説明

塗装ブースの未塗着塗料分離装置

【課題】 確実に未塗着塗料を捕集することができる塗装ブースの未塗着塗料分離装置を提供する。
【解決手段】 塗装ブース4の未塗着塗料分離装置において、捕集室11に配設されたオーバフロー槽19,20と、オーバフロー槽19,20からオーバフローした捕集水を案内する2つの第1フロープレート21,22と、前傾角を第1フロープレート21,22の前傾角よりも大きくした2つの第2フロープレート25,26と、2つの第1フロープレー21,22トの間に形成された第1ベンチュリー27と、2つの第2フロープレート25,26の間に形成された第2ベンチュリー28と、一方の第2フロープレート25の先端に連設された微粒化室36と、他方の第2フロープレート26の先端から延出された傾斜板31と、捕集室11の底部に溜まった捕集水50をオーバフロー槽19,20に還流させる給水ポンプ42を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗装室の内部を流下する気流を捕集室で捕集水に接触させることにより、その気流に含まれる未塗着塗料を捕集する塗装ブースの未塗着塗料分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の未塗着塗料分離装置としては、ベンチュリー部の内部に、更にプレベンチュリー部を設け、塗装室の未塗着塗料を捕集する捕集水を2回に分けて微粒化し、捕集効率を高める技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平4−106668号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の技術においては、ベンチュリー部の内部にプレベンチュリー部を配設する構成としているため、プレベンチュリー部の容積が小さくなり、給水桶から捕集水を導くフロープレートに沿ってプレベンチュリー部内に流下する水量が多過ぎると、微粒化が困難になって捕集効率が低下する。これを解消するには、塗装室の下方に連通する排気ファンの吸引力を高める必要がありコスト高になってしまう。また、水量が少な過ぎると、フロープレートの全面及びプレベンチュリー部の周壁に捕集水膜を形成することが困難になり、未塗着塗料の捕集効率を低下させる不具合が発生する。
【0005】
本発明は、従来の技術が有するこのような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、未塗着塗料の捕集効率を低下させることなく、確実に未塗着塗料を捕集することができる塗装ブースの未塗着塗料分離装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決すべく請求項1に係る発明は、塗装室の内部を流下する気流を、塗装室の下方に設けた捕集室で捕集水に接触させることにより、その気流中に含まれる未塗着塗料を捕集する塗装ブースの未塗着塗料分離装置において、捕集室の両側に配設されたオーバフロー槽と、このオーバフロー槽に基端部が接続されオーバフロー槽からオーバフローした捕集水を案内する前下がりに配設された2つの第1フロープレートと、この第1フロープレートに基端部が接続され前傾角を第1フロープレートの前傾角よりも大きくして配設された2つの第2フロープレートと、前記2つの第1フロープレートの間に形成された第1ベンチュリーと、前記2つの第2フロープレートの間に形成された第2ベンチュリーと、一方の第2フロープレートの先端に連設された微粒化室と、この微粒化室に臨む他方の第2フロープレートの先端から延出された傾斜板と、捕集室の底部に溜まった捕集水を前記オーバフロー槽に還流させる給水ポンプを備え、前記微粒化室は、一方の第2フロープレートの先端と前記傾斜板とで形成される導入孔と、前記傾斜板の下方に形成される排出孔を有するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、第1フロープレート、第2フロープレート、第1ベンチュリー、第2ベンチュリー、微粒化室、傾斜板などを備えたことにより、捕集水に乱流が発生し、捕集水の微粒化が促進され、流下する気流中に含まれる未塗着塗料を確実に捕集して、未塗着塗料の捕集効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明に係る塗装ブースの未塗着塗料分離装置の横断面図
【図2】図1の要部拡大図
【図3】本発明に係る塗装ブースの未塗着塗料分離装置の作用説明図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。本発明に係る塗装ブースの未塗着塗料分離装置は、図1及び図2に示すように、上壁1、下壁2及び左右の側壁3によりトンネル形状に形成された塗装ブース4に設置されている。塗装ブース4の内部は、パンチングメタル5、フィルタ6及びスノコ7により上下4室に仕切られ、上壁1とパンチングメタル5と左右の側壁3で動圧室8を、パンチングメタル5とフィルタ6と左右の側壁3で静圧室9を、フィルタ6とスノコ7と左右の側壁3で塗装室10を、スノコ7と下壁2と左右の側壁3で捕集室11を、夫々形成している。下壁2の中央部には、凹形状の貯水槽12が設けられている。
