説明

塗装ガン

【課題】機能性及び利便性の高い塗装ガンを提供する。
【解決手段】ガン本体1の先端部1aに形成した向きが互いに異なる複数のノズル取付面部4a,4bに、塗料ノズル2を取り付ける複数のノズル固定部5a,5bを設け、各ノズル固定部5a,5bに設けた塗料ノズル2への塗料送出口7のうち塗料送出状態とするものを択一的に切り換える切換手段18を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車ボディなどの塗装に用いる塗装ガンに関し、詳しくは、ガン本体の長手方向における先端部に向き(面姿勢)が互いに異なる複数のノズル取付面部を隣り合わせ状態で形成し、塗料ノズルを各ノズル取付面部に対する立姿勢状態で取り付けるノズル固定部を前記ノズル取付面部の夫々に設け、取り付け状態にある塗料ノズルの塗料流入口に対して連通状態となる塗料送出口を前記ノズル固定部の夫々に設けてある特に高粘度材料用などとして好適な塗装ガンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の塗装ガンとしては図4に示すものが知れられており、この塗装ガンでは 、向きが互いに異なる3つのノズル取付面部4a〜4cを隣り合わせ状態でガン本体1の長手方向における先端部1aに形成し、これら3つのノズル取付面部4a〜4cの夫々に上記の如き塗料送出口7を備える各1ずつのノズル固定部5を設けていた。
【0003】
つまり、この塗装ガンを用いれば、3つのノズル取付面部4a〜4cのうち、いずれのノズル取付面部4a〜4cのノズル固定部5に取り付けた塗料ノズル2を用いて塗装を行うかを選択することにより、塗装ガンを保持する塗装ロボットや作業者に無理な姿勢を強いることなく被塗物の各塗装部位を容易かつ能率良く塗装することが可能になる。
【0004】
あるいはまた、取り付けた3つの塗料ノズル2の中から塗料の噴出パターンなどの面で被塗物の各塗装部位に適した種類の塗料ノズル2を適宜容易に使い分けすることが可能になる。
【0005】
そしてまた、1つの塗料ノズル2を取り付けただけの一般の塗装ガンを塗装部位別に複数装備するのに比べ設備コスト面などでも有利することができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】http://www.sca-schucker.de/en/products/application-components/nozzles.html (2009/11/18)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記した従来の塗装ガンでは、例えば、塗料ノズル2の種類を優先して、3つのノズル取付面部4a〜4cの塗料ノズル2のうち塗装部位に適した種類の塗料ノズル2を選択した場合、その塗装部位によっては塗装ガンを保持する塗装ロボットや作業者に無理な姿勢を強いる状態を招く問題があった。
【0008】
また逆に、塗料ノズル2の向きを優先して、3つのノズル取付面部4a〜4cの塗料ノズル2のうち塗装部位に適した向きのノズル取付面部4a〜4cにおける塗料ノズル2を選択した場合、塗装ロボットや作業者に無理な姿勢を強いることは回避できたとしても、塗装部位に対する塗料ノズル2の種類が不適切となり、却って塗装品質の低下や塗装能率の低下を招くなどの問題があった。
【0009】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、上記の如き問題を効果的に解消できる機能性及び利便性に一層優れた塗装ガンを提供する点にあり、また併せて、複数種の塗料を用いる塗装条件に対しても高い利便性を発揮できるようにする点にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1特徴構成は塗装ガンに係り、その特徴は、
ガン本体の長手方向における先端部に向きが互いに異なる複数のノズル取付面部を隣り合わせ状態で形成し、
