説明

塗装ガン洗浄装置

【課題】手作業用の塗装ガンの内部の部品を変形させずに容易かつ効率的に塗装ガンの先端面を洗浄可能な塗装ガン洗浄装置を提供する。
【解決手段】本発明の塗装ガン洗浄装置10は、霧吹用吐出パイプ50及び乾燥用吐出パイプ53が、塗料噴出口90Aの軸方向と交差する方向から塗装ガン90の先端面90Tに向けて高圧ガスを吐出するので、従来のように高圧ガスによって塗装ガン90が洗浄容器15から離間する方向に押されることはないし、塗装ガン90の塗料噴出口90A内の部品を変形させる虞もない。これにより、高圧ガスの圧力を高くし、洗浄効果を高めることができる。即ち、本発明の塗装ガン洗浄装置10によれば、手作業用の塗装ガン90の内部の部品を変形させずに容易かつ効率的に塗装ガン90の先端面90Tを洗浄することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗装ガンの先端面を洗浄可能な塗装ガン洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ロボットに取り付けられた塗装ガンの先端面を洗浄するために、洗浄容器の上面壁に円形の上面孔を貫通形成すると共に、その上面孔に対して洗浄容器の内側下方から洗浄ノズルを突き合わせた構造の塗装ガン洗浄装置が知られている。この塗装ガン洗浄装置では、塗装ガンの先端面を上面孔に宛って閉塞し、洗浄ノズルから高圧ガスと共に霧状の洗浄液を吹き付けて、塗装ガンの先端面を洗浄する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−187695号公報(第1図、段落[0032],[0033],[0065])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した従来の塗装ガン洗浄装置では、高圧ガスの圧力が高いと塗装ガンの先端面に備えた塗料噴出口内の部品を変形させる問題が発生し、高圧ガスの圧力が低いと十分な洗浄効果を得ることができないという問題があった。また、高圧ガスによって塗装ガンが洗浄容器から離間される方向に押されるので、上記した従来の塗装ガン洗浄装置で、手作業用の塗装ガンを洗浄することは困難であった。さらには、手作業で塗装作業を行う場合、その機動性の良さのために、塗装現場が随時変更され得るが、それら全ての塗装現場に塗装ガン洗浄装置を設置すると設備費が高くなる一方、塗装ガン洗浄装置の設置場所が少ないと、その塗装ガン洗浄装置の設置場所まで塗装ガンを逐一移動する手間がかかる。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、手作業用の塗装ガンの内部の部品を変形させずに容易かつ効率的に塗装ガンの先端面を洗浄可能な塗装ガン洗浄装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するためになされた請求項1の発明に係る塗装ガン洗浄装置は、手作業用の塗装ガンの先端部を挿入可能なガン挿入口を有した洗浄容器の底部に洗浄液を貯留し、洗浄容器に収容した霧吹機構が外部から高圧ガスを受けて底部の洗浄液を吸い上げ、高圧ガスと共に霧状の洗浄液を塗装ガンにおける塗料噴出口を有した先端面に吹き付けて洗浄する塗装ガン洗浄装置において、塗装ガンの先端部をガン挿入口に挿入しかつ塗装ガンのハンドル部を洗浄容器外に配置した状態に保持するためのガン保持手段と、洗浄容器の外面に固定された切替バルブと、切替バルブの入力ポートに塗装現場の高圧ガス供給パイプを着脱可能に接続するためのエアカプラーと、切替バルブの出力ポートに接続されると共に、洗浄容器を内外に貫通した状態に固定され、塗料噴出口の軸方向と交差する方向から塗装ガンの先端面に向けて高圧ガスを吐出可能な霧吹用吐出パイプと、洗浄容器内に固定されて、下端部が洗浄容器の底部の洗浄液に浸されると共に、上端部が霧吹用吐出パイプの前方領域に下方から突き合わされるか或いは霧吹用吐出パイプの中間部に接続されて、洗浄容器内で霧吹用吐出パイプと共に霧吹機構を構成する洗浄液吸引パイプと、切替バルブが、霧吹用吐出パイプと高圧ガス供給パイプとの間を連通した状態と、断絶した状態とに切り替えるためのバルブ切替手段とを備えてなるところに特徴を有する。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載の塗装ガン洗浄装置において、洗浄容器を内外に貫通した状態に固定され、塗料噴出口の軸方向と交差する方向から塗装ガンの先端面に向けて乾燥用の高圧ガスを吐出可能な乾燥用吐出パイプが備えられ、切替バルブの出力ポートには、霧吹用吐出パイプが接続された第1出力ポートと、乾燥用吐出パイプが接続された第2出力ポートとが択一的に入力ポートに連通可能に備えられているところに特徴を有する。
【0008】
請求項3の発明は、請求項2に記載の塗装ガン洗浄装置において、洗浄容器は、上面が開放した箱形の容器本体と、容器本体の後面壁の上端部に回動可能に取り付けられて容器本体の上面開口を開閉可能な蓋体とからなり、容器本体の前面壁にガン挿入口が貫通形成され、容器本体のうち左右方向で対向した1対の側壁に分けて霧吹用吐出パイプと乾燥用吐出パイプとが貫通した状態に固定されているところに特徴を有する。
【0009】
請求項4の発明は、請求項3に記載の塗装ガン洗浄装置において、塗装ガンには、前後方向の中間部又は後端部から上方に突出したフックが備えられ、蓋体のうち回動中心と反対側の端部には、フックを係止可能なガン保持手段としてのフック係止突部が備えられたところに特徴を有する。
【0010】
請求項5の発明は、請求項3又は4に記載の塗装ガン洗浄装置において、容器本体の内面に、塗装ガンより小さい洗浄対象物を収容可能な小物収容篭を設けたところに特徴を有する。
【0011】