【0010】
塗装室10の左右の側壁3で挟まれるスノコ7の中央部には、搬送コンベア13が敷設され、この搬送コンベア13に被塗装物Wを載置して図1の紙面垂直方向に搬送する搬送台車14が係合している。搬送コンベア13を挟んで左右両側には、搬送台車14により搬送されてくる被塗装物Wをスプレーガン15で塗装を施す複数の塗装ロボット16が設置されている。
【0011】
塗装ブース4の上壁1には、ブロア17に接続された供給ダクト18が開口し、この供給ダクト18から動圧室8に供給された空気は、パンチングメタル5を通過することで下向きの滑らかな気流に整流されて静圧室9に供給され、更にフィルタ6を通過することで塵芥が除去された清浄な気流となって塗装室10に供給される。
【0012】
また、捕集室11の左側壁3側には、第1オーバフロー槽19が設けられ、右側壁3側には、第2オーバフロー槽20が設けられている。2つのオーバフロー槽19,20の下端部からは、捕集室11の中央に向けて前下がりで比較的緩やかに傾斜した第1フロープレート21,22が延設している。更に、一方の第1フロープレート21の下面から下方垂直方向に延設して貯水槽12の側壁に接続する第1支持プレート23と、他方の第1フロープレート22の下面から下方垂直方向に延設して貯水槽12の側壁に接続する第2支持プレート24が配設されている。
【0013】
2つの第1フロープレート21,22の先端部から、夫々捕集室11の中央に向けて前下がりで第1フロープレート21,22に比してより急傾斜した第2フロープレート25,26が延設されている。そして、2つの第1フロープレート21,22により一段目の第1ベンチュリー部27が形成され、また2つの第2フロープレート25,26により二段目の第2ベンチュリー部28が形成される。
【0014】
一方の第2フロープレート25の先端部から、垂直プレート29が延設され、この垂直プレート29の先端と第1支持プレート23の間に水平プレート30が配設されている。また、水平プレート30の下面端部には、捕集室11の中央に向けて若干前下がりの傾斜板31が設けられている。他方の第2フロープレート26の先端部には、捕集室11の中央から離れる方向に前下がりに傾斜したガイドプレート32が設けられている。ガイドプレート32と第2支持プレート24の間に上壁プレート33が配設されている。
【0015】
第2支持プレート24の上壁プレート33より下方には、捕集室11の中央に向かう下壁プレート34が設けられ、下壁プレート34の先端部と傾斜板31の下面との間に側壁プレート35が配設されている。そして、上壁プレート33、第2支持プレート24、下壁プレート34、側壁プレート35により、微粒化室36が形成される。傾斜板31の先端は、少なくとも微粒化室36の内部に位置するように構成されている。
【0016】
微粒化室36は、上壁プレート33と傾斜板31の間に形成された導入孔37と、側壁プレート35に形成された排出孔38を有する。また、微粒化室36には、下壁プレート34などによる第3オーバフロー槽39が形成されている。微粒化室36の中から排出孔38を通り抜けると、前方に水平プレート30と第1支持プレート23によって隅角部40が形成されている。
【0017】
捕集水が溜まる貯水槽12の底部と2つのオーバフロー槽19,20は、給水管41を介して給水ポンプ42とフィルタ43に接続され、貯水槽12に溜まった捕集水は給水ポンプ42により2つのオーバフロー槽19,20に還流する。右側壁3には、第2支持プレート24に開口された排気孔44により捕集室11と連通する分離室45が設けられ、この分離室45は排気ファン46を途中に備える排気ダクト47により大気と連通するように形成されている。また、分離室45には、第2支持プレート24から右側壁3に向けて上方に傾斜する複数のエリミネータ48が配設されている。
【0018】
以上のように構成された本発明に係る塗装ブースの未塗着塗料分離装置の作用について説明する。搬送台車14に載置され搬送されてくる被塗装物Wは、塗装室10において複数の塗装ロボット16に装着されたスプレーガン15により塗装が施される。この時、供給ダクト18から供給され、動圧室8及び静圧室9を通過した空気は、清浄且つ滑らかな下向きの気流に整流されて塗装室10に供給される。そして、塗装室10に供給された空気は、塗装室10に漂う未塗着塗料と共に、スノコ7の隙間を通過して捕集室11に流入する。
【0019】
捕集室11では、図3に示すように、給水ポンプ41により貯水槽12から2つのオーバフロー槽19,20に供給された捕集水50がオーバフローして第1フロープレート21,22の表面を流れ、捕集水50に未塗着塗料が接触することによって未塗着塗料の一部が捕集される。また、2つの第1フロープレート21,22により形成された一段目の第1ベンチュリー部27により、塗装室10から流下する下向きの気流51の流速が加速され、これに伴って2つの第1フロープレート21,22の表面を流下する捕集水50に前記気流51が斜め下方に向けて衝突する。その結果、捕集水50に乱流が発生し、捕集水50の微粒化が促進され、流下する気流51中に含まれる未塗着塗料が更に捕集される。
