表面抵抗が35[Ωm2]の時に式(14)が最小となり、深さ7m付近の電位分布が実験結果と近くなった。しかしながら、底面付近では実験と解析が一致していない。この不一致はアクセスホールに関する不適切な境界条件、または金属の分極曲線の自然電位の項に関する不適切な境界条件が原因と考えられる。さらに参照電極のオフセット電位もこの不一致に影響を与えていると考えられる。
【0021】
<3.2 差分手法による比較>
次に、追加アノードがある場合(ON)と追加アノードがない場合(OFF)の差分の実験結果と解析による同定結果について説明する。図8は海水を充填したバラストタンクの一区画を示す図である。これに対する境界条件は、表2で与えられるものを使った。
【表2】
すなわち、犠牲陽極(Zn)の表面抵抗は0.16[Ωm2]で一定とした。また、追加アノードの総電流量は30mAとし、下部の区画へのアクセスホールの境界条件を実験値からδφ=0.005[V]とした。バラストタンクの表面抵抗(RSS)が変化した時の傾向を見るために、この値について表2の9種類の値を使った。
【0022】
表面抵抗RSSを変えたときの電位分布の変化の解析結果を図9に示す。これによれば表面抵抗が大きくなればなるほど、全体的な電位が上がりカソード防食が良くなることが分かる。この条件での追加アノードのサイドローブ(追加アノードの近傍部分)の最大電圧は0.005[V]程度であった。
実験値と比較するために、評価関数を下記の式(15)として、評価関数を最小にするような表面抵抗RSSを総あたり法で求めた。最初の3セット(j=1→3)は測定位置を海水面から深さ7mのところとし、4セット目(j=4)は8.2mとして、それぞれ別に表面抵抗RSSを求めた。
【数5】
最初の3セットおよび4セット目についてRSS=500[Ωm2]の時、式(15)が最小となった。その時の差分の実験結果と解析による同定結果の比較を図10(追加アノード位置1.6m)および図11(追加アノード位置3.6m)に示す。両者とも式(15)で用いた測定点以外でも実験結果と解析結果が良く一致した。自然電位、分極曲線の線形化および参照電極のオフセットを補償する点でこの差分の境界条件を使った境界要素法が有効であることが検証された。
【0023】
無塗装状態のSS鋼の表面抵抗は約1[Ωm2]である。表面抵抗RSSが500[Ωm2]であったということは、タンク壁面が平らであったとして、式(2)より0.2%(=1/500)のペイント欠陥があったことに相当する。実際にはSS鋼でできた強化用部材もあり総面積は増えるため、0.2%よりも良かったと考えられる。事前に区画内部を目視した際にも、ほとんどペイント欠陥は見られなかった。なおこの例では4セットの計測値から表面抵抗をもとめたが計測値が1セットの場合でも実施できる。計測値がセットの場合は式(15)を最小化する方法以外にδφ(R)を数表にしておき計測値δφ’に対応するRを数表から逆に読むことでRを求めることができる。以上の手順のフローを図12に示す。
【0024】
<4.逆問題の解の収束性>
上記においてはバラストタンク壁面の表面抵抗が未知、アノード(Zn)の表面抵抗が既知の問題を同定したが、ここでは両者が未知の場合を考える。バラストタンク壁面の表面抵抗をRSS、アノードの表面抵抗をRZnとおき、実験で得られる電位差をδφ’j、計算で得られる電位差をδφj(RSS,RZn)とおく。以下の式(16)を最小化するRSSおよびRZnを求める。
【数6】
【0025】
図13に追加アノードと測定点に関する2つの組合せの配置を示す。Case1は追加アノードを中央に、測定点をその上方に配置した場合で、Case2は追加アノードを元からあるアノードの傍らに配置し、測定点をその横方向に配置した場合である。Case1およびCase2についてSSおよびZnのそれぞれの表面抵抗RSS、RZnを変えた時の測定電位のON時とOFF時の差分の等高線を図14および図15に示す。図14および図15は相似形ではなく、2つの測定点から異なる情報を得る測定ができていることが分かる。
RSS=20およびRZn=0.16に解がある時に式(16)を用いて図14および図15の測定位置の電位差から図16が得られる。解は単峰性で収束性が良いことが分かる。また図14および図15よりRZnが既知の場合には測定点が1つでもRSSは簡単に求まる。従って、測定場所が2点では2つの表面抵抗が求められること、測定場所が1点で1つの表面抵抗が求められることが分かる。