請求項6の発明は、請求項3乃至5の何れか1の請求項に記載の塗装ガン洗浄装置において、容器本体は、上下方向の中間位置で、共に上面開放の箱形構造をなした上部構成ボックスと下部構成ボックスとに2分割されると共に、それら上部構成ボックスと下部構成ボックスとを合体した状態にロック可能なボックスロック手段を備え、下部構成ボックスに洗浄液が貯留され、洗浄液吸引パイプは、上部構成ボックスの底壁を貫通し、上部構成ボックスの底壁には、洗浄液を下部構成ボックスに排出するための洗浄液排出口が備えられているところに特徴を有する。
【0012】
請求項7の発明は、請求項6に記載の塗装ガン洗浄装置において、上部構成ボックスの下面には、下部構成ボックス内に収容可能な複数の脚体と、複数の脚体の下端面より上方に配置され、洗浄液排出口に流れ込んだ洗浄液を濾過するためのフィルタとが備えられたところに特徴を有する。
【0013】
請求項8の発明は、請求項6又は7に記載の塗装ガン洗浄装置において、下部構成ボックスには、透光部材で構成された覗き窓が設けられたところに特徴を有する。
【0014】
請求項9の発明は、請求項1乃至8の何れか1の請求項に記載の塗装ガン洗浄装置において、塗装ガンをガン挿入口に挿入したときに開弁し、通常は閉弁している検出バルブと、検出バルブが開弁していることを条件にして、霧吹用吐出パイプと高圧ガス供給パイプとの間の連通を許容するバルブ制御回路を備えたところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0015】
[請求項1の発明]
請求項1の塗装ガン洗浄装置で、手作業用の塗装ガンを洗浄するには、その塗装ガンの先端部を洗浄容器のガン挿入口に挿入しかつ塗装ガンのハンドル部を洗浄容器外に配置した状態にガン保持手段にて保持する。そして、切替バルブにて霧吹用吐出パイプと高圧ガス供給パイプとの間を連通した状態にすると、霧吹用吐出パイプから高圧ガスが吐出され、その高圧ガスによって洗浄液吸引パイプ内が負圧状態になり、これにより洗浄容器の底部から吸い上げらた洗浄液が霧状になって高圧ガスと共に塗装ガンの先端面に吹き付けられる。ここで、霧吹用吐出パイプは、塗料噴出口の軸方向と交差する方向から塗装ガンの先端面に向けて高圧ガスを吐出するので、従来のように高圧ガスによって塗装ガンが洗浄容器から離間する方向に押されることはないし、塗装ガンの塗料噴出口内の部品を変形させる虞もない。これにより、高圧ガスの圧力を高くし、洗浄効果を高めることができる。即ち、本発明の塗装ガン洗浄装置によれば、手作業用の塗装ガンの内部の部品を変形させずに容易かつ効率的に塗装ガンの先端面を洗浄することができる。しかも、霧吹用吐出パイプと高圧ガス供給パイプとを接続するための切替バルブが洗浄容器の外面に固定され、高圧ガス供給パイプがエアカプラーを介して切替バルブに着脱可能に接続されているので、塗装ガン洗浄装置の設置場所を容易に変更することができ、洗浄作業の作業効率を向上させることができる。
なお、洗浄容器を、塗装現場の設備その他の固定部材に着脱可能に取り付けるための容器取付手段を備えた構成にしてもよいし、洗浄容器を、塗装現場の床面に載置する構成にしてもよい。
【0016】
[請求項2の発明]
請求項2の塗装ガン洗浄装置では、高圧ガス供給パイプを乾燥用吐出パイプに連通させて、塗装ガンの先端面から洗浄液を吹き飛ばすことができる。
【0017】
[請求項3の発明]
請求項3の塗装ガン洗浄装置では、蓋体を回動して容器本体の上面開口を開くことで、容器本体の内部を容易にメンテナンスすることができる。
【0018】
[請求項4の発明]
請求項4の塗装ガン洗浄装置では、蓋体を閉めなければ、塗装ガンのフックをフック係止突部に係止することができないので、蓋体の閉め忘れを防ぐことができる。
【0019】
[請求項5の発明]
請求項5の塗装ガン洗浄装置では、塗装ガンの洗浄と共に、小物収容篭に収容した洗浄対象物の洗浄を行うことができる。
【0020】
[請求項6の発明]
請求項6の塗装ガン洗浄装置では、容器本体が上部構成ボックスと下部構成ボックスとに2分割され、下部構成ボックスに洗浄液が貯留されているので、下部構成ボックスを上部構成ボックスから離脱して、容易に洗浄液の交換を行うことができる。
【0021】
[請求項7の発明]
請求項7の塗装ガン洗浄装置では、洗浄液を下部構成ボックスに回収する際にフィルタで異物を除去することができる。また、下部構成ボックスを外した状態で上部構成ボックスを床に載置しても、複数の脚体によって上部構成ボックスの下面と床との間に空間が形成され、その空間にフィルタが配置されるので、フィルタのメンテナンスを容易に行うことができる。
【0022】
[請求項8の発明]
請求項8の塗装ガン洗浄装置は、覗き窓を通して下部構成ボックスにおける洗浄液の量及び汚れを判別することができる。また、メンテナンス時を表示する表示部を備えたフィルタであれば、その表示部を覗き窓を通して見ることができる。
【0023】
[請求項9の発明]
請求項9の塗装ガン洗浄装置は、塗装ガンがガン挿入口に挿入されていない状態で謝って洗浄が行われないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1実施形態に係る塗装ガン洗浄装置の斜視図
【図2】塗装ガン洗浄装置の容器本体を分解した状態の斜視図
【図3】塗装ガン洗浄装置の正面図
【図4】塗装ガン洗浄装置の側断面図
【図5】塗装ガン洗浄装置の後方斜視図
【図6】塗装ガン洗浄装置の一部を破断した斜視図
【図7】フィルタの側面図
【図8】小物収容篭の斜視図
【図9】塗装ガン洗浄装置の平断面図
【図10】バルブ制御回路の回路図
【図11】塗装ガン洗浄装置の後方斜視図
【図12】塗装ガン洗浄装置の部分側面図
【図13】第2実施形態の塗装ガン洗浄装置の側断面図
【図14】塗装ガン洗浄装置の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0025】
[第1実施形態]
