説明

塗装される基材上の汚染をブロックする方法及びその方法への使用に適当な複合材料

塗装される基材上の汚染のブロック方法及び開示された方法に従って使用できる汚染ブロック複合材料が開示される。広い態様において、本発明方法は、基材の汚染部分を乾燥フィルム層と接触させ、乾燥フィルム層に圧力を適用して、基材の汚染部分及び基材の汚染部分に隣接した基材の少なくとも一部分に乾燥フィルム層を接着させ、そしてその後に、乾燥フィルム層及び隣接基材に1層又はそれ以上の追加液状被覆層で被覆する工程を含む。記載された方法に従って使用できる汚染ブロック複合材料は、圧力が適用される剥離層、汚染をブロックする働きをする、透明であるか顔料を添加することができる乾燥フィルム層及び基材の汚染部分及び少なくとも、基材の汚染部分に隣接した基材の部分への乾燥フィルム層の接着を助けるための任意的な接着剤層を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚染ブロッキング(stain blocking)の分野、更に詳しくは塗装される基材上の汚染をブロックする方法に関する。本発明は更に、本発明の方法による使用に適当な汚染ブロック複合材料に関する。
【背景技術】
【0002】
塗装される建築基材上の汚染及び汚点を被覆しようとする試みは、従来より、溶剤系又は水性の液体ペイント又はプライマーを用いて実施されてきた。液体汚染ブロック被覆の使用は一般にいくつかの不利点を有する。そのうちのいくつかは、全ての液状被覆製品に共通の不利点であり、他は、発生することが知られている種々の汚染ブロックへのこれらの製品の使用に特有の不利点である。
【0003】
ほとんどの液状被覆製品に共通の不利点としては、揮発性有機化合物(VOC)の存在、臭気、その後の洗浄(cleanup)の必要性、及び次の液状被覆層の適用前に必要な乾燥時間が挙げられる。汚染ブロック剤としての液状被覆製品の使用に特有の不利点としては、被覆の湿潤時に液状被覆と汚染との相互作用によって起こるもの、及び被覆の乾燥後に乾燥被覆と汚染との相互作用によって起こるもの、例えば更なる液状被覆層の適用時に起こることが知られているものが挙げられる。
【0004】
塗装される基材上に種々の汚染が発生することは知られており、そのことが適切な液状汚染ブロック被覆の選択を困難にする。実際に、通常発生する種々の型の汚染全てをブロックするのに満足な液状被覆は、一つには種々の汚染の様々な物理化学的性質のため、まだ開発されていない。
【0005】
汚染ブロックペイントが使用される典型的な汚染としては、インキ、クレヨン、口紅、皮膚鉛筆、煙残渣、タンニンなどが挙げられる。これらの汚染は、落書きとして住宅壁又は商業壁上に、木製基材、木材複合基材、コンクリート基材、紙基材(例えば、ウォールボード被覆)及び通常液状被覆で塗装される他のこのような基材上における見られることができる。汚染は基材自体の表面に、又は基材の表面の近くに、又は基材に予め適用されたペイント層の表面に、又は基材表面のかなり下に存在できる。これらの汚染は、染料、共役有機化合物、芳香族色素体などのような成分を有する場合があり、有機液体中、水中又は両者に可溶である場合がある。節を含む木材もまた、汚染源であるおそれがある。
【0006】
いわゆる汚染ブロック剤を含む水性ペイントは、水溶性汚染を容易に再溶解させ、それらを表面に移行させるので、多数の適用後でさえ依然として視認可能であることが多い。インキ染料はペイントの水(連続媒体)中に溶けやすいので、水溶性インキは水性ペイントでブロックすることが特に困難である。乾燥時でさえ、後から適用された液状被覆層が再び、これらの水溶性汚染を再溶解させ、その結果、数回の水性ペイントの適用後でさえ、汚染が存在し且つ視認可能である。
【0007】
同様に、溶剤系ペイントは親油性汚染も再溶解し得る。このような汚染の着色化合物又はポリマーは次に、フィルムが乾燥状態に向かう前に、液状フィルムを通って輸送される可能性がある。極めて薄いフィルム(多くの場合、被覆は厚さ約25〜約375マイクロメーター(約1〜約15mil)で適用される)を通るこれらの化合物の拡散は典型的に、汚染源から適用フィルムの上部まで非常に素早く、間違いなく数分以内に起こる。従って、汚染又は汚染色素体は、適用液状ペイント又はプライマーの連続媒体(水及び/又は有機溶剤)へのその溶解性のため、適用液体ペイント又はプライマーを通って移動する可能性がある。
【0008】
節を含む木材は特に面倒となるおそれがある。暗色の節の色素体にとっての溶剤を含むペイントをこのような木材に塗布すると、新しく形成されたペイント表面に着色化学薬品が移行するおそれがある。従って、他の親油性汚染と同様に、木材中の節のせいで、木製基材は節及びその色素体を隠蔽するために塗装するのが困難である可能性がある。次に、節からの色素体はペイント連続相への色素体の溶解性のために溶解し且つ新たに塗装された表面に輸送され続けるため、ペイントの複数の被覆でさえ均一な外観を得るのは困難である。
【0009】
乾燥ラテックスフィルムにおける汚染の移行に関連して多孔性を制限するために、通常は、VOC含量がより高いがより凝集したフィルムを形成するより凝集性の溶剤を液体ペイントに添加することによって、より多孔性でないラテックスプライマーフィルムが形成される。あるいは、最小量の溶剤によって周囲温度でより良好なフィルムを得るためによりTgの低い又はより低分子量のポリマーを用いる場合には、得られるフィルムはより粘着性であり且つ吸塵の傾向があり得る。汚染移動を遅らせることができるより粘性の被覆は、垂直適用における不良な性能(不良な垂れ抵抗性)のような不所望な特性を有するおそれがある。組成物の乾燥に起因する影響に関わりなく汚染ブロック組成物を選択するならば、明らかに有利であろう。
【0010】
典型的には、可溶性着色材料で汚染された基材に液体汚染ブロックプライマーペイントを適用する場合には、汚染は可溶化され且つ乾燥しつつあるペイントフィルムを通って非常に急速に、たいてい数秒以内に移動する。従って、汚染は湿潤被覆を通って急速に移動するので、プライマーペイントは汚染をブロックしていない。プライマー被覆が乾燥時に、被覆全体に分散された着色化合物を隠蔽しないが被覆表面下の塗料内の汚染を捕捉する場合には、プライマー被覆はせいぜい汚染捕捉製剤と見なすことができだけで、汚染ブロック製剤とは見なすことはできない。このような場合、乾燥プライマー表面上において依然として色を視認できるであろう。プライマー被覆が優れた汚染捕捉剤である場合には、それは、その後に適用される液状被覆を通る着色汚染の輸送を阻害するが、多くの場合おそらくは汚染は視認できる状態のままである。それにもかかわらず、今日市販されているより良好な汚染捕捉ラテックスプライマーペイントのいくつかは、水溶性汚染を完全には捕捉しない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
液状ペイント又はプライマー汚染ブロック被覆に関連する欠点のない汚染ブロック効果を得ることができれば有利なことは明白であろう。汚染の親水性又は親油性にかかわらず且つ後からの1種又はそれ以上の追加液状被覆層の適用の前に液状ペイント又はプライマーが乾燥されるまで待つ必要なしに、汚染をブロックできれば特に有利であろう。後からの液状被覆層の適用時に表面にじみをより起こしにくい比較的非孔質の被覆を提供できれば、更に有利であろう。
【課題を解決するための手段】
【0012】
特許請求の範囲に記載した本発明は、1層又はそれ以上の液状被覆層が塗装される基材上の汚染をブロックする方法及びこのような方法に従って使用できる汚染ブロック組成物に関する。一実施態様において、「汚染(stain)」は、くぎ穴、掻き傷又は削り溝のような表面の欠陥である。一実施態様において、本発明の方法は、基材の汚染層を乾燥フィルム層と接触させ、乾燥フィルム層に圧力を加えて、乾燥フィルム層を基材の汚染部分及び基材の汚染部分に隣接した基材の少なくとも一部分に接着させ;そしてその後に基材及び乾燥フィルム層に1層又はそれ以上の追加液状被覆層を適用する工程を含む。本発明は更に、剥離層;透明であるか又は顔料を添加することができる乾燥フィルム層;並びに場合によっては、基材の汚染部分に及び基材の汚染部分に直接隣接した基材の部分への乾燥フィルム層の接着を補助するために施される、透明であるか又は顔料を添加することができる接着層を含む、特許請求の範囲に記載された方法に従って使用できる汚染ブロック組成物に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は、剥離層、乾燥フィルム層及び任意の接着剤層を含む乾燥フィルム複合材料の側面図を図示する。
【0014】
一実施態様によれば、本発明は塗装される基材上の汚染のブロック方法に関する。この方法は、基材の汚染部分を乾燥フィルム層と接触させ;乾燥フィルム層に圧力を加えて、乾燥フィルム層を基材の汚染部分及び基材の汚染部分に隣接した基材の少なくとも一部分に接着させ;そしてその後に基材及び乾燥フィルム層に1層又はそれ以上の液状被覆層を適用する工程を含む。乾燥フィルム層は、基材の汚染部分及び周囲基材部分と直接接触することができ、あるいは任意の接着剤層を用いて汚染部分及び周囲基材部分に接着されることができる。乾燥フィルム層自体が目的基材に充分な接着を生じる場合には、別の接着剤層は必要ない。
【0015】
別の実施態様において、本発明は、剥離層;透明であるか又は顔料を添加することができる乾燥フィルム層;並びに基材の汚染部分に及び基材の汚染部分に隣接した基材の少なくとも一部分への乾燥フィルム層の接着を補助することを目的とする、透明であるか又は顔料を添加することができる任意の接着剤層を含む、特許請求の範囲に記載された方法に従って使用できる汚染ブロック組成物に関する。
【0016】
用語「基材(substrate)」は文字通りに、1層若しくはそれ以上の液状被覆層を有利に適用又は塗装できる任意の面を意味する。床、壁及び天井は全て、種々の可動部分と同様に、特許請求の範囲に記載された方法に従って使用するのに適当な基材である。固定基材の例にはルーフィング材及びポーチがある。可動物の例としては、ドア、ドアパネル、平らな素材、例えば成形品、家具、キャビネット及びそれらのドア並びに枠、窓枠、更に前記用途に使用するための板材が挙げられる。一態様において、基材は実質的に垂直であり、例えば住居、オフィス、倉庫、他の産業施設の壁などである。塗り壁、ウォールボード又はパーティクルボードのような基材は裸であってもよいし、あるいは1層若しくはそれ以上の被覆層が、又は壁紙さえもすでに被覆されていてもよい。重要なのは、基材に1層又はそれ以上の液状被覆層を被覆する前にブロックしようとする、本明細書中において定義した1種又はそれ以上の汚染を基材が有すること、並びに汚染が乾燥フィルム層でブロックされた後において1種又はそれ以上の液状被覆層の被覆に基材が適当であることだけである。
【0017】
乾燥フィルム層が基材の汚染部分及び隣接基材と直接接触する場合には、1層又はそれ以上の液状被覆層の適用される時期まで乾燥フィルム層が基材と接触したままであるように、乾燥フィルム層は充分な接着を示さなければならない。乾燥フィルム層は、基材の汚染部分に直接接触させることもできるし、あるいは場合によっては、接着剤層を用いて基材の汚染部分及び周囲基材に接着させることもできる。言うまでもなく、乾燥フィルム層自体が目的とする基材への充分な接着を生じる場合には、別個の接着剤層は必要ない。また、乾燥フィルム層は最終塗装基材の目的とする耐用年数の間、基材の汚染部分及び周囲の基材に接着したままであることが重要である。
【0018】
用語「ブロックされる」とは、1層若しくはそれ以上の液状被覆層の適用後に汚染が見えないこと又は実質的に視認可能なレベル以下であること、あるいは汚染が視認できないか又はわずかしか視認できない場合には、1層若しくはそれ以上の後から適用される液状被覆層の接着力を汚染が低下させるのを防ぐために汚染が機能的にブロックされることを意味する。以下に説明するように、乾燥フィルム層自体は顔料が添加される必要はなく、その後に1層又はそれ以上の液状被覆層が適用された後に乾燥フィルム層を通して汚染が表面ににじむのを防ぎさえすればよい。一部の実施態様において接着剤層は最も厚い層であることができるので、一部の実施態様においては任意の接着剤層には顔料が添加される。他の実施態様においては、乾燥フィルム層自体が接着剤樹脂を含むことができ、あるいは接着剤層が必要ないほど充分な接着性を示すことができる。
【0019】
基材の汚染部分を乾燥フィルム層と「接触させる」とは、乾燥フィルム層が基材の汚染部分と直接接触していること(汚染は基材上又は基材内部にある)、あるいは乾燥フィルム層が任意の接着剤層を介して間接的に汚染と接触することを意味する。圧力は、乾燥フィルム層を基材の汚染部分及び周囲の基材に接着させるのに必要な程度まで適用する。
【0020】
用語「汚染(stain)」は、視認できる又は肉眼で容易に見えるか否かにかかわらず、汚染が見えないように又は1層又はそれ以上の液状被覆層が基材の汚染部分に充分に接着するように基材を充分に被覆する能力に影響を与える全ての痕跡、汚点、変色、又は全ての付着物を文字通りに包含するものとする。従って、用語「汚染」は、インキ、クレヨン、口紅、皮膚鉛筆、煙残渣、タンニン、水などによって引き起こされる痕跡を含むが、これらに限定されるものではない。これらの汚染は、住居壁又は商業壁上に落書き、ペン又はカラーマーカーからのマーキングとして、木製基材上に、木材複合基材上に、コンクリート基材上に、紙基材(例えば、ウォールボード被覆)上に、及び通常、1層又はそれ以上の液状被覆層が塗装される他のこのような基材上において見られることができる。
【0021】
これらの汚染は基材自体の表面に、又は基材に予め適用されたペイント層の表面に、又は基材に予め適用されたペイント層の内部にも、又はその下、即ち、基材表面のはるかに下に存在できる。これらの汚染は、染料、共役有機化合物、芳香族色素体などのような成分を有する場合があり、有機液体、水又は両者に可溶である場合がある。従って、木材中の節もまた、汚染と見なされる。インキ、タンニン、植物質又は鉱物質、食物物質、煙残渣(多くの場合、黄色〜茶色又は黒色)など、特にペイントが湿った状態で適用される場合にペイント・トップコートを通して「表面ににじみ出る(bleed through)」色素体を有するものからなるか又はそれらから生じるおそれがある、下にある基材とは色が異なる任意の見苦しい汚点又は物質は全て、特許請求の範囲に記載された本発明に従ってブロックするのに適当な汚染の定義内に包含されるものとし、後から適用される液状被覆(特に水性液状被覆)を基材に接着できないようにするかもしれない種々の透明な又は顔料が添加されていない油状若しくは親油性物質のような、肉眼では視認できない付着物も同様である。これらとしては、鉱油、ペトロラタム、透明若しくは顔料が添加されたワックスペンシル若しくはクレヨン、又は本質的に油状若しくは油脂状の多くの他の親油性物質、例えば、種々の食物残渣が挙げられるがこれらに限定されるものではない。用語「汚染」はまた、後から適用される液体塗料層の、基材の汚染部分への適切な接着を妨げるかもしれない、くぎ穴のような他の軽微な表面欠陥を包含するものとする。従って、本発明の一実施態様の実施において、このような表面欠陥は、1層又はそれ以上の液状被覆層を適用することによって表面欠陥が隠されることができるように効果的にブロックすることができる。
【0022】
「基材の汚染部分」とは、汚染が見えないように、又は後に適用される液状被覆層から汚染が表面ににじみでないように、又は後から適用される液状被覆層の接着に汚染が影響を与える可能性がないように乾燥フィルム層が付着される、汚染が表面又は内部に存在する基材の部分を意味する。場合によっては、乾燥フィルム層又は任意の接着剤層が、基材の表面に存在する汚染と直接接触するであろう。他の場合には、乾燥フィルム層又は任意の接着剤層が、基材内部に存在する汚染より上の基材表面と接触するであろう。更に別の場合には、そうでなければ、適用された乾燥フィルム層の端部から、1層又はそれ以上の後から適用された液状被覆層に又はそれを通って移行するかもしれない汚染の移行を効果的にブロックするために、基材の汚染部分は汚染に直接隣接した基材の部分を含む。
【0023】
汚染が効果的にブロックされるように汚染を確実に覆うために、乾燥フィルム層は、基材の汚染部分に隣接した基材の少なくとも一部分に付随的に接着するものとする。この隣接部分の大きさ又は形状は重要ではなく、便宜上は簡単に、基材の汚染部分の大きさ及び形状に基づいて被覆を避けるのが困難な基材の部分とすることができる。乾燥フィルム層は、1層又はそれ以上の液状被覆層が適用される表面としての基材の外観及び機能に悪影響を与えないように選ばれることができるので、乾燥フィルム層による基材のこの隣接部分の被覆は、この目的での基材の適合性にそれほど影響を与えない。従って、基材の隣接部分をどの程度、乾燥フィルム層と接触させるかは重要でない。乾燥フィルム層は、基材の汚染部分のみを被覆するように調整することもできるし、あるいは乾燥フィルム層は、基材の汚染部分の大きさ及び形状に合うように調整することなく、最初に提供された大きさ又は形状のままにすることもできる。
