説明

塗装ミストの飛散防止用フード構造

【課題】長期間にわたって高いフィルタ効率を維持し、作業効率を向上することが可能である塗装ミストの飛散防止用フード構造を提供する。
【解決手段】前面に開放面を備えた筐体状のフード本体2と、フード本体2に形成された換気穴4と、フード本体内部に配設されたメインフィルタ10とを備え、メインフィルタ10とフード本体2とにより換気穴4に連通した閉空間15が形成されるようにし、フード本体内の塗装ミストを換気穴4から排気ファン5により吸引し、該塗装ミストをメインフィルタ10に吸着捕集するフード構造1において、前記フード構造1は、メインフィルタ10のミスト捕集面側にプレフィルタ11を配置した二重フィルタ構造を有し、プレフィルタ11はフード本体内部に露出するミスト捕集面積より長尺に形成されるとともに、該プレフィルタ11はそのミスト捕集面をスライド移動させる移動機構を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大型構造物の塗装時に、噴射した塗料ミストが周囲に飛散することを防止する塗装ミストの飛散防止用フード構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、船舶や建造物等の大型構造物の壁面塗装においては、スプレーガン式塗装方法が多く用いられている。スプレーガン式塗装方法は特許文献1(特開昭60−202762号公報)等に開示されている。これは、図8に示すようにスプレーガン51により構造物の塗装面50に塗料を噴射して塗装するものであるが、スプレーガン51から塗料を噴射するにあたって塗装ミストが発生する。塗装ミストは、周囲に飛散して作業員が吸い込んでしまったり、周辺の機器に付着してしまうことがあり、特に屋外で塗装を行う場合には風によって広範囲に拡散してしまう惧れがある。
【0003】
従って、塗装面50をフード52で覆い、塗装ミストの飛散を軽減するようにしていた。この場合、塗装面50にフード52を接近させ、フード52内にてスプレーガン51により塗料を噴射して塗装を行う。塗装面50が高い位置にある場合には、クレーン56により移動可能な作業台55に作業員53が乗り、スプレーガン51を操作して塗装を行っている。フード52は重量が大きいため、作業台55に固定してこれと一緒に移動するようになっている。また、特許文献2(特許第2877270号公報)には、フード52に対して相対移動可能にスプレーガン51を取り付けた自動塗装装置も開示されている。
【0004】
このように、塗装ミストの飛散を防止するためにフードが設けられていた。図9は、従来のフード構造の具体的構成例を示す平断面図である。フード構造52は、塗装面側が開放した筐体状のフード本体61を備え、該フード本体61は後面に塗装穴62が設けられている。該塗装穴62からはスプレーガンが挿入される。また、フード本体61の後面両側部には換気穴63が設けられ、該換気穴63上あるいは該換気穴63に接続されたダクト上に排気ファン64が配設されている。フード本体61内部にはフィルタ65が配設されており、排気ファン64を駆動してフード本体61内の塗装ミストを吸引し外部へ排出するが、このときフィルタ65を通過することにより塗装ミストが捕集される。特許文献3(特開2005−144218号公報)にも、ミスト飛散防止用の箱型ケースの側面に換気扇を設け、該換気扇によりフィルタを介してミストを吸引し、ミストを除去する構成が開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開昭60−202762号公報
【特許文献2】特許第2877270号公報
【特許文献3】特開2005−144218号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記したように塗装ミストをフィルタに捕集させて除去する構成では、長時間塗装を行うことによって塗装ミストによりフィルタが閉塞し、換気能力が下がってしまい、フードの他の隙間から塗装ミストが外に漏れだす惧れがある。これにより、使用時間が長引くにつれてフードのミスト密閉性能が低下し問題となる。
この対策として、フィルタが閉塞する前にフィルタを交換することも考えられるが、一般にフードは大型で重量が大きいため、フィルタが詰まる度にフードを下ろしてフィルタ交換を行うと作業効率が大幅に低下してしまう。
従って、本発明は上記従来技術の問題点に鑑み、塗装ミストによるフィルタの閉塞を抑制し、長期間にわたって高いフィルタ効率を維持し、作業効率を向上することが可能である塗装ミストの飛散防止用フード構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、本発明はかかる課題を解決するために、塗装面に対して平行に配置される開放面を前面に備えた筐体状のフード本体と、前記フード本体の左右側面、上面、底面、後面の何れかの面に形成された換気穴と、前記フード本体の内部に配設されたメインフィルタと、を備え、前記メインフィルタと前記フード本体とにより前記換気穴に連通した閉空間が形成されるようにし、フード本体内の塗装ミストを前記換気穴から排気ファンにより吸引し、該塗装ミストを前記メインフィルタに吸着させて捕集する塗装ミストの飛散防止用フード構造において、