以下、本発明の一実施形態を図1〜図12に基づいて説明する。図1において符号90は、手作業用の塗装ガンであって、水平に延びたガン本体部90Gの後端部から斜め下方にハンドル部90Hが延び、そのハンドル部90Hの前方に引き金90Zを備えたピストル形になっている。ガン本体部90Gの上面の後端寄り位置からは上方にフック90Fが突出している。このフック90Fは、ガン本体部90Gの上面から上方に立ち上がり、前側に湾曲して先端が下方を向いた形状になっている。ハンドル部90Hの下端部には、塗装現場の設備である高圧ガス供給パイプ91を接続するためのエアカプラー90Vが備えられている。また、ハンドル部90Hの下端部からは前方にブラケット90Xが突出しており、そのブラケット90Xにガン本体部90Gの先端部から延びた塗料供給パイプ90Pが保持されている。そして、その塗料供給パイプ90Pの下端部には、塗料供給タンクから延びた塗料供給パイプ92を接続するためのエアカプラー90Wが備えられている。
【0026】
図6に示すように、塗装ガン90の先端面90Tの中央には、ガン本体部90Gの中心軸上に塗料噴出口90Aが備えられている。そして、引き金90Zを引くと、塗料噴出口90Aから高圧ガス(高圧エア)と共に霧状の塗料が噴出する。そして、その塗料噴出口90Aから噴出した塗料の一部が塗装ガン90の先端面90Tに塗料が付着するので、例えば、塗料の色替え時に本実施形態の塗装ガン洗浄装置10を用いて塗装ガン90の先端面を洗浄する。
【0027】
図1に示すように、塗装ガン洗浄装置10は、全体が箱形(直方体状)の洗浄容器15を備えている。その洗浄容器15は、上面が開放した箱形の容器本体11と、その上面開口を開閉するための蓋体14とからなる。また、容器本体11は、上下方向の下端寄り位置で、上部構成ボックス12と下部構成ボックス13とに2分割されている。
【0028】
蓋体14は、全体が板金で構成され、容器本体11の上端部外側に嵌合可能な下面開放扁平の箱形になっている。そして、蓋体14の後側下縁部が、図5に示すようにヒンジ14Hを介して容器本体11の後面壁12Rに回動可能に連結されている。また、蓋体14の上面中央には、線材を門形に屈曲させた持手部14Mが起立している。さらに、蓋体14のうちヒンジ14Hとは反対側の前端面には、左右方向の中央からフック係止突部14Fが突出している。フック係止突部14Fは、線材を略U字状に湾曲させてなり、そのU字の両端部を横並びに配置して蓋体14の前端面から前方に突出させ、かつ、U字の湾曲部分を上方に曲げた構図になっている(図4参照)。
【0029】
下部構成ボックス13は、全体が板金で構成され、図2に示すように、上面開放扁平の箱形になっている。そして、下部構成ボックス13内にシンナー、水等の洗浄液が貯留される。本実施形態では、油性塗料を洗浄するためにシンナー等の油性塗料用の洗浄液が貯留されている。
【0030】
下部構成ボックス13の上面開口の開口縁からは位置決突片13Cが上方に向かって突出している。各位置決突片13Cは、下部構成ボックス13の外側面の上端部に平板を溶接してなり、開口縁の4辺全てに設けられている。
【0031】
図2及び図5に示すように、下部構成ボックス13の前面壁13Fと後面壁13Rには、1対ずつのバックル11R,11Rが備えられている。そして、図4に示すように、上部構成ボックス12の前面壁12Fと後面壁12Rとに備えたフック11Fに各バックル11Rを係合して下部構成ボックス13が上部構成ボックス12に合体した状態に保持されている。なお、本実施形態では、バックル11Rとフック11Fとが本発明に係る「ボックスロック手段」に相当する。
【0032】
下部構成ボックス13の一側面には、1対の覗き窓13A,13Bが設けられている。覗き窓13A,13Bは、下部構成ボックス13の主体部である板金を四角形に打ち抜き、そこに透光部材を嵌め込んでシール処理した構造になっている。
【0033】
上部構成ボックス12は、全体が板金で構成され、図2に示すように、上面開放の箱体における下面四隅に脚体19を備えた構造になっている。図4に示すように、上部構成ボックス12の底壁12Bには、上部構成ボックス12内の洗浄液を下部構成ボックス13に排出するための洗浄液排出口20が備えられ、底壁12Bの下方に、洗浄液排出口20に流れ込んだ洗浄液を濾過するためのフィルタ21が備えられいる。図7に示すように、フィルタ21は、例えば、洗浄液排出口20の開口縁に接続された排出管22の先端にフィルタコア部21Aを備え、そのフィルタコア部21Aの外側にメッシュ構図の外筒部21Bを嵌合して排出管22に結合した構造になっている。そして、必要に応じて外筒部21Bを外してフィルタコア部21Aを交換することができる。
【0034】
図2に示すように、上部構成ボックス12の前面壁12Fには、矩形陥没部30が形成されている。矩形陥没部30は、前面壁12Fのうち左右方向の中央部において、上端部から下端寄り位置に亘る矩形領域を陥没させてなり、矩形陥没部30の奥部にガン挿入口31が貫通形成されている。詳細には、矩形陥没部30は、前端に矩形開口30Kを備え、図4に示すように、矩形開口30Kの奥側に前面壁12F全体と平行な奥部鉛直壁30Xと、奥部鉛直壁30Xの下端部から斜め前側下方に延びた奥部傾斜壁30Yとを備えている。また、矩形開口30Kの開口縁における上辺及び両側辺からは、前面壁12Fから垂直後方に図6に示した上面壁30Aと1対の側壁30S,30Sとが突出して奥部鉛直壁30X及び奥部傾斜壁30Yに接続されている。さらには、図4に示すように、矩形開口30Kの下辺からは、矩形陥没部30の奥部に向かって斜め下方に前部傾斜壁30Bが突出し、その前部傾斜壁30Bが奥部傾斜壁30Yの下縁部に接続されている。
【0035】
図3に示すように、ガン挿入口31は、奥部鉛直壁30Xの左右方向の中央における下端部から上端寄り位置に亘る範囲に貫通形成され、ガン挿入口31の上端部は半円形になっている。そして、図4に示すように、塗装ガン90の先端部をガン挿入口31に挿入し、塗装ガン90のフック90Fを蓋体14のフック係止突部14Fに係止させた状態にして洗浄が行われる。