【0024】
乾燥フィルム層は、アクリル、ウレタン、エポキシ、炭化水素樹脂、ビニル、エチレンコポリマー、スチレンコポリマーなどのような多数の型のポリマーのいずれかのフィルムからなることができる。乾燥フィルム層は、剥離層に液状ペイントを被覆し且つ乾燥することによって、又は任意の他の公知のポリマーフィルム適用法によって、例えば粉体被覆を適用し且つ溶融させることによる、フレーム溶射によるなどして適用できる。乾燥は周囲温度又は高温において行うことができる。乾燥フィルムは、架橋ポリマー若しくは未架橋ポリマー、又は両者の混合物からなることができる。従って、本発明に従って使用できる乾燥フィルム層は、種々のポリマーフィルムからなることができる。これらのポリマーはカチオン性、アニオン性又は中性であることができる。乾燥フィルム層は、乾燥フィルムの各層がカチオン性、アニオン性又は中性ポリマーである多層であることができる。従って、乾燥フィルムの各層は、静電荷又は負電荷を有することもできるし、あるいは中性であることもできる。乾燥フィルム層とは、好ましくは、指触乾燥状態であり且つ液状物質を滲出しないものを意味する。
【0025】
乾燥フィルム層に使用するポリマーの型としては以下のものが挙げられるが、これらに限定するものではない。アクリルポリマー及びコポリマー、オレフィンポリマー及びコポリマー、ビニルエステルポリマー及びコポリマー、ジオレフィンポリマー及びコポリマー、塩化ビニルポリマー及びコポリマー、塩化ビニリデンポリマー及びコポリマー、スチレン及び置換スチレンポリマー及びコポリマー、中性ポリマー、例えばロジン類、炭化水素ポリマー、スチレン樹脂、ポリウレタン、ポリ尿素、メラミン樹脂硬化ヒドロキシル官能性樹脂、メラミン樹脂硬化カルバメート樹脂など。一般に、建築被覆用として有用な任意のポリマーを使用できる。
【0026】
内壁被覆に関しては、例えば、液体水性ラテックスが通常ペイント中に結合剤として使用され、これらは酢酸ビニルポリマー又はコポリマーを含むことができる。これらのポリマーは一般に内部用被覆に適当であるが、屋外暴露に関しては充分な耐候性がない場合がある。本発明に係る屋内使用用の乾燥フィルム層はこのようなポリマーを含むことができる。同様に、屋外用途用の乾燥フィルム被覆は結合剤として水性アクリルラテックスを含むことができる。従来型の汚染ブロックペイントは、前述の典型的な屋内用ペイントよりも疎水性のポリマーラテックス、例えばスチレン及び2−エチルヘキシルアクリレートを含むものを含み得る。本発明に係る乾燥フィルム層はまた、硬化アルキドペイント若しくはポリエステルペイント、又は本質的に疎水性であることができる乾燥ラテックスフィルムからなることができる。
【0027】
本発明に係る乾燥フィルム層を用いると、それらの液体対応物よりも優れたかなりの利点が得られる。乾燥ペイントの多くの利点(VOC又は臭気がほとんどないか又は全くないなど)が得られるだけでなく、乾燥フィルムは、液状被覆法によって得られない性質を得ることができる。例えば、フィルムの硬度又は耐溶剤性をより大きくするために、ペイントフィルムは加熱乾燥することによって、ポリマーを充分乾燥させ、又は更には架橋することもできる。全ての揮発性排気ガスは、工業的環境において捕捉され、且つエネルギー回収のために焼却されるか又は再循環のために回収することができる。一般に、同様な液状ペイントを用いる場合には、液状被覆が塗装された壁の乾燥又は硬化に充分な熱を適用するのは非常に困難であろう。工場環境において乾燥フィルムを形成する別の利点は、フィルムを水平向きで形成できるので、垂直面に適用される液状ペイントの場合に起こり得るような垂れは問題にならない。一般に、標準的な自宅所有者が自身の液状ペイントを適用する場合よりも機械及び熟練工によって制御された工業的条件下で制御されたフィルム厚で液状ペイントを適用することの方が低コストでペイントの無駄が少ない。
【0028】
乾燥フィルム層に使用するのに適当なポリマーの具体例としては以下のものが挙げられる。メタクリル酸メチルとアクリル酸ブチルとのコポリマー;スチレンとアクリル酸ブチルとのコポリマー;アクリル酸エチルとスチレンとのコポリマー;ポリブタジエン;スチレンとブタジエンとのコポリマー;スチレンとイソプレンとのコポリマー;酢酸ビニルとアクリル酸ブチルとのコポリマー;酢酸ビニルとネオデカン酸ビニルとのコポリマー;塩化ビニル、塩化ビニリデン及びアクリル酸エチルのターポリマー;酢酸ビニル、エチレン及びアクリル酸ブチルのターポリマー;エチレンと酢酸ビニルとのコポリマー;ポリイソプレン;スチレン、アクリル酸ブチル及びアクリロニトリルのターポリマー;溶剤性又は水性ポリウレタン;溶剤性又は水性脂肪族又は芳香族ポリエステル;酸又はアミン硬化エポキシ樹脂;アミノプラスト硬化ポリエステルなど。他には、炭化水素樹脂、例えば、シクロペンタジエン、インデン、クマロン−インデンなどを基材とするもの;並びにポリビニルブチラールがある。適当な乾燥皮膜形成剤である多くの型のポリマーが公知であり、また、他の場所に記載した分子量を得るのに充分なラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合、基移動重合などのような種々の方法で製造できる。ポリマーは、非晶質、結晶質若しくは半結晶質又はそれらの混合物であることができる。
【0029】
適当なポリマーは一般に、汚染ブロック以外の用途のための更なる機能を含む。例えば、ポリマーは、一般に基材への接着を促進する酸官能基を含むことができる。酸官能基は、カルボン酸、ホスホン酸、スルホネート、スルフェートなどのような酸含有部分から選ぶことができる。適当な他の型の官能基は、環状尿素官能基、アミン官能基、第四級アンモニウム官能基などを含む材料のような湿潤接着促進剤である。混和できる適当な酸含有モノマーは、メタクリル酸、アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、ホスフェート含有モノマー、例えば、ホスホナトエチルメタクリレート、燐酸ビニル、ホスホナトブチルアクリレート、ビニルホスホン酸、スルフェート含有モノマー、例えば、スルホエチルメタクリレート、アクリロミドメチルプロピルスルホン酸、ビニルスルホン酸ナトリウム、スチレンスルホン酸ナトリウムなどである。適当な環状尿素含有モノマーは、メタクリラトエチルエチレン尿素、メタクリルアミドエチルエチレン尿素、N−アリルエチレン尿素などである。適当なアミンモノマーはメタクリラトエチルジメチルアミン、メタクリラトエチル−t−ブチルアミン、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミドなどである。適当な第四級アンモニウムモノマーは、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド、メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムスルフェート、メタクリラトエチルトリメチルアンモニウムクロリドなどである。
【0030】
汚染のブロックにおいて、特に従来型の液状被覆組成物においてあまりよく機能しないポリマーは、汚染が可溶な溶剤に可溶であるか又はそのような溶剤に浸透性のものである。例えば、水溶性インキは一般に、透水性の液状被覆を通過するであろう。従って、水溶性インキは一般に、ポリビニルアルコール、加水分解ポリ酢酸ビニルなどのような親水性ポリマーに浸透するであろう。しかし、油溶性汚染、インキなどは、これらの同じ親水性ポリマーによってブロックされるので、乾燥フィルム成分としても有用である。
【0031】
緊密な(ペイント工業においては典型的には「充分に融合した(well−coalesced)」と記載される)ポリマー分子からなる充分に良好なフィルムが形成されるならば、ラテックスのような水性ペイントは乾燥フィルム層の形成に適当である。水溶性インキをブロックするためには、例えば、乾燥フィルム層の形成に使用されるペイントは、水がフィルムに急速には浸透しないように、充分に密着しているだけでなく、充分に水不溶性であるか又は水で非膨潤性でなければならない。従って、約5,000の分子量(Mw)を有する未架橋ポリアクリル酸のポリマーはおそらく、比較的不良なインキブロック性を有するであろう。これとは対照的に、分子量約200,000のエチルヘキシルアクリレートからなる疎水性ポリマーは比較的良好なインキブロック性を有すると予想されるであろう。一般に、より高い分子量を有するより疎水性ポリマーは改良された水溶性インキブロック性を示すと考えられる。被覆配合技術に熟練した者ならば、ほとんどの型の汚染をブロックするための乾燥フィルム層中への使用に適当なポリマー組成物を選択できるであろう。
【0032】
一般に、当業界において使用される組成物は、1種より多いモノマーから製造され、従ってコポリマー若しくはターポリマーであり、あるいは適当な分子量のポリマーを形成するであろう本質的に多種の異なるモノマーからなることができる。硬化又は乾燥フィルムにおけるこのような分子量は一般に、約1000超、好ましくは約5,000超、更に好ましくは10,000超である。しかし、このような乾燥フィルムの製造時には、より低分子量のポリマーを使用できる。
【0033】
乾燥フィルム層が要求通りに機能するように充分な特性を有するフィルムを得るために、何らかの型の硬化又は架橋を加えることができる。硬化分子量は一般に、少なくとも前述の分子量であろう。最大分子量は一般に、被覆組成物の業界においてポリマー化学者に知られた従来型の重合法によって得られるものである。ラテックスポリマーは100,000又はそれ以上の分子量を達成することができる。言うまでもなく、架橋は、無限分子量を有する(最終乾燥フィルム中に抽出可能なポリマー材料がほとんどないか又は全くないことを意味する)と見なされるまで充分に架橋されたポリマーを生成できる。
【0034】
本発明の乾燥フィルムの形成に有用なポリマーは、熱的方法又は機械的方法によって測定された場合に広範囲の、一般には−60℃〜約+90℃のガラス転移温度(Tg)を有することができる。アクリルポリマーに関しては、ラテックスペイントに典型的なTgが適当であり、約−50℃〜約+80℃又は約−45℃〜約+60℃を使用できる。粘着付与剤のような低分子量ポリマーを使用することができる。
【0035】
乾燥フィルムの形成にラテックスポリマーを用いる場合には、ラテックスポリマーの形態調整は一般に乾燥フィルム層には必要なく、従って、多くの液体ペイントの場合よりも単純な製造方法が可能である。コア−シェル、傾斜組成物及び半球型形態のようなラテックス形態を用いることによって独特の性質を得ることができるので、これらは乾燥フィルム層への使用から排除すべきでない。
【0036】
従って、水溶性汚染は、疎水性ポリマー結合剤を含む乾燥フィルム層を用いて最もよくブロックできるのに対し、油溶性汚染は、親水性ポリマー結合剤を含む乾燥フィルム層によって最もよく処理できる。より極性の親水性ポリマーは油溶性汚染(一般的に比較的無極性)の輸送に対して抵抗性であるであろう。油溶性及び水溶性汚染の両方に抵抗性であるためには、乾燥フィルム層は親水性ポリマーと疎水性ポリマーを両方含むことができる。これらは別個の層として、ブレンドとして、又は微視的に分離した相として乾燥フィルム層中に施すことができる。2種又はそれ以上の型のポリマーが存在する場合には、別々の層が有利である場合がある。
【0037】
従って、水溶性ポリマーは若干でも、汚染のブロックにおいて乾燥フィルムとして有用であることができる。例えば、種々の加水分解度及び分子量を有するポリ(ビニルアルコール)は、実施例中に示されるように有用であることができる。しかし、一般に、水溶性汚染ブロック用途には、乾燥フィルム層中のポリマーは水への溶解度が限られているのが好ましい。ポリマーが水溶性である場合には、それらのフィルムが水(又は水性ペイントトップコート)で湿潤される際に、水、従って水溶性汚染の輸送を阻害するであろう粘稠なゲルが水溶性ポリマー界面に形成できるように充分に高い分子量を有する必要がある。しかし、油溶性汚染の場合には、このような水溶性ポリマーが極めて適当であることができる。一般に、水溶性汚染ブロックのために水溶性乾燥フィルムを用いる場合には、良好な適用の基準は、それらが分子量約5000超でなければならないことである。このようなポリマーは性質がかなり異なるので、それぞれを別個に考えずにそれらの用途に絶対的な境界条件を設定することは難しい。一般に、水溶性ポリマーの架橋フィルムを組み込むためには、より高分子量が好ましい。
【0038】
汚染をブロックするために乾燥フィルムに使用するポリマーを選択する更なる一般的基準として、汚染が可溶な液体媒体は、乾燥フィルムポリマーを再溶解してはならない。汚染及び乾燥フィルムを共に溶解又は膨潤するであろう溶剤が存在しないならば、ほとんどの乾燥フィルムは汚染のブロックに有効であろう。従って、乾燥フィルムは、汚染を溶解し得る溶剤から汚染を保護及び隔離しなければならず、従って乾燥フィルムは耐溶剤性でなければならない。溶剤は、その後に適用されるトップコートによって又は任意の他の供給源(家庭又は自然環境においては水が通常利用可能な溶剤である)もたらされる可能性がある。ペイント又は家庭用化学物質において通常利用できる他の溶剤としては以下のものが挙げられる。アンモニア水、アセトン、メチルエチルケトン、ヒドロキシエチルエーテル、ヒドロキシプロピルエーテル、アルコールアルコキシレート、ミネラルスピリット、低級アルコール、キシレン、エステルなど。
【0039】
顔料は汚染ブロックプロセスに役立つことができる−例えば、板状顔料は、汚染色素体が移行してトップコートに達する経路を妨げることができるか又はそれらの表面の色素体を吸収することができるが、乾燥フィルム層には厳密には必要ない。顔料の存在の最も重要な理由は隠蔽、即ち、下に存在する汚染の隠蔽を助けるために着色することである。例えば、後から適用されるトップコートの隠蔽力が充分である場合には、乾燥フィルム層に追加の顔料は必要ない。更に、顔料は一部の染料及び色素体を、染料へのそれらの表面親和力によって又はそれらの多孔性若しくは高い表面積によって吸収することができるので、乾燥フィルム層をその機能において助けることができる。染料添加又は顔料添加乾燥フィルム層の別の根拠は、乾燥フィルム層を適用する人が、それがどこに適用されたかを容易に見ることができることである。透明なフィルムは、一部の用途に関しては充分には視認可能でない場合がある。しかし、いくつかの具体的実施態様は透明な乾燥フィルム層を含むことができる。例えば、くぎ穴を被覆するために、着色フィルムよりも透明なフィルムが好ましい場合がある。しかし、例えば、穴が存在する基材の色に合うように色が選ばれる場合には、着色フィルムも好ましいであろう。
【0040】
隠蔽に適当な顔料としては、二酸化チタン、酸化亜鉛、及び一般には任意のローカラーの比較的不溶性の金属酸化物が挙げられる。中空粒子、有機不透明材料、又は他の顔料代用品も使用できる。カーボンブラック、活性炭又は他の炭素の形態も使用できる。これらは典型的に黒色であり、隠蔽にかなり役立つことができる。
【0041】
更なる実施態様において、着色顔料及び染料も、乾燥フィルム層の配合に使用できる。壁又は他の基材の色によって、乾燥フィルムは基材の色に合うように配合できるが、これは必ずしも必要ない。しかし、暗色の乾燥フィルム層は淡色のトップコートを通してより容易に透けて見えるので、後で1つ又はそれ以上の液体トップコートを層に塗布しようとする場合には、広く適用できるように、比較的淡色の又は白色の乾燥フィルム層を形成することが一般にはより実際的である。従って、汚染ブロック乾燥フィルムの隠蔽能力は、淡色又は白色顔料の添加によって増加させることができるが、隠蔽性能を増大させるために又は着色の目的でより暗色の顔料を添加することもできる。染料もまた、期待される耐用年数の間に滲出したり色あせたりしないならば、乾燥フィルムに適当な着色剤である。
【0042】
混和される顔料の量は、良好なフィルム形成を阻むような多量の(即ち、顔料の臨界体積濃度、CPVCより一般多い)顔料を用いるのでなければ、特に重要ではない。例えば、使用する顔料が多すぎると、乾燥フィルム層は過度に多孔性となり、従って、水又は溶剤が乾燥フィルム層を通して可溶性色素体に浸透させ且つ運搬する可能性がある。一般に適当な顔料の型は、粒度が小さい、一般に直径が約200ナノメーター〜約2マイクロメーター又はそれ以上のものである。一般に、顔料の直径は、乾燥フィルム厚よりも小さくなければならない。より具体的には、顔料は二酸化チタン、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、シリカ、シリカ−アルミナ、アルミナ、中空粒子、珪酸マグネシウム、クレイ、タルク、マイカなどであることができる。市販のペイントに通常使用される本質的に全ての顔料が適当であることができる。二酸化チタンは顔料主成分として好ましい場合があり、顔料が望ましい場合には二酸化チタンを唯一の顔料成分として使用することができる。