塗料ノズルを各ノズル取付面部に対する立姿勢状態で取り付けるノズル固定部を前記ノズル取付面部の夫々に設け、
取り付け状態にある塗料ノズルの塗料流入口に対して連通状態となる塗料送出口を前記ノズル固定部の夫々に設けてある塗装ガンであって、
前記ノズル取付面部のうち少なくとも一つのノズル取付面部に複数の前記ノズル固定部を設け、
前記ノズル取付面部の夫々に設けた前記ノズル固定部夫々の前記塗料送出口のうち塗料送出状態とする塗料送出口を択一的に切り換える切換手段を前記ガン本体に装備してある点にある。
【0011】
つまり、この構成によれば、ノズル固定部夫々の塗料送出口のうち塗料送出状態とする塗料送出口を切換手段により択一的に切り換えることで、いずれのノズル固定部に取り付けた塗料ノズルから塗料噴出させるか(換言すれば、いずれのノズル固定部に取り付けた塗料ノズルを用いて塗装を行うか)を被塗物の塗装部位に応じて切り換えることができる。
【0012】
そしてまた、向きが互いに異なる複数のノズル取付面部のうち少なくとも一つのノズル取付面部(望ましくは、複数のノズル取付面部ないし全てのノズル取付面部)に複数のノズル固定部を設けるから、同一のノズル取付面部における複数のノズル固定部の夫々に取り付ける塗料ノズルどうしを塗料噴出パターンの断面形状や寸法あるいはノズル立姿勢中心軸芯周りでの姿勢などが互いに異なる異種の塗料ノズルにしておけば、塗装部位に対する塗料ノズルの向きの関係などから、そのノズル取付面部に取り付けた塗料ノズルのいずれかを用いて塗装を行うにしても、異種の塗料ノズルの中から塗装部位に適した種類の塗料ノズルを選択して塗装を行うことができる。
【0013】
即ち、このことにより従来の塗装ガンにおける先述の如き問題を効果的に解消することができ、機能性及び利便性の面で一層優れた塗装ガンにすることができる。
【0014】
なお、この構成の実施において、ガン本体の先端部に形成するノズル取付面部の数は2つ以上の複数であれば何部であってもよい。
【0015】
また、各ノズル取付面部の向き(面姿勢)は互いに2次元的にのみ異なるものに限らず、3次元的に異なるものであってもよい。
【0016】
少なくとも1つのノズル取付面部に設ける複数のノズル固定部の数は2つ以上の複数であれば何部であってもよく、また、2つ以上のノズル取付面部に複数のノズル固定部を設ける場合、各ノズル取付面部に設けるノズル固定部の数は同数あるいは異なる数のいずれにしてもよい。
【0017】
本発明の第2特徴構成は、第1特徴構成の実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記切換手段は、塗料送出状態とする塗料送出口を択一的に切り換える送出口切り換え機能とともに、
前記ノズル取付面部の夫々における前記ノズル固定部のうち少なくとも1つのノズル固定部の前記塗料送出口については、各別の塗料供給路を通じて前記ガン本体に供給される複数種の塗料のうち塗料送出状態にある前記塗料送出口に送給する塗料を択一的に切り換える塗料種切り換え機能も合わせて備える構成にしてある点にある。
【0018】
つまり、この構成によれば、ノズル取付面部の夫々におけるノズル固定部のうち少なくとも1つのノズル固定部(望ましくは、複数のノズル固定部ないし全てのノズル固定部)の塗料送出口について、それに送給する塗料を切換手段の上記の如き塗料種切換機能により択一的に切り換えることができるから、塗装部位に対する塗料ノズルの向きの関係や塗料噴出パターンの関係などから、そのノズル固定部に取り付けた塗料ノズルを用いて塗装を行う場合に、塗装部位に応じて塗料種を選択することができ、この点で機能性及び利便性に一層優れた塗装ガンにすることができる。
【0019】
なお、この構成の実施において選択可能な塗料種の数は2種以上の複数種であれば何種にしてもよく、また、塗料種の選択を可能にするノズル固定部の夫々について同じ塗料種群の中からの塗料種選択を可能にするのに限らず、異なる塗料種群の中からの塗料種選択を可能にするようにしてもよい。
【0020】