【0036】
奥部傾斜壁30Yの下縁部には、洗浄液受入孔32が貫通形成され、奥部傾斜壁30Yの上縁部には、ガス抜き孔33が貫通形成されている。また、奥部傾斜壁30Yの内面には、インナーフード40が設けられている。インナーフード40は、奥部傾斜壁30Yと平行で奥部傾斜壁30Yより幅狭の平板の上端部と両側部とを奥部傾斜壁30Y側に折り曲げ、下端面を開放させた箱形構造をなし、洗浄液受入孔32とガス抜き孔33とを内側から覆っている。そして、上部構成ボックス12内の圧力が高くなると、上部構成ボックス12内のガスがインナーフード40と奥部傾斜壁30Yの間を通り、洗浄液受入孔32及びガス抜き孔33から外側に抜ける。このとき、霧状の洗浄液が奥部傾斜壁30Yとインナーフード40とに付着して、上部構成ボックス12内に戻される。また、塗装ガン90に付着した洗浄液が下方に垂れると、それが前部傾斜壁30Bによって洗浄液受入孔32に案内されて上部構成ボックス12内に回収される。
【0037】
なお、矩形陥没部30内のうちガン挿入口31の左右両側には、ガン挿入口31に向かって徐々に互いに接近するように傾斜した図示しない1対のガイド壁が備えられている。また、図3に示すように、矩形開口30Kにおける下辺中央には、前部傾斜壁30Bと前面壁12Fとの接合部分をV字状に凹ませたV形受部34が形成され、ここに、塗装ガン90の塗料供給パイプ90Pが収まって塗装ガン90の左右の動きが規制される。
【0038】
図1に示すように、上部構成ボックス12の前面壁12Fにおける上端部には、ヒンジ16Hを介して開閉板16が取り付けられている。そして、開閉板16をヒンジ16Hから真下に垂らして前面壁12Fの外面に重ねると(図示せず)、その開閉板16によって矩形開口30K全体が覆われる。そして、この状態で蓋体14を閉じると、開閉板16の回動が規制される。また、図4及び図6に示すように、開閉板16をヒンジ16Hから水平方向後側に延ばした状態にすると、その開閉板16が矩形陥没部30の上面壁30Aに上方から重ねられる。そして、この状態で蓋体14を閉じると、開閉板16の回動が規制される。
【0039】
図4に示すように、上部構成ボックス12の後面壁12Rには、小物収容篭70が取り付けられている。図8に示すように、小物収容篭70は、上面が開放した箱形になっていて、後面壁70Rが板状をなし、その後面壁70R以外は檻状になっている。また、後面壁70Rには、丸孔部72Aから上方に溝孔部72Bを延ばした形状の取付孔72が形成されている。そして、取付孔72の溝孔部72Bに取付ボルト71の軸部71Jを挿通して、その軸部71Jの螺子を後面壁12Rの螺子孔73に締め付けて小物収容篭70が上部構成ボックス12に固定されている。この構造により、小物収容篭70を上方にずらすことで、取付ボルト71を緩めずに小物収容篭70を上部構成ボックス12から取り外すことができる。
【0040】
図6に示すように、上部構成ボックス12のうち左右方向で対向した1対の側壁12S,12Sのうち一方の側壁12Sには、霧吹用吐出パイプ50が貫通した状態に固定され、他方の側壁12Sには、乾燥用吐出パイプ53が貫通した状態に固定されている。霧吹用吐出パイプ50及び乾燥用吐出パイプ53は、共に上部構成ボックス12の外側面に沿って後方から前方へと水平に延び、途中で直角に折り曲げられて側壁12S,12Sに備えた貫通孔に挿通されている。また、図9に示すように、霧吹用吐出パイプ50及び乾燥用吐出パイプ53の先端部は、上部構成ボックス12内で互いに同軸上に配置されている。そして、フック係止突部14Fに係止した塗装ガン90の先端面90Tが、霧吹用吐出パイプ50及び乾燥用吐出パイプ53の間でそれらの共通の中心軸(図9のJ1参照)より、若干、上部構成ボックス12の前側に配置されるようになっている。
【0041】
図6に示すように、霧吹用吐出パイプ50の先端近傍の下方には、洗浄液吸引パイプ51が上下方向に延びかつ上部構成ボックス12の底壁12Bを貫通した状態に固定されている。そして、図4に示すように、洗浄液吸引パイプ51の下端部が下部構成ボックス13内の洗浄液に浸され、図6に示すように、洗浄液吸引パイプ51の上端面が霧吹用吐出パイプ50の前方領域に下方から突き合わされている。本実施形態では、これら霧吹用吐出パイプ50と洗浄液吸引パイプ51とが上部構成ボックス12内で霧吹機構52を構成している。
【0042】
上部構成ボックス12の後面壁12Rには、マスターバルブ62(本発明の「切替バルブ」に相当する)が固定されている。マスターバルブ62は、第1と第2の出力ポート62A,62Bと入力ポート62Cとを備えている。そして、霧吹用吐出パイプ50及び乾燥用吐出パイプ53が、上部構成ボックス12の側壁12Sと後面壁12Rとの角部に沿って直角に折り曲げられ、マスターバルブ62の第1と第2の出力ポート62A,62Bに接続されている。また、入力ポート62Cには、塗装現場の設備としての高圧ガス供給パイプ91がエアカプラー63を介して接続されている。そして、後に詳説するように、マスターバルブ62を作動させて、高圧ガス供給パイプ91を霧吹用吐出パイプ50に連通した第1状態と、高圧ガス供給パイプ91を乾燥用吐出パイプ53に連通した第2状態と、高圧ガス供給パイプ91を、霧吹用吐出パイプ50と乾燥用吐出パイプ53の両方から切り離したに第3状態とに切り替えることができる。
【0043】
第1状態になると、霧吹用吐出パイプ50の先端面から高圧ガス(高圧エア)が吐出されて洗浄液吸引パイプ51内が負圧状態になり、これにより下部構成ボックス13から吸い上げられた洗浄液が霧状になって高圧ガスと共に塗装ガン90の先端面90Tに吹き付けられる。一方、第2状態になると、洗浄液を含まない高圧ガスが塗装ガン90の先端面90Tに吹き付けられて洗浄液が吹き飛ばされる。