【0026】
以上、本発明に係る塗装された金属面の塗装状態の定量的な評価方法について、バラストタンクのような閉じた空間における電位差測定に基づいて説明したが、対象となる塗装面の面積があまり広くなければ、オープンな領域においても本発明に係る方法を用いて塗装状態の評価を行なうことが可能である。対象があまりに広くなり電流が分散してしまう場合には平均的な表面抵抗値が意味をなさなくなるからである。たとえば、小さな船の船体表面や海中杭、ポンプ、パイプ、岸壁の鋼鉄製矢板などの壁面の表面などが適用可能なオープン領域の例になる。この場合の様子を図17に示す。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】バラストタンク内における簡単な測定モデルを示す図である。
【図2】差分電位を用いない場合におけるバラストタンク内の簡単な測定モデルを示す図である。
【図3】電位測定の実験に使用したバラストタンクを搭載したLNG船の外観写真である。
【図4】海水を充填したバラストタンクの一区画を示す図である。
【図5】バラストタンク内において測定した電位分布を示す図である(追加アノードが海水表面から1.6mの深さにある場合である。)。
【図6】バラストタンクの一区画を三角形一定要素によってメッシュ分割したものを示す図である。
【図7】実験結果と、同定したRSSを用いた境界要素法の内点計算の結果をあわせて表示した図である。
【図8】海水を充填したバラストタンクの一区画を示す図である。
【図9】表面抵抗を変えたときの電位分布の変化の解析結果を示す図である。
【図10】RSS=500[Ωm2]の時の電位分布の差分の実験結果と解析による同定結果の比較を示す図である(追加アノードの位置=1.6m)。
【図11】RSS=500[Ωm2]の時の電位分布の差分の実験結果と解析による同定結果の比較を示す図である(追加アノードの位置=3.6m)。
【図12】異なるタンクや計測位置に対しても統一的に評価できる指標である表面抵抗Rを求めるためのフローを示す図である。
【図13】追加アノードと測定点の配置に関する2つの組合せを示す図である。
【図14】表面抵抗RSS、RZnを変えた時の測定電位のON時とOFF時の差分の等高線を示す図である(case1)。
【図15】表面抵抗RSS、RZnを変えた時の測定電位のON時とOFF時の差分の等高線を示す図である(case2)。
【図16】RSS=20およびRZn=0.16に解がある時に、図13および図14の測定位置の電位差から式(16)を用いて得られる電位差の等高線を示す図である。
【図17】オープンな導電性物質に浸された構造物に対する適用例を示す図である。
【符号の説明】
【0028】
1 隔壁(SS鋼)
2 犠牲陽極(アノード)
3 参照電極
4 追加アノード
SW スイッチ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗装された金属面の塗装状態を定量的に評価するための方法であって、該方法は、前記塗装された金属面に接触するように導電性物質を配置し、該導電性物質に電流を印加するための電極及び前記塗装された金属面の電位を測定するための参照電極を配置して、
前記電流の印加量を変化させ、そのときの前記電位の変化量を測定するとともに、前記電流の変化量(δI)に対する前記電位の変化量(δφ’)との比(δφ’/δI)を前記塗装された金属面の総全面評価抵抗とみなし、該総全面評価抵抗から塗装の表面抵抗(R)を求めることによって塗装状態を定量的に評価することを特徴とする塗装された金属面の塗装状態を定量的に評価するための方法。
【請求項2】
塗装された金属製のタンク内面の塗装状態を定量的に評価するための方法であって、該方法は、前記タンク内に導電性物質を充填し、該タンク内に電流を印加するための追加陽極及び前記タンク内面の電位を測定するための参照電極を挿入して、
前記電流の印加量を変化させ、そのときの前記電位の変化量を測定するとともに、前記電流の変化量(δI)に対する前記電位の変化量(δφ’)との比(δφ’/δI)を前記タンク内面の総全面評価抵抗とみなし、該総全面評価抵抗から塗装の表面抵抗(R)を求めることによって塗装状態を定量的に評価することを特徴とする塗装された金属製のタンク内面の塗装状態を定量的に評価するための方法。