本発明の第3特徴構成は、第2特徴構成の実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記切換手段の送出口切り換え機能により塗料送出状態とする前記塗料送出口を択一的に切り換えるのに伴い、その送出口切り換えで塗料送出状態となる前記塗料送出口に送給する塗料の塗料種を前記切換手段の塗料種切り換え機能により設定塗料種に自動的に切り換える制御形態で前記切換手段を制御する切換制御手段を設け、
この切換制御手段は、前記塗料送出口のうち前記切換手段による塗料種切り換えが可能な塗料送出口の夫々について設定塗料種の変更を可能にしてある点にある。
【0021】
つまり、この構成によれば、塗料種切り換えが可能な塗料送出口の夫々について、それら塗料送出口から塗料送給する塗料ノズル夫々の種類などに応じた所要の塗料種を設定塗料種として設定しておけば、切換制御手段は切換手段の送出口切り換え機能により塗料送出状態とする塗料送出口を切り換えるとき(換言すれば、使用する塗料ノズルを切り換えるとき)、その切り換えで塗料送出状態となる塗料送出口への送給塗料(即ち、次に使用する塗料ノズルからの噴出塗料)の塗料種を上記の所要塗料種(設定塗料種)に自動的に切り換える。
【0022】
従って、塗料送出状態とする塗料送出口の切り換え、及び、それに伴う塗料種の切り換えを要する塗装作業を円滑かつ能率良く行なうことができ、この点で機能性及び利便性に一層優れた塗装ガンにすることができる。
【0023】
なお、ガン本体に装備の切換手段を制御する上記切換制御手段はガン本体以外の箇所に配備してもよい。
【0024】
本発明の第4特徴構成は、第1〜第3特徴構成のいずれかの実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記ノズル取付面部のうち少なくとも一つのノズル取付面部に複数の前記ノズル固定部を設ける構成として、それら複数のノズル固定部を各ノズル取付面部の面方向のうちで前記ノズル取付面部どうしの並び方向に対して直交又は斜交する方向に列状に並べて配置してある点にある。
【0025】
つまり、この構成によれば、少なくとも1つのノズル取付面部に複数のノズル固定部を設ける構成をとりながらも、複数のノズル取付面部を形成するガン本体の先端部をコンパクト化することができ、狭所において塗装部位を塗装する狭所作業性についても一層優れた塗装ガンにすることができる。
【0026】
即ち、ノズル取付面部に複数のノズル固定部を設けるにあたっては、それら複数のノズル固定部を各ノズル取付面部の面方向のうちでノズル取付面部どうしの並び方向と同じ方向に並べて配置することも考えられるが、この場合、ノズル取付面部の並び方向とノズル取付面部におけるノズル固定部の並設方向とが重複するため、ガン本体の先端部がノズル取付面部の並び方向において一層大型化してしまう。
【0027】
これに対し、上記構成によれば、ノズル取付面部の並びのためにある程度大きな寸法を要するノズル取付面部の並び方向とは直交ないし斜交する方向にノズル固定部を並べて配置するから、ノズル取付面部の並び方向におけるガン本体先端部の寸法がノズル固定部の並設のためにノズル取付面部の並びに要する寸法を超えて大寸法化することを回避することができ、これにより、前述の如く機能性及び利便性を高めながらもガン本体の先端部をコンパクト化することができて、狭所作業性にも優れた塗装ガンにすることができる。
【0028】
本発明の第5特徴構成は、第1〜第4特徴構成のいずれかの実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記ノズル固定部に対する塗料ノズルの取り付けにおいて、同一の前記ノズル取付面部における複数の前記ノズル固定部どうしにわたる塗料ノズルのスライド移動を案内するスライド案内手段を設けてある点にある。
【0029】