【0043】
しかし、乾燥フィルム層は色又は顔料を含む必要はない。それどころか、乾燥フィルムを通して汚染が透けて見えるように、透明であることができる。しかし、1層又はそれ以上の液状被覆層の被覆時に、汚染は乾燥フィルム層を通って液体フィルム層に滲出してはならない。次に、液状被覆層によって汚染を隠す。それにもかかわらず、汚染の隠蔽を増大させるためには、また、適用者が乾燥フィルムが配置された位置を容易に観察できるように、乾燥フィルム層に顔料を組み込むことは有用である。
【0044】
乾燥フィルム層の色は、存在する場合には、適用者がフィルムの適用位置を見ることができるような、本質的に任意の型であることができる。乾燥フィルムは高光沢度であることができ、それはまた、フィルムの適用位置を確認するのに役立ち、また、視認性がより低い汚染ブロック効果が望ましい場合には、艶のない、低光沢の型の仕上げであることもできる。
【0045】
ペイント中に一緒に使用する樹脂及び顔料の製造には多数の成分を使用できる。これらは一般に添加剤、界面活性剤、粉砕樹脂、脱泡剤、溶剤、増粘剤、殺生剤などとして知られている。これらの添加剤は、被覆業界において多数あり、ペイント配合技術に熟練した者にはよく知られている。これらのいくつかを以下の実施例中に示す。個々の被覆に望ましい添加剤は、ペイント配合技術に熟練した者によって容易に選択される。
【0046】
乾燥フィルム層を得るために剥離層に液状被覆を被覆する場合には、液状被覆の流動性を増大させるために増粘剤又は界面活性剤を組み込むのが有利であることが多い。界面張力の極めて低い剥離層上に液状被覆を吹き付ける場合にはしばしば、依然として液体状態にある被覆は、所望の薄膜を形成するのではなく、表面上において「ゆっくり進む」又はしずくになるであろう。液状被覆の粘度を増加させると、この影響は最小になる。多くの増粘剤をこの目的で使用できる。水性被覆に関しては特に有用なのは、会合性増粘剤と称する増粘剤の類である。界面活性剤、表面活性ポリマー、シリコーン界面活性剤、フルオロカーボン界面活性剤、流動助剤などのような表面活性剤も多くの場合有用である。多くの会社が増粘剤及び表面活性剤の販売を専門にし、剥離層上の被覆の不所望な流れを防ぐのに有用な型を推奨できる。
【0047】
水性被覆の流動性の増大に適当であることができる増粘剤の例は、Rohm and Haas、Sud−Chemie、Clariant、Union Carbideなどから入手できるHEUR及びHASE会合性増粘剤;Hercules、Union Carbideから入手できるセルロース樹脂増粘剤;Henkelなどから入手できるポリスルホン酸のような特殊水性増粘剤である。表面活性剤の例は、非イオン性、アニオン性及びカチオン性である。従来型の界面活性剤が役立つことができ、構造はさまざまである。シリコーン及びフルオロカーボン界面活性剤は、従来型の界面活性剤に比較してより少ない界面活性剤で有効である点で、より有用であることができる。これらの後者のカテゴリーの界面活性剤は、du Pont,Union Carbide、Huls America,Cognisなどから入手できる。有用な特有の非イオン性界面活性剤は、Air Productsから入手可能なアセチレンアルコールを基材とする非イオン性界面活性剤である。有用なポリマー流れ調整剤はBYK−Chemie USAから入手できる。前に挙げた材料はこのように多様であるため、また、増粘しようとする各水性ポリマーとは異なる作用をする可能性があるので、望ましいレオロジーを得るためには日常実験が有益であり得る。
【0048】
一態様においては、乾燥フィルム層自体が感圧性である。即ち、圧力の適用時に、又は乾燥フィルム層を単に基材と接触させる場合でさえ、乾燥フィルム層は通常の基材(壁、被覆壁、木材、コンクリートなど)に接着するであろう。感圧性乾燥フィルム層の性質は、室温において手触りが粘着性であることができる。一般に、室温より高温においては、乾燥フィルムは粘着力を増すであろう。層の粘着性を高めるために、粘着付与剤として知られる低分子量の樹脂及びポリマーを乾燥フィルム又は任意の接着剤層に添加することができる。
【0049】
別の態様において、乾燥フィルム層は実質的に溶剤を含まない。すなわち、乾燥フィルム層は液体物質を滲出させず、フィルム固形分の百分率として溶剤を約10重量%未満含む。これらの溶剤は水、Texanol(登録商標)エステルアルコール(Eastman Chemical Companyから入手可能)、ケトン、アルコール、エステル、エーテルアルコール、芳香族化合物、例えば、キシレン、メシチレン、ジエチルベンゼンなどであることができ、それらは塗膜にVOC又は臭気を与える可能性がある。これらの溶剤は、流動性、基材への接着性を促進するために、又は他の目的で存在し得る。好ましくは、被覆フィルム組成物の5%未満が溶剤であるであろう。異なるのは、周囲環境と接触している被覆中に又は表面上に吸収される水の平衡レベルである水和物水である。フィルムの含水量を扱う場合には、被覆の環境平衡レベルを上回る水の量を意味する。
【0050】
乾燥フィルム層を基材の汚染部分に及び汚染に隣接する基材の少なくとも一部分に接着させるために乾燥フィルム層に適用される圧力は、汚染ブロック組成物が巻き取られるローラー、又はスパチュラ若しくは他の堅い直線定規(それにもかかわらず比較的柔軟であることができる)を含む(これらに限定されるものではない)種々の手段によって与えられることができる。従って、液状被覆を適用するためのローラーと共に使用されるもののような単純なロールを使用できる。乾燥フィルム層をそのようにして適用する場合には、それは金属又はプラスチックスパチュラのような堅いが柔軟なブレード・アプリケーターを用いて平らにすることができる。適用圧力が圧力適用表面全体において比較的均一であることを確実にするために、手動で、直接、又は適当な布若しくは他の装置を用いて圧力を適用することもできる。乾燥フィルム層は剥離層上に設けられるので、乾燥フィルム層を基材の汚染部分に及び周囲の基材に接着させるために適用する圧力は一般に、剥離層の、乾燥フィルム層とは反対の側に適用するものとする。
【0051】
「基材及び乾燥フィルム層に1層又はそれ以上の液状被覆層を被覆する」とは、乾燥フィルム層の適用後に乾燥フィルム層及び周囲の基材に常法によって少なくとも1層の液状被覆層を被覆することを意味する。基材全体又はそのかなりの部分に被覆することもできるし、あるいは乾燥された液状被覆層が、存在する基材被覆と実質的に同じ色及びテキスチャーである場合には、基材の汚染部分に隣接した基材の部分のみに被覆しさえすればよい。
【0052】
従って、乾燥フィルム層が基材のどの部分に適用されたかに正確に考慮することなしに、特許請求の範囲に記載された方法の基材の汚染部分及び周囲の基材の両方に液状被覆層が被覆される。乾燥フィルム層自体は目立たず、比較的薄いか又は端の方が薄くされていることができ、従って、後から適用された被覆の乾燥時に、汚染が存在したこと又は乾燥フィルム層自体が液状被覆前に適用されたことの何の暗示もない。従って、誤ったタイプ文字の被覆法は、色及びテキスチャーの違いによって肉眼で見ることができる乾燥フィルム層を残すが、本発明に係る方法は、どのような汚染及び乾燥フィルム層であっても痕跡を残さないの好ましい。
【0053】
任意の接着剤層に使用するのに適当な接着物質としては、テープ及びテープ製品用として当業界において有用なもの、訂正テープに使用されるもの、及び一般に基材を別の基材に接着させるのに用いられる任意の物質が挙げられる。従って、これらは、乾燥フィルム層が基材に接着するような任意の型であることができる。適当な接着物質としては、感圧性接着剤の技術において知られたそのような物質が挙げられるが、これらに限定されるものではない。いくつかの例は、アクリルポリマー、炭化水素ポリマー、スチレン−イソプレンポリマー、イソブチレンポリマー、ウレタンポリマー、天然ゴムなどである。ポリマーは、ランダム又はブロック構造であることができる。これらは、有機溶解性物質であることもできるし、あるいは水分散性(例えば、ラテックス)であることもできる。乾燥フィルム層又は任意の接着剤層に適当な粘着付与剤としては、ロジン、ロジン誘導体、炭化水素樹脂、例えばC5〜C9オレフィン及び環状ジエンモノマーから製造されたものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。プロセスオイル、例えばパラフィン系石油、ナフテン系石油及び芳香油も使用できる。酸化防止剤、殺生剤などのような他の添加剤も存在できる。樹脂及び粘着付与剤は有機溶解性、水分散性、又はある程度、水溶性であることもできる。
【0054】
接着剤層は、剥離層上に既に設けられた乾燥フィルム層に適用できる。接着剤層の接着剤は、接着剤業界において典型的に使用されるもの、例えば、Tgが約−60℃〜0℃の水性ラテックスから、溶剤系樹脂として、粉体として、又は更には固形分100%の樹脂として選ばれることができる。接着剤は、フィルムの被覆に使用される常法によって、例えば印刷、吹付、静電吹付、ドクターブレード、ロールコーター、リバースロールコーターなどによって適用できる。印刷は、グラビア印刷、スロット印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷、インクジェット印刷、ワイドフォーマット用インクジェット印刷又は印刷に使用される他の方法を含む種々の方法によって実施できる。
【0055】
接着剤層の厚さは一般に、約2マイクロメーター〜約500マイクロメーター、少なくとも約2マイクロメーター、又は10マイクロメーター若しくはそれ以上、又は20マイクロメーター若しくはそれ以上であることができる。最小厚さは、基材への充分な接着を実現できるように乾燥フィルム層表面を被覆するために適用できる厚さである。接着剤部分の厚さが、移される乾燥フィルム厚全体のかなりの部分であるならば、隠蔽が望ましい場合には、接着剤相には顔料を添加するのが有利である。フィルム中に存在する顔料はフィルム厚に含まれなければならないので、それが乾燥フィルム層のみに含まれる場合には、得られる隠蔽は不充分であるおそれがある。従って、一実施態様においては、乾燥フィルム層中に存在する顔料に加えて又はその代わりに、接着剤層に顔料を混和する。
【0056】
従って、乾燥フィルム層によって追加の隠蔽を得るために、接着剤層に顔料を添加できる。これはペイント結合剤に関して前に記載したのと同じ添加剤を含むことができる。接着層の組成物はペイント結合剤に含まれるのと同じポリマーを含んでなることができる。更に、それらはまた、工業用又は建築用接着剤中に典型的に含まれる樹脂であることができ、また、粘着付与剤を含むことができる。
【0057】
別の態様において、本発明は、特許請求の範囲に記載された方法に従って使用できる汚染ブロック複合材料に関し、それらは剥離層;透明であるか又は顔料を添加できる乾燥フィルム層;及び場合によっては、基材の汚染部分に及び基材の汚染部分に隣接した基材の少なくとも一部分への乾燥フィルム層の接着を助けることを目的とする、透明であるか又は顔料を添加できる接着剤層を含む。
【0058】
本発明に係る剥離層は好ましくは、比較的低い表面張力を有する紙、プラスチックなどの薄い柔軟性フィルムである。この剥離層は、シリコーンポリマー、フルオロポリマー、炭化水素ポリマーなどのような剥離物質の薄い塗膜を含むことができる。従って、特許請求の範囲に記載した本発明の組成物の剥離層は、一般に、紙、ワックス処理紙、グラシン紙、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロンなどであることができる。これらの材料は一般に、それらの強度、乾燥フィルム層を適所に保ち且つ必要な場合には層を剥離できるそれらの能力に基づいて選択する。剥離層は、ポリマーフィルムの強度及び加熱撓み温度を増加させることが当業者に知られている結晶化度を有することができる。
【0059】
一態様において、特許請求の範囲に記載された方法は、タイプライター、ペン又は鉛筆から生じるようなインキの痕跡を被覆するための訂正装置に使用されるもののような装置を用いて実施できる。このような装置は、後から1層又はそれ以上の液状被覆層で被覆される基材上の小さい汚染のブロックに適当であることがわかっているが、幅が狭く、しかも薄くされた端がないため、いくつかの目的には、本発明の種々の他の実施態様より適当でない。
【0060】
従って、いくつかの実施態様において、乾燥フィルム層は、幅(直径)少なくとも0.5cm、又は幅少なくとも1又は2cm、又は幅少なくとも5cm、又は幅少なくとも10cm、又はそれ以上であることができる。用語「幅」は、例えば、乾燥フィルム層が丸いか楕円形である場合には直径を、正方形又は異形を含むものとする。
【0061】
別の実施態様において、乾燥フィルム層は、1つ又はそれ以上の薄くされた縁部(feathered edge)を有する。いくつかの実施態様においては、縁部の全て、あるいは円形フィルム層又は丸い若しくは楕円形のものの場合には、乾燥フィルム層の縁部全体が薄くされる。薄くされた縁部は、隣接する乾燥フィルム層と重なり且つ1層又はそれ以上の追加液状被覆層の適用後でも残るかもしれない検出可能な縁部が生じるのを避けることができる。
【0062】
従って、特許請求の範囲に記載された本発明は、一実施態様において、約0.5cmよりも広い領域の汚染を完全に被覆するのに適当な、薄くされた縁部を有することができる、一般には幅が0.5cmより大きい広幅の乾燥フィルムに関する。一般に、被覆の薄くされた縁部は、表面に適用された乾燥フィルム層の視認性を最小に抑えるのに役立つ。縁部が基材上において大部分視認できず且つ光源がほぼ垂線の方向から縁部までである場合に影を落とさないように乾燥フィルムが充分に薄いならば、縁部の方を薄くする必要はない場合がある。厚さ約0.5mil(12マイクロメーター)のフィルムは一般に縁部を薄くする必要はないが、厚さ約0.5mil(12マイクロメーター)又はそれ以上では、多くの用途に関して、乾燥フィルム層の縁部はフィルムの中央よりも薄いのが望ましい。
【0063】
望ましい乾燥フィルムの厚さは、用途及び適用条件によって異なる可能性がある。約0.1mil(2.5マイクロメーター)の厚さは、多くの汚染のブロックに充分である。しかし、優れた隠蔽を実現するのに充分な顔料を混和するのは困難である。この厚さのフィルムは多くの場合、適用条件を耐え抜くのに充分な強さを有さないか、あるいは軽度の摩耗時に、又は刷毛塗若しくはロール塗のようなその後の被覆適用法によって損傷を受けやすい可能性がある。厚さ約1mil(25マイクロメーター)のフィルムは一般に、適用条件を耐え抜くのに充分な強さを有し、良好な隠蔽に充分な顔料を含むことができる。従って、フィルムの厚さは約10マイクロメーター(0.4mil)〜約150マイクロメーター(6mil)、又は約20マイクロメーター〜約100マイクロメーターであることができる。最小フィルム厚は、汚染のブロック能力によって、また、汚染を隠蔽しようとするならばその不透明度によって制限される可能性がある。薄いフィルムは厚いフィルムよりも隠蔽のために多量の不透明顔料を必要とする可能性があるが、使用顔料が多すぎると、乾燥フィルムへの溶剤の浸透を防ぐのに充分なポリマーが得られない可能性があるので、汚染ブロックは結果として悪化する可能性がある。優れた隠蔽のようないくつかの目的を達成するためには、更に厚い被覆も使用できる。厚さの制限因子としては、被覆(例えば、アプリケーターロール上に含まれる)のコスト、柔軟性及び重量を挙げることができる。それにもかかわらず、6mil又はそれどころか20mil若しくはそれ以上(150〜500マイクロメーター)の被覆も使用できる。
【0064】
従って、乾燥フィルム層は、汚染を被覆するために基材の汚染部分に直接押しつけられることができる。適用時には、基材の汚染部分上に接着した乾燥フィルムは、後で適用される任意の液状被覆への汚染の輸送を阻害する。汚染上に適用される乾燥フィルム層に充分に顔料が添加されている場合には、汚染は完全に隠蔽されることができる。乾燥フィルムが透明又は無色である場合には、乾燥フィルムはそれでもなお、汚染が後から適用される液状被覆に移行するのを防ぎ、また、汚染が後から適用される液状被覆層の接着に影響を与えないようにするであろう。
【0065】