【0044】
図5に示すように、上部構成ボックス12のうち霧吹用吐出パイプ50が貫通した側壁12Sには、蓋検出バルブ60が取り付けられ、蓋体14が上部構成ボックス12の上面開口を閉塞した閉位置に配置されているか否かを検出している。具体的には、蓋検出バルブ60は、図10に示すように、入力ポート60Aと出力ポート60Bとを備え、通常は入力ポート60Aと出力ポート60Bとの間を遮断し、蓋体14が閉位置に配置されていることを検出したときに入力ポート60Aと出力ポート60Bとの間を開通させる。
【0045】
図1に示すように、上部構成ボックス12のうち乾燥用吐出パイプ53が貫通した側壁12Sには、ガン検出バルブ61が取り付けられ、塗装ガン90がガン挿入口31に挿入されているか否かを検出している。そのために、上部構成ボックス12の前面壁12Fには、検出クランク18が回動可能に取り付けられている。その検出クランク18は、例えば線材をクランク状に折り曲げ、そのクランク構造で段違いになった1対の直線部18A,18Hのうち第1の直線部18Hの先端から直角にレバー18Bを延ばした構造になっている。そして、レバー18Bを側壁12Sに沿わせると共に、第1の直線部18Hを前面壁12Fの沿わせて左右方向に延ばした状態にして前面壁12Fに回動可能に取り付けられている。
【0046】
また、レバー18Bは、側壁12Sから突出したストッパピン18Sとガン検出バルブ61との間に挟まれている。そして、検出クランク18の第2の直線部18Aが、矩形開口30Kより若干下方側に位置し、塗装ガン90をガン挿入口31に挿入すると、塗装ガン90の一部が第2の直線部18Aを押し、レバー18Bがガン検出バルブ61の下辺部を押圧することで、塗装ガン90がガン挿入口31に挿入されたことを検出する。なお、このガン検出バルブ61も、前記蓋検出バルブ60と同様に
図10に示すように、入力ポート61Aと出力ポート61Bとを備え、通常は入力ポート61Aと出力ポート61Bとの間を遮断し、塗装ガン90がガン挿入口31に挿入されたことを検出したときに、入力ポート61Aと出力ポート61Bとの間を開通させる。
【0047】
上記した蓋検出バルブ60、ガン検出バルブ61、マスターバルブ62以外にも、図10に示した手動元栓64、レギュレータ65、パイロットバルブ66及びタイマー付バルブ67が洗浄容器15に取り付けられている。そして、これら蓋検出バルブ60、ガン検出バルブ61等のエア制御機器同士をパイプにて接続してなるバルブ制御回路69が上部構成ボックス12に実装されている。具体的には、手動元栓64及びレギュレータ65は、バルブ制御回路69全体の入力部に配置されている。そして、手動元栓64を操作して、バルブ制御回路69全体を作動可能状態と作動不能状態とに切り替えることができる。また、レギュレータ65は、高圧ガス供給パイプ91の圧力を一定値に安定させるために備えられている。なお、本実施形態では、バルブ制御回路69と検出クランク18とによって本発明に係る「バルブ切替手段」が構成されている。
【0048】
これら手動元栓64及びレギュレータ65を介して設備の高圧ガス供給パイプ91が、蓋検出バルブ60、マスターバルブ62及びタイマー付バルブ67の各入力ポート60A,62C,67Aに並列接続されている。
【0049】
マスターバルブ62は、前記した第1と第2の出力ポート62A,62Bと入力ポート62C以外に、第1と第2の制御ポート62D,62Eを有している。そして、第1制御ポート62Dに高圧ガスを受けると、前記した第1状態になり高圧ガス供給パイプ91と霧吹用吐出パイプ50とを連通し、第2制御ポート62Eに高圧ガスを受けると、第2状態になって高圧ガス供給パイプ91と乾燥用吐出パイプ53とを連通する。また、第1と第2の制御ポート62D,62Eの何れでも高圧ガスを受けていないときには、第3状態になって霧吹用吐出パイプ50と乾燥用吐出パイプ53の両方から切り離す(図10の状態)。
【0050】
蓋検出バルブ60及びガン検出バルブ61は、高圧ガス供給パイプ91に対して直列接続されている。これにより、例えば、蓋体14を閉め、かつ、塗装ガン90をガン挿入口31に挿入したときにのみ、ガン検出バルブ61の下流側に高圧ガスが流れる。また、ガン検出バルブ61は、蓋検出バルブ60より下流側に配置され、そのガン検出バルブ61の出力ポート61Bには、パイロットバルブ66の入力ポート66Aとタイマー付バルブ67の制御ポート67Bとが並列接続されている。そのパイロットバルブ66には、第1と第2の出力ポート66B,66Cが備えられ、その第1出力ポート66Bがマスターバルブ62の第1制御ポート62Dに接続されると共に、第2出力ポート66Cがマスターバルブ62の第2制御ポート62Eに接続されている。そして、パイロットバルブ66は、通常、入力ポート66Aと第1出力ポート66Bとを連通させている。これにより、ガン検出バルブ61の下流側に高圧ガスが流れ初めたときに、マスターバルブ62が第3状態から第1状態に切り替わって、乾燥用吐出パイプ53に高圧ガスが供給される。また、パイロットバルブ66は、制御ポート66Dを備えており、そこに高圧ガスを受けると、パイロットバルブ66の入力ポート66Aが第2出力ポート66Cに連通し、これにより、パイロットバルブ66からマスターバルブ62の第2制御ポート62Eに高圧ガスが付与され、マスターバルブ62が第1状態から第2状態に切り替わる。
【0051】