つまり、この構成によれば、同一のノズル取付面部における複数のノズル固定部の夫々に塗料ノズルを取り付けるにあたり、塗料ノズルを上記スライド案内手段による案内下で安定的にスライド移動させて取付先であるノズル固定部に位置させ、その状態で塗料ノズルをノズル固定部に取り付け固定することができる。
【0030】
従って、ノズル固定部に対する塗料ノズルの取り付けを容易にすることができ、この点でも利便性に優れた塗装ガンにすることができる。
【0031】
なお、この構成の実施においてスライド案内手段は、案内対象の塗料ノズルがノズル取付面部から脱落するのを防止する脱落防止機能も備える構造にしておくのが望ましい。
【0032】
本発明の第6特徴構成は、第1〜第5特徴構成のいずれかの実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記ノズル取付面部の夫々における前記ノズル固定部のうち少なくとも1つのノズル固定部について、異種の塗料ノズルの選択的な取り付け換えを可能にしてある点にある。
【0033】
つまり、この構成によれば、ノズル取付面部の夫々におけるノズル固定部のうち少なくとも1つのノズル固定部(望ましくは、複数のノズル固定部ないし全てのノズル固定部)について、そのノズル固定部に取り付ける塗料ノズルを被塗物の変更などに応じ被塗物の塗装に適合した種類の塗料ノズルに予め取り付け換えしておくことができ、これにより、塗料送出状態とする塗料送出口(換言すれば、使用する取り付け塗料ノズル)を適宜に切り換える切換手段の送出口切り換え機能とも相俟って、機能性及び利便性に一層優れ汎用性にも一層優れた塗装ガンにすることができる。
【0034】
本発明の第7特徴構成は、第1〜第6特徴構成のいずれかの実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記ノズル取付面部の夫々における前記ノズル固定部のうち少なくとも1つのノズル固定部について、塗料ノズルの立姿勢中心軸芯周りでの取り付け姿勢の変更を可能にしてある点にある。
【0035】
つまり、この構成によれば、塗料噴出パターンの形状がノズル立姿勢中心軸芯周りで非回転対象性である塗料ノズルの場合、その塗料ノズルの立姿勢中心軸芯周りでの取り付け姿勢を上記の如く変更するだけで、噴出塗料が塗装部位上に描く図形パターンを被塗物の変更などに応じて変更することができ、これにより、塗料送出状態とする塗料送出口(換言すれば、使用する取り付け塗料ノズル)を適宜に切り換える切換手段の送出口切り換え機能とも相俟って、機能性及び利便性に一層優れ汎用性にも一層優れた塗装ガンにすることができる。
【0036】
なお、この塗料ノズルの取り付け姿勢の変更については、手作業により取り付け姿勢を変更する操作形態あるいは遠隔操作により取り付け姿勢を変更する操作形態のいずれを採用してもよい。
【0037】
本発明の第8特徴構成は、第1〜第7特徴構成のいずれかの実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
複数の前記ノズル取付面部を備える前記ガン本体の長手方向における先端部を前記ガン本体の長手方向における基端部に対して前記ガン本体の長手方向軸芯周りで回転させて向き変更させる先端向き変更手段を前記ガン本体に装備してある点にある。
【0038】
つまり、この構成によれば、上記の如くガン本体の先端部をガン本体の基端部に対してガン本体の長手方向軸芯周りで回転させて向き変更させることにより、各ノズル取付面部のノズル固定部に取り付けた塗料ノズルの向きを被塗物の変更や塗装部位に応じてガン本体の長手方向軸芯周りでも変更することができ、これにより、塗料送出状態とする塗料送出口(換言すれば、使用する取り付け塗料ノズル)を適宜に切り換える切換手段の送出口切り換え機能とも相俟って、機能性及び利便性に一層優れ汎用性にも一層優れた塗装ガンにすることができる。
【0039】
なお、このガン本体先端部の向き変更については、手作業により向き変更する操作形態あるいは遠隔操作により向き変更する操作形態のいずれを採用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】塗装ガンの側面図