一実施態様において、乾燥フィルム層は乾燥ラテックスフィルムを含み、それによって液体汚染ブロック組成物の欠点の多くに充分に対処する。臭気や他の安全上の心配もない。掃除も必要ない。フィルムは乾燥した状態で適用され且つ1層又はそれ以上の液状被覆層の適用時にはバリヤとして働くことができるので、汚染は再溶解されない。汚染の移行はない。実際、乾燥フィルム層の適用後は、油性及び水性製品と同様に、ペイント又は他の液状被覆を適用できるまでの待機が必要がない。乾燥フィルムはまた、パテを用いずに小さいくぎ穴を被覆するのに使用できる。スパックリング(spackling)又はパテの場合のような塗り直しのための待機がない。
【0066】
基材は好ましくは実質的に平らであるか又は一般に平面である。基材の平均表面粗さは、建築用基材に典型的な約1マイクロメーター〜約1ミリメーターの範囲であることができる。一般的に、ロール塗、刷毛塗又は吹付塗による湿潤ペイントの適用は、このような表面粗さを残すことができる。通常の建築構造には徐変曲率(gradual curvature)がある場合がある(「直角でない」は、通常の建造物の欠陥を記載するのに用いる)。また、円形の部屋(例えば、家の中の)は曲線状の壁を有するが、曲線は湾曲は緩やかであり、一般には約1mの曲率半径以上であるので、それでもなお実質的に平らであると見なされるであろう。自動車部品(フェンダー、バンパーなど)は多くの場合、より大きい曲率(より小さい曲率半径)を有する表面を有し、本発明によればあまり好ましくない基材である。
【0067】
基材は建築用基材であることができる。「建築用基材」とは、住居、商業ビルなどに用いられるセメント質材料、木製材料、紙被覆基材(ウォールボード/シートロック)、木製複合材料などから一般になる実質的に平らな基材を意味する。この基材は、予め塗装された又はさもなければ下塗りされた若しくは下処理された表面を含むことができる。
【0068】
特許請求の範囲に記載された本発明の利点は多数ある。第一に、ペイントに特有の掃除が必要ないので、時間及び材料がかなりの節約になる。また、環境に遊離される必要があるVOC(揮発性有機化合物)が実質的にない。しかし、液状被覆に比較して汚染ブロックにより重要なのは、基材から適用被覆の上面に汚染を輸送される溶剤が乾燥フィルム中にほとんどないか又は実質的にないことである。乾燥フィルムは、汚染運搬溶剤に比較的不浸透性であるように設計される。また、この実質的に乾燥したフィルムは典型的に臭気がない。更に、乾燥フィルムの適用直後にペイントトップコートを適用でき、これはかなりの時間及びコストの節約になり得る。
【0069】
従って、本発明に従って使用できる乾燥フィルム層は、適用される乾燥フィルム層が既に連続した比較的溶剤不浸透性のフィルムであるので、真の汚染ブロック剤と見なすことができる。乾燥フィルム層は、フィルムを通してかなりの量の着色汚染を輸送するのに充分な溶剤(例えば、後から適用されるトップコートからの)がフィルム中に溶解しないようなポリマーから構成されることができる。従って、乾燥フィルム層は、フィルム層内の汚染を単に捕捉するのではなく、汚染を真にブロックする。
【0070】
既に記載したように、訂正テープの製造は、乾燥ペイントフィルムによる紙上のインキミスの被覆及び隠蔽に対処している。乾燥ペイントフィルムの適用装置は、書類中の、すなわち、紙基材上のミス訂正用に事務用品店で一般に入手できる。これらの組成物は一般に訂正テープと記載されるが、プラスチック又は紙の支持体フィルム上に存在する2層又はそれ以上からなることができる。例えば、米国特許第6,235,364 B1号、第6,331,352 B1号、及び第6,352,770 B1号を参照されたい。このようなフィルムを適用するための装置も知られている。例えば、U.S.Patent Nos.5,714,035、5,393,368、Des.355,934、5,310,437及び4,676,861を参照されたい。
【0071】
このような装置は、本明細書の実施例のいくつかに示されるように、壁上の汚染の被覆に使用することができる。乾燥ペイントフィルム及び周囲の基材に後から1層又はそれ以上の液状被覆層が被覆される場合におけるこのような装置の使用は特許請求の範囲に記載された本発明の範囲内に包含される。言うまでもなく、訂正テープ装置は一般に、約1cm又はそれ以下の、典型的には約0.5cm又はそれ以下のペイントフィルム幅を供給する。大きい汚染(タイプの約1行より大きい)はこのような器具では容易に被覆できない。これは、汚染の被覆には多数回の訂正テープの適用が必要であり且つ更に適用ペイントフィルムの端が、後から適用されるトップコートペイントを通して透けて見えるほどの高さ(これらの装置は一般に厚さ紙に約25マイクロメーターの紙にペイントフィルムを供給する)を有し、それによって一般には不均一な外観を生じる可能性があるためである。実際にこれらの装置の1つを用いて慎重に且つ時間をかけて汚染を被覆することができるが、非常に時間のかかる、巧みな方法を用いるのでなければ、最終結果はそれほど満足なものでないであろう。
【0072】
汚染含有基材に乾燥フィルム層をすぐに適用可能な状態にする剥離層(剥離支持体)上における乾燥フィルム層の製造に適当な方法はたくさんある。これらには、ロール塗、リバースロール塗布、吹付、静電吹付、ドクターブレード、スキージー、印刷などがある。これらの方法は全て、ペイント又はインキの適用に使用される通常の方法であり、剥離層への乾燥フィルム層の適用に使用できる。乾燥フィルム層は、粉体のような固体として適用される又は更にはペーストとして適用される液状被覆から形成することができる。
【0073】
好ましい剥離層材料は、乾燥フィルム層の支持を可能にするように比較的薄いが、運搬処理及び適用時に乾燥フィルム層が損傷を受けないように充分に厚く且つ充分に強い。適当な剥離層材料は紙からポリエステル、ポリカーボネート、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリ尿素、ポリスチレン、ポリアクリル酸、ポリ塩化ビニルなどのようなプラスチックフィルムに及ぶことができる。より好ましいのは、シロキサン、フルオロカーボン、ポリオレフィンなどを含んでなることができる剥離被覆を含む材料である。特に適当なのは、配向ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート又は他の配向ポリマー、例えばポリプロなどのような強プラスチック材料である。これらの支持体フィルムは、熱安定性(多くの他のプラスチックに比較して高い加熱撓み温度)という更なる利点を有し、製造を促進するより高い硬化又は乾燥温度を可能にする。
【0074】
乾燥フィルムが有さなければならない別の特性は、適用する基材への接着能である。このために、本明細書中に記載したように、任意の接着剤層を用いることができる。
【0075】
更に、後から適用される液状被覆層は、適用乾燥フィルム層に接着しなければならない。従って、適当な結合面を提供しないポリマー、例えば、乾燥フィルムとして単独で使用されるポリ(テトラフルオロエチレン)のような表面張力に低いポリマーはあまり適当でないかもしれない。しかし、適切に配合された乾燥フィルム層は多くの成分を含むことができ、それらの成分の一部は、後から適用される液状被覆層の接着を助けることができる。例えば、ある種の顔料は良好なペイント接着に適当な表面を与えることができ、あるいは乾燥フィルム層のバインダーポリマー中に存在するある種の極性モノマー、例えば、カルボン酸含有モノマー、環状尿素含有モノマーなどが有用であることができる。適用された乾燥フィルム層の露出面上又はその近くに存在できる、極性表面を有するこれらの顔料は、比較的無極性のポリマーバインダーの影響を克服するのに充分であることができる。
【0076】
別の態様において、本発明は、乾燥フィルム層が施されるシート又はロールに関する。実際に、乾燥フィルム複合材料(剥離層、乾燥フィルム層及び場合によっては接着剤層を含む)は、いくつかの配置で有用であることができる。適用される乾燥フィルムのストリップの幅が使用目的に使用できる幅であるならば、例えば訂正テープの適用に有用な、前記と同様なローラー装置が、乾燥フィルム複合材料から乾燥フィルムを適用するのに有用であることができる。例えば、くぎ穴又は亀裂の被覆には、約2cmの幅が有用であり得る。壁上の汚染の被覆には、2cm若しくはそれ以上の、又は5cm超の、又は更には10cm若しくはそれ以上の幅が有用である。いくつかの用途では、約20cm又はそれ以上の、又は25cm若しくはそれ以上の、又は更には30cm若しくはそれ以上の幅が有用であることができる。汚点の処理には比較的狭い幅を使用できるが、大きい汚染は、比較的広幅の乾燥フィルムを用いてより簡便に被覆できる。乾燥フィルムの1つ又はそれ以上の端は、縁部が薄くされるか又は先細にすることができる。先細端の角度(フィルム端における、先細端の湾曲に対する接線と適用表面の面との間の角度)は約45°未満、又は約40°未満、又は約30°若しくはそれ以下であることができる。
【0077】
例えば汚染ブロック用途において有用な汚点処理の別の方法はシート法である。従って、壁上の汚染の大きさに適合した寸法を有する、剥離層として働くフィルムのシートを使用できる。乾燥フィルム複合材料は、端が約8cmの大きさの正方形シート剥離層に例えば液状ペイントを吹付又は印刷し、次いで乾燥させることによって形成できる。剥離層の端は乾燥フィルムをほとんど又は全く含まないことができ、シートの中央が乾燥フィルムの最も厚い部分であることができ、乾燥フィルムは剥離層の縁部に向かうにつれて次第に薄くなる。従って、概念は、縁部の方が薄くなった1つ又はそれ以上の辺を有するテープと同様である。従って、剥離層の塗装部分は、例えば、わずか約36cm2であることができる。従って、乾燥フィルムの縁部は、先端を薄くされ、剥離層の端近くまで及ぶことができる。壁上の汚染を被覆するためには、次に乾燥フィルム層を任意の接着剤層と共に、例えば、程度の差はあるが柔軟性であることができるスパチュラ若しくは他の直定規を用いて、又は布を用いて、又は更には素手で壁に押しつけて、汚染を被覆することができる。比較的大きい汚染に関しては、剥離層のシートは各辺が20cm又はそれ以上であることができ、乾燥フィルム層の面積は約350cm2又はそれ以上であることができる。剥離層のシートも適用される乾燥フィルム層も正方形である必要はない。剥離層及びその上に施される乾燥フィルム層は、円形、長方形(長円形)、正方形又はほとんど全ての他の形状であることができる。言うまでもなく、適用される乾燥フィルム層は汚染又は汚染の一部を被覆しなければならない。
【0078】
大きい汚染領域(例えば、火災損害又は煙害によるもの)を処理したい場合もあるし、あるいは前述のように壁上の局部的な汚染領域を処理したいだけの場合もある。大きい領域に関しては、例えば縁部の方が薄くされた乾燥フィルム層を含む剥離層のロールを使用できる。例えば、幅が約20cm、又は25cm若しくはそれ以上、又は更には30cm若しくはそれ以上の剥離層のロールが望ましい。次いで、剥離層のまさしく端のみが乾燥フィルムをほとんど又は全く含まないように、乾燥フィルムは剥離層の表面のほとんどを被覆するであろう。他の実施態様と同様に、薄くされた縁部は乾燥フィルム厚に関して有用である。乾燥フィルム複合材料のロールの長さは、約150cmから乾燥フィルムを手供する人間が管理できる長さまでであることができるであろう。
【0079】
乾燥フィルム複合材料のロールに関しては、剥離層が、乾燥ペイント層の反対側に剥離促進ポリマーを含むことができることに留意されたい。剥離層のこの裏面が、ロール塗時に乾燥フィルム又は任意の接着剤層と接触するであろう。従って、素早い巻出しを促進するために、裏面を剥離ポリマーで処理することができる。剥離ポリマーは、剥離層のもう一方の側に存在するものと同じであってもよいし異なってもよい。これらの剥離ポリマーは炭化水素、シリコーン又はフルオロポリマーなどであることができる。
【0080】
一般に、乾燥フィルム層において有用なポリマーは、それらのガラス転移温度によって記載することができる。これらの温度は、当業者には容易にわかる熱的又は機械的方法によって測定される。この適用に適当なラテックスポリマーの範囲は、約−50℃〜約+80℃、又は約−40℃〜約+60℃、又は約−20℃〜約+40℃である。他の型のポリマーの適当なTgは、ポリマー型及び粘着性のようなその特性によって決まるであろう。
【0081】
乾燥フィルム層中に使用するポリマーは、架橋されていても未架橋でもよい。一般に、架橋されていないポリマーは、それにもかかわらず、汚染ブロックフィルムと接触する可能性がある溶剤中に不溶であろう。一般的に製造されるラテックスポリマーは、ゲルフラクションを含んでいなくても(未架橋であっても)、汚染基材への適合後の最終フィルムと接触し得る水又は他の溶剤中に不溶であるように比較的高分子量を有するならば、有用である。
【0082】
例えば、湿気又は水への暴露に応じて膨張及び収縮し得る木材のような基材上にフィルムが適用されるならば、大きすぎる架橋度は汚染ブロック能を損なうおそれがある。被覆は、基材と共に膨張できない場合には、ひびが入り、それによってその汚染ブロック能が低下するおそれがある。従って、フィルムの伸び率は、基材の膨張によって伸長され得る程度と一致しなければならない。
【0083】
一般に、耐水性が必要な場合には、乾燥フィルム層はより疎水性であることができる。逆に、耐有機溶剤性が必要な場合には、乾燥フィルムは有機溶剤中に概して不溶であるこのような組成物からなることができる。有機溶剤及び水の両方への抵抗性が望ましい場合には、極めて高分子量のポリマーを用いることもできるし、あるいはある程度の架橋を与えることもできるし、あるいは両方の型の溶剤中への不溶性を与える成分からポリマーが作られることもできる。
【0084】
従って、この方法は、一定の大きさ及び形状のシートを用いて並びに種々音幅の連続ロールを用いて実施できる。乾燥フィルム層は、シートの場合には手、ぼろ切れ若しくはローラーでこすることによって、又はロールを手で表面全体に引きながら、ロールから所望の表面にフィルムを押し付ける圧力を適用するように設計された装置(同様であるが小さい装置は、前記の訂正テープディスペンサーである)を用いて、基材に適用する。
【0085】
適用する乾燥フィルム層の幅は、約0.5cm〜50cm(約20インチ)若しくはそれ以上、又は約3cm〜約40cmであることができる。適用される乾燥フィルム層の幅は、所望の基材への乾燥フィルムの適用を効率的に扱うアプリケーターの能力に基づき、広く変化させることができる。
【0086】
剥離層に適用し且つ乾燥させて乾燥フィルム層を形成できるペイント配合物は、ペイントの適用若しくは乾燥プロセスを助ける又は移される乾燥フィルム層の外観を向上させることができる多くの添加剤を含むことができる。これらとしては、顔料、艶消し剤、増粘剤、溶剤、界面活性剤、脱泡剤、殺生剤、流れ調整剤などが挙げられる。
【0087】
乾燥フィルム層を製造できるペイント組成物は、樹脂、場合よっては着色剤又は顔料、及び剥離層へのその適用を助けるか又は乾燥フィルム層における汚染ブロック作用を助ける種々の添加剤からなることができる。アセチレン系界面活性剤(Air Products and Chemicals,Inc.から入手可能なSurfynols(登録商標))、陰イオン界面活性剤(例えば、アルコールエトキシレートスルフェート又はホスフェート)、非イオン界面活性剤(例えば、アルコールエトキシレート)、フルオロカーボン界面活性剤、例えば商品名Zonyl(DuPont Companyから入手可能)として販売されているもの、シリコーン界面活性剤などのような界面活性剤があり得る。使用できる他の界面活性剤は流れ調整剤、増粘剤、レベリング剤、充填剤顔料、架橋剤などである。
【0088】
乾燥フィルム層添加剤は、得られる汚染ブロック性を損なわないように選ばれる。例えば、多量の感水性ポリマー又は顔料を添加すると、感水性材料を含む最終乾燥フィルム層は最終フィルムを透過する親水性チャンネルを形成し、水溶性汚染のブロック能を低下させる可能性がある。最適な添加剤は実際には、日常実験によって見つけることができる。
【0089】
乾燥フィルム層の適当な適用方法は、適用された連続フィルム、即ち、破損、ピンホール又は後から適用される液状被覆層からの溶剤を通し得る欠陥が一般にほとんどないフィルムを生じるものである。回避すべき乾燥フィルム層の欠陥は微細である場合もあるし、又は目に見える場合もある。適当な適用方法は、1つの面が汚染基材に接着するように被覆面に乾燥フィルム層を押しつける。こうして配置された乾燥フィルム層は接着しなければならず、また、1層又はそれ以上の液状被覆層による乾燥フィルム層上における被覆のような後の操作によって容易には除去されてはならない。1層又はそれ以上の液状被覆層の適用は、例えば、刷毛塗、ロール塗、吹付によって、又は任意の他の適当な方法によって可能である。
【0090】
乾燥フィルム層の適用方法の1つは、剥離層からこする又は押しつけることであり、従って、剥離層の裏面に圧力を加えることによって接着剤層(存在する場合)又は乾燥フィルム層(接着剤層が存在しないならば)を汚染基材に押しつけ、乾燥フィルム層を汚染基材に移す。