前記フード構造は、前記メインフィルタのミスト捕集面側にプレフィルタを配置した二重フィルタ構造を有し、
前記プレフィルタはフード本体内部に露出するミスト捕集面積より長尺に形成されるとともに、該プレフィルタはそのミスト捕集面をスライド移動させる移動機構を備えていることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、メインフィルタのミスト捕集面側にプレフィルタを配置した二重フィルタ構造とし、プレフィルタのミスト捕集効率が低下したら移動機構によりミスト捕集面をスライド移動させ、新たなミスト捕集面を露出させることにより、メインフィルタを交換することなく長期間にわたって高いフィルタ効率を維持することが可能となる。従って、フードを外してフィルタを洗浄する作業を低減することができ、作業効率を向上させることが可能となる。
【0009】
また、前記プレフィルタは、前記フード本体の後面と平行に配置された第1の捕集部位と、前記フード本体の左右側面、上面、底面の何れかに平行に配置された第2の捕集部位とが連続した構成を有し、前記閉空間の断面が平行四辺形となるように形成したことを特徴とする。
このように、閉空間の断面が平行四辺形となるようにプレフィルタを配置することにより、排気ファンにより吸引する際に圧損を小さくすることが可能である。
【0010】
さらに、前記プレフィルタは、前記フード本体の後面から前記フード本体の左右側面、上面、底面の何れかに掛け渡された平面状に配置され、前記閉空間の断面が三角形状となるように形成したことを特徴とする。
このように、閉空間の断面を三角形状に形成し、プレフィルタを平面状に配置することにより、移動機構の構成を簡素化できる。
【0011】
さらにまた、前記移動機構は、前記プレフィルタの一側の端辺を支持する支軸と、他側の端辺を巻き取る巻き取り軸と、前記巻き取り軸を駆動する駆動手段と、を備えたことを特徴とする。
これは、支軸に巻き付けておいたプレフィルタを巻き取り軸側に巻き取ることによりプレフィルタを移動させるようにしたため、長尺のプレフィルタをコンパクトに収納しながら簡単にスライド移動させることが可能となる。
尚、前記駆動手段は、自動で駆動させる駆動モータであってもよいし、手動で駆動させるためのハンドルであってもよい。
【発明の効果】
【0012】
以上記載のごとく本発明によれば、塗装ミストによるフィルタの閉塞を抑制し、長期間にわたって高いフィルタ効率を維持し、作業効率を向上することが可能である。
即ち、メインフィルタのミスト捕集面側にプレフィルタを配置した二重フィルタ構造とし、プレフィルタのミスト捕集効率が低下したら移動機構によりミスト捕集面をスライド移動させ、新たなミスト捕集面を露出させることにより、メインフィルタを交換することなく長期間にわたって高いフィルタ効率を維持することが可能となる。従って、フードを外してフィルタを洗浄する作業を低減することができ、作業効率を向上させることが可能となる。
【0013】
また、閉空間の断面が平行四辺形となるようにプレフィルタを配置することにより、排気ファンにより吸引する際に圧損を小さくすることが可能である。
さらに、閉空間の断面を三角形状に形成し、プレフィルタを平面状に配置することにより、移動機構の構成を簡素化できる。
さらにまた、支軸に巻き付けておいたプレフィルタを巻き取り軸側に巻き取り、プレフィルタを移動させる構成とすることにより、長尺のプレフィルタをコンパクトに収納しながら簡単にスライド移動させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但しこの実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
本実施形態に係る塗装ミストの飛散防止用フード構造は、船舶や建造物等の大型構造物の壁面塗装に際して、塗装面に塗料を噴射することにより発生する塗装ミスト(以下、ミストと称する)が周囲に飛散することを防止するものである。
【0015】
まず、図5を参照して、本実施形態が適用される大型構造物の壁面塗装の概略を説明する。同図に示すように、フード構造1は、塗料を噴射するスプレーガン30を囲繞するごとく設けられている。そして、塗装対象である構造物の塗装面20に対してフード構造1を接近させ、フード構造1内にてスプレーガン30から塗料を噴射して塗装面20を塗装する。塗装時、フード構造1は、塗装面20に対して該フード構造1の前面が平行となるように所定間隙を存して配置される。スプレーガン30にて塗装面20に塗料を噴射することにより発生するミストはフード構造1内に滞留し、これにより外部に飛散することを防止する。以下の第1実施形態及び第2実施形態において、フード構造1の具体的構成につき説明する。
