説明

塗装ブース

【課題】 小寸法ワーク塗装用の塗装ブースであって、塗料ミスト排出用下降空気流が合理的に配設された塗装ブースを提供する。
【解決手段】 塗装ブースには、塗装ガンが差し向けられる塗装ブース側壁直上にのみ塗料ミスト排出用下降空気吹出口が配設され、前記側壁に沿ってのみ塗料ミスト排出用下降空気流が形成され、前記空気流は高速下降エアカーテンを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は塗装ブースに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ワークと塗装ガンとを包囲して塗料ミストの飛散を防止する塗装ブースであって、塗装ブース全体に塗料ミスト排出用下降空気流が形成される塗装ブースが特許文献1等に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平1−168371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
自動車ボデー等の大寸法ワーク用の塗装ブースでは、ワーク幅と塗装ブース横幅との寸法比(ワーク幅/塗装ブース横幅)が比較的大きく、またワークの両側に塗装ガンが配設される場合が多いので、塗装ブース全体に塗料ミストが分散浮遊する可能性が高い。従って、塗装ブース全体に塗料ミスト排出用下降空気流を形成するのが合理的である。しかし、小寸法ワーク用の塗装ブースでは、ワーク幅と塗装ブース横幅との寸法比(ワーク幅/塗装ブース横幅)が比較的小さく、またワークの片側にのみ塗装ガンが配設される場合が多いので、塗料ミストは塗装ブース全体ではなく塗装ガンが差し向けられる塗装ブース側壁とワークとの間に分散浮遊する可能性が高い。塗装ガンが差し向けられる塗装ブース側壁とワークとの間に分散浮遊する可能性が高い塗料ミストを排出するのに、塗装ブース全体に塗料ミスト排出用下降空気流を形成するのは無駄である。
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、小寸法ワーク塗装用の塗装ブースであって、塗料ミスト排出用下降空気流が合理的に配設された塗装ブースを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明においては、ワークと塗装ガンとを包囲して塗料ミストの飛散を防止する塗装ブースであって、塗装ガンが差し向けられる塗装ブース側壁近傍上方にのみ塗料ミスト排出用下降空気吹出口が配設され、前記側壁に沿ってのみ塗料ミスト排出用下降空気流が形成され、前記空気流は高速下降エアカーテンを形成することを特徴とする塗装ブースを提供する。
塗装ガンが差し向けられる塗装ブース側壁に沿って形成した高速下降エアカーテンは、ワークと前記側壁との間に分散浮遊する塗料ミストを効果的に連行して塗装ブースから排出することができる。塗料ミストが分散浮遊する可能性が高い部位にのみ塗料ミスト排出用下降空気流を形成することは合理的である。
【0006】
本発明の好ましい態様においては、高速下降エアカーテンの厚みは、塗料ミストが貫通しない値に設定されている。
塗料ミストが高速下降エアカーテンを貫通するのを阻止することにより、塗料ミストの側壁5への付着を阻止することができる。
本発明の好ましい態様においては、塗装ガンが差し向けられる塗装ブース側壁表面がフッ素樹脂塗装され或いはフッ素樹脂コーティング板で覆われている。
塗装ガンが差し向けられる塗装ブース側壁表面をフッ素樹脂塗装し或いはフッ素樹脂コーティング板で覆うことにより、万一塗料ミストが高速下降エアカーテンを貫通した場合でも、前記側壁表面に付着した塗料ミストを容易に除去することができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、小寸法ワーク塗装用の塗装ブースであって、塗料ミスト排出用下降空気流が合理的に配設された塗装ブースが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施例に係る塗装ブースの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施例に係る塗装ブースを説明する。
図1に示すように、小寸法ワーク塗装用のトンネル状の塗装ブース1は、通気性の床部材2よりも上方の塗装空間3と床部材2よりも下方の排気空間4とを備えている。
塗装ブース1の一方の側壁5の塗装空間3に対峙する表面全面にフッ素樹脂コーティング板6が固定されている。
塗装ブース天井壁の側壁5に近接する部位を貫通して、空気吹出ノズル7が配設されている。空気吹出ノズル7の上端開口は給気ダクト8を介して図示しない高圧ターボブロアーに接続されている。空気吹出ノズル7の下端開口は、側壁5に沿って延在するスリットを形成している。
塗装空間3の側壁5近傍の天井部を通って、図示しないチェーンコンベアが側壁5に平行に延在している。チェーンコンベアは空気吹出ノズル7よりも側壁5から離隔している。尚ワーク搬送機構は天井コンベアに限らない。床上コンベアの場合もある。