【0091】
適当な適用装置としては、乾燥フィルム層を巻出しながら基材に押しつけることができるものが挙げられる。例えば、ローラー装置は、乾燥フィルム層が汚染基材に接着するように剥離層の裏面を押圧して、乾燥フィルムが基材の汚染部分に移され且つ剥離層がローラー装置内の機構によって引き取られて、巻き取られるようにフィルムを小出しにすることができる。このようなローラー装置としては、米国特許第5,310,437号、第4,676,861号、第5,393,368号、第5,714,035号(これらの特許の開示を参照することによって本明細書中に引用する)に記載されたものが挙げられるが、汚染を被覆する装置は、引用参考文献において考慮されるよりもかなり幅広いフィルムを適用することができる。乾燥フィルム層の適当な好ましい幅については、既に記載した。
【0092】
特許請求の範囲に記載された発明の有用な実施態様は、乾燥フィルム層の縁部がその中央よりも薄くなるように適用乾燥フィルム層の端を薄くすることができるようにする。これは、剥離層への乾燥フィルム層の適用時に実施できる。剥離層上の乾燥フィルム層が薄くされた端を有するようにこの適用プロセスを実施するには、吹付、印刷、ロール塗、又は基材へのインキ又はペイントの適用に適当な多数の方法のいずれかを使用できる。乾燥フィルム層の縁部を薄くする利点は、後から1層又はそれ以上の追加被覆層を基材に被覆したときに適用フィルムの端が透けて見えないことである。典型的に、訂正テープにはこの特性のための設備を用いないし必要もない。これは、その用途における乾燥ペイントには更に液体ペイントを被覆しないからである。使用される訂正テープは、典型的に、それらが適用される紙の白色に適合する。これに対して、本発明に係る乾燥フィルム層は、適用乾燥フィルム、汚染及び周囲の表面全てが実質的に平らな外観を有するように後から1層又はそれ以上の液状被覆層が被覆されるので、基材の色に正確に適合する必要はない。乾燥フィルムは前述のように多くの方法によって適用できる。印刷が選択された方法である場合には、それは、グラビア印刷、スロット印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷、インクジェット印刷、ワイドフォーマット用インクジェット印刷又は印刷に使用される他の方法を含む種々の方法によって実施できる。
【実施例】
【0093】
本発明は、その好ましい実施態様に関する以下の実施例によって更に説明することができるが、これらの実施例は説明のためにのみ記載するのであって、特に断らない限り本発明の範囲を制限することを目的としない。
【0094】
例1
溶剤系黒色マーカーを付けた内壁のマーキング上に、Stanford Corporation,Belwood,IL 60104から入手可能な”Paper Mate Liquid Paper Dryline Corrector”装置から手でフィルムを適用した。この例からは以下の3つの特性が明らかになった。
1.訂正フィルムをインキマーク上に適用した場合には、訂正フィルムを適用した場所においてインキは完全に隠蔽された。
【0095】
2.訂正テープを壁表面に適用した場合には、訂正テープは手で触れても感知できなかった。縁部の感触はなかった。
【0096】
3.訂正テープは、壁の表面への適用後、容易には除去できなかった。適用表面を損なうことなく、訂正テープを表面から剥がすことも掻き取ることもできなかった。
【0097】
例2
”Paper Mate Liquid Paper Dryline Corrector”装置からのフィルムを、内壁のタック穴及び小さいくぎ穴上に適用した。これらの瑕疵を被覆した後、液状ペイントの新しい被覆を適用した。この例から以下のようないくつかの観察がなされた。
1.タック穴は訂正フィルムによって完全に被覆された。表面に穴の痕跡はなかった。
【0098】
2.フィルムがむらなく連続的に適用され且つ瑕疵を隠蔽するために、訂正フィルムの適用前に小さいくぎ穴は平らにする必要があった。
【0099】
3.この例においては、水性艶消しペイント”Sears Easy Living Brand”の被覆を隠蔽される瑕疵上に1回適用した。乾燥時には、瑕疵はもはや感知され得なかった。
【0100】
例3
Rose Art Industries,800−272−9667から入手可能な”Rose Art”ブランドの水性マーカーの7色を用いて適用された7つの水平マークを被覆するために、Paper Mate Liquid Paper Dryline Corrector”装置;BIC USA,Inc.,Milford,CT 06460から入手可能な”BIC White Out Brand”装置;及びAmerican Tombow,Inc.,Lawrenceville,GA 30043から入手可能な”Tombow Brand”訂正テープ装置からの乾燥フィルムを垂直に適用した。これらのフィルムをまた、液状の屋内用建築塗料の数回の適用に失敗した頑丈な青色水性インキマーク(供給源はわからない)上に適用した。訂正テープの適用後、例2において適用されたのと同一のペイントを用いてその領域を塗装した。この例から以下のようないくつかの観察がなされた。
【0101】
1.3つのフィルムは、表面への適用及び接着の容易さにおいて等しくなかった。”BIC”製品は、裂けたり皺を形成したりする傾向があり、その他ほどには表面に接着しなかった。”Tombow Brand”は、”Paper Mate Brand”よりも接着力がわずかに小さかった。
【0102】
2.3つのフィルムの全てが、マーク上への適用後、7つのマーク及び頑丈なマークを完全に被覆し、透けて見えることはなかった。
【0103】
3.フィルムのそれぞれの陰には明白な色の差があった。”BIC Brand”はブライトホワイトであり、”Tombow Brand”はオフホワイトであり、”Paper Mate Brand”はより黄色の外観を有していた。
【0104】
4.壁に最初に適用されたのと同じ水性ペイントを用いてフィルムを塗装後、各フィルムはマークを全て隠蔽し続けた。
【0105】
5.ペイントの1回被覆後には、”Paper Mate Brand”は被覆され、訂正フィルムの形状及び色は見えなかった。”Tombow Brand”は隠蔽にペイントの被覆が2回必要であった。”BIC Brand”はペイントの3回の被覆後でさえ依然として検知できた。
【0106】
例4
種々のインキ及び汚染を用いて、塗装ウォールボードの試験片上にマークを付けた。これらのマークは、水性インキ、油性(溶剤性)インキ、クレヨン及び口紅であった。各種類のインキ及び汚染を新たに適用し、次いで例3に記載したフィルムのそれぞれで被覆した。いずれの場合も、汚染は完全に被覆され、上に塗装された場合に再び現れることはなかった。フィルムの性能を、”Kilz II”水性汚染ブロックプライマー及び”Valspar One and Only”水性艶消し壁塗料の性能と比較した。乾燥フィルムはいずれも、汚染の色をより多くブロックすることによって液体プライマー及び壁塗料よりも性能が優れていた。”Paper Mate Brand”フィルムは、1つのペイント被覆の適用後には検知できなかった。
【0107】
例5
縁部を薄くすることを含む、汚染ブロック性能の実証
以下のラテックスを製造した。
水354g;
固形分27%のアクリル酸ブチル種(seed)ラテックス(粒度=27nm)58.3g;
DISSOLVINE 4.5% H−FE(Akzo Nobel製)0.1g
を含む、攪拌しながら60℃に保持された4リットルの樹脂がまに、30分にわたって2.92g/分で以下からなるプレエマルジョンを供給した。
水393.8g;
Rhodafac RS610A−25(Rhodiaから入手可能)67.01g;
2−ヒドロキシエチルメタクリレートの燐酸エステル4.18g;
スチレン283g;
メタクリル酸44.9g;
2−エチルヘキシルアクリレート431.2g;
ROHAMERE(登録商標)6844(Degussaから入手可能)33.50g;
メタクリル酸ブチル15.72g;
メタクリル酸メチル25.05g;
イソオクチルメルカプトプロピオネート16.75g。
【0108】
更に、以下の開始剤流を開始し、300分間にわたって別個に徐々に供給した。
水5.57g;
t−ブチルヒドロペルオキシド(70%水溶液)3.33g;及び
水58.5g;
イソアスコルビン酸2.09g。
【0109】
前記プレエマルジョン供給材料が使い果たされたら、モノマーエマルジョンの残りを、使い果たされるまで(約210分間)、5.85g/分で供給した。
【0110】
その後、8.20gの水ですすいだ。
【0111】
プレエマルジョンの供給直後に、以下の開始剤供給材料を供給し始め、1時間かけて少しずつ供給した。
【0112】
水2.5g
t−ブチルヒドロペルオキシド 0.48g
及び
水2.76g
イソアスコルビン酸0.25g。
【0113】
次いで、ラテックス反応混合物を冷却し、以下の材料を添加した。
19%アンモニア水20.0g
Proxel(登録商標)(Aveciaから入手可能)4.6g
水12.1g。
【0114】
最終ラテックスは、固形分が47.0%であることがわかった。Tgは0℃と推定された。
【0115】
ペイントを前記ラテックスから製造した。
【0116】
以下の顔料粉砕物を製造した:
表Iに記載した液体成分を全て、Cowlesミキサー中に入れた。顔料を、示した順序で添加し、Hegemanゲージ上で収率a>7を生じるように粉砕した。粉砕物を、オーバーヘッドミキサーを装着した容器に移し、前記ラテックス、Texanol、エチレングリコール、Drewplus L−475及びDSX 1514を添加した。
【0117】
【表1】

【0118】
SurfynolはAir Products and Chemicalsの登録商標であり;TiPureはE.I.DuPont DeNemours Co.の登録商標であり;OmyacarbはOmya,Inc.の登録商標であり;MinexはUnimin Specialty Minerals,Inc.の登録商標であり;TexanolはEastman Chemical Co.の登録商標であり:DrewplusはDrew Industrial Div.,Ashland Chemical Ind.の登録商標であり;DSXはCognis,Inc.の登録商標である。
【0119】
ペイントは吹付粘度まで脱イオン水で薄め、次いで剥離紙のシート(22×29cm;Form RP−1K;Byk−Gardner,Columbia,MD 21046から入手可能)上に吹き付けた。使用した吹付機は、Badger Air Brush Co.,Franklin Park,IL 60131から入手可能なBadgerホビー用吹付機であった。剥離紙上の吹付パターンは、紙の幅全体にわたるストリップであり、ストリップの中央よりも縁部の方が薄かった。自然の吹付パターンにより、縁部が薄くされた。この吹付パターンは、所望の湿潤フィルム厚(Guardco湿潤フィルム厚ゲージによって測定する)が得られるまで、吹付機をパネル全体に左右に複数回均一に動かすことによって得られた。フィルム厚は1〜7mil(25〜175mm)の範囲であった。水での希釈後、液状被覆の固形分は約35%であったので、乾燥フィルム厚は湿潤フィルム厚の約35%であった。吹付パターンのそれぞれの幅は約4cmであった。
【0120】
水で適当な吹付粘度まで更に希釈された接着剤ラテックス(Eastman Eastarez(登録商標)2050;Eastman Chemical Company,Kingsport,Tennesseeから入手可能)の薄い被覆を、部分乾燥ペイントフィルム(周囲条件下で約1時間乾燥後)に上から吹付した。合した層を、周囲条件下で一晩乾燥させた。
【0121】
乾燥フィルムの汚染ブロック性能を以下のインキ試験によって試験した。
【0122】
22×29cmのLenetaチャート上に支持された7milのBirdアプリケーターを用いて適用されたBehr No.1050 Ultra Pure White Interior Flat壁ペイントの乾燥被覆に、水溶性インキのストライプを移した。適用されたインキを少なくとも1週間間乾燥させた。次いで、剥離紙のシートから切り取られた、前述のようにして製造された剥離層上の乾燥フィルム層の試験片を、粘着性側がインキ及びペイント面に向くように、インキ帯の一部の真上に接触させた。剥離紙の裏面への軽い摩擦圧力により、乾燥フィルム層及び接着剤層を、インキを塗った表面に移した。従って、乾燥フィルム層がインキのストライプの部分を被覆し且つ更に、移されたペイントに薄くされた縁部及びカットエッジの両方が存在するように乾燥フィルム層を移した。カットエッジを白色塗装領域に配置し、薄くされた端はインキ及び白色塗膜領域の両方を被覆した。薄くされた端は白色塗装領域上で視認できないが、カットエッジには視認できる端が存在した。カットエッジは、最も薄いフィルムの場合でさえも感触があった。
【0123】
比較のため、インキを塗った表面にくっつけられた乾燥被覆の真横に、Kilzペイントも同一インキストライプを被覆するように、3milのBridバーを用いて白色顔料添加Kilz Premium汚染ブロックペイント(Masco,Inc.,21001 Van Horn Road,Taylor,MI 43130から入手可能)の湿潤フィルムを適用した。適用されたKilzペイントは速やかに(1分以内に)、適用されたKilzペイントの真下のインキストライプの色を呈した。Kilz Premiumペイントを50%の相対湿度で4.5時間乾燥させた。乾燥後、No.80巻き線型ロッドコーティングアプリケーターを用いて、乾燥転写ペイント及び乾燥Kilz Premiumペイント(及び更に中間に)(いずれもインキストライプを被覆している)の両方の真上にBehr 1050 Ultra Pure White Interior Flatペイントのトップコートを適用した。この被覆を湿度50%において一晩乾燥させた。
【0124】
各適用ペイント、本発明に従って適用された乾燥フィルム層及び湿潤適用されたKilz(登録商標)Premium対照ペイントに関して、一晩乾燥後に色を観察した。色が観察されたインキストライプの部分は、Behr 1050トップコート及び適用乾燥ペイントフィルムの両者によって被覆されたものであった。比較のために、インキストライプの色を、Behr 1050トップコートのみによって被覆された場合にも観察した。以下の表は、ブルーインキの色に比較したそれぞれの相対的な色を示す。プライマーも乾燥フィルムもなく、Behrトップコートのみが存在する場合には、表IIに示されるように、色の等級は8である。
【0125】
【表2】

【0126】
色の値がペイントの全てに関して0より大きいにもかかわらず、乾燥フィルムとして適用されたペイントに関しては表面にじみの痕跡ははっきりと見えなかった。乾燥フィルム層の隠蔽値(その厚さ及び顔料レベルによって左右される)のみでは、色は乾燥フィルム層を通して透けて見えると考えられた。
【0127】
乾燥フィルム層の、薄い縁部(feathered edge)は、すでに乾燥しているが湿潤適用されたBehr 1050トップコートによって被覆された、非インキ塗布表面上では依然として視認できなかった。しかし、乾燥適用ペイントのカットエッジは依然として、Behr 1050トップコートを通して視認可能であった。薄い端で影が作られるように光が放たれる場合には、それは最も明白であった。最も薄い(1mil湿潤適用)乾燥フィルム層でさえカットエッジは視認できたのに対して、薄い縁部は最も厚い(7mil湿潤適用)乾燥フィルム層でさえBehr 1050トップコートの下において視認できなかった。
【0128】
例6
オールアクリルラテックスを用いて、前述と同様にして、接着剤で被覆された乾燥フィルムを製造した。使用したラテックスは、Resolution Specialty Materials,LLCから入手可能なHydreau(登録商標)AR 110であった。これを、Rhom and HaasからのRM−8会合性増粘剤を水で固形分3.6%に希釈することによって製造された1.0phrの増粘剤溶液とブレンドした。
【0129】