【請求項3】
前記タンクが船舶のバラストタンクであり、前記導電性物質が海水である請求項2に記載の塗装された金属製のタンク内面の塗装状態を定量的に評価するための方法。
【請求項4】
塗装された金属面の塗装状態を定量的に評価するためのシステムであって、該システムは、前記塗装された金属面に接触するように配置された導電性物質と、該導電性物質に電流を供給するための電極と、前記電流を供給するための電流源と、前記電流の供給量を変化させる電流調整手段と、前記塗装された金属面の電位を検出するための参照電極と、該参照電極の電位を計測する電圧計測手段と、前記電流の変化量(δI)に対する前記電位の変化量(δφ’)との比(δφ’/δI)を算出する手段とを備え、
前記算出された比を塗装された金属面の総全面評価抵抗とみなし、該総全面評価抵抗から塗装の表面抵抗(R)を求めることによって塗装状態を定量的に評価することを特徴とする塗装された金属面の塗装状態を定量的に評価するためのシステム。
【請求項5】
塗装された金属製のタンク内面の塗装状態を評価するためのシステムであって、該システムは、前記タンク内に充填される導電性物質と、該タンク内に電流を供給するための追加陽極と、前記電流を供給するための電流源と、前記電流の供給量を変化させる電流調整手段と、前記タンク内面の電位を検出するための参照電極と、該参照電極の電位を計測する電圧計測手段と、前記電流の変化量(δI)に対する前記電位の変化量(δφ’)との比(δφ’/δI)を算出する手段とを備え、
前記算出された比をタンク内面の総全面評価抵抗とみなし、該総全面評価抵抗から塗装の表面抵抗(R)を求めることによって塗装状態を定量的に評価することを特徴とする塗装された金属製のタンク内面の塗装状態を定量的に評価するためのシステム。
【請求項6】
前記タンクが船舶のバラストタンクであり、前記導電性物質が海水である請求項5に記載の塗装された金属製のタンク内面の塗装状態を定量的に評価するためのシステム。
【請求項7】
前記電流調整手段がオンオフスイッチである請求項6に記載の塗装された金属製のタンク内面の塗装状態を定量的に評価するためのシステム。
【請求項8】
前記総全面評価抵抗と前記表面抵抗との関係を数値計算で求めることによって前記塗装の表面抵抗(R)を求めることを特徴とする請求項1に記載の塗装された金属面の塗装状態を定量的に評価するための方法。
【請求項9】
前記総全面評価抵抗と前記表面抵抗との関係を数値計算で求めることによって前記塗装の表面抵抗(R)を求めることを特徴とする請求項2または3に記載の塗装された金属製のタンク内面の塗装状態を定量的に評価するための方法。
【請求項10】
前記塗装の表面抵抗(R)を求める手段が、前記総全面評価抵抗と前記表面抵抗の関係を数値計算で求める手段である請求項4に記載の塗装された金属面の塗装状態を定量的に評価するためのシステム。
【請求項11】
前記塗装の表面抵抗(R)を求める手段が、前記総全面評価抵抗と前記表面抵抗の関係を数値計算で求める手段である請求項5又は6に記載の塗装された金属製のタンク内面の塗装状態を定量的に評価するためのシステム。
【請求項12】
あらかじめ前記総全面評価抵抗と前記表面抵抗の関係を数値計算などにより数表もしくは関数として準備しておき、前記数表もしくは関数を用いて前記総全面評価抵抗値から表面抵抗を求めることを特徴とする請求項1に記載の塗装された金属面の塗装状態を定量的に評価するための方法。
【請求項13】
あらかじめ前記総全面評価抵抗と前記表面抵抗の関係を数値計算などにより数表もしくは関数として準備しておき、前記数表もしくは関数を用いて前記総全面評価抵抗値から表面抵抗を求めることを特徴とする請求項2又は3に記載の塗装された金属製のタンク内面の塗装状態を定量的に評価するための方法。
【請求項14】
前記塗装の表面抵抗(R)を求める手段が、あらかじめ前記総全面評価抵抗と前記表面抵抗の関係を数値計算などにより数表もしくは関数として準備しておき、前記数表もしくは関数を用いて前記総全面評価抵抗値から表面抵抗を求める手段である請求項4に記載の塗装された金属面の塗装状態を定量的に評価するためのシステム。
【請求項15】
前記塗装の表面抵抗(R)を求める手段が、あらかじめ前記総全面評価抵抗と前記表面抵抗の関係を数値計算などにより数表もしくは関数として準備しておき、前記数表もしくは関数を用いて前記総全面評価抵抗値から表面抵抗を求める手段である請求項5又は6に記載の塗装された金属製のタンク内面の塗装状態を定量的に評価するためのシステム。
