塗装ブース
【課題】塗料を被塗装物に噴射して塗装する際に発生する未塗着塗料の捕集を、簡易な装置で効率的に行うことができる塗装ブースを提供する。
【解決手段】被塗装物に対して噴射ノズルから塗料を噴射して被塗装物の塗装を行う塗装ブースであって、塗装ブース内のエアを吸引して塗装ブース内に気流を発生させる吸引ブロワを備え、塗料は気流の流れに沿って被塗装物に向けて噴射されるとともに、被塗装物の背面側には複数の開口部を有する支持部が備えられ、支持部には、通気性シートがロール状に巻きつけられた通気性シートロールから引き出された通気性シートが吸着固定されることを特徴とする。
【解決手段】被塗装物に対して噴射ノズルから塗料を噴射して被塗装物の塗装を行う塗装ブースであって、塗装ブース内のエアを吸引して塗装ブース内に気流を発生させる吸引ブロワを備え、塗料は気流の流れに沿って被塗装物に向けて噴射されるとともに、被塗装物の背面側には複数の開口部を有する支持部が備えられ、支持部には、通気性シートがロール状に巻きつけられた通気性シートロールから引き出された通気性シートが吸着固定されることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部で被塗装物に対して塗装を行う塗装ブースに関する。特に、発生した未塗着塗料の捕集を効率的に行うことのできる塗装ブースに関する。
【背景技術】
【0002】
従来からオーバーヘッドコンベア等の搬送手段を用いて被塗装物を連続的に塗装ブース内に搬送するとともに、搬送されてきた被塗装物に対して塗料噴射装置等を用いて塗装を行う塗装装置が広く利用されている。かかる塗装装置においては、塗装ブース内でワークに塗着せず、塗装ブース内を浮遊する霧状(ミスト)の未塗着塗料が発生し、塗装ブース外に漏れたり被塗装物に再付着したりすることを防止するため、確実に捕集することが要望されている。
【0003】
未塗着塗料を捕集する手段として、水洗やエアフィルタによる方法が知られている。
例えば、水性塗料を用いる塗装で生じたオーバースプレー塗料の効率的な処理方法およびそのための装置を提供することを目的としたオーバースプレー塗料の処理方法および処理装置が提案されている。より具体的には、図8に示すように、水性塗料を塗装ブース301でスプレー塗装302すること、被塗物303に塗着しなかったオーバースプレー塗料を水性媒体304で捕捉し、ブース水305として回収すること、該ブース水305を限外濾過器316を用いて回分式で濾過することによって、オーバースプレー塗料に含まれる固形分が濃縮された濃縮物を得ること、および該濃縮物を処分のために回収することを含んで成るオーバースプレー塗料の処理方法であって、該濃縮物の固形分含量が45重量%〜53重量%であることを特徴とするオーバースプレー塗料の処理方法および処理装置301、312が開示されている(特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2005−125273号公報 (全文 図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記特許文献1に記載のオーバースプレー塗料の処理方法および処理装置においては、被塗装物に塗着しなかった未塗着塗料を捕捉するためにウォーターカーテンやウォーターシャワー等の水性媒体を使用している。したがって、水性媒体が未塗着塗料を捕捉することによって生じるブース水を回収するためには、ブース水を貯留するためのタンク等を設置しなければならない。また、ブース水に含まれる未塗着塗料の固形分を処理するためには、別途濾過等を行う必要がある。このように、水性媒体によって未塗着塗料を捕捉する方法では、ブース水の回収等により広い設置面積が必要になるため、設備やメンテナンスにかなりのコストがかかってしまう。さらに、水性媒体に捕捉された未塗着塗料を回収・処分するにあたって、濾過等の各手順をふむ必要があり、手間がかかり作業性が低下するというおそれがあった。
【0006】
そこで、本発明の発明者は鋭意努力し、噴射ノズルから噴射される塗料によって被塗装物の塗装を行う塗装ブースにおいて、塗装ブース内に所定方向の気流を発生させ、被塗装物の背面側に未塗着塗料を捕捉するための通気性シートを配置することにより、このような問題を解決できることを見出し、本発明を完成させたものである。
すなわち、本発明は、塗料を被塗装物に噴射して塗装する際に発生する未塗着塗料の捕集を、簡易な装置で効率的に行うことができる塗装ブースを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、被塗装物に対して噴射ノズルから塗料を噴射して被塗装物の塗装を行う塗装ブースにおいて、塗装ブース内のエアを吸引して塗装ブース内に気流を発生させる吸引ブロワを備え、塗料は被塗装物に向けて噴射されるとともに、被塗装物の背面側には複数の開口部を有する支持部が備えられ、支持部には通気性シートが吸着固定されることを特徴とする塗装ブースが提供され、上述した問題を解決することができる。
【0008】
また、本発明の塗装ブースを構成するにあたり、通気性シートが複数枚重ねられて支持部に吸着固定されることが好ましい。
【0009】
また、本発明の塗装ブースを構成するにあたり、通気性シート及び支持部を複数備え、互いに間隔をおいて複数の通気性シートが吸着固定されることが好ましい。
【0010】
また、本発明の塗装ブースを構成するにあたり、支持部の被塗装物側の面が上方を向くように支持部を傾斜させることが好ましい。
【0011】
また、本発明の塗装ブースを構成するにあたり、少なくとも被塗装物と支持部との間の領域の床面側にも複数の開口部を有する床面側支持部を備え、被塗装物の背面側の通気性シートは、ガイドロール又はガイドバーによって配設方向が変えられ、床面側支持部にも吸着固定されることが好ましい。
【0012】
また、本発明の塗装ブースを構成するにあたり、通気性シートが通気性シートロールから引き出されていることが好ましい。
【0013】
また、本発明の塗装ブースを構成するにあたり、塗装ブース内にエアを給気する開口部を備え、開口部が通気性シートで覆われることが好ましい。
【0014】
また、本発明の塗装ブースを構成するにあたり、通気性シートロールから引き出された通気性シートは、開口部を覆う位置から被塗装物の背面側の位置まで配設され、開口部を覆う位置において塗装ブースの内部に面する通気性シートの面が、被塗装物の背面側の位置において被塗装物側に面することが好ましい。
【0015】
また、本発明の塗装ブースを構成するにあたり、支持部と吸引ブロワとの間に気流が通過する通路が形成され、通路にエアフィルタが配置されることが好ましい。
【0016】
また、本発明の塗装ブースを構成するにあたり、支持部と吸引ブロワとの間に防爆用貯水部を備えることが好ましい。
【0017】
また、本発明の塗装ブースを構成するにあたり、塗装ブースは、被塗装物が搬入される搬入口と、被塗装物が搬出される搬出口と、搬入口及び搬出口をそれぞれ開閉する開閉手段と、を備え、塗装ブース内に搬送される被塗装物を塗装可能であることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の塗装ブースによれば、塗装ブース内に所定方向の気流を発生させ、通気性シートを用いて未塗着塗料を捕捉することにより、未塗着塗料を捕捉するための大量の捕捉媒体を要することがないために、塗装ブース全体をコンパクトで簡易な構造とすることができる。したがって、設備やメンテナンスにかかるコストを低減することができる。さらに、捕捉された未塗着塗料は通気性シートとともに処分できるため、手間がかからず効率良く処分することができる。
【0019】
また、本発明の塗装ブースにおいて、通気性シートを複数枚重ねて支持部に吸着固定させることにより、通気性シートの目の粗さが見かけ上細かくされ、未塗着塗料の捕集効率を向上させることができる。
【0020】
また、本発明の塗装ブースにおいて、複数枚の通気性シートを間隔をおいて配置することにより、通気性を著しく阻害することなく上流側の通気性シートで捕捉されなかった未塗着塗料を確実に捕捉させることができる。
【0021】
また、本発明の塗装ブースにおいて、支持部の被塗装物側の面が上方を向くように支持部を傾斜させて配置することにより、塗装ブース内の床面側に落下する未塗着塗料を捕集することができ、塗装ブースの床面への未塗着塗料の付着を防止することができる。
【0022】
また、本発明の塗装ブースにおいて、ガイドロール又はガイドバーによって配設方向を変えて、所定領域の床面側の支持部にも通気性シートを吸着固定させることにより、塗装ブース内の床面側に落下する未塗着塗料を捕集することができ、塗装ブースの床面への未塗着塗料の付着を防止することができる。
【0023】
また、本発明の塗装ブースにおいて、通気性シートが巻き付けられた通気性シートロールから通気性シートを引き出すように構成することにより、未塗着塗料で汚れた通気性シートを新しい通気性シートに更新する際には、新たに通気性シートを引き出すだけで更新作業を行うことができるため、通気性シートの更新作業を容易に行うことができる。
【0024】