剥離紙(Form RP−1K Release Paper;Byk−Gardner USAから入手可能)に、3milのBirdバーを用いてドローダウンによって、8phrのTexanolエステルアルコール溶剤(ラテックス固形分に基づく)を含むラテックスを被覆した。被覆を一晩乾燥させ、次いでアクリルラテックスの上に後で接着剤が形成されるようにこれに1milのBirdバーを用いてEstarez 2050接着剤ラテックスを被覆した。乾燥時に、フィルム−接着剤複合材料を、Sanford Companyから入手可能なEberhard Faber 4000シリーズの水性マーカーに使用されたのと同様な水溶性インキの帯(6種の異なる色のインキを用いた:ブルー、レッド、グリーン、アクア、マゼンタ、及びイエロー)が予め被覆されたLenetaチャートに移した(剥離紙の裏側に圧力を適用することによって)。乾燥フィルム−接着剤複合材料のそばに、Kilz(登録商標)Premium汚染ブロックペイント(Masterchem Industries,Inc.,Imperial,MO 63052から入手可能)の湿潤フィルムを適用した(これも3milのBirdバーを用いて)。乾燥フィルム−接着剤複合材料及びKilz Premiumペイントの両方が、6色のインキの全てを被覆した。
【0130】
転写乾燥フィルム−接着剤複合材料を含む、インキ塗布紙を、乾燥フィルム層で被覆し、次いで、No.80巻き線型ドローバーを用いてこれにBehr Premium 1050ペイントを被覆した。4時間乾燥後、上塗りされたカードを評価し、対照の「湿潤適用」ペイント、Kilz Premiumペイントドローダウンと比較した。使用したAR−110プライマーは、隠蔽に役立つ顔料を含まないとしても、インキの色を、湿潤適用されたKilz Premiumペイントの色よりも低く抑えた。
【0131】
例7
この用途において適当である、通常使用される多くの型の被覆樹脂を示すために、前記例6と同様な評価方法を用いて、以下の樹脂を評価し、結果を以下の表中に示した。
【0132】
樹脂A:
以下の成分を順次ブレンドすることによって、アミン硬化エポキシ樹脂(本質的にカチオン性)を製造した:
Huntsman Performance Chemicals,Conroe,TX 77305から入手可能なJeffamine(登録商標)D−400ポリオキシアルキレンアミン30g;
Dow Chemical,Midland,MI 48674から入手可能なEthyleneamine E−100ポリ(エチレンポリアミン)6g;及び
Resolution Performance Products,Houston,TX 77210−4500から入手可能なEPON(登録商標)Resin 828、ビスフェノールA/エピクロロヒドリン由来の液体エポキシ樹脂100g。
【0133】
前記の部分硬化(粘度を増加させるために約50℃において10分間加温することによって硬化を促進した)エポキシ樹脂に関して1milのBirdバーを用いて剥離紙上の乾燥フィルム−接着剤複合材料を製造し、樹脂を一晩硬化させ、次いで1milのBirdバーを用いてEastarez 2050水性接着剤ラテックスのドローダウンを行った。
【0134】
樹脂B:
Acrysol(登録商標)RM−8会合性増粘剤(Rohm and Haasから入手可能)の3.6%水溶液4.3phrがブレンドされた、Zeneca Resins,730 Main Street、Wilmington,MA 01887から入手可能なNeorez(登録商標)水性ウレタンを用いて、3milのBirdバーを使用して剥離紙上に乾燥フィルムを作った。樹脂を少なくとも3時間乾燥させた。次いで、インキ塗布紙基材への後からの転写において接着を引き起こすために、Eastarez 2050の接着剤被覆を1milのBirdバーで適用した。
【0135】
樹脂C:
RM−8会合性増粘剤の3.6%水溶液0.98phrがブレンドされた、Resolution Specialty Materials,LLCから入手可能なAquamac 580酢酸ビニル−アクリルラテックスを、3milのBirdバーを用いて適用し、少なくとも3時間乾燥させた。この後、1milのBirdバーを用いてEastarez 2050を適用した。
【0136】
樹脂D:
RM−8会合性増粘剤の3.6%水溶液3.9phrがブレンドされた、B.F.Goodrich Performance,Cleveland,OH,44141−3247から入手可能なSancure(登録商標)825水性ウレタンを3milのBirdバーで剥離紙に適用し、次いで少なくとも3時間乾燥させた。この後、1milのBirdバーでEastarez 2050を適用し、乾燥させた。
【0137】
樹脂E:
RM−8会合性増粘剤の3.6%水溶液2.7phrとブレンドされた、モノマー2−エチルヘキシルアクリレート(76.5%)、アクリロニトリル(20%)、メタクリル酸(2%)及び2−ホスファトエチルメタクリレート(0.5%)からなるポリマーのラテックスを、3milのBirdバーを用いて剥離紙上にドローダウンした。この樹脂を少なくとも3時間乾燥させた。このラテックスのTgは−20℃であって、この温度では著しく粘着性のフィルムが生じるので、このラテックスの転写には接着剤樹脂が必要なかった。
【0138】
樹脂F:
RHOPLEX(登録商標)SG−30(Rohm and Haas,Philadelphia,PAから入手可能なオールアクリルラテックス)を、2milのBirdバーを用いて剥離紙上にドローダウンし、少なくとも3時間乾燥させ、次いで1milのBirdバーを用いてEastarez 2050を更に被覆した。
【0139】
樹脂G:
Byk 301(Byk−Chemie USA,Wallingford,CT 06492−7651から入手可能)9.6phrが添加されたZinsser Bullseye Shellac(W.M.Zinssesr and Company,Somerset,NJ 08875から入手可能)を、3milのBirdバーを用いて剥離紙上にドローダウンし、少なくとも3時間乾燥させた。次いで、透明なシェラックフィルムの上に、1milのBirdバーを用いて、Eastarez 2050をドローダウンし、これを続いて乾燥させた。
【0140】
プライマー乾燥フィルム上の領域の視認可能なブルーインキの色を、液体適用されたKilz Premiumプライマードローダウンに比較して評価した(他の色も同様に輸送されたが、評価は、一貫性を保つためにブルーインキの領域上でのみ行った)。等級を表3に示す。
【0141】
【表3】

【0142】
前記乾燥フィルムとの比較のために、例C及びDからの液体ペイントを同様なインキチャートに直接適用し、少なくとも4時間乾燥させ、次いで前記と同一のトップコートを被覆した。液体適用Cに関する色の読み取り値は9〜10であり、液体適用Dは3(最適化された液体Kilz Premiumペイントとほぼ等しい)であった。湿潤適用の結果はいずれも、インキブロックにおいては対応する乾燥フィルムほど優れていなかった。
【0143】
水溶性樹脂H:
比較的性能が悪い水溶性ポリマーの使用を示すために、水溶性ポリマーから乾燥フィルムを製造した。ポリ(アクリル酸)(Mw=約5000;水中50%;Aldrich Chemical Company,Milwaukee,WI 53233から入手可能)を1%のSurfynol 104Aアセチレンジオール(Air Productsから入手可能)及び0.1%のZonyl(登録商標)FSN(du Pont,Wilmington,DEから入手可能)とブレンドした。2milのBirdバーを用いて、剥離紙上に薄いフィルムを形成した。それを室温で一晩乾燥させて、透明な乾燥フィルムを形成した。次いで、このフィルム上におけるEastarez 2050(水で1:10に希釈)を用いたドローダウンを、1mil Birdバーを使用して行って、フィルム表面に接着性を与えた。前の例と同様に、インキ塗布チャートにフィルムを移し、次いで移されたフィルムを含むチャートに、No.80巻き線型ドローバーを用いてBehr 1050ペイントを被覆した。このペイントを4時間乾燥させ、次いで、インキ塗布チャートに湿った状態で適用され且つ乾燥された対照プライマーフィルムに対比して評価した。ブルーインキに関する色の等級は9であった(プライマーが存在しない場合と同様な外観)。このポリマーは、乾燥フィルムを通る汚染の移行を遅らせることができないほど高い透水性(従って高いインキ汚染透過性)を与えるほど水溶性が高く且つ分子量が低く、その結果示される性能が不良であると考えられる。溶剤系液状被覆をその後に適用する場合には、このポリマーはそれにもかかわらず、充分な性能特性を有する可能性がある。
【0144】
例8
この例は、乾燥フィルム層の形成に有用な被覆樹脂の更なる例を示す。この例及び以下の例において、本発明者らは、アルキド、ポリエステル及び接着剤樹脂の使用の例を提示する。
【0145】
樹脂A(アルキド樹脂):
以下の成分をブレンドした。
Duramac HS 57−5816(Resolution Specialty Materials,LLCから入手可能な固形分90%のアルキド樹脂)25.2g
12% Cobalt Hexcem(登録商標)(OMG Americasから入手可能)0.052g
12% Zirconium Hexcem(OMG Americasから入手可能)0.20g
BYK 301(BYK−Chemie USAから入手可能)0.751g。
【0146】
樹脂B(ポリエスエステル):
ネオペンチルグリコール/トリメチロールプロパン/イソフタル酸/アジピン酸から製造されたポリエステル(キシレン中80%溶液;Eastman Chemical Companyのポリエステル出発配合物HS−3−1N)18.07g
Cytec,Inc.から入手可能なCymel(登録商標)303アミノプラスト樹脂1.57g
King Insudstiesからのイソプロパノール溶液中Nacure(登録商標)5076ドデシルベンゼンスルホン酸0.26g
この樹脂ブレンドは、ポリエステルに基づき約10.9phrのアミノプラスト樹脂を含んでいた。
【0147】
樹脂C(ポリエステル):
前記ポリエステル溶液B 6.03g
前記Bからの追加ポリエステル5.94g
キシレン1.87g。
【0148】
この樹脂ブレンドは、ポリエステルに基づき約5.2phrのアミノプラスト樹脂を含んでいた。
【0149】
樹脂D:
以下の成分を攪拌しながら順次合することよって、示すようにして、増粘された接着剤溶液を製造した:
EASTAREZ(登録商標)2050(Eastman Chemical Companyから入手可能)32.4g
濃水酸化アンモニウム(28−30%)0.20g
UCAR(登録商標)Polyphobe(登録商標)104 0.79g
この溶液のpHは、アンモニアの添加後には9.01と測定された。
【0150】
例9
この例は、溶剤系硬化アルキド樹脂及びポリエステルフィルムを乾燥フィルム層として及びまた汚染ブロックペイントとして使用することを示す。
【0151】
例8−Aのアルキド樹脂
75マイクロメーター(3mil)のギャップを有するBirdバーを使用して、例8−Aのアルキド樹脂組成物を用いて剥離紙(Form RP−1K Release Paper;Byk−Gardner USAから入手可能)上にドローダウンを行った。60℃で1時間の加熱乾燥条件下で硬化すると皺の寄ったフィルムが生成した。ギャップが25マイクロメーターのドローバーを使用して同様なドローダウンを行い、同様な条件下で皺を形成せずに硬化させて、不粘着フィルムを生成した。Birdアプリケーターを用いて、硬化アルキド樹脂フィルムの上に接着剤(例8−Dから)の薄いフィルムを広げた。これを室温で約10分間フラッシュさせ、次いで60℃で15分間加熱乾燥して、接着剤を乾燥させた。
【0152】
乾燥フィルム複合材料(剥離層上の乾燥フィルム層+接着剤層)を最初に、ドローダウンから欠陥を除くために縁部においてトリムし、次いでこれを、老化させた(少なくとも7日間)着色水溶性インキラインを塗面上に更に含む、室温で1ヶ月超の間硬化された乾燥ペイント塗膜(Behr 2050;乾燥フィルム厚約3mil)が被覆されたLenetaカードから製造されたインキ汚染試験カードと接触させて、それに移した(剥離紙の裏面に適用されたわずかな圧力を用いて)。乾燥フィルム−接着剤複合材料が被覆されたインキラインは、水溶性マーカーペンに用いたのと同様に、レッド、ブルー、グリーン及びイエローのインキであった。乾燥フィルム層の試験カード塗装基材への接着は優れていた。乾燥フィルム及びインキ試験カードの隣接未被覆領域上に、No.80巻き線型ロッドペイントアプリケーターを用いてBehr 1050ペイントの層をドローダウンした。このペイントを4時間乾燥させ、次いでインキブロックに関して評価したところ、インキブロックは完全であった。新たに乾燥されたペイントトップコートの表面にインキは見えず、Behr 1050トップコート及び透明プライマー層の不充分な隠蔽により、ごくわずかな色が視認できた。
【0153】
5.2phrの硬化剤を有する例8−Cのポリエステル
この例は、接着剤層を用いずに基材に移る、乾燥フィルム層を形成する部分硬化ポリエステルを示す。
【0154】
3mil(75マイクロメーター)のギャップを有するBirdバーを使用して、5%のCymel 303を含む例8のポリエステルブレンド(例8−C)を用いて剥離紙(Form RP−1K Release Paper;Byk−Gardner USAから入手可能)上に幅約5cmのドローダウンを行った。ドローダウンを100℃において30分間硬化させて、少し架橋されたフィルムを形成し、又は150℃で45分間硬化させた。被覆は依然として粘着性であり、室温への冷却後には若干ゴム状であった。
【0155】
150℃において硬化されたドローダウン(乾燥フィルム層)を、厚さ約3milのBehr 1050ペイント(少なくとも1ヶ月間乾燥させ、次にその全体に13種の異なる色のインキをつけてインキ汚染とし、次いで少なくとも7日間老化させてある)が被覆された基材に押しつけた。粘着性の乾燥フィルム層は、指で剥離紙の裏面をこすることによってごく弱い圧力で剥離紙から容易に移った。湿潤適用される、顔料添加汚染ブロックペイント(Kilz Premium)を、新たに移された乾燥ペイントに隣接して適用して、またインキ塗布された塗装基材を被覆した。湿潤ペイントを一晩(16時間)乾燥させた。両被覆(乾燥ペイントフィルム及びKilz Premiumペイントフィルム、すでに乾燥)を、No.80巻き線型(wire wound)ペイント適用ロッドを使用して湿潤Behr 1050ペイントのトップコートで被覆した。乾燥フィルム層及びKilz Premiumが、塗布されていない、インキ塗布された乾燥Behr 1050ペイントの元の表面に匹敵する程度を比較できるように、元の下塗りがされていない、インキ塗布塗装基材の領域をまた、湿潤ペイントで被覆した。
【0156】
トップコートペイントを6時間乾燥後、新たに適用されたトップコートの表面の色がどの程度であるかの判断を行った。乾燥フィルム層もKilz Premiumペイント内層面もない領域は、ひどい色の表面にじみを示した。色の約90%が、新たに適用されたペイントトップコートを通して輸送された。
【0157】
Kilz Premiumペイントは、ごく少量のインキしか表面まで通過させず、色を約80%抑えた(元の色強度の20%)。更に、Kilz Premium領域のインキラインはかなり広くなり、非下塗り領域のインキラインと同じくらいの幅であった。プライマー中の顔料は多少の色を隠蔽するのに役立った。
【0158】
非顔料添加乾燥ペイントフィルム層は、顔料添加Kilz Premiumと同様なレベルの色をブロックし、、新たに適用された表面には色のわずか約20%しか視認可能な状態で残されなかったが;インキラインは依然として元の幅であった。インキの拡散は起こらなかった。これは、表面において見えるインキは、顔料が添加されていない硬化ポリエステルフィルムの比較的よくない隠蔽によるものだけであったこと、及び元のインキラインがトップコートから透けて、それらの元の強度の20%をあらわにしたことを示している。
【0159】
乾燥適用ペイントフィルムの縁部がある場所の下の、Behr 1050被覆基材の領域は、表面に対して小さい角度で発せられた光を用いてはっきりと視認できた。フィルムの端は薄くされなかったので、この端は容易に目視でき、また、トップコートが適用され且つ乾燥された後でさえ、指による触感があった。
【0160】
10.9phrの硬化剤を有する例8−Bのポリエステル
この例は、ポリエステル−メラミン樹脂被覆フィルム層の不粘着フィルムへの硬化、それに続く、基材へのその移動を助けるための粘着剤の適用を示す。
【0161】
75マイクロメーター(3mil)のギャップを有するBirdバーを使用して、10.9phrのCymel 303を含む例8のポリエステルブレンド(例8−B)を用いて剥離紙(Form RP−1K Release Paper;Byk−Gardner USAから入手可能)上に幅約5cmのドローダウンを作った。溶剤を室温で15分間フラッシュ後、ドローダウンを150℃において30分間硬化させて、表面に粘着力の痕跡のない架橋乾燥フィルム層を形成した。次いで、乾燥フィルム層の上部に、例8−Dからの湿潤接着剤を厚さ約75マイクロメーターで被覆し、室温で10分間、次いで60℃で15分間乾燥させた。
【0162】