【請求項16】
前記総全面評価抵抗と前記表面抵抗の関係を求める数値計算が最小2乗法である請求項8又は12に記載の塗装された金属面の塗装状態を定量的に評価するための方法。
【請求項17】
前記総全面評価抵抗と前記表面抵抗の関係を求める数値計算が最小2乗法である請求項9又は13に記載の塗装された金属製のタンク内面の塗装状態を定量的に評価するための方法。
【請求項18】
前記総全面評価抵抗と前記表面抵抗の関係を求める数値計算が最小2乗法である請求項10又は14に記載の塗装された金属面の塗装状態を定量的に評価するためのシステム。
【請求項19】
前記総全面評価抵抗と前記表面抵抗の関係を求める数値計算が最小2乗法である請求項11又は15に記載の塗装された金属製のタンク内面の塗装状態を定量的に評価するためのシステム。
【請求項1】
塗装された金属面の塗装状態を定量的に評価するための方法であって、該方法は、前記塗装された金属面に接触するように導電性物質を配置し、該導電性物質に電流を印加するための電極及び前記塗装された金属面の電位を測定するための参照電極を配置して、
前記電流の印加量を変化させ、そのときの前記電位の変化量を測定するとともに、前記電流の変化量(δI)に対する前記電位の変化量(δφ’)との比(δφ’/δI)を前記塗装された金属面の総全面評価抵抗とみなし、該総全面評価抵抗から塗装の表面抵抗(R)を求めることによって塗装状態を定量的に評価することを特徴とする塗装された金属面の塗装状態を定量的に評価するための方法。
【請求項2】
塗装された金属製のタンク内面の塗装状態を定量的に評価するための方法であって、該方法は、前記タンク内に導電性物質を充填し、該タンク内に電流を印加するための追加陽極及び前記タンク内面の電位を測定するための参照電極を挿入して、
前記電流の印加量を変化させ、そのときの前記電位の変化量を測定するとともに、前記電流の変化量(δI)に対する前記電位の変化量(δφ’)との比(δφ’/δI)を前記タンク内面の総全面評価抵抗とみなし、該総全面評価抵抗から塗装の表面抵抗(R)を求めることによって塗装状態を定量的に評価することを特徴とする塗装された金属製のタンク内面の塗装状態を定量的に評価するための方法。
【請求項3】
前記タンクが船舶のバラストタンクであり、前記導電性物質が海水である請求項2に記載の塗装された金属製のタンク内面の塗装状態を定量的に評価するための方法。
【請求項4】
塗装された金属面の塗装状態を定量的に評価するためのシステムであって、該システムは、前記塗装された金属面に接触するように配置された導電性物質と、該導電性物質に電流を供給するための電極と、前記電流を供給するための電流源と、前記電流の供給量を変化させる電流調整手段と、前記塗装された金属面の電位を検出するための参照電極と、該参照電極の電位を計測する電圧計測手段と、前記電流の変化量(δI)に対する前記電位の変化量(δφ’)との比(δφ’/δI)を算出する手段とを備え、
前記算出された比を塗装された金属面の総全面評価抵抗とみなし、該総全面評価抵抗から塗装の表面抵抗(R)を求めることによって塗装状態を定量的に評価することを特徴とする塗装された金属面の塗装状態を定量的に評価するためのシステム。
【請求項5】
塗装された金属製のタンク内面の塗装状態を評価するためのシステムであって、該システムは、前記タンク内に充填される導電性物質と、該タンク内に電流を供給するための追加陽極と、前記電流を供給するための電流源と、前記電流の供給量を変化させる電流調整手段と、前記タンク内面の電位を検出するための参照電極と、該参照電極の電位を計測する電圧計測手段と、前記電流の変化量(δI)に対する前記電位の変化量(δφ’)との比(δφ’/δI)を算出する手段とを備え、
前記算出された比をタンク内面の総全面評価抵抗とみなし、該総全面評価抵抗から塗装の表面抵抗(R)を求めることによって塗装状態を定量的に評価することを特徴とする塗装された金属製のタンク内面の塗装状態を定量的に評価するためのシステム。
【請求項6】
前記タンクが船舶のバラストタンクであり、前記導電性物質が海水である請求項5に記載の塗装された金属製のタンク内面の塗装状態を定量的に評価するためのシステム。
【請求項7】