また、本発明の塗装ブースにおいて、塗装ブース内にエアが給気される開口部を通気性シートで覆うことにより、塗装ブース内に給気されるエア中の塵埃を取り除くことができ、被塗装物に塵埃が付着することを防止することができる。
【0025】
また、本発明の塗装ブースにおいて、通気性シートロールから引き出された通気性シートが、開口部を覆う位置から被塗装物の背面側の位置まで配設されるとともに、開口部を覆う位置において塗装ブースの内部側に面する通気性シートの面が、被塗装物の背面側の位置において被塗装物側に面するように配設することにより、共通の通気性シートを利用して、塗装ブース内への塵埃の侵入及び未塗着塗料の捕集を行うことができる。しかも、それぞれの位置において面の向きが規定されているため、塵埃を被塗装物に付着させることなく、通気性シートの両面を無駄なく利用することができる。
【0026】
また、本発明の塗装ブースにおいて、通気性シートよりも下流側にエアフィルタを配置することにより、仮に通気性シートで捕捉することができなかった未塗着塗料が存在する場合においても、塗装ブース外に未塗着塗料が漏出することを確実に防止することができる。
【0027】
また、本発明の塗装ブースにおいて、支持部と吸引ブロアとの間に防爆用貯水部を備えることにより、万が一、塗装ブース内で塗料に引火して通気性シートが燃え出した場合であっても、火炎の広がりを抑えられ、排気部から外部への火炎の噴出を防止することができる。
【0028】
また、本発明の塗装ブースにおいて、搬送される被塗装物を塗装可能に構成することにより、オートメーション化された搬送ラインの一部において使用可能な塗装ブースとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、適宜図面を参照して、本発明の塗料ブースにかかる実施の形態について具体的に説明する。ただし、かかる実施の形態は、本発明の一態様を示すものであり、この発明を限定するものではなく、本発明の範囲内で任意に変更することが可能である。
なお、それぞれの図中、同じ符号を付してあるものについては同一の部材を示しており、適宜説明が省略されている。
【0030】
[第1の実施の形態]
図1〜図3は、本発明の第1の実施の形態にかかる塗装ブース10を示している。図1は、塗装ブース10の内部の構成を表す側方断面図であり、図2は、図1のXX断面を矢印方向から見た塗装ブース10の断面図であり、図3は、図1の塗装ブースを矢印Yの方向から見た正面図である。また、図2及び図3においては、通気性シート13が適宜省略されている。
この塗装ブース10は、箱状のブース本体5内に、被塗装物11に塗料を噴霧し塗装を行うための塗料噴射装置12と、被塗装物11が載置され、被塗装物11を順次搬送する搬送装置40と、被塗装物11に塗着されなかった未塗着塗料を捕捉するための通気性シート13と、通気性シート13が吸着固定される支持部14a、14bと、ブース本体5内部に所定方向の気流を形成するための吸引ブロワ35とを主な構成要素として備えている。
【0031】
本実施形態の塗装ブース10を構成するブース本体5はステンレス板やアルミニウム板、あるいは鉄板等からなる箱状とされている。あるいは、軽量化のためにフレームに樹脂板や樹脂シートを配した構成とすることもできる。このブース本体5の内面にはフッ素コーティングが施されており、塗料が付着した場合であっても容易に洗い流すことができるようになっている。
また、ブース本体5の一端部側には、吸引ブロワ35によって吸引される内部のエアを排出する排気ダクト(図示せず)に接続された排気部21が設けられ、当該排気部21に連通させて吸引ブロワ35が配置されている。また、ブース本体5の排気部21が設けられた端部とは反対側の端部には、ブース本体5内にエアを取り入れるための開口部18が設けられており、吸引ブロワ35を作動することでブース本体5内に、開口部18から排気部21へと向かう気流が生じるようになっている。吸引ブロワ35は動力を制御できるようになっており、発生する気流の流速を調節することにより回収効率を調節し、未塗着塗料の粒径の大きさや比重が異なる各種塗料に対応することができるようになっている。
【0032】
また、気流の流れ方向の側方側(図1の紙面に垂直な方向側、図2の左右方向側)に位置するブース本体5の両側面には、被塗装物11が塗装ブース10内に搬入される搬入口16と、塗装を終了した被塗装物11が塗装ブース10内から搬出される搬出口17が設けられている。この搬入口16及び搬出口17には、それぞれ、上下に移動し搬入口16、搬出口17を開閉する開閉ドア33が備えられている。したがって、被塗装物11をブース本体5内に搬入する際には搬入口16に備えられた開閉ドア(図示せず)が上昇し、搬入終了後には再び開閉ドアが下降して搬入口16が閉じられる。その後、塗装終了時には、今度は搬出口17に備えられた開閉ドア33が上昇し、搬出終了後には再び開閉ドア33が下降して搬出口17が閉じられる。
【0033】
また、ブース本体5内には、搬入口16と搬出口17との間に位置するように、搬送装置40としてのローラコンベア40Aが配置されている。一方、ブース本体5外においても、搬入口16や搬出口17の外側にローラコンベア41a、41bがそれぞれ設置されており、搬入口16あるいは搬出口17が開放されている間にローラコンベア40A、41a、41bを作動させて、被塗装物11が載置固定された載置台37を搬送できるようになっている。
このような搬送装置40を備えていれば、塗装ブース10内への被塗装物11の搬入搬出を自動化することができ、オートメーション化されたラインの一部に組み入れて、塗装ブース10を使用することができるようになる。
【0034】
また、塗料噴射装置12は、ブース本体5内に形成される気流に沿って被塗装物11の上流側、すなわち、ブース本体5の開口部18側に配置されている一方、被塗装物11に塗着されなかった未塗着塗料を捕捉するための通気性シート13が吸着固定される二つの支持部14a、14bは、気流に沿って被塗装物11の下流側、すなわち、塗料噴射装置12側から見て、被塗装物11の背面側に配置されている。
【0035】
塗料噴射装置12は被塗装物11の表面に塗料を吹き付けるためのものであり、前後上下左右の任意の方向に移動可能なアーム23と、当該アーム23の先端に取り付けられた噴射ノズル22とを備え、形成される気流の流れと直交する方向に配設されたレール43上を移動可能な基台44上に固定されている。したがって、基台44がレール43上を移動しながらアーム23が動くことによって、噴射ノズル22の位置が自由に変えられ被塗装物11の塗装面に均一に塗料を吹き付けることができる。
【0036】
また、塗料噴射装置12から噴射される塗料は、水性塗料や油性塗料をはじめとして種々の塗料を使用可能であるが、水シャワーを利用した回収手段では水中に溶け込んでしまい回収が困難な水性塗料を対象とすることが適している。
ただし、言うまでもなく、油性塗料その他の塗料を用いて塗装を行う際に、本発明の塗装ブースを使用することも可能である。
【0037】
塗装ブース10内では、噴射ノズル22から被塗装物11に向けて塗料を噴射すると、被塗装物11に塗着しなかった未塗着塗料が塗装ブース10内を浮遊する。この未塗着塗料は塗装完了後の塗装面に再付着して塗装品質不良の原因になるとともに、ブース本体5の内面や塗料噴射装置12、その他の部位に付着して汚れや動作不良の原因にもなるため、できる限り捕集することが望まれる。
本実施形態の塗装ブース10では、被塗装物11に塗着されなかった未塗着塗料は、被塗装物11の周辺に滞留せずに吸引ブロワ35によって生じる気流の流れにのって進み、未塗着塗料を含む気流が支持部14a、14bに吸着固定された通気性シート13を通過する際に、未塗着塗料が通気性シート13によって捕集されるように構成されている。
【0038】
被塗装物11の背面側に設置された二つの支持部14a、14bは、気流を通過させることができる複数の開口部を有しており、それぞれの支持部14a、14bの被塗装物11側の面には、気流によって通気性シート13が吸着固定されている。すなわち、気流が通過可能な複数の開口部が設けられた支持部14a、14bよりも、気流の流れ方向上流側の位置に通気性シート13を配置することにより、吸引ブロワ35によって生じる吸引力によって、通気性シート13が支持部14a、14bに吸着固定されるようになっている。
この支持部14a、14bとしては、例えば、パンチングメタルや金属メッシュ等を使用することができ、ブース本体5の内面に固定されるようになっている。中でも、開口率がより多く、気流の流れを阻害しにくいことから、金属製のメッシュを使用することが好ましい。ただし、気流によって吸着固定される通気性シート13を保持できる程度の剛性を持たせることが必要になる。
【0039】
図1に示す塗装ブース10の例では、支持部14a、14bのうち、支持部14aの被塗装物11側の面が上方を向くように傾斜させて配置されている。したがって、被塗装物11よりも下流側の領域の塗装ブース10の床面側にも通気性シート13が配設されるようになり、気流にのって流される未塗着塗料だけでなく、塗装ブース10の床面側に落下する未塗着塗料についても捕集することができるようになる。