タイマー付バルブ67には、オリフィス68Bと滞留タンク68Cとを直列してななるタイマー回路が備えられている。また、タイマー付バルブ67の出力ポート67Cは、パイロットバルブ66の制御ポート66Dに接続されている。そして、通常は、タイマー付バルブ67の入力ポート67Aと出力ポート67Cとの間が閉弁されている。このタイマー付バルブ67では、ガン検出バルブ61の下流側に高圧ガスが流れ初めると、その高圧ガスがオリフィス68Bを徐々に通過し、滞留タンク68Cに徐々に高圧ガスが充填され、滞留タンク68C内の圧力が徐々に高くなっていく。そして、所定時間経過後に滞留タンク68C内が一定以上の圧力に到達すると、入力ポート67Aと出力ポート67Cとが連通した状態になる。これによりパイロットバルブ66が作動し、マスターバルブ62が第1状態から第2状態に切り替わる。なお、入力ポート67Aと出力ポート67Cとが連通すると、滞留タンク68C内の高圧ガスが逆止弁68Aを通過して一気に排出される。
【0052】
図11に示すように、上部構成ボックス12の後面壁12Rには、上端寄り位置の左右両端部に取付用ブラケット80,80が固定されている。取付用ブラケット80は、上下方向に延びた帯板状の板金をクランク状に折り曲げてなる。そして、取付用ブラケット80の下端部が上部構成ボックス12の後面壁12Rに溶接され、取付用ブラケット80の上端部が上部構成ボックス12の後面壁12Rから後方に突出している。また、取付用ブラケット80の上端部には、幅広溝部81から上方に幅狭溝部82を延ばした構造の取付孔83が形成されている。また、下部構成ボックス13の後面壁13Rには、下端部の左右両端部に突当ブラケット84,84が固定されている。突当ブラケット84は、帯板状の板金をL字状に折り曲げてなり、その一片が下部構成ボックス13に溶接され、他片が下部構成ボックス13から突出している。
【0053】
塗装現場となる塗装ブース(図示せず)内の垂直壁89(図12参照)には、例えば、3〜5mの間隔を開けた複数位置に1対ずつの取付ボルト85,85をねじ込んである。取付ボルト85は、図11に示すように、雄螺子シャフト85Sの基端部から1対のフランジ85Fを張り出した構造になっている。また、図12に示すように、作業ブース内の垂直壁89のうち取付ボルト85の下方には、突当ブラケット84を係止するための係止溝88が陥没形成されている。そして、図11に示した取付孔83の幅広溝部81に一方のフランジ85Fを挿通させてから塗装ガン洗浄装置10を下げることで、フランジ85F,85Fの間の雄螺子シャフト85Sが取付孔83の幅狭溝部82に収まり、塗装ガン洗浄装置10の突当ブラケット84が係止溝88に係止して、塗装ガン洗浄装置10が垂直壁89に固定されている。そして、塗装ブースに備えた高圧ガス供給パイプ91を塗装ガン洗浄装置10のエアカプラー63に装着して塗装ガン洗浄装置10の設置が完了する。塗装ガン洗浄装置10を移動する場合には、上記と逆の作業を行って塗装ガン洗浄装置10を垂直壁89及び高圧ガス供給パイプ91から取り外せばよい。
【0054】
本実施形態に係る塗装ガン洗浄装置10の構成に関する説明は以上である。次に、この塗装ガン洗浄装置10の作用効果について説明する。塗装ガン洗浄装置10で塗装ガン90の先端面を洗浄するには、図4に示すように、塗装ガン90の先端部を洗浄容器15のガン挿入口31に挿入しかつ塗装ガン90のハンドル部90Hを洗浄容器15外に配置した状態にして、塗装ガン90のフック90Fを蓋体14のフック係止突部14Fに係止する。
【0055】
このとき、蓋体14が開いていると、塗装ガン90のフック90Fをフック係止突部14Fに係止することができないので、蓋体14の閉め忘れが防がれる。また、塗装ガン90と共に、例えば、塗装ガン90の先端に装着するキャップ等を小物洗浄対象物を洗浄する場合には、蓋体14を開いて小物収容篭70(図8参照)に収容しておけばよい。
【0056】
塗装ガン90のフック90Fを蓋体14のフック係止突部14Fに係止して、塗装ガン90の先端部がガン挿入口31に挿入されると、その塗装ガン90の一部が検出クランク18を押圧し、ガン検出バルブ61がオン(開弁)する。これにより、バルブ制御回路69(図10参照)が作動して自動的に高圧ガス供給パイプ91と霧吹用吐出パイプ50とを連通させる。これにより、霧吹用吐出パイプ50から高圧ガスが吐出され、その高圧ガスによって洗浄液吸引パイプ51内が負圧状態になり、これにより洗浄容器15の底部から吸い上げらた洗浄液が霧状になって高圧ガスと共に塗装ガン90の先端面90Tに吹き付けられる。
【0057】
ここで、霧吹用吐出パイプ50は、塗料噴出口90Aの軸方向と交差する方向から塗装ガン90の先端面90Tに向けて高圧ガスを吐出するので、従来のように高圧ガスによって塗装ガン90が洗浄容器15から離間する方向に押されることはないし、塗装ガン90の塗料噴出口90A内の部品を変形させる虞もない。
【0058】
そして、所定時間が経過すると、タイマー付バルブ67及びパイロットバルブ66によってマスターバルブ62が作動して、高圧ガス供給パイプ91を霧吹用吐出パイプ50から切り離し、乾燥用吐出パイプ53に連通させる。これにより、乾燥用吐出パイプ53が、塗料噴出口90Aの軸方向と交差する方向から塗装ガン90の先端面90Tに向けて洗浄液を含まない高圧ガスを吐出し、塗装ガン90の先端面90Tの洗浄液が吹き飛ばされる。以上により、塗装ガン90の先端面90Tの洗浄が完了するので、塗装ガン90を塗装ガン洗浄装置10から抜き取り、蓋体14を開いて小物収容篭70内の洗浄対象物を取り出せばよい。
【0059】
上記したように本実施形態の塗装ガン洗浄装置10によれば、霧吹用吐出パイプ50及び乾燥用吐出パイプ53が、塗料噴出口90Aの軸方向と交差する方向から塗装ガン90の先端面90Tに向けて高圧ガスを吐出するので、従来のように高圧ガスによって塗装ガン90が洗浄容器15から離間する方向に押されることはないし、塗装ガン90の塗料噴出口90A内の部品を変形させる虞もない。これにより、高圧ガスの圧力を高くし、洗浄効果を高めることができる。即ち、本実施形態の塗装ガン洗浄装置10によれば、手作業用の塗装ガン90の内部の部品を変形させずに容易かつ効率的に塗装ガン90の先端面90Tを洗浄することができる。しかも、霧吹用吐出パイプ50と高圧ガス供給パイプ91とを接続するためのマスターバルブ62を含むバルブ制御回路69が洗浄容器15に実装され、その洗浄容器15が、塗装現場の垂直壁89に着脱可能に取り付けられると共に、高圧ガス供給パイプ91がエアカプラー63(図5参照)を介して塗装ガン洗浄装置10に着脱可能に接続されているので、塗装ガン洗浄装置10の設置場所を容易に変更することができ、洗浄作業の作業効率を向上させることができる。