【0020】
次いで、2つの第2フロープレート25,26により形成された二段目の第2ベンチュリー部28により、一段目の第1ベンチュリー部27を通過した気流51の流速が加速され、これに伴って2つの第2フロープレート25,26の表面を流下する捕集水50が二段目の第2ベンチュリー部28の軸線方向下方へ吸引誘導される。すると、2つの第2フロープレート25,26の表面を流下する捕集水50が互いに衝突して微粒化が促進され、流下する気流51中に含まれる未塗着塗料が更に捕集される。
【0021】
次いで、微粒化が促進された捕集水50は、導入孔37から微粒化室36に導かれ、微粒化室36を形成する第2支持プレート24に衝突して更に微粒化され、流下する気流51中に含まれる未塗着塗料が更に捕集される。そして、霧化された捕集水50は、排出孔38より噴霧流として吐出され、流下する気流51中に含まれる未塗着塗料が更に捕集される。
【0022】
そして、前記噴霧流は前方の隅角部40を形成する水平プレート30と第1支持プレート23に衝突して、一部は捕集水50の水膜となって第1支持プレート23を流下し、貯水槽12に貯留される。この流下する捕集水50に噴霧流中に浮遊する未塗着塗料が更に捕集される。また、一部は噴霧流となって捕集室11の下方部分に拡散し、気流51中に未だ浮遊する未塗着塗料を捕集する。
【0023】
また、微粒化室36内に存在する一部の微粒化された捕集水50は、水膜となって第2支持プレート24を流下して、微粒化室36の第3オーバフロー槽39に貯留される。この流下の過程で気流51中に含まれる未塗着塗料が更に捕集される。そして、第3オーバフロー槽39からオーバフローした捕集水50は、排出孔38から水膜となって貯水槽12に落下する。この水膜により噴霧流中に浮遊する未塗着塗料が更に捕集される。
【0024】
このようにして、未塗着塗料を捕集した微粒化捕集水を含む気流51は、第2支持プレート24に開口された排気孔44を通って分離室45に移動し、分離室45に配設された複数のエリミネータ48により微粒化捕集水と空気に分離され、分離された捕集水50は、貯水槽12に貯留される。一方、分離された空気は、分離室45から排気ファン46を途中に備える排気ダクト47により大気に放出される。この時、前記空気中には未塗着塗料粒子が含まれず、清浄な空気となって放出される。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明によれば、塗装ブースにおける塗装により発生する気流中に含まれる未塗着塗料を確実に捕集することができる塗装ブースの未塗着塗料分離装置を提供する。
【符号の説明】
【0026】
1…上壁、2…下壁、3…左右の側壁、4…塗装ブース、5…パンチングメタル、6…フィルタ、7…スノコ、8…動圧室、9…静圧室、10…塗装室、11…捕集室、12…貯水槽、19…第1オーバフロー槽、20…第2オーバフロー槽、21,22…第1フロープレート、23…第1支持プレート、24…第2支持プレート、25,26…第2フロープレート、27…第1ベンチュリー部、28…第2ベンチュリー部、31…傾斜板、36…微粒化室、37…導入孔、38…排出孔、42…給水ポンプ、50…捕集水、51…気流、W…被塗装物。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗装室の内部を流下する気流を、塗装室の下方に設けた捕集室で捕集水に接触させることにより、その気流中に含まれる未塗着塗料を捕集する塗装ブースの未塗着塗料分離装置において、捕集室の両側に配設されたオーバフロー槽と、このオーバフロー槽に基端部が接続されオーバフロー槽からオーバフローした捕集水を案内する前下がりに配設された2つの第1フロープレートと、この第1フロープレートに基端部が接続され前傾角を第1フロープレートの前傾角よりも大きくして配設された2つの第2フロープレートと、前記2つの第1フロープレートの間に形成された第1ベンチュリーと、前記2つの第2フロープレートの間に形成された第2ベンチュリーと、一方の第2フロープレートの先端に連設された微粒化室と、この微粒化室に臨む他方の第2フロープレートの先端から延出された傾斜板と、捕集室の底部に溜まった捕集水を前記オーバフロー槽に還流させる給水ポンプを備え、前記微粒化室は、一方の第2フロープレートの先端と前記傾斜板とで形成される導入孔と、前記傾斜板の下方に形成される排出孔を有することを特徴とする塗装ブースの未塗着塗料分離装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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