支持部14a、14b、すなわち、通気性シート13の配設方向についてはこの例に限られるものではなく、図4(a)に示すように、支持部14a、14bを被塗装物11の背面側に鉛直方向に配置し、通気性シート13を吸着固定させてもよい。また、図4(b)に示すように、支持部14a、14bを被塗装物11の背面側に鉛直方向に配置するとともに、支持部14aと被塗装物11を搬送するローラコンベア40Aとの間の領域の床面側に床面側支持部14cを配置し、通気性シート13の配設方向をガイドバー45cによって変え、支持部14a〜14cに吸着固定させることによっても、塗装ブース10の床面側に落下する未塗着塗料についても捕集することができる。
【0040】
ここで、使用される通気性シート13については通気性を有するシートであればよく、専用の通気性シートを用いるのみならず、市販されている様々な通気性シートを用いることができ、例えば、メッシュ状に編み込まれた布状シートや、パルプや樹脂繊維からなる不織布を使用することができる。ただし、加熱しても有害な成分が生じないような塗料を使用する場合には、パルプ等からなる通気性シートを使用することにより、通気性シートに未塗着塗料を捕集したまま燃焼させて容易に処分することができるようになる。
通気性シート13のメッシュ粗さについては、吹き付け塗料の粒径の大きさや吹き付け圧、吸引ブロワ35の駆動力等に合わせて任意に選択することができる。
【0041】
図1に示す本実施形態の塗装ブース10では、それぞれブース本体5の幅と同等の幅を有する4枚の通気性シート13a〜13dが被塗装物11の背面側に配置されており、それぞれの通気性シート13a〜13dは、第1〜第4の通気性シートロール13A〜13Dから引き出されるようになっている。また、通気性シートロール13A〜13Dは、通気性シート13の幅よりも長い巻取り軸24にロール状に巻き取られており(図2を参照)、第1及び第2の通気性シートロール13A、13Bについては、ブース本体5にエアが給気される開口部18が設けられた面の下方側に固定された係止部26aに巻取り軸24の両端が係止されて保持され(図3を参照)、第3及び第4の通気性シートロール13C、13Dについては、ブース本体5の両側から上方に延びる支持柱7に固定された係止部26bに巻取り軸24の両端が係止されて保持されている。
したがって、通気性シート13の供給が連続的に行われるようになっており、引き出されて被塗装物11の背面側に配置された通気性シート13a〜13dに未塗着塗料が捕集され、通気性が低下したときには、通気性シート13を引き出すことによって新しい通気性シート面に容易に更新することができる。さらに、すべての通気性シートロールが使い切られたときには、新たな通気性シートロールへの交換を容易に行うことができるようになっている。
【0042】
4枚の通気性シート13a〜13dのうち、第1〜第3の通気性シートロール13A〜13Cから引き出された通気性シート13a〜13cは、ブース本体5の上面の第1のスリット部19を介してブース本体5内に導入されており、第4の通気性シートロール13Dから引き出された第4の通気性シート13dは、第2のスリット部20を介してブース本体5内に導入されている。そして、第1のスリット部19を介して導入される第1〜第3の通気性シート13a〜13cが支持部14aに吸着固定されるとともに、第2のスリット部20を介して導入される第4の通気性シート13dが支持部14bに吸着固定されている。
【0043】
支持部14aには三枚の通気性シート13a〜13dが重ねられて吸着固定されているため、見かけ上、通気性シート単体でのメッシュ粗さよりも細かくされ、捕集効率の向上が図られている。このように、使用する通気性シート13のメッシュ粗さに応じて、一枚のみ又は複数枚重ねて配置することによって、気流の流れを阻害しない程度において、支持部14aに吸着固定される通気性シートのメッシュ粗さが調節され、捕集効率を向上させることができる。
また、支持部14aから間隔をおいて支持部14bに吸着固定させた第4の通気性シート13dが配置されているために、第1〜第3の通気性シート13a〜13cによって捕集できなかった未塗着塗料を二次的に捕集することができる。
配設する通気性シートの合計枚数や、それぞれの位置に配設する枚数の組み合わせについては適宜変更することが可能である。
【0044】
また、支持部14aに吸着固定される第1及び第2の通気性シート13a、13bは、被塗装物11の背面側を通過する以前に、ブース本体5内にエアが給気される開口部18の前面を通るように構成されており、通気性シート13a、13bはガイドバー45a、45bによって配設方向を変えられて、開口部18を覆う位置から被塗装物11の背面側の位置まで配設されるようになっている。
したがって、通気性シート13a、13bは、被塗装物11の背面側で未塗着塗料を捕集するだけでなく、開口部18で、ブース本体5内に塵埃等が進入することを防ぐ役割も持っており、通気性シート13a、13bを無駄なく使用することができる。しかも、本実施形態の構成によれば、開口部18の前面において、塵埃が捕集される通気性シート13a、13bの外側面Aが、被塗装物11の背面側において、被塗装物11とは反対側に向けられるようになっているために、開口部18の位置で捕集された塵埃等が被塗装物11に付着することがないようになっている。さらに、被塗装物11の背面側においては、通気性シート13a、13bの下流側に通気性シート13cが重ねられて配置されているために、開口部18で捕集された塵埃が飛散しにくいようになっている。
【0045】
なお、ブース本体5の開口部18の前面に配設する通気性シート13の枚数については適宜変更することができ、一枚であってもよいし、三枚以上であってもよい。さらに、本発明の目的である未塗着塗料の捕集のみを考えるのであれば、すべての通気性シートロール13A〜13Dをブース本体5の上方に係止させ、開口部18の前面を経由しないで被塗装物11の背面側に配設するようにしてもよい。
【0046】
また、図1の塗装ブース10の例では、支持部14a、14bの下方側の端部位置に通気性シート13を切断するための切断手段が備えられ、通気性シートロール13A〜13Dから引き出され、被塗装物11の背面側において未塗着塗料が捕集された通気性シート面は、新たな通気性シート面に更新された後、切断されて処分されるようになっている。この切断手段としては、例えば、支持部14a、14bの下方側端部に沿って移動可能なカッター刃等を備えつけておき、必要量の通気性シート13を引き出した後カッター刃等を移動させて切断するように構成することができる。
ただし、上記の例のような切断手段によらずに、手作業でカッティングを行うようにしてもよい。
【0047】
また、図5(a)〜(b)は、未塗着塗料が捕集された通気性シート13の別の回収方法を採用した構成例を示している。図5(a)が内部を視認できるように開放した側面図であり、図5(b)が塗装ブース10´の側面図である。
この塗装ブース10´の例では、図5(a)に示すように、各支持部14a、14bの下方側に巻取り軸50a、50bを備えており、通気性シートロール13A〜13Cから引き出された通気性シート13a〜13cが巻取り軸50aによって巻き取られ、通気性シートロール13Dから引き出された通気性シート13dが巻取り軸50bによって巻き取られるようになっている。それぞれの巻取り軸50a、50bは、図5(b)に示すように、ブース本体5外に配置された回転レバー51に接続されており、塗装ブース10´外で回転レバー51を回転させることによって通気性シート13を巻き取ることができるようになっている。
【0048】
さらに、図示しないが、未塗着塗料が捕集された通気性シートを巻き取るための巻取り軸を回転駆動させる回転駆動装置を備え、この回転駆動装置を駆動制御することで、通気性シートを巻取り軸に巻き取らせて回収することもできる。
【0049】
このように、未塗着塗料を捕集した通気性シート13を巻き取って回収するように構成することにより、通気性シート13の更新作業が容易になるとともに、使用済みの通気性シート13をまとめて回収、処分することができるために、回収作業を容易に行うことができるようになる。
【0050】
また、本実施形態で説明した塗装ブース10、10´の構成例では、気流の流れ方向下流側に配置された支持部14bよりもさらに下流側であって、塗装ブース10内のエアが排気される排気部21よりも上流側に、気流が通過する通路としての開口部55を形成した通路形成部57が備えられ、通路形成部57のそれぞれの開口部55にエアフィルタ15が配置されている。したがって、吸引ブロワ35によって塗装ブース10内に生じた気流は、必ずエアフィルタ15を通過するようになっている。塗装ブース10内から排出される気流がエアフィルタ15を通過するため、仮に通気性シート13で捕集できなかった未塗着塗料が存在する場合でも、エアフィルタ15で確実に捕集されるため、塗装ブース10外に未塗着塗料が漏出することをより確実に防止することができる。
【0051】
エアフィルタ15は、市販のもの、例えば、大型商用車用のエアフィルタ等を使用することができるが、本実施形態の塗装ブース10では、大部分の未塗着塗料が通気性シートで捕集されるようになっているために、エアフィルタ自体の交換頻度は極めて少なく、コストが大幅に増加することがない。