【図2】塗装ガン先端部の斜視図
【図3】別実施形態を示す塗装ガンの側面図
【図4】従来の塗装ガンの斜視図
【発明を実施するための形態】
【0041】
図1は塗装ロボットのアームAの先端に取り付けた塗装ガンGを示し、この塗装ガンGは筒状のガン本体1を備え、ガン本体1の長手方向における先端部1aには塗料ノズル2を取り付け、ガン本体1の長手方向における基端部1bには塗装ロボットのアームAに対する取付フランジ3を設けてある。
【0042】
つまり、この塗装ガンGは、それを取り付けた塗装ロボットのアームAの動作によりガン本体先端部1aの塗料ノズル2を被塗物(例えば自動車ボディ)の各塗装部位に対して所定の塗装向き及び所定の離間距離となる状態にし、その状態で塗料ノズル2からの塗料噴出により各塗装部位(例えば、自動車ボディのアンダーコート部やシーリング部など)を順次に塗装する。
【0043】
図2に示す如く、ガン本体先端部1aには、その先端部1aにおいてガン本体1の長手方向軸芯Xに直交する軸芯Qを想定した場合、その直交軸芯Q周りでの向き(面姿勢)が互いに異なる2つのノズル取付面部4a,4bを直交軸芯Q周りの周方向に並べて隣り合わせ状態に形成にしてある。
【0044】
なお、本例では2つのノズル取付面部4a,4bの一方はガン本体1の長手方向軸芯Xに対して直交する向きにし、他方はガン本体1の長手方向軸芯Xに対して45°の傾斜角を有する向きにしてある。
【0045】
また、これらノズル取付面部4a,4bには夫々、塗料ノズル2を取り付ける各2つのノズル固定部5a,5bを上記直交軸芯Qの方向(換言すれば、各ノズル取付面部4a,4bの面方向のうちでノズル取付面部4a,4bどうしの並び方向に対して直交する方向)に列状に並べて設け、これらノズル固定部5a,5bには、そこに取り付けた塗料ノズル2の塗料流入口6に対して連通状態となる塗料送出口7を個別に設けてある。
【0046】
各ノズル固定部5a,5bに対する塗料ノズル2の取り付けは、先ず、各ノズル取付面部4a,4bの2つのノズル固定部5a,5bにわたらせる状態で各ノズル取付面部4a,4bの全幅にわたらせて各ノズル取付面部4a,4bに形成してある溝部8に各塗料ノズル2の共通ベース部9を嵌め込み、これにより、塗料ノズル2をノズル取付面部4a,4bに対して立姿勢状態(即ち、塗料ノズル2の塗料噴出口10が塗装ガンGの先方を向く状態)で仮配置する。
【0047】
また、この仮配置状態において必要に応じ、塗料ノズル2を溝部8による案内下で溝部8に沿ってスライド移動させることにより、塗料ノズル2の共通ベース部9に形成してある塗料流入口6と溝部8の底面に形成してある各ノズル固定部5a,5bの塗料送出口7とが合致し、かつ、同じく塗料ノズル2の共通ベース部9に形成してある取付孔11と同じく溝部8の底面に形成してある取付ネジ孔12とが合致する状態に立姿勢状態の塗料ノズル2を位置調整する。
【0048】
そして、この状態において塗料ノズル2における共通ベース部9の取付孔11を通じそれに合致する溝部8の取付ネジ孔12に取付ネジ13をネジ込むことで、塗料ノズル2を各ノズル固定部5a,5bに取り付け固定する。
【0049】
つまり、上記溝部8は、ノズル固定部5a,5bに対する塗料ノズル2の取り付けにおいて、同一のノズル取付面部4a,4bにおける複数のノズル固定部5a,5bどうしにわたる塗料ノズル2のスライド移動を案内するスライド案内手段として機能するものである。
【0050】
各ノズル取付面部4a,4bのノズル固定部5a,5bに塗料ノズル2を取り付けるのに基本的に、各塗料ノズル2は2つのノズル取付面部4a,4bのうち担当の塗装部位を塗装するのに向きなどの位置関係が有利となるノズル取付面部4a,4bを選択して取り付け、また、同一のノズル取付面部4a,4bにおける2つのノズル固定部5a,5bには、塗料噴出パターンの断面形状や寸法あるいはノズル立姿勢中心軸芯q周りでの姿勢などが互いに異なる異種の塗料ノズル2で各々の担当塗装部位の塗装に適合した種類の塗料ノズル2を取り付ける。