【0060】
また、塗装ガン洗浄装置10では、蓋体14を回動して容器本体11の上面開口を開くことで、容器本体11の内部を容易にメンテナンスすることができると共に、容器本体11内の小物収容篭70に小物洗浄対象物を収容して、塗装ガン90の洗浄と共に洗浄することができる。さらには、容器本体11が上部構成ボックス12と下部構成ボックス13とを2分割され、下部構成ボックス13に洗浄液が貯留されているので、下部構成ボックス13を上部構成ボックス12から分離して洗浄液を容易に交換することができる。
【0061】
また、下部構成ボックス13に備えた覗き窓13A,13Bを通して下部構成ボックス13における洗浄液の量及び汚れを判別することができる。しかも、下部構成ボックス13を外した状態で上部構成ボックス12を床に載置しても、複数の脚体19によって上部構成ボックス12の下面と床との間に空間が形成されるので、その空間内でフィルタ21のメンテナンスを容易に行うことができる。なお、本実施形態の塗装ガン洗浄装置10は、下面が平坦なので、例えば、塗装現場の床面に載置して使用することもできる。
【0062】
[第2実施形態]
本実施形態の塗装ガン洗浄装置10Vは、図13及び図14に示されている。この塗装ガン洗浄装置10Vの容器本体11Vは、上面が開放した箱体の下面四隅に脚体19を備えた構造をなし、その容器本体11Vの底部に洗浄液を貯留するようになっている。また、容器本体11Vの下面には、通常は閉鎖された洗浄液排出孔11Zが備えられ、メンテナンス時に水平レバー11Xを手動操作して洗浄液を洗浄液排出孔11Zから排出することができるようになっている。
【0063】
洗浄液排出孔11Zのうち左右方向で対向した1対の側壁11S,11Sには、第1実施形態の塗装ガン洗浄装置10と同様に霧吹用吐出パイプ50と乾燥用吐出パイプ53とがそれぞれ貫通した状態に固定されている。そして、それら霧吹用吐出パイプ50と乾燥用吐出パイプ53とが、容器本体11Vの一方の側壁11Sに固定されたマスターバルブ62Vに接続されている。そのマスターバルブ62Vには、高圧ガス供給パイプ91がエアカプラー63を介して接続されている。そして、マスターバルブ62Vに備えた操作レバー62T(本発明の「バルブ切替手段」に相当する)を回動操作して、マスターバルブ62Vが高圧ガス供給パイプ91と霧吹用吐出パイプ50とを連通させた第1状態と、高圧ガス供給パイプ91と乾燥用吐出パイプ53とを連通させた第2状態と、高圧ガス供給パイプ91を霧吹用吐出パイプ50と乾燥用吐出パイプ53の両方から切り離した第3状態とに切り替えられる。また、図13に示すように、容器本体11V内には、上下方向に延びた洗浄液吸引パイプ51が備えられ、第1実施形態と同様に、その洗浄液吸引パイプ51と霧吹用吐出パイプ50とによって霧吹機構52が構成されている。
【0064】
蓋体14Vには、塗装ガン90の先端部を挿入することが可能なガン挿入口31Vが上下方向に貫通形成されている。そして、塗装ガン90の先端部をガン挿入口31Vに挿入した状態にすると、第1実施形態の塗装ガン洗浄装置10と同様に、塗装ガン90の先端面90Tが、霧吹用吐出パイプ50及び乾燥用吐出パイプ53の間でそれらの共通の中心軸(図9のJ1参照)より、若干、上方に配置される。その他の構成に関しては、第1実施形態と同様であるので、第1実施形態と同一の構成に関しては、同じ符号を付して重複した説明は省略する。
【0065】
本実施形態の構成によっても、第1実施形態の塗装ガン洗浄装置10と同様に、霧吹用吐出パイプ50及び乾燥用吐出パイプ53が、塗料噴出口90Aの軸方向と交差する方向から塗装ガン90の先端面90Tに向けて高圧ガスを吐出するので、従来のように高圧ガスによって塗装ガン90が洗浄容器15から離間する方向に押されることはないし、塗装ガン90の塗料噴出口90A内の部品を変形させる虞もない。これにより、高圧ガスの圧力を高くし、洗浄効果を高めることができる。本実施形態の塗装ガン洗浄装置10は、塗装現場の床面に載置して使用することが可能なので、設置が容易である。
【0066】
[他の実施形態]
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下に説明するような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0067】
(1)前記第1及び第2の実施形態の塗装ガン洗浄装置10,10Vでは、乾燥用吐出パイプ53を備えていたが、乾燥用吐出パイプ53を備えず、霧吹機構52のみを備えた構造にしてもよい。
【0068】
(2)前記第1及び第2の実施形態の塗装ガン洗浄装置10,10Vでは、霧吹用吐出パイプ50と乾燥用吐出パイプ53とが洗浄容器15の1対の側壁に分けて固定されていたが、霧吹用吐出パイプと乾燥用吐出パイプとを洗浄容器における同一の側壁に固定してもよい。
【0069】
(3)前記第1実施形態では、塗装ガン洗浄装置10から塗装ブースの垂直壁89に向かって取付用ブラケット80及び突当ブラケット84が突出していたが、例えば、塗装ブースの垂直壁にフックを突出形成し、そのフックを塗装ガン洗浄装置に形成した孔に係止してもよいし、上下方向で対向した1対のバネ片を塗装ブースの垂直壁から突出させて、それらの間に塗装ガン洗浄装置を挟持させてもよいし、塗装ブースの垂直壁にマジックテープ(マジックテープは登録商標)や磁石を固定しておき、それらマジックテープ又は磁石にて塗装ガン洗浄装置10を塗装ブースの垂直壁に固定してもよい。