【0052】
[第2の実施の形態]
図6は、本発明の第2の実施の形態にかかる塗装ブース100内部の構成を表す側方断面図を示している。以下、本実施形態の塗装ブース100について、第1の実施の形態の塗装ブースと異なる点を中心に、図6に基づいて説明する。
この塗装ブース100は、第1の実施の形態の塗装ブースと同様に、箱状のブース本体105内に、塗料噴射装置112と、搬送装置140と、通気性シート113と、通気性シート113が吸着固定される支持部114と、吸引ブロワ135とを主な構成要素として備えている。
【0053】
本実施形態の塗装ブース100では、通気性シート113が吸着固定される支持部114が、気流に沿って被塗装物111の下流側、すなわち、塗料噴射装置12側から見て被塗装物11の背面側に傾斜させられて配置されている。
この支持部114は、気流を通過させることができる複数の開口部を有するパンチングメタルが用いられており、被塗装物111側の面には、吸引ブロワ135によって生じる吸引力によって、通気性シート113が吸着固定されている。
【0054】
本実施形態の塗装ブース100では、それぞれブース本体105の幅と同等の幅を有する3枚の通気性シート113a〜113cが被塗装物111の背面側に配置されており、それぞれの通気性シート113a〜113cは、第1〜第3の通気性シートロール113A〜113Cから引き出されるようになっている。また、通気性シートロール113A〜113Cは、巻取り軸124にロール状に巻き取られ、ブース本体105にエアが給気される開口部118が設けられた面の下方側に固定された係止部126に巻取り軸124の両端が係止されて保持されている。
【0055】
通気性シートロール113A〜113Cから引き出される3枚の通気性シート113a〜113cは、ブース本体105内にエアが給気される開口部118の前面を通るように構成されるとともに、通気性シート113a〜113cはガイドバー145a、145bによって配設方向が変えられ、ブース本体105の上面のスリット部119を介してブース本体105内に導入されている。また、ブース本体105内では、隔壁部161に沿って下方に導かれた後、ガイドバー145cによって配設方向が変えられて支持部114に吸着固定されている。
【0056】
また、本実施形態の塗装ブース100では、未塗着塗料が捕集された通気性シート113を巻き取るための巻取り軸150及び当該巻取り軸150を回転駆動させる回転駆動装置(図示せず)を備え、この回転駆動装置を駆動制御することで、通気性シート113a〜113cをまとめて巻取り軸150に巻き取らせて回収するようになっている。これにより、使用済みの通気性シート113をまとめて回収、処分することができるとともに、通気性シート113を同時に新たな部分に更新することができる。
ただし、通気性シートの回収方法はこれに限られるものではない。
【0057】
また、本実施形態の塗装ブース100は、通気性シート113が吸着固定された支持部114よりも気流下流側の領域の下部に、防爆用貯水槽170が備えられている。例えば、塗装ブース100内で仮に塗料に引火した場合には、吸引ブロワ135による気流に乗って火炎が排気部21から排気ダクトへ噴出するおそれがあるが、この防爆用貯水槽170が備えられていれば、火炎の拡大がくい止められ、被害を最小限に抑えることができる。
この防爆用貯水槽170は、槽内に水を貯留させておくだけでもよく、あるいは、ポンプ等によって水を循環させておくようにしてもよい。
【0058】
また、図7に示すように、防爆用貯水槽170と併せて、隔壁161の下端位置に複数の導水孔が設けられた導水管165を設け、気流と交差するように水を流しておくことも好ましい。このように構成されていれば、気流の通路に水が配され、火炎を抑えこむように機能し、さらに防爆効果を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の第1の実施の形態にかかる塗装ブースを示す側方断面図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態にかかる塗装ブースを示す断面図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態にかかる塗装ブースを示す正面図である。
【図4】支持部の構成例を説明するための図である。
【図5】通気性シートの回収方法が異なる別の塗装ブースの構成例を示す図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態にかかる塗装ブースを示す側方断面図である。
【図7】防爆用貯水部の変形例を示す図である。
【図8】従来の塗装ブースの構成を説明するための図である。
【符号の説明】
【0060】
5:ブース本体、7:支持柱、10・10´:塗装ブース、11:被塗装物、12:塗料噴射装置、13・13a・13b・13c・13d:通気性シート、13A・13B・13C・13D:通気性シートロール、14a・14b:支持部、14c:床面側支持部、15:エアフィルタ、16:搬入口、17:搬出口、18:開口部、19:第1のスリット部、20:第2のスリット部、21:排気部、22:噴射ノズル、23:アーム、24:巻取り軸、30:巻取りロール、31:固定部材、33:開閉ドア、35:吸引ブロワ、37:載置台、40:搬送装置、40A・41a・41b:ローラコンベア、43:レール、44:基台、45a・45b・45c:ガイドバー、50a・50b:巻取り軸、51:回転レバー、55:開口部、57:通路形成部、105:ブース本体、100:塗装ブース、111:被塗装物、112:塗料噴射装置、113・113a・113b・113c:通気性シート、113A・113B・113C:通気性シートロール、114:支持部、119:スリット部、121:排気部、124:巻取り軸、126:係止部、128:排気空間、135:吸引ブロワ、140:搬送装置、145a・145b・145c:ガイドバー、161:隔壁部、165:導水管、170:防爆用貯水槽
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部で被塗装物に対して塗装を行う塗装ブースに関する。特に、発生した未塗着塗料の捕集を効率的に行うことのできる塗装ブースに関する。
【背景技術】
【0002】
従来からオーバーヘッドコンベア等の搬送手段を用いて被塗装物を連続的に塗装ブース内に搬送するとともに、搬送されてきた被塗装物に対して塗料噴射装置等を用いて塗装を行う塗装装置が広く利用されている。かかる塗装装置においては、塗装ブース内でワークに塗着せず、塗装ブース内を浮遊する霧状(ミスト)の未塗着塗料が発生し、塗装ブース外に漏れたり被塗装物に再付着したりすることを防止するため、確実に捕集することが要望されている。
【0003】
未塗着塗料を捕集する手段として、水洗やエアフィルタによる方法が知られている。
例えば、水性塗料を用いる塗装で生じたオーバースプレー塗料の効率的な処理方法およびそのための装置を提供することを目的としたオーバースプレー塗料の処理方法および処理装置が提案されている。より具体的には、図8に示すように、水性塗料を塗装ブース301でスプレー塗装302すること、被塗物303に塗着しなかったオーバースプレー塗料を水性媒体304で捕捉し、ブース水305として回収すること、該ブース水305を限外濾過器316を用いて回分式で濾過することによって、オーバースプレー塗料に含まれる固形分が濃縮された濃縮物を得ること、および該濃縮物を処分のために回収することを含んで成るオーバースプレー塗料の処理方法であって、該濃縮物の固形分含量が45重量%〜53重量%であることを特徴とするオーバースプレー塗料の処理方法および処理装置301、312が開示されている(特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2005−125273号公報 (全文 図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記特許文献1に記載のオーバースプレー塗料の処理方法および処理装置においては、被塗装物に塗着しなかった未塗着塗料を捕捉するためにウォーターカーテンやウォーターシャワー等の水性媒体を使用している。したがって、水性媒体が未塗着塗料を捕捉することによって生じるブース水を回収するためには、ブース水を貯留するためのタンク等を設置しなければならない。また、ブース水に含まれる未塗着塗料の固形分を処理するためには、別途濾過等を行う必要がある。このように、水性媒体によって未塗着塗料を捕捉する方法では、ブース水の回収等により広い設置面積が必要になるため、設備やメンテナンスにかなりのコストがかかってしまう。さらに、水性媒体に捕捉された未塗着塗料を回収・処分するにあたって、濾過等の各手順をふむ必要があり、手間がかかり作業性が低下するというおそれがあった。
【0006】
そこで、本発明の発明者は鋭意努力し、噴射ノズルから噴射される塗料によって被塗装物の塗装を行う塗装ブースにおいて、塗装ブース内に所定方向の気流を発生させ、被塗装物の背面側に未塗着塗料を捕捉するための通気性シートを配置することにより、このような問題を解決できることを見出し、本発明を完成させたものである。