【0016】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に係るフード構造を図1及び図2に示す。図1は本発明の第1実施形態に係るフード構造の構成を示す平断面図(図5のX−X断面図)、図2は本発明の第1実施形態に係るフード構造の構成を示す図で、(a)は正面図、(b)は背面図である。
第1実施形態に係るフード構造1は、前面が開放された筐体状のフード本体2と、該フード本体2の後面に形成された塗装穴3と、前記フード本体2の後面両側部に形成された換気穴4と、前記換気穴4上又は該換気穴に接続されるダクト上に配設された排気ファン5と、前記換気穴4の前面に閉空間15を存して配設されたメインフィルタ10と、該メインフィルタ10の開放側の面に配設されたプレフィルタ11と、該プレフィルタ11の移動機構と、を備える。
【0017】
前記フード本体2は、塗装時に発生するミストが周囲に飛散することを防止するもので、塗装面側に位置する前面が開放された筐体状を有する。その詳細な形状は特に限定されない。好適には、広範囲の塗装面に対応でき且つ重量を軽量化するために、前面が拡径したテーパ状筐体とするとよい。該フード本体2は、軽量で耐久性を有する材料で形成される。例えば、鉄やアルミニウムなどの金属材料、樹脂材料等が用いられる。
前記塗装穴3はフード本体2の後面に形成され、スプレーガン30を挿入するための穴である。
【0018】
前記換気穴4は、フード本体2の後面、左右側面、上面、底面の少なくとも何れかに設けられる。その数は限定されない。該換気穴4にはダクト(図示略)が接続されている。
尚、図1及び図2には一例として、フード本体2の後面両側部に換気穴4を2つずつ形成した構成を示しており、以下に説明するフィルタ10、11及び閉空間15についてもこの換気穴4の配置に沿った構成としている。
【0019】
前記メインフィルタ10は、フード本体2内に配設される。該メインフィルタ10は、ミストを吸着して捕集する機能を有し、その材質は、例えばポリエステル、ガラス繊維、パーム繊維(ヤシガラ)、塩ビ等の不織布フィルタ、或いはクラフト等の紙フィルタなどが用いられる。
前記プレフィルタ11は、メインフィルタ10のミスト捕集面側に配置される。そして、該プレフィルタ11と前記メインフィルタ10により二重フィルタ構造となっている。該プレフィルタ11は、メインフィルタ10と同様にその材質は、例えばポリエステル、ガラス繊維、パーム繊維(ヤシガラ)、塩ビ等の不織布フィルタ、或いはクラフト等の紙フィルタなどが用いられる。このとき、プレフィルタ11はメインフィルタ10よりも肉厚を薄くし、好適にはプレフィルタ11の肉厚を1〜5mm、さらに好適には2mm程度とする。
【0020】
また、プレフィルタ11及びメインフィルタ10と、フード本体2とで閉空間15が形成され、この閉空間15は換気穴4に連通している。この閉空間15はプレフィルタ11及びメインフィルタ10によりフード本体2のミスト捕集側内部と隔絶されている。
好適には図1に示すように、プレフィルタ11は、フード本体2の後面と平行に配置された第1の捕集部位11bと、フード本体の左右側面に平行に配置された第2の捕集部位11aとが連続した構成を有し、閉空間15の水平断面が平行四辺形となるように形成する。プレフィルタ11と同様にメインフィルタ10も配置される。
【0021】
メインフィルタ10とプレフィルタ11は、換気穴4が設置される部位のみでなく、換気穴4が設置されない部位にも配設することが好ましい。例えば、図2に示すようにフード本体2の後面両側部に換気穴4が設置されている場合、メインフィルタ10とプレフィルタ11は側面に配設されるが、この他に、フード本体2の上面と底面にも配設する。これにより、ミストの吸着面積が増大してミスト捕集効率が向上する。
さらにまた、前記プレフィルタ11は、フード本体2の内部に露出するミスト捕集面積より長尺に形成されており、該プレフィルタ11はそのミスト捕集面をスライド移動させる移動機構を備えている。
【0022】
図3は移動機構を備えたプレフィルタ11の構成を示す斜視図である。
図1及び図3に示すようにプレフィルタ11の移動機構は、該プレフィルタ11の一側の端辺を支持する支軸12と、他側の端辺を巻き取る巻き取り軸13と、巻き取り軸13を駆動する駆動手段(図示略)とから構成される。支軸12は巻き取り軸13と連動して駆動されるようにしてもよい。プレフィルタ11の屈折部には、ガイドローラ14a、14b、14cを配置し、プレフィルタ11が円滑にスライド移動するようにする。ガイドローラ14a、14b、14cの代わりに、摩擦係数が小さい滑らかな棒を設置してもよい。また、駆動手段は、自動で駆動させる駆動モータであってもよいし、手動で駆動させるためのハンドルであってもよい。
【0023】