前記電流調整手段がオンオフスイッチである請求項6に記載の塗装された金属製のタンク内面の塗装状態を定量的に評価するためのシステム。
【請求項8】
前記総全面評価抵抗と前記表面抵抗との関係を数値計算で求めることによって前記塗装の表面抵抗(R)を求めることを特徴とする請求項1に記載の塗装された金属面の塗装状態を定量的に評価するための方法。
【請求項9】
前記総全面評価抵抗と前記表面抵抗との関係を数値計算で求めることによって前記塗装の表面抵抗(R)を求めることを特徴とする請求項2または3に記載の塗装された金属製のタンク内面の塗装状態を定量的に評価するための方法。
【請求項10】
前記塗装の表面抵抗(R)を求める手段が、前記総全面評価抵抗と前記表面抵抗の関係を数値計算で求める手段である請求項4に記載の塗装された金属面の塗装状態を定量的に評価するためのシステム。
【請求項11】
前記塗装の表面抵抗(R)を求める手段が、前記総全面評価抵抗と前記表面抵抗の関係を数値計算で求める手段である請求項5又は6に記載の塗装された金属製のタンク内面の塗装状態を定量的に評価するためのシステム。
【請求項12】
あらかじめ前記総全面評価抵抗と前記表面抵抗の関係を数値計算などにより数表もしくは関数として準備しておき、前記数表もしくは関数を用いて前記総全面評価抵抗値から表面抵抗を求めることを特徴とする請求項1に記載の塗装された金属面の塗装状態を定量的に評価するための方法。
【請求項13】
あらかじめ前記総全面評価抵抗と前記表面抵抗の関係を数値計算などにより数表もしくは関数として準備しておき、前記数表もしくは関数を用いて前記総全面評価抵抗値から表面抵抗を求めることを特徴とする請求項2又は3に記載の塗装された金属製のタンク内面の塗装状態を定量的に評価するための方法。
【請求項14】
前記塗装の表面抵抗(R)を求める手段が、あらかじめ前記総全面評価抵抗と前記表面抵抗の関係を数値計算などにより数表もしくは関数として準備しておき、前記数表もしくは関数を用いて前記総全面評価抵抗値から表面抵抗を求める手段である請求項4に記載の塗装された金属面の塗装状態を定量的に評価するためのシステム。
【請求項15】
前記塗装の表面抵抗(R)を求める手段が、あらかじめ前記総全面評価抵抗と前記表面抵抗の関係を数値計算などにより数表もしくは関数として準備しておき、前記数表もしくは関数を用いて前記総全面評価抵抗値から表面抵抗を求める手段である請求項5又は6に記載の塗装された金属製のタンク内面の塗装状態を定量的に評価するためのシステム。
【請求項16】
前記総全面評価抵抗と前記表面抵抗の関係を求める数値計算が最小2乗法である請求項8又は12に記載の塗装された金属面の塗装状態を定量的に評価するための方法。
【請求項17】
前記総全面評価抵抗と前記表面抵抗の関係を求める数値計算が最小2乗法である請求項9又は13に記載の塗装された金属製のタンク内面の塗装状態を定量的に評価するための方法。
【請求項18】
前記総全面評価抵抗と前記表面抵抗の関係を求める数値計算が最小2乗法である請求項10又は14に記載の塗装された金属面の塗装状態を定量的に評価するためのシステム。
【請求項19】
前記総全面評価抵抗と前記表面抵抗の関係を求める数値計算が最小2乗法である請求項11又は15に記載の塗装された金属製のタンク内面の塗装状態を定量的に評価するためのシステム。
【図1】
【図2】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図3】
【図2】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図3】
【公開番号】特開2009−300228(P2009−300228A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−154344(P2008−154344)
【出願日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【出願人】(000227180)日置電機株式会社 (982)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【出願人】(000227180)日置電機株式会社 (982)
【Fターム(参考)】
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