すなわち、本発明は、塗料を被塗装物に噴射して塗装する際に発生する未塗着塗料の捕集を、簡易な装置で効率的に行うことができる塗装ブースを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、被塗装物に対して噴射ノズルから塗料を噴射して被塗装物の塗装を行う塗装ブースにおいて、塗装ブース内のエアを吸引して塗装ブース内に気流を発生させる吸引ブロワを備え、塗料は被塗装物に向けて噴射されるとともに、被塗装物の背面側には複数の開口部を有する支持部が備えられ、支持部には通気性シートが吸着固定されることを特徴とする塗装ブースが提供され、上述した問題を解決することができる。
【0008】
また、本発明の塗装ブースを構成するにあたり、通気性シートが複数枚重ねられて支持部に吸着固定されることが好ましい。
【0009】
また、本発明の塗装ブースを構成するにあたり、通気性シート及び支持部を複数備え、互いに間隔をおいて複数の通気性シートが吸着固定されることが好ましい。
【0010】
また、本発明の塗装ブースを構成するにあたり、支持部の被塗装物側の面が上方を向くように支持部を傾斜させることが好ましい。
【0011】
また、本発明の塗装ブースを構成するにあたり、少なくとも被塗装物と支持部との間の領域の床面側にも複数の開口部を有する床面側支持部を備え、被塗装物の背面側の通気性シートは、ガイドロール又はガイドバーによって配設方向が変えられ、床面側支持部にも吸着固定されることが好ましい。
【0012】
また、本発明の塗装ブースを構成するにあたり、通気性シートが通気性シートロールから引き出されていることが好ましい。
【0013】
また、本発明の塗装ブースを構成するにあたり、塗装ブース内にエアを給気する開口部を備え、開口部が通気性シートで覆われることが好ましい。
【0014】
また、本発明の塗装ブースを構成するにあたり、通気性シートロールから引き出された通気性シートは、開口部を覆う位置から被塗装物の背面側の位置まで配設され、開口部を覆う位置において塗装ブースの内部に面する通気性シートの面が、被塗装物の背面側の位置において被塗装物側に面することが好ましい。
【0015】
また、本発明の塗装ブースを構成するにあたり、支持部と吸引ブロワとの間に気流が通過する通路が形成され、通路にエアフィルタが配置されることが好ましい。
【0016】
また、本発明の塗装ブースを構成するにあたり、支持部と吸引ブロワとの間に防爆用貯水部を備えることが好ましい。
【0017】
また、本発明の塗装ブースを構成するにあたり、塗装ブースは、被塗装物が搬入される搬入口と、被塗装物が搬出される搬出口と、搬入口及び搬出口をそれぞれ開閉する開閉手段と、を備え、塗装ブース内に搬送される被塗装物を塗装可能であることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の塗装ブースによれば、塗装ブース内に所定方向の気流を発生させ、通気性シートを用いて未塗着塗料を捕捉することにより、未塗着塗料を捕捉するための大量の捕捉媒体を要することがないために、塗装ブース全体をコンパクトで簡易な構造とすることができる。したがって、設備やメンテナンスにかかるコストを低減することができる。さらに、捕捉された未塗着塗料は通気性シートとともに処分できるため、手間がかからず効率良く処分することができる。
【0019】
また、本発明の塗装ブースにおいて、通気性シートを複数枚重ねて支持部に吸着固定させることにより、通気性シートの目の粗さが見かけ上細かくされ、未塗着塗料の捕集効率を向上させることができる。
【0020】
また、本発明の塗装ブースにおいて、複数枚の通気性シートを間隔をおいて配置することにより、通気性を著しく阻害することなく上流側の通気性シートで捕捉されなかった未塗着塗料を確実に捕捉させることができる。
【0021】
また、本発明の塗装ブースにおいて、支持部の被塗装物側の面が上方を向くように支持部を傾斜させて配置することにより、塗装ブース内の床面側に落下する未塗着塗料を捕集することができ、塗装ブースの床面への未塗着塗料の付着を防止することができる。
【0022】
また、本発明の塗装ブースにおいて、ガイドロール又はガイドバーによって配設方向を変えて、所定領域の床面側の支持部にも通気性シートを吸着固定させることにより、塗装ブース内の床面側に落下する未塗着塗料を捕集することができ、塗装ブースの床面への未塗着塗料の付着を防止することができる。
【0023】
また、本発明の塗装ブースにおいて、通気性シートが巻き付けられた通気性シートロールから通気性シートを引き出すように構成することにより、未塗着塗料で汚れた通気性シートを新しい通気性シートに更新する際には、新たに通気性シートを引き出すだけで更新作業を行うことができるため、通気性シートの更新作業を容易に行うことができる。
【0024】
また、本発明の塗装ブースにおいて、塗装ブース内にエアが給気される開口部を通気性シートで覆うことにより、塗装ブース内に給気されるエア中の塵埃を取り除くことができ、被塗装物に塵埃が付着することを防止することができる。
【0025】
また、本発明の塗装ブースにおいて、通気性シートロールから引き出された通気性シートが、開口部を覆う位置から被塗装物の背面側の位置まで配設されるとともに、開口部を覆う位置において塗装ブースの内部側に面する通気性シートの面が、被塗装物の背面側の位置において被塗装物側に面するように配設することにより、共通の通気性シートを利用して、塗装ブース内への塵埃の侵入及び未塗着塗料の捕集を行うことができる。しかも、それぞれの位置において面の向きが規定されているため、塵埃を被塗装物に付着させることなく、通気性シートの両面を無駄なく利用することができる。
【0026】
また、本発明の塗装ブースにおいて、通気性シートよりも下流側にエアフィルタを配置することにより、仮に通気性シートで捕捉することができなかった未塗着塗料が存在する場合においても、塗装ブース外に未塗着塗料が漏出することを確実に防止することができる。
【0027】
また、本発明の塗装ブースにおいて、支持部と吸引ブロアとの間に防爆用貯水部を備えることにより、万が一、塗装ブース内で塗料に引火して通気性シートが燃え出した場合であっても、火炎の広がりを抑えられ、排気部から外部への火炎の噴出を防止することができる。
【0028】
また、本発明の塗装ブースにおいて、搬送される被塗装物を塗装可能に構成することにより、オートメーション化された搬送ラインの一部において使用可能な塗装ブースとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、適宜図面を参照して、本発明の塗料ブースにかかる実施の形態について具体的に説明する。ただし、かかる実施の形態は、本発明の一態様を示すものであり、この発明を限定するものではなく、本発明の範囲内で任意に変更することが可能である。
なお、それぞれの図中、同じ符号を付してあるものについては同一の部材を示しており、適宜説明が省略されている。
【0030】
[第1の実施の形態]
図1〜図3は、本発明の第1の実施の形態にかかる塗装ブース10を示している。図1は、塗装ブース10の内部の構成を表す側方断面図であり、図2は、図1のXX断面を矢印方向から見た塗装ブース10の断面図であり、図3は、図1の塗装ブースを矢印Yの方向から見た正面図である。また、図2及び図3においては、通気性シート13が適宜省略されている。
この塗装ブース10は、箱状のブース本体5内に、被塗装物11に塗料を噴霧し塗装を行うための塗料噴射装置12と、被塗装物11が載置され、被塗装物11を順次搬送する搬送装置40と、被塗装物11に塗着されなかった未塗着塗料を捕捉するための通気性シート13と、通気性シート13が吸着固定される支持部14a、14bと、ブース本体5内部に所定方向の気流を形成するための吸引ブロワ35とを主な構成要素として備えている。
【0031】
本実施形態の塗装ブース10を構成するブース本体5はステンレス板やアルミニウム板、あるいは鉄板等からなる箱状とされている。あるいは、軽量化のためにフレームに樹脂板や樹脂シートを配した構成とすることもできる。このブース本体5の内面にはフッ素コーティングが施されており、塗料が付着した場合であっても容易に洗い流すことができるようになっている。
また、ブース本体5の一端部側には、吸引ブロワ35によって吸引される内部のエアを排出する排気ダクト(図示せず)に接続された排気部21が設けられ、当該排気部21に連通させて吸引ブロワ35が配置されている。また、ブース本体5の排気部21が設けられた端部とは反対側の端部には、ブース本体5内にエアを取り入れるための開口部18が設けられており、吸引ブロワ35を作動することでブース本体5内に、開口部18から排気部21へと向かう気流が生じるようになっている。吸引ブロワ35は動力を制御できるようになっており、発生する気流の流速を調節することにより回収効率を調節し、未塗着塗料の粒径の大きさや比重が異なる各種塗料に対応することができるようになっている。
【0032】