【符号の説明】
【0070】
10,10V 塗装ガン洗浄装置
11,11V 容器本体
11F フック(ボックスロック手段)
11R バックル(ボックスロック手段)
12 上部構成ボックス
12F 前面壁
12R 後面壁
13 下部構成ボックス
13A,13B 覗き窓
14,14V 蓋体
14F フック係止突部
15 洗浄容器
18 検出クランク(バルブ切替手段)
19 脚体
20 洗浄液排出口
21 フィルタ
31,31V ガン挿入口
50 霧吹用吐出パイプ
51 洗浄液吸引パイプ
52 霧吹機構
53 乾燥用吐出パイプ
60 蓋検出バルブ
61 ガン検出バルブ
62,62V マスターバルブ(切替バルブ)
62T 操作レバー(バルブ切替手段)
69 バルブ制御回路(バルブ切替手段)
70 小物収容篭
90 塗装ガン
90A 塗料噴出口
90F フック
90H ハンドル部
90T 先端面
91 高圧ガス供給パイプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
手作業用の塗装ガンの先端部を挿入可能なガン挿入口を有した洗浄容器の底部に洗浄液を貯留し、前記洗浄容器に収容した霧吹機構が外部から高圧ガスを受けて前記底部の洗浄液を吸い上げ、前記高圧ガスと共に霧状の洗浄液を前記塗装ガンにおける塗料噴出口を有した先端面に吹き付けて洗浄する塗装ガン洗浄装置において、
前記塗装ガンの先端部を前記ガン挿入口に挿入しかつ前記塗装ガンのハンドル部を前記洗浄容器外に配置した状態に保持するためのガン保持手段と、
前記洗浄容器の外面に固定された切替バルブと、
前記切替バルブの入力ポートに、前記塗装現場の高圧ガス供給パイプを着脱可能に接続するためのエアカプラーと、
前記切替バルブの出力ポートに接続されると共に、前記洗浄容器を内外に貫通した状態に固定され、前記塗料噴出口の軸方向と交差する方向から前記塗装ガンの先端面に向けて前記高圧ガスを吐出可能な霧吹用吐出パイプと、
前記洗浄容器内に固定されて、下端部が前記洗浄容器の底部の前記洗浄液に浸されると共に、上端部が前記霧吹用吐出パイプの前方領域に下方から突き合わされるか或いは前記霧吹用吐出パイプの中間部に接続されて、前記洗浄容器内で前記霧吹用吐出パイプと共に前記霧吹機構を構成する洗浄液吸引パイプと、
前記切替バルブが、前記霧吹用吐出パイプと前記高圧ガス供給パイプとの間を連通した状態と、断絶した状態とに切り替えるためのバルブ切替手段とを備えてなることを特徴とする塗装ガン洗浄装置。
【請求項2】
前記洗浄容器を内外に貫通した状態に固定され、前記塗料噴出口の軸方向と交差する方向から前記塗装ガンの先端面に向けて乾燥用の前記高圧ガスを吐出可能な乾燥用吐出パイプが備えられ、
前記切替バルブの前記出力ポートには、前記霧吹用吐出パイプが接続された第1出力ポートと、前記乾燥用吐出パイプが接続された第2出力ポートとが択一的に前記入力ポートに連通可能に備えられていることを特徴とする請求項1に記載の塗装ガン洗浄装置。
【請求項3】
前記洗浄容器は、上面が開放した箱形の容器本体と、前記容器本体の後面壁の上端部に回動可能に取り付けられて前記容器本体の上面開口を開閉可能な蓋体とからなり、
前記容器本体の前面壁に前記ガン挿入口が貫通形成され、
前記容器本体のうち左右方向で対向した1対の側壁に分けて前記霧吹用吐出パイプと前記乾燥用吐出パイプとが貫通した状態に固定されていることを特徴とする請求項2に記載の塗装ガン洗浄装置。
【請求項4】
前記塗装ガンには、前後方向の中間部又は後端部から上方に突出したフックが備えられ、前記蓋体のうち回動中心と反対側の端部には、前記フックを係止可能な前記ガン保持手段としてのフック係止突部が備えられたことを特徴とする請求項3に記載の塗装ガン洗浄装置。
【請求項5】
前記容器本体の内面に、前記塗装ガンより小さい洗浄対象物を収容可能な小物収容篭を設けたことを特徴とする請求項3又は4に記載の塗装ガン洗浄装置。
【請求項6】
前記容器本体は、上下方向の中間位置で、共に上面開放の箱形構造をなした上部構成ボックスと下部構成ボックスとに2分割されると共に、それら上部構成ボックスと下部構成ボックスとを合体した状態にロック可能なボックスロック手段を備え、
前記下部構成ボックスに洗浄液が貯留され、
前記洗浄液吸引パイプは、前記上部構成ボックスの底壁を貫通し、
前記上部構成ボックスの底壁には、洗浄液を前記下部構成ボックスに排出するための洗浄液排出口が備えられていることを特徴とする請求項3乃至5の何れか1の請求項に記載の塗装ガン洗浄装置。
【請求項7】
前記上部構成ボックスの下面には、前記下部構成ボックス内に収容可能な複数の脚体と、前記複数の脚体の下端面より上方に配置され、前記洗浄液排出口に流れ込んだ洗浄液を濾過するためのフィルタとが備えられたことを特徴とする請求項6に記載の塗装ガン洗浄装置。
【請求項8】
前記下部構成ボックスには、透光部材で構成された覗き窓が設けられたことを特徴とする請求項6又は7に記載の塗装ガン洗浄装置。
【請求項9】
前記塗装ガンを前記ガン挿入口に挿入したときに開弁し、通常は閉弁している検出バルブと、前記検出バルブが開弁していることを条件にして、前記霧吹用吐出パイプと前記高圧ガス供給パイプとの間の連通を許容するバルブ制御回路を備えたことを特徴とする請求項1乃至8の何れか1の請求項に記載の塗装ガン洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−269202(P2010−269202A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−120520(P2009−120520)
【出願日】平成21年5月19日(2009.5.19)
【出願人】(000110343)トリニティ工業株式会社 (147)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】