前に製造されたドローダウン複合材料(硬化ポリエテル乾燥フィルム層及び接着剤層)をトリムして、粗い縁部(rough edges)を除去し、次いで、厚さ約3milのBehr 1050ペイントが被覆された基材(少なくとも1ヶ月間乾燥させてから、次に6種の異なる水溶性着色インキをその全体に引いて、インキ汚染とし、次に少なくとも7日間老化させてある)上に押しつけた。
【0163】
粘着性フィルム複合材料は、剥離紙の裏面を指でこすることによってごく弱い圧力で剥離紙から容易に移った。次いで、インキ塗布表面に接着された乾燥フィルム複合材料に、No.80巻き線型ペイント適用ロッドを使用して湿潤Behr 1050ペイントのトップコートを更に被覆した。乾燥フィルム層が被覆されていない、インキ塗布乾燥Behr 1050ペイントの元の表面に匹敵する程度を比較できるように、元の下塗りがされていない、インキ塗布された塗装基材をまた、湿潤ペイントで被覆した。
【0164】
トップコートペイントを少なくとも4時間乾燥後、新たに適用されたトップコートの表面の色がどの程度であるかの判断を行った。乾燥フィルム複合材料内層面がない領域は、ひどい色の表面にじみを示した。色の約90%が、新たに適用されたペイントトップコートを通して輸送された。
【0165】
顔料が添加されていない乾燥ペイント複合材料は、インキの色をほとんど隠し、元の色強度の約20%しか、新たに適用された表面に視認可能な状態で残されなかった。この視認可能な色は、トップコート及び透明乾燥フィルム複合材料層の隠蔽がないことによると考えられた。乾燥フィルム複合材料が被覆された領域に関してはインキの拡散は観察されなかったが、乾燥フィルム複合材料が存在しない場所においてトップコートを通ってインキが拡散した場合には、インキ帯のかなりの拡大が観察された。
【0166】
例10
剥離紙上の乾燥プライマーフィルム−Tgの影響
ガラス転移温度が18℃、10℃及び0℃のスチレン−アクリルラテックスを用いて水性被覆配合物を製造した。この配合物を表4に示す。使用したラテックスは、スチレンに対する2−エチルヘキシルアクリレートの比率を変化させてTgの差を生じさせる以外は、前記の例5の配合表(約0℃のTgを有する)と同じ組成であった。Tg=0℃を有する使用ラテックスは例5に使用したものであった。
【0167】
粉砕物に関しては、液体成分全てをCowlesミキサー中に入れた。顔料を、示した順序で添加し、Hegemanゲージ上で収率a>7を生じるように粉砕した。粉砕物を、オーバーヘッドミキサーを装着した容器に移し、前記ラテックス、Texanol(登録商標)エステルアルコール、エチレングリコール、Drewplus L−475及びDSX 1514を添加した。
【0168】
【表4】

【0169】
SurfynolはAir Products and Chemicalsの登録商標であり;TiPureはE.I.DuPont DeNemours Co.の登録商標であり;OmyacarbはOmya,Inc.の登録商標であり;MinexはUnimin Specialty Minerals,Inc.の登録商標であり;TexanolはEastman Chemical Co.の登録商標であり:DrewplusはDrew Industrial Div.,Ashland Chemical Ind.の登録商標であり;DSXはCognis,Inc.の登録商標である。
【0170】
被覆を、#60巻き線型ロッドを用いてシリコーン処理剥離紙(Form RP−1K,Byk−Gardner)上にドローダウンし、相対湿度50%及び72°Fにおいて24時間乾燥させた。剥離シートから各被覆の約1.25イントのストリップを切り取った。ストリップをインキ試験基材上に表を下にして配置し、プライマー被覆を移すためにストリップに圧力を適用した。Tgが最も低い配合被覆はインキ基材に充分に移ったが、他は移らなかった。次に、試験パネルに、#60巻き線型ロッドを用いてBehr 2050 Bright White Interior Eggshellを被覆した。乾燥後、パネルを2050トップコートからの表面にじみに関して評価した。汚染ブロック乾燥フィルム層を被覆するトップコート中にはほとんど色が観察されなかったが、プライマーが適用されなかった領域にはひどい色にじみが見られた。
【0171】
例11
この例は、汚染ブロック乾燥フィルム層に用いられる水溶性ポリマーの適用の成功例である。
【0172】
ポリ(ビニルアルコール)(80%加水分解;平均Mw=9000〜10000)を水に溶解させて、50%溶液を得た。これに、1%のSurfynol(登録商標)104Aアセチレンジオール界面活性剤を添加した。これを、平滑なガラス面上において2milのBirdバーを用いて剥離紙上にドローダウンした。このフィルムに、1milのBirdバーを用いて、水で固形分10%に希釈されたEastarez 2050から製造された接着剤ラテックスを適用した。乾燥時に、フィルム複合材料を、最初にかみそりの刃を用いてガラスからのフィルムを除去する以外は前述と同様にして、予めインキ塗布したパネルに移した(粘着性のある側を下にして)。乾燥フィルムを含む、インキ塗布パネルに、Behr 1050ペイントのトップコートを被覆し、4時間乾燥させた。ブルーインキの色の結果は、例7−Hのわずか9(10はインキブロックがない)に比べて、2〜3の等級であった。
【0173】
比較のために、前に使用した接着剤を、1milのBirdバーを用いて剥離紙上にドローダウンした。良好なドローダウンを得るために、RM−8増粘剤の固形分3.6重量%溶液10.8gをEastarez 2050 20g及び水80gに添加した。従って、比較は、Eastarez 2050と共にかなりの量の添加RM−8ポリマー固形分からなる。乾燥フィルムを、前述のようにしてインキ汚染チャートに移し、次いでBehr 1050を上塗りし、4時間乾燥させた。1の色の結果(良好なインキブロック)は有益であった。この薄いフィルムでもインキ汚染をブロックした。ポリ(アクリル酸)比較例において接着を引き起こすのにこの接着剤を用いた事例は、良好な耐水性皮膜形成剤でないいくつかのポリマーが、接着剤層の良好な汚染ブロック性能に実際に影響を与え得ることを示している。他の事例では、接着剤層が、乾燥フィルム複合材料のインキブロック性能に役立っている場合がある。
【0174】
例12
以下は、例13〜17において使用する汚染パネルの製造を記載する。
【0175】
パネルの製造
Behr Premium Plus Ultra White Interior Satin Enamel No.70501を、7milのBirdアプリケーター3を用いてForm 1B ”PENOPAC”チャート2に適用した。パネルを24時間自然乾燥させた。地元のデパートから購入した以下の汚染を、記載した順序でパネルに横に渡した直線定規に沿って適用した。
【0176】
Crayola Kid’s First Washable Yellow Maker4
Crayola Washable Battery Charged Blue Marker4
Crayola Washable Infra Red Marker4
Crayola Washable Hot Pink Marker4
Crayola Washable Graphic Green Marker4
Crayola Kid’s First Washable Purple Maker4
Crayola Kid’s First Washable Hot Pink Maker4
Crayola Kid’s First Washable Black Maker4
Covergirl Really Red Lipstick8
Sharpie Red Marker5
Crayola Red Crayon4
Rub−a−Dub Black Marker5
Sandford Flip Chart Blue Marker5
Marks−a−Lot Black Permanent Marker5
Papermate Widemate Blue Ball Point5
BIC Black Ball Point Pen6
Hi−Liter Marker Fluorescent Pink7
Sanford Major Accent Blue Highlighter5
Sanford Major Accent Yellow Highlighter5
Magic Marker Permanent Red Marker6
Sharpie Black Marker5
試験前に、パネルを周囲条件において最低48時間乾燥させた。
【0177】
例13
以下の例は、市販汚染ブロッカーの性能を、湿潤塗料として普通の汚染に適用した場合と乾燥フィルムとして適用した場合とで比較した。
【0178】
乾燥フィルムの製造
市販汚染ブロッカーは、地元の建築用サプライストアから購入した。充分に混合しながら、Kilz Premium Interior/Exterior Water−based Stainblocker9及びKilz Original Oil−based Stainblocker9をそれぞれ、イソプロピルアルコール10で10%に希釈した。これは剥離紙(Flexmark 78B M&O 6 Silicone Release Liner11)を湿らせるために必要であった。希釈された汚染ブロッカーを、K−Control Coater12を用いてNo.8 RKロッド(約4mil湿潤)で剥離紙に適用した。被覆を周囲条件で一晩乾燥させた。次いで、Eastarez 205013、水性接着剤を、No.0のRKロッドを用いて乾燥被覆に適用した。再び、被覆を周囲条件において一晩硬化させた。
【0179】
湿潤対照の製造
断片を折りたためるように、汚染パネル(例12)を下から上へ複数の断片に切った。1つのパネル上の1つの断片に、K−Control Coater12を用いてNo.8のRKロッド(約4mil湿潤)で入荷したままのKilz Premium Interior/Exterior Water−based Stainblocker9を塗布した。1つのパネル上の1つの断片に、K−Control Coater12を用いてNo.8のRKロッド(約4mil湿潤)で入荷したままのKilz Oil−based Stainblocker9を被覆した。被覆は、ペイントのトップコートを適用する前に、ラベルの指示に従って1時間乾燥させた。
【0180】
試験
汚染パネル(例12)上に接着剤面を置き、手でこすって被覆を固定し、次いで剥離紙を持ち上げて剥がすことによって、各個別パネルの1つの断片上に対応する乾燥フィルム汚染ブロッカーを適用した。次いで、湿潤被覆された断片及び乾燥フィルムが塗布された断片の両方に、K−Control Coater 12を用いてNo.8のRKロッド(約4mil湿潤)でBehr Premium Plus Ultra Pure White Interior Flat Paint,No.10501を上塗りした。パネルを一晩乾燥させてから、ブロック性能を目視判定した。湿潤適用及び乾燥適用Kilz Original Oil−based Stainblocker9はいずれも21種の全ての汚染を完全にブロックした。しかし、湿潤適用されたKilz Premium Interior/Exterior Water−based Stainblocker9は21種の汚染のうち4種しかブロックしなかったが、乾燥適用されたKilz Premium Interior/Exterior Water−based Stainblocker9は21種の全ての汚染を完全にブロックした。
【0181】
例14
接着剤及び汚染ブロッカーを以下のように被覆前に湿潤混合する以外は、Kilz Premium Interior/Exterior Water−based Stainblocker9を用いて例13を繰り返した。
【0182】
Kilz Premium Interior/Exterior Water−based Stainblocker9 45%
Eastarez 205013 45%
イソプロピルアルコール10 10%。
【0183】
K−Control Coater12を用いてNo.8のRKロッド(約4mil湿潤)で剥離紙(Flexmark 78B M&O 6 Silicone Release Liner11)に被覆を適用した。追加の接着剤層は加えなかった。被覆を前述のようにして乾燥させ、試験した。混合物の乾燥フィルムは21種の全ての汚染を完全にブロックした。
【0184】
例15
練り顔料の製造
水146gを500mlのスチールビーカー中に入れた。ゆっくり混合しながら、以下の成分を記載した順序で添加した。
【0185】
Nytal 770014 285g
TiPure R−70615 42.5g
Surfynol CT 13616 26.5g。
【0186】
次いで、練り顔料を、2インチのこ歯状ブレードによって10,000RPMで15分間て混合した。
【0187】
練り顔料を、チーズクロスを通して濾過した。
【0188】
乾燥フィルムの製造
K−Control Coater12を用いてNo.8のRKロッド(約4mil湿潤)で剥離紙(Flexmark 78B M&O 6 Silicone Release Liner11)に練り顔料を適用した。被覆を90℃において5分間乾燥させて、水を除去した。次いで、K−Control Coater12を用いてNo.7のRKロッド(約3mil湿潤)でEastarez 205013、水性接着剤を練り顔料被覆に適用した。被覆を90℃において15分間乾燥させた。
【0189】
試験
汚染パネル(例12)上に接着剤面を置き、手でこすって被覆を固定し、次いで剥離紙を持ち上げて剥がすことによって、乾燥フィルム被覆を適用した。被覆に、K−Control Coater12を用いてNo.8のRKロッド(約4mil湿潤)でBehr Premium Plus Ultra Pure White Interior Flat Paint,No.10501を上塗りした。パネルを周囲条件において一晩硬化させてから、目視判定した。被覆は21種の全ての汚染をブロックした。
【0190】
例16
ペイントローラーを用いてBehr Premium Plus Ultra Pure White Interior Eggshell Enamel No.20501が前もって被覆されたウォールボードに、例15からの乾燥フィルムを適用した。次いで、ウォールボードを前述と同様にして再塗装した。乾燥フィルムのパッチの端は、塗装の間にローラーによって混ぜ合わされた。乾燥後、パッチはごくわずかに目に見えた。
【0191】
例17
以下の例は、市販の艶消しペイントの性能を、湿潤被覆として通常の汚染に適用された場合と乾燥フィルムとして適用された場合とで比較する。
【0192】
乾燥フィルムの製造
充分に混合しながら、Behr Premium Plus Ultra Pure White Interior Flat Paint,No.10501 20gにノルマルプロピルアルコール13 3.5gを添加した。K−Control Coater12を用いてNo.4のRKロッド(約1.5mil湿潤)で剥離フィルム(2mil Polyester Liner L−25X)にこの混合物を適用した。被覆を90℃において2分間加熱乾燥させた。次いで、K−Control Coater12を用いてNo.2のRKロッド(約0.5mil湿潤)でペイント被覆にEastarez 205013、水性接着剤を適用した。被覆を90℃において5分間乾燥させた。これを試験前に周囲条件において一晩硬化させた。
【0193】
湿潤フィルムの製造及び試験
K−Control Coater12を用いてNo.8のRKロッド(約4mil湿潤)で汚染パネル(例12)にBehr Premium Plus Ultra Pure White Interior Flat Paint,No.10501を適用した。パネルを1時間乾燥させ、次いでもう1つの被覆を適用した。この被覆を一晩乾燥させ、次いで第3の被覆を適用した。ブロックを目視判定した。被覆1は21種の汚染のうち0種をブロックした。被覆3は21種の汚染のうち9種をブロックした。
【0194】
乾燥フィルムの試験
汚染パネル(例12)上に接着剤面を置き、手でこすって被覆を固定し、次いで剥離紙を持ち上げて剥がすことによって、乾燥フィルム被覆を適用した。被覆に、K−Control Coater 12を用いてNo.8のRKロッド(約4mil湿潤)でBehr Premium Plus Ultra Pure White Interior Flat Paint,No.10501を上塗りした。パネルを周囲条件において一晩乾燥させてから、目視判定した。ペイントの第2の被覆を前述と同様にして適用した。パネルを周囲条件において一晩硬化させ、次いで再び判定した。被覆1は21種の汚染のうち21種をブロックしたが、被覆の不透明度は汚染を隠蔽するのに充分ではなかった。第2の被覆の適用後、汚染は見えなかった。