また、気流の流れ方向の側方側(図1の紙面に垂直な方向側、図2の左右方向側)に位置するブース本体5の両側面には、被塗装物11が塗装ブース10内に搬入される搬入口16と、塗装を終了した被塗装物11が塗装ブース10内から搬出される搬出口17が設けられている。この搬入口16及び搬出口17には、それぞれ、上下に移動し搬入口16、搬出口17を開閉する開閉ドア33が備えられている。したがって、被塗装物11をブース本体5内に搬入する際には搬入口16に備えられた開閉ドア(図示せず)が上昇し、搬入終了後には再び開閉ドアが下降して搬入口16が閉じられる。その後、塗装終了時には、今度は搬出口17に備えられた開閉ドア33が上昇し、搬出終了後には再び開閉ドア33が下降して搬出口17が閉じられる。
【0033】
また、ブース本体5内には、搬入口16と搬出口17との間に位置するように、搬送装置40としてのローラコンベア40Aが配置されている。一方、ブース本体5外においても、搬入口16や搬出口17の外側にローラコンベア41a、41bがそれぞれ設置されており、搬入口16あるいは搬出口17が開放されている間にローラコンベア40A、41a、41bを作動させて、被塗装物11が載置固定された載置台37を搬送できるようになっている。
このような搬送装置40を備えていれば、塗装ブース10内への被塗装物11の搬入搬出を自動化することができ、オートメーション化されたラインの一部に組み入れて、塗装ブース10を使用することができるようになる。
【0034】
また、塗料噴射装置12は、ブース本体5内に形成される気流に沿って被塗装物11の上流側、すなわち、ブース本体5の開口部18側に配置されている一方、被塗装物11に塗着されなかった未塗着塗料を捕捉するための通気性シート13が吸着固定される二つの支持部14a、14bは、気流に沿って被塗装物11の下流側、すなわち、塗料噴射装置12側から見て、被塗装物11の背面側に配置されている。
【0035】
塗料噴射装置12は被塗装物11の表面に塗料を吹き付けるためのものであり、前後上下左右の任意の方向に移動可能なアーム23と、当該アーム23の先端に取り付けられた噴射ノズル22とを備え、形成される気流の流れと直交する方向に配設されたレール43上を移動可能な基台44上に固定されている。したがって、基台44がレール43上を移動しながらアーム23が動くことによって、噴射ノズル22の位置が自由に変えられ被塗装物11の塗装面に均一に塗料を吹き付けることができる。
【0036】
また、塗料噴射装置12から噴射される塗料は、水性塗料や油性塗料をはじめとして種々の塗料を使用可能であるが、水シャワーを利用した回収手段では水中に溶け込んでしまい回収が困難な水性塗料を対象とすることが適している。
ただし、言うまでもなく、油性塗料その他の塗料を用いて塗装を行う際に、本発明の塗装ブースを使用することも可能である。
【0037】
塗装ブース10内では、噴射ノズル22から被塗装物11に向けて塗料を噴射すると、被塗装物11に塗着しなかった未塗着塗料が塗装ブース10内を浮遊する。この未塗着塗料は塗装完了後の塗装面に再付着して塗装品質不良の原因になるとともに、ブース本体5の内面や塗料噴射装置12、その他の部位に付着して汚れや動作不良の原因にもなるため、できる限り捕集することが望まれる。
本実施形態の塗装ブース10では、被塗装物11に塗着されなかった未塗着塗料は、被塗装物11の周辺に滞留せずに吸引ブロワ35によって生じる気流の流れにのって進み、未塗着塗料を含む気流が支持部14a、14bに吸着固定された通気性シート13を通過する際に、未塗着塗料が通気性シート13によって捕集されるように構成されている。
【0038】
被塗装物11の背面側に設置された二つの支持部14a、14bは、気流を通過させることができる複数の開口部を有しており、それぞれの支持部14a、14bの被塗装物11側の面には、気流によって通気性シート13が吸着固定されている。すなわち、気流が通過可能な複数の開口部が設けられた支持部14a、14bよりも、気流の流れ方向上流側の位置に通気性シート13を配置することにより、吸引ブロワ35によって生じる吸引力によって、通気性シート13が支持部14a、14bに吸着固定されるようになっている。
この支持部14a、14bとしては、例えば、パンチングメタルや金属メッシュ等を使用することができ、ブース本体5の内面に固定されるようになっている。中でも、開口率がより多く、気流の流れを阻害しにくいことから、金属製のメッシュを使用することが好ましい。ただし、気流によって吸着固定される通気性シート13を保持できる程度の剛性を持たせることが必要になる。
【0039】
図1に示す塗装ブース10の例では、支持部14a、14bのうち、支持部14aの被塗装物11側の面が上方を向くように傾斜させて配置されている。したがって、被塗装物11よりも下流側の領域の塗装ブース10の床面側にも通気性シート13が配設されるようになり、気流にのって流される未塗着塗料だけでなく、塗装ブース10の床面側に落下する未塗着塗料についても捕集することができるようになる。
支持部14a、14b、すなわち、通気性シート13の配設方向についてはこの例に限られるものではなく、図4(a)に示すように、支持部14a、14bを被塗装物11の背面側に鉛直方向に配置し、通気性シート13を吸着固定させてもよい。また、図4(b)に示すように、支持部14a、14bを被塗装物11の背面側に鉛直方向に配置するとともに、支持部14aと被塗装物11を搬送するローラコンベア40Aとの間の領域の床面側に床面側支持部14cを配置し、通気性シート13の配設方向をガイドバー45cによって変え、支持部14a〜14cに吸着固定させることによっても、塗装ブース10の床面側に落下する未塗着塗料についても捕集することができる。
【0040】
ここで、使用される通気性シート13については通気性を有するシートであればよく、専用の通気性シートを用いるのみならず、市販されている様々な通気性シートを用いることができ、例えば、メッシュ状に編み込まれた布状シートや、パルプや樹脂繊維からなる不織布を使用することができる。ただし、加熱しても有害な成分が生じないような塗料を使用する場合には、パルプ等からなる通気性シートを使用することにより、通気性シートに未塗着塗料を捕集したまま燃焼させて容易に処分することができるようになる。
通気性シート13のメッシュ粗さについては、吹き付け塗料の粒径の大きさや吹き付け圧、吸引ブロワ35の駆動力等に合わせて任意に選択することができる。
【0041】
図1に示す本実施形態の塗装ブース10では、それぞれブース本体5の幅と同等の幅を有する4枚の通気性シート13a〜13dが被塗装物11の背面側に配置されており、それぞれの通気性シート13a〜13dは、第1〜第4の通気性シートロール13A〜13Dから引き出されるようになっている。また、通気性シートロール13A〜13Dは、通気性シート13の幅よりも長い巻取り軸24にロール状に巻き取られており(図2を参照)、第1及び第2の通気性シートロール13A、13Bについては、ブース本体5にエアが給気される開口部18が設けられた面の下方側に固定された係止部26aに巻取り軸24の両端が係止されて保持され(図3を参照)、第3及び第4の通気性シートロール13C、13Dについては、ブース本体5の両側から上方に延びる支持柱7に固定された係止部26bに巻取り軸24の両端が係止されて保持されている。
したがって、通気性シート13の供給が連続的に行われるようになっており、引き出されて被塗装物11の背面側に配置された通気性シート13a〜13dに未塗着塗料が捕集され、通気性が低下したときには、通気性シート13を引き出すことによって新しい通気性シート面に容易に更新することができる。さらに、すべての通気性シートロールが使い切られたときには、新たな通気性シートロールへの交換を容易に行うことができるようになっている。
【0042】
4枚の通気性シート13a〜13dのうち、第1〜第3の通気性シートロール13A〜13Cから引き出された通気性シート13a〜13cは、ブース本体5の上面の第1のスリット部19を介してブース本体5内に導入されており、第4の通気性シートロール13Dから引き出された第4の通気性シート13dは、第2のスリット部20を介してブース本体5内に導入されている。そして、第1のスリット部19を介して導入される第1〜第3の通気性シート13a〜13cが支持部14aに吸着固定されるとともに、第2のスリット部20を介して導入される第4の通気性シート13dが支持部14bに吸着固定されている。
【0043】
支持部14aには三枚の通気性シート13a〜13dが重ねられて吸着固定されているため、見かけ上、通気性シート単体でのメッシュ粗さよりも細かくされ、捕集効率の向上が図られている。このように、使用する通気性シート13のメッシュ粗さに応じて、一枚のみ又は複数枚重ねて配置することによって、気流の流れを阻害しない程度において、支持部14aに吸着固定される通気性シートのメッシュ粗さが調節され、捕集効率を向上させることができる。
また、支持部14aから間隔をおいて支持部14bに吸着固定させた第4の通気性シート13dが配置されているために、第1〜第3の通気性シート13a〜13cによって捕集できなかった未塗着塗料を二次的に捕集することができる。