塗装空間3内に塗装ガンGが配設されている。塗装ガンGは塗装空間3の幅方向中央部に配設され、側壁5へ差し向けられている。塗装ガンGはチェーンコンベアよりも側壁5から離隔している。
排気空間4は、図示しない排気ダクトと排気ファンとを介して外部環境に連通している。通気性の床部材2と排気空間4と図示しない排気ダクトと排気ファンとは塗装ブース1の排気通路を形成している。
【0010】
塗装ブース1においては、側壁5近傍の塗装空間天井部を通って側壁5に平行に延在する図示しないチェーンコンベアが側壁5に沿って走行し、図示しないハンガーを介して前記チェーンコンベアに吊り下げられた小寸法のワークWが側壁5に沿って走行する。走行するワークWに向けて、側壁5へ差し向けられた塗装ガンGから霧化された液体塗料が噴射され、ワークWが塗装される。ワークWを垂直軸線回りに回転させることにより、ワークW全体が塗装される。
ワークWに付着しなかった霧状塗料は凝集して塗料ミストを形成する。
小寸法ワーク用の塗装ブース1では、ワークWの幅と塗装ブース1横幅との寸法比(ワーク幅/塗装ブース横幅)が比較的小さく、塗装ガンGは塗装空間3の幅方向中央部に配設されて側壁5へ差し向けられ、ワークWは側壁5側に片寄せて位置決めされるので、塗料ミストは、塗装空間3全体ではなく主にワークWと側壁5との間に分散浮遊する。
【0011】
図示しない高圧ターボブロアーと給気ダクト8とを介して空気吹出ノズル7へ送られた高圧空気が、スリット状のノズル下端開口から10〜20m/sの高速下降空気流となって吹き出し、ワークWよりも側壁5側で側壁5に沿う高速下降エアカーテンSを形成する。ワークWと側壁5との間に分散浮遊する塗料ミストは、高速下降エアカーテンSが形成する負圧によって高速下降エアカーテンSに引き寄せられ、高速下降エアカーテンSによって下方へ連行される。
高速下降エアカーテンSによって下方へ連行された塗料ミストは、塗装ブース1の排気通路の途上で空気流から分離除去され、空気流のみが外部環境に排出される。空気流から分離除去された塗料ミストは、別途回収されて処理される。
高速下降エアカーテンSの厚みが十分であれば、塗料ミストは高速下降エアカーテンSを貫通しない。塗料ミストが貫通しない高速下降エアカーテンSの厚みは、塗装ガンGの吐出速度、高速下降エアカーテンSの流速、塗装ガンGと高速下降エアカーテンSとの間の距離等を勘案して、解析的に或いは実験的に決定することができる。
万一塗料ミストが高速下降エアカーテンSを貫通しても、フッ素樹脂コーティング板6に付着する。フッ素樹脂コーティング板6に付着した塗料ミストは、塗装ブースメンテナンス時に除去される。
【0012】
上記説明から分かるように、塗装ガンGが差し向けられる塗装ブース側壁5に沿って形成した高速下降エアカーテンSは、負圧の形成によりワークWと側壁5との間に分散浮遊する塗料ミストを効果的に連行して塗装空間3から排出することができる。塗料ミストが分散浮遊する可能性が高い部位にのみ下降空気流を形成することは合理的である。
高速下降エアカーテンSの厚みを適正値にすることにより、塗料ミストが高速下降エアカーテンSを貫通せず、側壁5に付着しないようにすることができる。
万一高速下降エアカーテンSを貫通した塗料ミストは、フッ素樹脂コーティング板6に付着するので、容易に除去することができる。
【0013】
フッ素樹脂コーティング板6に代えて、側壁5の塗装空間側表面をフッ素樹脂塗装しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0014】
本発明は、小寸法ワーク用の塗装ブースに広く利用可能である。
【符号の説明】
【0015】
1 塗装ブース
2 床部材
3 塗装空間
4 排気空間
5 塗装ブース側壁
6 フッ素樹脂コーティング板
7 空気吹出ノズル
8 給気ダクト
W ワーク
G 塗装ガン
S 高速下降エアカーテン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークと塗装ガンとを包囲して塗料ミストの飛散を防止する塗装ブースであって、塗装ガンが差し向けられる塗装ブース側壁近傍上方にのみ塗料ミスト排出用下降空気吹出口が配設され、前記側壁に沿ってのみ塗料ミスト排出用下降空気流が形成され、前記空気流は高速下降エアカーテンを形成することを特徴とする塗装ブース。
【請求項2】
高速下降エアカーテンの厚みは、塗料ミストが貫通しない値に設定されていることを特徴とする請求項1に記載の塗装ブース。
【請求項3】
塗装ガンが差し向けられる塗装ブース側壁表面がフッ素樹脂塗装され或いはフッ素樹脂コーティング板で覆われていることを特徴とする請求項1又は2に記載の塗装ブース。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2012−254406(P2012−254406A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−128460(P2011−128460)
【出願日】平成23年6月8日(2011.6.8)
【出願人】(391022658)パーカーエンジニアリング株式会社 (21)
【Fターム(参考)】