【0051】
異種の塗料ノズル2としては、図2に示す如く、塗料噴出パターンがノズル立姿勢中心軸芯qと同芯の円錐形状である丸ノズル2a、塗料噴出口10が2つのノズル固定部5a,5bの並び方向を長辺方向とするスリット状である横向き平ノズル2b、塗料噴出口10が2つのノズル固定部5a,5bの並び方向を短辺方向とするスリット状である縦向き平ノズル2c、また、塗料噴出口10の寸法や噴出塗料の拡がり角度が互いに異なるものなど、種々のものがある。
【0052】
これらノズル固定部5a,5bへの取り付けが予定される複数種の塗料ノズル2にはいずれも前記共通ベース部9を設けてあり、各ノズル取付面部4a,4bのいずれのノズル固定部5a,5bに対しても適宜に取り付け換えできるようにしてある。
【0053】
ガン本体1はその基端部1bに設けたスイベルジョイント部14により、先端部1aの側を基端部1bに対してガン本体1の長手方向軸芯X周りで回転動作させ得る構造にしてあり、塗装ロボットのアームAの動作と連係させてガン本体1の先端部1aの側を基端部1bに対し回転動作させることで、各ノズル取付面部4a,4bのノズル固定部5a,5bに取り付けた塗料ノズル2を塗装部位との位置関係に応じてガン本体長手方向軸芯X周りで向き変更させ得るようにしてある。
【0054】
つまり、このスイベルジョイント部14は、複数のノズル取付面部4a,4bを備えるガン本体1の長手方向先端部1aを基端部1bに対してガン本体1の長手方向軸芯X周りで回転させて向き変更させる先端向き変更手段として機能する。
【0055】
スイベルジョイント部14には、ガン本体1に対して2種の塗料Ta,Tbを各別に供給する2本の塗料供給路15a,15b、及び、これら2種の供給塗料Ta,Tbの夫々についてガン本体1で消費されなかった未消費分を返送する塗料返送路16a,16bを接続してあり、また、ガン本体1における先端部1aの側には、4本の内部塗料路17を通じて各塗料供給路15a,15b及び各塗料返送路16a,16bを接続した切換弁装置18を内装してある。
【0056】
また、計4つのノズル固定部5a,5bの塗料送出口7にはガン本体1の内部において切換弁装置18から個別の塗料送給路19を接続してある。
【0057】
切換弁装置18は内部塗料路17を通じ塗料供給路15a,15bから供給される2種の塗料Ta,Tbの夫々について各塗料送出口7に対する塗料送給路19への塗料送給を断続するものであり、この切換弁装置18により、計4つの塗料送出口7のうちいずれの塗料送出口7を塗料送出状態にするか(換言すれば、いずれの塗料ノズル2から塗料噴出させるか)を択一的に切り換える送出口切り換えを行い、また、2種の供給塗料Ta,Tbのうち塗料送出状態にある塗装送出口7に送給する塗料(換言すれば、択一選択した塗料ノズル2から噴出させる塗料)を択一的に切り換える塗料種切り換えを行なう。
【0058】
つまり、この切換弁装置18は上記の送出口切り換え機能を備えるとともに上記の塗料種切り換え機能を合わせ備える切換手段として機能する。
【0059】
図中20は塗装ガン1に対する制御器であり、この制御器20は、切換弁装置18に対する制御動作として、予め設定されたスケジュールに従って、向きの異なる各ノズル取付面部4a,4bの2つのノズル固定部5a,5bに取り付けた計4つの塗料ノズル2のうち順次に変わる各塗装部位の塗装に適した向き及び種類の塗料ノズル2から塗料噴出させるように塗装の進行に伴い塗装ロボットの動作と連係させて切換弁装置18を送出口切り換え動作させる。
【0060】
また、この制御器20は、塗料噴出させる塗料ノズル2の上記の如き切り換えに伴い、切り換え先の塗料ノズル2から前記2種の塗料Ta,Tbのうち設定塗料種のものを噴出させるように切換弁装置18を塗料種切り換え動作させる。
【0061】