配設する通気性シートの合計枚数や、それぞれの位置に配設する枚数の組み合わせについては適宜変更することが可能である。
【0044】
また、支持部14aに吸着固定される第1及び第2の通気性シート13a、13bは、被塗装物11の背面側を通過する以前に、ブース本体5内にエアが給気される開口部18の前面を通るように構成されており、通気性シート13a、13bはガイドバー45a、45bによって配設方向を変えられて、開口部18を覆う位置から被塗装物11の背面側の位置まで配設されるようになっている。
したがって、通気性シート13a、13bは、被塗装物11の背面側で未塗着塗料を捕集するだけでなく、開口部18で、ブース本体5内に塵埃等が進入することを防ぐ役割も持っており、通気性シート13a、13bを無駄なく使用することができる。しかも、本実施形態の構成によれば、開口部18の前面において、塵埃が捕集される通気性シート13a、13bの外側面Aが、被塗装物11の背面側において、被塗装物11とは反対側に向けられるようになっているために、開口部18の位置で捕集された塵埃等が被塗装物11に付着することがないようになっている。さらに、被塗装物11の背面側においては、通気性シート13a、13bの下流側に通気性シート13cが重ねられて配置されているために、開口部18で捕集された塵埃が飛散しにくいようになっている。
【0045】
なお、ブース本体5の開口部18の前面に配設する通気性シート13の枚数については適宜変更することができ、一枚であってもよいし、三枚以上であってもよい。さらに、本発明の目的である未塗着塗料の捕集のみを考えるのであれば、すべての通気性シートロール13A〜13Dをブース本体5の上方に係止させ、開口部18の前面を経由しないで被塗装物11の背面側に配設するようにしてもよい。
【0046】
また、図1の塗装ブース10の例では、支持部14a、14bの下方側の端部位置に通気性シート13を切断するための切断手段が備えられ、通気性シートロール13A〜13Dから引き出され、被塗装物11の背面側において未塗着塗料が捕集された通気性シート面は、新たな通気性シート面に更新された後、切断されて処分されるようになっている。この切断手段としては、例えば、支持部14a、14bの下方側端部に沿って移動可能なカッター刃等を備えつけておき、必要量の通気性シート13を引き出した後カッター刃等を移動させて切断するように構成することができる。
ただし、上記の例のような切断手段によらずに、手作業でカッティングを行うようにしてもよい。
【0047】
また、図5(a)〜(b)は、未塗着塗料が捕集された通気性シート13の別の回収方法を採用した構成例を示している。図5(a)が内部を視認できるように開放した側面図であり、図5(b)が塗装ブース10´の側面図である。
この塗装ブース10´の例では、図5(a)に示すように、各支持部14a、14bの下方側に巻取り軸50a、50bを備えており、通気性シートロール13A〜13Cから引き出された通気性シート13a〜13cが巻取り軸50aによって巻き取られ、通気性シートロール13Dから引き出された通気性シート13dが巻取り軸50bによって巻き取られるようになっている。それぞれの巻取り軸50a、50bは、図5(b)に示すように、ブース本体5外に配置された回転レバー51に接続されており、塗装ブース10´外で回転レバー51を回転させることによって通気性シート13を巻き取ることができるようになっている。
【0048】
さらに、図示しないが、未塗着塗料が捕集された通気性シートを巻き取るための巻取り軸を回転駆動させる回転駆動装置を備え、この回転駆動装置を駆動制御することで、通気性シートを巻取り軸に巻き取らせて回収することもできる。
【0049】
このように、未塗着塗料を捕集した通気性シート13を巻き取って回収するように構成することにより、通気性シート13の更新作業が容易になるとともに、使用済みの通気性シート13をまとめて回収、処分することができるために、回収作業を容易に行うことができるようになる。
【0050】
また、本実施形態で説明した塗装ブース10、10´の構成例では、気流の流れ方向下流側に配置された支持部14bよりもさらに下流側であって、塗装ブース10内のエアが排気される排気部21よりも上流側に、気流が通過する通路としての開口部55を形成した通路形成部57が備えられ、通路形成部57のそれぞれの開口部55にエアフィルタ15が配置されている。したがって、吸引ブロワ35によって塗装ブース10内に生じた気流は、必ずエアフィルタ15を通過するようになっている。塗装ブース10内から排出される気流がエアフィルタ15を通過するため、仮に通気性シート13で捕集できなかった未塗着塗料が存在する場合でも、エアフィルタ15で確実に捕集されるため、塗装ブース10外に未塗着塗料が漏出することをより確実に防止することができる。
【0051】
エアフィルタ15は、市販のもの、例えば、大型商用車用のエアフィルタ等を使用することができるが、本実施形態の塗装ブース10では、大部分の未塗着塗料が通気性シートで捕集されるようになっているために、エアフィルタ自体の交換頻度は極めて少なく、コストが大幅に増加することがない。
【0052】
[第2の実施の形態]
図6は、本発明の第2の実施の形態にかかる塗装ブース100内部の構成を表す側方断面図を示している。以下、本実施形態の塗装ブース100について、第1の実施の形態の塗装ブースと異なる点を中心に、図6に基づいて説明する。
この塗装ブース100は、第1の実施の形態の塗装ブースと同様に、箱状のブース本体105内に、塗料噴射装置112と、搬送装置140と、通気性シート113と、通気性シート113が吸着固定される支持部114と、吸引ブロワ135とを主な構成要素として備えている。
【0053】
本実施形態の塗装ブース100では、通気性シート113が吸着固定される支持部114が、気流に沿って被塗装物111の下流側、すなわち、塗料噴射装置12側から見て被塗装物11の背面側に傾斜させられて配置されている。
この支持部114は、気流を通過させることができる複数の開口部を有するパンチングメタルが用いられており、被塗装物111側の面には、吸引ブロワ135によって生じる吸引力によって、通気性シート113が吸着固定されている。
【0054】
本実施形態の塗装ブース100では、それぞれブース本体105の幅と同等の幅を有する3枚の通気性シート113a〜113cが被塗装物111の背面側に配置されており、それぞれの通気性シート113a〜113cは、第1〜第3の通気性シートロール113A〜113Cから引き出されるようになっている。また、通気性シートロール113A〜113Cは、巻取り軸124にロール状に巻き取られ、ブース本体105にエアが給気される開口部118が設けられた面の下方側に固定された係止部126に巻取り軸124の両端が係止されて保持されている。
【0055】
通気性シートロール113A〜113Cから引き出される3枚の通気性シート113a〜113cは、ブース本体105内にエアが給気される開口部118の前面を通るように構成されるとともに、通気性シート113a〜113cはガイドバー145a、145bによって配設方向が変えられ、ブース本体105の上面のスリット部119を介してブース本体105内に導入されている。また、ブース本体105内では、隔壁部161に沿って下方に導かれた後、ガイドバー145cによって配設方向が変えられて支持部114に吸着固定されている。
【0056】
また、本実施形態の塗装ブース100では、未塗着塗料が捕集された通気性シート113を巻き取るための巻取り軸150及び当該巻取り軸150を回転駆動させる回転駆動装置(図示せず)を備え、この回転駆動装置を駆動制御することで、通気性シート113a〜113cをまとめて巻取り軸150に巻き取らせて回収するようになっている。これにより、使用済みの通気性シート113をまとめて回収、処分することができるとともに、通気性シート113を同時に新たな部分に更新することができる。
ただし、通気性シートの回収方法はこれに限られるものではない。
【0057】
また、本実施形態の塗装ブース100は、通気性シート113が吸着固定された支持部114よりも気流下流側の領域の下部に、防爆用貯水槽170が備えられている。例えば、塗装ブース100内で仮に塗料に引火した場合には、吸引ブロワ135による気流に乗って火炎が排気部21から排気ダクトへ噴出するおそれがあるが、この防爆用貯水槽170が備えられていれば、火炎の拡大がくい止められ、被害を最小限に抑えることができる。
この防爆用貯水槽170は、槽内に水を貯留させておくだけでもよく、あるいは、ポンプ等によって水を循環させておくようにしてもよい。
【0058】
また、図7に示すように、防爆用貯水槽170と併せて、隔壁161の下端位置に複数の導水孔が設けられた導水管165を設け、気流と交差するように水を流しておくことも好ましい。このように構成されていれば、気流の通路に水が配され、火炎を抑えこむように機能し、さらに防爆効果を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の第1の実施の形態にかかる塗装ブースを示す側方断面図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態にかかる塗装ブースを示す断面図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態にかかる塗装ブースを示す正面図である。