【0195】
例12〜17において使用した装置及び原料の供給元
1− Corporate Headquarters
BEHR Process Corporation
3400 W.Segerstrom Ave.
Santa Ana,CA 92704
2− The Leneta Company
15 Whitney Road
Mahwah,New Jersey,07430
3− Paul N. Gardner Company,Inc.
316 North East First Street
Pompano Beach,Florida,33060
4− Binney & Smith Inc.
1100 Church Lane
Easton,PA 18044−0431
5− Corporate Headquarters
Sanford
2711 Washington Blvd
Belwood,Illinois 60104
6− Societe BIC
14 rue Jeanne D’Asnieres,
92611 Clichy Cedex
France
7− Avery Dennison
Worldwide Office Products
50 Pointe Drive
Brea,California 92821
8− Proctor & Gamble
Cosmetics and Fragrance Products
11050 York Road
Hunt Valley,Maryland 21030−2018
9− Masterchem Industries,Inc.
3135 Old Hwy M
Imperial,Missouri 63052
10−Baxter Healthcare Corporation
Burdick & Jackson Division
Muskegon,Michigan 49442
11−FLEXcon
1 FLEXcon Industrial Park
Spencer,Massachusetts 01562−2642
USA
12−Testing Machine Company
21 Fleetwood Court
Ronkonkoma,New York 11779
USA
13−Eastman Chemical Company
100 North Eastman Road
P.O.Box 511
Kingsport,Tennessee 37662−5075
14−R.T.Vanderbilt Company,Inc.
30 Winfield Street
Norwalk,CT 06856
15−DuPont Global Headquarters
DuPont Building
1007 Market Street
Wilmington,DE 19898
16−Air Products and Chemicals,Inc.
7201 Hamilton Boulevard
Allentown,PA 18195−1501
17−Sil−Tech
Division of Technicote
222 Mound Avenue
Miamisburg,OH 45342
【0196】
本発明を好ましい実施態様に関して詳述したが、本発明の精神及び範囲内において変形及び変更が可能なことは言うまでもない。図面及び明細書において、本発明の典型的な好ましい実施態様を開示した。また、具体的用語を用いてあるが、これらは一般的及び説明的意味でのみ用い、限定を目的とせず、本発明の範囲は添付した特許請求の範囲に記載されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0197】
【図1】剥離層、乾燥フィルム層及び任意の接着剤層を含む乾燥フィルム複合材料の側面図を図示する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の汚染部分を乾燥フィルム層と接触させ;
乾燥フィルム層に圧力を適用して、基材の汚染部分及び汚染に隣接した基材の少なくとも一部分に乾燥フィルム層を接着させ;そして
その後、基材及び乾燥フィルム層に1層又はそれ以上の液状被覆層で被覆する
工程を含んでなる塗装される基材上の汚染をブロックする方法。
【請求項2】
表面欠陥を含む基材の部分を乾燥フィルム層と接触させ;
乾燥フィルム層に圧力を適用して、表面欠陥を含む基材の部分及び表面欠陥に隣接した基材の少なくとも一部に乾燥フィルム層を接着させ;そして
その後、基材及び乾燥フィルム層に1層又はそれ以上の液状被覆層を被覆する
工程を含んでなる塗装される基材上の表面欠陥をブロックする方法。
【請求項3】
前記乾燥フィルム層を剥離紙上に施し、且つ乾燥フィルム層に適用される圧力を剥離層を通して与える請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記乾燥フィルム層に、基材の汚染部分及び汚染に隣接した基材の部分への乾燥フィルム層の接着を助ける接着剤層を施す請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
基材の実質的に全てに1層又はそれ以上の液状被覆層を被覆する請求項1又は2に記載の方法。
【請求項6】
前記基材が実質的に垂直である請求項1又は2に記載の方法。
【請求項7】
前記基材が塗装された壁を含む請求項1又は2に記載の方法。
【請求項8】
前記基材が塗り壁を含む請求項1又は2に記載の方法。
【請求項9】
前記基材が塗り壁、ウォールボード、パーティクルボード、木材、木材−複合材料、コンクリート又は壁紙の1種又はそれ以上を含む請求項1又は2に記載の方法。
【請求項10】
前記汚染がインキ、クレヨン、口紅、皮膚鉛筆、着色マーカー、煙、水又はタンニンの1種又はそれ以上によってもたらされる可視マークを含む請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記汚染が親水性である請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記汚染が親油性であり且つ基材の汚染部分への水性被覆組成物の接着を阻害する請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記汚染が食物残渣を含む請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記汚染が基材表面に存在する請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記汚染が基材上に施されたペイント層の表面に存在する請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記汚染が基材上に施されたペイント層内部に存在する請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記汚染が染料、共役有機化合物、芳香族色素体又は木の節の1種又はそれ以上を含む請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記汚染が水又は有機溶剤に可溶性である請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記汚染が容易には視認できない透明な又は顔料添加がされていない油状又は親油性物質を含む請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記汚染が鉱油、ペトロラタム又はワックスの1種又はそれ以上を含む請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記乾燥フィルム層が後から適用される1層又はそれ以上の液状被覆層への汚染の移行を防止する請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記乾燥フィルム層が後から適用される1層又はそれ以上の液状被覆層が汚染を溶解するのを防止する請求項1に記載の方法。
【請求項23】
乾燥フィルム層;
乾燥フィルム層が上に施される剥離層;並びに
場合によっては、乾燥フィルム層の汚染への接着を助ける、乾燥フィルム層の、剥離層とは反対の側に存在する接着剤層
を含む請求項1又は2に記載の方法における使用に適当な汚染ブロック組成物。
【請求項24】
前記乾燥フィルム層がアクリルポリマー、ウレタンポリマー、エポキシポリマー、炭化水素樹脂、ビニルポリマー、エチレンコポリマー又はスチレンコポリマーの1種又はそれ以上を含む請求項23に記載の汚染ブロック組成物。
【請求項25】
前記乾燥フィルム層が、剥離層上に液体ペイントを塗布し且つ該液体ペイントを乾燥させることによって剥離層上に形成される請求項23に記載の汚染ブロック組成物。
【請求項26】
前記乾燥フィルム層が架橋ポリマー又は非架橋ポリマーの1種又はそれ以上を含む請求項23に記載の汚染ブロック組成物。
【請求項27】
前記乾燥フィルム層がカチオン性ポリマー、アニオン性ポリマー又は中性ポリマーの1種又はそれ以上を含む請求項23に記載の汚染ブロック組成物。
【請求項28】
前記乾燥フィルム層が1種又はそれ以上の層を含み、その各層がカチオン性ポリマー、アニオン性ポリマー又は中性ポリマーを含む請求項23に記載の汚染ブロック組成物。
【請求項29】
前記乾燥フィルム層が指触乾燥状態であり且つ液状物質を滲出しない請求項23に記載の汚染ブロック組成物。
【請求項30】
前記乾燥フィルム層がポリマーを含む請求項23に記載の汚染ブロック組成物。
【請求項31】
前記乾燥フィルム層が液体水性ラテックスから形成される請求項23に記載の汚染ブロック組成物。
【請求項32】
前記乾燥フィルム層が硬化アルキド樹脂又はポリエステルペイントを含む請求項23に記載の汚染ブロック組成物。
【請求項33】
前記乾燥フィルム層が乾燥ペイントを含む請求項23に記載の汚染ブロック組成物。
【請求項34】
前記乾燥フィルム層が感圧性接着フィルムを含む請求項23に記載の汚染ブロック組成物。
【請求項35】
前記乾燥フィルム層が実質的に溶剤を含まない請求項23に記載の汚染ブロック組成物。
【請求項36】
前記乾燥フィルム層が実質的に非孔質性である請求項23に記載の汚染ブロック組成物。
【請求項37】
前記乾燥フィルム層が酸官能基を有するポリマーを含む請求項23に記載の汚染ブロック組成物。
【請求項38】
前記乾燥フィルム層が環状尿素官能基、アミン官能基又は第四級アンモニウム官能基の1種又はそれ以上を有するポリマーを含む請求項23に記載の汚染ブロック組成物。
【請求項39】
前記乾燥フィルム層が増粘剤を含む水性コーティングから形成される請求項23に記載の汚染ブロック組成物。
【請求項40】
前記乾燥フィルム層が感圧性接着剤を含む請求項23に記載の汚染ブロック組成物。
【請求項41】
前記乾燥フィルム層が少なくとも1つの薄くされた縁部を含む請求項23に記載の組成物。
【請求項42】
前記乾燥フィルム層が少なくとも2つの薄くされた縁部を有する請求項23に記載の組成物。
【請求項43】
前記乾燥フィルム層の縁部が薄くされている請求項23に記載の組成物。
【請求項44】
前記乾燥フィルム層が少なくとも0.5cmの幅を有する請求項23に記載の組成物。
【請求項45】
前記乾燥フィルム層が少なくとも2cmの幅を有する請求項23に記載の組成物。
【請求項46】
前記乾燥フィルム層が約0.5cm〜約1mの幅を有する請求項23に記載の組成物。
【請求項47】
前記乾燥フィルム層が約4cm〜約70cmの幅を有する請求項23に記載の組成物。
【請求項48】
ローラーによって圧力を適用する請求項1又は2に記載の方法。
【請求項49】
スパチュラ又は他のブレードアプリケーターによって圧力を適用する請求項3に記載の方法。
【請求項50】
手で圧力を提供する請求項3に記載の方法。
【請求項51】
乾燥フィルム層の表面全体に均一に圧力を適用する請求項3に記載の方法。
【請求項52】
前記接着剤層がアクリルポリマー、炭化水素ポリマー又はウレタンポリマーの1種又はそれ以上を含む請求項23に記載の組成物。
【請求項53】
前記接着剤層が約−60℃〜約0℃のTgを有するポリマーを含む請求項23に記載の組成物。
【請求項54】
前記接着剤層が粘着付与剤樹脂を含む請求項22に記載の組成物。
【請求項55】
前記接着剤層がスチレン−イソプレンポリマーを含む請求項23に記載の組成物。
【請求項56】
前記接着剤層がアクリルラテックスポリマーを含む請求項23に記載の組成物。
【請求項57】
前記接着剤層が約1マイクロメーター〜約50マイクロメーターの厚さを有する請求項23に記載の組成物。
【請求項58】
前記接着剤層が1種又はそれ以上の顔料を含む請求項23に記載の組成物。
【請求項59】
前記剥離層がシリコーンポリマー、フルオロポリマー、炭化水素ポリマー、紙、グラシン紙、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート又はナイロンの1種又はそれ以上を含む請求項23に記載の組成物。
【請求項60】
前記乾燥フィルム層が約2.5マイクロメーター〜約500マイクロメーターの厚さを有する請求項23に記載の組成物。
【請求項61】
前記乾燥フィルム層が約10マイクロメーター〜約150マイクロメーターの厚さを有する請求項23に記載の組成物。
【請求項62】
前記乾燥フィルム層が約−50℃〜約+80℃のTgを有するポリマーを含む請求項23に記載の組成物。
【請求項63】
前記乾燥フィルム層が約−20℃〜約+40℃のTgを有するポリマーを含む請求項23に記載の組成物。
【請求項64】
前記乾燥フィルム層がスチレン−アクリルラテックスから製造される請求項23に記載の組成物。
【請求項65】
前記接着剤層が水性ラテックスから製造される請求項23に記載の組成物。
【請求項66】
前記乾燥フィルム層がアクリルラテックスから製造される請求項23に記載の組成物。
【請求項67】
前記乾燥フィルム層が、アクリルラテックス及び増粘剤から製造され且つ接着剤層が水性ラテックスから製造される請求項23に記載の組成物。
【請求項68】
前記乾燥フィルム層がアミン硬化エポキシ樹脂;水性ウレタン;酢酸ビニル−アクリルラテックス;2−エチルヘキシルアクリレート、アクリロニトリル、メタクリル酸及び2−ホスファトエチルメタクリレートの残基を含むラテックス;アクリルラテックス;又はポリ(ビニルアルコール)の1種又はそれ以上から製造される請求項23に記載の組成物。
【請求項69】
前記乾燥フィルム層が接着剤ラテックスから製造される請求項23に記載の組成物。
【請求項70】
前記汚染が亀裂又はくぎ穴を含む請求項1又は2に記載の方法。
【請求項71】
前記乾燥フィルム層が1つ又はそれ以上の薄くされた縁部を有する請求項1又は2に記載の方法。
【請求項72】
任意の接着剤層が環状尿素官能基、アミン官能基及び第四級アンモニウム官能基の1種又はそれ以上を有するポリマーを含む請求項23に記載の汚染ブロック組成物。
【請求項73】
前記乾燥フィルム層が少なくとも1cmの幅を有する請求項22に記載の組成物。

【図1】
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【公表番号】特表2007−506584(P2007−506584A)
【公表日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−528152(P2006−528152)
【出願日】平成16年9月23日(2004.9.23)
【国際出願番号】PCT/US2004/031174
【国際公開番号】WO2005/030495
【国際公開日】平成17年4月7日(2005.4.7)
【出願人】(594055158)イーストマン ケミカル カンパニー (391)
【Fターム(参考)】