プレフィルタ11をスライド移動させる時は、巻き取り軸13を駆動手段により回転させ、該巻き取り軸13に使用済みのプレフィルタ11を巻き取っていく。
これにより、支軸12に巻回されている未使用のプレフィルタ11が、図3の矢印A方向にスライド移動してフード本体2内に露出し、ミスト捕集部位に配置される。
尚、前記移動機構は、上記した構成に限定されるものではなく、他にも例えば円環状に形成されたプレフィルタ11の一部をミスト捕集部位に配置し、他の部位をフード本体2の外側に配置しておき、この円環状のプレフィルタ11を周回させて未使用のプレフィルタ11をフード本体2内のミスト捕集部位までスライド移動させるようにしてもよい。
【0024】
このような構成を備えるフード構造1においては、図5に示されるようにフード本体2を構造物20の塗装面に対して間隙を存して配置し、塗装穴3より挿入したスプレーガン30により塗装を行う。該スプレーガン30は、作業員が手動で操作して塗装を行うものであってもよいし、自動で塗装を行うものであってもよい。自動塗装の場合は、例えばフード本体2に対して相対移動可能にスプレーガン51を取り付け、遠隔操作によりスプレーガン51の位置や塗料の噴射を制御し、塗装を行う。
【0025】
塗料の噴射により発生したミストはフード本体2内に滞留する。排気ファン5を駆動させることにより換気穴4に連通した閉空間15の圧力が低下し、フード本体2内部に滞留したミストを含む空気が圧力差により閉空間15へ吸引される。このとき、ミストを含む空気がプレフィルタ11とメインフィルタ10を順に通過し、プレフィルタ11にて大部分のミストが吸着して捕集され、残存するミストがメインフィルタ10に吸着して捕集される。
所定時間塗装を行った後、プレフィルタ11が閉塞する前に、巻き取り軸13を回転駆動させてプレフィルタ11をスライド移動させ、未使用のプレフィルタ11の面をフード本体2内に露出させ、塗装作業を続行する。
【0026】
図6及び図7に、本実施形態のフード構造を用いた場合と、従来例のフード構造を用いた場合において、塗装を継続的に行った時のミスト捕集効率を測定する実験を行った結果を示す。図6は本実施形態と従来例のフード構造における塗装ミストの時系列捕集効率を比較した折れ線グラフ、図7は作業1日目と10日目の捕集効率を比較した棒グラフである。従来例は図9に示すようにフード本体61にメインフィルタ65のみを設置したフード構造52、本実施形態は図1に示すようにプレフィルタ10とメインフィルタ11の二重フィルタ構造を採用したフード構造1を用いた。何れの場合も、実験期間中はメインフィルタの交換は行わないものとする。
【0027】
図6に示すように、従来例においては使用期間が経過するに従って比例的にミストの捕集効率が低下していく。これに対して、本実施形態においては一定期間(図6では4日)経過したらプレフィルタ11をスライド移動させ、未使用の面を露出させるようにしており、これによりメインフィルタ10を交換することなく捕集効率を復活させることができる。図7に示すように、作業1日後では従来例と本実施形態とで捕集効率に殆ど差は見られなかったものの、作業10日目では、従来例の場合は未使用の状態に比べてメインフィルタの捕集効率が30%程度まで低下しているのに対して、本実施形態では80%程度の捕集効率を維持できている。
【0028】
このように本第1実施形態によれば、メインフィルタ10のミスト捕集面側にプレフィルタ11を配置した二重フィルタ構造とし、プレフィルタ11のミスト捕集効率が低下したら移動機構によりミスト捕集面をスライド移動させ、新たなミスト捕集面を露出させることにより、メインフィルタ10を交換することなく長期間にわたって高いフィルタ効率を維持することが可能となる。従って、フードを外してフィルタを洗浄する作業を低減することができ、作業効率を向上させることが可能となる。
【0029】
また、閉空間15の断面が平行四辺形となるようにプレフィルタ11を配置することにより、排気ファン5により吸引する際に圧損を小さくすることが可能である。
さらにまた、支軸12に巻き付けておいたプレフィルタ11を巻き取り軸13側に巻き取り、プレフィルタ11を移動させる構成とすることにより、長尺のプレフィルタ11をコンパクトに収納しながら簡単にスライド移動させることが可能となる。
【0030】
(第2実施形態)
図4を参照して本発明の第2実施形態につき説明する。図4は本発明の第2実施形態に係るフード構造を示す平断面図(図5のX−X断面図)である。尚、本第2実施形態において、上記した第1実施形態と同様の構成についてはその詳細な説明を省略する。
第2実施形態に係るフード構造1は、前面が開放された筐体状のフード本体2と、該フード本体2の後面に形成された塗装穴3と、前記フード本体2の後面両側部に形成された換気穴4と、前記換気穴4上又は該換気穴4に接続されるダクト上に配設された排気ファン5と、前記換気穴4の前面に閉空間15を存して配設されたメインフィルタ10と、該メインフィルタ1の開放側の面に配設されたプレフィルタ11と、該プレフィルタ11の移動機構と、を備える。移動機構については、第1実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0031】