即ち、この制御器20は、切換弁装置18の送出口切り換え機能により塗料送出状態とする塗料送出口7を択一的に切り換えるのに伴い、その送出口切り換えで塗料送出状態となる塗料送出口7に送給する塗料の塗料種を切換弁装置18の塗料種切り換え機能により設定塗料種に自動的に切り換える制御形態で切換弁装置18を制御する切換制御手段として機能する。
【0062】
なお、この制御器20では、塗料送出口7のうち切換弁装置18による塗料種切り換えが可能な塗料送出口7の夫々(本例では計4つの塗料送出口7の全て)について設定塗料種の変更を可能にしてある。
【0063】
以上、上記の如く被塗物に対する塗装の進行に伴い、向きの異なる各ノズル取付面部4a,4bの各2つのノズル固定部5a,5bに取り付けた塗料ノズル2のうち各時点の塗装部位の塗装に適した向き及び種類の塗料ノズル2から選択的に塗料噴出させるとともに、各時点の塗装部位に適した塗料種の塗料Ta,Tbを選択的に塗料ノズル2から噴出させることにより、高い塗装能率を得るとともに高い塗装品質を得られるように、また、塗装設備の簡素化及び設備コストの低減も合わせて図るようにしてある。
【0064】
〔別実施形態〕
次に本発明の別実施形態を列記する。
前述の実施形態では、向きの異なる2つのノズル取付面部4a,4bをガン本体1の先端部1aに形成したが、図3に示す如く向きの異なる3つのノズル取付面部4a〜4cをガン本体1の先端部1aに形成するなど、向きの異なる3つ以上のノズル取付面部をガン本体1の先端部1aに形成し、それら3つ以上のノズル取付面部の夫々に複数のノズル固定部5a,5bを装備するようにしてもよい。
【0065】
また、前述の実施形態の如く同一のノズル取付面部4a,4bに2つのノズル固定部5a,5bを設けるのに限らず、同一のノズル取付面部4a,4bに3つ以上のノズル固定部を設けるようにしてもよい。
【0066】
各ノズル取付面部4a,4bに設けるノズル固定部5a,5bの数は必ずしも同数にする必要はなく、ノズル取付面部4a,4bごとにノズル固定部5a,5bの配設数を異ならせてもよい。
【0067】
図3に示す例では、3つのノズル取付面部4a〜4c夫々の向き(面姿勢)を1つの軸芯Q周りでのみ2次元的に異ならせる例を示したが、これに限らず、3つ又はそれ以上のノズル取付面部4a〜4c夫々の向きを3次元的に異ならせるようにしてもよい。
【0068】
また、同図3に示す如く3つ又はそれ以上のノズル取付面部4a〜4cを一列状に並べてガン本体1の先端部1aに形成するのに代え、3つ又はそれ以上のノズル取付面部4a〜4cを非列状の集合状態に配置してガン本体1の先端部1aに形成するようにしてもよい。
【0069】
ガン本体1の具体的な形状及び構造は前述の実施形態で示した形状及び構造に限らず種々の変更が可能であり、また、ノズル固定部5a,5bの具体的なノズル取付構造も前述の実施形態で示した構造に限らず種々の変更が可能であり、例えば、ノズル固定部5a,5bにおいて塗料ノズル2の立姿勢中心軸芯q周りでの取り付け姿勢の変更を可能にしてもよい。
【0070】
前述の実施形態で示した各ノズル取付面部4a,4bの溝部8を蟻溝構造にするなどして、塗料ノズル2のスライド移動を案内する案内手段としての機能とともに、未だ未固定状態にある塗料ノズル2のノズル取付面部4a,4bから脱落を防止する機能も備えさせるようにしてもよい。
【0071】
複数のノズル固定部5a,5bの塗料送出口7のうちいずれのものを塗料送出状態にするかを択一的に切り換える切換手段18の具体的な切り換え方式や切り換え構造には種々の方式及び構造を採用することができる。
【0072】
本発明は塗装ロボットのアームや自動塗装装置のアームなどに取り付けて用いる塗装ガンに限らず、作業者が保持して塗装を行う塗装ガンにも適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明による塗装ガンは自動車のボディや部品あるいは電気器具のケーシングなどを初め種々の被塗物の塗装に用いることができる。
【符号の説明】
【0074】
1 ガン本体
1a 先端部
4a,4b ノズル取付面部
2 塗料ノズル
5a,5b ノズル固定部