【図4】支持部の構成例を説明するための図である。
【図5】通気性シートの回収方法が異なる別の塗装ブースの構成例を示す図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態にかかる塗装ブースを示す側方断面図である。
【図7】防爆用貯水部の変形例を示す図である。
【図8】従来の塗装ブースの構成を説明するための図である。
【符号の説明】
【0060】
5:ブース本体、7:支持柱、10・10´:塗装ブース、11:被塗装物、12:塗料噴射装置、13・13a・13b・13c・13d:通気性シート、13A・13B・13C・13D:通気性シートロール、14a・14b:支持部、14c:床面側支持部、15:エアフィルタ、16:搬入口、17:搬出口、18:開口部、19:第1のスリット部、20:第2のスリット部、21:排気部、22:噴射ノズル、23:アーム、24:巻取り軸、30:巻取りロール、31:固定部材、33:開閉ドア、35:吸引ブロワ、37:載置台、40:搬送装置、40A・41a・41b:ローラコンベア、43:レール、44:基台、45a・45b・45c:ガイドバー、50a・50b:巻取り軸、51:回転レバー、55:開口部、57:通路形成部、105:ブース本体、100:塗装ブース、111:被塗装物、112:塗料噴射装置、113・113a・113b・113c:通気性シート、113A・113B・113C:通気性シートロール、114:支持部、119:スリット部、121:排気部、124:巻取り軸、126:係止部、128:排気空間、135:吸引ブロワ、140:搬送装置、145a・145b・145c:ガイドバー、161:隔壁部、165:導水管、170:防爆用貯水槽
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被塗装物に対して噴射ノズルから塗料を噴射して前記被塗装物の塗装を行う塗装ブースにおいて、
前記塗装ブース内のエアを吸引して前記塗装ブース内に気流を発生させる吸引ブロワを備え、前記塗料は前記被塗装物に向けて噴射されるとともに、前記被塗装物の背面側には複数の開口部を有する支持部が備えられ、
前記支持部には通気性シートが吸着固定されることを特徴とする塗装ブース。
【請求項2】
前記通気性シートが複数枚重ねられて前記支持部に吸着固定されることを特徴とする請求項1に記載の塗装ブース。
【請求項3】
前記通気性シート及び前記支持部を複数備え、互いに間隔をおいて複数の前記通気性シートが吸着固定されることを特徴とする請求項1又は2に記載の塗装ブース。
【請求項4】
前記支持部の前記被塗装物側の面が上方を向くように前記支持部を傾斜させることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の塗装ブース。
【請求項5】
少なくとも前記被塗装物と前記支持部との間の領域の床面側にも複数の開口部を有する床面側支持部を備え、前記被塗装物の背面側の前記通気性シートは、ガイドロール又はガイドバーによって配設方向が変えられ、前記床面側支持部にも吸着固定されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の塗装ブース。
【請求項6】
前記通気性シートが通気性シートロールから引き出されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の塗装ブース。
【請求項7】
前記塗装ブース内にエアを給気する開口部を備え、前記開口部が前記通気性シートで覆われることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の塗装ブース。
【請求項8】
前記通気性シートロールから引き出された前記通気性シートは、前記開口部を覆う位置から前記被塗装物の背面側の位置まで配設され、前記開口部を覆う位置において前記塗装ブースの内部に面する前記通気性シートの面が、前記被塗装物の背面側の位置において前記被塗装物側に面することを特徴とする請求項7に記載の塗装ブース。
【請求項9】
前記支持部と前記吸引ブロワとの間に前記気流が通過する通路が形成され、前記通路にエアフィルタが配置されることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の塗装ブース。
【請求項10】
前記支持部と前記吸引ブロワとの間に防爆用貯水部を備えることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の塗装ブース。
【請求項11】
前記塗装ブースは、前記被塗装物が搬入される搬入口と、前記被塗装物が搬出される搬出口と、前記搬入口及び前記搬出口をそれぞれ開閉する開閉手段と、を備え、前記塗装ブース内に搬送される被塗装物を塗装可能であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の塗装ブース。
【請求項1】
被塗装物に対して噴射ノズルから塗料を噴射して前記被塗装物の塗装を行う塗装ブースにおいて、
前記塗装ブース内のエアを吸引して前記塗装ブース内に気流を発生させる吸引ブロワを備え、前記塗料は前記被塗装物に向けて噴射されるとともに、前記被塗装物の背面側には複数の開口部を有する支持部が備えられ、
前記支持部には通気性シートが吸着固定されることを特徴とする塗装ブース。
【請求項2】
前記通気性シートが複数枚重ねられて前記支持部に吸着固定されることを特徴とする請求項1に記載の塗装ブース。
【請求項3】
前記通気性シート及び前記支持部を複数備え、互いに間隔をおいて複数の前記通気性シートが吸着固定されることを特徴とする請求項1又は2に記載の塗装ブース。
【請求項4】
前記支持部の前記被塗装物側の面が上方を向くように前記支持部を傾斜させることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の塗装ブース。
【請求項5】
少なくとも前記被塗装物と前記支持部との間の領域の床面側にも複数の開口部を有する床面側支持部を備え、前記被塗装物の背面側の前記通気性シートは、ガイドロール又はガイドバーによって配設方向が変えられ、前記床面側支持部にも吸着固定されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の塗装ブース。
【請求項6】
前記通気性シートが通気性シートロールから引き出されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の塗装ブース。
【請求項7】
前記塗装ブース内にエアを給気する開口部を備え、前記開口部が前記通気性シートで覆われることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の塗装ブース。
【請求項8】
前記通気性シートロールから引き出された前記通気性シートは、前記開口部を覆う位置から前記被塗装物の背面側の位置まで配設され、前記開口部を覆う位置において前記塗装ブースの内部に面する前記通気性シートの面が、前記被塗装物の背面側の位置において前記被塗装物側に面することを特徴とする請求項7に記載の塗装ブース。
【請求項9】
前記支持部と前記吸引ブロワとの間に前記気流が通過する通路が形成され、前記通路にエアフィルタが配置されることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の塗装ブース。
【請求項10】
前記支持部と前記吸引ブロワとの間に防爆用貯水部を備えることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の塗装ブース。
【請求項11】
前記塗装ブースは、前記被塗装物が搬入される搬入口と、前記被塗装物が搬出される搬出口と、前記搬入口及び前記搬出口をそれぞれ開閉する開閉手段と、を備え、前記塗装ブース内に搬送される被塗装物を塗装可能であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の塗装ブース。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【公開番号】特開2009−119452(P2009−119452A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−110521(P2008−110521)
【出願日】平成20年4月21日(2008.4.21)
【出願人】(000150512)株式会社仲田コーティング (40)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年4月21日(2008.4.21)
【出願人】(000150512)株式会社仲田コーティング (40)
【Fターム(参考)】
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