プレフィルタ11は、フード本体2の後面と、フード本体2の左右側面、上面、底面の何れかに掛け渡された平面状に配置され、閉空間15の断面が三角形状となるように形成されている。メインフィルタ10はプレフィルタ11と同様に配置される。この閉空間15はプレフィルタ11及びメインフィルタ10によりフード本体2のミスト捕集側内部と隔絶される。
【0032】
本第2実施形態によれば、第1実施形態と同様に塗装ミストによるフィルタの閉塞を抑制し、長期間にわたって高いフィルタ効率を維持し、作業効率を向上することが可能であるとともに、閉空間15の断面を三角形状に形成し、プレフィルタ11を平面状に配置する構成としたため、移動機構の構成を簡素化できる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、塗装ミストによるフィルタの閉塞を抑制し、長期間にわたって高いフィルタ効率を維持でき、作業効率を向上させることが可能な塗装ミストの飛散防止用フード構造としたため、船舶や建造物等の大型構造物の塗装に好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の第1実施形態に係るフード構造の構成を示す平断面図(図5のX−X断面図)である。
【図2】本発明の第1実施形態に係るフード構造の構成を示す図で、(a)は正面図、(b)は背面図である。
【図3】移動機構を備えたプレフィルタの構成を示す斜視図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係るフード構造を示す平断面図(図5のX−X断面図)である。
【図5】本発明の実施形態に係るフード構造の使用状態を示す側面図である。
【図6】本実施形態と従来例のフード構造における塗装ミストの捕集効率を比較した折れ線グラフである。
【図7】図6において塗装1日目と10日目の捕集効率を比較した棒グラフである。
【図8】従来の壁面塗装方法を説明する図である。
【図9】従来のフード構造の構成を示す平断面図である。
【符号の説明】
【0035】
1 フード構造
2 フード本体
3 塗装穴
4 換気穴
5 排気ファン
10 メインフィルタ
11 プレフィルタ
12 支軸
13 巻き取り軸
14a、14b、14c ガイドローラ
15 閉空間
20 塗装面
30 スプレーガン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗装面に対して平行に配置される開放面を前面に備えた筐体状のフード本体と、前記フード本体の左右側面、上面、底面、後面の何れかの面に形成された換気穴と、前記フード本体の内部に配設されたメインフィルタと、を備え、前記メインフィルタと前記フード本体とにより前記換気穴に連通した閉空間が形成されるようにし、フード本体内の塗装ミストを前記換気穴から排気ファンにより吸引し、該塗装ミストを前記メインフィルタに吸着させて捕集する塗装ミストの飛散防止用フード構造において、
前記フード構造は、前記メインフィルタのミスト捕集面側にプレフィルタを配置した二重フィルタ構造を有し、
前記プレフィルタはフード本体内部に露出するミスト捕集面積より長尺に形成されるとともに、該プレフィルタはそのミスト捕集面をスライド移動させる移動機構を備えていることを特徴とする塗装ミストの飛散防止用フード構造。
【請求項2】
前記プレフィルタは、前記フード本体の後面と平行に配置された第1の捕集部位と、前記フード本体の左右側面、上面、底面の何れかに平行に配置された第2の捕集部位とが連続した構成を有し、前記閉空間の断面が平行四辺形となるように形成したことを特徴とする請求項1記載の塗装ミストの飛散防止用フード構造。
【請求項3】
前記プレフィルタは、前記フード本体の後面から前記フード本体の左右側面、上面、底面の何れかに掛け渡された平面状に配置され、前記閉空間の断面が三角形状となるように形成したことを特徴とする請求項1記載の塗装ミストの飛散防止用フード構造。
【請求項4】
前記移動機構は、前記プレフィルタの一側の端辺を支持する支軸と、他側の端辺を巻き取る巻き取り軸と、前記巻き取り軸を駆動する駆動手段と、を備えたことを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の塗装ミストの飛散防止用フード構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−149067(P2010−149067A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−331594(P2008−331594)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】