6 塗料流入口
7 塗料送出口
18 切換手段
15a,15b 塗料供給路
Ta,Tb 塗料
20 切換制御手段
8 スライド案内手段
q 立姿勢中心軸芯
1b 基端部
X 長手方向軸芯
14 先端向き変更手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガン本体の長手方向における先端部に向きが互いに異なる複数のノズル取付面部を隣り合わせ状態で形成し、
塗料ノズルを各ノズル取付面部に対する立姿勢状態で取り付けるノズル固定部を前記ノズル取付面部の夫々に設け、
取り付け状態にある塗料ノズルの塗料流入口に対して連通状態となる塗料送出口を前記ノズル固定部の夫々に設けてある塗装ガンであって、
前記ノズル取付面部のうち少なくとも一つのノズル取付面部に複数の前記ノズル固定部を設け、
前記ノズル取付面部の夫々に設けた前記ノズル固定部夫々の前記塗料送出口のうち塗料送出状態とする塗料送出口を択一的に切り換える切換手段を前記ガン本体に装備してある塗装ガン。
【請求項2】
前記切換手段は、塗料送出状態とする塗料送出口を択一的に切り換える送出口切り換え機能とともに、
前記ノズル取付面部の夫々における前記ノズル固定部のうち少なくとも1つのノズル固定部の前記塗料送出口については、各別の塗料供給路を通じて前記ガン本体に供給される複数種の塗料のうち塗料送出状態にある前記塗料送出口に送給する塗料を択一的に切り換える塗料種切り換え機能も合わせて備える構成にしてある請求項1記載の塗装ガン。
【請求項3】
前記切換手段の送出口切り換え機能により塗料送出状態とする前記塗料送出口を択一的に切り換えるのに伴い、その送出口切り換えで塗料送出状態となる前記塗料送出口に送給する塗料の塗料種を前記切換手段の塗料種切り換え機能により設定塗料種に自動的に切り換える制御形態で前記切換手段を制御する切換制御手段を設け、
この切換制御手段は、前記塗料送出口のうち前記切換手段による塗料種切り換えが可能な塗料送出口の夫々について設定塗料種の変更を可能にしてある請求項2記載の塗装ガン。
【請求項4】
前記ノズル取付面部のうち少なくとも一つのノズル取付面部に複数の前記ノズル固定部を設ける構成として、それら複数のノズル固定部を各ノズル取付面部の面方向のうちで前記ノズル取付面部どうしの並び方向に対して直交又は斜交する方向に列状に並べて配置してある請求項1〜3のいずれか1項に記載の塗装ガン。
【請求項5】
前記ノズル固定部に対する塗料ノズルの取り付けにおいて、同一の前記ノズル取付面部における複数の前記ノズル固定部どうしにわたる塗料ノズルのスライド移動を案内するスライド案内手段を設けてある請求項1〜4のいずれか1項に記載の塗装ガン。
【請求項6】
前記ノズル取付面部の夫々における前記ノズル固定部のうち少なくとも1つのノズル固定部について、異種の塗料ノズルの選択的な取り付け換えを可能にしてある請求項1〜5のいずれか1項に記載の塗装ガン。
【請求項7】
前記ノズル取付面部の夫々における前記ノズル固定部のうち少なくとも1つのノズル固定部について、塗料ノズルの立姿勢中心軸芯周りでの取り付け姿勢の変更を可能にしてある請求項1〜6のいずれか1項に記載の塗装ガン。
【請求項8】
複数の前記ノズル取付面部を備える前記ガン本体の長手方向における先端部を前記ガン本体の長手方向における基端部に対して前記ガン本体の長手方向軸芯周りで回転させて向き変更させる先端向き変更手段を前記ガン本体に装備してある請求項1〜7のいずれか1項に記載の塗装ガン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−194303(P2011−194303A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−62528(P2010−62528)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(000149790)株式会社大気社 (136)
【Fターム(参考)】